【艦これ】 養子になってしまったから

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1 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:12:10.30 ID:hTh9ZdsGo
ある日着任してきた提督は30代半ば。
比較的若く背も高く、中々に整った顔立ちをした男性だった。

短く切りそろえられた髪と軍人らしい引き締まった体が特徴的であり
部下には優しく、上司には言うことを言う。
人当たりも良く能力もある

上役として仰ぐには理想的な男性であったと思う。

自然と多くの艦娘は彼に特別な感情を抱いた。
当然のごとく僕も……。

凄いよね
この数の女性集団ほぼ全員から好かれるとか

そうなるようにプログラムされていたのか本人にそれだけの魅力があったのか
今となっては知る術もない。

しかし彼と特別な関係となる子は現れなかった。
彼も艦娘からのアプローチには応じなかった。

なぜなら彼は妻帯者であったからである。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1502622730
2 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:12:54.24 ID:hTh9ZdsGo
時雨「提督 お茶が入ったよ」

提督「御苦労さま」

きっかり65度。
彼の好みまで冷ました緑茶を差し出すと提督は笑顔を向けてくれた。

お茶くみから書類作成にスケジュール管理。果ては戦術指揮補佐まで
秘書艦の仕事は多岐に渡る。
鎮守府によっては提督の夜のお世話まで……

……こほん。
とにかく大変な仕事でそれなりに知力も管理能力もある子でなければ勤まらないポジション

旗艦を務めることもあり武力も当然要求される。

なおかつうちの提督は「妻帯者? 一線を越えなければ大丈夫ですさぁ」と
スピーディにアプローチしてくる子から逃げ回っているので選択肢は狭い模様。
特段離婚調停はしていない

そんなこんなで
間違いを起こさないために成熟した女性から距離を置いている。

だからだろうか
僕、時雨は秘書艦のお鉢が回ってくることが多かった うん
3 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:13:20.83 ID:hTh9ZdsGo
最初は夕立や島風も秘書艦を務めることがあったんだけど……

当時の記録を見るとジュースのシミとかね……

あと日報に「楽しかった」とかさぁ……

二人とも戦場では頼りになるのに……

まぁでもおかげで傍に居れることが多かったのは役得かな?

女性扱いされてない風なのが癪だけど

秘書艦が多いメンツを見ると 響ちゃん・霞ちゃん・初霜ちゃん・大鳳さん

う〜ん 僕もこの区分?
なんだかなぁ

そりゃ姉妹の中ではさほど育ってないけどなんか悔しい

子供扱いされるほどは幼くはない
4 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:13:58.70 ID:hTh9ZdsGo
提督「おっ そうだそうだ。お茶にはお茶菓子だよな〜」

提督「じゃじゃーん 秘蔵のカステーラ♪ 時雨も食べようぜ」

時雨「えっ…その そんな貴重なもの遠慮」

提督「いいからいいから ほらそこ座る」

いきなり肩を掴まれて椅子へと誘導された。

時雨「ひぃうぃっ! そ、そんないきなり触らないで欲しいな…」

提督「ばーかお前 親娘なんだからスキンシップは大事だぞー」

頭をウリウリ撫でられて髪型が崩れた
村雨みたいに熱心に整えたものではないけれど崩すなんて女心を分かっていない人だ

だから言ってやった

時雨「そんなことする提督なんてお父さんじゃないよ」

ってイーってして。

そうなんだよね。

子供扱いもなにも先月から僕は戸籍上彼の娘なんだけど
5 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:14:26.01 ID:hTh9ZdsGo
なぜ僕が彼の娘になったのか

簡単に言うと彼の奥様は子供が産めない体であること
彼が「産めよ増やせよ」の軍戦略を推進すべき立場であること

それに
経済的に裕福である彼が身寄りのない孤児から集められた兵士。駆逐艦達を不憫に思い……
戦後の面倒を見ようと判断。

希望者を引き取ることにしたのが要因である。
6 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:14:52.39 ID:hTh9ZdsGo
当初は

「冗談か」

「何人養う気だ」

「冗談も休み休み言え」

と誇大妄想かと思ったけれど
若くして提督になれるほどの人物

どうやら相当の名家の出であったみたいで
駆逐艦×人数くらいなら養える!
とプレゼンを打ち、人数分の届を用意してきたのには唖然とした。
7 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:15:20.57 ID:hTh9ZdsGo
先祖伝来の山林を手放せば全員大学どころか院まで出せる…

ってよくもまぁそこまでして他人を養おうと思えるものだよ。

もっとも実際の希望者は20人程度だったので山は売らなくてもいい。

全体の2〜3割はなんやかんやで帰る場所を整えていたし
性格的に他人の世話になるのは嫌な子もいる。
軍から抜けられない子もいる。
駆逐艦という分類であってももう働ける年齢の子もいる。

