P「アイドルマスターと」あやめ「シンデレラガール」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

42 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/20(火) 19:39:17.50 ID:K/bllMQc0
...やはり難しいものだ。打開策がなかなか見つからない。一体どうやってPaPさんたちは仕事を取ってくるのだろうか?
PaPさん達それぞれの仕事をみてやり方は覚えたのでその通りにはやっているのだが...


友「それにしても...最近あやめちゃんとはどうだ?うまくやれてるか?」


P「上手くやっているも何も学校からよく一緒に帰ってることは知ってるだろ?」


あやめとはそのまま898プロへと向かう都合上一緒に帰ることが多い。


友「いやー、ほらなんだ?付き合ったりはしてるのか?」


P「そんなわけないだろ、あくまで俺とあやめは...」


友「俺とあやめは?」


P「...なんでもない」


友「なんだよー、気になるじゃねぇかよー!」


P「引っ付くな!ほら、そろそろ授業始まるぞ」


友「ちぇー」


友はしぶしぶ席へと戻っていく。
...疲れる奴だ。


--------------------------------------------------------------------


あやめ「プロデューサー殿ー!」


放課後になって人の立ち入りがまばらになった教室に俺を呼ぶあやめの声が響く。


P「わああああっ!!」


俺はとっさに大声を出してあやめの声をかき消そうとする。だがそれが余計に注目を集めてしまった。


ざわざわ...えープロデューサーって、そういうプレイ?...


周りの声が痛い...
俺はあやめの手を掴みそそくさと教室を出て898プロへと向かった。
43 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/20(火) 19:47:52.68 ID:K/bllMQc0
898プロへの一本道まで来るとあやめが口を開く。


あやめ「あ、あの...プロデューサー殿、そろそろ手を放していただけると...」


P「あ、ごめん」


あやめ「どうしてそんな急いでいるのです?」


P「あやめ...学校では俺の事をプロデューサーって呼ぶなって言っただろ?」


あやめ「...あっ」


あやめはどうにも注意が足りないようだ。


あやめ「でも、どうして知られてはいけないのですか?」


P「それは...」


言葉に詰まる。...俺はどうして知られたくないんだろう?


あやめ「別にいいではないですか!様々な方に知っていただきましょう!」


P「うーん...まぁ人気になれば自然とみんなにも知ってもらえるんだし、それでよくないか?」


今度は自然と言葉に出せた。


あやめ「...それもそうですね!」


あやめも納得してくれたようだ。
...それにしてもなぜ俺がプロデューサーだという事がばれるのが嫌だったんだろう。少し胸に突っかかった。

898プロに着くとあやめをレッスン場まで送り、俺は事務所に向かった。
事務所にはPaPさん達プロデューサー三人衆がいた。


P「先輩方、休憩ですか?」


PaP「おっす、学校お疲れ!」


P「ちょうどよかった。少し聞きたいことがあるんですけど...」


そうして俺は悩みをPaPさん達に打ち明ける。それを聞いたPaPさん達は、難しい顔をした。


PaP「うーん、何度も言ってると思うがまだ一か月なんだ、そこまで悩む必要はないと思うぞ?」


CuP「僕たちも最初はそんなもんだったし、何より君はまだ学生だしねぇ...」


P「いや、駄目なんです!もっと頑張らないと...!」


CoP「...うむ」


CoPさんは一人納得しているようだった。
44 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/20(火) 20:03:24.15 ID:K/bllMQc0
PaP「...なぁ、もっと肩の力抜かないと駄目だぜ?」


P「...?」


PaP「今の君はすごい焦ってる。顔が怖くなってるぜ」


CuP「そうそう!だからもっと楽しまないと!」


そう言ってCuPさんは俺の頬をつねる。


P「たのひぃむ、れすか?」


PaP「俺たちはこの仕事を楽しんでる。楽しめば自然と仕事はついてくるもんだぜ?プロデューサーってのは」


CoP「勝手なことを言うな。全く...」


PaPさんの言葉を聞いたCoPさんが割り込んでくる。


CoP「...だが、楽しむ、というのは間違ってはいない。私が言えることは、己を縛る鎖を一度外してみるのも大切だ。ということだ」


CoP「その鎖を外すためにPaP達は楽しむ。それだけの事だ、焦りは思考の妨げになるぞ?」


P「鎖を外すために楽しむ...」


確かに俺はプロデューサーになってから...いや、その前からずっと基本的に不安や焦燥といった負の感情しか感じていなかった。
学校の奴らにプロデューサーとバレるのが嫌だった時だって...恥ずかしかったんだ、何もできないプロデューサーでいるのが。
...そのぐらい、俺はプレッシャーを背負っていたのか......


P「...ありがとうございます。何か掴めた気がします」


PaP「おっ、そうか。そりゃよかった!」


CuP「んーっ、もうこんな時間かー、そろそろ仕事しないとっ」


PaP「じゃあな、お互い頑張ろうぜ!」


そう言ってPaPさん達は各々の仕事をしに行く。
その際にCoPさんは。


CoP「これを食えば一発で冷静になれるぞ?」


と言ってチョコをくれた。
45 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/20(火) 20:21:47.12 ID:K/bllMQc0
-------------------------------------------------------


その後、俺はなんとか仕事相手との話し合いの場を設けるところまでこぎつけた。次の土曜日の話し合いでうまく進めば晴れて初仕事となる。
...だが、いつも俺はなぜかここで失敗してしまう。しかも、今度会う人は既に別件で一度断られているので厳しくなるだろう。
やらなければ、という気持ちが心を圧迫し、沈めていく...
おっと...またプレッシャーを感じていたのか、俺は。CoPさんから貰ったチョコを口に入れ、気持ちを落ち着かせる。

...あやめのレッスンが終わる時間か。
あやめのレッスンが終わると俺はあやめを迎えに行き家まで送った後、そのまま俺も帰るか、一度戻るか。というサイクルになっている。
仕事がないのでそのまま帰ることが大半だが。

あやめを迎えに行き帰路につく途中、俺はこんな事を聞いた。


P「あやめ、レッスンは楽しいか?」


あやめ「はい、楽しいですよ!」


あやめ「トレーナー殿は厳しいですが、やり遂げた時には充足感がありますし、ほかのアイドルの方々もとてもいい人ばかりで毎日楽しいです!」


P「...そうか、それはよかった」


楽しむなんて誰もがやっている事なのか...そりゃそうだよな。この仕事はやろうと思わなきゃできないんだから。
...でも俺は、あやめの為にやろうと思ったんだ。ほかの人とは違う。

PaPさん、CoPさん、CuPさん、ごめん。やっぱり俺がこの仕事楽しむことは難しいかもしれない。でも...


あやめ「プロデューサー殿は、楽しいですか?」


P「...あやめと一緒なら、どんな事でも楽しいよ」


そう。あやめとこの仕事を楽しむために俺はプロデューサーをするんだ。


あやめ「...わたくしも、プロデューサーと一緒が一番です!」


P「...うん、ありがとう、あやめ」


...次の打ち合わせは全力で挑み、そして...楽しむ。あやめのために。
46 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/20(火) 20:50:22.02 ID:K/bllMQc0
-------------------------------------------------------


ディレクター(以降、D)「ですから...ここをこうして...」


P「ええ...」


俺は今、Dと打ち合わせをしている。テレビというのはある程度人気にならないと出られないものだと思っていたが、そうでもないらしい。
さすがアイドルブーム真っ盛り中、といったところか。

そしてその打ち合わせだが...やはり、難儀している。というのも、やる事はもう既に決まっている。食べ物ロケだ。しかし、場所や食べるものが全く決まらない。Dは色々な提案をしてくれるものの、どれもいまいちしっくりこない...それは相手もわかっているようではある。
そういったやり取りをしていく内にだんだん場の雰囲気が悪くなっていく。くそっ、まずいな...


D「...一度、休憩を入れましょうか」


P「...はい」


結局大した案は出ないまま、一度休憩をすることとなった。

俺はCoPさんから貰ったチョコを口に入れ、リフレッシュを図った。そうすると様々な思考が浮かんでくる。
...俺は楽しめているか?思えば、基本受け身で相手の答えに相槌を打ち、無難に終わらせようとしている。
...ふと、友の言っていた言葉が頭に浮かんだ。


P「好きなら語れ...か」


俺はあやめについて思いつく良さを可能な限り浮かべていく。

どんな人にも優しくするとところ。人から貰ったものをとても大切にしてくれるところ。時代劇やお祖父さんの影響で丁寧で、古風なしゃべり方をするところ、そして慌てると、その口調が崩れるところ。そして、勝手にあやめの前からいなくなった俺を許してくれるところ。
ぱっと思いつくだけでこれだけある。そのほかにも考えればあやめの良いところなど星の数ほど湧いて出る。

ふと、あやめのあの太陽のように輝かしい笑顔が頭をよぎる。
その瞬間、俺の方に乗っていた何かが落ちた感覚がした。
...ありがとう友、お前のアドバイスは役に立ったよ。
心の中でそう感謝し、俺は時計を見る。
...もうそろそろか。

......さぁ、語ろうじゃないか、俺の一番好きなアイドルの事を...!
47 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/21(水) 20:01:07.29 ID:zqE9dyVV0
D「...続き、始めましょうか」


