魔女「お眠りなさい、安らかに――」 女騎士「くっ、やめろ……!」

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112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 21:55:52.74 ID:VGrUbckl0
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 14:41:23.74 ID:8q9CQ1wy0
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:16:14.38 ID:TlLQuemd0
魔女「あぁ……どうしましょう。適度な休憩とか、絶対取ってないわ、この子……」

女騎士「取ってる! 取ってるから!」

魔女「……」

女騎士「ええと……、い、今とか」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「やっぱり、不安ね……」

女騎士「うぅ……」

魔女「騎士さん、ちょっと寝室まで、付き合ってくれるかしらぁ?」

女騎士「や、本当、今日は……」

魔女「寝て行けってわけじゃないわよぉ。……ただ、ちょっとの時間でいいから」

女騎士「……?」

魔女「……スッキリして、リラックスできること、してあげる」

女騎士「……??」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:16:49.94 ID:TlLQuemd0

〜寝室〜







魔女「さ、どうぞ」

女騎士「……あ、あぁ?」


女騎士(……ちょっとの時間……)

女騎士(スッキリして、リラックス……?)


女騎士「……?」

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……!?!?」ハッ

魔女「さあ、騎士さん……」

女騎士「まっ……! ちょ……魔女! そ、そういうのはだな!」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:17:22.16 ID:TlLQuemd0
魔女「……?」ポフ

女騎士「ま、まだ早いというか、も、もうちょっと、私はだなぁ……!!」

魔女「どうしたの? さ、ここ、どうぞ?」ポンポン

女騎士「……?」

魔女「ど、う、ぞっ」ポンポンポンポン

女騎士「膝枕?」

魔女「ふふふ……、スッキリリラックスと言ったら、これよねぇ……!」シャキ

女騎士「耳かき棒……?」






117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:17:54.77 ID:TlLQuemd0


コショコショ


魔女「……痛くなぁい?」

女騎士「あぁ……」

魔女「……こうしていれば」コショコショ

女騎士「……」

魔女「無理やりでも、横になるし」

女騎士「……」

魔女「体の力も抜かないといけないから、リラックスできるでしょう?」

女騎士「そ、そうだな……」

魔女「……〜♪」

女騎士「気持ちいいよ……」

魔女「でしょ〜♪」コショコショ

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:18:20.47 ID:TlLQuemd0
魔女「さ、反対側」

女騎士「はぁい……」

魔女「……」コショコショ

女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「……私」

女騎士「……」

魔女「……一生懸命、がんばってる騎士さんは、好きよ」

女騎士「……」ピク

魔女「動かないの。……でもねぇ」

女騎士「……」

魔女「……やっぱり、無理をして辛そうなところは、見たくないから……」

女騎士「……あぁ」

魔女「私にできることがあったら、何でも言ってほしいわ」

女騎士「……あぁ」

魔女「……〜♪」コショコショ

女騎士「ありがとう、魔女……」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:18:55.12 ID:TlLQuemd0





〜数日後〜


〜都の中心部、騎士団詰所〜







女騎士「えっ、じゃあ……!」

司祭「はい、今年の『王都祭』の警備は、王立軍に依頼することになりまして……」

女騎士「それは……」

司祭「各騎士団が王都中を警備するのが、この国の伝統でしたが……」

女騎士「……」

司祭「王府から、じきじきに依頼があり、教会もそれに押し切られた格好で」

女騎士「王府が……」

司祭「我々も、心苦しい限りです」

女騎士「……いえ、こればかりは仕方のない話でしょう」

司祭「お詫びに、どうか貴方と、貴方の騎士団のために、祈りを捧げさせていただけませんでしょうか?」

女騎士「い、いやいや、そこまでしていただかなくても……」

司祭「いいえ! ぜひとも! 祈らせていただきたい! 2時間弱のフルバージョンで祈らせていただきたい!!」

女騎士「本当に! 本当に結構ですから!」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:19:23.63 ID:TlLQuemd0





女騎士(『王都祭』の任務もか……)

女騎士(王都の大きな仕事は……、どんどん王立軍に流れていくな)


女騎士「むぅぅ……」


女騎士(……いや、腐っていても仕方ない!)

女騎士(今は、私たちの出来ることを――……)


副団長「……団長殿」

女騎士「ん? あぁ……どうした」

副団長「……ハァ」

女騎士「なんだなんだ! 騎士が暗い顔をするな!」

副団長「……団員の一人から、退団届が出されています」

女騎士「え……っ」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:20:09.31 ID:TlLQuemd0





〜夜・女騎士宅〜







女騎士「むぅ……」カリカリ

女騎士「……」パサッ


女騎士(……この事務処理が済んだら)

女騎士(新しい任務の提案を作って……)

女騎士(……新しい団員募集の呼びかけも準備して……)


女騎士「……」カリカリ

女騎士「むむむむむ……っ」


女騎士(魔女にはああ言ったが)

女騎士(休んでいる暇などないなっ!)


女騎士「……」カリ

女騎士「……ふぅ」パサリ


女騎士(私ががんばらなければ……)

女騎士(がんばって、がんばって……)

女騎士(守るんだ、騎士団を――……)



女騎士「……」カリカリ

女騎士「…………」カリカリカリカリ





122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:21:10.64 ID:TlLQuemd0

〜数日後〜


〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







魔女「……――それから、火防の護符と、魔女織の織物、蜘蛛避けのお香はたっぷりと、ね」

商人「はい! では、確かに……」

魔女「いつもどうも」

商人「いやぁ、こちらこそ! 魔女さんから仕入れた物は、いつも好評ですからな!」

魔女「それはよかったわぁ」

商人「どれをとっても、見た目も美しく、効果は天下一品!」

魔女「うふふ」

商人「おまけに当人はこんなに妖艶な――……」

魔女「あらぁ、どういう意味かしら?」

商人「あっ! いえいえ、今のは決して、下心があって言ったわけではありませんぞ! なは、なははは!」

魔女「あらあら……」


魔女(ようえん……、ヨウエン……)

魔女(本当にどういう意味かしら)

