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国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編
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106 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 13:33:21.30 ID:vwTJGK6PO
雷帝《電龍は死を賭して私を救った。そうでなければ、私も死んでいた》
雷帝《そうまでして永らえる価値が自分にあったのか、私には分からなかった。けれど、思い悩む時間などありはしなかった》
雷帝《和平の道は閉ざされた》
雷帝《時を置かずして、人間は膨大な軍隊を送り込んでくることになる》
雷帝《不気味なほどに統率の取れた兵士達。人とは思えぬほど強力な魔法を使う魔術師》
雷帝《それまでの人間の軍とは一線を画す恐ろしい能力に、魔界大陸は危機に陥った》
雷帝《加えて、勇者が姿を現したとの情報が魔界に舞い込む》
雷帝《………私たちは、魔界を救うための作戦を打ち出した》
木竜「本当に宜しいのかのう? 姫様」
魔王「…爺。何度も皆で話し合った結果よ」
木竜「うむ…じゃがのう」
雷帝「魔王様と我々四天王による一点突破作戦。大軍の中央部を速攻をかけて崩し、殲滅。そのまま勇者撃破に向かいます」
氷姫「魔王が矢面に立つ以上、諸刃の剣ね。こちらも魔界の命を晒しているのと同じだもの」
魔王「むう。私は、そんなに頼りない?」
氷姫「そ、そうは言ってないわよ! あたしだって心配して言ってんの! あんたが敵の標的にされるかもしれないのよ?」
魔王「ふふ、ありがとう。でも、私にも覚悟は出来てる」
魔王「それに、頼れる四天王が増えたことだしね」
魔王「ね、炎獣?」
炎獣「おう!」
炎獣「つっても俺のやることは、変わらねえけどな!」
炎獣「魔王を、守る…!」
氷姫「…」
107 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 13:36:28.12 ID:vwTJGK6PO
炎獣「今の俺たちならそれが出来る。…氷姫」
氷姫「な、なによ」
炎獣「師匠の所に居た頃から、俺たちはまた強くなった。今なら自分の戦いを、自分で出来る」
炎獣「そうだよな?」
氷姫「…ふん。当然よ。今のあたし達なら」
氷姫「――何だってやってやれるわ」
炎獣「へへ! 氷姫ならそう言ってくれると思った!」ニカ
氷姫「へ、へらへらするな! タコ! ヘボ! ボケナスっ!」
木竜「ほっほっほっ。言うとくが儂とて若いもんだけにやらせとくつもりはないぞい!」
炎獣「じ、じいさん。あのブレスだけは、うかつにぶっ放さないでくれよ」
氷姫「ホントね。より研きかけちゃって、年寄りがどこに向かってんだか」
木竜「ほっほっほっ」
雷帝「姫様…宜しいのですね」
魔王「あ、また姫様って言った!」
雷帝「あ、し、失礼しました! 魔王様!」
魔王「くすっ…。いいの、雷帝」
魔王「私たちが選べる道はいつだって少なかった。今だって、それは変わらないのかもしれないけれど」
魔王「私も、いつまでも守られてばかりいるつもりはない」
魔王「王国軍と勇者を倒して…魔界を守る」
魔王「雷帝。あなたのことも、ね」
雷帝「魔王様…」
魔王「行きましょう」
魔王「必ず………勇者を倒す」
108 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 13:37:12.70 ID:vwTJGK6PO
冥王「…あら?」
冥王「もう出陣ではないのかしら? あたくしにわざわざ会いにいらしたの?」
雷帝「…」
雷帝「なぜ、我々に協力した?」
冥王「…おほほ。そう、そうですの」
冥王「結局答えが分からずに、その仏頂面をひっさげて今更のこのこ尋ねにいらしたのね?」
雷帝「………答えろ、冥王」
冥王「いやだわ。お前さんごときが頑張ってみたところで、あたくし微塵も怖くありませんのよ」
冥王「答える義理はありませんわ。とっとと行ってらっしゃいな。勇者討伐作戦とやらに」
冥王「また一段と強くなったのでしょう? …あなたたち」クスクス
雷帝「…」
雷帝「貴様が何を目論んでいようが、私達は必ずやり遂げる」
雷帝「せいぜい、高みの見物に精を出していろ」
冥王「…おほほ」
冥王「言われなくても、そのつもりでしてよ」ニヤァ
109 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 13:38:00.73 ID:vwTJGK6PO
雷帝《私たちは賭けた》
雷帝《四天王として、研鑽をつんだ己の力を信じて》
雷帝《私たちは、勇者までたどり着いてみせると誓いあった》
雷帝《そして私たちは………精強な王国正規軍を撃破することになる》
雷帝《敵の内部に潜り込み、内側から切り崩す。何かが間違えば死が待つ、決死の作戦》
雷帝《それでも私たちはやり遂げた》
雷帝《敵の指令部に直接攻撃を仕掛けた私が出会ったのは》
雷帝《あの日、王国建国の儀式の動乱首謀者。………電龍の、仇だった――》
王国兵「将軍閣下! 待避を!!」
王国兵「四天王が来ますッ、お早く…ぐあぁあっ!?」
バリバリッ!!
雷帝「…貴様が」
雷帝「人間の将か」
「これはこれは、どこかで見た顔だな」
兄「――あの時殺し損ねたのが、私の運の尽きというわけだ」
110 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 22:52:15.89 ID:L2B0drxD0
兄「なぜ、魔法感知をすり抜けて悠々とそんなところに立っている?」
雷帝「見くびるな。貴様らの小細工ごときで、我らの逆襲は止められない」
兄「…まさか測定限界を越える魔法の濃度を…?」
雷帝「それを知る暇もなく、貴様らは全滅するのだ」チャキ…
兄「………ふっ」
兄「くっくっく…」
雷帝「…!」
兄「はっはっはっは!!」
兄「………我ながら、滑稽だな!」
兄「あの日と同じことを、敵にしてやられたと言うわけか!」
兄「この技術を持ってしても…その上を凌ぐ能力を、貴様らが持っている…!」
兄「貴様はこの事を知っていたのか、教皇!!」
兄「どこかで見ているのだろう!! どうなんだ、魔法使いっ!!」
雷帝(こいつは何を言っている…?)
兄「世の破滅すら招きかねん地獄の使者共め!!」チャキ…!
兄「その力の真の意味すら知らず、命を刈り取り――そして貴様らは何も知らぬまま滅ぼされるのだ!!」
雷帝「…言いたいことはそれだけか?」
兄「はは…っ!!」
兄「私が只で死ぬと思うなよ………!!」
兄「我は………王国大将軍の息子!!」
兄「――勇者一行戦士の兄ぞッ!!」ジャキィッ!
兄「うおおおぉおおぉおおおッ!!」
111 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 22:55:38.97 ID:L2B0drxD0
ザザァン…?
魔王「…」
雷帝「魔王様…間もなく陸が見えて参ります」
魔王「そう…」
雷帝「海を越えれば、王国領港町。人間の王の座す王城まで、数える砦はひとつのみとなります」
炎獣「砦ったって、大したことないだろっ? 俺たち四天王と、魔王が居ればさぁ!」
雷帝「敵戦力の大部分はすでに壊滅したからな。そこまで心配はいらんと思うが」
氷姫「いよいよ…ってワケね」
炎獣「でも、それはそれで物足りないないよなー…これ以上の敵がいないなんてさ!」
氷姫「馬鹿言わないでよ。王国軍の本体を壊滅できるかどうかは、賭けだったんだから。あんなのはもうゴメンよ」
雷帝「ああ…。だがその甲斐あって、人類撃破の願望は目の前だ」
炎獣「おっ!」
炎獣「見えたぞ! 陸だっ!!」
雷帝「…さて、気を引き締めて参りましょう」
氷姫「そうね。人間が、まだどんな手を隠してるか分かったもんじゃないし」
木竜「そろそろ、前線崩壊の一報が人間の王の元へ届いていてもおかしくはないからのう」
炎獣「へへっ。強い奴がいるなら、ドンと来いだぜっ!」
魔王「――みんな」
魔王「ここまで、長い道のりだった」
魔王「けど、とうとう人間をここまで追い詰める事ができた」
魔王「あと少し…あと少しの間だけ」
魔王「私に、力を貸して…!」
112 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 22:56:42.80 ID:L2B0drxD0
雷帝《――そうして、あの港町で》
雷帝《私達の本当の戦いが始まったのだ》
魔王《雷帝》
雷帝《魔王様…。ようやく、私は辿り着いたのですね》
魔王《うん。私たちの、戦いの現実に》
炎獣《へへ。お帰り、雷帝》
雷帝《ああ…》
氷姫《遅いのよ、あんた》
雷帝《…すまん》
雷帝《ここから先は、私たちの記憶は一緒だ》
炎獣《そう、俺たちは一緒に戦い続けた》
氷姫《うん。…港町では未知の兵器を操る商人と》
炎獣《人類最強の武闘家ともやり合った》
魔王《多くの軍勢に、女神の加護を持った盗賊とも》
雷帝《そして》
雷帝《王国軍将軍…戦士と、魔法使いに扮した側近との戦いで》
雷帝《翁を失う》
雷帝《………それでも、我らは進んできた…!》
雷帝《だから!》
雷帝《もう、貴様のまやかしには乗せられんぞ! 教皇!!》
教皇《………》
113 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 22:58:24.48 ID:L2B0drxD0
教皇《魔王。そして魔王四天王》
教皇《なぜ、貴様らは人を滅さんとする?》
魔王《私たちは、人間を滅ぼそうとしているわけじゃない》
魔王《勇者を倒し、この争いに終止符を打つつもりでいるだけ》
教皇《魔王》
教皇《貴様はそうほざくが、一体幾つの命をその手で散らした?》
教皇《いくつの希望を壊し、いくつの友情を引き裂き、いくつの愛を奪い去った?》
炎獣《これは戦いだ》
炎獣《悲しみも沢山生まれた。傷つけたのは俺たちかもしれない》
炎獣《けれど、全てを乗り越えた覚悟を、俺はこの戦いでいくつもぶつけられてきた》
炎獣《その魂は哀れまれるようなものじゃない。魔族も人間も、それは変わらない!》
教皇《…戦いは神聖だったと?》
教皇《ふん。笑わせる》
氷姫《それはこっちの台詞よ》
氷姫《策略を巡らせ、争いを引き起こしたのは誰!?》
氷姫《どうせあんたみたいな腐ったお山の大将みたいのが、裏で糸引いたんでしょうがっ! 違う!?》
114 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 22:59:18.29 ID:L2B0drxD0
教皇《くっくっくっ》
教皇《はっはっはっはっ!》
魔王《…何がおかしいの》
教皇《戦いは私が引き起こした? お前達で戦いを終わらせる?》
教皇《驕るな、愚か者どもが》
教皇《何も知らぬ者が何を喚いても、ただのお笑い草でしかない》
教皇《貴様らは何も知らぬ…! 本当のまやかしが何かを!》
教皇《貴様らが何のために戦い、何のために生きているのかを!!》
教皇《貴様らは知らぬのだ!!》
魔王《…っ》
115 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:00:25.12 ID:L2B0drxD0
雷帝《魔王様》ス…
魔王《…、雷帝》
雷帝《言ったはずだ。教皇》
雷帝《私たちはもう、その手には乗らない》
教皇《くっくっくっ…! 私の言葉を虚妄だとでも言うつもりか!?》
雷帝《例え貴様が語ることが真実であったとしても》
雷帝《私たちはここで消え去る運命など、受け入れはしない》
教皇《…!》
雷帝《無様でも間違っていても》
雷帝《私たちは前に進む為にここにいる》
雷帝《それを、今の私たちは知っている!》
炎獣《ああ!》
氷姫《そういうこと!》
魔王《………》
魔王《教皇》
魔王《私たちは、あなたに屈しない!》
魔王《――ここで、あなたを越えていく!!》
116 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:20:16.35 ID:L2B0drxD0
教皇《黙れ》
教皇《黙れッ!!》
教皇《黙れッ!! 黙れッ!!》
教皇《貴様らに私を越えることなど出来ぬッ!!》
教皇《私は女神の体現者ッ!!》
教皇《貴様ら魔族に破滅をもたらす存在だッ!!》
教皇《人間の勝利は、既に決められているッ!!》
教皇《その未来は、女神によって記されているのだッ!!》
教皇《貴様らは、我が波動の前に粉々に砕け散るッ!!》
教皇《さあ!! 今こそ再び力を寄越せッ!!》
教皇《奇跡の僧侶よッ!!》
赤毛《………》フワァ…!