P「はい」


D「まず、収録場についてですが...」


P「それに関してですが、少しいいですか?」


D「...?はい、なんですか?」


P「彼女の魅力を引き出すならここが良いかと」


そう言って俺はニンジャパークのチラシを見せる。パークとついているが、どちらかというと和の観光地として有名な場所だ。


D「ニンジャパーク...ですか」


P「ええ。それで、食べるものについてですが...お団子、はどうでしょうか?」


D「お団子ですか...失礼ですが、初の露出にしては少し地味なのでは?」


P「...いえ、これでいいと思います」


P「彼女は昔から時代劇を見ていて、その中でも忍者が特に好きなのです。そんな彼女が一番力を発揮できる場所...それはここしかない。そう思います」


そういえば、あやめは小さい頃ここに行ってみたいって言っていたっけ。
そういった事を思い出し、思わず笑みがこぼれる。


D「...随分自信がおありのようですね?」


P「ええ。必ず成功します」


D「自分で言うのもなんですが、私はこれでもこの仕事を長くやっている方です。その私が勧めるところよりも良い、と?」


P「...確かにあなたの方が私よりもずっと仕事の腕は立つのは間違いありません。それ以前に私よりも力を持っている人が大半だと思っています」


P「ですが、私はあなたよりも彼女の事を知っている」


あやめの良いところをたくさん知っている、俺は。


P「あやめの、プロデューサーですから」


そこまで言うと一瞬Dさんの表情は固まり、その後にっこりと笑った。


D「...いいね。君は今とてもいい顔をしている。PaPが君をプロデューサーにスカウトしたのもわかる気がするよ」


P「...ありがとうございます」


D「じゃあ、もっと聞かせてくれる?君の、アイドルの事を」


P「...はい!」
48 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/21(水) 20:16:42.56 ID:zqE9dyVV0
-----------------------------------------------------


俺は今898プロに来ている。レッスン終わりのあやめが待っているからだ。
コン、コン、コン。となぜか事務所の扉を三回ノックする。別に普通に入ればいいものを。
「はい、今出まーす!」という声が聞こえる。この声は、姉さんか。
そして、扉が開かれた。


ちひろ「あれ、プロデューサーさん。わざわざノックなんかしてどうかしましたか?」


P「...あやめはいる?」


ちひろ「...ええ、今レッスンが終わってあなたを待ってるってソファーで休んでるわ」


P「そうか、ありがとう」


お礼を言って俺はあやめの所へと向かう。あやめはソファーに座ってうつらうつらと舟をこいでいた。


P「あやめ」


そう言ってあやめの肩を優しく揺らす。


あやめ「ふぇ?...P、P殿!?」


俺に気が付くとあやめは飛び起きた。...久しぶりに本名で呼ばれたな。


P「お疲れ様。待たせてごめんな?」


あやめ「いえ、大丈夫ですよ!そちらもお仕事お疲れ様です!...恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね...」


P「いやいや、可愛かったぞー?」


あやめ「か、からかわないでください!」


...本当に可愛かったんだけどな?と、そうだ。先にこれを伝えないと...


P「ああ、そうだ、仕事、取ってきたぞ?」


努めて冷静に伝えようとしたが、語尾が上ずってしまった。


あやめ「...え?」


ちひろ「ええええええええっ!!?」
49 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/21(水) 20:34:53.71 ID:zqE9dyVV0
P「うわっ!姉さん聞いてたのか!?」


俺の後ろから姉さんが出てくる。


ちひろ「あはは...だって可愛い弟と将来の義妹がいちゃいちゃしてたら気にもなるっていうか...」


P「...はぁ」


あやめ「それよりも、本当なのですか!?仕事が取れたというのは?」


ちひろ「そ、そうよ!」


P「あ、ああ、聞いて驚くなよ...?」


俺は仕事内容を二人に伝える。


あやめ「ニンジャパークとは...あのニンジャパークの事ですか!?」


P「あやめがどのニンジャパークを想像してるのかは知らないが...たぶんあやめが今考えてるので間違ってないな。昔行きたいって言ってたからな、あやめ」


ちひろ「こ、これは...快挙よ!」


P「ん?快挙って?」


ちひろ「一か月で仕事を取る。なんてことはまずありえないの。早くて三か月はかかるものなのよ!」


P「そ、そういうものなのか...」


姉さんが騒いでいると不意に事務所の扉が開いた。


PaP「おっすー。騒いでるみたいだけどなんかあったかー?...おっ、Pじゃないか、お疲れ様」


P「あ、はい。お疲れ様です」


ちひろ「聞いてくださいPaPさん!実はですね...!」


PaP「仕事取ってこれたんだろ?」


ちひろ「!?どうしてそれを?」


PaP「んあ、DとCoPから聞いた。P、おめでとう!」


あやめ「CoP殿からも、ですか?」


P「ああ。実はな、その仕事にはCoPさんが担当しているアイドルの一人である橘ありすさんも来るんだ」


そう、あの後CoPさんもDさんとの打ち合わせが入っていて、話を合わせてくれた。CoPさん曰く、新人に任せるのは不安だ。という事らしい。


PaP「...迷惑な奴だよなぁ、あいつも」


P「?、どういうことですか?」


PaP「あ、いや、何でもないぞ?」


一体何なのだろう。とにかく、仕事が取れて本当に良かった...後は無事に終わるのを祈るだけだ...

......後々俺はPaPさんの言葉の真意を知る事となる。そして、それと同時に、思わぬハプニングに見舞われる事となる...
50 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/21(水) 20:50:54.53 ID:zqE9dyVV0
------------------------------------------------


あやめ「...ここが、ニンジャパーク...っ!」


あやめは目を輝かせている。
そう、俺たちは今、ニンジャパークへと収録に来ているのだ。


P「...あやめ、楽しむのはいいが、一応仕事で来てるんだし少しは自重しような?」


あやめ「わ、わかっていますとも!」


あやめは少し涙目になって言葉を返した。


D「いやー、本当にあやめちゃんは忍者が好きなんだねー」


P「それで...これからの予定に関してですが...」


D「そうだねぇ、準備までにまだ時間があるから...それまでは自由時間かな」


自由時間と聞いた瞬間、あやめが俺の手をぐいぐいと引っ張ってくる。


あやめ「あちらにからくり屋敷がありますよ!行きましょうプロデューサー殿!」


P「お、おい!ちょっと待ってくれ!」


P「あの!Dさん、集合時間は?」


D「うーん、13時くらいかなぁ」


時計に目をやると、針は10時を指していた。


P「わかりました!ありがとうございます!」


D「いえいえ、いってらっしゃーい」


<お、おい、引っ張るなって......
51 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/21(水) 20:57:52.31 ID:zqE9dyVV0
D「...やっぱり、彼はあやめちゃんと一緒にいる時が一番輝いてるねぇ...そうは思わないかい?CoP君」


CoP「...そうでしょうか?」


D「相変わらず素直じゃないねぇ」


ありす「...」


CoP「おい、橘。どこに行くんだ?」


ありす「...どこだっていいでしょう?ついてこないでくださいね。それでは」


CoP「気をつけろよ?」


ありす「...ふんっ」


D「......ありすちゃん、行っちゃったけどいいの?」


CoP「ついてくるな、と言ったのですから無理にはついてはいけませんよ」


CoP「それでは私も、ニンジャパークを見学させていただきますね」


D「ん?ああ...ってもういないし」


D「...見学するような性格でもないのに、全く...本当、素直じゃないねぇ」


-----------------------------------------------------


あやめ「わぁ、見てくださいこれを!」


P「あやめ、目が回らないか、それ?」


あやめは今どんでん返し(回転する扉のこと)を行ったり来たりしている。


あやめ「とても楽しいですよこれは!プロデューサーも一緒にやりましょう!」


P「いや、俺は...ん?」


あそこにいるのは...橘さん?
52 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/21(水) 22:03:51.50 ID:zqE9dyVV0
P「なぁあやめ...!?」


あやめがいた方へ再び目を向けるとそこにあやめはいなかった。


P「あやめ!?」


急いで俺もどんでん返しをくぐるが、奥には誰もいない。


P「いない...!?」


一体どこに...そう思った瞬間。


あやめ「プロデューサー殿?」


P「わあっ!!?」


あやめが天井から降ってきた。
どうやら上に隠れるスペースがあるらしい。


あやめ「ふふん、見ましたか?今のはとてもしのびらしい立ち振る舞いだったでしょう?」


P「...ははっ、確かに凄いしのびらしかったな」


あやめ「でしょう!?」


ふぃー、無事でよかった...
その後俺とあやめは内部の仕掛けを一通り楽しみ、からくり屋敷を後にした。


あやめ「楽しかったですね、プロデューサー殿!」


P「ああ...そういえばあやめはここに来るのは今日が初めてなのか?...俺がいない3年間で行ったりとかは...」


あやめ「...ここの事を考えると、プロデューサー殿の事を思い出してしまうので...」


P「...そうか......ごめんな」


あやめ「いえ、気にすることはないですよプロデューサー殿」


あやめ「プロデューサーが覚えててくださっただけでもあやめは満足しておりますから!」


P「...ありがとうな」


あやめ「また、参りませんか?...今度は二人で」


P「ああ、そうだな...ん?あの子は...」


俺はベンチに座ってタブレットをいじっている橘さんを見つけた。
53 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/22(木) 19:55:18.50 ID:JLR/ITJ50
あやめ「ありす殿ですね。何をしているのでしょう?」


P「からくり屋敷でも見かけたんだけど...」


あやめ「...もしかして!しのびに興味を持っていただけたのでしょうか!?」


あやめ「行きましょう、プロデューサー殿!」


P「おいおい、引っ張るなって!」


橘さんか...正直苦手なんだよなぁ...
失礼だが、子供の割には妙に大人びている気がするので、とても話しづらいのだ。
あやめぐらい素直なら助かるんだけどなぁ。
俺はここに来るまでの車での一幕を思い出した...


