少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」

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191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:26:57.43 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「……?」

男「……?」

黒ずくめ「では、更衣室で着替えてくるので、少々お待ちいただけますか?」

少女「ええ、ええ! もちろんですとも! 待ってますね!!」

黒ずくめ「ありがとうございます。それでは、後で」


男「……お前、なんで黒ずくめさんを引き止めたんだ?」

少女「だって一緒に帰れば、コスプレしてない黒ずくめさんが見れるじゃないですか!」

少女「私服の黒ずくめさんって、どんなヒトなんだろうなぁ……!」

男「ああ、ナルホドね……」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:27:33.99 ID:Fzl9L1Z/o



黒ずくめ「皆さん、お待たせしました」

少女「あっ、黒ずくめさ…………」


少女「……ん?」

黒ずくめ「……? はい、黒ずくめですよ」

男「黒ずくめじゃない黒ずくめさんだな」


少女「……男さん」

男「なんだ?」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:28:01.94 ID:Fzl9L1Z/o

少女「フツーの、女のヒトですね」

男「……お前はいったい、何を期待してたんだ?」

少女「ええ!? そりゃ、こう……」

少女「私服でも隠し切れないイケメンオーラが、バリバリ出てるモノかと!」

男「お前は幻想を抱きすぎだ……」

男「コスプレってのは、たいてい、メイクで理想の姿に近づけるモンだぞ」

少女「そ、そうだったんですね……。メイク、スゴすぎます……」

男「ああ。ここはメイクがスゴいんだと思っておけ」

男「むしろ俺は黒ずくめさんが普通の美人な女のヒトで良かったと思うぞ」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:28:29.32 ID:Fzl9L1Z/o


――ビッグサイト周辺

少女「へい、タクシー」ビッ!


スーッ キキッ

カパッ


運転手「お乗りください」

少女「あっ、今朝の運転手さん!!」

運転手「おや。奇遇ですな」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:28:57.21 ID:Fzl9L1Z/o


――秋羽原

少女「……それでですね、ホールに入ったら、そりゃもうスゴかったんですよ!」

運転手「なるほど。私も昔は行ってましたが、最近はスゴいですな」

黒ずくめ「ふふ。三日目はいちばんスゴいよ?」

少女「そうなんですか!? うわはぁ、楽しみだなぁ……!」


男(女子同士の会話にはついていけんな)

男(俺は家につくまで黙ってるとしよう)

男(……というか、しれっと会話についていける運転手さんは何なんだ?)
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:29:24.55 ID:Fzl9L1Z/o


――都内 某ホテル前

黒ずくめ「それでは、僕はここで」

少女「はい! また明日、ビッグサイトで会いましょう!」

黒ずくめ「ええ。……おっと、少女ちゃん」

少女「ひゃぁっ!! きゅ、急に私の首元を触ってどうしたんですか!?」

黒ずくめ「いえ。せっかくのかわいいネックレスのチャームが曲がっていたモノで」

黒ずくめ「身だしなみも油断しないように。家に帰るまでが、COMIKEですよ」ニコ

少女「うっ……。は、ハイ!」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:29:52.26 ID:Fzl9L1Z/o

少女「そ、それでは、お疲れ様でしたー!」

ブロロロロロ…


少女「……はぁ。黒ずくめさん、やっぱり私服でもイケメンだなぁ……」ウットリ

少女「あんなヒトが書く同人誌って、どんな本なんでしょうね!?」

男「さあな。オシャレなモノも好きそうだし、茶葉の解説本とか……」

男「いや、それなら最初から解説本だと言うか。……同人誌か」

男「まあ、二日目というだけで、だいたい想像はつくがな」

少女「……? まあ、楽しみにしておきます」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:30:19.39 ID:Fzl9L1Z/o


――アパート前の道路

パタン

少女「ありがとうございましたー!!」

運転手「いえいえ。またのご利用を」

ブロロロロロ…


少女「……はー、やっと帰ってきましたよー!! 懐かしき我が家!」

少女「なんだか何日も家を空けていたような気がします!」

男「ああ、そうだな。……まあ、お前は昨日初めてウチに来たハズだが」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:30:52.90 ID:Fzl9L1Z/o

少女「細かいコトは言いっこナシですよ。ほいガチャ、っと……」


――居間

ドシン!!!

少女「ハァー、重かったー!!」

男「まったくだ。こんなに買い物したのは、いつ振りかな……」


男「さて、俺の疲れが取れたら晩飯の時間にする」

男「それまでは、戦利品チェックでもしておけ」

少女「はーい! ああ、これが手に入れたお宝をあらためる感覚……!」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:31:19.92 ID:Fzl9L1Z/o


少女「ふーん、ふーん。健全な本はコッチ、えっちぃ本はコッチ……と」

少女「げ……。この健全じゃない本、ちょっとカゲキすぎません?」

少女「私、こんなの買ってましたっけ?」

男「嬉々として買ってたろうが。俺もサークルさんも顔引きつってたわ」

男「というかカゲキだと思うなら俺に見せるな」

少女「えー。いいじゃないですかぁ、男さんなんだから」

男「どうして俺ならオッケーなんだ」

少女「冷静な自分なら困惑するようなモノでも、無意識のうちに買ってしまう……」

少女「さすがCOMIKE、恐ろしい場所です。熱気にあてられないよう注意しなければ」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:31:46.65 ID:Fzl9L1Z/o


少女「コッチはCDですね。……これって、音楽ですよね?」

男「そりゃそうだが。お前、わからないで買ってたのか」

少女「そうじゃないんですが。ただ、どうやってCDで音楽を聴くのかな、って」

男「な……。ダウンロード世代は、CDの使い方もわからないのか? ウソだろ……」

少女「音楽はケータイで聴くモノじゃないんですか?」

男「ソレも間違っちゃいないが。……とりあえず、CDを貸せ」

男「まず、CDから音楽を俺のパソコンに取り込んで、そこからお前のケータイにコピーする」

少女「よろしくです! ああ、直に話したヒトの作った音楽が聴けるなんて、カンゲキだなぁ……!」

男「人生楽しそうだな、コイツ」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:32:22.18 ID:Fzl9L1Z/o


男「よし、そろそろ晩飯の時間だ」コト

少女「……? なんですかコレ」

男「何って、ココナッツミルクだが」

少女「いやソレはわかりますが。ば、晩ご飯が……、コレですかぁ?」

男「いちおう聞いてやるが、お前は晩飯に何を期待していた」

少女「そりゃあ高そうなところに外食とか、豪華に出前のお寿司ですね!」

少女「まあ男さんの手作り料理でもいいですよ?」

男「俺の料理が二の次に置かれているのが何となく腹立たしいんだが」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:32:56.08 ID:Fzl9L1Z/o

