P「アイドルマスターと」あやめ「シンデレラガール」

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1 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/16(金) 22:58:53.60 ID:yKDdrUfa0
こちら、アイドルマスターシンデレラガールズのSSになっております。
初SS、初スレ建てなので、至らない点も多々ありますが、
見ていただけたら嬉しいです〜。

では、始めさせていただきますー。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497621533
2 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/16(金) 23:07:40.38 ID:yKDdrUfa0
?「起きなさい、P!」


P「ふぁ〜あ...」


...眠い、学校なんてなくてもいいのに。
そう思いながら重い体を起こす。


P母「...やっと起きたのね、あやめちゃん待ってるわよ?」


P「あやめが?...早いなー」


言いながら時計を見る。
...針は8を指していた。


P母「ここ、最低でも、8時には出なきゃいけないのよね?
...どこが早いのかしら?」


P「どうりで父さんもいないわけだ。母さん、
朝飯はいらんよ」


そういって俺は手早く歯磨き等の最低限の身支度
をして家をでる。


?「P殿!遅いですよ!」


家を出ると、目の前にはお洒落な青色のゴムで
髪をお団子に結んでいる少女が立っていた。
3 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/16(金) 23:17:58.25 ID:yKDdrUfa0
P「おはよう、あやめ」


あやめ「はい、おはようございます!早くいかないと
遅刻してしまいますよ?」


そう言うとあやめは俺の手を引いて歩きだす。


P「先、行ってればいいのに...」


あやめ「いえ、P殿を置いてはいけません!P
殿はあやめのぼおいふれんど?なのですから!」


P「...その意味、わかってないでしょ?」


そんな他愛のない会話をしながら俺達は学校へと歩を進める。


P「...そういえば、今日は俺の誕生日だけど、あやめは何かくれるのか?」


俺があやめにそう聞くと、あやめは顔をそらした。


あやめ「...そ、そうだったのですか!?い、いやー、
忘れておりましたー!」


P「...小さい頃から毎年欠かさず何かしらやってたのに忘れるもんか?」


あやめ「そ、それよりもですね!P殿は今朝のにゅうす
は見ましたか?」


...誤魔化したな。
4 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/16(金) 23:32:48.74 ID:yKDdrUfa0
P「いや、見てないよ、朝寝坊したし」


あやめ「そ、そうでしたね...そのですね、新聞にも載っていたのですが、
実は、[しんでれらぷろじぇくと]なるものがあるとのことなのです!」


P「...ふーん」


シンデレラプロジェクトね。あやめは横文字が聞きずらい時があるから困る。
...話を聞いてみると、それはアイドル同士で競い合い、3年毎の成績でシンデレラ
となる者...要はトップアイドルを決める。といったものらしい。
...最近アイドルがやたら多いのはそのせいか。


あやめ「でですね!わたくしのしのびとしての特技をあいどるに活かせないかと思いまして!」


P「...アイドルになるのか?」


あやめ「はい!あいどるになって、あやめはしのび...くのいちとしての姿を様々な人に
見せたいのです!」


P「...そっか、...頑張れよ」


アイドルね...まぁあやめはそんじょそこらの奴よりはずっと可愛いと思うし
出来るとは思うが...親御さんが許さないだろうなぁ...。


あやめ「それでですね...あやめがあいどるになる時には
是非P殿にぷろでゅーす?していただきたいのです!」


P「......へ?」


...我ながら素っ頓狂な声が出たな。


あやめ「ですから、わたくしはあいどる。P殿は
プロデューサーとして、二人でこの頂に立つのです!」
5 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/16(金) 23:42:54.49 ID:yKDdrUfa0
P「...考えとくよ」


いや、俺にプロデューサーは無理があるだろう。
愛想悪いし。演技力には多少の自信はあるが、演技では
いずれボロも出るしな。
そんな事を思っているといつの間にか学校の正門に着いていた。


あやめ「ふぅ...間に合いましたね?」


P「...ああ、そうだな」


会話を交わした瞬間。

......キーンコーンカーンコーン......