-------------------------------------------------------


...気まずい、非常に気まずい。
俺は今、車に乗っている。ここには俺、あやめ、そしてCoPさんと橘さんが乗っているのだが...
後部座席に座っている俺とあやめの間に橘さんが座っているので俺とあやめは話しずらく、橘さんは仏頂面でタブレットを弄っていてとても話しかけづらい。
同じことをあやめも思っていたらしく、とても微妙な顔で座っていた。
しかし、ついにこの空気に耐え切れなかったのか、あやめが口を開いた。


あやめ「ありす殿!しのびはお好きですか!?」


...おいおい、いくら何でも唐突すぎやしないか?
すると、橘さんがタブレットを弄っていた手を止めた。


ありす「...私の事をありすと呼ばないでください。それと忍者は別に好きではありません」


あやめ「でしたら是非ありす殿にしのびの事を...」


ありす「いいです、興味ないので。それとありすと呼ばないでください」


おおう、どっかの格ゲーの大斬りのようなバッサリ感だ...
あやめが縋るような目で見てくる。いや、俺にどうしろと?
しかし、あやめが助けを求めているのに放っておくわけにもいかない。ふむ...


P「...あの、CoPさん」


CoP「私は今運転中だ、話しかけないでくれ」


P「はいすみません!」


...はぁ、CoPさん経由で話して貰おうと思ったが駄目か。仕方ない...
54 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/22(木) 20:18:28.36 ID:JLR/ITJ50
P「あの、橘さん?」


ありす「...なんでしょうか」


P「もう少し、あやめと仲良くしてくれないかな?その、一緒に仕事もするんだしさ」


ありす「...仲良くする必要性が感じられません。大体ユニットを組むわけではないのですから親交を深める必要はないです」


...むむむ、言い切られてしまった...よしっ。
俺はあやめに目で伝えた。


P(無理だ、俺にはできない)


あやめ(ぷ、プロデューサー殿〜!)


よし、俺の思いはどうやら伝わったらしい。
...こんなんで、やっていけるのかなぁ......


------------------------------------------------


あやめ「ありす殿〜!」


P「橘さん、こんにちは」


俺たちはベンチに座っていた橘さんに話しかけた。


ありす「...なんでしょうか?Pさん、浜口さん」


P「...名前、覚えててくれてたのか」


ありす「それぐらいは流石に覚えます...」


あやめ「プロデューサー殿!失礼ですよ!」


P「ご、ごめん」


ありす「それで、何の用ですか」


あやめ「...先ほど、からくり屋敷来ていたそうですね?」


ありす「...ええ、まあ」


あやめ「と、いう事は!しのびに興味を持っていただけたのですね!?」


ありす「いえ、それはないですよ。せっかく来たのに勿体ないと思ったので見てただけです。ぼーっと」


...ぼーっと、という言葉を付け足してダメージを上げたか。ひどい。


あやめ「う、うう...」


P「...なぁ、どうしてそこまで俺たちを毛嫌いするんだ?仲良くなるくらい別にいいじゃないか」


P「それに君が一人でいるとき、少し寂し気に見えたし」


...なぜか、俺の心の奥がチリチリと焼けるような感覚がする。
55 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/22(木) 20:34:23.49 ID:JLR/ITJ50
ありす「...あなたに、私の何がわかるんですかっ!」


P「う...ごめん」


ありす「私だって、CoPさんと...!」


P「え...?」


ありす「...なんでもないですっ」


と言って橘さんは走り去ってしまう。
?、あそこにいるのは...


あやめ「プロデューサー殿!追いかけましょう!」


P「いや、俺はちょっと残る。あやめは橘さんについててくれ」


あやめ「...わかりました!」


あやめは俺から何かを察したのか、すぐにそう答えて橘さんの後を追っていった。
俺はその姿を見送った後、ベンチから少し離れた木に向かって声をかけた。


P「...出てきたらどうです。CoPさん」


木の影からCoPさんが出てくる。


P「何してるんですか?」


CoP「...監視だ。トラブルに巻き込ませるわけにはいかないしな」


P「一緒についててあげればいいじゃないですか」


CoP「...それは」


P「...?」


あやめ「プロデューサー殿!」


CoPさんが言葉に詰まっていると、あやめが息を切らして戻ってきた。


P「どうしたんだ、あやめ?橘さんを追っていったはずじゃ...」


あやめ「ありす殿を見失ってしまいました!」


P「な、なんだって!?」


話を聞くと、あやめは追いかけていたが、橘さんは人ごみに紛れて姿を消してしまったらしい。多分わざとだろう。


56 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/22(木) 21:04:27.28 ID:JLR/ITJ50
あやめ「申し訳ありません!わたくしのせいで...」


P「...いや、あやめのせいじゃないさ。落ち込むな」


俺は時計をみる。...13時まではあと20分ほどか...くそっ、あの様子だと、まさか仕事すっぽかす気じゃねぇだろうな...!?


P「探しましょう、CoPさん!」


と俺がCoPさんの方に向き直ると、彼は顔面蒼白となっていた。


P「...CoPさん!大丈夫ですか!?」


CoP「...!あ、ああ、大丈夫だ、すまない」


そう言ってCoPさんはチョコを口へと放り込んだ。
...そんなに動揺しているのか。
その後、あやめは先に収録現場へ戻ってもらい、俺とCoPさんで二手に分かれて橘さんを探すことにした。
俺は走った。こんな事であやめの初仕事を台無しにするわけにはいかない。
...ああ、苛つくな、こんなに苛つくのは滅多に無いぞ。

...まるで、俺を見ているかのようだ。
俺の中にはまだあのチリチリとした感覚が広がっていた。


-------------------------------------------------------


俺たちが橘さんを探し始め、十分ほどの時間が経とうとしていた。


P「...見つけた」


橘さんは先ほどのベンチに座っていた。どうやらすれ違いだったらしい。
俺は急いで駆け寄る。
こちらへ向かってくる足音を察したのか橘さんは嬉しそうにこちらに顔を向けるが、
俺を視認した途端、その笑みは失せた。


P「...橘さん」


俺はなるべく平静を保った声色で橘さんに話しかけた。


ありす「...Pさんですか」


P「...もうすぐ、収録だよ」


俺の冷たい声に橘さんの表情が一瞬強張る。


ありす「はい、わかっています」


さっきと変わらない態度でそう言い放つ橘さんに俺は苛ついていた。
だが、橘さんの顔を見ると、その顔はとても不安げだった。いや、後悔、焦燥、失望...
様々な感情が織り交ざったとても複雑な表情をしていた。
その時、俺は中学時代の頃を思い出す。
あの時の俺もあやめから逃げ、その後悔や逃げたことによる日常の変化への不安、そして、何よりも寂しかった。

...今はそうではないと言えるのか?


P(...今はそんなことを考えている場合じゃないな)


もう俺の中から苛立ちは消え去っていた。
57 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/23(金) 21:04:28.46 ID:0UeT0WT30
P「...どうして、ここにいるの?」


ありす「...っ!すみま、せんっ!」


耐え切れなくなったのか橘さんは泣き出す。
...泣きたいのはこっちなんだけどな。
俺は、橘さんの横に座った。

P「...橘さんはさ、寂しかったんだろ?」


橘さんが僅かに反応する。


P「寂しくて、CoPさんに見てもらいたくて、わざとこんなことをした...違う?」


ありす「...なんでっ」


P「...俺も昔、似たようなことがあったんだ」


------------------------------------------------------


(「今までお前と仲良くしてたのは母ちゃんが898プロの社長の息子だから仲良くしろって...」)


(P「えっ...?」)


(「でももういいってさ!だからお前とはもう遊ばねーよ!」)


(P「ま、待って!」)


({早くみんないこーぜー」)


(P「そ、そんな...」)


(「...ん?なんだこれ?」)


(P「そ、それは...!」)


(「うわっきもっ!こいつキャラクターの絵なんか大事に持ってたぜ!?」)


(P「か、返してよ!」)


(「...そうだ、いいこと思いついちゃった!...おらっ!」)


ビリビリッ!


(P「えっ...?」)


パラパラ...


(「うわっ、やるじゃん!破いてドブに捨てるかー!」)


(「ほらっ、取って来いよ!」)


ドンッ!...