男「まず第一に、いちど家に帰った以上、わざわざ外に食べに行ったりしない」

男「寝る時間も遅くなるし、疲れるだけだ」

少女「むーぅ。出不精ですねぇ」

男「次に、なんでわざわざ出前とか高いモン取らなきゃならんのだ」

少女「家にお客さんが来てるんですよ? それにお金は私持ちですし」

男「こういう時だけ客気取りか……。だとしても。だとしてもだ」

男「お前、明日は朝から待機列に並ぶと言っただろう」

少女「ハイ、そうですね。ソレが何か?」

男「よほど死にたいらしいな」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:33:22.73 ID:Fzl9L1Z/o

男「明日、朝から何時間も並ぶとわかってるのに、前日の夜にバカ食いする奴があるか」

男「討ち死にが目に見えているだろう」

少女「えぇ……。12時間くらいじゃ食べたモノは出てきませんよ」

男「だったら腹に残ってるんだろう。人間、非日常の場では緊張もするし委縮もする」

男「その時、いま食ったモノが胃袋でカーニバらないと何故言える?」

男「それに、排泄のサイクルが24時間だというのなら」

男「お前は今朝から昼にかけて何を食ったか。その腹に訊いてみろ」

少女「うぅ。でも、さすがにココナッツミルクだけでは、空腹でお腹が痛くなります!」

男「わかったよ……。じゃあ、赤いき○ねと緑のた○きがあるから、好きなほう選べ」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:33:49.87 ID:Fzl9L1Z/o

少女「やったー! 私、カップ麺、大好きなんですよね」

男「インスタント中毒者か。ハンバーガーとか、ファストフードはどうだ?」

少女「あまり食べる機会はありませんでしたが、モチロン好きですよぉ」ベリベリ

男「まあ、今朝にしたって、ケバブ食ってたか……」

少女「おほー、容器の中の乾燥した香りがたまらない」スンスン

少女「お湯あります? ありませんね? 沸かしますよー」

男「急に元気になりやがって。まあ、俺も何か食うか……」


男「……アイツ、どん左ェ門もっていきやがった」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:34:17.39 ID:Fzl9L1Z/o



少女「ごちそうさまでしたー。このチープな感じは、他に代えられませんね」

男「ココナッツミルクを忘れるな。整腸の役割も兼ねてるんだぞ」

男「それでも胸焼けがすると思うなら、野菜ジュースを飲んでおけ」パカ

男「ヨーグルトもいいぞ」

少女「なんで冷蔵庫の食材は少ないのに、健康食品みたいなのはいっぱいあるんですか……?」

男「食材が少ないのは、この三連休に買いに行こうと思ってたからだ」パタン

男「それに、一人暮らしとなると、どうにも栄養バランスが偏りがちでな」

少女「あはは、きっと良いお婿さんになれますね……」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:34:44.75 ID:Fzl9L1Z/o

ピーッ ピーッ

男「お……っ。ようやく風呂が沸いたな」

少女「へえ、気付かなかったけど、お風呂もあったんですねー」

男「このアパート、わりと設備は整ってるからな」

男「……それが何故かは、察しろ」

少女「???」


少女「とにかくカラダも服もベタベタしてたので、ようやく汗を落とせそうで、助かります!」

男「今は夏の時期だからな。ましてやCOMIKEの後」

男「ちゃんと風呂に入っておかないと自分も他の参加者もヒドいコトになる」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:35:20.40 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ああ……。たしかに、ちょくちょくですが、異臭を放ってるヒトもいましたね」

男「今日の天気は、朝が雨、昼が曇りだったから、夏コミにしてはかなり楽だったが」

男「その分、湿度が高くて、生乾き臭がスゴかった」

少女「自分の臭いは、自分じゃわからないのが、悩みのタネですね」スンスン

男「それに二日目以降は、家にも帰らず、カラダも服も洗わず」

男「通しで参加しているような野生のモンスターが幾度となく現れる」

少女「草むらならぬ人ごみから飛び出してくるという風情ですか」

男「まあヤツらは野生だから仕方ないが」

男「せめて俺たちはモンスターにならないよう、湯舟につかるぞ」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:35:48.34 ID:Fzl9L1Z/o

男「で、どっちから先に入る? 俺としては……」

少女「ハイ! 一番風呂、行かせていただきます!!」

男「元気でよろしい」


男「脱いだ服は、脱衣所のデカいカゴに入れておいてくれ」

男「あとで洗濯機で洗うが……。俺と一緒でいいか?」

少女「はあ。構いませんよ」

男「あっそう。まあ、水が節約できて助かるがね」

少女「資源は大切にしないといけませんからね」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:36:15.80 ID:Fzl9L1Z/o

少女「それじゃあ、また後でー」ダダダ


少女「んー! スッポンポンは快適だなあ!」

少女「わお、洗剤がいっぱい揃ってる! セッケンとボディーソープってどう違うの?」

少女「蛇口をヒネれば水が出るんだよね……。ひゃあ! 冷たぁい!」


男「…………」ハァ

男「知らない男の家でハダカになれば、襲われるかもしれないとか、考えないのかね」

男「いや、泊めてくれるなら何でもするとか言いやがるし、今さらか……」

男「……それとも、俺の常識がまちがってるのか……?」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:36:45.80 ID:Fzl9L1Z/o



少女「はー! サッパリしました! お風呂、お先です!!」モクモク

男「あ……っ、着替えはあるんだよな?」

少女「ハイ。持参していますが」

男「良かった。さすがに、女モノの服までは用意できないからな」

男「じゃあ、俺も入ってくる。戦利品でも見ながら好きにしててくれ」

少女「はーい! 実は中身が気になってる本があるんだよね……、と!」


男(……なんて、知らない女を一人で部屋に放置する俺も、大概か)

男(お互い、甘い親に育てられたモンだな)
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:37:11.70 ID:Fzl9L1Z/o



男「あがったぞー」

少女「あ、うーん」シャクシャク

男「…………」

男「……てめえ、そのアイス、どこから出してきた」

少女「え? そこの冷凍庫からですが」

男「お前の親は人様の家の食い物を勝手に漁って良いとでも教えたか」

少女「そんなワケないでしょう。えへへ」

男「……頭が痛い。もう、好きにしろ」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:37:38.13 ID:Fzl9L1Z/o


