少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」

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91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:37:20.01 ID:Fzl9L1Z/o


――ビッグサイト 入口


                  l ̄ ̄li         ,.、        ll ̄ ̄l
     _______|__|l____,z_壬个爻_z、____l|__|______
     \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:、'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::::/
      \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/人\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/
        \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;//圭\\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/
       ,ィE\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::/イニニニニト、\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/
      , イ:l:l:E圭\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'/イ三三三三三三ト\;::'::;::'::;::'::;::'::;::/
   , イ:l:l::レ''´  ̄ ̄\;::'::;::'::;::':/iニニニニニニニニニニi\;::'::;::'::;::'/
  , イ:l:l::レ'´_____ l三三三liY\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/Yl三三三l _________
,イ:l::l::レ''´ \/\/\/i l三三三liil;;;;;/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \;;;;lil三三三l ト、\/\/\/\/\/
::l::レ''´∠二∠二∠, ヘ l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三lへヽ'二ヽ'二ヽ'二ヽ'二
−- 、 「 ̄l| l ̄ ̄l |升l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三lヒ|__イ「 ̄|三i三i三
   | l   l| l__l |干l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三l;;| i─‐i l |r-i|「r──‐


少女「おおーっ! アレは! アレこそは!!」

少女「COMIKEの象徴たる、東狂ビッグサイトですね!!」

男「COMIKEといえば、やっぱあの逆三角形だよな」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:37:51.45 ID:Fzl9L1Z/o


  ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

      ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ

    ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ


少女「うひゃぁーっ! 見渡す限りの、ヒト、ヒト、ヒト……!」

少女「朝の待機列もスゴかったですが、これは、比べモノになりません!」

男「ううん……。やっぱり実際にこれだけのヒトが動いてるのは」

男「いつ見ても、圧巻だな」

少女「いったい、これだけのヒトが、どこから来たんでしょうか?」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:39:43.55 ID:Fzl9L1Z/o

男「そりゃ中心は、首都圏近郊だろうが……」

男「なんといっても日本最大の同人誌即売会。北は北海堂、南は冲縄」

男「はては海外からも参加者が訪れるというハナシだ」

少女「海外からも……。他の国には、同じようなイベントは無いんでしょうか?」

男「あるにはあるだろうが。だが、数十万人規模となると、そうは無いだろうな」

少女「なるほど……。まるで観光地のお祭ですね!」

男「正しく祭だな。年に二度の大イベント、それが、COMIKEだ」

少女「むふぅー……。ソレに、私が、今から、参加できるんですね!!」

男「楽しそうだな」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 18:39:58.57 ID:njUXeR1e0
>>91
凝ったAAあって草
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:40:11.76 ID:Fzl9L1Z/o

少女「そりゃそうですよ! 夢にまで見た、リアルのCOMIKE!」

少女「ソレが今、目の前にあるんですから!!」

男「元気なのは良いコトだ」

男「だが、度を過ぎたヒートアップは禁物だ。そら」ポイッ

少女「わとと。これは……、スポーツドリンクですか?」

男「ああ。特に夏コミは、夏の気温と会場の熱気で、体力が激しく奪われる」

男「だから30分に一回くらいのペースで、こまめな水分と塩分の補給を心がけろ」

男「俺が何も言わなくてもな」

少女「……マジでスポーツみたいですね」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:40:50.13 ID:Fzl9L1Z/o

男「スポーツじゃない。戦いだ」

少女「……ええ。そうだったですね」キュポ

少女「んっ、んっ、んっ。……ぷはー! ただのスポーツドリンクなのにオイシイ!」

男「……わかってると思うが、あまり一気に飲むなよ」

少女「えっ! わ、わかってますとも! 資源は大切に!」

男「そうじゃなくてだな。まだストックはリュックにいくらかあるが……」

男「あまりヒンパンに便所に行かれると、困る」

少女「トイレですか……? 用を足すのは、早いほうですよ? お腹も強いし」

男「誰がそんなハナシをしろと言った。ちょっと、ついてこい」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:41:20.65 ID:Fzl9L1Z/o


――仮設トイレ前

ゾロゾロ ゾロゾロ…

ゾロゾロ ゾロゾロ…


少女「も、もう既に大量の行列が……!」

少女「コレはいったいどこに並んでるんですか!?」

男「別に会場の中じゃないぞ。ソコだ」ビッ

少女「ソコって。……ま、まさか……、トイレですか!!」

男「ああ。覚えておけ。人気サークルのコトを大手というが……」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:41:47.60 ID:Fzl9L1Z/o

男「COMIKEでの最大手サークルは、人気作家でも、大企業でもない」

男「―――トイレだ」

少女「ト、トイレ……。パっと見でも、数十人の列が、いくつかありますよ?」

男「こんなの序の口だ。これからもっと増える」

少女「えぇ……」

男「いちばんヒトが混む時間帯ともなると、1時間待ちとかにもなる」

男「さながら夢の国の人気アトラクションだな」

少女「な、なるほど……。さすがにトイレに時間取られたくはないですね」

男「だから一気にガブ飲みするなよ。女のお手洗い待ちはいただけん」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:42:15.51 ID:Fzl9L1Z/o

男「だけども、もし催したら、絶対に言えよ」

男「糞尿垂れ流し事件はカンベンだ……」

少女「またまたぁ。いちおう文化人の集まりですよ? そんなコトが……」

男「…………」

少女「……あるんですか」

男「行列は、長いからな。加えて炎天下。体調はすぐに崩れる」

少女「……食事中の方もいるかもしれないんですよ」

男「なら次はソイツの番だ……」

少女「シャレになってません」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:42:43.13 ID:Fzl9L1Z/o

男「とにかく、終了は16時。企業サークルはもう少し長く続くが……」

男「それまでは耐えられるように調子を整えてくれ」

少女「ラジャー。ちょっとやそっとで体調を崩す私ではありませんとも」

男「その慢心がクライシス。ボウシを渡しておく、外すなよ」ポフッ

少女「わふ。キャップですか、カッコいいですね!」キュッ

男「まあ、今日は気温が低いから、無用の長物かもしれんがな……」

男「あと頭痛がしたら、それは水分不足の影響だ。エンリョせずに俺に言え」

男「それと、タオルとウェットティッシュも持っておけ。……何故かはわかるな?」

少女「ハイ! 生乾きはヒドいものです!」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:43:11.96 ID:Fzl9L1Z/o

男「それじゃあ、会場に向かって歩いていくぞ」

少女「わっかりましたー。皆、あの逆三角形のタテモノに吸い込まれていきますね……」

男「別にあの逆三角形でCOMIKEやってるワケじゃないぞ?」

少女「え? そうなんですか?」

男「ああ。俺も最初はアソコでやってるモンだと思ってたが……」

男「実際は会議室になってる。COMIKE期間中はレイヤーの更衣室だったかな」

少女「……レイヤー??」

男「コスプレイヤーの略だ。コスプレをするヒトのこと、な」

少女「ああ。コスプレもCOMIKEの華だと、聞いたコトがあります」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:43:43.68 ID:Fzl9L1Z/o

少女「……おや? また新たな行列が現れましたね」

男「しかも複数ときたか……。こりゃ一つの案件じゃないな」

少女「片方はすぐ近くに吸い込まれていますね。これは……?」

男「……自動販売機か」

少女「ああ……。さすがに行列の長さが異常ですが、ナットクです」

男「まちがってもCOMIKE会場内で自販機を使おうなどと思うなよ」

男「この行列に並ばなければいけないのもそうだが」

男「たいていは売り切れ。その頃には行列も消えるがな」

少女「中身無けりゃタダのハコですね」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:44:10.41 ID:Fzl9L1Z/o