58 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/23(金) 21:37:29.01 ID:0UeT0WT30
--------------------------------------------


P「...怖いよな、人って」


ありす「...いきなりっ、なんですかっ」


P「実はな、俺とあやめは最近、一緒にいるようになったんだぜ?」


ありす「...あんなに仲がいいのに、ですかっ?」


P「ああ、昔、俺はあやめから逃げたんだ...」


俺は橘さんにその時の事を話した。


ありす「...そんなことが、あったんですね」


俺が話し終えるころには橘さんはすっかり泣き止んでいた。


P「...たぶん俺は、怖かったんだと思う」


ありす「怖かった?」


P「ああ。今の俺があやめに今まで道理接することができるのか。あやめがいつも通りの笑顔を見せてくれるのか、怖かったんだ。だから、逃げた」


ありす「...私も、怖かったんです。CoPさんは私に何も言わなくて、だから私はCoPさんにとってなんなんだろうって。そう考えると、怖くて」


P「だったら、正面から伝えればいいんじゃないのか?」


ありす「...正面から伝えれば、私はCoPさんの気持ちと向き合わなきゃいけない。それが、嫌で」


P「それで今回の行動、ってわけか...」


ありす「怖いです...!人とかかわるのが。裏切られるくらいなら最初からかかわりたくない...っ!」


P「それで、あやめにもあんな態度を?」


ありす「...浜口さんには申し訳ないと思っています」


P「...そんなに怖がらなくてもいいだろ」


ありす「えっ?」


P「確かに、裏切られることもあるかもしれない。でも、そうでないことの方が多いさ。少なくともあやめはそんな奴には見えないだろ?」


ありす「...はい」


P「それにCoPさんも」


P「プロデューサーが自分のアイドルを嫌いになるわけないだろ?プロデューサーなんだから」


ありす「...ふふっ、なんですか、その何の根拠もない発言は?」


橘さんの表情が柔らかくなっている。
59 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/23(金) 22:01:08.97 ID:0UeT0WT30
P「うっ、笑うなよ」


ありす「...なんだか、さっきまで悩んでた私が馬鹿らしくなっちゃいました」


ありす「...触れてみないと、わからないこともありますよね」


P「...ああ」


時計をみる。時刻は13時を指していた。
俺は携帯を取り出し、手早くCoPさんに橘さんを見つけたと伝えた。


P「...帰ろう。あやめも、CoPさんも待ってる」


ありす「...はい!」


そうして、俺たちは収録現場へと向かう。


ありす「...許してくれるでしょうか?CoPさん達は」


P「...それは、わからん」


ありす「わからないって...慰め下手ですか?」


P「...む」


ありす「まぁ、私としては言葉を取り繕わない人の方が好きですし」


その言葉を聞いた瞬間、軽い頭痛が俺を襲った。


(「俺は、言葉を取り繕わない奴は好きだぜ?」)


ありす「...どうかしましたか?」


P「...いや、なんでもないよ。...早く行こうか」


ありす「はい」


...今の声は、いったい?
俺にはその声の正体はわからなかった。しかし、その声は俺の不安を駆り立てる。
...早く行こう。あやめに会わなくちゃ。
自然と俺の足運びは早くなっていった...
60 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 00:35:13.28 ID:uuobZfLo0
俺たちが収録現場へと戻ると、そこには既にセットを終えているDさんとスタッフの人たち、あやめ、CoPさんがいた。


あやめ「プロデューサー殿!ありす殿!」


俺たちを見るなり、あやめが駆け寄ってくる。


D「おお、帰ってきた!良かったよー」


Dさんも安堵の表情を浮かべている。


P「...ほら」


俺はありすの背中を軽く押す。


ありす「...はい」


ありすは緊張した面持ちであやめ達の前に出る。


ありす「...ごめんなさいっ!」


そう言って頭を下げた。


D「...僕としては、さほどの遅れは出ていないし、こうして謝ってくれたからいいよー、みんなもそうだよね?」


他のスタッフたちもDさんの言葉にうなずく。


あやめ「...ありす殿」


あやめはとても真剣な顔つきでありすを呼ぶ。


ありす「...はい」


あやめ「わたくしは、これが初めてのお仕事となります。ですのでとても気合を入れてまいりました。
しかし、ありす殿に危うくそのお仕事を台無しにされるところでした」


ありす「...はい、浜口さんにはなんと謝ればいいのか」


あやめ「...でしたら、一つ条件をお飲みください」


ありす「...私にできる事なら」


P「......」


あやめ「...わたくしと友になりましょう!ありす殿!」


ありす「...え?」


P「やっぱり、あやめはそう来るよな」


あやめ「やはり、プロデューサー殿にはお見通しのご様子ですね」
61 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 14:38:13.36 ID:uuobZfLo0
あやめ「それでありす殿、友となってくれるのですか?」


ありす「...はい!こちらこそよろしくお願いします、浜口さん!」


橘さんは満面の笑みでそう答えた。
...なんだ、いい笑顔できるんじゃないか?


あやめ「友となったからにはわたくしの事はあやめとお呼びください!」


ありす「ええ、わかりました、あやめさん!」


こっちは片付いたな。あとは...
CoPさんがこっちに近づいて来る。相変わらず冷静な顔つきで、どんな感情を抱いているかは読み取れない。


CoP「...橘」


ありす「...っ!、CoP、さん」


CoPさんは橘さんに近づき...そのまま抱きしめた。


CoP「...無事で、よかったっ...!」


ありす「く、CoPさん、ごめんなさい、私...私!」


CoP「いいんだ。俺が悪かった...橘の事も考えないで付き合い方を自己完結してしまって...!」


ありす「ぐすっ...CoPさん!」


橘さんはCoPの腕の中で泣きじゃくった。


あやめ「...やはり、プロデューサーとアイドルの絆と言うものは、とても偉大ですね。プロデューサー殿」


P「...ああ、そうだな」


俺もいつか、あんな自分のアイドルを支えられるプロデューサーに...
...俺の頭の中に、声が響く。



(「無理だろ。あの時、あの人を助けられなかったお前じゃな」)
62 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 15:01:01.98 ID:uuobZfLo0

---------------------------------------------------------


その後の収録はとてもスムーズに進んだ。あやめはとても楽しく収録に臨めたようだ。ここに来てよかったと思えた、橘さんとも仲良くなれたしな。
それと、あやめがお団子をおいしそうに食べている姿がとても愛らしくてじっと見ていたら収録後、あやめに怒られた。

帰りの車の中では、行きの時の重苦しい雰囲気は微塵も感じられず、和やかに話が弾んでいた。
...無事に成功か。よかった......
安心したらどっと疲れが出てきた気がする。帰ったらゆっくり休もう。そんなことを思っていると。


あやめ「プロデューサー殿はどっちですか!?」


...うん?


P「ごめんあやめ。聞いてなかった」


ありす「影分身の術と変わり身の術、どちらがやりたいかという話です」


P「なんだその二択?...まぁどっちかと言ったら変わり身の術かな」


ありす「やっぱりそうなんですよ、あやめさん」


あやめ「ええーっ!?プロデューサー殿は分身したくはないというのですか!?」


P「いや、そりゃあ分身してみたい気もするけど...どちらかと言うと、変わり身の術だなぁ」


あやめ「そんなぁ...」


ありす「ふふん、やはり私の方が正しかったみたいですね?」


俺の意見で決めるのはどうかと思うし、正しいとかあるのか?


P「橘さんは変わり身の術派なのか?」


ありす「ええ、そうですよ。敵を欺くことはとてもかっこいいじゃないですか!」


...まぁ確かに。因みに俺は飛鳥返しが一番好きだ。リュウ・ハヤブサのを見て惚れた。


ありす「...それと」


P「うん?」


ありす「私の事はありすと呼んでもかまいませんよ。一応、友人ですからね」


P「...ありすさん?」


ありす「さんもいりませんよ」


P「...ああ、わかったよ、ありす」


そう言うとありすは顔を赤らめた。照れ臭かったみたいだな...
63 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 15:18:09.42 ID:uuobZfLo0
あやめ「むっ...プロデューサー殿!わたくしの事も呼んでください!」


P「えっ?、あやめの事はいつも名前で呼んでるだろ?」


あやめ「いえ、もう少し凛々しい声でお呼びください!」


難しいな...
俺はさっきありすと言った声を意識する。


P「...あやめ」


そう言うと、あやめの顔が真っ赤になる。


あやめ「...えへへ」


P「...こっちが恥ずかしくなるな...」


CoP「ふっ...相変わらず騒がしいな」


P「うっ...すみません」


CoP「...褒めてるんだ」


P「え、あ、はい」


ありす「ふふっ、なんだかむず痒いですね」


どうにもCoPさんと話していると怒られてる気分になるんだよなぁ。
こんな、他愛のない会話をしているうちに俺たちは898プロへと帰ってこれた。

事務所にいた姉さんやPaPさんに初めての仕事についていろいろと聞かれたが、CoPさんとありすの事については俺からは隠しておいた。
その後俺とCoPさんはそれぞれあやめとありすを家へと送り、898プロへと戻った。今回の仕事についてまとめたかったからだ。


CoP「...少し、話をしないか?」


作業も終わり、一息ついた俺をCoPさんが呼び止めた。


CoP「...今日はすまなかった」


P「...いいんですよ、無事に終わりましたから。それに、もし失敗したら、それは俺の責任ですから」


CoP「そうか...」


CoP「...今日で分かったんじゃないか?」


P「何がです?」


CoP「長く様々なアイドルをプロデュースしている私たちも全然完璧じゃないってことだ」


CoP「だから、それほど焦る必要は...」


P「...別に、劣等感を抱いていたからこんなに焦っているわけではないですよ」
64 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 15:40:24.61 ID:uuobZfLo0
P「...劣等感を抱いていないといえば嘘になります。でもそれが今焦っている直接の原因ではないです」


P「CoPさん、俺は次のシンデレラフェスで、あやめを優勝させます」


CoP「!...できると思っているのか?」


P「できる出来ないじゃなく...やるんです」


CoP「...どうしてそこまで」


P「...実は俺とあやめは最近仲直りしたんですよ。だから、それのお詫びっていうか」


CoP「...それが、本当の理由か?」


P「...ええ、そうですよ」


CoP「そうか...なら、いい」


そう言ってCoPさんは事務所の扉を開ける。
出る時、CoPさんは一言。


「...無理はするなよ」


と言った。
...CoPさんが出て行ったあと、俺はまだ事務所の自席に座っていた。
無理はするな、ね...
少し怪しまれたかな?
そういえば父さんから条件を言われてたし、それを伝えた方が自然だったか。
...無事に仕事は終わった。けど安心ばかりしてもいられない。こんなんじゃまだまだ足りない。...俺は完璧になって、今度こそ守り抜く。そう決めたんだから。...[あの人]が死んだ、その日から。


P「先輩...」


--------------------------------------------------------


(「おい、やめろ!」)