...一限目のチャイムと思われるものが聞こえた。
時計は持っていないので正確な時間はわからないが。


あやめ「ち、遅刻です!...P殿!また帰りにお話ししましょう!
では、さらばー!!」


あやめは小等部の方へと走っていった。
...朝から忙しい子だ。
...さて、俺も行くか。
俺は眠気を訴え、閉じようとするまぶたをこすりながら中等部へと向かった。
6 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/16(金) 23:56:03.54 ID:yKDdrUfa0
学校ではやる事は余りない。友達はそれほど多くないし、
いたとしても別のクラスだ。あやめは小等部なので俺の所に
来ることは滅多に無いしな。

...それにしても、あやめはなぜ誕生日について誤魔化したのだろうか。
何か企んでいるのかもしれないな...

そんな事を考えながら授業を受けていると、
不意に教室のドアが開いた。


教師「...Pはいるか?」


何やら息を切らしている。俺に何か用があるみたいだな。
一体何の話だろうか。
はい、と言って授業担当に軽い会釈をした後、俺は廊下に出た。


P「何の話ですか先生?」


そう聞くと先生は息を整えたのち、重そうに口を開いた。


教師「実はな...君のお父さんが倒れたんだ...」


P「...ほんと、ですか」


...誕生日に、最悪のプレゼントだ...
7 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 00:17:53.08 ID:VsHFjpXO0


--------------三年後-------------


P「...ふぁ〜あ...」


友「...おう、よく寝てたみたいだな」


P「今何時だ?」


友「12時だ。ぐっすりだな」

...もうそんな時間か。
俺は机に突っ伏していた影響で怠くなった体を起こす。
...それにしても懐かしい夢を見たな...

...あれから三年、か...。
父さんは心臓病を患っていたそうだ。しかし、軽い症状だそうで
命に別状はないらしかった。父さんはその後体調は安定したものの、
療養している。この一連の騒動により家庭環境がゴタゴタしてしまって、
あやめとは疎遠になってしまった。

...俺は、自分の今の思考に少しの違和感を持った。


友「おーい、大丈夫かー?ぼーっとしてるけど」


P「ああ、問題ない...」


友の気遣いにそう言って返す。
心配されるのは好きではない。

...それにしてもあやめはアイドルにはなれたのだろうか?
まぁそういった話をきかないからまだなってはいないのだろう。
頑張ってほしいものだ。

その後の授業を受け、放課後になるとバイト先のコンビニへと向かう。
眠気を感じながらもレジ対応などの仕事をこなし、バイトを終わる。


店長「お疲れ様」


P「はい!お疲れ様です!」


挨拶をし、俺は外にでる。疲れた...。
それにしても俺も対人付き合いによって随分演技力が上がったのではないだろうか。
これなら人を欺くこともできるかもな。

自分の演技力にそんな評価を下していると、いつもの帰り道に
男が立っていた。
それ自体はおかしなことではないが、この時間帯、
この道は人が通ることはほとんどないので少し不思議に
思うのだ。


P(スーツか...まぁサラリーマンかなんかだろう...)


そんな事を思いながらその男の横を通ろうとしたとき。


肩を掴まれた。


8 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 00:37:54.47 ID:VsHFjpXO0

P(なんだ!?)


突然のことに、俺は動揺した。危険な人物だったのだろうか?


P(面倒事には巻き込まれたくないぞ...!)