男「それに、よしんば飲み物を買うコトが出来たとしても」

男「出てくるのは、つめた〜い、じゃなくて、ぬる〜い、だ」

少女「ぬ、ぬる〜い……。イヤな響きですね」

少女「しかしどうして。炎天下で冷却機能がオシャカとか?」

男「いや、マシントラブルじゃあない」

男「単に業者がストックを追加したそばから売れていくからだ」

少女「最初から、つめた〜い、じゃないんですね……」

男「いつわりの表示だ。世の中なんてウソばっかりと知れ」

少女「世知ガラい世の中です……」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:44:37.62 ID:Fzl9L1Z/o

少女「だけど、となると、コッチの行列は?」

男「地平線の向こう側まで続いているな……。続く先は、東館か」

少女「東館?」

男「実際にCOMIKEを、つまりサークルが頒布を行っている場所だな」

男「となると、コレがその一つ、か……」


少女「あっ! 行列の向こうにケバブ屋さんが見えますよ! 行ってもいいですか?」

男「もう腹が空いたのか? さっき魚食ったばかりだろう」

少女「買い食いもお祭のダイゴミだと考えます!」

男「ああそう、好きにしろ……。だが、食べ過ぎるなよ」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:45:03.47 ID:Fzl9L1Z/o

少女「はーい! すいません行列のヒト、通りまーす!!」


ギュウギュウ

少女「んしょ、んしょ……。さすがに混みあってるなぁ」

参加者「……むふふ」ワキッ


男「おい」ガシッ

参加者「……!」アセッ

男「……ウチの娘に手を出すなよ」

参加者「……、……」フヒッ
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:45:30.28 ID:Fzl9L1Z/o

少女「んー? 男さん、どうかしましたかー?」

男「なんでもない。早く抜けろ」

男(満員電車でも痴漢は多いのだから、当然か……)

男「すいませんねー、失礼します……」


少女「ぷは。やっと抜けた!」

男「やれやれだ。しかしこのケバブ屋、毎年見るな」

男「なら、まあ信用しても大丈夫そうか」

少女「なんかヤバいモノ売ってるところもあるんですか?」

男「そうじゃないが、実際、無許可営業してる出店はあるからな」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:45:57.48 ID:Fzl9L1Z/o

少女「すいませーん、ケバブ一つくださーい!!」

ケバブ店員「はーい。今すぐ作りまー……」

ケバブ店員「って、あなた、昨日の?」

少女「え? ……あ、ああ! もしかして、昨日の大家さん!?」

男「ん……? あれ、大家さんじゃないですか」

男「いったいこんなところで何やってるんですか?」

ケバブ店員「おや、男さん、奇遇ですねー」

ケバブ店員「見ての通り、ケバブを売ってるんですよ」

男「いやソレは見ればわかりますよ!」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:46:24.29 ID:Fzl9L1Z/o

男「そんなコトを訊いてるんじゃないです」

男「どうして大家さんが、COMIKE会場で出店なんかを?」

ケバブ店員「……気になります?」フフッ

男「……やっぱいいです」


ケバブ店主「おいおいどうした、何かモメ事か?」

ケバブ店員「あっ、おとーさん。私のアパートのタナコさんですよ」

少女「はいっ! その通りです!」

男「お前が借りてるワケじゃないだろ」

ケバブ店主「おお、おお! そうか! ウチの娘が世話になってるみてぇだな!」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:46:50.87 ID:Fzl9L1Z/o

ケバブ店主「それでケバブ、注文してくれるのかい?」

少女「ええ! 香ばしいお肉の香りに誘われて、やって来ました!」

ケバブ店主「そうかいそうかい。じゃあ、肉ちょっとオマケしちゃおう」ゴリゴリ

少女「やったー!!」


ケバブ店員「……で、昨日会ったばかりの女の子連れて、デートですかぁ?」

男「そんなんじゃないですから。ただ頼まれただけで……、……」

男「…………あっ」

ケバブ店員「ふふ、墓穴を掘りましたね」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:47:21.46 ID:Fzl9L1Z/o

ケバブ店員「やっぱり見ず知らずの女の子を家に泊めている、と」

男「ちちち違う! やましいコトは何も……!!」

ケバブ店員「ふふっ、まあ私はどっちでもいいんですけどねぇー」

ケバブ店員「というか男さんにCOMIKE行くような趣味があったほうが驚きですが」

男「別に、何か目当てがあるんじゃないんですけど……」

男「何度か友達に誘われて。そして今日は、あの子ってワケです」

ケバブ店員「そんなところだとは思ってました。ふつう、目当てあるなら朝来ますよね」

男「大家さんは、朝からココに?」

ケバブ店員「そうです。結構売れますよ?」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:48:13.33 ID:Fzl9L1Z/o

ケバブ店員「もっとも、今はあの行列で客足が遮られて、商売あがったりですが……」

男「そういや、あの行列……。どこかの大手の列ですか?」

ケバブ店員「ううんと、よくわかりませんね。おとーさん!」

ケバブ店主「ん? どうした?」

ケバブ店員「ココの列、どこのサークルの列だか知ってる?」

ケバブ店主「ああ、この列な。たしか、アイドルマス……、なんたらの列らしいぜ」


ケバブ店主「はい、お嬢ちゃん。パンにレタスにトマトに肉」

ケバブ店主「落とさないで食べてくれよ」

少女「わっはー! ありがとうございますー!!」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:48:41.77 ID:Fzl9L1Z/o

男「アイドルマス……。あのシャンシャンするソシャゲか」

ケバブ店員「そうなんですか? で、一日目で関連してそうなサークルというと……」

ケバブ店員「ああ、そのソシャゲのキャラデザのヒトかもしれないですねー」

男「公式のイラストレーターが個人でサークルを出してるというコトですか?」

ケバブ店員「そうですね。でも初参加らしいので、手際悪いのかもしれません」

ケバブ店員「もしうまくさばけてるなら、こんな行列は出来ませんから」

男「……やけに詳しいんですね」

ケバブ店員「当然ですよ。イベントのスペース間借りして店出してるんですから」

ケバブ店員「何をやってるかくらいは情報収集しておくものです」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:49:08.44 ID:Fzl9L1Z/o

男「そうですか。……ありがとうございます」

ケバブ店員「いえいえ。良いってコトですよー」

ケバブ店員「明日も明後日も来るなら、ぜひ当店のご利用を!」

男「は、はは……。忘れるまで覚えておきますよ」


少女「はぐ、はぐ。ケバブおいひー」

男「ったく……。館内に入るまでには食っておけよ。舌かむぞ」

少女「んぐ。そーなの?」

男「ヒトが多すぎて食い歩く余裕は無いな。行けばわかる」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:49:35.32 ID:Fzl9L1Z/o

男「さて……。まずはどこに行く?」

男「友人の奴がいる館内か? それとも、タテモノの外でも周るか?」

少女「そういえば、この行列は何だったんですか?」

少女「けっこう歩きましたが、まだ先頭は見えませんね……」

男「うん……。有名なイラストレーターのサークルの列らしいが」

男「まあ、行列もCOMIKEの一つの要素、か……?」

男「よし。じゃあ、この行列の先頭まで行ってみるか」

少女「これだけのヒトが並ぶ行列……」

少女「いったい先には何が待っているのでしょうか!」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:50:02.72 ID:Fzl9L1Z/o