(「ああ?なんだてめぇ?」)


(P「...ガハッ!」)


(「...ちっ、しらけちまった。帰ろうぜ」)


(「君、大丈夫?一学年の子みたいだけど...」)


(「ちょっと先輩!なにもこんな奴...」)


(P「...そうですよ。よく、助けましたね。俺みたいな奴...」)


(「君の噂は聞いてるさ、歯に衣着せぬ物言いでみんなの嫌われ者」)


(P「だったら...」)


(「でも、俺は言葉を取り繕わない奴は好きだぜ?...君の名前は?俺は先輩。でこっちが...」)


(「...友」)


(P「...Pだ、物好きな先輩」)


(「ははっ、よろしくな!」)
65 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 16:15:58.97 ID:uuobZfLo0

---------------------------------------------------


今は八月、俺たちが活動し始めてから三か月がたった。ニンジャパークでの仕事の後、あやめはアイドルとして勢いを伸ばし、次々と仕事が入ってくるようになった。毎日忙しいが好調だ。さらに学校が夏休みに入ったのでこれまで以上に仕事に集中できるだろう。自然と気分が高揚する。


P「ふぅ...終わった」


俺はあやめのスケジュール管理などの仕事を終えて時計をみる。

...三時か。
六時に898プロだし、そろそろ寝るか。俺はベッドに潜り目をつぶる。すると、すぐに睡魔が襲ってきた。
プロデューサーになってからは眠ろうと思えばすぐ眠れるし、起きようとすればすぐ起きられるようになった。便利な体だ。
そのまま、俺はまどろみに身を委ねた。


--------------------------------------------------------


俺はあやめに手を引かれ、お祭りの屋台を回る。これは...前に見た夢の続きか?
するとあやめは急に立ち止まる。


P「...どうした?」


あやめ「...P殿、あなたはいつまでそうしているのですか?」


こちらを振り向きそう告げるあやめの顔は、いつも見るかわいらしい笑顔とは違う、とても冷酷でこちらの心を射抜くように冷たい...


あやめ「そうやって、全てから逃げて、何もできない自分で居続けるのですか?」


---------------------------------------------------------


P「...やっぱり、夢か」


時計を見ると時刻は...五時か。
ふふん、あやめ見たか。もうお前の力を借りなくても俺は起きられるぞ。
そんなつまらない事を考えながら俺はさっさと支度をする。


P父「...早いな。もう行くのか」


P「ん?...父さんか。そっちこそ早いね」


P父「家にずっといる日が増えると、どうしてもな...」


P父「...お前は、私が出した条件を本当にこなすつもりなのか?」


P「...しつこいな。父さんが言ったんだろ?」


P父「...P、お前はまだあの事を引きづっているのか」


P「...」


P父「あれは、お前のせいではないと友君も言っていただろう?」


P「...もう行くよ、行ってきます」


俺は玄関のドアを開け、外に出た。


P父「......」
66 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 16:19:52.08 ID:uuobZfLo0
------------------------------------------------------------


外に出ると、ちょうどあやめがこっちに向かって歩いてくる。


あやめ「あっ、おはようございます、プロデューサー殿!」


P「ああ、おはよう。もうあやめの助けはいらないぞ?」


あやめ「ふふっ、そうですね」


あやめは俺の顔を見て、少し心配そうな表情になる。


あやめ「...大丈夫ですか、プロデューサー殿?顔色が優れないようですが...」


P
67 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 16:37:50.65 ID:uuobZfLo0
※すみません、ミスで途中送信。あやめの「ふふっ、そうですね」から書きます。

--------------------------------------


あやめ「ふふっ、そうですね」


あやめは俺の顔を見て、少し心配そうな表情になる。


あやめ「...大丈夫ですか、プロデューサー殿?顔色が優れないようですが...」


P「ん?ああ、大丈夫じゃないか?」


あやめ「...他人事ではないのですよ?」


あやめは頬を膨らませ、少し怒ったように言う。


P「いや、本当に大丈夫だって。それより、早く行くぞー」


そう言って俺は若干の早足でいつもの道を歩く。


あやめ「あっ、ちょっと待ってください!」


...俺は元気だ、大丈夫だよな?
そう俺の体に聞く。どこもおかしい所は感じられない。うん、大丈夫だな。


--------------------------------------------------


...さて、俺たちは普段俺たちは普段八時に898プロへと向かう。ではなぜ今日は六時に向かったのかというと...


あやめ「わぁ...海がとても綺麗です!」


P「おお...」


そう、俺たちは今日、水着撮影で少し遠くの海に来たのだ。そのために少し早起きをした、という事だ。


スタッフ「いまから準備はいりますんで、それまでは遊んでていいですよー」


あやめ「本当ですか!?」


スタッフ「うん本当本当。せっかくだし撮影に使う水着も着て遊んできなー」


あやめ「ありがとうございます!...じゃあプロデューサー殿。着替えてそこの家の前で集合しましょう!」


そう言ってあやめは更衣室に走っていく。...妙に張り切ってるな。何かあったのか?


俺たちは着替えた後合流し、砂浜を歩く。
行く先々であやめを見た観光客は驚いている。人気になっている証拠だ。
それを見ながら俺たち砂浜を歩いていく...
68 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 16:58:03.68 ID:uuobZfLo0
P「...なぁ、海を泳いだりはしないのか?」


あやめ「ええ、今日はやめておきます。向かう場所があるので!」


P「ん?どこだ?」


あやめ「...着きました、ここです!」


俺はあやめの指さす方へと視線を向ける。あれは...


P「海岸、ホテル?」


あやめ「さぁ、入りましょう!」


P「は、はぁ!?」


P「ちょ、ちょっと待てあやめ。なんでホテルなんかに入る必要があるんだ?」


あやめ「いえ、ホテルとは名ばかりですよ。ここは休憩所です」


P「きゅ、休憩所?」


あやめ「ともかく、入りましょう!」


P「お、おい!」


俺はあやめに手を引かれ、建物内に入る。


入ってみると中は確かに休憩所のようだった。しかし...


P「カップルが、多いな...」


人自体はあまりいないようだが、その大体は男女のカップルらしき人たちだった。
それぞれ片方を膝枕していたり、寄り添って寝ていたりと様々なやり方で各々休んでいた。
だがあやめはそんなことは気にせず、横長椅子に座り...


あやめ「どうぞ!」


と、自身の太ももをぽんぽんと叩いた。
その行為に俺は激しく動揺した。


P「ど、どうぞと言われてもだな...一体どういう事だ?」


あやめ「プロデューサーはお疲れのようなので、少しでも休んでもらおうと...」


P「で、でもなぁ...」


あやめ「それとも...私では駄目なのですか?」


瞳を潤ませ、そう聞くあやめ。
ああ...そんな目をされたら断れない...


P「わかったよ...じゃあ、失礼して...」
69 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 17:35:08.08 ID:uuobZfLo0
俺は長椅子に横たわり、あやめの太ももに頭を置く。置いたときにくすぐったかったのかあやめの「んっ...」という声が俺の耳に届く。やめろ、その声は俺に効く。
誘惑はそれだけでは終わらない。水着なので俺は頭を置いた太ももの感触を直に感じる。さらに、少し下を向くと、あやめの白い柔肌をゼロ距離で直視することとなる。正直この光景は高校生の理性を刺激するには強すぎる。しかもあやめだから余計ヤバいだろ...!


あやめ「プロデューサー殿...撮影まではまだ時間はありますので、しっかり休息をとってください...」


俺の今の心境を知ってか知らずか、あやめはそう言って俺の頭に手を置く。
...ふぅ、さっきは焦ったが、落ち着くとあやめの膝枕はとても気持ちがよかった。
そうだな...少し、眠ろうか...そう思い、目を閉じた。


-------------------------------------------------


「...起きてください、プロデューサー殿」


あやめの声が聞こえる。


P「んー」


俺はその声に反応し、寝返りを打つ。俺は何をしていたんだっけ...
ああ、仕事に来ていたんだ。それであやめと海岸ホテルって休憩所に来て...
もぞもぞ動くとむにゅ、と何かにぶつかった感触がし、目を開けると。
その視界はオレンジと白っぽいストライプの柄の布が覆った。


P「んあ?なんだ、これ...」


そのまま視線を上にあげると...
顔を真っ赤にして口をわなわなと震わせているあやめと目があった。


...あ。
状況を理解した瞬間、俺の顔も熱くなっていくのを感じた。


------------------------------------------------


スタッフ「ん、お帰りー。...なんか、顔が赤いみたいだけど?」


P「...何でもないです」


俺は髪をくしゃくしゃと弄る。あやめはあれからずっと俯いたまま喋らなかった。
...やってしまったなぁ。
俺が頭を悩ませていると、あやめは消え入りそうな震え声で喋る。


あやめ「問題ありません...与えられた使命はこなします...」


P「お、おう。頼もしいよ」


...大丈夫だろうか。


あやめ「後...収録が終わった後、行きたい場所があるのですが...」


P「ああ、わかった」


そう頷くと、あやめは少し間を置いた後顔を上げた。


あやめ「それではあやめ、参ります!」


あやめは赤く染まった、先ほどとは打って変わって、まるで蕾が花を咲かせたような輝かしい可愛い笑顔を見せてくれた。
70 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 18:04:21.92 ID:uuobZfLo0
-----------------------------------------------