魔女(……あとで辞書を引きましょう)
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:21:40.08 ID:TlLQuemd0
商人「では、ワタクシはこれで……」

魔女「またお願いしますわ」


キィ


魔女「あら、またお客様――……」

女騎士「……魔女ぉ〜……」

魔女「あ」

商人「……おや」

女騎士「……ハッ」サッ

商人「……?」

魔女「お気をつけて、商人さん」

商人「え、ええ……、それでは」

女騎士「……」コソコソ

商人「……? いや、他人の空似か……」スタスタ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:22:23.09 ID:TlLQuemd0
女騎士「ふぅ……」

魔女「いらっしゃい、騎士さん」

女騎士「あぁ。……気づかれたかな?」

魔女「ん〜……、大丈夫だと思うけど……。だって……」

女騎士「え?」

魔女「クマ、すごいし。ちょっと人相、変わっちゃってる」

女騎士「えぇ……やだぁ……、やめて本当……」

魔女「だって、ほら、見せて。ほら……うわぁ」グイー

女騎士「じっくり見るなぁぁ……」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:23:23.47 ID:TlLQuemd0
今日はここまでです

魔女は学校とか行ってないので、知らない言葉が結構多い
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 01:31:49.43 ID:1HCyBEIX0
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 05:38:42.53 ID:sRRk7bLbo
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:24:34.79 ID:wiQBcDZQ0





コショ コショ


女騎士「……――えーと、つまり、妖しいくらい美しいって感じでだな……」

魔女「怪しいの? 私そんな不審かしら……」

女騎士「いや、そうじゃなくてだな……、なんて言うんだろう? 神秘的とか、謎めいた雰囲気とか、そういう意味で……」

魔女「あら、じゃあ私、褒められてたのね」

女騎士「んー……まぁ……」

魔女「そう……んふふ、ヨウエン、妖艶ねぇ……」

女騎士「……」


コショコショ


魔女「……はい、おしまい」

女騎士「……ちょっと、短いぞ」

魔女「ついこの間、やったばかりでしょう? あんまり掻きすぎると、痛くなっちゃうから」

女騎士「そっかぁ……」

魔女「ふふ、そのまま楽にしてていいわよ」ナデナデ

女騎士「あ……」

魔女「んふふ……」ナデナデ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:25:13.09 ID:wiQBcDZQ0

女騎士「……あの商人は」

魔女「え?」

女騎士「よく来るんだ……」

魔女「そうねぇ……、お客様の中では、一番よく来るかしら。いつも私の作るもの、いっぱい買っていってくれてね」

女騎士「ふーん」

魔女「蜘蛛避けのお香も、織物も、どれも素晴らしいっ、なんて褒めてくれて……」

女騎士「ふぅーん……」

魔女「今度、織物上手にできたら、騎士さんにも見せてあげるわね」

女騎士「……」

魔女「……♪」ナデナデ

女騎士「……上機嫌だな」

魔女「あら、そう?」

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:25:44.41 ID:wiQBcDZQ0

女騎士「あの商人に、褒められたからだろ」

魔女「えぇ?」

女騎士「魔女さんは、妖艶だもんな―……」

魔女「あら……」ナデナデ

女騎士「……」

魔女「妬いちゃった?」

女騎士「ちが……っ」ガバ

魔女「だぁめ、じっとしてて……」ナデナデ

女騎士「……、……違うからな」ストン

魔女「クスクス……、別に褒められたくらいで、舞い上がったりしないわよ、私は」

女騎士「……」

魔女「嬉しくなるんだとしたら――……」

女騎士「……」

魔女「……ふふっ」

女騎士「なんだよぉ……」

魔女「まぁ、いいじゃない」ナデナデ

女騎士「むぅ……」

魔女「……〜♪」ナデナデ
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:26:17.64 ID:wiQBcDZQ0

女騎士「……魔女の手、気持ちいいな……」

魔女「そう、よかったわ」

女騎士「はぁ……、ずっとこうしてたい」

魔女「いいわよう」

女騎士「よくないんだよ……」

魔女「よくないの?」

女騎士「あぁ……、行かなくちゃ。起きて、街へ行って……」

魔女「……」

女騎士「騎士団のために、私がやるべきことを、やらねば……」

魔女「……無理してるの、自分でも分かるでしょう?」

女騎士「分かるよ。でも……私は騎士だから」

魔女「……」

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:26:56.73 ID:wiQBcDZQ0
女騎士「騎士だから、無理を押してだって、やるべきときは、やらなければいけないんだ」

魔女「……」

女騎士「私は、騎士なんだ……。騎士としてしか、生きられないんだ……」

魔女「……」

女騎士「だから……」

魔女「……」

女騎士「私が、がんばらなければ……、がんばって、がんばって……」

魔女「……」

女騎士「がんばって守るんだ……。騎士団を。みんなの居場所を、私の居場所を」

魔女「……騎士さん」

女騎士「騎士としての、私を」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「……ふぅ」ナデナデ


魔女(……固い気持ちで、前を向いて)

魔女(……がんばってる人を、引き留める言葉って……)


魔女「……」ナデナデ


魔女(なかなか、浮かばないものねぇ……)




133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:27:28.19 ID:wiQBcDZQ0





〜数日後〜


〜王都・市街〜


女騎士「……――はい、いえ、こちらこそ」

女騎士「ええ、お心遣い、感謝いたします。……では」ペコリ

女騎士「……」

女騎士「……はぁ」


女騎士(……ここも、協力を断られてしまったか)

女騎士(これで何連続か……)


女騎士「……」フラ

女騎士「…………っと」


女騎士(さすがに……)

女騎士(キツい……か……)


女騎士「……はぁ」


「……――殿、女騎士殿!」


女騎士「ん……」

老騎士「女騎士殿! おお、奇遇であるな。こんなところで」

女騎士「老騎士殿……、お元気でしたでしょうか?」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:28:01.75 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「当然である。貴公も……、と言いたいところであるが……」