炎獣《来るぞ!!》
氷姫《ちぃ!!》
雷帝《構えろ!!》
魔王《私たちもぶつよう!!》
魔王《己の全存在をっ!!》
炎獣《ああっ!!》
117 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:21:31.09 ID:L2B0drxD0
赤毛《………》コォオオオオオオ…
魔王《赤毛ちゃん》
魔王《今、助けるから!!》
魔王《行くよ、皆っ!!》
炎獣《うおおおおおおっ!!》
氷姫《はああああぁっ!!》
雷帝《おおおおおおおおっ!!》
ズ ン ッ !
三つ編《すごい…》
三つ編《これが、魔王さん達の戦い》
金髪《ボヤボヤしてられないぜ》
金髪《オレ達が、あの力を赤毛に届けるんだ!》
坊主《…うんっ!》
坊主《もう怖くないよ!!》
三つ編《行きましょう!!》
金髪《ああ!!》
118 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:24:06.83 ID:L2B0drxD0
三つ編《赤毛!》
三つ編《赤毛!!》
三つ編《赤毛っ!!》
三つ編《聞こえる!?》
三つ編《あなたを絶対に連れていかせたりしないっ!!》
三つ編《私の大事な、友達なんだからっ!!》
坊主《もう一度会いたいよ!!》
坊主《僕、赤毛に話したいこと、沢山あるよ!!》
坊主《もう一度!!》
坊主《笑ってよ、赤毛っ!!》
金髪《赤毛!!》
金髪《また皆で会うんだ!!》
金髪《オレ、言ったろ!!》
――金髪「秘密結社の仲間は、ずっと一緒だ! 学校を卒業しても、大人になっても、ずっと!」
――赤毛「ずっと一緒?」
――坊主「いいなあ、それ!」
――三つ編「…私、ずっと一緒にはいれないと思うよ。みんな、おうちの仕事も違うし」
――三つ編「大人になったら、会えなくなっていくんだよ」
――坊主「そおなの!?」
――金髪「バカだなぁ、三つ編は!」
――金髪「大事なのは、仲間ってことだ。毎日一緒にいれなくなっても、仲間でいるって覚えてれば」
――金髪「いつか、会うための力になるんだよ!」
金髪《仲間だってことを覚えていればっ!!》
金髪《また、会うための力になるんだ――!!》
ゴ ッ ! !
119 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:25:21.15 ID:L2B0drxD0
教皇《ぐっ!!》
教皇《がぁっ!!》
教皇《なんだッ!?》
教皇《なんだこの力はッ!!》
教皇《なぜ、あの子供たちがッ、奇跡の僧侶と同じ力を持っている!!?》
教皇《なぜッ…!!》
教皇《なぜだぁァッ!!》
炎獣《うっ!! くっ!!》
氷姫《こっちも………っ!! キッツいわ!!》
雷帝《ぬう…ッ!!》
魔王《皆!!》
魔王《自分の存在を忘れないで!!》
魔王《存在を消してしまってはダメっ!!》
魔王《自分の思いを!!》
魔王《思い出すのッ!》
炎獣《お、れが…!》
炎獣《俺である…》
炎獣《思い出………!!》
120 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:34:38.07 ID:L2B0drxD0
鳳凰「………何の用だ?」
鳳凰「今さら、里心でも沸いたのか」
炎獣「………」
鳳凰「? き、貴様、まさか…」
炎獣「――鳳凰。俺はあんたを、倒す」
炎獣「あんたを乗り越えて、俺が四天王になる」
鳳凰「………くくくっ。はははは!!」
鳳凰「あの日の只の親殺しが、今度は恩人まで手にかけようと言うのか!? 笑わせる!!」
鳳凰「貴様ごときに、朕が倒せるものか!! 自惚れもそこまでにするがよい!!」
炎獣「それでも俺はやる」
炎獣「そう、決めたんだ………!」
炎獣《………そうだ》
炎獣《あの時、魔王のために、氷姫や爺さんや雷帝のために》
炎獣《生きようって、そう決めたんだ》
炎獣《それが俺の》
炎獣《生きる理由なんだって》
炎獣《俺、そそかっしいから、すぐ大事なこと忘れちまうけど》
炎獣《でも、俺が戻るべき場所は…ここなんだ!》
121 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:35:52.27 ID:L2B0drxD0
鳳凰「………何の用だ?」
鳳凰「今さら、里心でも沸いたのか」
炎獣「………」
鳳凰「? き、貴様、まさか…」
炎獣「――鳳凰。俺はあんたを、倒す」
炎獣「あんたを乗り越えて、俺が四天王になる」
鳳凰「………くくくっ。はははは!!」
鳳凰「あの日の只の親殺しが、今度は恩人まで手にかけようと言うのか!? 笑わせる!!」
鳳凰「貴様ごときに、朕が倒せるものか!! 自惚れもそこまでにするがよい!!」
炎獣「それでも俺はやる」
炎獣「そう、決めたんだ………!」
炎獣《………そうだ》
炎獣《あの時、魔王のために、氷姫や爺さんや雷帝のために》
炎獣《生きようって、そう決めたんだ》
炎獣《それが俺の》
炎獣《生きる理由なんだって》
炎獣《俺、そそかっしいから、すぐ大事なこと忘れちまうけど》
炎獣《でも、俺が戻るべき場所は…ここなんだ!》
122 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:36:57.41 ID:L2B0drxD0
魔王《そう!!》
魔王《私たちが、私たちである証明!!》
魔王《近い自分、遠い自分!! そしてお互いを思い合う気持ちを!!》
魔王《思い出すの!!》
魔王《繋ぎ止めて!! 自分をっ!!》
氷姫《あたしがあたしである証明…!》
氷姫《ねぇ…っ、魔王…!》
氷姫《あたしさ…っ》
氷姫《あたしね…!》
氷姫《まだ、あんたに謝ってないよ…っ!》
氷姫《ひどいこと言ってごめん…って、あの時のこと…!》
氷姫《あんたは気にしちゃいないのかもしれない。もしかしたら、覚えてないかも》
氷姫《それでもね、あたしは》
氷姫《ちゃんとこの戦いを生き延びて、それで、あんたに真っ直ぐ向き合って》
氷姫《ちゃんと、謝るまで…!》
氷姫《こんなところでっ!》
氷姫《終われない!!》
氷姫《それがちっぽけだけど、ずっと捨てきれない想い!!》
氷姫《そして――!》
123 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:39:10.53 ID:L2B0drxD0
雷帝《魔王様…!》
雷帝《私にとって、守るべき存在であった貴女が》
雷帝《いつの間にか、私を守るようになった》
雷帝《貴女がそうすれば、そうするほど私から遠い存在になっていくような気がした》
雷帝《貴女の隣には、炎獣がいる》
雷帝《――それでも私はここに立つ》
雷帝《この戦いが終わるまで》
雷帝《いや、終わって後も、ここは私の場所だ》
雷帝《仲間と、私が私である大事な》
雷帝《先代様。あなたが呪いと言った居場所は》
雷帝《私にとって、かけがえのないものになりました》
雷帝《私は》
雷帝《それを守るために闘い続ける…ッ!!》
124 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:42:53.74 ID:L2B0drxD0
魔王《皆の、強い波動を感じる…!》
魔王《炎獣の、氷姫の、雷帝の気持ち…!!》
魔王《それらを、あの子達が拡幅してくれている!!》
魔王《教皇!! あなたには!!》
魔王《私たちは倒せない!!》
教皇《ッ!!》
教皇《何故だ!!? 私はっ!!》
教皇《もはや女神そのものとも言える力を有しているのだぞ!!?》
教皇《奇跡の僧侶までもが、手の内にあると言うのにッ!!》
教皇《…私は…ッ!!》
教皇《私は負けられぬのだァッ!!》
教皇《魔王ッ!! 人に仇なす害虫めッ!!》
教皇《貴様みたいな者が居ては…ッ!! 人類に幸福は訪れぬのだッ!!》
魔王《…っ!!》
125 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:43:47.15 ID:L2B0drxD0
魔王《教皇…!!》
魔王《あなたは…!!》
教皇《クッ!! フハハッ!!》
教皇《魔王ッ!! 貴様は魔族という種を背負うには、あまりに粗末だッ!!》
魔王《っ…!》
教皇《現に今ッ!! 衝突の此の時ッ!!》
教皇《――貴様は迷っているッ!!》
魔王《!!》
教皇《私を消すことがッ!!》
教皇《勇者を倒すことがッ!!》
教皇《本当に正しいことなのかどうか、貴様には分からないッ!!》
教皇《"魔王"である自分が、正しい存在なのかッ!!》
教皇《貴様は思い迷っているのだッ!!》
126 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:44:38.87 ID:L2B0drxD0
教皇《私は負けぬッ!!》
教皇《負けぬぞッ!!》
ビリビリビリビリ…!!