――行列 中央部分

少女「うぐ……。こ、この列、本当に終わりがあるんですか……?」

男「あ、あると、思いたいが……。さすがに長すぎるな」

男「さっきと同じ列を辿ってるのかすら不安になってきた」

男「この分じゃ、行列に並んでる本人たちは、もっと不安だろうな……」

少女「その、コレは一サークル参加者の方に並んでる列なんですよね?」

少女「本当にただの参加者さんのためだけに、これほど並ぶんですか?」

少女「実はさっきみたいにトイレに並んでるのでは……?」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:50:30.40 ID:Fzl9L1Z/o

男「いや……。大手サークルの列なら、これくらいは普通だ」

男「むろん、こんな行列が無数にあるワケじゃないが」

男「それでも、COMIKEの日程の中では、普通に発生するモノだ」

少女「す、スゴいですね……。これが、COMIKE」

少女「朝並んでたヒトたちの目的の一つはコレだったワケですね」

男「そういうコトだ。うう、足が痛くなってきた」

男「登山靴でなければ即死だった」

少女「スニーカーも動きやすいですよー!」

男「きっと行列の終着点はもうすぐだ。もう少し、歩くか……」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:50:58.78 ID:Fzl9L1Z/o


――行列 先頭

少女「おっ、行列が止まってる場所がありますよ! きっとココがゴールですね!」

男「はあ、はあ。な、長かった……」

少女「で、すが。しかし……」


参加者「新刊とグッズセット、3つずつお願いします」

売り子「すみません、さっき1限にしまして……」クビサワサワ

サークル主「急いでセット作らないと〜!!」

売り子「あ。お待ちの間に。名刺だけでも……」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:51:25.91 ID:Fzl9L1Z/o

少女「行列が! まったく進んでいません!!」

男「なるほど、渋滞の理由はコレだったか……」

男「初参加にありがちなミスといったところか」

少女「男さんは、サークルのほうにも詳しいんですか?」

男「まあな。友人の売り子として参加したコトもある」

男「だが、友人のサークルの規模なんぞ、大手とは比べモノにならん……」

男「見ろ。さっきから行列が、比喩じゃなく一歩も動いていない。コレはヒドい」

男「今回の横綱はココでキマリかもな」

少女「よ、横綱て……」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:51:54.69 ID:Fzl9L1Z/o

男「人気ゲームのイラストレーターなんだから、大手になるのは見えてたろうに」

少女「こういう不手際って、わりとあるコトなんですか?」

男「そうだな。本人の人気と、COMIKEの熟練度は、比例するワケじゃないし」

男「むろんCOMIKEへの参加を重ねて有名になったなら然りだろうが……」

男「人気かつ不慣れだと、こういう事態になるコトもある」

男「まあ、そんな不確定要素も含めて、COMIKEってところかな」

少女「今並んでるヒトたちが、無事に買えるよう願うばかりです……」


参加者「おい! ついさっき“サーキット”が始まったらしいぞ!」

参加者「マジかよ! 見に行こうぜ!!」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:52:21.62 ID:Fzl9L1Z/o

男「……!?」

男「サーキット、だと……?」


少女「どうかしましたか? 男さん」

男「……今、COMIKEへの参加を重ねて有名になったなら然り、と言っただろう」

少女「ええ、言いましたね。たしかに慣れてれば手際も良いかと」

男「どうやら、その手際の良い例が、今まさに“開催”されているらしい」

少女「開催……? あの、何が?」

男「行けばわかる。風を感じろ」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:53:12.34 ID:Fzl9L1Z/o


――サーキット会場

__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━
  /⌒ヽ                                                      __
二( ^ω^)二⊃          /⌒ヽ                 ┌┐.┌i   ┌┐  __ ┌┐  | | [][]
  |    /  /⌒ヽ ⊂二二二( ^ω^)二⊃            |└[][]L.ロロ | [][] | | ロロ |.[][] l└─┐
. ⊂二二二( ^ω^)/⌒ヽ   |   /               |┌┤.r‐┘│┌┘ | └┐└─┐l ̄ ̄
  ノ>ノ   ⊂二二二( ^ω^)二⊃ ヽノ     /⌒ヽ      └┘..凵   └┘  | l ̄__l ̄ ̄.┘
 レレ     ( ヽノ|    /   ノ>⊂二二二( ^ω^)二⊃                 └┘
        ノ /⌒ヽ ヽノ   レレ      |    /
  ⊂二二二( ^ω^)二⊃  /⌒ヽ     ( ヽノ                                  __
        |   ⊂二二二( ^ω^)二⊃ ノ>ノ              ┌┐.┌i   ┌┐  __ ┌┐  | | [][]
         ( ヽノ      |    /   レレ               |└[][]L.ロロ | [][] | | ロロ |.[][] l└─┐
         ノ>ノ       ( ヽノ                   |┌┤.r‐┘│┌┘ | └┐└─┐l ̄ ̄
     三  レレ        ノ>ノ                       └┘..凵   └┘  | l ̄__l ̄ ̄.┘
             三  レレ                                  └┘
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━


参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ

参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ

参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ

売り子「遅い! 遅いよ! 何やってんの!! 遅い、遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:53:42.54 ID:Fzl9L1Z/o


参加者「お前に足りないものは、それは! 情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さァ――――」

少女「うわっと!」ヒョイッ

男「す、すいません!!」

参加者「そしてなによりもォォォオオオオッ!! 速さが足りない!!」ドドドドドド

スタッフ「世界を縮めないでください!!!」


少女「……す、スゴい数のヒトが、タテモノの中にスゴい速度で突っ込んでは、出てきます!!」

少女「男さん!! コレはいったい!?」

男「見たか。これが、“サーキット”と呼ばれる現象だ」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:54:10.03 ID:Fzl9L1Z/o

少女「さ、サーキット……」

男「サーキットの中では、安全運転など許されない……」

男「最速の称号のみが絶対正義とされるのだ」

少女「COMIKEとは、速さを争う競技だったのですか!!」


男「……と、冗談はおいとくとしてだな」

男「大手には多くの参加者が行列を作る。しかし必然、列が延びても誰の利益にもならない」

男「ならば可能な限り、速く列をさばいてしまおうじゃないか」

男「……そうした思想のもと、生まれたのが」

少女「この、サーキットですか……」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:54:38.55 ID:Fzl9L1Z/o

少女「しかし、これだけ速いと、会計も難しいんじゃないですか?」

少女「頒布物はタテモノの中で渡してるとしても、お金はどこで……」

男「速すぎて見えないか……。タテモノの入口だ」

男「よく、目を凝らしてみろ」

少女「ん……? ……あ、アレは!!」


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125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:55:12.11 ID:Fzl9L1Z/o

少女「列に並んでいるヒトたちが、ものすごい速さで……」

少女「係員のヒトが持っているハコの中に何かを入れて……」

少女「そして、走り去っていきます!!」

男「リレーのバトンを手渡すがごとき、訓練された動き……」

男「その疾風怒濤は、サイセン箱、自動改札機、ETCレーンを思わせる……」

少女「質量を持った残像のようです! 今朝の始発ダッシュにも引けを取りません!」

男「この速さについてこれない者は、そもサーキットに並ぶコトすら許されない」

男「そして、彼らはスピードを極め、いったい何を為そうとしているのか?」

男「それが、それこそは、“コレ”だ」ピラッ
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:55:38.93 ID:Fzl9L1Z/o

少女「せ、千円札……!?」

少女「あ、あのスピードで! 入れているというのですか!」

少女「千円札を!!!!」

男「ああ。この大手サークルはそこまでわかっている」

男「千円札ならば支払いやすいというコトも考慮した上で、このサーキットを構築しているんだ」

少女「な、なんという……」


少女「なんという、オオゲサな……」

男「そうか? 列をさばく最適解の一つだと思うがな」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:56:06.00 ID:Fzl9L1Z/o