女騎士「……」

老騎士「……やつれたであるな」

女騎士「……なに、かつての戦の、末期の頃に比べれば……」

老騎士「顔色だけで言えば、あの頃より悪そうであるが……、いや、淑女に向かって失礼な言い分であった。面目ない」

女騎士「ははは……」

老騎士「少し、休んでいかれませい。……折り入って、貴公に話しておきたいこともある」

女騎士「話……?」

老騎士「ううむ……、あぁ、実は……」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:28:46.73 ID:wiQBcDZQ0





女騎士「……」

老騎士「……ふぅ」

女騎士「……では」

老騎士「あぁ、我が『水晶羽のトンボ』騎士団も、解散である」

女騎士「納得、いきません……」

老騎士「……であるか」

女騎士「確かに現状は厳しい! ですが、『トンボ』騎士団は規模でも、質でも、十分にやっていけるだけの力があるはずだ!」

老騎士「……」

女騎士「それなのにっ、どうして……っ!」

老騎士「おっしゃる通りであるな」

女騎士「……」

老騎士「楽な道に逃げたと、そう見られても仕方ないのである……」

女騎士「そうは、言っていません……!」

老騎士「いや、いいや……、儂自身、そのように感じている」

女騎士「……」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:29:15.63 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「……しかしな、女騎士殿……」

女騎士「……」

老騎士「儂はもう、老いすぎた……。あと何年……いや、何か月と、この世にあるかも分からぬ身だ」

女騎士「そんな……」

老騎士「……『老兵は死なず、ただ去り行くのみ』……避けられぬ死を前にして、去り時を誤れば」

女騎士「……」

老騎士「結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……」

女騎士「……」

老騎士「……というか、儂が後釜育ててなかっただけなんであるがな」

女騎士「……老騎士殿」

老騎士「……がっはっはっは!」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:29:51.78 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「……まあ、そんなこんなでな、団員どもに相談して決めたのである」

女騎士「しかし……」

老騎士「幸い、我が団を引き取ってくれる商社がいくつか見つかってな。みな……」

女騎士「……」

老騎士「バラバラ、には……、なってしまうで、あるがな」

女騎士「……」

老騎士「……失礼」

女騎士「お察し、いたします」

老騎士「いや、なに。いずれ儂の中でも、折り合いのつく時が来るのである」

女騎士「折り合い……」

老騎士「貴公には、以前話したことがあろう……。時が解決するのに、身を任せる」

女騎士「……」

老騎士「年寄りの処世術ではなく、ひとつの真理として」

女騎士「……」

老騎士「そういうことも、あるのだ……」

女騎士「……老騎士殿」

老騎士「……そう……、善かれ、悪しかれな」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:30:23.40 ID:wiQBcDZQ0





〜騎士団詰所〜


女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(まさか……、老騎士殿のところまで……)


女騎士「……」


女騎士(無理なのか……)

女騎士(やはり、もう……)

女騎士(逆らえない、あらがえない……)

女騎士(流れの中で……、騎士は……、騎士団は……)

女騎士(私は……)



女騎士「……う」

女騎士「うぅぅ……」


女騎士(……まだだ)

女騎士(まだ……やれることはあるはず)

女騎士(私が……、私ががんばらなければ、やらなければ……)


副団長「団長殿」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:30:55.44 ID:wiQBcDZQ0
副団長「……団長殿?」

女騎士「……あぁ」

副団長「大丈夫ですか?」

女騎士「……、……すまんな、大丈夫だ」

副団長「……」

女騎士「何か、話だったか?」

副団長「……退団希望者が一名、来ています」

女騎士「……」フラ

副団長「団長殿っ」

女騎士「……だ」

副団長「……」

女騎士「…………大丈夫だ、通してくれ」

副団長「……」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:31:49.44 ID:wiQBcDZQ0





騎士C「……」

女騎士「そぉーか、そうか! 嫁さんの実家は、糸の貿易商か!」

騎士C「は、はい……」

女騎士「ん? ということは、なんだ? お前が跡取りとかになっちゃうわけか!?」

騎士C「えぇ、まぁ……」

女騎士「はっはっはっ! それはすごい! 未来の社長殿だなっ!」

騎士C「……いやぁ」

女騎士「ん〜、しかしあれだぞ、経営というやつは中々大変だぞ? お前のような無骨で無愛想な男に、果たして務まるか……」

騎士C「……」

女騎士「なんてな! お前なら心配ないさ! あっはっは――……」

騎士C「……本当は」

女騎士「ん?」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:32:21.66 ID:wiQBcDZQ0
騎士C「……本当は、オレ、騎士を続けるつもりだったんです」

女騎士「……」

騎士C「けれど、向こうの家から……」

女騎士「……」

騎士C「騎士の仕事に、この先があるのかと……」

女騎士「……」

騎士C「……今の世の中、騎士の名誉が何になる、って……」

女騎士「お前……」

騎士C「……オレは」

女騎士「……」

騎士C「……なにも、言い返せなかった」

女騎士「……」

騎士C「オレ、騎士失格なんです」

女騎士「……馬鹿者」

騎士C「……」

女騎士「誰が何と言おうと、お前は立派な、我が団自慢の騎士だ」

騎士C「団長……」

女騎士「胸を張れ」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:32:51.36 ID:wiQBcDZQ0





副団長「……――いかがでした」

女騎士「ああ、話は済んだぞ。副団長、彼の退役手続きを頼む」

副団長「……、……はい」

女騎士「退役金もたっぷり弾んでやれ! それから……」

副団長「……」

女騎士「それから――……」

副団長「……」

女騎士「……すまん、外してくれ」

副団長「……団長殿」

女騎士「……」

副団長「……失礼します」

女騎士「……」



パタン





143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:33:27.39 ID:wiQBcDZQ0





女騎士「……」



――去り時を誤れば――

――結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……――



――今の世の中、騎士の名誉が何になる、って――



女騎士「……」

女騎士「う……」



女騎士(……騎士団を、生かし続けることで……)

女騎士(色々なものにあらがって、歯向かい続けることで……)

女騎士(私は、何かを見誤ってしまって、いるのか……?)