むしろよく20人も と言うべきかもしれない。
8 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:16:09.96 ID:hTh9ZdsGo
姉妹だと僕の他に希望したのは夕立くらい

五月雨は最後まで悩んでいたようだが戦後は涼風と一緒に夕張さんが引き取ることに
帰る先もないくせに固辞した山風は江風が引っ張っていく予定

海風や村雨は年齢的に自立してやっていける
……二人とも妹だよね? おかしいな

春雨はなぜか身寄りがいるらしい
白露は提督と仲良しだったのでてっきり希望するものと思ったんだけど……

白露「一番! ナンバーワンになりたいの!」
って言って拒否

僕は色々考えなくてもいいことまで考えたけれど
夕立が「はーい」と元気に答えるのを見て咄嗟に小さく手を上げてしまった

だって付いていかないと負けてしまう気がしたから

視界から消えてしまう気がしたから

そして彼の娘となった

そんなこんなで今に至る
9 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:16:51.50 ID:hTh9ZdsGo
提督「お父さんじゃないだと〜」

時雨「いひゃいいひゃい やめてよ、痛いじゃないか」 

イーってした口に指を突っ込まれてさらに広げられ…
恥ずかしい話、少しドキっとした。

提督の指が僕の粘膜を擦ってそんなに強くダメだよ僕たちは親子でそんな

提督「……なに固まってるんだ?」

時雨「な、なんでもないよ」

提督「はよ食べようぜ」

ごまかしも含め。慌ててカステラを頬張る。
10 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:17:19.04 ID:hTh9ZdsGo
モグモグ

モグモグ

!!!!!

ほへぇ〜 甘いよぉ 美味しいよぉ〜

凄いねこれ 上流階級の方のカステラって僕らの口に入るようなのとはまるで違う

優しい甘さが口いっぱいに広がっていてそれでいてしつこくない

ふんわりとした触感の中に隠れ潜むザラメの感触がまた…

惚けてしまった

口元からよだれが垂れるほど恍惚としてしまった

気がつくとその惚けた顔をニヤニヤと見ている犯人が

やっちゃった

恥ずかしい…かな
11 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:17:53.04 ID:hTh9ZdsGo
時雨「その…何さ、提督」

提督「そこは『お、お父さんのバカー』って言ってほしい反抗期風に」

提督「はい、リピートアフタミー お、お父さんのバカー!」

時雨「僕だって怒るときは怒るよ」

提督「だから怒ってよ いやぁ娘に怒られるとか夢のシチュエーションだぁ」

「諦めてたんだけどなぁ」
と呟く彼が本当にうれしそうなので怒るに怒れなくなっちゃった。

提督「ずっと子供欲しかったんだよ〜」

提督「縁がないものと思ってたからさ〜」

提督「こんな可愛い娘ができて余は満足じゃ」ナデナデ

あああ、髪型がさらに崩れるぅう
12 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:18:32.82 ID:hTh9ZdsGo
本当の親子でも僕くらいの子の頭。撫でないと思うのだけど

あとそんなに仲良く会話する話題もないと思う。

提督「そんでさー」

提督「昨日はさ 話してたら弥生が『お父さん』って呼んでくれたんだよ」

時雨「よかったね」

提督「そうだろそうだろ! でさ 慌てて司令官って言いなおすんだけど舌噛んで」

時雨「おやおや」

提督「それを見てた卯月がもーにっこにっこして弥生をイジりだし」

時雨「それはそれは」
13 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:19:22.54 ID:hTh9ZdsGo
ちなみにこの人はどうしようもない親馬鹿になったので話題とか云々ではなく一方的に話してくる傾向が酷い
それもまあ悪くはないのだけれど

僕も基本的に聞く側の人だし

他の秘書艦を務める響・霞・初霜・その他一名は娘という選択肢を選ばず、さすがにそういう話はできないようで
僕が秘書艦となると目をキラッキラして惚気話をしてきて
それはそれで特別なようで結局は悪くない

提督「いいよなー娘 なんか守るべきものができると仕事にも気合が入る」

時雨「それではこの溜まった書類を気合入れて確認お願いできるかい?」

提督「……5時から皐月たちの勉強を見てやる約束をした」

時雨「明日発注分の見積もりなんだけど」

提督は真剣な顔をして立ち上がる

提督「我が娘よ」

そして僕の手を強く握りしめると

提督「君はできる子だと信じている」

……

時雨「はぁ 大丈夫だよ、行ってらっしゃい」

提督「サンキュー♪」
14 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:20:19.45 ID:hTh9ZdsGo
いそいそと立ち去る提督を見送って書類と向き合う