そう思うと俺はその男の方を向き


P「...何か、ご用ですか?」


と、作り笑顔を張り付けて言った。
すると男は作り笑顔とは違う、満面の笑みを浮かべて俺にこう告げた。


「君、アイドルをプロデュースしたくはないかい?」


P「...は?」


思わず声が出てしまった。


「驚くのも無理はないか。実は俺はこういう者なんだ」


男は俺に紙を差し出してきた。どうやら名刺のようだ。
俺はその名刺の名前のあたりに目を向けた。

898プロ PaP(名前)

......俺の父さんの会社じゃねえか。


PaP「いやー、君を見た時に俺はティン!っときてね。
是非君にプロデューサーをやってもらいたいと思ったんだ!
...シンデレラプロジェクトの事は知っているだろ?」


P「ええ、まぁ...」


PaP「それを898プロが取り仕切っているんだけど、君にもぜひ参加してもらいたいんだ!
興味がでたら名刺に書かれている番号にかけてほしい!じゃあよろしくねー!」


そう言うと男は走り去っていった。


P「...帰るか。」


その後、家に帰った俺は書類などを整理している
父さんに向かってこう言った


P「...父さん、採用する人はもう少し考えたほうが良いよ?」


P父「...?、どういうことだ?」


P「...なんでもない、おやすみ」


俺は風呂などを済ませ、自室の布団にもぐる。


P(...プロデューサー、か)


三年前の夢について語るあやめが脳裏によぎる。


P(...俺がプロデューサーになる時は、あやめも誘ってやるかな)


そんなことを考え、笑みをこぼした俺は、
そのまま眠りについた。
9 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/17(土) 00:39:05.63 ID:VsHFjpXO0
いったんここまでです。
眠いので寝てからまた書き始めたいと思います。
おやすみなさい...
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 02:14:14.77 ID:RuRcMUkvo
Pの前にモバつけろよ
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 06:06:35.18 ID:IdeGfAWm0
いつものモバつけろ定期

最初の3文字しか認識できないのかな
12 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/17(土) 09:08:35.60 ID:VsHFjpXO0
あースレッドにモバ入れるの忘れてましたね...申し訳ない。
とりあえず今回はこのまま書かせていただきます。次回からは気を付けますね。

起きたので続き書きます〜。
13 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 09:26:27.80 ID:VsHFjpXO0


----------------------------------------------------


P「...ここかぁ」


俺は今、898プロの前に立っている。
...思ったより大きいな。898プロには子供の頃に連れられて行った
事があったが、その時のことはあまり覚えてなかった。
まさかこれほど大きいとは...。少し気後れしてしまう。
そうやってまごまごしていると898プロから誰かが歩いてきた。
その人物は俺に気づくと、陸上選手並みのスピードで駆け寄ってきた。


PaP「おはよう!興味を持ってくれると思ってたよー!」


P「...ドーモ、PaPサン...」


しまった、急の事に驚いて少しぎこちない挨拶になってしまっただろうか。


PaP「おう、いい挨拶だな!立ち話もなんだし、
さぁさぁ入って入って!」


......あまり気にしない性格のようだ。
そうして俺はPaPさんに案内されながら898プロの中を歩く。


P「すごい大きいところなんですね、ここ」


PaP「ああ!そりゃあアイドル界では知らない奴は
誰もいないと言われるほどの超有名プロダクション
だからな!」


少し誇らしげにそう言うPaPさん。
多少強引なところはあるが、根はいい人なのかもしれないな、と
俺はPaPさんに対する評価を少し思い直した。


P「でもそんなところになぜ?私はプロデューサーとしての知識は
ほとんどありませんし、こんなに大きいところなら他にもプロデューサーは
たくさんいるでしょう?」


PaP「だから、ティンときたって言ってるだろう?」


PaP「それに、プロデューサーに多いも少ないもないぞ?
たくさんいた方が良いだろう!」


......そうなのだろうか?
14 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 09:51:08.70 ID:VsHFjpXO0

PaP「...よし、着いたぞ。ここが俺たちのいる
事務所だ!」


そう言って通された事務所は...意外と小さく見えた。
いや、会社の中の一部分なのだから、これぐらいが妥当な
のだが、ここに来るまでの廊下の長さにしては狭く感じられた。