少女「う。あ、いたたた。痛たた。きゅ、急に足が……!」

男「ふ。アドレナリンが切れて、痛みの波が来たか」

少女「痛みの波って無知の知みたいですね」

少女「でも痛い、痛いですよぅ。男さんは大丈夫なんですか?」

男「……今は、大丈夫だな」

少女「え? それって……」

男「……最近、痛みが来るのが遅くてな」

少女「…………」

少女「……イヤですね、老化って」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:38:13.84 ID:Fzl9L1Z/o

男「だが、当座の問題はお前だ。足は大丈夫か?」

少女「うーん、歩くのには問題無いと思いますけど。やっぱり痛いです」

男「どれ……。うーん、たしかに両足とも熱持ってるな」ピタ

男「とりあえず、冷水でひやすか」


――浴室

シャワー

少女「わっはー、つっめたーい!!」バシャバシャ

男「暴れるな、俺にもかかるから! ヒエッ、つめてっ!!」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:38:42.48 ID:Fzl9L1Z/o


――居間

少女「ふえ〜、冷えた冷えた」

男「体温が下がって硬直したままだと筋肉痛めるぞ。揉んでやる」

少女「いいんですか? じゃあ、背中もマッサージお願いします」

男「誰がそこまでやるか。エステ屋いってこい」グイグイ

少女「―――あ゙ッ、気持ちイ゙ィ゙〜〜……」ゴキゴキ

男「えらい音が出てるぞ、色々と。普段カラダいたわってるか?」

少女「はあ? 疲れなんて、寝れば治るでしょう」

男「若いっていいね。でも、たまにはじっくり休むのもダイジ……」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:39:09.46 ID:Fzl9L1Z/o

男「…………」

少女「……? どうかしましたか」

男「……へ? あ、いや」

男「脚、長いな、と思ってな」

少女「どこ見てんですか。んー、他のヒトの脚とか意識しないんで、何とも言えませんが」

少女「あ、でも、回し蹴りとかトクイですよ?」シュッシュッ

男「トクイと自称できるほど回し蹴りを撃つ機会があったのか」

男「陸上部?」

少女「そこはカラテとかじゃないんですか? まあ、いずれでもありませんが」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:39:35.74 ID:Fzl9L1Z/o

男「ふーん。あっ、そう」


男(……なんだ、この足のマメの数)

男(片足だけで軽く10個は超えてる。ハッキリ言って異常だな)

男(だが、今日のCOMIKEで出来たのかといわれると)

男(そんなに新しいマメが多いようには見えない)

男(マメは前からあったと考えるべきか)

男(……コイツ、いったい今までどこで、何をしてきたんだ?)

男(知識が食い違う部分もあるし。ワケがわからんな)
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:40:02.62 ID:Fzl9L1Z/o

男「……よし、こんなモンだな」スッ

少女「ふいー! ありがとうございます、だいぶ足が軽くなりました!」ブンブン

男「そりゃ良かった。あとはサロロンパスを貼っといてやる」ペタ

少女「うーん、つめた〜い……」

少女「あ、そうだ。余ったサロロンパス、ちょっと分けてもらえます?」

男「別にいいが。何に使う?」

少女「ふふん。鼻にペタリ」

少女「どうですか! 勝利の勲章です!」ヘヘッ

男「アホだコイツ……」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:40:29.54 ID:Fzl9L1Z/o



男「よし、そろそろ寝るぞ」

少女「えー? まだ7時ですよ? 若い時から、お年寄りですか?」

男「年寄り扱いするな、まだ大学生だぞ」

男「……今日、何時に起きたか覚えているか?」

少女「ああ……。たしかに、まだ暗い時でしたね」

男「そういうコトだ。早く起きなきゃならないし、睡眠時間を欠いてもいけない」

男「COMIKEはスポーツだ。戦場だ。まず万全の体調が大前提と知れ」

少女「んー、ハイ! そうですね! おやすみなさい!!」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:41:03.83 ID:Fzl9L1Z/o

男「ちょっと待て。何故お前は当然のようにベッドを占領している?」

少女「え……? あ、たしかにベッド一つしかありませんね」

少女「ごめんなさい。このベッドは男さんに譲るべきですね」

男「お、おう……。急に殊勝だな」

少女「衣食住の重要性は心得ているつもりです」

男「でも、いいよ。お前がベッドで、俺がザコ寝。それで構わない」

少女「え? いいんですか?」

男「別に。礼儀には礼儀を、というやつだ。例えば友人とかなら蹴り飛ばしてたがな。じゃ、消すぞ」

少女「はーい」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:41:42.47 ID:Fzl9L1Z/o


パチ


男(……やれやれ。やっと一日目が終わったか)

男(本当に長い一日だった)

男(……まさか、三連休がこんなコトになるとはな)

男(昨日までは思いもしなかった……)

男(さて、今日は比較的うまくいったが、明日はどうかな)

男(……考えても仕方ないな。答えの出る問題じゃない)


男(……寝るか)
222 : ◆mclKiA7ceM [saga]:2017/08/25(金) 19:42:08.82 ID:Fzl9L1Z/o
第一章は以上になります。
第二章は、明日18時ごろの開始を予定しています。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 19:52:23.53 ID:wkorhzzKO
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 02:22:41.97 ID:PCyBtLfOO
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 07:49:40.27 ID:mlt0YSOoo
乙ですぞwwwwww
しかしムックはありえないwwwwwwぺゃっwwwwww
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/26(土) 11:23:44.78 ID:Ue2pLgH20
おもろい
227 : ◆mclKiA7ceM [saga]:2017/08/26(土) 18:24:27.53 ID:Rg3u98mHo
感想ありがとうございます。とても励みになります
緑は敵ですぞwwwwwwぴゃっwww


それでは、第二章を開始します。
今回も200レスほどの予定です。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:24:57.88 ID:Rg3u98mHo




ザァー…



少女「……、んっ……」

少女「ぐっ、うぅ〜……、くぁ〜〜〜」ノビッ


少女「あれ、ココは……」ガバッ


少女「……そっか、男さんの家か」

少女「あれ、でもさっきまで、COMIKEから帰って……」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:25:25.96 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」


チクタク チクタク


少女「……3時」

少女「外は真っ暗……」

少女「ああ、そうか。もう朝になったのか……」


少女「…………」

少女「なんだか、肌寒いな」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:25:52.29 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」


少女「……寒いのは、イヤだな……」


少女「……?」

少女「あれ。そういえば、男さんがいないな……」

少女「昨日は、この部屋で一緒に寝てたハズなのに」


少女「ああ、でも向こうの部屋だけ明かりがついてる」

少女「ヨイショっと」タタッ

少女「髪を……、まとめて……」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:26:21.94 ID:Rg3u98mHo


