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ことり「前略 木漏れ日の貴女へ」
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/07/21(金) 18:45:20.12 ID:+NyjqKO10
『東京のスクールアイドル、山で事故?』
4年前のその記事は、当時ちょっとした騒ぎになった。
彼女たちはまだ無名だったが、美しい少女たちを襲った悲劇に、世間は同情し興奮した。
怪我をしたのは9人のうち1人だけだった。
事故の際ずっと近くにいたという少女は、引きこもったままついぞ出てこなかった。
本当に事故だったのかと訝る声も少なくなかった。
怪我をした少女は、立ち入り禁止の場所に入り、足を滑らせただけだったと発表された。
少女は意識不明の重体のまま、病院で眠っていた。
記事が騒がれたのはここまでだった。
少女の意識は戻らなかった。
世間は真相がただの事故だったことに落胆していた。
彼女はまだ眠っている。
もはや彼女が世間話の種になることはない。
彼女はまだ眠っている。
数人の影がやせ細った腕にゆらゆら落ちた。
「私ね、一年前に、日本に帰ってきたの」
「もうすぐ戻らないといけないんだけどね。今は夏の終わりだけれど、ロシアって涼しいのよ。……って、こんな当たり前のこと言ってたら、私がポンコツみたいね」
「今日はね、話があってきたの。信じられる? あの娘がお見舞いに来たのよ」
「ね、海未?」
「もう、絵里ったら、人が悪いですよ……」
「……」
「……」
「「くふっ」」
くつくつと押し殺した笑い声が病室を浸し、煙のように消えた。
「ああ、そう、そうだったわね、話よ。話があるの。どこから話そうかしら……」
彼女の長い髪の一房に、金の髪が触れる。
「そうね、ここから始まったのよ。遅すぎるくらいだけれど」
「夏の終わりにね、海未から手紙が来たの」
*
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