「...あんたが新しいプロデューサー?」


そう声をかけられ、俺は声のする方へと体を向ける。
そこには顔立ちの整った可愛いというよりは綺麗という
言葉が似合う美女が立っていた。


「...あんたは初対面の顔をジロジロ見るのが趣味なの?」


P「いや!そういうわけじゃ...すみません」


凛「はぁ...別にいいよ。...で、あんたの名前は?
私は渋谷凛。アイドル...かな」


P「私はPです。今日は...そちらのPaPさんとのお話があって
参りました」


目的を思い出しながらもその言葉をなるべく丁寧に変換し、話す。


凛「...そんなに畏まらなくてもいいよ。歳は近い
みたいだし」


P「...わかりました」


凛「...それでも敬語は抜けないんだね...。
そうだ、PaPさん。プロデューサーとCuPさんは
先にあっちにいるってさ」


そう言って渋谷さんは休憩室らしき場所を指さす。


PaP「ああ、ありがとう凛ちゃん!」


凛「私は卯月と未央のところにいるから、なにか用あれば呼んで。じゃあね」


渋谷さんは部屋を出て行った。
この他にも部屋はあるんだな、やっぱり。


そして、俺はPaPさんに連れられ、先ほど示された個室へと入る。
そこには長身で眼鏡をかけた知的そうな雰囲気の男性と、
背が小さく中学生ほどにみえる童顔の男性がソファーに座っていた。


PaP「さぁ座ってくれ。話をしようじゃないか」


そう促され、俺とPaPさんはその二人とは対面側にあるソファーに
座った。
15 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 10:12:34.06 ID:VsHFjpXO0

PaP「まずは自己紹介からだな。俺の名前は知ってるよな?
俺は基本的に元気が溢れてる明るい奴らのプロデュースを
してんだ。んで、この眼鏡をかけている奴が...」


CoP「CoPだ。俺がプロデュースしている奴は落ち着いているものが
大半だ。...よろしく頼む」


PaP「そして、この小っちゃいのが...」


CuP「CuPだよ!かわいーいアイドル達をプロデュースしてるよー。
よろしくね。あとPaPくんは小っちゃい言わない」


PaP「すまんすまん」


...何とも愉快な人たちだ。


PaP「じゃあこれから仕事について説明するなー」


ん?もう入ることは決まってるのか?


CuP「PaPくん、まずは面接しないと...形だけでもね?」


形だけ?なんか緩くないか?


CoP「...すまない。基本的に馬鹿な奴らなんだ」


PaP「誰がバカだと!」


CoP「お前がいると話が進まん...早くやるぞ。
仕事が片付かんからな」


そう言ってCoPさんは切り出した。


CoP「俺が質問することはただ一つ...
...チョコは好きか?」


......は?質問の意図がわからない。しかし、チョコ
が好きか嫌いかと聞かれれば好きな方だろう。


P「はい、好きですね」


CoP「そうか...合格だ」


満足げにCoPさんは微笑んだ。...この人もダメかもしれない。
16 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 10:25:10.69 ID:VsHFjpXO0

PaP「ははは、こいつは無類のチョコ好きでな!」


CuP「...もう面接はいいね。CoPくんがオーケーしたし!で、
君の名前は?」


P「私の名前は...Pです」


名前を告げた瞬間...三人が、固まった。いや
PaPさんは渋谷さんとのやり取りの時に聞いているはずなのだが。


CoP「まさか、お前は社長の息子か?」


P「...ええ、そうですが」


CuP「...PaPくん?なんで事前に確認しなかったのかな?」


PaP「...いやー、これは社長に報告するときにどやされるかもしれんな!」


CuP「報告するときは一人でしてね?」


PaP「...はい。...って、もうこんな時間かよ!?
きらりんの仕事の時間じゃないか!」


CoP「...俺もそろそろ打ち合わせの時間だな」


CuP「僕も仕事入ってるし、説明はちひろさんに
お願いしよっか」


ちひろ「やっぱりそうなると思いましたよ...
みなさん話しすぎです」


そう言ってちひろと呼ばれる女性が入ってくる。
どうやら一連のやり取りを聞いていたらしい。


PaP「神!天使!ちひろ様!あとはお願いしますー!」


そう言うと、三人はせわしなく出て行った。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 10:37:48.49 ID:e3xpMCLOO
>>10
まあまあ、初SSらしいし今回は仕方ないさ
18 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 10:51:44.45 ID:VsHFjpXO0