収録はとてもスムーズに進んだ。
あやめは先ほどの面影はどこにいったのやら、元気にスタッフの要求に答えていた。


そして、収録は無事に終わり、俺たちはスタッフと別れ、約束通りあやめに連れられ砂浜を歩く。
歩くこと十分。あやめは立ち止まる。


P「ん、ここは...?」


俺が見たのは...一面に広がる海とそれに姿を隠そうとしている夕日が一望できる丘だった。その中央にはベンチがおかれている。


P「あやめ、ここが、来たかった場所?」


あやめ「はい...」


あやめ「...座りましょうか」


P「あ、ああ」


何やら元気がないように見える。収録時は元気だったのだが。
俺は言われるがままベンチに座る。それに続き、あやめがその横に座った。

...その後俺たちは一言も喋らず、夕日を眺め続けた。
そうしていると、あやめがぽつぽつと話し出す。


あやめ「...ここは、この砂浜の人気スポットなのですよ?...今はあまり人がいないようですが」


P「...ああ、そうみたいだな。それに、人気スポットだって言うのも、わかる」


あやめ「とても綺麗ですからね」


P「...これが見せたかったのか。じゃあ、早く戻ろうか。時間も遅くなっちゃうし」


あやめ「待ってください、P殿」


立ち上がろうとする俺をあやめが止める。


あやめ「P殿、少しお聞きしたいことがあるのです」


そう言われ、俺は座りなおす。


P「...久しぶりに名前で呼ばれたな。で、なんだ?」


あやめ「...P殿はプロデューサー、楽しいですか?」
71 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 18:26:28.13 ID:uuobZfLo0
P「前も聞いたよなそれ...ああ、もちろん...」


楽しいぞ、そう言いたいが今度は言葉が出なかった。


あやめ「わたくしは、アイドルが好きです。わたくしが一番輝ける場所だと思っています」


あやめ「でも、P殿はいつも辛そうに見えます。それがとても、辛いです」


P「...大丈夫だよ、俺は辛くなんて...」


あやめ「...わたくしのために、無理してプロデューサーをしているのならやめてしまっても...」


P「駄目だっ!!」


思わず強く否定してしまう。あやめの体が少し震えた。


P「ごめん。でも、それだけはダメなんだ...」


P「俺は、あやめの傍にいたいんだ...」


あやめ「でもそれなら、プロデューサーでなくても...!」


P「違うんだ...こうでもしなきゃ、俺はあやめの隣にいる権利は、ない...」


あやめ「...どうして?」


P「それは...」


...向き合わなきゃいけないのか、この現実に。逃げたい。逃げたいよ...


P「俺のせいで、人が、死んじゃったから、かな」


怖い。あやめの顔が見れない。
声が聞こえる。お前のせいだ、とそう責める声が。
呼吸が自然と荒くなる。動悸が激しくなる。


P「...もう、俺は失いたくないんだ。だから、頑張らなくちゃ...」


あやめ「P殿...それは、いったい...」


P「さぁ、帰らなくちゃ!もうこんな時間だぞ?」


急にP殿が立ち上がりました。声だけはとても明るいですが、顔はあの時見た悲し気な顔をより濃くしたような、絶望にまみれた顔していました。


あやめ「...P殿!」


P「ほら、早く帰るぞ、みんなあやめの事心配するぞ?」


そう言ってP殿がわたくしの腕を掴みます。それはいつもの優しい手つきではなく、怯えているような手つきでした。


あやめ「P殿......」


...その後、わたくしとP殿は一言も喋らず、898プロへと帰りました......
72 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 19:01:22.44 ID:uuobZfLo0
---------------------------------------------------


あやめ「......」


ありす「...どうしたんですか、あやめさん?」


あやめ「...ありす殿、ですか」


ありす「レッスン中、とても浮かない顔をしていましたね、いつもあんなに元気なのに。...どうかしましたか?」


あやめ「...」


はたして話してもいいのでしょうか...人に話されるのをP殿は嫌がるかもしれません...


ありす「...Pさんのことですね?」


ありす「話したくないのなら、別にいいですけれど...でも、言わないと後悔することもあるんですよ?」


...言わなければ後悔する。ですか...


あやめ「ありす殿...聴いていただけますか?」


ありす「...はい」


「それ、私たちも聞いていいかな?」


あやめ「...未央殿、凛殿、卯月殿まで...」


卯月「...えへへ、ごめんね?未央ちゃんがあやめちゃんが心配だーって...」


未央「だってあんな元気なさそうにレッスンしてたら気にもなるよ!」


凛「...私にも話してくれるかな?」


あやめ「...はい」


わたくしは四人に話しました。あの丘での一幕を。


ありす「...そんな事が...」


未央「...おかしいよ、だってあやめちゃんの話を聞く限りPさんはすごい優しいみたいじゃん!」


卯月「そんな人が、誰かを追い詰めるとか、傷つけるとかは考えられないよね...」


凛「...あやめは、どう思ってる?」


あやめ「わたくしも、おかしいと思っています。ただ、確認しようにも、あれからP殿はわたくしを避けているみたいで...」


あやめ「一緒にはいてくれるのですが、わたくしが話そうとすると遮られてしまって」


ありす「...この前、私があった時も、とても辛そうでしたね」


凛「そっか...」
73 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 19:25:13.88 ID:uuobZfLo0
みなさん、どんな言葉を言えばいいのか困っている様子でした。
...それもそうですよね、わたくし自身、どうすればいいのかわからないのですから。


P「...とりあえず、今の段階じゃどうすればいいのかわからないし、Pから聞き出す必要があるみたいだね」


あやめ「そ、そんな...P殿は聞かれるのを嫌がっているのですよ!?」


凛「でも、聞かないと、何も進まない。でしょ?」


未央「...しぶりんの言うとおりだね。大丈夫だよ!それとなく聞いていくつもりだから!」


とりあえず、その場はお開きになりました。
898プロに戻り、P殿に送ってもらいます。
...わたくしは深呼吸をして、P殿に問いかけます。


あやめ「P殿...教えてもらえませんか?あの丘でいった事を...」


返ってきた答えは。


P「...あやめ、明日はオフだからゆっくり休みなよ?」


あやめ「P殿...」


...もう、手遅れなのでしょうか?わたくしは、気づくのが遅すぎたのでしょうか?P殿が抱えている傷の大きさに。
...いいえ、諦めてはいけません。今度は、わたくしがP殿を助けるのです...!


------------------------------------------------------


898プロの扉を開けると、そこには姉上がいました。


ちひろ「あれ、あやめちゃん?どうしたの、今日はオフなんじゃ...」


あやめ「...P殿は?」


ちひろ「まだ来てないわよ?」


時計を見てみると時刻は8時でした。
...寝坊でしょうか?


あやめ「では、ありす殿はいらっしゃいますか?」


ちひろ「ああ、休憩室の方にいるわ」


そこで、姉上はわたくしの様子に気付いたのか、笑顔に陰りがさします。


ちひろ「あやめちゃん...何かあったの?」


あやめ「そうですね...姉上も聞いていただけますか?」


ちひろ「...Pの事ね。いいわよ、力になれることがあれば」


あやめ「...ありがとうございます」


そう言って休憩室の扉を開けると、そこには凛殿、未央殿、卯月殿、ありす殿のほかに、PaP殿、CoP殿もいらっしゃいました。
74 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 21:04:03.37 ID:uuobZfLo0
>>73



P「...とりあえず、今の段階じゃどうすればいいのかわからないし、Pから聞き出す必要があるみたいだね」

の部分の名前は凛ですね。訂正します。
75 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 21:20:01.56 ID:uuobZfLo0
あやめ「...PaP殿とCoP殿も来ていたのですね」


CoP「ああ、話はありすから聞いている」


PaP「ごめんな、俺があいつを誘っちまったから...」


あやめ「いえ...PaP殿のせいではないと思います」


凛「...いずれはこうなってたでしょ、Pがあのままだったら」


ちひろ「こんなに集まって...そんなに深刻な話なの?」


あやめ「...お話ししますね」


わたくしは姉上に事の顛末をお話しします。すると...


ちひろ「そんなことが...」


あやめ「はい...」


未央「ちひろさんはPさんのお姉さんなんだよね?何か知ってることないかな?」


ちひろ「...一つだけあります」


その言葉に、この場にいる全員が息をのみます。


ありす「...教えてくれませんか?」


ちひろ「ええ、私もよくは知らないけど、教えましょう」


そう言って姉上は話し始めました。


ちひろ「あれは、確かPが中学2年の頃よ、あやめちゃん。あなたの学校で事件があったわね?」


P殿が中学2年の時...わたくしは記憶の糸をたどります。すると一つの事にたどり着きます。


あやめ「...わたくしの学校で、自殺した者がでました」


卯月「...それって...」


ちひろ「その子の名前は先輩っていうんだけどね...Pはね、その子と仲が良かったの」


姉上はとても苦しそうな表情になります。


ちひろ「そしてPは...先輩くんの自殺の目撃者よ」


姉上の言葉に誰もが固まります。
P殿が...目撃者?