女騎士「う、ぅ……」


女騎士(私の居場所――)

女騎士(私の騎士道――)

女騎士(私の……人生――)


女騎士「う、ぅ、ぅぅぅ……」



女騎士(もう……)

女騎士(もう、限界だ……)


女騎士「…………魔女…………」


144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/21(月) 23:33:59.52 ID:wiQBcDZQ0
今日はここまでです
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 23:46:44.13 ID:DMWk3hhMo

世知辛いなぁ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 05:01:03.81 ID:qQ0m9SMFo
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 08:23:28.08 ID:frr1pYzd0
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:14:31.20 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……」





149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:15:18.60 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「………………」





150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:15:48.06 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……ん)

女騎士(……あれ)

女騎士(…………なんだっけ?)


女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……私、何をしてたんだったっけ?)

女騎士(……えっと)





151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:16:16.02 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……忘れた)

女騎士(……忘れたけど、まぁ……)

女騎士(いいや……)


女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……何だか、暖かいし、柔らかいし)

女騎士(……すべすべで、いい匂いするし……)

女騎士(……ここにいれるなら、どうでも……)

女騎士(……ここに……)


女騎士「……」

女騎士「……」





152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:16:46.88 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」



女騎士(……ここ……)

女騎士(……ここは……)



女騎士「……」

女騎士「……」



女騎士(ここはどこだ?)



女騎士「……っ!?」ガバッ


魔女「あら、もう起きちゃったの?」

女騎士「えっ、えっ……?」

魔女「さっき寝付いたばかりじゃないのぉ」ヨシヨシ

女騎士「えぇぇ……?」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:17:22.05 ID:3mTrz7e70





〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜








魔女「びっくりしたわよぉ、こんな夜更けにフラっとあらわれて……。一瞬、幽霊かと思っちゃったわ」

女騎士「……」


女騎士(……全然覚えていない……)


女騎士「無理がたたると、怖いんだな、人間て」

魔女「他人事みたいに言うんじゃないの」デコピン

女騎士「あたっ」

魔女「ふぅ……」

女騎士「……すまん」

魔女「別に、いいから。ほら……ちゃんと横になって」

女騎士「うん……。……あのさ」

魔女「ん?」

女騎士「あのさ……、私……」

魔女「いいの、何も言わないで」

女騎士「……」

魔女「いいの」

女騎士「……うん」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:17:57.68 ID:3mTrz7e70
魔女「騎士さんが、誰よりも一生懸命だったこと、私がよく知ってるわ……」

女騎士「……」

魔女「よくがんばったわねぇ」ナデナデ

女騎士「……うん」

魔女「……もう、大丈夫だから……」

女騎士「…………うん」

魔女「……目を瞑って、休みなさい……ゆっくり……」

女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「魔女……」

魔女「……」

女騎士「眠れないよ」

魔女「……」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:18:25.98 ID:3mTrz7e70
女騎士「だって、もう、私……」

魔女「……」

女騎士「騎士じゃなくなっちゃう……」

魔女「……」

女騎士「騎士じゃなくなったら、私」

魔女「……」

女騎士「私は……、私って……、なんだ……?」

魔女「……」

女騎士「私は……」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「……怖いのね」

女騎士「……」

魔女「怖くて、寂しくて、眠れないくらい」

女騎士「……」コクン
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:18:54.92 ID:3mTrz7e70
魔女「さっき、ちょっと寝てたじゃない」

女騎士「……あれは、たぶん気絶だし」

魔女「気絶かぁー……」

女騎士「……」

魔女「……ふぅ」

女騎士「……」

魔女「じゃ、お邪魔しま――……」

女騎士「ちょっとちょっとちょっと魔女さん」

魔女「なぁに?」

女騎士「なんで入ってくるの!」

魔女「私のベッドだもの」

女騎士「そうだけども!」

魔女「添い寝」

女騎士「え」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:19:20.57 ID:3mTrz7e70
魔女「……こうして、二人一緒なら」

女騎士「……」

魔女「ちょっとは、寂しくなくなるでしょ?」

女騎士「……」

魔女「ね……?」

女騎士「……うん」

魔女「んふふ……♪」スリスリ

女騎士「近い近い……」


女騎士(でも……)

女騎士(確かに……)

女騎士(暖かくて……、甘い香りがして……)


女騎士「……」


女騎士(抱き着いたら、きっと……とても柔らかいのだろう)

女騎士(……、……怒るかな?)

158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:20:49.76 ID:3mTrz7e70
魔女「初めて、ここに来た時から」

女騎士「……え?」

魔女「騎士さん……、私のベッドでは、グッスリだったでしょう?」

女騎士「……あぁ、そうだった」

魔女「どうしてだったか、分かる……?」

女騎士「……さぁ? やっぱり魔法だったのかも……」

魔女「んふふ、違うったら」

女騎士「んー……」

魔女「きっと」

女騎士「……」

魔女「私の前では、騎士じゃない貴方でいてくれたから……」

女騎士「……」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:21:44.62 ID:3mTrz7e70
魔女「……あ、もちろん、騎士さんは騎士さんなんだけどね」

女騎士「ややこしい」

魔女「……ただ、少しだけ、背負った重荷を下ろして」

女騎士「……」

魔女「……少しだけ、騎士の役目を忘れて」

女騎士「……」

魔女「そのままの貴方で、私と一緒にいてくれたから……」

女騎士「……」

魔女「それできっと、このベッドではいつだって、よく眠れたと思うの」

女騎士「……そうかもな」

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:22:15.19 ID:3mTrz7e70
魔女「……だからね」

女騎士「……」

魔女「ここは、貴方の居場所のひとつなの」

女騎士「……」

魔女「……騎士じゃない貴方が、安心して憩う場所」

女騎士「……」

魔女「このベッドは、この屋敷は、この森は――……」

女騎士「……」

魔女「私の傍は……」

女騎士「……」

魔女「貴方の場所よ、騎士さん」

女騎士「魔女……」

魔女「ふふっ、しゃべってばかりじゃ、騎士さんも眠れないわね」

女騎士「ねぇ……」

161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:23:38.90 ID:3mTrz7e70
魔女「ん?」

女騎士「あの……、えっと……」

魔女「……いいわよ、ギュッてしても」

女騎士「……え?」

魔女「ほら」

女騎士「うん……」


ギュッ


女騎士(なんで分かったんだろう)