P「...おはよう、姉さん」


そういって俺はちひろに挨拶をした。


ちひろ「はぁ...やけに早起きしてると思ったらこういう事だったのね
...びっくりしたわよ?私の弟がいきなり入ってくるんだもの」


P「あははは...それで姉さん、仕事についてなんだけど...」


ちひろ「その前に、聞くことがあるわ」


姉さんは一転して真剣な顔になるとこう言った。


ちひろ「あなたはまだ高校生よ。プロデューサーと高校生活の両立は
難しいと思うわ。それでもあなたはやりきるほどのやる気はあるの?」


P「ああ、それはあるよ。元々プロデューサーにはなりたかったしさ」


ちひろ「...即答するのね。...まぁ、それならいいけど」


ちひろ「それにしてもPがプロデューサーねぇ...やっぱりあやめちゃんのため?」


P「さぁ...どうだろうね?」


ちひろ「ふーん...まぁ誘いたければ誘うといいわ。別に構わないし」


P「?」


ちひろ「...仕事の説明をするわね」


そういって姉さんは説明を始めた。要点をまとめるとこうだ。
アイドルの仕事を営業して取ってきたり、スケジュールの管理を
することが主な仕事。アイドルに関しては、所属済みのアイドルの了承
を得てプロデュースしてもいいし、スカウトして連れてきてもいいとの事。
そしてシンデレラプロジェクトについての事も聞いた。3年に一度、全プロダクション
のアイドル達によるトーナメント制のLiveバトルを行い、それに優勝したアイドルは
晴れてシンデレラガールの称号が得られるのだ。


ちひろ「...こんなところね。何か質問はある?」


P「...Liveバトルってなんだ?」


ちひろ「Liveバトルはその名の通りライブをしてバトルをするのよ。アイドル同士がね。
お互いに歌を歌ったり踊ったりのライブをしてどちらが会場ののお客さんの心が掴めるかの勝負をするのよ。
お客さんは事前に申し込まれている中から抽選で選ばれるわ。ファンもそうでない人も関係なく、ね」


P「つまり、ファンが多い方は選ばれやすくて有利ってことか...」


ちひろ「そういう事。だからアイドル達は日々の仕事をするってことね。
もちろんアイドルの大半はそんな事は考えずにただ楽しませたい、アイドルとしての
姿を見せたい、って子たちだけどね」


P「...そうか」


ちひろ「もう他にはない?」


P「ああ、ありがとう、姉さん」
19 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 11:08:26.16 ID:VsHFjpXO0

ちひろ「...それで?あなたはアイドルをスカウトするの?」


P「...うん、そうしようと思ってる」


ちひろ「......あやめちゃん?」


P「いや、あやめだとは、言ってないぞ?」


何ニヤニヤしてるんだ、姉さんは。


ちひろ「素直じゃないわねー...まっ、いいわ。あとはお父さんから
許可もらってきなさい」


P「俺が?」


ちひろ「当然じゃない。今お父さんは家にいるし話せるでしょ?ある程度の話は
通しておいてあげるから」


P「...わかったよ」


さっきのPaPさんたちの反応からして、不安だな...。
そう思いながらドアを開け、俺は898プロを後にした。


ちひろ「...元々プロデューサーをやりたかった、ね。本当かしら...」


---------------------------------------------------------------------


家に帰った俺は父さんの私室へと向かった。


P「父さん、調子はどう?」


P父「...ああ、これと言って問題はないな...どうした、何か用か?」


P「ああ...実は...」


俺はここまでの経緯をかいつまんで話した。[PaPさんにスカウトされた]所から。


P父「...そうか...」


俺の話を聞いた父さんは顔を伏せてしまった。
「PaP...後で電話するか」と言っていたのは聞かなかったことにしよう。
その後、父さんは顔を上げ、俺の目をじっと見る。そして口を開いてこう言う。