――ダイニング

少女「男さーん!」

男「ん。今、起きたか」

少女「ええ。ゆうべはグッスリ眠れたようです!」

男「なら良かった。出発まではまだ時間がある。体の調子を整えろ」スイッ スイ

少女「……? あの、男さんは、何を?」

男「ケータイで今の状況を調べていた」

男「どうやらココと同じく、有開でも雨が降っているらしいな」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:26:48.39 ID:Rg3u98mHo

少女「雨……」

男「天気予報では、昨日と同じく、朝は降ってても昼にはやむようだが」

男「とはいえ、待機列で雨に降られるコトは間違いない」

男「ある程度カクゴしておくことだな」

少女「……そうですか」

男「……? どうした。元気無いな。朝は低血圧か?」

少女「ええと……、ですね。それも、ありますが……」


少女「……ちょっと、私のハナシ、してもいいですか?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:27:14.66 ID:Rg3u98mHo

男「…………」

男「わかった。聞こう」

男「ソコに座れ」ガタ

少女「ありがとうございます」


男「…………」

少女「…………」


男「……何か、飲み物を入れるよ」

男「寒いし、ホットコーヒーでいいか?」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:27:54.81 ID:Rg3u98mHo

少女「ホットコーヒー……」


少女「……ええ。お願いします」フフ

男「……? なに笑ってるんだ……」


男「ああ、そうだ。俺はあいにくとブラック派でな。牛乳と」

少女「―――牛乳とガムシロップの貯蔵は無いが、フレッシュならある」

少女「……ですか?」


男「……!」

男「あ……、ああ。たしかにそうだが……」
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:28:21.53 ID:Rg3u98mHo

少女「いいえ、構いませんよ。実は私もブラック派なので」

男「ほう。その年の頃で、たいしたモノだ」

少女「ムカシから飲んでいますから」



男「……そら、コーヒーだ」コト

少女「うぅ……ん。おごそかな闇色の薫り……」スン

少女「一日はコレが無いと始まりませんね」

男「ふふっ。通だな」

男「俺も食にコダワリは無いが、コレだけはな」ズズ
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:28:50.04 ID:Rg3u98mHo

少女「……苦くて、熱いですね。五臓六腑に染みわたります」

男「飲みすぎはキンモツだぞ。さて、ハナシを聞こうか」

少女「…………」

男「…………」


男「……話しにくいなら、別にいいんだが」ボリボリ

少女「いえ。私から言い出したコトですから、喋らせてください」


少女「……そうですね。男さんには、知るヨシも無いと、ことわっておきますが……」

少女「私の“ふるさと”のハナシです」
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:29:17.48 ID:Rg3u98mHo

男「ふるさと。そういえばお前、いったいどこから来たんだ?」

少女「お教えしても良いんですが、絶対にご存知無いので、やめておきます」

男「おいおい。俺だって、そんなに世間知らずじゃ……」

少女「私にはそう断言できるのです」

男「…………」

男「……そうか。なら、まあいいがな」


男「で。お前の“ふるさと”というのは、どういうところなんだ?」ズズ

少女「……。そう、ですね……」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:29:44.58 ID:Rg3u98mHo

少女「……いいですか。カーテン」

男「ああ」

シャアッ



            ザァー…



少女「私のふるさとは、こんな風に、いつでも“雨”が降っているところです」

少女「いつでも。どこでも。いつまでも」

少女「やむコトの無い雨が、永遠に降り続けている場所です」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:30:11.81 ID:Rg3u98mHo

男「…………」

少女「まあ、そんなワケですから。私は生まれてからずっと、屋根の下で育ちました」

少女「別に、私にはソレが常識でしたので、何とも思いませんでしたが」

少女「この国に来て、青い空、白い雲、眩い海、瞬く星というのは」

少女「絵本の創作ではなく、本当に存在するモノだと、初めてこの肌で感じたのです」

男「それは、東狂の海か?」

少女「ええ。どこまでも眩く照らされる海、無窮に瞬く星々……」

少女「世界というのは、スバラシイものですね」

男「田舎のほうに行けば、自然はもっとキレイだぞ」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:30:38.03 ID:Rg3u98mHo

少女「ええ。一度、行ってみたいモノです」


少女「でも、私の“ふるさと”は」

少女「今の、この景色のように」

少女「ずっと、雨が降っていました」



            ザァー…



少女「ずっと、ずっと、ずっと……。終わるコトの無い雨」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:04.68 ID:Rg3u98mHo

少女「それに、この“雨”というのは、いささかタチの悪いモノでして」

少女「浴びると、カラダに良くないのですね」

男「……酸性雨のようなモノか?」

少女「きっと似ていますが、もっと、もっとタチの悪いモノをご想像いただければ」


少女「とにかく、その“雨”は、人々の往来を億劫にさせました」

少女「必然、一ヶ所に多くのヒトが住むと、食糧や資材も大量に必要になりますから」

少女「なるたけ行動しなくて済むように、少人数が分かれて住むようになったのです」

男「……それは、面白くないな」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:30.99 ID:Rg3u98mHo

少女「ええ。面白くありません」

少女「一緒に遊んでくれるオトナのヒトも、同年代の友達も少ないですから」



            ザァー…



少女「でも、そんな私にも、一つだけ楽しみがありました」

少女「それは、おじいちゃんから、大人数のヒトが集まっていた時のハナシを聞くことです」

男「君のおじいちゃんか。いったい、どんなヒトなんだ?」

少女「うーんと。そうですねえ……」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:31:57.91 ID:Rg3u98mHo

少女「普通のおじいちゃんでしたよ。うん、ごく普通の」

少女「物静かで、落ち着いていて……。優しくて、モノ知りで……」

少女「私の、大切なおじいちゃんでした」

男「…………」


少女「そんなおじいちゃんから聞いたんですね。私は、COMIKEのハナシを」

少女「もっとも、私が聞いたのは“コミケ”だったような気もしますが……」

男「ほーう。孫にCOMIKEのハナシをするとは、かなり変わったおじいちゃんだな」

少女「ええ、本人もそう言っていました」

少女「でも、私はそのハナシが好きでした」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:32:24.33 ID:Rg3u98mHo