女騎士(魔女はやっぱり……)

女騎士(不思議だなぁ……)


魔女「人間の腕って、誰かを抱きしめるような形の造りになってるのよ」

女騎士「不思議だなぁ」

魔女「不思議でしょ?」

女騎士「あぁ……」

魔女「……」ナデナデ

女騎士「………………スヤァ」

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/22(火) 22:24:34.67 ID:3mTrz7e70
今日はここまでです
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 01:01:17.13 ID:bZy92yco0
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 01:55:45.97 ID:C10gB3GZO
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 04:49:11.11 ID:lYcYX7XXo
ええな
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 16:48:11.19 ID:7V3QsaRDO
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:19:03.09 ID:x5aURJXg0





〜朝〜


女騎士「……」

女騎士「……」ムクリ

女騎士「……ん〜」

女騎士「――」ノビー

女騎士「……っはぁ……」

女騎士「……」


女騎士(爽快だ……)

女騎士(爽快すぎる……!)


女騎士「……こんなに軽かったのか、私の身体……!」ノビーッ

女騎士「……」

女騎士「あれ、魔女……」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:19:34.52 ID:x5aURJXg0






女騎士「……あ、いた」

魔女「あら、おはよう、騎士さん」

女騎士「おはよう、魔女」

魔女「朝ごはん、準備してたんだけど……、時間あるかしらぁ?」

女騎士「え〜っと、まだ大丈夫……。いいのか?」

魔女「うふふ、もちろん」

女騎士「美味しそうな匂いする……」

魔女「すぐできるわよ〜♪」

女騎士「何作ってるんだ?」

魔女「んー、イモリの黒焼きとねえ……」

女騎士「……………………」

魔女「冗談よ、魔女ジョークよ」

女騎士「お、おう……」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:20:03.44 ID:x5aURJXg0





女騎士「……」ムグムグ

魔女「お茶のおかわりは、いかが?」

女騎士「いただこう」

魔女「よく眠れたみたいねぇ」

女騎士「あぁ、まさしく快眠、まるで生まれ変わったみたいな気分だな!」

魔女「ふふ、よかったわ……」

女騎士「……人間って、ちゃんと睡眠取らないと駄目なんだな」

魔女「そうねぇ」

女騎士「なんでだろうな」

魔女「なんでかしらねぇ……お茶のおかわりは?」

女騎士「いただこう」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:20:33.74 ID:x5aURJXg0





魔女「忘れ物、ない?」

女騎士「ああ……、なんか多分、身一つで来たよな、私」

魔女「そういえば、そうね……」

女騎士「うん……ごめんな、色々」

魔女「いいのよう」

女騎士「ゆうべは……、本当、助かった」

魔女「いいったら、……律儀な子ねぇ」

女騎士「お礼、言ってなかったと思うから」

魔女「そうだったかしら?」

女騎士「うん、だから……ありがとう」

魔女「どういてしまして♪」

女騎士「……それじゃ」

魔女「いってらっしゃい」

女騎士「……」

魔女「いって、らっ、しゃいっ」

女騎士「……あ、ああ! いってきますっ!」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:21:27.21 ID:x5aURJXg0





〜都の中心部、騎士団詰所〜


女騎士「……――このように、騎士団は既に、如何ともし難い状況に置かれており――……」

副団長「……」

女騎士「……これ以上の団の継続は不可能であると、現実的に判断せざるを得ない……」

騎士A「……」

女騎士「……よって、団長たるこの私の責任の下……」

騎士B「……」

女騎士「騎士団の、解散を宣言する」



「「「「…………」」」」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:21:59.61 ID:x5aURJXg0

女騎士「――といっても、しばらくは今まで通り、騎士団の任務を続けていく予定だ」

女騎士「諸君ら、団の全員が、新たな道……騎士団を離れた後の、行き先を見つけるまでは……」

女騎士「なんとか……、今の騎士団を維持していこうと思っている」


「「「「…………」」」」


女騎士「……すまないな、私がふがいないばかりに……」

女騎士「心から、みなには申し訳ないと思っている」

女騎士「……」

女騎士「……ごめん、なさい……」


騎士A「解散は……、騎士団は、いつまで保てそうなのですか」

女騎士「はっきりとは言えない……、けれど、いいとこで半年……いや、もっと短いかも」

騎士B「半年……、だったら」

女騎士「……」

騎士B「あと半年は、騎士でいていいんですよね、俺たち」

女騎士「え……」

173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:22:42.00 ID:x5aURJXg0

騎士A「最後の最後まで、『クワガタ』騎士団のメンバーでいたいもんな、俺たち」

騎士B「な。最後まで、できるだけのことして、恩返ししたいもんな、この団に」


ソウダナー

ナー


女騎士「……」

騎士A「騎士団がなくなる、そのときまで」

騎士B「騎士の一員でいていいですかねぇ、俺たち」

女騎士「も、もちろんだ! だが……」

副団長「団長殿……」

女騎士「……」

副団長「みな、同じ気持ちなのですよ」

女騎士「……副団長」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:23:44.06 ID:x5aURJXg0

副団長「団長殿がひとり、団のためにもがいて、苦しんで……」

女騎士「……」

副団長「心も身体も、ボロボロになっているとき、私たちは……、見ていることしか、できませんでした」

女騎士「……」

騎士A「言ってくれないんだもんな、団長ー」

騎士B「なー」

女騎士「え、ごめん……、本当、いや本当」

副団長「みな歯がゆくて、悔しくて……」

女騎士「……」

副団長「だから……」

女騎士「……」

副団長「みんな、貴方に報いたいと……、そう願っているのですよ」

女騎士「みんな……」



「「「「……」」」」


女騎士「みんな、ありがとう……」







175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:24:14.92 ID:x5aURJXg0





〜数日後〜


〜訓練所〜


ダンッダンッ

バシッ


女騎士「よしよし! みな気合十分だな! 感心感心っ」


女騎士(あれから……)

女騎士(騎士団は、今まで以上に精力的に、活発になっている……)