P父「...俺は反対だ。お前がプロデューサーになるのは」

20 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 11:31:25.35 ID:VsHFjpXO0

P「ど、どうして...」


姉さんは形は違えど、あそこで働いているのにどうして俺はダメなのか。
その事実に俺は動揺した。


P父「お前はプロデューサーになるとして、きっと浜口君をアイドルとして
スカウトするだろう?」


P「...まだ、あやめをスカウトすると決まったわけじゃ...」


P父「正直に言え」


P「...ああ、そうだ。俺はあやめをトップアイドルにしたい」


P父「だから、駄目なんだ...」


あやめを、アイドルにすることが、駄目だと...?


P「どういう事だよ!?まさかあやめがアイドルに向いてないとでも言うのか!?」


P父「...そういうわけではない。浜口君は十分アイドルとしてやっていく力は持っているだろう。
だが、お前が浜口君のプロデューサーになるのは反対だ」


俺はその言葉を受け、顔を伏せる。
...そうか、それもそうだよな。
俺にはプロデューサーとしての知識や経験はまるでない。人とのコミュニケーションだって得意じゃない。
なのにPaPさんに目をつけられただけでできるんだって思い込んでただけだ...そんなおれがあやめのプロデューサー
なんて...。


P父「...だが、一つ条件を飲めば許してやってもいい」


その言葉に俺は顔を上げる。条件...


P「父さん、条件って?」


P父「シンデレラガールを決める大会、シンデレラフェスティバルが今からおおよそ2年後に開催される。
その大会で浜口君を優勝させるのだ。お前の手で。それができなければ、それ以上のプロデュースは認めん。
浜口君にもアイドルはあきらめてもらう」


P「......」


2年後の大会で優勝しろ、だって...?
...無理だ。初めて二年後でシンデレラガールに選ばれたアイドルなんて知っている限りでは見たことがない。
俺には何のノウハウもないのに...それにできなかったときに俺がプロデューサーになれないのはまだいい。でも。

あやめも巻き込まれるのか?

俺が失敗すれば。あやめをシンデレラガールにできなければ、あやめは夢を諦める事になる...


21 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 11:56:46.28 ID:VsHFjpXO0

P父「...どうだ、それでも、お前はやるのか?」


でも俺は、あやめを...


P「...少し、考えさせてくれ」


そう言って俺は部屋を出た。
...とりあえず、あやめに会いに行こ。これは、俺一人で決められる
問題じゃないからな...

そう自分に言い聞かせ、俺は布団にもぐった。


-----------------------------------------


P母「...あなた?」


P父「ん、どうした?」


P母「聞いてましたよ、さっきの話」


P父「...そうか」


P母「どうして、Pをプロデューサーにしないんです?」


P父「...あいつは危ない。浜口君のことになると特に、な」


P父「それに、あの子たちは、俺たちのような目には合わせたくはないしな」


P母「...そうですね」


-----------------------------------------


P「...ふぅっ」


今日は平日で学校がある。
俺は朝早くに起きると身支度を始めた。
あやめと疎遠になってからというものの起きるのも早くなってしまった。
学校に行く時になぜかあやめに会いたくなかったからだ。


P「...なんで、会いたくなかったんだろうな」


ぽつりとつぶやく。その答えは響き、答えが返ってくることはなかった。


父さんからは、プロデュースしたいアイドルが決まれば、そのアイドルと一緒にPaPさんの所に来い、だそうだ。
それと、姉さんは初めから父さんに話を通しておくつもりはなかったらしい。


P「とりあえず、あやめに会いに行こう...」


会わなければ何も始まらない。俺はひとまず学校へと向かうことにした。
...学校へと向かう足がやけに重く感じられた。
22 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 19:54:49.19 ID:VsHFjpXO0