魔王《くっ……!!》
魔王《彼の感情や記憶が雪崩れ込んでくる…っ!?》
教皇《うおおおおおおおおおッ!!》
「いよいよですよ」
「いよいよ、勇者と魔王の戦いが"はじめからはじめる"のです」
魔王《!!》
魔王《これは――》
魔法使い「台本通りですよ」
教皇「………魔族ですら思いのままか」
教皇「そら恐ろしくすらあるな」
魔法使い「何を今さら恐れているのです?」
魔法使い「ショーは、これからでしょう?」
魔法使い「いよいよですよ」
魔法使い「いよいよ、勇者と魔王の戦いが"はじめからはじめる"のです」
127 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:50:03.76 ID:L2B0drxD0
魔王《こ、これは………教皇の記憶》
魔王《あの時垣間見たものと同じ…!》
魔王《生々しい、追憶の断片…。互いの存在をぶつけあっている今、ひりひりとそれが伝わってくる!》
魔王《あれは、やはり私達を惑わすために見せた幻覚ではなかった………!!》
魔法使い「現段階で、後の魔王とその四天王がその顔ぶれを揃えました」
魔法使い「炎獣、氷姫、雷帝、木竜。彼らが、勇者討伐作戦と称して特攻をしかけてきます」
教皇「…それが、今回の魔王勇者大戦の幕開けとなるわけか」
魔法使い「ええ。一方で、間もなく王国の転覆に際して勇者一行は各々がその立場を自覚します」
魔法使い「それすなわち、商人、武闘家、盗賊、戦士、僧侶………ふふ、それに私もね」
教皇「…下らん芝居をうつものだな」
魔法使い「大事なことですよ、こういうことは。あなたも心しておいてくださいね」
魔法使い「武人の兄弟、戦士さんとその兄君の処理はあなたにかかっているんですから」
教皇「分かっている」
教皇「王家を裏切る戦士の兄に、見返りとして王国正規軍を任せてやれば良いのだろう」
魔法使い「ええ。彼はその役目を立派に成し遂げるでしょう」
教皇「くくく…。魔王と四天王に敗れる、という役目か」
魔法使い「…勇者に神託が下り、いざ旅立たんという時に、王国軍は敗れ去る」
魔法使い「そうして港町に迫る魔王と四天王を、商人さんが決死の覚悟で止めにかかる…」
魔法使い「………それが、この物語の始まりなのですから」
魔王《――ッ!!》
128 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:53:05.50 ID:L2B0drxD0
魔王《………な、何? これは》
魔王《まるで…まるでこの戦いが》
魔王《………仕組まれたものだった、ような………》
魔王《…いえ、それだけじゃない…!》
魔王《まるで全ての者の運命を思いのままにしてきたみたいな言い方だ…》
魔王《これでは――》
教皇「まあいい。"女神"の啓示の導きに準ずるまでだ」
教皇「勇者一行は順に死にゆく定めだが…」
教皇「魔王もまた、人類には勝てない」
魔法使い「………ええ」
魔法使い「彼女は、人類に勝利しないでしょう………」
教皇「勇者一行も、魔王と四天王も」
教皇「その生の全ては」
教皇「既に決められているのだから」
魔王《っ!!》
魔王《私達の生が…》
魔王《…決められて、いる………………》
魔王《………まさか》
魔王《私達の思い出も…》
魔王《………こんな………》
魔王《こんなことが》
魔王《本当に――》
《姫様》
129 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/28(土) 23:54:08.16 ID:L2B0drxD0
魔王《!》
魔王《あ………》
魔王《あなたは………》
《ほっほっ。しばらくぶりですのぉ》
《とは言っても、現実世界ではあまり時は経っておらんのでしょうが、の》
魔王《――…爺》
木竜《姫様》
木竜《微力ながら、お力添えに参りましたぞ》
130 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/29(日) 00:30:45.59 ID:z9q5tTPt0
木竜《心配召されるな。教皇とぶつかりあっている姫様の意識だけを、少しばかり拝借させてもらっておりますじゃ》
木竜《儂の語りかけは、姫様にしか聞こえませぬ》ホッホ
魔王《本当に、爺、なの…?》
木竜《はい。姫様の、爺ですじゃ》
木竜《酷く曖昧なこの世界で、真実を見極めるのは難しいことやもしれませぬが》
木竜《姫様は、感じ取っておられるでしょう》
魔王《………爺だ》
魔王《本物の、爺だ…!》
魔王《生きて、いたの…!?》
木竜《…》
木竜《姫様。またそのお心を傷つけてしまうかもしれませぬが…》
木竜《爺は、死んどりますじゃ》
魔王《…っ》
木竜《魔法使いの、あの時の一撃で、儂は死にました。…けれども、この魔壁の内側の世界で》
木竜《姫様や、炎獣、氷姫、雷帝が》
木竜《何度も儂のことを繰り返し思い出してくれたからのう。どうやら、この概念世界だけの身じゃが》
木竜《一時的に意識を持つことに成功したようなのですじゃ》
魔王《………爺》
魔王《それじゃあ………》
木竜《うむ。姫様達が、存在を完全に取り戻した今》
木竜《教皇を倒し、取り囲む魔壁を破って、この空間を脱出したその時――…この儂は、また跡形もなく消え去ってしまうじゃろうのう》
魔王《そんな…!!》
木竜《ほほっ。よいのです》
木竜《生命はその循環の定めには従わねばならん。儂は充分に生きた》
木竜《魔族の生は長い。それにどんな意味があるのか、儂のような愚か者はついぞ知ることは出来なんだが》
木竜《姫様に、それに先代様に。存分にお仕えすることが出来て、楽しかった》
木竜《それに最後に》
木竜《もう一度、姫様のお役に立つチャンスに恵まれたのじゃからのう》
魔王《爺…》
131 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/29(日) 00:31:53.30 ID:z9q5tTPt0
木竜《さて、姫様》
木竜《真実を目の当たりになさって、さぞお心の内は混乱の極みでありましょうな》
魔王《爺は…》
魔王《このことを知っていたの?》
木竜《…教皇と魔法使いが、"女神の啓示"と呼ぶものを通じて、この戦いにおける多くのことを掌握していた》
木竜《ふむ。儂もこの身になってみて、初めて知り申した》
木竜《儂を遣わした者が遣わした者じゃから、かもしれんがのう》
魔王《え…?》
木竜《姫様。おそらく彼奴らは、この戦いを…いや》
木竜《それに至るまでの儂らの歩みすら、その手の上に収めておりました》
木竜《一体、どれだけの時を、彼奴らの思惑のまま動いていたのか…。口惜しいことじゃが、推し量ることすら出来ませぬ》
魔王《…》
木竜《それを可能にしたのは―――おそらく彼奴らの"女神"ですじゃ》
魔王《女、神………。けれど、女神は…っ》
魔王《女神は、勇者に加護を手に与える役割を越えることはしなかったはず…! それは、魔王に加護を与える、邪神と同じ!》
魔王《その女神が、魔族を操るだなんて、そんなことがあり得るの…!?》
木竜《本来の女神であれば、不可能やもしれませぬのう》
木竜《しかし、彼奴らの女神は、それとはまた違う存在》
木竜《教皇と、魔法使い。彼奴らは、己の目的を果たすための絶対的な存在を、独自に創り上げたのですじゃ》
魔王《…!!》
木竜《その絶対的な存在は、"啓示"という形をとって教皇と魔法使いにとるべき道を示した》
木竜《教皇と魔法使いは、それに乗っ取ってこの戦いを影で支配してきた…というわけですのう》
132 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/29(日) 00:33:04.93 ID:z9q5tTPt0
魔王《………自らの手で、そんなものを創り上げたなんて》
木竜《うむ。信じがたいことじゃが、彼奴らはそれを成し遂げ》
木竜《絶対的なその存在を、"女神"と、呼んでおる》
魔王《………》
魔王《絶対的な存在…偽りの女神》
魔王《そんなものすら創り上げた彼らの前に………何も知らない私達のこれまでは》
魔王《彼らの思うがままだった…?》
木竜《…》
木竜《それは真実のひとつですじゃ。ですがのう》
木竜《全てがそうとも言い切れませぬ》
魔王《…どういうこと?》
木竜《啓示では、どうやら本来儂が命を落としたあの魔法使いとの戦いで》
木竜《姫様。あなたが敵の手にかかるはずじゃった》
魔王《!》
木竜《ところが、実際に果てたのは儂で、姫様は今こうして教皇と対峙してせめぎあうところまで、生き延びておられる》
木竜《全ての命運を握っていたはずの教皇は、今や姫様や四天王、そしてあの子供らの前に、追い詰められている》
魔王《…》
木竜《そうして過去に倒されるはずじゃった姫様が、ついにはこの真実にまでも辿り着いてみせた》
魔王《………運命が、狂った?》
魔王《何故――》
木竜《…》
133 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/29(日) 00:34:02.66 ID:z9q5tTPt0
木竜《時に》
木竜《儂が、こうして姫様に言葉を紡ぐまでの輪郭を持つ存在となりえたのは、ある者の助力がなくしては不可能なことじゃった》
魔王《…ある、者?》
木竜《一度死した儂を、わざわざ姫様の助けとするべく寄越そうとした者がおったんじゃ》
木竜《その者はそれだけでなく、奇跡の僧侶である赤髪の少女の力に対抗するために》
木竜《彼女と繋がりをもつ少年少女を魔壁の内側へ送り込み、姫様達とリンクをさせた》
木竜《そういう要素の全てが、教皇の描いていた筋書きを大きく裏切っていったのじゃ》
魔王《………全てを握っていた教皇を、出し抜いたということ?》
魔王《そんなことが出来る人物、って――》
木竜《そう》
木竜《魔法使いじゃ》
魔王《…ッ!!》
134 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/10/29(日) 00:35:14.66 ID:z9q5tTPt0