少女「私には考えられないくらいのヒトが集まって……」

少女「その人々には、それぞれ一人一人に、目的が、嗜好が、人生があって……」

少女「自分のほんの人生の一部を見せ合い、認め合う」

少女「COMIKEはそんなところだと、おじいちゃんは話していました」


男「そんなキレイなモンじゃないぞ? COMIKEは」

男「色んなヒトが集まりすぎて、体臭はクサいし、変なヤツもやってくる」

男「昨日今日はマシそうだが、もし気温が上がれば、会場自体どうなるコトか」

少女「あはは。ソレについては、身をもって体感するコトにします」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:32:50.78 ID:Rg3u98mHo

少女「でも、伝え聞くCOMIKEの姿は、とても楽しそうで……」

少女「貸してもらったチャームや同人誌からも、その光景を想像していました」

男「お、おい……。お前のおじいちゃん、同人誌も持ってたのか?」

少女「ええ。その手のマニア、というワケではないようでしたが」

男「ちなみに聞くが、同人誌といっても、普通の本と変わらない健全なやつだよな?」

少女「いいえ? えっちぃのも多かったですが。えへへ」

男「えへへて……」

男「おじいちゃん。あなたは孫を、どんな風に育てたいんですか……?」

少女「ふふ。でも、ソレも、必要なコトだったのかもしれませんね」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:33:17.78 ID:Rg3u98mHo

少女「そしていつしか、私は、生でそのお祭に参加してみたい」

少女「そう思うようになりました」

男「だから、一昨日、ココに来たのか」

少女「ええ! その機会を手に入れた私は、それはもう、バビューンと!!」スッ…

少女「はるばるやってきたのですよ!!」シャキーン

男「……ふっふっ。エネルギッシュなヤツだ」

少女「ええ! 不肖私、元気なコトだけが取り柄なので!」

男「結構。だけどその元気も、二日目、三日目のいつまで保つかな?」

少女「いつまでも、ですよーっ!!」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:33:45.13 ID:Rg3u98mHo


少女「……ふう。話してたら、なんだか目も覚めました」コト

少女「さあ、男さん! 出発はいつにしますか!?」

男「そうだな、それじゃあそろそろ行くとするか」ガタ

男「だが、出来ればその前に腸の中のモノは出しておけ」

男「並び始めたら、待機列確定まではガマンしてもらうぞ」

少女「うぅ……。ちなみに、どうしてもダメだったら?」

男「喜べ。一気に十数万人の中のスターダムだ」

少女「そんなの喜べませんよーっ!!」

男「スターダストともいうな」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:34:13.55 ID:Rg3u98mHo


少女「ぐぅぅ……っ、そんなハナシしてたら、なんだか下ってきました」ゴロゴロピー

少女「では! ちょっと! おトイレお借りしますね!」ダダダッ

男「はいはい。……やれやれ、生理現象までニギヤカなヤツだ」


男「さて、アイツ薄着だし、防寒用のズボンも用意してやるか……」ガサガサ

男「それと上着。夏コミで追加の上着なんて、珍しいコトだが」

男「この雨だとレインコートじゃダメかもしれんな。使うかどうかは別にして、折り畳み傘か……」

男「あと、重要なのが防水カバー。戦利品を濡らすワケにはいくまい」ゴソゴソ


男「…………」ピタ
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:34:40.32 ID:Rg3u98mHo

男「雨の降り続ける世界、ね」

男「一日中昼だったり、夜だったり、凍ってたりする国ならまだしも」

男「ニワカには信じがたいハナシだ、が」ギュウギュウ

男「……アイツがウソをついているというワケでもないだろう」

男「……本当に存在するのか、そんな国が」

男「…………」


男「少人数で人々が暮らして、COMIKEも行えない世界か」

男「……ふん」

男「あまり、好かんな」ギュウギュウ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:35:07.05 ID:Rg3u98mHo


――アパート前の道路

少女「男さん! 今日も今日とて重装備ですね!」

男「雨だから、特にな。それに列待機用のジュンビもある」


ブロロロロロ

キキー


カパッ

運転手「どうぞ」
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:35:33.94 ID:Rg3u98mHo

少女「おっ! 昨日の運転手さん!」

運転手「またお会いしましたな」

男「この地区の担当なんですか?」

運転手「そんなところです。では、どうぞ」


ブロロロロロ…

バシャバシャ

運転手「今日はドシャブリの雨ですなあ」

男「ええ。雨の日は、やっぱり客足も遠くなるモンなんですか?」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:00.08 ID:Rg3u98mHo

運転手「いかにも。今朝は、お二人が最初のお客様で」

男「そうですか……。やっぱり雨の日はCOMIKEの人も少ないのかな」

運転手「経験則から言うと。ですが、しかし」

運転手「やはり行くヒトは行っておられますよ」

少女「私たちも今から行くところですもんね!」

男「お前、言っておくがそんなジマンするハナシじゃないからな……」

運転手「はっは。しかしこの十数年、COMIKEもずいぶん一般的になりました」

運転手「私としては喜ばしくも、フクザツでもありますな」

男(この運転手さんも、あるいは一家言あるヒトなのか……?)
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:27.19 ID:Rg3u98mHo


――秋羽原

ゴー

少女「やっぱり朝はスイスイですね」

男「夕方はえらく混んでたがな」

運転手「東狂という街の日常ですな。……と!」

プァーン


少女「あ……っ! 左手の路地から、別のクルマが!」

男「危ない、ぶつかる!!」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:36:54.72 ID:Rg3u98mHo

運転手「――――――ふ」

キキッ!!

シュゴオオオオオオオオ!! ジャバアアアア


少女「な……っ!」

男「ドリフト走行で、回避した……ッ!?」

運転手「ほっほ」ギュウウウウン

男「運転手さん、あなたはいったい……?」


運転手「東狂という街の日常ですな」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:37:22.21 ID:Rg3u98mHo


――豊州

少女「ちょっと、男さん! 何ですかアレは!」

少女「前方の水たまりが、毒沼のような瘴気を発していますよ!」


ゴポゴポ…


男「音がおかしい! アレ絶対入ったらダメージ受けるやつじゃん……!」

男「明らかに色もグレープ味のそれだし!」

男「運転手さん! 何かご存知ですか……!?」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:37:50.72 ID:Rg3u98mHo

運転手「ああ。アレは、いま話題の“土壌汚染”の影響ですな」

男「土壌汚染!? それってそんな殺人的な問題でしたっけ!?」

運転手「新市場予定地から漏れ出した化学物質が、突然変異して道路を侵食しているのです」

運転手「東狂という街の日常ですな」

少女「と、東狂とはいったい……!!」


運転手「さて、日が昇れば、行政が対処に動き出すでしょうが……」

運転手「我らは悠長に待っていられませんな」キキッ

シュバ!! シュババ!! シュババババババ!!!!!!
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:38:22.19 ID:Rg3u98mHo

男「た、ターンに次ぐターンで毒沼をかわしていく……!」

少女「車体は方向転換と、急失速、急発進を繰り返している……」

少女「なのに!!」


少女「サイドブレーキ脇の、紙コップに入れられた水が、一切こぼれていない……!!!」


運転手「一万一千回転まで」

運転手「キッチリ回せ!!」バッ!!