売り子「遅い、遅い、遅い、遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ

参加者「ぐああ!!」ドシャア

売り子「大丈夫? ちゃんと持って行ってね!! 遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ


少女「激突事故も起きちゃってるじゃないですか……」

男「クルマとナニガシは急に止まれないというからな」

男「だいたい、普段から運動してるヤツばかりが集まってるワケじゃない」

男「急に走ればこうもなるだろう。サーキットは強制参加だ」

少女「こりゃ明日は筋肉痛ですね……」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:56:33.71 ID:Fzl9L1Z/o

男「というか、そもそもCOMIKEで走るのは禁止だったりする」

少女「そーなんですか?」

男「体格の良いヤツが急に突貫してきたら、コワいだろう」

少女「たしかに……」

男「それでもサーキットが黙認されているのは、大手がゆえだろうな」

男「スタッフとしても、列が早くさばかれるに越したことは無いだろうし」

少女「ケースバイケース……。臨機応変というやつですね」

男「細かいコトをグチグチ言ってても列は消えないからな」

男「なお、競歩はゆるされている」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:57:00.61 ID:Fzl9L1Z/o

男「とまあ、同じ大手でも」

男「慣れていたり不慣れだったり、色々あるワケだ」

少女「本当に色んなヒトが参加してるんですね……」

男「ヒトとヒトとの交流こそが、COMIKEのホンシツともいえる」


男「それじゃあ、大手を見たところで、今度は小さいサークルにも行ってみるか」

少女「小さいサークル? ですか?」

男「ああ。大手のほうが話題になるが、イベントのメインは、おおよそコチラだ」

男「友人のサークルもソレに含まれる。見舞いがてら、行ってやろう」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:57:35.41 ID:Fzl9L1Z/o


――ビッグサイト 某所

少女「それで、友人さんのサークルはどこにあるんですか?」

男「ココ、東館の中だ。まずは館内に入る道を探す必要があるな」

少女「うわっ……。コレもまたスゴい行列ですね」

少女「さっきのイラストレーターさんの列でしょうか?」

男「いや……。ココは、フレンズの監督の行列らしいな」スイッ スイ

少女「……フレンズ?」

男「彼は行列を作るのが得意なフレンズなんだね」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:58:13.46 ID:Fzl9L1Z/o


――ビッグサイト 某所

少女「ココにもスゴい行列が……。だけど、進むのも速いようです」

男「わりと近くで終わってるみたいだな。……ん?」


セレブ妹「並んでくださってありがとう。グッズはもうありませんが、名刺だけでもどうぞ」

セレブ姉「あらセレブ妹さん、指の皮がめくれてしまいましたわ」


男「……あんなヒトたちもCOMIKEに来てるんだな」

少女「並んでるヒト全員に名刺配ってるんだ、スゴいねえ」

男「丁寧な対応だ。ゴージャス……、いや、ファビュラスというべきか」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:58:41.94 ID:Fzl9L1Z/o


――ビッグサイト 某所

売り子「いえーい! 満員御礼、全枚完売!!」グビグビ

サークル主「わははは!!」グビグビ


少女「もう頒布物が完売したんでしょうか? カンパイしてますね」

男「この時間で既に完売とか、相当な大手じゃないか……?」

少女「金色の、シュワシュワ……。ビールでしょうか」

男「COMIKEでは飲酒も禁止のハズだが……」

男「ま、コッソリ持ち込むくらい、好きなんだろう。ビール」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:59:09.63 ID:Fzl9L1Z/o


――東館 館内

男「よし、ここから館内に入れるな」

少女「ふーっ、外は曇ってたけど、中は冷房が効いてるからコレで涼し……」


少女「……くない!!!」ムシッ

少女「男さん! 屋内なのに涼しくありません! どういうコトですか!!」

男「俺に怒るなよ……。というか、なぜ屋内なら涼しいと思った」

男「むしろ、屋外より湿気高くないか? ムシムシしてないか……?」

少女「ぐ……。コレは、たしかに……」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 18:59:37.17 ID:Fzl9L1Z/o

男「それに、見ろ、この人の数を……」


ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ

ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ


少女「ココは……、何かブースがあるワケじゃないですね」

少女「大きい通路のようなモノでしょうか?」

男「そんな通り道ですら、コレだ。本来集まるべきは、ココじゃない……」

男「これだけ人がいれば、暑くなるのも当然だ。だが目的地は、さらに奥だ」

少女「ううぅ……。外の行列とは、またベクトルの違った、地獄ですね……」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:00:05.13 ID:Fzl9L1Z/o


――東館 ホール内

男「―――ここだ!!」


ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ

ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ


少女「おおー……、コレです! コレこそが!!」

少女「私がハナシに伝え聞く、COMIKEの姿!!」

少女「天井は高く、先の見渡せない広間に、床を埋め尽くすほどの人がいて……!」

少女「ロマン!! 人間の、ロマンです!!」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:00:32.54 ID:Fzl9L1Z/o

男「あー。喜んでるところ、悪いが……」


男「この中を通っていくんだぞ」


少女「……え?」

男「たしかに先の見渡せない広間だな」

男「たしかに床を埋め尽くすほどの人がいるな」

男「その中を歩いていくんだぞ」


少女「……マジですか?」

男「大マジです」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:01:00.63 ID:Fzl9L1Z/o

男「この先の見渡せない広間から、目的のサークルを見つけなきゃいけないし」

男「この床を埋め尽くすほどの人に流されず、進み続けなきゃならない」

少女「……ちなみに、友人さんのサークルは、どこに?」

男「うーん、このホールなのは間違いないが、中央あたりかな」

少女「……うげー」

男「伝え聞いたハナシと違う……、ってコトも無さそうだが」

男「とにかく伝聞じゃなくて、コレは、現実だ」

男「進み続けなければ、けっして勝利は無いぞ」

少女「……そうでしたね。ココは、“戦場”だと」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:01:29.00 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ようし! ならば、行ってやろうではありませんか!!」

男「おう、おう。その意気だ」


少女「男さ――――ん……! ココ、どこですか――……!?」

男「だから俺から離れるなと入場前に言ったろう!! コッチだ!」

少女「そういうコトですか――、ぎょえー! 待ってくださ――――い……!」


少女「あっ、アレは、ハナシに聞くレトロゲーの本じゃないですか!?」

男「レトロゲー言うな! 最近だろうが! よそ見をするな、前に歩け!」

少女「15年前を最近とは言いませんよぅ……」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:01:57.59 ID:Fzl9L1Z/o


――友人のサークル

友人「……お? もしやwwwその姿はwww」

友人「男氏と少女氏ですかなwwwwww」

男「ああ、そうだ。来てやったぞ」

少女「ひえぇ……、疲れたぁ……」

友人「んんwwwこれはご苦労様と言わざるを得ないwww」

友人「ファンの方に差し入れてもらったキンキンのコーラですぞwww」

少女「んっ、んっ、んっ……。……プッハー!! 生き返るー!!」ゲフゥッ

男「……おい、友人。お前、一人か?」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:02:26.81 ID:Fzl9L1Z/o

友人「んんwwwファンネルの方々は定期的に戻ってくるのですがwww」

友人「ピークが過ぎた今、売り子は我一人で十分と言わざるを得ないwww」

男「つまり、ボッチと」

友人「けっして我は友達が少ないワケではありませんぞwwwwww」


少女「……コレ、友人さんが描いた本なんですか?」ピラッ

友人「おうふwwwいかにもwwwwww」

友人「おにゃのこに自作のえっちぃ本見られて恥ずかしいwww」キャッ

男「お客さんの中に女のヒトがいないワケじゃないだろう」

友人「奴らは魂がオッサンですぞwww」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:02:55.74 ID:Fzl9L1Z/o