魔王《魔法…使い………っ!》
魔王《………何故、彼が私達の手助けを…!?》
魔王《だって、爺をその手にかけたのは》
魔王《魔法使い自身なのに…っ!!》
木竜《…魔法使い。奴は》
木竜《"側近"である頃から、何を考えているのかよう分からん魔族じゃった》
木竜《歴代魔王に仕えながら、勇者との戦いを生き抜き…齢はあれで、儂よりも重ねておる》
木竜《いつも一人、研究や考え事に沈んでいる、近づき難い男でのう。まるで世界の秘密に常に挑みかかるつもりでいるようで…》
木竜《………あやつに敗れた時…、先代様を失ったあの日》
木竜《あやつが、想像を絶するほど途方もなく研鑽を積み上げていたことを知った》
木竜《それは、狂気と言えるほどのものじゃ》
木竜《姫様》
魔王《…》
木竜《魔法使いに何が見えているのか》
木竜《みなは、それに追いつく必要があるのかもしれませぬ》
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/29(日) 00:35:43.07 ID:z9q5tTPt0
ここまでです
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/29(日) 03:37:13.04 ID:5j57rZcno
乙乙
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/08(水) 21:31:04.78 ID:kfSpgEmDO
乙
新スレ立ってたとは迂闊だった
138 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:33:49.09 ID:Pupo+1fL0
魔王《………》
魔王《うっ…!?》ズキッ
木竜《むっ、いかん》
木竜《姫様、まずは教皇を撃破なされよ!》
木竜《少ない時間の中で、考える頭を引き摺ってでも前に進まねばなりませぬ!》
魔王《………うぅっ…!》グッ…
木竜《――お辛いでしょう》
木竜《儂がその痛みを分かち合えた部分など一体いかほどだったのか》
木竜《けれども儂は、姫様が成したことを、裏切りなどとは思っておりませぬ》
魔王《っ!》
魔王《…爺、まさか》
魔王《あのことを…!!》
木竜《こういう体になったら、色々と分かるようになってのう。それでも儂は》
木竜《姫様は間違っておったと思いませぬ》
木竜《だから姫様》
木竜《己を信じて》
木竜《――――》
魔王《爺っ…!》
139 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:37:07.89 ID:Pupo+1fL0
炎獣《魔王ッ!! 魔王しっかりしろッ!!》
氷姫《魔王…ッ!!》
雷帝《魔王様ッ!!》
魔王《――…っ!》
魔王《皆…!》
炎獣《魔王…ッ!》パァ
雷帝《気を取り戻されましたか…!!》
氷姫《ったく!! こんな時にあんたは、寝坊助なんだから…!!》ニヤ
魔王《ごめん…!!》
魔王《――………教皇!!》
教皇《………!!》
教皇《まだ倒れぬか!!》
教皇《しぶとい女だ…ッ!!》
魔王《皆、聞いて!!》
魔王《個々で向かっても、教皇を撃ち抜くことは出来ない!!》
魔王《私たちの存在をひとつに集めて》
魔王《一気に、教皇を穿つッ!!》
140 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:38:39.04 ID:Pupo+1fL0
氷姫《オーケー!! やったろうじゃないの!!》
炎獣《っしゃあっ!! 今度こそぶっ倒してやるッ!!》
雷帝《足並みを揃えろ!! 気持ちをひとつに!!》
魔王《この戦いを乗り越えてきた私たちになら――!!》
魔王《出来るッ!!》
ゴォオオオッ!!
教皇《捻り潰してくれるわ!!》
教皇《我は森羅万象を導く存在ッ!!》
教皇《次元を生まれ返らせ光へ辿り着きしッ!!》
教皇《選ばれし生命なりッ!!》
教皇《さあッ!! 我が茫洋たる聖なる力を吸えッ!!》
教皇《奇跡の僧侶よッ!!》
教皇《そしてッ!!》
教皇《悪魔の子らを!!》
教皇《異端の進化を遂げた者共を!!》
教皇《排除せよッ!!!》
赤毛《………………》
ギュ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! !
――――フッ
141 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:40:11.55 ID:Pupo+1fL0
教皇《………………!!?》
教皇《何故、だッ!?》
教皇《どうなっているッ!?》
教皇《何故、吸い込んだ私の力を――》
教皇《解放しないのだ!!?》
赤毛《………………》
教皇《――まさか》
教皇《この小娘――》
教皇《自分の意思が、覚醒したのか!!?》
赤毛《………………》
142 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:41:36.27 ID:Pupo+1fL0
魔王《!!》
魔王《教皇の力が弱まったッ!!》
魔王《今だッ!!》
魔王《全力で》
魔王《ぶつかれッ!!!》
雷帝《う お お お お お お お お お ! ! 》
氷姫《は あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! 》
炎獣《ガ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! 》
教皇《――――ッ!!!!》
ド ッ ! !
143 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:43:23.08 ID:Pupo+1fL0
城下町
魔壁の周囲
赤毛父「………」
赤毛父(黒き壁………)
赤毛父(突如として娘を…。それに、教皇様や魔王らを覆い尽くした、この禍々しい壁)
赤毛父(この壁の内側で、何が起こってると言うんだ。………あの子は)
赤毛父(あの子は無事なのか)
「神よ………」
「…我らをお救い下さい」
赤毛父(壁の周囲には、沢山の人間が詰めかけて…祈りを捧げている)
赤毛父(何を祈るっていうんだ?)
赤毛父(この人知を越えた現象を目の当たりにして………)
144 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:44:49.26 ID:Pupo+1fL0
神父「もはや、祈ることしか出来ん」
赤毛父「! あんたは…」
神父「突然目の前に突きつけられる、論理の超越。神々の奇跡」
神父「人間はそれに対して余りにも無力だ」
神父「それは、人でなくとも、名も無き魔族にとっても同じなのかもしれん」
赤毛父「…神父さん」
神父「娘が心配か?」
赤毛父「………娘を心配しない父などいない」
赤毛父「ましてや多くの人々の運命を背負うような、大それたことをしようって馬鹿な娘を持てば、誰だって………」
赤毛父「誰、だって…」
神父「………」
神父「あの娘は言った。父や母を守りたいと。…それは自分で決めた事なのだ、と」
赤毛父「………」
神父「私は、人の意思ってものを信じてる」
神父「お告げだとか、運命だとか、そういうものは、人の意思の前に道を開ける」
神父「私はそう、信じている」
145 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:48:28.60 ID:Pupo+1fL0
神父「あの男は………教皇は」
神父「或いは、それに抗おうとしたのかもしれない。有事の時に、何も出来ずに終わらないために」
神父「世界の秘密にすら挑戦して、人々を守ろうとした」
神父「それが最初の思いだったはずだ…。時の流れは残酷だな」
神父「志を語り合う友でも居れば………或いは」
少年「友達なら居たよ」
少年「あの人にも」
神父「!」
神父「お前は………」
神父「………まさか…!」
少年「あなたは消えても」
少年「その思いの幾ばくかは、友達が受け継ぐよ」
少年「羨ましいな」
少年「…ありがとう、教皇」
少年「そして」
少年「さようなら」
146 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:50:24.06 ID:Pupo+1fL0
ドゴォン!!
「!? な、何だ!?」
「おい、見ろ!! あそこ!!」
赤毛父「壁が、壊れた…!!」
赤毛父「っ! 何か飛び出したぞ!!」
神父「あれは!!」
神父「教皇っ!!」
教皇「がっ…………!!!」
教皇「…………馬鹿な…………!!!」
教皇「…………何故…」
教皇「……………………だ………」
――スゥ…………
147 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/24(金) 23:53:17.04 ID:Pupo+1fL0
「き、消えた…!?」
「教皇猊下のお姿が………空気に溶けて、消え失せた………!!」
「い、いやああ! 不吉だわっ…!!」
「どうなってるんだ!?」
「まさか………敗れたのか」
「教皇様が…敗けた…っ!」
「――魔王に敗けた!!」
ウワアァァァ!
ヒィイィ…!
赤毛父「そ、そんな…」
赤毛父「それじゃ………あの子は………!!」
神父「…っ!」ギュゥ
148 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 08:28:52.97 ID:IVAMhd/C0
魔王《………………》
炎獣《………やったのか…?》
氷姫《…教皇を…倒した?》
雷帝《ああ》
雷帝《我々はやり遂げた》
雷帝《だが、何故》
雷帝《最後の瞬間、敵の攻撃が止んだんだ………?》
魔王《! 赤毛ちゃん!!》
赤毛《………………》
オォオォオォオォ…!