PaP「じゃ、じゃあ、Pはそいつが死ぬ瞬間を...?」


ちひろ「ええ、見たんだと、思います」


ありす「思いますって...」


ちひろ「私にもわからないわ...Pは話してくれなかったから」
76 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 21:35:10.80 ID:uuobZfLo0
ちひろ「Pはその後ふさぎ込んでた...でも少したってまた学校へと通うようにもなったし、立ち直ったのかと思ったのだけど...」


CoP「それが、尾を引いているという事か...」


ありす「あの人に、そんな過去が...」


凛「でもなんで先輩って人は自殺なんか...Pが追い詰めたってこと?」


ありす「Pさんはそんな事はしないと思います。...ですよね、あやめさん?」


あやめ「はい...P殿はそんな事はしないです。絶対に」


あやめ「わたくしにあそこまで気を使ってくれる優しいP殿がそんな事するわけないです...」


凛「そうだよね...」


卯月「ならどうして...」


未央「先輩さんを追い詰めた別の何かがあるのかな...」


未央「ちひろさんはそれについては何か知らないの?」


ちひろ「ごめんなさい、私もそこまでは...」


PaP「そっか...」


そこまで話したその時。
事務所の扉を開ける音が聞こえました。
みなさんはその音がした方へと振り向きます。


P「おはよう...ございます...」


そこには、今にも死んでしまいそうな表情で無理やり笑顔を作り挨拶をするP殿の姿がありました。
そしてP殿はそのまま...倒れてしまいます。


あやめ「P殿っ!!」


わたくしはP殿のもとへと駆け寄ります。


CoP「...救急車を...!」


P「待ってください!」


P「...大丈夫です。少し休めば問題ないですから...」


CoP「だが、そうはいっても...!」


P「いいんです!俺に、構わないでください...」


そう言ってP殿は仮眠室へと入っていきました...
77 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 21:53:14.01 ID:uuobZfLo0
----------------------------------------------------


俺は、この前あやめと来た夕日の綺麗な丘に立っていた。

...なぜ、こんなところに?

ふと、俺は崖になっている方へと目を向けた。
そこには、あやめが立っていた。


P「あやめ...?」


俺があやめに近づくと、あやめは俺の方を振り向いた。
あやめは、とても悲し気な表情をしていた。


あやめ「P殿...」


あやめ「さよなら」


あやめは崖下へと身を投じる。
俺は急いで手を伸ばしたが、どれだけ手を伸ばしても届かない。


P「あやめっ!!」


ついに俺の手は、あやめを掴むことができなかった。


----------------------------------------------------


P「......はぁッ!!!?」


P「...はぁ、はぁ......」


...夢か。
......気持ち悪い。体中が汗塗れだ。時間は...五時か。
十分しか寝られなかったのか。...目が覚めたな。
俺はベッドから出て机へと向かう。
...仕事がない。そうか、寝る前にすべて終わらせていたんだっけ...

......駄目だ、こんなんじゃ。あやめをトップアイドルになんてできない。
また俺は、守れないのか?俺には何の力もないのか?


P「...そうだ、俺は何もできない...だから...」


だから、俺は、今まで拒絶してきたんだ。でも...俺はそれからも逃げた。


P「最低な奴だよな...」
78 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 22:13:09.82 ID:uuobZfLo0
-------------------------------------------------


...結局、あれから一睡もできなかったな。
時間は七時か。898プロに行こう。あそこに行けば仕事が見つかる。


P父「P?...おい、どこに?」


ああ、なんだ五月蠅いな。スーツなんだから898プロに決まってるだろ?


P父「おい!」


行ってきます。


...目が霞むな。体も思うように動かない。
でも、俺は行かなくちゃいけない。俺みたいなゴミ屑な人間は死んでも誰かの役に立たなきゃいけないんだ...
震える手で898プロの事務所の扉を開ける。ここまでどうやって来たかなど、もはや覚えていない。

...みんなが見える。みんなが、あやめが遅れた俺を非難している。
挨拶しなきゃな。


P「おはよう...ございます」


笑顔作らなきゃ。......あれ、地面を見てる?
...ああ、転んだのか。全く使えねぇなぁこいつは。
ふと顔を上げると誰かが何かを言っていた。


「やはり...こいつは、もう使えないな」


...嫌だ、どんなに死に体でも、これだけは諦めたくない...!


P「待ってください!」


P「大丈夫です。少し休めば問題ないですから...」


「だが、そうはいっても...!」


P「いいんです!俺に構わないで下さい...」


もう、自分でも何を言っているかわからない。支離滅裂だ。
でも呪言の様に頭に俺を責める声が聞こえてくる...
嫌だ。死んで、ここから逃げたい。
でもそれは許されない。先輩に申し訳が立たない。

...俺はまだ、何もできてないのだから。
79 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/25(日) 22:27:21.77 ID:uuobZfLo0
-----------------------------------------------


ありす「...Pさんは?」


あやめ「...寝ています。ですが、とても苦しそうで...」


凛「...本人を見ると、強烈だね。初めて会った時とは大違い」


PaP「...これからどうするんだ?」


ありす「Pさんは今は寝かせておいた方がいいでしょうし...」


あやめ「...わたくしはこれから、P殿のご友人のもとに向かいます」


未央「Pさんの友達?」


あやめ「ええ、あの方なら何か知っているかもしれません...」


ありす「じゃあ、私たちはここでPさんの様子を見ていますね」


あやめ「...はい、お願いします」


わたくしは扉を開けます。


卯月「あ、あやめちゃん!」


あやめ「...なんでしょうか?」


卯月「こんな時に言うのもダメなのかもしれないけど...笑顔を忘れちゃだめだよ!」


あやめ「...はい」


...そうですね。わたくしも最近笑っていませんでした。ですが、P殿はわたくしの笑顔が好きみたいですから、
笑ってないといけないですよね。
...P殿の真実を知っても、私はP殿のだけのしのびです。


------------------------------------------------------


友「珍しいね。あやめちゃんが用がある、なんて...」


今、わたくしは友殿にメールをし、898プロの公用休憩所に呼び出しました。


あやめ「友殿...P殿のご友人が自殺した事件について、何か知っていることはないですか?」


その言葉を聞いた友殿は目を見開いて驚いたようです。


友「その話を聞くってことは...あいつ、何かあったんだな」


あやめ「はい...」


友「...わかった、話すよ。俺の知ってること。あの事件についてね」
80 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 20:02:33.82 ID:bkOazruL0
----------------------------------------------


あやめちゃんは知らないだろうけど、あいつ、学校では孤立してたんだよ。
わざと周りを苛つかせる態度をとってな。だから、虐められてた。
でも、そんなあいつに構い続ける人がいた...それが、先輩だよ。
当時先輩の子分みたいだった俺も反対したけど、先輩はそれでも話しかけ続けた。

まぁ、そのうちに俺も気付いたんだよな...Pが、誰よりも優しくて、誰よりも他人の事を心配して、思いやる事ができる人間だって。まぁ不器用だからから回ることも多かったんだけどな。

そうやってPと俺たちは仲良くなった。で、ある日Pが急に虐められなくなったって言ったんだ。
...そんな急にやむわけはない。そう、あいつらは先輩に標的を変えたんだ。Pと仲良くしてるからってな。
先輩はそれを俺達には教えてくれなかったし、あいつらも手が込んでてな。俺とPが気づかないように色々やってた。
先輩は演劇部だったからな...すっかり騙されてたよ。

そうして一人で抱え込んだ先輩は、耐え切れなくなって、夜の学校に忍び込んで、屋上から飛び降りた...
Pは、丁度その日学校に忘れ物をしたって言って夜に学校に行ってたんだ。だから見ちまったんだろうな。

...先輩が屋上で今にも飛び降りそうな姿を。
それからは俺はわからねぇ。ただ、Pの父さんから聞いた話だと、Pは屋上にいたらしいから...止めようとしたんだろうな。


----------------------------------------------------


友「...まぁ、あの事件であいつが体験した話だ。ちょっと推測も入ってるけどな」


あやめ「...」


友「それで、Pは今どうしてんだ?」


あやめ「...事務所の休憩室で休んでいらっしゃいます」


友「そっか...じゃっ、あやめちゃんは行ってきな!」


あやめ「えっ...?」


友「あやめちゃんは俺から聞いたこの話で、一番Pの事を知ってるようになっただろ?なら、Pの目を覚まさせてやれるのはあやめちゃんしかいない!」


あやめ「ですが...今の話を聞いても、どうしたらいいのか...」


友「...大丈夫、あやめちゃんが思うようにやりゃあいい。...それに、あいつももう少しだと思うんだ」


あやめ「もう少し...?」


友「あいつは今不安定になってる。それは、あいつが過去に向き合おうとしてるって事になるんじゃないかな?」


あやめ「過去に、向き合う...」


友「だから、あやめちゃんもそれを聞いてあげてさ。仲直りしようぜ?...ちょっと小言も言ってさ」


そう友殿はいたずらめいた顔して言います。
...そうですよね、きっとP殿は立ち直ります。


あやめ「...ありがとうございます、行って参ります!」


友「おう、がんばれ」


そう言ってわたくしは再び事務所へと駆け足で戻ります。
...どんなことがあっても、わたくしがP殿を支える。そう決意しました。


友「......さぁP、今こそ、一歩踏み出す時だぞ」
81 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 20:22:59.23 ID:bkOazruL0
---------------------------------------------


......逃げるな、現実から、自分のやったことから。

...目を開ける。ここは...そうか、休憩所で寝てたのか。
頭が痛い。相変わらず俺を責める声が聞こえる。
とにかく、今は仕事だ...仕事をしていれば、声も気にならない。
そう思い、扉を開ける。そこには、あやめ達がいた。


P「...あやめ?どうして...今日はオフじゃ...」


あやめ「...申し訳ありません。友殿から聞きました。P殿の中学での事」


あやめの言葉を聞いた瞬間、俺は逃げ出そうとする。嫌だ。あやめにも嫌われるのか、俺は。
だが逃げ出そうとした俺の肩を誰かが掴む。そしてそのまま引っ張られ...

バチンッ!