うーん。面倒だなぁ

でもさっきの表情からするとこれでカステラ×5本は堅い
最近言葉に出さなくても考えが通じてしまうから困る。これも娘となった効果だろうか

提督用の良いお茶をいれて、カステラの残りを舐めつつ……おいしぃー!これ
さて仕事処理仕事処理仕事処理

ひいひいふうふうへえへえほぉ

苦節2時間でようやく終わり。

まったく先月まではこんな仕事秘書にやらせなかったのに甘えてるぞ! 提督さん!
と思いながら自然に笑みを浮かべてしまう自分が少し気持ち悪い。
15 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:21:16.78 ID:hTh9ZdsGo
戸籍で『長女』となっていた時も同様の笑みを浮かべてしまった。

白露が女性として告白し、自明の結果になった時も同様だった。
これはどうかと思う。

我ながら嫉妬心が汚らわしい。

でもすごく仲良しだった白露が一線を引かれた今
提督に一番近いのはきっと僕。

子供たちが提督に要望を出す時は僕を通すことが多いし
秘書艦だって今月は一番回数が多い

きっとこれからも…
そう思うと彼の椅子の上で悶えてしまう自分は本当に気持ち悪い。

やっぱり僕も白露の妹なのだろう。
優越感に浸ってしまう
そして一番の座を失いたくないと思ってしまう
一種の中毒

でもなんか幸せ






翌日 カステラは予想を上回る10本だった。

…太っちゃうじゃないか
16 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/13(日) 20:23:20.16 ID:hTh9ZdsGo
法律的に養子が何十人も取れるかは知らない
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/13(日) 20:55:21.40 ID:33acLqa0O

大鳳ェ
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/14(月) 11:09:28.71 ID:MWAmzZr60
時雨ちゃん最高じゃないですか
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/14(月) 23:30:47.60 ID:XOUPFYyI0
鬼父はよ
20 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/14(月) 23:35:53.12 ID:nWwt2VD/o
「政治力?」

卯月「カステラおいしかった〜 またよろしくだっぴょん‘時雨お姉ちゃん’」

弥生「あの…ごちそうさまでした し、時雨姉さん」

皐月「ありがとね! 時雨姉ちゃん!」

カステラは断腸の思いで我慢。通りすがりの新しくできた義妹たちにあげた
腹回りは譲れない
連日の甘いもの ダメ絶対

それからというもの
遠征班の彼女らとはあまり会話したこともなったのだけれど
懐かれ度が飛躍的に上がった気がする

なんて単純な
21 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/14(月) 23:36:33.49 ID:nWwt2VD/o
というか いつのまに姉呼びするように?

卯月「お兄ちゃんのほうがいいぴょん?」

弥生「時雨…兄さま」

そんな趣味はない

皐月「そうなの? でも自分のこと僕っていうよね?」

君もね

卯月「ぷっぷくぷー 皐月それなんのギャグ〜?」

あっ 思考被った
22 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/14(月) 23:37:09.29 ID:nWwt2VD/o
まぁ好かれることは悪い気はしないけど
義姉妹になってすぐにというのは少し抵抗がある
はたから見たら手なづけて地位を固めてるように見えるかもしれない

海軍提督の長女の座を得て、その上他の姉妹を買収して豊かな生活と地位を手に…なんてつもりは毛頭もないけれど
本当に手に入れたいのは他の座なのだけれど
他の人からそう思われるのはちょっとやだな

だから とりあえず一時離脱  

「それでは僕はこれで…」
23 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/14(月) 23:37:38.37 ID:nWwt2VD/o
卯月「え〜 もっとお話〜」

皐月「ボクらと遊ぼうよ! ふふっ。前から運動神経よさそうって思ってたんだ!」

卯月「うーちゃんお話がいいぴょん」

皐月「ボクはサッカーとかしたいなぁ」

卯月「ねー お話〜」

皐月「サッカー」

二人が上目遣いで両足にまとわりついてきた

なにこの可愛い生き物
そんな趣味無いのに抱きしめたくなるじゃないかこの僕をここまで混乱させるとはさすがだね

でもホントに抱きついて頬ずりして引かれたら嫌なのでやらない

欲求に負ける前に逃げ「おお 仲良きことは美しきことだなぁ」

提督「ってか?」

24 : ◆W7gaJxN1wk4q [sage]:2017/08/14(月) 23:38:57.21 ID:nWwt2VD/o
提督「なんだ? お前ら仲良しだっけ? いやぁいいねぇ姉妹仲よしお父さん嬉しい」

提督「時雨〜 妹たちの面倒ちゃんとみてやってくれよ〜」

「はい!」

大きな声で返事

さーお話しながらボール遊びでもしようか〜
遊びたい子は僕に付いておいで〜

弥生「ええ 時雨兄さま」

その設定続いてたの?
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