氷姫《な、何よこれ!? あの子、物凄い波動を抱えてるわ!!》
炎獣《ど、どうなってるんだ!?》
雷帝《まさか………!》
魔王《ええ…っ!》
魔王《最後の最後で、流れ込んでくる教皇の力を解放せずに、自分の中に押し留めたんだ…!!》
149 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 08:30:39.86 ID:IVAMhd/C0
氷姫《っ! そんな…!!》
炎獣《そんな事しちまったら、自分が波動に押し潰されちまうだろ!?》
雷帝《ああ…!》
雷帝《恐らくそれを分かった上で、あの子供は………!!》
魔王《このままじゃあ、赤毛ちゃんが消滅してしまうっ!!》
魔王《一体どうすれば――!》
木竜《ひとつだけ》
木竜《方法がありますぞい》
150 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 08:36:56.08 ID:IVAMhd/C0
雷帝《!!》
炎獣《じ…っ!!》
氷姫《ジーさんっ!!》
魔王《爺…!!》
木竜《ほっほっ》
木竜《どこまで出来るか分からんが、儂の最後の力で、出来るだけのことをしてみようかのう》
雷帝《翁…っ!》
木竜《なんちゅう顔をしとる、雷帝》
木竜《束の間の、再会じゃ。もちっと晴れ晴れしい顔は出来んのか?》
炎獣《爺さんっ!!》
氷姫《ジーさん…まさか…!》
木竜《うむ》
木竜《もはや魔壁は穿たれた。皆の存在は本当の肉体に戻るじゃろう》
木竜《しかし儂は、消え失せる運命じゃ》
木竜《今の儂は、皆の想い出で作られているような存在じゃからのう》
炎獣《そんなっ…!》
魔王《………爺…》
木竜《儂の力で、皆をあの子供達一人一人に作用させる》
木竜《子供達の結び付きで、あの娘の存在を波動の渦から救い上げる》
木竜《今度は皆が、あの子供達とリンクするのじゃ》
木竜《よいな》
151 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 08:39:37.31 ID:IVAMhd/C0
雷帝《翁》
木竜《…雷帝》
木竜《そう、自分を責めるな》
雷帝《…》
木竜《儂は満足してるんじゃ。死ぬ前の最後の仕事で、お前を見事甦らせることが出来て》
木竜《老いぼれから死んでゆくのが、正しい順序だしのう! ほっほっ!》
木竜《…儂はな。安心して逝けるよ。お前さんがおれば》
雷帝《翁…》
雷帝《…本当に》
雷帝《ありがとう、ございました………っ!》
木竜《儂の魂は、お前に継承された》
木竜《好きなように、やってみせい!》
雷帝《………はいっ…!!》
炎獣《爺さんっ! 俺…!》
炎獣《俺…!!》グスッ
木竜《炎獣………。お前には、過酷な道を歩ませたと思うとる》
木竜《すまんかったのう》
炎獣《馬鹿言うなよ! 俺は…っ》グスッ
炎獣《爺さんが居たから、自分の居場所を見つけられたんだっ!》
炎獣《なあ、爺さんっ! 俺、きっと守るからっ!》
炎獣《魔王のこと、守るから………!!》
木竜《ほっほっ》
木竜《頼んだぞい。炎獣…》
152 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 08:45:49.47 ID:IVAMhd/C0
木竜《氷姫》
木竜《少しは、素直になる気になった、って顔だのう》
氷姫《あーあ…っ。まったく、さ。年寄りは説教臭くって、やんなっちゃうわよ》
氷姫《………でも本当は》
氷姫《もっと口うるさく言われてやっても、良かったんだから…》
氷姫《なんで》
氷姫《なんで、死んじゃうかなぁ………!!》ポロポロ…
木竜《…すまんの》
木竜《と言っても、お前の事はあんまり心配しとらん》
木竜《――いつまでも、姫様の良き友であってくれ》
氷姫《はいはい》グスッ
氷姫《わーってるわよ》グィ…
木竜《ほっほっ》
魔王《爺…》
木竜《姫様》
魔王《…もう、爺ってば》
魔王《いつまでたっても、姫のままなんだから》
木竜《ほっほっほっ! 赤ん坊の頃からだからのう。いかんせん、癖でしてのう》
魔王《えへへ…》
153 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 08:50:35.03 ID:IVAMhd/C0
木竜《姫様の想い。伝わっておりました》
魔王《………》
木竜《姫様は、儂に何も返せなかったとおっしゃるが、とんでもない》
木竜《儂にとっては幼い姫様との日々は、まるで孫が出来たようで――》
魔王「あ、ちょうちょだ! じい、ちょうちょだよー!」パタパタ
木竜「ほっほっ。捕まえられますかな」
木竜「ひ、姫様! しかし…!」
魔王「えんじゅうと、ふたりであそびたいのー!」
魔王「じい、あっちいってて!」
木竜「ひ、姫様…!」ガーン
木竜《ほんに》
木竜《ほんに幸せな時間じゃった》
魔王《………爺》ポロ…
木竜《姫様の成長が、嬉しゅうて》
木竜《いつの間にかそれが儂の楽しみになっとった》
魔王「私、魔王になる」
魔王「魔界に、秩序と尊厳を取り戻す」
魔王「私自身が、そうしたいって」
魔王「そう思ったんだ」
木竜《姫様。儂は、姫様に生かされとったのかもしれん》
木竜《この歳で迎えた戦いも、そのおかげで前を向けたんじゃ》
魔王《………爺…っ》ポロポロ…
木竜《だから姫様………》
木竜《………》スッ
木竜《有難う御座いました》
魔王《爺ぃっ…!》
魔王《――いかないでよ!》
魔王《死んじゃやだよっ!》
魔王《本当は私、爺に話したいこと》
魔王《まだまだ沢山あるんだよっ!!》
154 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 08:54:42.19 ID:IVAMhd/C0
木竜《姫様》
木竜《悲しむ必要はありませぬ》
木竜《命は巡るもの》
木竜《儂も、その流れの一部になるだけですじゃ》
木竜《儂の想いは受け継がれ》
木竜《儂の血や肉は、世界をさすらう風に》
木竜《大地に芽吹く木々になって》
木竜《姫様を見守っておりますじゃ》
木竜《さて》
木竜《どうやら時間のようじゃ》
木竜《儂の最後の技》
木竜《受け取って、下され………》
―― ス ゥ………
魔王《――うわあああああ!!》
155 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 18:58:20.84 ID:IVAMhd/C0
赤毛《ねえ》
赤毛《ねえ、皆》
《ん…》
坊主《ここは…》
坊主《!》
坊主《皆、起きて!》
三つ編《んん…あれ?》
三つ編《あたし達、お兄さん達と一緒に戦って…》
金髪《…ここ、どこだ?》
金髪《真っ白で何も見えねーぞ》
坊主《あ、あそこ!》
坊主《赤毛がいる!》
金髪《っ!》
三つ編《赤毛!!》
赤毛《皆》
赤毛《…ありがとう》
赤毛《あたしを追いかけて、こんな所まで来てくれて》
156 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 18:59:50.01 ID:IVAMhd/C0
三つ編《赤毛! 良かった…っ!》
三つ編《赤毛が無事で、本当に!》
赤毛《三つ編…》
金髪《…赤毛。お前、すげーよ。一人で、あんなに頑張ってさ》
赤毛《ううん、一人じゃないよ》
赤毛《皆が居てくれたから、頑張れた。怖くても、我慢できた。皆にまた、会うんだって…。その一心で進めたんだよ》
赤毛《だから、ありがとう》
坊主《赤毛…》
157 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:00:59.42 ID:IVAMhd/C0
赤毛《今だってね。きっと魔王さん達の力のおかげなんだろうけど、皆のおかげであたしの体は取り戻せそうだよ》
赤毛《ちょっと無理しすぎちゃって…もうダメかな、なんて思ったんだけど》
坊主《ぶ、無事なんだよね! それなら良かったっ!》
坊主《もう、一緒に帰れるんだよね!? 僕たちの城下町に!》
赤毛《…》
金髪《…赤毛?》
赤毛《きっと、体は戻れると思う。物凄い癒しの力が、体を再生してくれたから》
赤毛《でもね》
赤毛《心は戻れるか、分からないの》
三つ編《…え?》
赤毛《教皇様の波動を取り込んだ時に、あの人の感情があたしの中で爆発したの》
赤毛《今でも、その悲しみの螺旋が私の中をぐるぐる回ってるんだ》
金髪《…な、なんだよ。それ…》
赤毛《気持ちが、ぐるぐるぐるぐる》
赤毛《消えたくない、勝ち残りたい、死にたくない…》
赤毛《ぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる………》
158 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:02:03.20 ID:IVAMhd/C0
坊主《あ、赤毛…!》
赤毛《これは、ね。多分…取り込んでしまったあたしが、向き合わなきゃいけないものなんだと思う》
赤毛《奇跡の力とか、神様の加護とか、そういうものじゃなくて》
赤毛《あたし自身が》
三つ編《………どうして?》
三つ編《どうして、赤毛がそんなことをしなくちゃならないの…?》
三つ編《帰ろうよ…! 私達の城下町にっ、あの秘密基地にっ!》
赤毛《三つ編…》
三つ編《赤毛が一緒じゃなきゃ、イヤよ!》
三つ編《私…私…っ!》
赤毛《…ありがと。でも…》
金髪《オレも一緒に引き受ける》
赤毛《え?》
金髪《赤毛だけが苦しいなんて、やっぱおかしいって!》
金髪《だったら、オレにもその苦しいのを、分けてくれ! このへんちくりんな世界なら、どーせそういうこと出来るだろ!?》
赤毛《金髪…》
金髪《一緒に苦しんで、一緒に帰ろう!》
金髪《トモダチだろ? オレたち》
159 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:03:25.43 ID:IVAMhd/C0
赤毛《ふふ。金髪らしいね》
金髪《な、なんだよ。笑うことねーだろ?》
赤毛《…すっごく嬉しいよ》
赤毛《ありがと》
金髪《お、おう。なんか、チョーシ狂うぜ》
金髪《赤毛は、憎まれ口叩いてるくらいじゃねーとよ》
赤毛《………》
赤毛《もう、私たちを包んでいた壁は、壊れてしまったから》