騎士A「団長! 次は俺と稽古、お願いします!」

女騎士「よろしい! 手加減はしないぞ!」

騎士B「団長! その次は俺と」

女騎士「ふふふ、いい気合いだ……、ならば私も、久しぶりに本気を出させてもらうとするか」ゴゴゴ

騎士A「あっ」

騎士B「あっ」



女騎士(団員、ひとりひとりが……)

女騎士(騎士でいられる時間を、胸に刻み込もうと、しているかのように……)

女騎士(すぐ先に、終わりが見えている……)

女騎士(今この瞬間を、惜しむかのように)





176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:24:46.14 ID:x5aURJXg0





〜市街〜


ザワザワ

ガヤガヤ


女騎士「下がれっ! みんな下がってくれ!」


ザワザワ


女騎士「ぐっ……。心配するな……、すぐ助けるからなっ……」

子犬「クゥーン……」


都民C「おぉ、あんなとこから落ちたら……ひとたまりもねぇよぉ」

都民D「うわぁ……俺もう見てられねぇ」


女騎士「っ……! もう一息……っ!」


ガシッ
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:25:19.24 ID:x5aURJXg0



女騎士(……皮肉なことだが……)

女騎士(私自身、これまでないくらい、充実した日々を送っている……)



女騎士「……――ほら、もう大丈夫だからな」

子犬「キャン! キャン!」


オォォォ

パチパチパチ


女騎士(国のために、誰かのために、些細なことでも、汗をかいて)

女騎士(これが、私の求めた騎士の道だと、実感できるような……、かけがえのない日々)


都民E「あぁぁ……ありがとうございます、ありがとうございますっ」

女騎士「いやぁ、ワンコが無事で何よりだ!」


178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:25:59.03 ID:x5aURJXg0
子犬「クゥゥ……」

都民E「あら……」

女騎士「む? どこか怪我をしていただろうか?」

都民E「いえ……、この子に着せていたお洋服、ビリビリになっちゃっていて。この子のお気に入りだったから……」

女騎士「ふむ……」

都民E「私の母の手作りで……、いまはもう、亡くなってしまったのですが……」

子犬「……」シュン

女騎士「よければその服、お借りできないだろうか?」

都民E「え?」






179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:26:25.94 ID:x5aURJXg0





〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜


魔女「……〜♪」ヌイヌイ

女騎士「……」

魔女「〜♪」ヌイヌイ


女騎士(もちろん……)

女騎士(まだ心の整理は、全然ついていない)

女騎士(時々、ふとした瞬間に)

女騎士(腹の奥に、しこりのように重たい感覚が――……)


魔女「……えい」ツン

女騎士「うわぁっ! びっくりしたぁ!」

魔女「また難しいこと、考えてたでしょ」

女騎士「う……、なんで分かるんだよ……」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:27:09.69 ID:x5aURJXg0
魔女「ふふふ、なんでか教えてあげしょうか?」

女騎士「……うん」

魔女「実はねぇ……」

女騎士「……」

魔女「……騎士さん、すっごい顔に出る方よ」

女騎士「えぇ〜……、うっそぉ」

魔女「本当に。……はい、できたわよ」

女騎士「おぉ!」

魔女「どうかしら」

女騎士「うむ! ばっちりだ! 器用なものだな……」

魔女「これくらい、アサメシ前ね」

女騎士「これならあのワンコも文句あるまい」

魔女「騎士さん、犬のことワンコって呼ぶのね……」





181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:27:39.18 ID:x5aURJXg0







女騎士(穏やかに日々が過ぎていく……)

女騎士(こんな毎日の中で)

女騎士(いつかきっと、時間が解決してくれることも、あるのかもしれない……)

女騎士(……あの老騎士殿が、語ったように……)







182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:28:11.38 ID:x5aURJXg0





〜数日後・王都 王府庁舎内〜


役人「そうでしたか……、寂しくなります、本当に……」

女騎士「あぁ……、だがまだしばらくは、君の世話になる予定だがな」

役人「そうなんですね……、でしたら私も、全力でサポートしますから!」

女騎士「ははは! ぜひ頼む! ……それで」

役人「あ、ええ、お願いしたい件というのは、実は……」

女騎士「うん」



役人「……『東の蜘蛛の森の魔女』の、探索と拘束という話でして」

女騎士「うん……うん?」


183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:29:00.23 ID:x5aURJXg0

役人「あ、分かりますよ、その反応。おとぎ話じゃないの? って。思いますよね。私も思いましたもん」

女騎士「え、え、えちょっと」

役人「でも、実在する人物の話なんです! 報告では、一部の都民が接触しているとの証言が――……」

女騎士「ちょっと、ちょっと待って……」

役人「あ、はい」

女騎士「……あの……、なんで?」

役人「う〜ん、王立軍の方では、手が回らないようでして……、他の騎士団にも打診してみたのですが、皆さん乗り気じゃ――」

女騎士「いや、なんで私たちがやるの、ってことじゃなくて……」

役人「あぁ」

女騎士「なんで魔女――……えっと、『東の蜘蛛の森の魔女』を、捕らえる必要があるんだ?」

役人「……女騎士さんも、ご存知かと思いますが、最近の行方不明事件……」

女騎士「……女児3名が、相次いで……、っていう、あれか?」

役人「それです」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 23:30:20.91 ID:x5aURJXg0
女騎士「その事件と魔女と、どういう関係なんだ?」

役人「王立軍が、王都内をくまなく調査しましたが、3人の消息は一切掴めませんでした」

女騎士「……」

役人「あと、調査が及んでいない地域といえば、『東の蜘蛛の森』くらいでして」

女騎士「……誘拐かもしれん。だとすれば、すでに王都を出てしまっているかも……」

役人「城門警備隊は、断固として否定しています」

女騎士「だからって、その魔女の仕業だとは……!」

役人「それを調べていただきたい、というのが、今回の依頼なんです……」

女騎士「……つまり……つまり、だ」

役人「……」

女騎士「つまり、無関係かもしれん者に、縄をかけよというわけだろ? 騎士である我々が?」

役人「……あの」

女騎士「なんだ?」

役人「……な、なんか、怒ってます?」

女騎士「えなんで? なんで私怒る必要全然なくない? むしろ全然普通だしっていうか逆に冷静だと思うし実際怒ってないし?」

役人「ひぅぅぅっ!」

185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 23:31:28.08 ID:x5aURJXg0
今日はここまでです
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:32:26.49 ID:1duUvzNNO
そんなここで区切るなんてひどすぎる!
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/24(木) 00:09:15.29 ID:h6Ip55A0o
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/24(木) 03:17:03.92 ID:kXiYQ06Io
乙だし?
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/24(木) 12:28:32.43 ID:P2EJxTAIO
超絶期待
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:21:01.39 ID:GWfyUqhJ0