少女「……読んでも?」

友人「一向に構わないwww気に入ったら買ってくれると嬉しいですなwww」


少女「…………、…………」ピラッ ピラ


男「……食い入るように、読んでるな……」

友人「んんwwwこういった本が物珍しいのかもしれませんなwww」

男「確認するが、対象年齢は、いくつだ?」

友人「…………紳士淑女のための本ですなwww」

男「なんだその意味深な間は!!」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:03:25.33 ID:Fzl9L1Z/o

友人「もちろんwww既刊にはKENZENな本もありますがwwwwww」

友人「少女氏が手に取っているのはwww新刊のwww」

友人「……紳士淑女のための本ですなwww」

男「……はあ。こういうのにキョーミがある年頃なのかね」

男「女の子なら貞淑にしていてほしいモンだが」

友人「18歳以上ならwww正当な権利と言わざるを得ないwww」

男「だいたいこういうの、売るほうも恥ずかしいんだが?」

友人「んんwwwそれは男氏が界隈に不慣れなだけwwwwww」

友人「薄い本は売るほうもwww買うほうもwwwラブアンドピースですぞwww」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:03:53.50 ID:Fzl9L1Z/o

男「ていうかお前、まだこの作品の同人、描いてたのか」

男「たしかに有名なシリーズだが、もう流行りでもないだろう」

友人「んんwww作品を流行り廃りで見るのは外野wwwwww」

友人「真に作品を見るべき眼は、たしかな審美眼とwww」

友人「愛ですぞwwwwww」

男「ぐっ……。昔の作品の同人を作ってるお前に言われると反論できない」

男「だが、流行りの作品を題材にするのも悪くないんじゃないか?」

男「FG○とか、俺もやってるぞ?」

友人「たしかにFG○は我もやっているwww実際シナリオは面白いwww」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:04:25.46 ID:Fzl9L1Z/o

友人「だがwwwソレはソレwwwコレはコレwww」

友人「我の心身は、完全で瀟洒な嫁者に捧げしモノですからなwwwwww」

男「漢これやFG○の同人のほうが売れるんじゃないか?」

友人「そのように流行りになびくのは同人ゴロと言われざるを得ないwww」

友人「ですが、もちろんそういった作り手のコトも否定しないwww」

友人「好きな作品でなければ、そも同人を作るのは不可能ですからなwwwwww」

友人「だがwwwだからこそ、我は我の好きなモノを描くwwwwww」

友人「好きを表現していれば必ず振り向いてくれるヒトはいますなwww」

男「…………」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:04:52.58 ID:Fzl9L1Z/o

男「……お前、やっぱカッコいいよ」

友人「んんwww男氏に言われてもまったく嬉しくないwww」

友人「男氏がおにゃのこなら別ですがwwwwww」

男「ごめん、やっぱ死んで」

友人「おうふwwwwww辛辣wwwwww」


少女「…………友人さん」パタン

友人「少女氏www我の薄い本はどうでしたかなwww」

少女「……最後まで読ませていただきました。友人さんの考えてるコトが、よくわかりました」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:05:23.58 ID:Fzl9L1Z/o

少女「そこに積んである本、一冊ずつ全部ください」

男「!!!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!」

友人「おうふwwwwwwwwwwwwキタコレwwwwwwwwwwww」

友人「おっとっとwww我『キタコレ』などとついネット用語がwww」

友人「我はけっしてハルヒをリアルタイムで観た世代ではござらんのでwwwコポォ」

少女「友人さん、私感動しました」

少女「友人さんは、普段その飄々とした態度に隠しているけれど」

少女「本当は、とてもアツい情熱を持った、表現者なんだって」

男「いや、隠してるワケじゃないと思うぞ……」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:05:51.27 ID:Fzl9L1Z/o

友人「んんwww我の内なるリビドーを理解するとはwww」

友人「少女氏wwwなかなか見所のあるおにゃのこですなwww」

少女「えへへ……」

男「照れていいのか照れるところなのかソコは」

友人「だがしかしwwwこの薄い本は男性向けwww」

友人「女性の少女氏には実用性が低いと思われるwwwwww」

友人「良ければ二日目の女性向けサークルを紹介しますがwww」

少女「いいえ、そんなコトありません! 友人さんの本がいいんです!」

少女「それに……、」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:06:22.96 ID:Fzl9L1Z/o


少女「友人さんの本みたいなやつにもたくさんお世話になっていますから!!」


男「!?!!??!?!?!!*>E!*DE{‘WDQWDQ?!?!?!????」プッシュウウウウウウ

友人「男氏wwwwwwメルトダウンwwwwww」

男「ま、待て待て待て! 少女!!」

少女「ハイっ! なんでしょうか!?」

男「その、なんだ。お世話になってるのは、個人の趣味だし、5000兆歩譲っていいとしてだ」

友人「ずいぶん譲りましたな。大陸横断できますぞ」

男「そんな本持ってるの友達とかに見つかったらシロい目で見られるんじゃないかなぁ〜〜〜???」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:07:14.66 ID:Fzl9L1Z/o

少女「え? みんな持ってますよ」

男「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?!??!?!?!?!?!??!?!」

友人「男氏、男氏。泡吹いてる」

男「お、俺が知らぬ間に、昨今の女子高生の性事情はそこまで進んでいたとは……」

友人「んんwww男氏、そのセリフが既に薄い本みたいwww」

男「あー、わかった。じゃあ俺は何も言わん。好きなだけ買うといい……」

少女「やったー!!」

友人「新刊1冊、既刊3冊で2000円ですなwww」

少女「ありがとうございます! あの、これよりも前の続きってありますか?」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:07:43.02 ID:Fzl9L1Z/o

友人「あるにはあるがwww少し前のCOMIKEで頒布を終えているwww」

友人「だがしかし家に売れ残りがあるかもしれないwwwwww」

友人「探してみてあれば、郵送するのもやぶさかではありませんなwww」

少女「ありがとうございます! 何から何まで……」

友人「んんwww直に感想をぶつけてくれる読者への返礼は惜しまぬ故www」


男「おれが おもってるよりも せかいは ひろいんだなあ  byおれ」

友人「男氏www少女氏の同人誌、リュックに入れておきますぞwww」ポフッ

男「戦利品入れは……、こっちの手提げバッグだ……」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:08:09.99 ID:Fzl9L1Z/o

少女「あー、いい買い物しちゃったなあ!」

少女「ねえ友人さん、ココにはこんな本が他にもいっぱいあるんですか!?」

友人「んんwwwいかにもwww」

友人「自分の欲しい頒布物を狙い撃ちするのもCOMIKEですがwww」

友人「クレイモア覚悟で表紙買いするのも、タシナミの一つwwwwww」

少女「ですって男さん! 探しに行きましょう、新たな出合いを探しに!」

男「まじか……」


友人「男氏wwwなかなかハードなおにゃのこに捕まりましたなwwwぴゃっ」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:08:36.90 ID:Fzl9L1Z/o


――とあるサークル

サークル主「全部で、1500円になります」

少女「1500円ですね! ええと、お金、お金」

少女「あっ、一万円札しかない……」

サークル主「あはは、大丈夫ですよ。お釣り用のお金もいくらかありますから」

男「いや、待ってくれ。小銭なら俺が持っている」

少女「男さん!」

男「1500円ですね? 千円札と、百円玉が5枚でも構いませんか?」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:09:04.83 ID:Fzl9L1Z/o