赤毛《私たちの心の繋がりも、これでおしまいなの》
金髪《………!》
坊主《そ、そんなっ》
赤毛《すぐに私たちは、元の肉体に戻るよ。だから魔法みたいなことも、もう出来ない》
赤毛《皆は目を覚ますけど…あたしは………》
三つ編《っ!》
赤毛《だから、こうやってお話し出来る時間が》
赤毛《最後のご褒美…かな》
160 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:05:01.47 ID:IVAMhd/C0
三つ編《………ひどい》
三つ編《ひどいよ、こんなの》
赤毛《でもね》
赤毛《例えあたしは目覚めることが出来なくても、皆としたこの冒険は、忘れないと思う》
赤毛《きっと、ずっと》
坊主《…っ》
赤毛《城下町を冒険してさ!》
赤毛《大人から逃げ回ったり…怖いことに立ち向かって》
赤毛《あの、魔王さん達の魔界の大冒険を、一緒に見て回って》
赤毛《皆で力を合わせて…戦ってさ!》
赤毛《すっごい冒険じゃない!?》
赤毛《あたし一度でいいから、こんな冒険してみたかったんだぁ…!》
金髪《赤毛…》
赤毛《皆も、大人になっても忘れないよね!?》
赤毛《ううん、きっと忘れられないよ! こんな素敵なこと!!》
赤毛《ああ、パパやママに話したら、何て言うだろう…!》
三つ編《………っ!》
161 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:06:36.20 ID:IVAMhd/C0
赤毛《…あ、えへへ》
赤毛《そっか。パパやママには話せないんだ》
赤毛《あたし、もう会えないから》
金髪《赤毛…っ》
赤毛《あ、やだなぁ。なんでだろ》
赤毛《泣かないでいようって、思ったのに》
赤毛《笑顔で皆とお別れしようって、決めてたのに》
赤毛《それなのに》ポロ…
赤毛《それなのに………!》ポロポロ…
坊主《…!!》
三つ編《赤毛…!》
金髪《…っ!》
162 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:07:55.05 ID:IVAMhd/C0
金髪《会えるっ!》
赤毛《…っ》
金髪《会えるよ、絶対!》
金髪《赤毛が全部と向き合いきった時に、きっと会えるっ!》
金髪《赤毛の父さんや母さんに、この冒険のことを話せるよ!!》
金髪《だから…!》
金髪《お別れなんて、言うなよっ!》
赤毛《き、金髪…》ポロポロ…
坊主《うん…っ》
坊主《僕たちには何も出来ないかもしれないけど》
坊主《でも、待ってる…!》
坊主《赤毛が目を覚ますのを、ずっと待ってるから!》
坊主《会えなくても、ずっと、ずっとずっとトモダチだから!》
坊主《こんな魔法がなくたって》
坊主《僕たちにの心の繋がりは無くならないよ!!》
163 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:33:13.42 ID:IVAMhd/C0
赤毛《うぅ…》ポロポロ…
赤毛《うううぅ…》ポロポロポロ…
三つ編《私たち》
三つ編《秘密結社の仲間でしょ?》
三つ編《仲間ってことを覚えていれば、例え離れていたって》
三つ編《また会うための力になるんだよ》
赤毛《三つ編…!》
赤毛《三つ編ぃ…!》ポロポロ
三つ編《…えへへ》グスッ
三つ編《あの時と、一緒だね…》
赤毛《………あはは…そうだね》グスッ
三つ編《絶対》
三つ編《絶対にまた会えるから》ギュッ
赤毛《…うんっ…》
164 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:34:11.16 ID:IVAMhd/C0
――フワァ…………
坊主《!?》
坊主《この風…外からの風だ…!》
金髪《な、なんだよ!? もう終わりかよっ!?》
赤毛《………そうみたい、だね》
三つ編《っ!!》
金髪《くそっ、なんだよ!!》
金髪《いつもいつも、世界は勝手だ!!》
金髪《オレたちの気持ちなんか無視して、勝手に進んでいくんだ!!》
赤毛《金髪》
金髪《あ、赤毛…》
赤毛《私は、もう大丈夫》
赤毛《一人でも、怖くないよ》
赤毛《皆の言葉のおかげ》
ヒ ュ ウ ゥ ゥ ゥ ………
三つ編《か、体に感覚が戻っていく…!》
坊主《城下町の風だ…っ! 》
三つ編《町の匂い…体の温もり…》
三つ編《全部が、戻る――!》
165 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:34:56.64 ID:IVAMhd/C0
金髪《赤毛…!》
赤毛《…》ニコ
坊主《赤毛っ!》
赤毛《…。………》
三つ編《赤毛!!》
赤毛「ありがと」
赤毛「忘れない」
166 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:35:58.52 ID:IVAMhd/C0
城下町
時計台の中
魔王「…」
魔王「ここは」
炎獣「…も…戻って来た…」
炎獣「のか…?」
氷姫「…うん」
氷姫「そうみたいね…」
氷姫「声も、元通りだ」
雷帝「………どうやら…我々は脱したようだな」
雷帝「魔壁を」
雷帝「…そしてここは」
魔王「………ええ」
魔王「この子達の………思い出の場所」
赤毛 三つ編 金髪 坊主「………」
167 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:37:02.13 ID:IVAMhd/C0
氷姫「ぐっすり、寝てるわね」
炎獣「ああ…」
雷帝「………」
魔王「………赤毛ちゃん」
魔王「あなたは、あの時…こんなに小さい体で」
魔王「教皇の波動を、たった一人で抱え込もうとしたのね」ソ…
赤毛「…」スヤ…
魔王「…ごめん、なさい」
魔王「私は、あなたを助けきれなかった………」
炎獣「…俺たちさ」
炎獣「この子に助けられてなきゃ、教皇を倒せなかったよな」
雷帝「ああ。…あの一瞬、自分を犠牲にしたこの少女のおかげで、我々は勝つことが出来た。それだけじゃない」
雷帝「この子供達の繋がりが、私達の存在を幾度も繋ぎ合わせたんだ…」
氷姫「人間の、この子が………」
氷姫「――人間は、打ち負かさなきゃいけない相手だと思ってた」
氷姫「でも、これでいいの? ………"勇者を倒す"。あたし達がすべきことって」
氷姫「本当に、そうなの…?」
168 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:38:12.45 ID:IVAMhd/C0
雷帝「教皇の言葉の数々は」
雷帝「必ずしも我々を惑わすためだけのものではなかったように、思う」
炎獣「あいつの言葉に、本当のことがあったってのかよ?」
雷帝「…奴は何かの真実にたどり着いていた。そうであればこそ、あそこまで強大な力を持ち得るに至ったのだろう」
氷姫「…あたし達ですら、敵わないほどの力。………女神の加護?」
雷帝「――魔王様」
雷帝「お聞かせ願えませんか。魔王様がこの戦いで辿り着いた真実を」
魔王「………うん」
魔王「私が知り得たのは、皆が教えてくれた過去と」
魔王「それを揺るがしかねない程の、恐ろしい力の存在」
魔王「それに、"魔法使い"が私たちに何をもたらしていたか………だったわ」
――
――――
――――――
169 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:39:18.47 ID:IVAMhd/C0
魔王「………」
炎獣「そ、んな…」
氷姫「…っ」
雷帝「………にわかには信じがたい」
雷帝「私達は、今まで奴らの思惑通りに動かされていた…それに我々四天王も、邪神の加護を持つ魔王様ですら」
雷帝「気づくことも出来ずに為すがままだった。………一体、いつから…?」
炎獣「あ、操られていたってのかよ…! 俺達ずっと!」
氷姫「………」
魔王「…雷帝、どう思う?」
雷帝「…」
雷帝「私達の全てを思うままに操る能力があるとして」
雷帝「教皇の発言の通り、その目的が魔王様…ひいては魔族の撃破なのであるとすれば、もっと分かりやすいやり方は幾らでもあったはずです」
雷帝「奴らは、我々の精神全てを支配下においている訳ではないと、私は思います。奴らが介入していたのは」
雷帝「私達の魔族の道においての、ターニングポイント。それは例えば」
雷帝「…虚無と海王による、氷部の壊滅の日」
氷姫「………っ」
氷姫「じゃあ、結晶花は…水精は………」
魔王「――彼らの計画のために、利用された」
170 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:40:32.27 ID:IVAMhd/C0
氷姫「………」
炎獣「氷姫…」
氷姫「そうまでして…」
氷姫「そうまでして私達をこの戦いに呼び寄せる理由は何…っ!?」
雷帝「…それは」
雷帝「この戦いの末に、王国軍の砦で消耗した私達の隙をついて、魔王様を倒す…という筋書きを実現するため、だろうな」
雷帝「我々四天王も、人間側のキーマンも、役者を一人も違えることなく、この戦いを迎えたかった」
雷帝「逆に、そこまで綿密に物語を動かさねば魔王様を討つことが不可能だと考えられていた、とも取れる」
炎獣「…でも、結局教皇は力ずくで俺達を倒しに来たぜ?」
雷帝「…我々が勇者一行と戦っている最中にさらなる技術の進歩を得て、勝利を確信していたか…」
雷帝「女神の啓示とやらがどんなものか知りようもない以上、想像することしか出来ん」
魔王「けれど結果として、教皇は私達に敗れた」
魔王「………そうするように仕向けたのは」
魔王「魔法使いだ」
171 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:42:59.84 ID:IVAMhd/C0
炎獣「…!」
氷姫「っ…」
雷帝「…我らを教皇に勝たせることが、奴にとって何らかのメリットがあるということになる」
魔王「………私が教皇に負けるのは、彼にとって不都合だった…?」
炎獣「あいつ…っ!」
炎獣「一体何がしたいんだよ!?」
炎獣「先代様を裏切って、赤ん坊だった魔王を殺そうとしたり!」
炎獣「爺さんを殺したりして…っ!」
炎獣「今度は俺たちの手助けだって!?」
炎獣「やってること、滅茶苦茶じゃねえか…!!」
ガタン…!