女騎士「だいたいさぁ、王立軍が手一杯って、そんなわけないじゃん……。ちょっとでも怪しかったら、自分たちでやるでしょ彼ら……」ブツブツ

役人「……」

女騎士「それを汚れ仕事押し付けるみたいなさぁ……、いや分かるけどね私らもね、そういう役回りなんだって分かってるんだけどね」ブツブツ

役人「……」

役人(女騎士さん……、不機嫌になると、こんな感じなんだ……)

役人「た、確かに、魔女を捕縛するといっても、大義名分はあまり立っていないと思います……」

女騎士「だったら先に、証拠なり証言なり集めるのが筋だろう……」

役人「その通りではあるんですが……、う〜ん……」

女騎士「?」

役人「いえ……確かな話ではないのですが、今回の件、裏というか……違う狙いがあるようで」

女騎士「どういうことだ?」

191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:21:36.62 ID:GWfyUqhJ0

役人「この行方不明事件……、王立軍も、国外に連れ去られた疑いが、濃厚だと見ているようでして」

女騎士「そうなの?」

役人「はい……。まぁ、相当力を入れて、探索していたようですからね。王都内にいる可能性は、まずないだろうと、言っています」

女騎士「ふぅん」

役人「ただ、もちろん国境を管理する城門警備隊は、そんなことはありえない、と」

女騎士「まあ、当然そう言うだろうな」

役人「ええ……、それで、ほら、その2つの組織って、管理局が違うじゃないですか?」

女騎士「あぁ」

役人「王立軍を管理する軍務局と……」

女騎士「……」

役人「城門警備隊を管轄する、内務局の間で、責任の擦り付け合いみたいなことが、ひっそりと起きてるんですね」

女騎士「はぁ……なんだかなぁ……」


192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:22:33.96 ID:GWfyUqhJ0

役人「……ここからは、王立軍の方から聞いた話なんですが……」

女騎士「……」

役人「……軍務局も内務局も、自分たちの責任は認めたくない」

女騎士「うん」

役人「だけど、お互いに責任の押し付け合い、大人げない喧嘩をするのも、本当は避けたいはず」

女騎士「うん……」

役人「……もし、そんな状況で、実行犯は『森』の住人だった、となれば……?」

女騎士「……」

役人「王立軍も、城門警備隊も、自分の仕事に瑕疵はなかった、となり」

女騎士「……おい」

役人「……軍務局と内務局も、無闇ないさかいを避けられる」

女騎士「おいおいっ」

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:23:20.69 ID:GWfyUqhJ0

役人「……すっごく、都合の良い話になりませんか?」

女騎士「待ってくれ! そ、そんなの……っ!」ガタッ

役人「ひぁっ」

女騎士「それじゃあ何か!? 王立軍は自分たちの政治のために、魔女を捕らえて!!」

役人「あわわわ、おち、おちつ――……」

女騎士「都合よく罪を被ってもらおうというのか!? そんなことっ! 許されるとでも……っ!」ダンッ

役人「うぅぅ……」ビクン

女騎士「っ……、あ――……、いや……すまない……」

役人「おお落ち着いて……くださいぃ……」ビクビク

女騎士「あ、あぁ……悪かった。つい、カッとなって……」

役人「……うぅ、……女騎士さんの言うことも、分かります」

女騎士「……」

194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:24:03.23 ID:GWfyUqhJ0

役人「ただ、もし本当に、『魔女』だったら……」

女騎士「……」

役人「多くの人は、女騎士さんのように、間違ってるって、怒ったりはしないと思います……」

女騎士「……」

役人「王都の人間にとって、『東の蜘蛛の森の魔女』は」

女騎士「……」

役人「半分はおとぎ話で、半分は実際の恐怖の対象ですからね……」

女騎士「……」



――怖い魔女が住んでいて――


――森に迷った子を捕まえて――


――醜い蜘蛛に変えてしまう――





女騎士「……」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:24:33.25 ID:GWfyUqhJ0

女騎士(もし……)

女騎士(もし魔女が、捕まったりなんかしたら……)

女騎士(……あの子に味方なんて……)

女騎士(誰ひとり……)



役人「……あ、あのぅ」

女騎士「……ん?」

役人「やっぱり、止めておきますか?」

女騎士「む……」

役人「気乗りする話じゃないのは、よく分かりますし……」

女騎士「……」

役人「……」

女騎士「……」

役人「……」

女騎士「……いや、やる」

196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:25:04.46 ID:GWfyUqhJ0

役人「え?」

女騎士「やらせてもらおう。どんな理由であれ、騎士はその務めを果たすべきだからな!」

役人「い、いいんですか……?」

女騎士「もちろんだとも! しかしなーいやーまいったなー」

役人「え?」

女騎士「すぐ行きたいのはなー、やまやまなんだけどなー」

役人「……あの」

女騎士「たいへんだからなー、うちの騎士団ー、いまたいへんだからなー」

役人「え、ええ……、その辺の事情は、よくわかりま――」

女騎士「準備だけでもなー、相当な日数かかるだろうなー。十日……いや2週間はかかるだろうなーたいへんだからー」

役人「そ、そこは、仕方ないということで、理解してもらえると思い――」

女騎士「そーかそーかー! じゃあお言葉に甘えて、じーっくり支度して、しーっかり任務にあたらせてもらおうかなー!」

役人「はぁ……」

女騎士「よぉうし、わるいまじょめー、くびをあらってまっていろー!」ハッハッハ

役人「……」ポカーン

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:25:39.99 ID:GWfyUqhJ0





〜王都・市街〜







女騎士「……」

女騎士「……」タッ

女騎士「……」タッタッタ…


女騎士(……魔女……)

女騎士(……魔女っ……)



女騎士「……」ダッ!