サークル主「3,4,5……、はい、たしかに1500円ですね! ありがとうございました!」

少女「ありがとうございましたー!!」


男「ったく……。ちょっと、サイフを貸せ。そろそろ小銭を補充する」

少女「何から何まで……。男さん、いつの間に千円札や小銭のジュンビを?」

男「昨日お前から金を借りた段階で、両替は済ませておいた」

男「既に気付いていると思うが、COMIKEでは、単価500円や1000円程度の頒布物が中心だ」

男「そこで万札や五千円札を使われると、お釣りを出すのもタイヘンなんだ……」

男「むろん、そういう事態も想定して、サークル側はお釣りの小銭も多めに用意するがな」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:09:39.40 ID:Fzl9L1Z/o

少女「なるほど……。たしかに、サーキットでも皆、千円札を既に用意していましたね」

男「だが、小銭が多く出るコトを逆用して、ちょっとしたサギも横行する」

男「コレを見ろ」キラーン

少女「これは……。100円玉ですか? 100って書いてあるし」

少女「でも、あれれ? なんか100円玉とはフンイキ違いますね?」

男「これは、100円硬貨じゃない。“100ウォン硬貨”だ」

少女「100……、ウォン……?」

男「韓国の通貨だな。日本円換算で、およそ10円だ。コレを支払いに混ぜて使うヤカラもいる」

少女「となると、だいたい10分の1の価値……」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:10:06.92 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ガチ犯罪じゃないですか!!」

男「過去のイベントでは、偽札が使われたコトもあったらしいな……」

男「で、偽札だと思ったら、実は現行でも使える旧札だったり……」

少女「お金絡みのトラブルも……、多いんですね……」

男「現金がやり取りされる場だからな。気をつけなくちゃいけない」

男「いま立ち寄った、島中のサークルならまだしも」

男「壁やシャッター際のサークルは、どうしてもお金の確認がオザナリになるからな」

少女「島中? 壁……?」

男「ああ、ソレもついでに説明しておくか」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:10:34.68 ID:Fzl9L1Z/o

男「このあたりのサークルは、長方形を囲うように机が四辺に配置されているだろう」

男「この長方形のカタチを指して、“島”と呼んでいる」

少女「同じカタチのブースがいくつも点在するのが、たしかに島みたいですね!」

男「島に配置されるのは、主に小規模から中規模程度のサークルだ」

男「もちろんソレに比例して、対象のサークルの数も多い」

男「このように、ホールは一面、何百何千という島のサークルで埋め尽くされる」

少女「お目当てのサークルがあるなら、見つけ出すのも一苦労ですね……」

男「そのために、事前に販売されている、COMIKEの公式カタログがあるんだがな」

少女「もっとも、フリーで良さそうなサークルを物色するのも、十分にタイヘンですが!」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:11:03.56 ID:Fzl9L1Z/o

男「で、島の対義語として、“壁”がある」

男「これは名の通り、壁際に配置されているサークルのコトだ」

少女「行列が出来てたのも、ほとんどは壁際のサークルでしたね」

少女「何か関係があるんですか?」

男「関係があるというか、行列が並ぶから、壁に配置されるんだ」

男「島中でこんな肉の血栓を作られたら、他のサークルにメイワクだろう?」

男「だから壁に設営して、列は外に並べ、というワケだ」

少女「壁サークルは人気のアカシ、というワケですね」

男「壁に配置されるのはCOMIKEサークル参加者の一種のステータスだな」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:11:32.00 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ぐ〜〜〜……」

少女「うっ」

男「……ん? お前、今……」

少女「へっ!? ななな、なんですか?」

少女「お、お腹の音ですか!? わわわ、私じゃありませんよ!」

男「お前以外に誰がいる……」

男「というか寝言でも言ってたが……」

男「お前、けっこうな大食いだな?」

少女「ギクリ」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:11:58.27 ID:Fzl9L1Z/o

少女「そそそ、そうですかねぇ〜? これくらい普通だと思いますよぉ?」

男「朝飯に魚をあれだけ食って、途中ケバブをつまんで、なお空腹……」

男「ソレを普通とは言わんと思うがな?」

少女「ぐぅ……。まあ、他人よりは、少しは多く食べるかもしれませんね」

少女「少しですよ?」

男「わかったわかった」

少女「なんで半笑いなんですかぁ!!」

男「まあ、時間としては、良い頃だろう。また鷲ントンにビュッフェ食べに行くか」

少女「やったー! バイキング、バイキング!」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:12:25.96 ID:Fzl9L1Z/o

男「現金な女だこと……」

男「それじゃあ、一度会場を出て、ホテルに戻るぞ」

少女「ハイ! ああ、良い買い物しちゃったなぁ……!」

男「既に同人誌、十数冊か……」

男「水は減ったが、またリュックに重みを感じてきたぞ」


少女「おっ! 行きと違って、人がけっこう減ってきましたね!」

男「COMIKEの本番は、開場から、おおよそ昼までだからな」

男「昼頃には大手の頒布物も概ねハケる」

男「エンジョイ勢が乗り込むなら、それからだな……」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:12:53.99 ID:Fzl9L1Z/o


――鷲ントンホテル レストラン

男「大人2人です」

受付「ありがとうございます。それでは、ご自由に料理をお取りください」


少女「おっ、朝と違って、人も多いですねえ……!」

男「昼時だからな。もっとも、ビッグサイトの混み様とは、比べるべくもないが」

少女「お昼はローストビーフやってるみたいですよ! いいですか!?」

男「ビュッフェなんだから好きなように取れ」

男(肉も、魚も、コダワリは無しか……)
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:13:22.88 ID:Fzl9L1Z/o



少女「男さぁん! 取ってきましたー!!」

男「よし、俺も終わった。じゃあ、ソコに座って……」

少女「……? どうかしましたか?」

男「……お前、皿の上が一面まっ茶色なんだが」

少女「ふふん! 肉は元気のミナモトですよー!!」

男「だからといって肉だけ取る奴があるか! 栄養バランスを考えろ!」

少女「えっ……。でも野菜とか、だいたいマズくないですか?」

男「こんなところの野菜がマズいワケがないだろう!?」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:13:51.45 ID:Fzl9L1Z/o

男「引き返せ! 一度取ったモノを戻せとは言わんから」

男「野菜と、あとコメかパンも取ってこい!」

男「それと果物だ! 食後のフルーツも持ってきなさい!」

少女「ちぇー。わかりましたよっと。うるさいなぁ」

少女(でも、やっぱり、お母さんみたいだなあ……)


男「取ってきたか?」

少女「ええ。マコトに遺憾ながら、空前絶後のヘルシー盛りです」

男「茶色面積7割で自称ヘルシーとはお笑いだな」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:14:19.28 ID:Fzl9L1Z/o

少女「では、いただきます」

男「うん。さすがに一流ホテルのビュッフェだけあって……、昼もうまいな」モグモグ

少女「おっ! 野菜もオイシイじゃないですかー!!」ムシャムシャ

男「だから言ったろう。お前は今まで何を食ってきたんだ……」

少女「焼き飯もヒエヒエかと思いきやパラパラでオイシイですねえー」

男「ピラフだろう」

少女「もちろんローストビーフも! でも、ローストビーフって、取る時」

少女「肉切ってるヒトにニラまれるから、あんまり多く取れないですよねー!」

男「わかるよ。わかるが、デカい声で言わんでくれ……」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:14:47.36 ID:Fzl9L1Z/o