...事務所内に小気味良い音が響いた。


未央「ちょ、ちょっとしぶりん!」


卯月「頬を叩くなんて、そんな...!?」


凛「...少しは目が覚めた?」


P「...凛さん」


凛「...私にはこれぐらいしかあんたにできることはない」


CoP「...だが、お前ならこれだけでも十分だろ?」


PaP「自信を持て、P!」


P「...」


ありす「...Pさん、言いましたよね。裏切られることもあるけど、そうでないことの方が多いと...私たちはその、[そうでないこと]にはなれませんか?」


P「ありす...」


あやめ「...P殿はいつもわたくしを支えてくれました。...だから、P殿もわたくしを頼ってください!...わたくしはP殿を必ず受け入れます。いえ、ここにいる皆さんが、P殿を受け入れます!」


未央「え、私たちも?」


卯月「ちょ、ちょっと、未央ちゃん!」


P「...なんだ、そうか」


こんなに、簡単な事だったのか。
俺は、ずっと人が信じられなかった。だから、人に頼ることをしなかった。
それに、先輩が死んだとき、俺は自分のせいだって追い詰めて。だから死ぬときは誰かの役に立ってから死にたいって思って、今まで頑張ってきた。
でも、それはただ逃げていただけだった。現実に向き合わないまま、死のうと思ってただけだ。
82 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 20:38:50.76 ID:bkOazruL0
P「...ふぅっ」


俺は息を吐く。みんなが俺を見てる。でも、それは俺を蔑む目ではなくて、とても優しい目だ。


P「...あやめ」


俺はあやめを呼ぶ。


あやめ「...はい」


P「俺は、今まであやめの為って言いながら、逃げるためだけにプロデューサーをやってた」


P「...ごめん」


あやめ「...ふふっ」


P「まぁ、だからその...あやめ、あのストラップって今持ってるか?」


あやめ「はい、もちろん持ってますよ?」


そう言ってあやめは手裏剣のストラップを取り出す。
それに続き俺も取り出す。


P「...あやめから貰ったこのストラップに誓うよ。俺は、もう逃げない。過去を受け入れて、前に進む。そして...あやめをシンデレラガールにするって」


あやめ「...わたくしも誓います。主君を支える事のできる、しのびになると」


俺たちはストラップを手に持ち、その手を握り合う。


P「...改めてよろしくな。あやめ」


あやめ「...はい!プロデューサー殿!」


P「...ほかの人たちも...すみませんでした。お騒がせして」


PaP「いいんだいいんだ!若い奴の成長を見守るのも大人の役目だからな!」


未央「PaPさんもまだ若いでしょ!」


CoP「...お前には助けられたしな。お互い様だ」


P「そうですね...完璧な人なんて、いないですからね」


CoP「ふっ...そうだな」


P「ありすも、ありがとな」


ありす「...情けないですね。私に偉そうなことを言っておいて」


P「ああ、そうだな...こんな奴だから、これからも色々と助けてくれよ?」


ありす「ええ、任せてください!」
83 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 20:49:58.59 ID:bkOazruL0
P「...凛さん、未央さん、卯月さん」


未央「およ?私たちの名前覚えててくれたの?」


P「そりゃ、人気じゃないですか...あなたたちには、うちのあやめは負けませんからね?」


俺の言葉にあやめが慌てる。


あやめ「P、P殿!?いきなり何をおっしゃっているのですか!」


凛「...それは、宣戦布告ってことでいいのかな」


P「ええ...特に凛さん。あなたには、ビンタの分までお返ししますから...あやめが」


あやめ「P殿!?」


あやめがとても慌てている。その姿を見て、俺は思わず笑う。


凛「ふふっ、あやめから聞いてたのと全然違うね...うん、待ってる」


凛さんはそう言うと未央さんと卯月さんを呼んで事務所から出て行った。
...あれが、強者の余裕ってやつか。


P「あんなこと言ったし、頑張らないとな」


あやめ「...無理はダメですからね!」


P「さぁ、どうだろうな?」


あやめ「P殿!」


P「はははっ...まぁでもそうなったら、あやめが止めてくれるって信じてるから」


あやめ「...P殿...」


P「PaPさん、今日は帰ってもいいですか?仕事もないのに来ていたみたいですからね」


PaP「おう、気を付けて休めよ!」


P「はい!」


P「じゃあ、あやめ、帰ろうか」


あやめ「...えへへ、はい!」


俺たちは手をつないで事務所を出ていく。
84 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 21:03:14.26 ID:bkOazruL0
P「あっ...そうだ」


あやめ「?、どうかしましたか?」


俺は帰る途中、あることを思いだした。


P「少し、寄りたいところがあるんだけど、いいかな?」


あやめ「...ええ、わかりました!」


あやめの了解を取ると、俺は向かう。
......先輩の墓へと。


P「...着いた」


あやめ「......」


俺は墓の間に行き、黙祷をささげる。
あやめは察したのか、同じことをしてくれた。

...先輩、俺やっと前に進めます。もちろん、先輩がこうなってしまったのは俺の責任です。...でも、俺は俺の大切な人を守るって決めたんです。
だから、俺は生き続けます。...ごめんなさい。


俺はそこまで思うと目を開ける。すると、あやめの横に、友がいた。


P「友...」


俺の声に気付き、あやめも友を見る。


あやめ「友殿も、きていらしたんですね」


友「ああ、まぁな。...やっと、お前も進めたのか」


P「...ありがとな」


友「いいって事よ。...それに先輩も、きっと嬉しいさ、お前が立ち直ってくれて」


P「...そうだといいな」


----------------------------------------------


その後、俺はあやめを家に帰した後、俺も自分の家の扉を開ける。


P「ただいまー...」


すると、居間には、父さんがいた。


P父「...早かったな。...大丈夫か?」


P「うん、大丈夫。...すごい眠いけどね」


P父「そうか...」
85 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 21:14:19.25 ID:bkOazruL0
P「...父さん。俺、父さんが反対した理由、わかったよ」


P父「...」


P「ありがとう、父さん。俺を守ろうとしてくれて」


P父「...やっと、向き合ったんだな」


P「...うん」


P「だから、改めて、父さんに言いたい」


P父「......」


P「...きっと俺は、これからも過去に囚われることもあるのかもしれない。これはきっと忘れられない。忘れちゃいけない」


P父「......」


P「でも今は、俺は全身全霊で守り抜く。大切な人の、あやめの、未来を。...そう決めた」


P父「...そうか」


P「ああ。だから俺はこれからもプロデューサーを続ける。みんなに...あやめに、支えて貰いながらね」


P父「...勝手にしろ」


P「勝手にするよ...じゃあね」


そう言って俺は居間から離れる。
...寝る前にまず、風呂に入らなきゃな。


-------------------------------------------------------------


P父「...」


「...大丈夫でしたね」


P父「...P母か」


P母「ふふ、だから言ったでしょう?あの子は大丈夫だって」


P父「...ああ」


P母「...あの子たちの条件はどうするんですか?」


P父「...あいつらが言ってくるまでは、変えるつもりはない。...私も、あの子たちならやってくれるって、信じてみたくなったから...な」


P母「ふふっ、そうですね...」
86 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 21:27:45.01 ID:bkOazruL0
---------------------------------------------


ここは、あの丘か。
俺は夕日の綺麗な丘に立っていた。また、あの夢か。
...俺は、崖にたたずむあやめを見つける。


P「あやめ」


そう呼ぶと、あやめは振り向く。その顔は、とても穏やかだった。
俺はあやめの手をそっと掴む。あやめは、何も喋らない。


P「待たせてごめんな。でも、もう...」


この手を、離さないから。


---------------------------------------------


「プロ...デューサー...」


P「ん...」


あやめ「起きてください!プロデューサー!」


P「んあ...おはよう、あやめ」


あやめ「おはようございます!もう七時ですよ!898プロへと行きましょう!」


P「ん、そうだな...」


俺は身支度をし、家を出る。
そして、あやめといつもの道を歩く。


あやめ「...やはり、わたくしには個性が足りないと思うのです!」


P「そうか?」


あやめ「ええ!...なにか、語尾でも考えた方がよいのでは...」


P「...んー、忍者だし、[ござる]とか?」


あやめ「うむむ...それは可愛くないです!」


P「...別に今のままでも個性はあるし、可愛いからいいと思うけどな」


あやめ「...ありがとうございます」


...照れているみたいだな。


P「じゃあ...[ニン]とかは?」


あやめ「ニン、ですか...」


あやめ「...ぷ、プロデューサー殿、おはようございます。ニン!」


あやめは照れながらそういう。
87 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/26(月) 21:38:13.75 ID:bkOazruL0
あやめ「...うう、やっぱり恥ずかしいですね...」


P「だろ?あやめはやっぱり普段のままが一番かわいいよ」


あやめ「に、ニン...」


ああー、今のニンはすごいキュンと来たけど言わないでおこう。

......こんな感じで、緩く、でも、未来に向かっていく。それが今はいいんだろう。

これからも、色々なことが起こるのだろう。悲しい事、嬉しい事、本当にいろいろなことが。
でも、あやめと一緒なら、どんなことでも乗り越えていける。そう信じてる。
だから、今は...


P「あやめ...」


あやめ「...?なんでしょう?」


P「...大好きだ」


あやめ「...私もですよ、P殿!」


前を向いて歩いて行こう、大切な人と。




終わり
88 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/26(月) 21:41:25.20 ID:bkOazruL0
はい、これで終わりになります。
駄文にお付き合いしてくださった方には御礼申し上げます。
短編集の下書きもあるので、またいつか、書きたいと思います。
その時は、よろしければご覧ください。
それでは、ニン!
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 22:27:34.49 ID:BL5rtuCwO

良かった
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 11:37:30.33 ID:7TGbSS6iO
モバつけろよ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/09(火) 01:21:25.35 ID:wtZMRvot0
131.96 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)