男「ソレは誰に向けて!?」

ブオオオオオオオオ…
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:38:48.95 ID:Rg3u98mHo


――鷲ントンホテル前

運転手「さて、今日もココで良かったですかな」

男「ありがとうございます……。あの、スゴいドライビングテクニックでしたね」

運転手「なんの。ココは峠でもなければ、張り合う相手もいない」

運転手「文字通り、ロートルの朝飯前ですよ。では」

ブロロロロロ…


少女「……なんで、ただのタクシー運転手さんに、あんなヒトがいるんですか?」

男「ううむ、わからん。東狂、おそるべし……」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:39:16.75 ID:Rg3u98mHo


――鷲ントンホテル 1029号室

友人「おやwww男氏、少女氏wwwヤケモーニンwwwwwwぴゃっwww」

白い死神「来たか。男とカノジョさん」

少女「おっはよーございまーす!!」

男「二人とも揃い踏みか。……だから、そういうんじゃないからな」


男「ていうか死神、今日はお前もいたのか?」

白い死神「ああ。昨日は初日だから、下見も兼ねて、早くに出てたが……」

白い死神「今日は二日目だからな。しかも雨だ。濡れネズミになるシュミは無い」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:39:44.26 ID:Rg3u98mHo

友人「それでは死神氏www最後の作戦確認をwww」

白い死神「ああ。まず今日は二日目、女性向けの日だ。さらにこの天気、低い気温」

白い死神「さして混むというコトはあるまい」

白い死神「だが、それでも待機列は既に徹夜組でごった返している……」

白い死神「主な大手は瞬殺と考えるべきだろうな」

友人「んんwwwCOMIKEの厳しい現実www」


白い死神「お前さんたちが狙う黒ずくめも、結構な大手だが……大丈夫か?」

友人「ダイジョウブかwwwダイジョバナイかでいえばwww断言はできないwww」

友人「COMIKEには常に例外が存在するwww」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:40:12.38 ID:Rg3u98mHo

友人「だがwwwその例外の中でwww最善を尽くすwww」

友人「それが我ら“戦士”たちのやり方wwwwww」

白い死神「さすが、ベテランは言うコトが違うね」


白い死神「じゃあ、黒ずくめはお前たちに任せるとして」

白い死神「俺たちは天帝をはじめとした商業作家の大手に波状攻撃を仕掛ける」

白い死神「いちばん人気は、おそらく、ボッチ系ラブコメの柑橘類だろうが……」

白い死神「今回、俺たちはココはトラッシュだ。リスクが高すぎる」

友人「委託もありますからなwww適切なリスクマネジメントと言わざるを得ないwww」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:40:46.51 ID:Rg3u98mHo

白い死神「俺も柑橘類の絵は好きなんだがな……」

白い死神「しかし、限5なら、派遣するのは一人で十分といえる」

白い死神「また、同じ理由で、企業もパスだ」

白い死神「企業といえば、昨日レジ1台で牛歩作ってたところもあるらしいから、恐ろしいハナシだ」

友人「それでも一時期に比べればwww企業の失態も聞かなくなったwww」

友人「スナオに喜ぶべきか、なんとするべきかwww」


白い死神「逆に今回速攻をかけるべきは、限3の行楽地だ」

白い死神「よほど在庫に自信があるのか、それともただのバカなのか……」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:41:17.97 ID:Rg3u98mHo

白い死神「開場一時間くらい経ってから行って、やっぱ限1にしましたー」

白い死神「なんて言われたら、たまったモンじゃない」

友人「自分の人気を適切に見極めるのもwwwサークル主の重要なスキルですなwww」

友人「謙虚すぎるのも、傲慢すぎるのもいけないwww」


白い死神「ちなみにお前は昨日、売れ行きはどうだったんだ?」

友人「んんwwwあの後、宅配便を利用しましたなwwwwww」

白い死神「余ったってコトね。やっぱオワコンじゃねえの?」

友人「委託は売れているからwww根強いファンはいると信じたいwww」
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:41:45.36 ID:Rg3u98mHo


少女「……お、男さん! 専門用語がバンバン飛び出していて、ワケがわかりません!」

男「別にわからなくてもいいよ。俺たちには関係の無いハナシだ」

少女「でも、気になりますよぅ……」

男「そうだな……。じゃあ、何が訊きたい」


少女「まず、二日目が女性向けの日、というのは?」

男「文字通りだな。二日目は、女性向け作品の頒布物が多い日だ」

男「そもそも、COMIKEは、開催日ごとに頒布物の傾向がある」

男「ちなみに一日目は小説・ゲーム・アニメ中心。三日目は……、男性向けだな」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:42:13.01 ID:Rg3u98mHo

少女「ほう。私がキョーミありそうな作品も、頒布やってますかね?」

男「そんなの知らん。自分の…………、……胸に訊け」

少女「……? ハイ、わかりましたとも」


少女「じゃあ、限5とか、限3というのは?」

男「限は限数のコトで、そのサークルで一人が一度に買える頒布物の数のコトだ」

男「たとえば限5なら、一人が一度に買えるのは5セットまで、となる」

少女「そんなの、あらかじめ決めておく必要あるんですか? 適宜対応すれば?」

男「決めておかないと、転売屋に在庫根こそぎ持っていかれるんだよ」

男「限数決まってないのを良いコトに、ダダコネられると、列も停滞するしな」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:42:39.10 ID:Rg3u98mHo

少女「なるほど……。色々と、メンドクサいんですね」

男「もしこんなコトを何も知らないCOMIKE初参加の大手なんか現れたら、大事故だろうな」

男「つまらん暗黙の了解で参加の敷居が上がるのも、如何なものかと思うが……」

少女「秩序と自由の兼ね合い、ですか」フーム

男「そんなところだ。まあ、売れるのがわかってるなら、限1にしてもらえると親切だな」

男「限1にすると、今度はアイツらファンネルが苦しむコトになるんだが……」

男「まあ、それでも転売屋なら、一度買って、二周目並んだりするけどな」

少女「むーぅ。二回以上並ぶのって、オッケーなんですか?」

男「マナーとして良くはないが、並んだヤツの顔一人なんて、覚えられないからな……。黙認だろう」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:43:06.88 ID:Rg3u98mHo