少女「ぷっはー! ごちそうさまでしたー!」

男「あれだけの量を食いきったか。よく食べる……」

少女「食べれる時にたくさん食べないと、ですね!」

男「そのわりには、体形は引き締まってるようだが」

少女「体質でしょうか? まあ、食後の運動くらいはちゃんとしますが」

男「健康で良いコトだ。それじゃあ、この後どうする?」

男「疲れたし、もう家に戻るという手もあるが……」

少女「なーにを言ってるんですか!!」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:15:14.35 ID:Fzl9L1Z/o

少女「私はまだまだ元気ですよー! いざ、第2ラウンドです!!」シュッシュッ

男「その無尽蔵の体力はどこから湧いてくるんだ……」

男「まあ、三日間通してその意気でいられるかは、見物だな」

少女「目にモノ見せてやりますとも!」


男「やれやれ。といっても、一日目終了まで、あと2時間くらいか?」

男「目的は絞れよ。寄り道が過ぎると、すぐに時間は経つからな」

少女「なるほど。では計画的に、かつ衝動的に!」

男「どっちなんだ……。いや、お前なら何故か実行できそうな気がするな」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:15:40.71 ID:Fzl9L1Z/o


――東館 ホール内

男「……お、重い…………」ズシッ

少女「なんか、買い終わった本を入れてたら、リュック膨らんできましたね……」

少女「私も少し持ちましょうか……?」

男「い、いや……。動き回るお前が持っちゃ、他のヒトにメイワクだろう……」

男「俺のコトは気にするな。お前は、先に行け……」

少女「いやいやいや! ソレは確実にダメなやつじゃないですか!?」

男「お前がどこまで知識持ってるのか、いまだにイマイチ掴みかねるよ」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:16:08.41 ID:Fzl9L1Z/o


少女「さて、めぼしい本はあらかた、買ってしまいましたが……」

男「健全なのも、そうじゃないのも買ったが、コイツにとってのめぼしい基準とはいったい……?」

男「まだまだわからないコトだらけだな」

男「昨日会ったばかりだから、当然だが」

少女「今日売ってるモノは、だいたいこんな感じなんですか?」

男「いいや。西館に行けば、企業サークルの頒布物もあるが……」

男「まあソッチは、朝のうちに売り切れてるだろうな」

男「だけど本じゃなくて、アクセサリーや自作CDなんかを売っているサークルもある」

男「見に行ってみるか?」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:16:37.27 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ええ! ぜひとも!!」

男「わかった。じゃあ、このホールを出て、通路の向かいのホールに入れ」

男「その後は、また別の離れのホールだな」

男「金は……、まだまだあるな。俺のじゃないけどな」

少女「わっかりましたー! いざ、突撃!」ダダダ


スタッフ「ちょっと、ソコの女の子! COMIKEでは走らないでください!!」

少女「うわっと! すみません!!」


男「はは、バカめ。怒られてやんの……」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:17:05.27 ID:Fzl9L1Z/o


――東館 館内

少女「たっはー!! いっぱい買っちゃいましたー!!」

男「買っちゃいましたーじゃないぞ、お前……。ああ、重……」

少女「やっぱ少し持ちますよ。男さんだけには任せられません」

男「そうか……。じゃあ、こっちのアクセサリー袋を頼む」

男「コワレ物だ。あんまり持って走り回るなよ」

少女「了解です。こう見えて、危険物処理は、お手の物でして……」


ピンポンパンポーン
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:17:31.96 ID:Fzl9L1Z/o

少女「……? アナウンスですか。何でしょう?」

男「ああ……。来たか、この時が」


パチパチパチパチパチパチパチパチ


少女「わわっ! 皆、拍手しはじめましたよ! これって……!」

男「ああ。そういうコトだ」


アナウンス『これにて、COMIKE 92 一日目を終了します』

アナウンス『皆さん、お疲れ様でした。残り二日も頑張りましょう』
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:18:06.08 ID:Fzl9L1Z/o

ピンポンパンポーン

パチパチパチパチパチパチパチパチ


少女「ああ……。終わったんですね」パチパチパチ

男「いや、まだだ。まだ、一日目が終わったに過ぎん」パチパチパチ

男「本当の戦いはこれからだぞ」

少女「ええ。わかっていますとも!」


少女「そういえば、この後、サークルの参加者さんたちはどうするんですか?」

男「ん? そりゃあ、俺たち一般参加者は、ただ帰るだけだが……」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:18:33.90 ID:Fzl9L1Z/o

男「サークル参加者は、設営を撤収する作業も残っているな」

少女「友人さん、大丈夫でしょうか?」

男「何度も参加してるから大丈夫だと思うけどな」

男「まあ、アイサツくらいはしてやるか」



――友人のサークル

男「おーい、友人。生きてるかー?」

少女「友人さん! お昼ぶりです!」

友人「これは男氏、少女氏www無事で何よりですなwwwぴゃっwwwwww」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:19:00.93 ID:Fzl9L1Z/o

友人「それであの後、良い買い物は出来ましたかなwww」

少女「んもー、バッチリです!! 気になる本とか、グッズとか、いっぱい買えちゃいました!」

友人「んんwwwそれは何よりwww」

男「はたしてコレで良かったのか……」


白い死神「おい友人ー、ダベってないでゴミ片付けてくれよー」

友人「んんwwwこれはwww申し訳ないwwwwww」

男「お、白い死神か。お前も、毎回ご苦労なコトだな」

白い死神「あれ、男? 今回も来てたのか?」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:19:29.74 ID:Fzl9L1Z/o

男「いや、本当は不参加のつもりだったんだが……」

男「この子が、どうしてもCOMIKEに行きたいっていうんでな」

少女「こんにちは! 友人さんの、ご友人ですか!?」

白い死神「ああ、そうだ。今回はコイツ専属のファンネルでやらせてもらってる」

白い死神「“白い死神”って者だ。ヨロシクな」

少女「白い死神……? たしかに見た目、白いカンジですけど……」

友人「彼はwww通称“ビッグサイトの白い死神”wwwwww」

友人「狙った頒布物は必ず狙い撃つといわれるwww凄腕ファンネルですなwww」

白い死神「必ず狙い撃つといわれる、じゃない。必ず狙い撃つんだ」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:19:56.77 ID:Fzl9L1Z/o

少女「なるほど……。スナイパーの方ですか……」

少女「ちなみに、仕留めた敵のご遺族の方から恨みを買ったりは?」

白い死神「はっはっは! たしかに買えなかったヤツから恨みを買うコトはある!」

白い死神「だが、だからこそ転売はしないし、逃げも隠れもしない」

白い死神「その象徴が、この白い服なのさ」パリッ

少女「狙撃手でありながら、歴とした戦士でもある、というコトですね」

少女「……感服します」スッ

白い死神「おいおい、オオゲサだな。単に早くに並んで頒布物買ってるだけだぜ?」

少女「いえ。COMIKEに参加される方々には、敬意を払うべきだと思っていますので」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:20:24.23 ID:Fzl9L1Z/o

男「それで、白い死神。今日の釣果はどうだった?」

白い死神「上々だな! 友人のヤツに頼まれた依頼はすべて完遂した」

友人「まったくありがたいですなwwwwww」

白い死神「今回は、列が長くなりそうな大手は他のファンネルに任せて」

白い死神「俺自身は信用できる大手を複数回る作戦だったんだが……」

白い死神「コレが大当たり! 初参加の大手の列の、長いコト長いコト」

白い死神「案外列を早くさばいた新参の大手もいたのは予想外だったがな」

白い死神「その後は、しつこく島中を爆撃して、俺の目当ても買って、終わり」

男「まったく。お前もお前で、COMIKE、エンジョイしてるな」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:20:52.34 ID:Fzl9L1Z/o