炎獣「!」バッ
炎獣「誰だ!?」ガシッ
172 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:44:01.38 ID:IVAMhd/C0
「ひ、ひい!」
「く、くそう…っ! こうなれば、死なば諸とも!」
炎獣「…なんだ、お前?」
「あ、赤毛さん達から離れなさい! でなければ許しませんよ!」
先生「先生は、先生ですからね! お、怒ると怖いですよぉ!」
氷姫「何よ、こいつ」
雷帝「人間か」
先生「な、なんですかっ! 人間で悪いですか! ここは城下町ですよ! 人間がいて当たり前です!」
雷帝「微々たる魔力は感じる…。が、どうやら戦闘能力はさほどでもなさそうだな」
先生「ちょっと、聞いてます!?」
炎獣「なんでぇ、脅かしやがって」
先生「おっ、脅かしたのはそちらでしょう!」
炎獣「あぁん? よくしゃべるな、お前」
先生「ひ、ひぃ」
173 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:46:06.02 ID:IVAMhd/C0
魔王「炎獣」
魔王「赤毛ちゃん達の事、彼に任せましょう。どうやら知らない間柄ではないようだし」
炎獣「分かったよ」パッ
先生「ほっ。あ、熱かった」
魔王「………私たちは、もう行きましょう」
氷姫「ええ…そうね」
先生「な、なんですか! やるならやったりますよ! 先生は、先生ですからねっ!」
炎獣「なあ、あんた」
先生「うわっ!? ゴメンナサイ!」
炎獣「この子達のこと」
炎獣「宜しく頼む」
炎獣「頼むよ…」
先生「…!?」
先生「…は、はい。頼まれました…。…って、何ですか!? 魔族のくせに!」
先生「頼まれるまでもありませんよっ! 先生は、先生ですよ!?」
先生「ねぇちょっと、聞いてます!?」
先生「おーい!?」
174 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:49:23.41 ID:IVAMhd/C0
炎獣「………なあ」
炎獣「俺達の戦いって、なんなんだ?」
炎獣「俺達四天王は、偽の女神に集められたって言うんなら…本当は違う四天王が揃うはずだったってかよ?」
炎獣「勇者一行も? …もう、わけわかんねえよ」
氷姫「魔法使いが、この魔王勇者大戦を引き起こした理由も、説明がつけられないわ」
雷帝「………そもそもの話をしてしまえば」
雷帝「大昔から続くこの"魔王勇者大戦自体の意味"を、私達は知らない」
雷帝「女神と邪神が争い続けているから。その代理戦争…ということは理解しているが、逆に言えば、それしか理解していないのだ」
魔王「………"多くの犠牲を払いながら戦い続ける理由"」
魔王「教皇は…それを知っていたのかな。それとも」
氷姫「――そんなものはひとつもない………そういうオチだったりしてね」
雷帝「理由などなかった…か。その可能性を否定しきれんのも不甲斐ないところだ。もしそうなのだとしたら…」
雷帝「その時、私達に選べる選択肢が残っているんだろうか」
炎獣「………もう、取り返しがつかない数の人間を」
炎獣「俺達は殺しちまった…」
175 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:51:08.08 ID:IVAMhd/C0
先生「………」
先生「…おかえりなさい」
先生「よく、頑張りましたね」
先生「皆…」
先生「そして、赤毛さん…」
先生「あなたは本当に、奇跡の僧侶となってしまった…」
赤毛「………」
176 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:53:00.92 ID:IVAMhd/C0
氷姫「あたし達は、勇者を倒すために今まで必死になってやってきたのよ?」
氷姫「それに意味がないなんて言われたら…なんて、そんな事。………考えたく、ないわよ」
魔王「…そうだね」
雷帝「…もう一人、警戒すべき相手がいる」
炎獣「え?」
雷帝「――冥王だ。奴は、もしかするとこの真実を知っていたかもしれん」
氷姫「! 冥王様が…?」
雷帝「…確証はないがな」
炎獣「で、でもよ…あの師匠が、人間の思惑通りにされるのを、黙って見過ごすとは思えないぜ」
雷帝「…確かに、それはそうだが…」
氷姫(冥王様…。…そういえば、あの時)
――氷姫《何、ですっ、て!?》
――教皇《お前は知らんのか? 何故貴様ら四天王がそこまで人間を圧倒できるのか》
――教皇《冥王が何故、魔王についてその側にいたか》
――教皇《その真実を》
――氷姫《…っ!!》
――教皇《お前は何も知らないのだな。無知なものが振るう大きすぎる力ほど、恐ろしいものはない》
――教皇《排除されるべきは………貴様らだ、四天王》
氷姫「………ねえ、魔王」
魔王「? どうしたの、氷姫」
氷姫「…」
氷姫「ううん…。何でもない」
魔王「…そう」
魔王(………)
177 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:54:44.76 ID:IVAMhd/C0
先生「赤毛さん」
先生「先生はあなたを救いたかった」
先生「あなたがこの戦いの犠牲者になることを、避けようとしたんです」
先生「…その為に、先生は方々手を尽くしました」
先生「金髪君達の想いの力を借りて、魔壁の内側に送り出しました」
先生「魔王側の勝利を確実にするために」
先生「死んでしまった木竜の思念にもお手伝いをしてもらいました」
先生「でも」
先生「あなたの心までは守れなかった」
先生「女神様も、酷いですね」
先生「やっぱり、犠牲が必要なんですか? …あなたの描く、ドラマには」
178 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:08:00.46 ID:IVAMhd/C0
炎獣「俺達には…何よりも先にふん捕まえて話をさせなきゃならない奴がいる」
雷帝「ああ」
氷姫「…そうね」
魔王「"魔法使い"」
炎獣「あいつの目的。それに、これまでしてきたことへのツケを」
炎獣「絶対に、払わせてやる…っ!」
雷帝「奴の思惑が見えればこの戦いの…いや、勇者と魔王の争いそのものの真理が見えてきそうな、そんな気がする」
魔王「………私達は」
魔王「すでに彼らの描いていたあらすじを逸脱した…!」
炎獣「ああ!」
炎獣「もう、好きなようには、させねえ…!」
炎獣「俺達は、俺達のもんだっ!」
氷姫「! 待って!」
氷姫「あ、あれは…」
氷姫「――一体、何?」
179 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:09:00.86 ID:IVAMhd/C0
先生「ツケを払わせてやる、ですか」
先生「あはは」
先生「参りましたね」
先生「………先生は」
先生「いえ」
先生「僕は」
先生「何がしたいんでしょうねぇ?」
先生「それはそうと魔王」
先生「それに四天王」
魔法使い「後ろが、隙だらけですよ?」
180 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:10:56.73 ID:IVAMhd/C0
雷帝「これは…」
雷帝「死体か?」
魔王「………うん」
魔王「そうみたいね」
大僧正「」
氷姫「ボロボロで、原形留めてないわ」
氷姫「物凄い魔法で、やられてる…」
氷姫(………この魔法の残り香)
氷姫(これ………)
氷姫(………もしかして!!)
魔法使い「死の波動よ」
魔法使い「敵を貫け」 ォ オ
炎獣 魔王 雷帝 氷姫 「!!!」
―― ゾ ク ッ
181 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:12:54.19 ID:IVAMhd/C0
雷帝(なんだこの膨大な魔力はっ!? いやそれよりも!!)
氷姫(矛先は魔王だ!! 結界を張って――こ、これ防ぎ切れるような力じゃない!!)
魔王(回避を――駄目だ、間に合わない!!)
雷帝(くっ、私が身代わりに――!!)
炎獣「っ」バッ
雷帝「!!」
魔王「炎じゅ――」
雷帝「――止せ、炎獣ッ!!」
ド ス ッ
182 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:14:38.86 ID:IVAMhd/C0
炎獣「がッ」
炎獣「ふッ」
魔王「………………え」
魔王「………炎…獣………?」
炎獣「」
………ドサ…
魔法使い「おや、死んだのは炎獣ですか」
魔法使い「まあいいでしょう」
魔法使い「――まずは一人目、ですねぇ」ニイィ
183 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:15:53.67 ID:IVAMhd/C0
【魔法使い】
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/25(土) 23:16:27.45 ID:IVAMhd/C0
今日はここまでです
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/26(日) 00:32:43.88 ID:FLDlGLybo
乙
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/26(日) 01:13:20.94 ID:WOrKrdLNo
あっけねぇ
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/26(日) 21:47:13.61 ID:gX3yS1Dgo
魔法使いェ...
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/05(火) 12:23:56.82 ID:rtST7Mkf0
まだかな〜
189 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:54:41.85 ID:ts4DPW7U0
魔王「え…炎獣」
魔王「炎獣――」
炎獣「」
氷姫「なッ…!!」
雷帝「炎獣ッ…」
氷姫「炎獣っ!!」
雷帝(くそ!! 何故だっ!?)
雷帝(全く気配のしない所から、ここまで強力な魔法が…ッ!!)
雷帝(………いや、待て!!)
雷帝(気配はひとつだけしていた…!! とるにも足らない微かな魔力を発していただけの………)
雷帝(あの、人間が――)
魔王「炎獣」
魔王「ねえ、炎獣…」
炎獣「」
氷姫「そん、な」
雷帝「…っ!!」
魔王「炎獣」
魔王「炎獣ってば」
魔王「ねえ、炎獣」ユサ…
魔王「炎獣………」ユサユサ…
190 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:56:14.78 ID:ts4DPW7U0
炎獣「」ゴロン…
191 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:57:04.48 ID:ts4DPW7U0
魔王「どう」
魔王「して?」
192 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:59:19.51 ID:ts4DPW7U0
雷帝「くそ――」
雷帝「くそッ!!!」
氷姫「か、回復魔法を」
氷姫「急が、なきゃ…!!」ヒュイィ…!