少女「それでは、柑橘類とか、行楽地っていうのは?」

男「それは、参加サークルの名前の隠語だ……。わからないなら、深く追究するな」

男「検索しても出てこないぞ! もし出てきても人違いだ!」

少女「別にしませんよ……」


白い死神「おっ、そろそろ始発の時間だぞ」

友人「んんwwwではwww出陣といきますかなwwwwww」

男「本当に、あの待機列に並ぶのか……。苦労しそうだな」

白い死神「お前らが並んでるとこ、まずは文字通り高みの見物と洒落込ませてもらうよ」
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:43:32.73 ID:Rg3u98mHo

少女「あれ? 死神さんは、列には並ばないんですか?」

白い死神「ああ。俺は7時半ごろ、サークル待機列から入場させてもらう」

少女「え……? 死神さん、サークル参加してたんですか?」

白い死神「いやいや、違うよ。コイツを使うのさ」ピラッ


少女「それは……、サークルチケット……!」

白い死神「ああ。始発組よりも、徹夜組よりも早く入場できる、魔法のチケットさ」

友人「んんwwwその言い方はwww」

白い死神「おっと、悪い悪い。本来そういう使い方じゃなかったな」
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:43:59.79 ID:Rg3u98mHo

白い死神「んじゃま、お三方。健闘を祈るぜ」ビッ

少女「ええ! 死神さんも、お目当てのモノが買えるように!」

白い死神「ああ。この白い死神の名にかけて、狙い撃つぜ」


――鷲ントンホテル前

男「雨、だな……」

少女「今朝からずっと、降ってますね……」

友人「んんwww待機列につくまで、傘は必須www」ブバッ

友人「ついでに今日の始発ダッシュも見ていきますかなwww」
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:44:26.75 ID:Rg3u98mHo


――シーサイド線 国際展覧場駅

始発組「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド

          コ ミ   ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」

スタッフ「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」


アナウンス『は し ら な い で く だ さ い』


                               ヽ`
                              ´
                               ´.
                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'                             ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
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              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
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271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:44:53.94 ID:Rg3u98mHo


ブアァァァァァァァァッ


少女「う……、ぐ。すさまじい、風圧……!!」

男「二日目だってのに、元気なコトだ……」

友人「ですが始発組は毎回、同じ人間とは限りませんからなwww」

友人「真に賞賛するべきは300人のスタッフ兵ですぞwwwwww」


ダン!! ガン!! ギン!! グチャァ ドン!!

始発組「ぶるああああああああああああああああああ」

始発組「なのはは完売しましたーー!!!」
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:45:20.15 ID:Rg3u98mHo


――LAMSON 国際展覧場駅前店

店員「ラーシャッセー」


男「今日はココで本格的に食糧調達していくか」

友人「ツナマヨとかいう邪道具材は悪ですぞwwwwww」

少女「ツナマヨもオイシイのに……。あっ、私イクラにしようーっと」ガシッ

男「やめておけ、生モノは腐りやすい。しかも今日湿ってるからな」

少女「えぇ? でもさすがに数時間じゃ……」

男「死にたいヤツだけ前に出ろ……」
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:45:47.71 ID:Rg3u98mHo

少女「やれやれ……」ポス

少女「あれ、ていうか商品棚、なんか食べ物減ってます?」

少女「ところどころに穴が……」

男「消費期限切れの早いモノは、即日入れ替えしてるだろうが……」

男「それでもやっぱり、減ってるな」

友人「んんwww昨日どれだけの人が食糧を買い求めたかは想像に難くないwww」

友人「むしろLAMSONの在庫入荷能力に感心せざるを得ないwww」

少女「ある意味ちょっとコワいですね」

男「戦いはこれからだ。さて、明日にはどうなってるかな……」
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:46:14.51 ID:Rg3u98mHo


――ビッグサイト周辺

男「さて、待機列の最後尾は、このへんか……」


スタッフ「COMIKEに参加される皆さんはコチラでーす!!」

スタッフ「東待機列と、西待機列に分かれてくださーい!」


少女「おや。二つの列のどちらかに分かれないといけないみたいですが」

少女「いったいどっちに並ぶんですか?」

男「むう……」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:46:41.50 ID:Rg3u98mHo

少女「……? 男さん、どうしたんですか?」

男「……いや、どちらにするべきか、と思ってな」

少女「え。男さんにも、列の意味わからないんですか?」

男「いや、列の意味はわかる。東ホールに行く待機列と、西ホールに行く待機列」


男「今回は大まかにいって、同人サークルが目当てなら、東ホール」

男「企業サークルが目当てなら、西ホールだ」

少女「なあんだ! ソレならカンタンじゃないですか!」

少女「黒ずくめさんは当然同人サークルでしたよね」

少女「ならば、東ホールに行く列でキマリです!」
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:47:08.23 ID:Rg3u98mHo

友人「…………、いや、少女氏www」ジジジ

友人「ここはあえて西ホールに行く列へ行く列を選ぶwwwwww」

少女「ええっ! どうしてですか!?」


男「なるほど……。西東、というワケか」

友人「いかにもwwwwww」

少女「え……。西東……、って、何ですか?」


友人「んんwwwこれはCOMIKE上級者の高等テクwww」

友人「たしかに本来、東ホール、つまり東館が目当てなら」

友人「当然東ホールに行く列を選ぶべきwww」
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:47:36.07 ID:Rg3u98mHo

男「だが、“東ホールに行く列のほうが早く東ホールに入れるか”、」

男「“西ホールに行く列のほうが早く東ホールに入れるか”は」

男「開催されるCOMIKEごとに傾向が違ってな」

友人「この場合、後者が“西東”と呼ばれるルートになるワケですなwww」


少女「えぇ……。東に入るのに、西から行ったほうが早いコトがあるんですか?」

男「ある。常識的に東に入るなら東からだから、東に待機列が殺到するコトが多い」

男「その結果、西のほうが空いて、西からのほうが東に入りやすくなるんだ」

男「実際、一日目の昨日はそうだったらしい」

友人「そして今日もwwwどうやらその傾向にある様子wwwwww」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:48:03.82 ID:Rg3u98mHo