198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:26:10.63 ID:GWfyUqhJ0





〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







魔女「あらぁ」

女騎士「……」

魔女「あらあら……」

女騎士「……」

魔女「それはぁ……困るわねぇ」

女騎士「そんな悠長な……」

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:26:46.73 ID:GWfyUqhJ0
魔女「はぁ……どうしようかしら」

女騎士「……魔女」

魔女「えぇ」

女騎士「すまない……、こんな暴挙、私が止められれば……」

魔女「もう、また背負いこむ……」

女騎士「……」

魔女「貴方のせいじゃ、ないでしょう?」

女騎士「……けれど」

魔女「すまないなんて、言う必要ないのよ」ナデナデ

女騎士「……こんなときなのに、お前は……」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:27:18.90 ID:GWfyUqhJ0

魔女「でも本当、どうしようかしらねぇ」

女騎士「……魔女」

魔女「ん?」

女騎士「……逃げてくれ」

魔女「……」

女騎士「この国から離れて――……いや、せめて森から離れるだけでもいい」

魔女「……」

女騎士「幸い、お前のことを知っている人は少ないし、王都に身を隠せば……」

魔女「そうねぇ……」

女騎士「そ、そうだ!」


201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:27:44.99 ID:GWfyUqhJ0

魔女「うん?」

女騎士「う、うちに身を寄せたら、い、いいんじゃないか!?」

魔女「騎士さんの家?」

女騎士「あ、あぁ! そうすれば色々……、あの――、なんだ、私が匿ったり、そういうの、できるし……」

魔女「ん〜……」

女騎士「……」

魔女「遠慮しておくわぁ」

女騎士「あ――……」

魔女「ごめんなさいね」

女騎士「……あ、あぁ……いや、こっちこそ……、急に変なこと言っちゃって」

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:28:15.11 ID:GWfyUqhJ0

魔女「うぅん……」

女騎士「だ、だがな……、できる限り早く、森を離れて、身を隠してくれ」

魔女「……」

女騎士「それまでは、私が何とか時間を稼ぐから……」

魔女「……」

女騎士「……お前には、無事でいてほしいんだよ……」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「……分かったわぁ」

女騎士「……そ、そうか!」

203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:28:47.00 ID:GWfyUqhJ0

女騎士「この屋敷も、私が責任もって、荒らさせないし……、絶対に守るし……」

魔女「……ありがとうね、騎士さん」ニコリ

女騎士「……」


女騎士(……あぁ)

女騎士(……いつも通りに、笑ってくれるんだな、お前は……)


女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……あの」

魔女「……え?」

女騎士「また、会えるよな……?」

魔女「……すぐ会えるわよ」

女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……さよならって、言わなくていい?」

魔女「もちろん」

204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/24(木) 22:29:30.89 ID:GWfyUqhJ0
今日はここまでです
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/24(木) 22:33:55.25 ID:CF9qopwk0
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 01:23:34.58 ID:S8Oo3PFXo
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:38:55.92 ID:5SlwGYpT0





〜2週間くらい後〜


〜「蜘蛛の森」入り口〜


ザッザッ

ザッザッ


女騎士「……はぁ」

副団長「……」



ザッザッ

ザッザッ


女騎士「……」

副団長「……」

女騎士「……はぁ」

副団長「……」

208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:39:24.56 ID:5SlwGYpT0

ザッザッ

ザッザッ


女騎士「……はぁぁぁ」

副団長「……団長殿」

女騎士「うん?」

副団長「お疲れなのは、分かりますが……そう溜息ばかりつかれては」

女騎士「う……」

副団長「団の者の士気にも関わりますので」

女騎士「わ……分かってる」

副団長「……」



ザッザッ

ザッザッ


女騎士「……」


〜〜〜〜


魔女『遠慮しておくわぁ』


魔女『ごめんなさいね』


〜〜〜〜


女騎士「……はぁ」

副団長「……」

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:39:56.90 ID:5SlwGYpT0

女騎士(……躊躇いもなく断られてしまった……)

女騎士(やっぱり、唐突過ぎただろうか……)

女騎士(……いや、結局は騎士など、アテになんてできない、とか――……)

女騎士(……いやいや! 魔女がそんな風に思うわけない!)

女騎士(でも、もしかしたら重すぎたかも……)

女騎士(魔女に、引かれてたら……)


女騎士「……」


女騎士(……結構)

女騎士(距離、縮まったと思ってたんだけどな……)


女騎士「……はぁぁぁ」

副団長「団長殿」

女騎士「あ、いや、うん。すまない」

210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:40:26.10 ID:5SlwGYpT0

ザッザッ

ザッザッ


女騎士(……魔女)

女騎士(ちゃんと逃げられただろうか……)

女騎士(……それらしい人物が捕まったという話は、聞いていないが……)



副団長「全員とまれー!」


騎士A「お」

騎士B「……」ピタッ


副団長「……では、団長殿」

女騎士「えー……この先を行くと、魔女の屋敷――……」

女騎士「……えっと、報告によると、そうらしい! そういうことらしい!」

女騎士「諸君らはあくまで、騎士らしく、紳士的に振る舞うこと!」

女騎士「魔女らしい人物が見当たらなくても――……いや、いると思うけど! いると思うから行くんだけど!」

女騎士「屋敷を荒らしたり、無道な真似は避けるように!」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:40:52.90 ID:5SlwGYpT0





騎士A「……団長、またシンドそうだな」

騎士B「な」

騎士A「なんでだろうな」

騎士B「さぁ……、魔女が怖いとか?」

騎士A「まさかぁ。そもそも魔女なんてさぁ……」

騎士B「でも、ほら、あそこ……屋敷あるじゃん」

騎士A「おっ」

騎士B「魔女の――……」

騎士A「……」

騎士B「……」

騎士A「……な、なんか、緊張してきたな」

騎士B「な」

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