氷姫「炎獣…!」
氷姫「炎獣…っ!!」
雷帝「くッ…!!」
「無駄ですよ」
「もう、彼は」
雷帝「ッ」ピクッ
魔法使い「死んでいるんですから」
193 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:00:40.69 ID:ts4DPW7U0
雷帝「側近ッ!!!」
雷帝「貴様ァッ!!!」ドンッ――
ズバァン!!!
魔法使い「おっとと」
魔法使い「危ない危ない」
魔法使い「鐘楼が真っ二つじゃないですか。流石の剣技ですねぇ、雷帝」
魔法使い「本調子が戻ったようですね!」
雷帝「 黙 れ ! ! 」
ビュ
――ズズゥン…ッ!!
194 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:04:58.55 ID:ts4DPW7U0
氷姫「…え、炎獣…」
炎獣「」
氷姫「――死んだ?」
氷姫「炎獣、が?」
氷姫「そんな」
氷姫「だって今の今まで、一緒に話してて」
氷姫「一緒に教皇を倒して」
氷姫「一緒に乗り越えてきたのに」
氷姫「………待って」
氷姫「待ってよ」
氷姫(まだあんたに、言ってないこと)
氷姫(伝えたかったこと)
氷姫(沢山………、沢山あるんだよ)
炎獣「」
氷姫「炎獣ぅ………っ!」
魔王「………………」
195 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:31:57.92 ID:ts4DPW7U0
雷帝「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ギュバンッ!!
ズッ ダァンッ!!
ビュオォウンッ!!
魔法使い「おやおや! これは凄い」
魔法使い「どうやら尚も新しい境地に達したようですね、雷帝」
魔法使い「このままでは僕も、うっかり討ち取られてしまいそうだ」
魔法使い「でもね、雷帝。…気付いています?」
魔法使い「そんなに大それた力、いち魔族が持つことが本当に許されるんですかね?」
雷帝「黙れッ!!」
ドギュッ
雷帝「黙れェッ!!」
ゴッ
――ズガァンッ!!
魔法使い「ふう、危ない」
魔法使い「…ねえ、雷帝。聡明なあなたは、薄々感じ取っていたのではないですか?」
魔法使い「例え魔王四天王と言えど、ここまで人類を圧倒することが出来るものなのか」
魔法使い「あなた達も苦難を乗り越えてきた…それは、分かりますよ」
魔法使い「お互いを信ずる絆も素晴らしいものです」
魔法使い「でもね」
魔法使い「人間だってそれは一緒でしたよね?」
196 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:32:40.03 ID:ts4DPW7U0
魔法使い「…勇者一行は、それぞれが英雄たる人物達でしたよ。各々の道は違えど、ね」
魔法使い「目的の為に手段を選ばない意思の強さと頭脳を持った商人さんも」
魔法使い「気の遠くなるような年月ひたすら己を鍛えぬき、遥かな高みに辿り着いた武闘家さんも」
魔法使い「多くの人を惹き付ける不思議な力と、奇跡すら併せ持った盗賊さんも」
魔法使い「どんな悲劇にも逆境にも立ち向かう勇気と信念を持った戦士さんも」
魔法使い「――沢山の物語を背負ってきた彼らを、あなた達は虫けらのように蹴散らしてきた」
雷帝「貴様…!!」
雷帝「何が、言いたい…ッ!?」チャキ…!!
魔法使い「彼らが死を賭した覚悟を決めていた時、あなたたちは何をしていましたか?」
魔法使い「やれ恋慕の情だの、"自分の気持ちと向き合う"だの」
魔法使い「ずいぶん、あまっちょろいことを言っていましたよねぇ?」
魔法使い「そんなことで、どうして人々を圧倒できたんですか?」
魔法使い「"四天王だから"、そうして当たり前ですか?」
魔法使い「違いますよねえ…?」
魔法使い「分かりませんか? 雷帝」
魔法使い「あなた達のその力は、あなた達自身の実力ではない、ということですよ」
197 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:33:19.77 ID:ts4DPW7U0
雷帝「何をっ………!!」
魔法使い「そうですよねぇ?」
魔法使い「――魔王」
魔王「!!」ビクッ
魔法使い「ずいぶんと、都合のいい言葉で四天王をおだてあげて戦ってきたみたいじゃないですか?」
魔王「………めて」
魔法使い「残酷なことだとは思わなかったんですか? 偽りの実力を過信する部下を見て」
魔王「や、めて」
魔法使い「教えてあげましょうよ。本当のことを」
魔王「――やめてっ!」
198 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:35:05.38 ID:ts4DPW7U0
氷姫「魔、王?」
雷帝「魔王様…!!」
魔法使い「あなた達が人類を圧倒できたのは」
魔法使い「魔王。あなたが邪神の加護を」
魔法使い「"四天王に密かに分け与えていたから"、じゃないですか」
魔王「…っ!!」
…ドクン…
199 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:36:22.99 ID:ts4DPW7U0
ズバァッン…!!
魔法使い「おっと!」
雷帝「それ以上の戯れ言は許さん…!!」ゴォ…
魔法使い「ふふ。雷帝」
魔法使い「考えていないふりは止めませんか?」
魔法使い「雷鳴剣は、先代魔王の持ち物ですよ。あの人の大いなる力を持ってして、初めて扱える代物です」
魔法使い「あなたごときが、本当に扱いきれると思ったんですか?」
魔法使い「王国軍の砦で軍師さんの罠に嵌まったあの時を思い出してくださいよ。…あんな破壊力を前にして生身の生物が生き残れるはずがありますか?」
雷帝「………っ!」
200 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:37:07.12 ID:ts4DPW7U0
魔王「」ガタガタ…
氷姫「魔王…? 魔王っ!」
氷姫「しっかりして…! あいつの言葉なんかに耳を貸す必要はないわ!!」
魔王「」ガタガタ…
氷姫「魔王…!?」
魔法使い「無駄ですよ、氷姫」
魔法使い「だってこれ、本当のことですから」
氷姫「…黙りなさい」ギロ…!
魔法使い「…ねえ、氷姫」
魔法使い「どうして、究極氷魔法を使ってけろりとしていられたんですか?」
魔法使い「魔力を使い切るなんて、普通の生き物なら死に直結する大惨事じゃないですか」
魔法使い「"あの頃より修行を積んだから"とか、"魔王四天王だから"とか、そんな理由で自分が生きていると」
魔法使い「本気で思っていたんですか?」
…ドクン…
…ドクン…
201 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:55:17.12 ID:ts4DPW7U0
氷姫「っ…!! じゃあ、何よ!!」
氷姫「あたし達の実力は、全部…!!」
氷姫「魔王から分け与えられていたものだって言うわけッ!?」
魔法使い「――当たり前ですよ」
魔法使い「先の戦いで見せた"魔壁"。壁で覆った者の存在を解体してしまうなんて」
魔法使い「そんな切り札を持っているなら、どうして今まで使わなかったんですか?」
魔法使い「出し惜しみ? ああ、必殺技は後にとっとくっていうやつですか?」
魔法使い「………違いますよねぇ」
魔法使い「"木竜が死んだから、彼の分の力を取り戻した結果、使えるようになった"んでしょう?」
雷帝「シィッ!」ヒュ
パァンッ!!
魔法使い「…ええ、あなたの勘は正しいですよ、雷帝」
雷帝(受け止めた!?)
魔法使い「これ以上、私が言葉を連ねれば」
魔法使い「魔王は、崩壊しますから」
ドクン…ドクン…
ドクン…ドクン…ドクン…
202 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:56:17.52 ID:ts4DPW7U0
雷帝「氷姫!!」
氷姫「っ!?」
雷帝「全力の魔法で私もろともこいつを殺せ!!」
氷姫「な、なにを………!!」
ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
魔法使い「冥王が、なぜあなた達に付いてきたか。教えてあげましょうか」
魔法使い「魔王が持て余していた邪神の加護を――」
雷帝「氷姫ッ!!」
雷帝「早くッ!!」
ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
魔法使い「魔王は、冥王の術によって邪神の加護をあなた達四天王に、分散していたんですよ」
魔法使い「そこであなた達は、その地力を越えた領分の力を手に入れたんです」
ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
雷帝「氷姫ィッ!!!」
氷姫「くッ…!!」ギュウ…!!
氷姫「うあああああああああああああああああああああああああああ!!」ォオォオォオ…!!
魔法使い「そしてその秘密が明かされることを契機として」
魔法使い「冥王の術は解けることになります」
203 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:57:10.50 ID:ts4DPW7U0
魔法使い「――手遅れですよ」
ド ク ン ッ … ! !
魔王「あ」
魔王「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ! ! ! ! !
204 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:57:58.01 ID:ts4DPW7U0
魔界
冥界のほとり
冥王「………」
冥王「おや。術が途切れちまいましたわ」
冥王「まさかあの子猫さん、自分で打ち明けたなんて愚かな真似をしたんじゃあ…」
冥王「いえ、それは致しませんわよねぇ。それじゃあ、自身が反動を受け止めきれずに瓦解しちまふっていうのは、ご本人が一番わかっていますもの」
冥王「いずれにせよ、暴かれてしまったんじゃあお間抜けもよい所ですけれど」
冥王「それにしても、子猫さんはこれじゃあ」
冥王「ここでドロップアウトですわねぇ…」
205 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:10:51.76 ID:ts4DPW7U0
雷帝「魔王様ァ!!」
氷姫「魔王っ――!?」
魔王「――」
魔王「あ――」
魔王「――ぐ」
魔王「――」
ドオォオォオォオォ…!
氷姫「な、に………これ」
氷姫(…魔王の周りに、力が渦巻いている…っ!)
氷姫(何よ…何なのよ、この気配)
氷姫(直視することすら憚られるような…圧倒的な波動の濁流)
氷姫(まるで、世界の全てを拒絶しているみたい…!!)
雷帝「く…っ!!」
魔法使い「ふむふむ」
魔法使い「予想以上の計測値ですね。邪神っていうのは、本当に大したものですよ」
雷帝「――貴様ァっ!!」ヒュッ
ズバッ!
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