少女「その傾向って……。どうしてそんなコトがわかるんですか?」

友人「それはwwwコレを聞いてみるといいですぞwww」ジジジ

少女「イヤホン……? ハイ、わかりました」

男「おい……」イラッ

友人「んんwwwこうみえて耳の穴は毎日洗っているwww」


スタッフ『こちら東待機列。西待機列の現状は?』

スタッフ『こちら西待機列。雨足は強く、人影もまばら』

スタッフ『東も雨はキツいが、既に待機列は長いな』
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:48:30.39 ID:Rg3u98mHo


少女「……こ、これは……!」

男「無線傍受か。なかなかハデなコトをやるな」

友人「んんwwwコレは死神氏の贈り物www」

友人「我は盗聴器を自作できるほどキカイには強くないwww」

男「だけどソレ、ちょっとヤバくないか? 見つかったらどうする?」

友人「死神氏にはwwwカン付かれたらキカイごと壊せと言われているwww」

友人「ですが、そもそもこの雨では傍受してる音なんて周りに聞こえませんなwww」

少女「おお……。なんか、キンチョー感出てきましたね!」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:49:04.41 ID:Rg3u98mHo

友人「とにかくwwwスタッフの無線によるとwww」

友人「今日も西待機列のほうが空いているwwwwww」

友人「つまり、西東が正解ですなwwwwww」

男「よし。じゃあ、西ホールに行く列に並ぶとしよう」


少女「しかしこの盗聴器。いったいどういう仕組みなんですか?」

友人「借り物なので我にも詳しいコトはわからないがwww」

友人「どうやら市販のトランシーバーを受信専用にしてwwwwww」

友人「かつ、周波数をスタッフが使っている数値に固定しているもようwww」

少女「へえ……。けっこうアナログなんですね」
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:49:31.36 ID:Rg3u98mHo

友人「ちなみに、西待機列のほうが、コンビニやトイレなどの施設もジュージツしていますなwww」

少女「え? 東待機列のほうは、無いんですか?」

男「ああ。人気ジャンルを狙う時は、東待機列に並ぶコトになるが……」

男「施設も無いし、日陰も無い。本当にタイヘンだぞ」

友人「そのため、仮設トイレなどの施設が当日のみ出現しますがwww」

友人「まさに最大手の名に恥じぬ威容を誇りますなwww」

少女「うへえ……。さすがに行きたくないなぁ……」

男「欲を出さなければいいんだ。欲を」

男「もっとも、本当に欲しい頒布物があるなら、なりふり構ってられないだろうがな」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:49:58.24 ID:Rg3u98mHo


署長「……?」ギロ


署長「おい、君」ポン

友人「あひぃっ!」ビクッ

友人「なっ、ななな、なんですかなwww」


少女「うっ!」

男「……!」


男「……、警察官か……」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:50:56.93 ID:Rg3u98mHo

署長「……いや。……君の持っている、この、黒いキカイ……」

署長「コレは、何かね?」

友人「んんんんんwwwwwwこ、コレはwwwwww」

友人「……そ、そう!」

友人「知り合いと連絡を取るためのトランシーバーですなwww」

署長「…………」ギロ

友人「んんんwwwwww」

友人「COMIKEではwww通信回線が渋滞しwwwケータイでの連絡もままならないwww」

友人「ゆえに一般人でもトランシーバーが重宝されるのですなwwwwww」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:51:22.59 ID:Rg3u98mHo


少女「……ちょっと。男さん。ポリスメンですよ……」

男「ああ……。ウワサをすればナントヤラ、だ……」

男「なんで警察って、会いたくない時に限って会っちまうんだろうな」

男「COMIKEだと本当に会いたいヤツには会えないのに」

少女「まあ、昨日から待機列の外、見回りしてましたからね……」


少女「……しかし、あのおまわりさん。すっごい威圧感だな」

少女「大家さんとはまた違った、別種の凄みを感じます」

少女「東狂のおまわりさんって、皆がああなんですか?」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:51:50.62 ID:Rg3u98mHo

男「いや……。いくら大都市の警察官でも、あんなのがゴロゴロはいないだろう」

男「あのヒトがたぶん特別なんだと思う」


署長「このあたりを管轄する警察署の署長だ」


少女「……!」

男「……き、聞こえてたんですか」ダラダラ

署長「COMIKEの開催にあたって、治安維持のため」

署長「私をはじめとした警官隊自ら会場近辺に赴き、都民の“保護”を行っている」


署長「……あまり、かぶいたマネはせんコトだ」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:52:17.20 ID:Rg3u98mHo

男「は……、はぁぁいっっっっっっ!!!」

少女「お、お勤めご苦労様です!!」ビシィッ

署長「うむ」


署長「君たちも、法律と法令を守って、健康的な営みに努めるように」


男「……は、はい……」


署長「それで、君」

友人「……ん、んんwwwなんですかなwww」

署長「……ふん。トランシーバーか……」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:52:52.64 ID:Rg3u98mHo

署長「たしかに、COMIKEでは、一般都民でもトランシーバーを重宝しているのを見るが……」

友人「…………」

署長「重宝、ね」フン


署長「諜報のマチガイではないかね?」

友人「……!!!」

男「……、…………」ダラダラ

友人「めめめ、めwww滅相も無いwww」

友人「コレはスタッフの中にいる知人と連絡を取っているだけにあるからしてwww」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:53:24.40 ID:Rg3u98mHo

署長「…………」

署長「……そうか。なら、構わないが」

友人「ほっ」


署長「だが」


友人「……!!」

男「……!」

署長「無線通信を傍受して存在や内容を漏らし、また窃用した場合は」

署長「国が定める電波法第59条に抵触するコトになる」
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:53:52.60 ID:Rg3u98mHo

友人「……、…………」

署長「もし当該行為が発覚し、物的証拠が提示された場合には」

署長「われわれ警察も。それ相応の対処を迫られる」

署長「ゆめ、忘れぬコトだ」

友人「りょ、了解でございまするwwwwww」

署長「……では」


ザッ、ザッ、ザッ…


少女「…………」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 18:54:19.23 ID:Rg3u98mHo

少女「…………あー、キンチョーしたぁー!」

男「はあ、はあ……。焦った……」

友人「んんwwwあやうく豚箱行きかと思いましたなwww」

男「友人、やっぱソレ使うの、やめたほうがいいんじゃね?」

友人「たしかにwww常用しないにしても、油断はキンモツですなwww」

少女「情報の漏洩は生死に関わる。まさに、戦場……」

少女「警察の方とこんなにカンタンにエンカウントするとは。気を抜けませんね!」

男「なんでお前は燃えてるんだ」

友人「ふとした行動が犯罪に繋がるのはコワいモノですなwww」
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