白い死神「それよりも、男。どうしたこの子は? アキバで引っかけてきたのか?」クイクイ

男「……ホント、出会うヤツ出会うヤツ、マジで全員同じ質問するな……」

男「だからそんなんじゃないって。……実は、俺の姪っ子なんだ」

白い死神「うわウソくさ」

男「ちっ……」


黒ずくめ「友人さん、お疲れ様です」

友人「おうふwww黒ずくめ氏、お疲れ様ですなwww」

白い死神「黒ずくめちゃん、今日もイケメンだねー」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:21:24.08 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「茶化すな死神。それよりも、朗報だ」

白い死神「あっコレ絶対朗報じゃないやつ」

黒ずくめ「ほらお前、ツイに写真アップされてるぞ。昼ごろ、戦利品チェックしてただろう」

白い死神「え? ……うわ、マジじゃん! 俺が写真撮ってるところを撮られてる!」

友人「どれどれ……、『白い死神、今日の大手の頒布物ほとんど持ってる……震える……』wwwwww」

白い死神「かーっ! 有名人はつらいわー、かーっ!!」


少女「友人さん、ホントに友達いっぱいいたんですね……」

男「アイツ、ああ見えて交流広いからな」

男「やはり時代は動けるオタクか……」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:21:51.24 ID:Fzl9L1Z/o

友人「あ、そうそうwww少女氏www」

少女「はいっ!? 何でしょうか!」

友人「こちら、黒ずくめ氏wwwwww」

友人「昼ごろに言ってた、我の知り合いの二日目の女性向けサークルの方ですぞwww」

黒ずくめ「おや。貴女が、友人さんのおっしゃっていた……」

黒ずくめ「初めまして。ご紹介に預かった、黒ずくめです」

少女「えっ!? あっ、ハイ!」ビクッ

少女「どどど、どうも。よよよよろしくお願いします」ドキドキ

男「何をビクビクしてるんだ」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:22:19.02 ID:Fzl9L1Z/o

少女「だだだだって、男さん! 黒ずくめさん、スゴいイケメンなんですもん!!」

黒ずくめ「あはは。言いすぎですよ」

男「…………」


男「……黒ずくめさん。あんたその服、まさかフォーマルスーツでCOMIKEに来たワケじゃないよな」

男「というコトは、レイヤーか?」

黒ずくめ「ええ。今日はコスプレエリアで、コスプレをしていました」

男「……重ねて訊くが、男が黒ずくめのコスプレなんてしないよな?」

黒ずくめ「はい、その通りです。お察しの通り、男装レイヤーですよ」

少女「えええっ!! ……お、女のヒト、ってコトですか!?」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:22:46.23 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「そうですよ。似合っていますか?」

少女「似合ってるも何も……。ほ、本当に男のヒトだと思いましたよ!!」

黒ずくめ「ありがとうございます。イチバンの誉め言葉ですよ」ニコ

少女「うっ……。い、いえ、コチラこそ……」ドキドキ


男「……なあ、友人」

男「どんどん少女がアブナイ領域に引きずりこまれてる気がするんだが」

友人「んんwwwCOMIKEは参加者のカルマを映す鏡www」

友人「少女氏が初めからそれだけの宿業を背負っていたというだけのハナシですなwww」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:23:13.73 ID:Fzl9L1Z/o

友人「さてwwwwww男氏www少女氏www」

友人「黒ずくめ氏は明日、二日目にサークルを出されるんでしたな?www」

黒ずくめ「はい。今回も、自作の同人誌を出させていただきます」

少女「ち、ちなみに、どんな同人誌を……?」

黒ずくめ「ふふ。当日のヒミツ、というコトで」


友人「というワケでwww我は明日の朝、黒ずくめ氏のサークルに並ぼうと思うのですがwww」

友人「男氏と少女氏も一緒にどうですかな?wwwwww」

少女「えっ! 私たちも、黒ずくめさんのサークルに並ぶんですか!?」

男「おい、友人。ちょっと待て」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:23:45.18 ID:Fzl9L1Z/o

男「黒ずくめさん、あんたのサークルはどこだ。島か? 壁か?」

黒ずくめ「センエツながら、壁でやらせてもらっています」

男「……なら必然、始発と同時に並ぶ、というコトになるな……」

友人「何か問題がありますかな?www」

男「いや、俺としては問題無いが」

男「心配なのは少女だ。コイツは、COMIKE初参加だぞ?」

男「今日も安全策を取って、昼から会場に入った」

男「なのに、いきなり二日目で、待機列に並んでも大丈夫なモノか……」

少女「男さん……」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:24:11.62 ID:Fzl9L1Z/o

少女「心配してくださってありがとうございます」

少女「でも、私は大丈夫ですよ!」

少女「今日一日で、COMIKEのフンイキは掴みましたし!」

少女「今なら、朝から待機列にだって、並べる気がします!!」

男「…………」

友人「男氏www少女氏が心配なのはわかりますがwww」

友人「少女氏はCOMIKEに来るというチャレンジを既に行っているwww」

友人「何事もチャレンジですぞwwwwww」

男「…………」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:24:39.68 ID:Fzl9L1Z/o

男「……そうか」

男「なら、わかった。いいだろう」

少女「男さん!!」

男「ただし! 明日に備えて、今日は早く寝ること」

男「待機中は必ず俺の指示に従うこと」

男「……いいな?」

少女「ええ、もちろんですとも!!」

友人「明日は我も一緒に並びますからなwww」

友人「共に頑張りますぞwwwwww」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:25:07.10 ID:Fzl9L1Z/o

黒ずくめ「あの……、男さん」

男「なんだ?」

黒ずくめ「大丈夫でしょうか、彼女……」

黒ずくめ「ジマンじゃないですが、僕の列には、かなり人が並びます」

黒ずくめ「明日の天気もどうなるかわからないし、やはり初参加では……」

男「いえ、黒ずくめさん」

男「俺が許可を出したからには、最後まで責任を持ちますよ」

黒ずくめ「……そうですか」

黒ずくめ「彼女を、よろしくお願いしますね」
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:25:35.16 ID:Fzl9L1Z/o


白い死神「おい友人ー、撤収作業終わったぞー」

友人「んんwww死神氏wwwありがたいwwwwww」


友人「では、我らはこれにて失礼いたすwww」

友人「男氏、少女氏、黒ずくめ氏wwwまた明日会いましょうぞwww」

男「ああ。明日行く時は、またホテルに寄るよ」

友人「大歓迎ですぞwwwwwwぴゃっwww」

白い死神「俺は明日もファンネルとして行動する。ココで会ったら、またヨロシクな」

少女「ええ! 二日目で、また会いましょう!」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:26:02.40 ID:Fzl9L1Z/o


男「さて、俺たちも帰るか」

少女「そうですね。黒ずくめさんは?」

黒ずくめ「僕も着替えたら帰ります。皆さんは、お先にどうぞ」

少女「着替える……? 何でですか?」

男「COMIKEでは、会場の外でのコスプレは禁止されているんだ」

男「だからコスプレイヤーは、会場で衣装を着て、会場で衣装を脱がなきゃならない」

黒ずくめ「そういうコトですね」

少女「…………」ウズウズ

男「……?」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 19:26:30.67 ID:Fzl9L1Z/o

少女「ちなみに、黒ずくめさん! 今日のお泊まりは、どこに?」

黒ずくめ「えっ……。都内のホテルですが」

少女「なら、私たちがタクシーで送っていきますよ!」

男「おい……」

少女「いいじゃないですか。お金は私持ちなんですから!」

男「……そうだったな。なら、俺からは異存は無い。黒ずくめさんは?」

黒ずくめ「……、そうですね……」

黒ずくめ「では、おコトバに甘えて」

少女「やったー!」
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