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友「おはようさん」


学校の教室には、すでに友がいた。


P「珍しく早いじゃないか、いつも予鈴ギリギリなのに」


友「ん、まぁな」


二、三言を交わし、俺も席に座る。


友「...お前、この休日になんかあった?」


P「...まぁな、バイトもやめたし」


友「まじか、へぇ...」


友はそれ以上は聞いてはこなかった。
なんなんだ?いったい。

放課後になると俺は中等部へと足を運んだ。
...視線を感じる。


P「...友、ついて来たければ来ればいいじゃないか」


友「いや、そういうわけじゃないぜ?お前を応援しに来たんだよ。
お前が中等部へ行くってことは、そういう事だろ?」


ニヤニヤしてそう言う友を後目に俺は三年の
教室へと向かった。がんばれよ、と友が言うのが聞こえた。
...頑張るさ。


そうして、俺は今中等部三年の教室の前に立っている。
ここに来る途中の生徒に聞いて、あやめがここにいるのは
わかっているので、後は覚悟を決めるだけだ。
自分の手を見てみると、僅かに震えていた。
...何を怖がっているんだ。きっと、あやめは昔みたいに接してくれるさ。
23 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 20:07:01.64 ID:VsHFjpXO0

P「...ふぅっ」


俺は扉を開けた。


P「浜口あやめさんは、いますか?」


開けたと同時にそう言い、教室を見ると、そこには少女が
一人いるだけだった。後姿しか見えていないが、俺にはわかる。
相変わらず髪をお団子にしている少女を見間違えるわけがない。
...中学まで、ずっと一緒だったのだから。


そんなことを考えていると、少女も俺の言葉に反応して振り向く。


あやめ「浜口あやめとはわたくしの事ですが...っ!」


俺の事を見てあやめは目を見開いた。


あやめ「...P、殿...?」


P「あ、ああ。ひ、久しぶり」


緊張で声が少し上ずった気がする...まずったなぁ。
そんなしょうもない事を頭に巡らせていると。


あやめ「P殿ーーーーーー!!」


P「うおっ!?」


あやめが俺を吹き飛ばそうとするような勢いで抱きついてきた。


あやめ「逢いたかったです...ずっと、ずっと!!」


あやめは泣きながらそう言ってくる。


P「...ああ、俺もずっと、会いたかったよ」


俺もあやめの事を抱きしめ返す。
...まさか泣くとは思わなかった。避けていたのは俺なんだから
怒られるだろうと思っていた。
24 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 20:15:07.45 ID:VsHFjpXO0

...そのうちにあやめは泣き止み、息を整え口を開いた。


あやめ「...P殿が来てくれたという事は、わたくしの事を許して
くれたのですか?」


P「...ん?なんのことだ?」


あやめ「?...わたくしはP殿の誕生日を忘れていることに
P殿が怒っているのかと...」


P「いや、そんなに心狭くないぞ俺は」


あやめ「じ、じゃあどうして...まさか!ただわたくしの
事を嫌っていただけ...?」


まずい...また泣き出しそうだ。


P「そ、そういう訳じゃないんだ!実はな...」


俺はあやめにあの時に何が起こっていたのかを話した。


あやめ「...そうだったのですか...申し訳ありません。
そのような時にわたくしは...」


P「いや、あやめのせいじゃないさ」


...そう、俺の心が弱かっただけだ。


あやめ「...でも良かったです。P殿に嫌われたと思ってましたから」


P「あれで急に嫌いになるわけないだろ?
...俺とあやめはあの時までずっと一緒だったんだから」


そう言うとあやめは少し頬を赤らめる。


あやめ「...そうですね!」


...さて、誤解も解けたし、ここからか。


P「あやめ、今日は話したいことがあるんだ」


あやめ「...帰りながら話しませんか?外も暗くなってきましたし」


あやめに言われ窓の外に目を向けてみると。
...本当だ。気づいたら外は闇に覆われていた。
結構長い時間を過ごしていたらしい。


P「...ああそうだな、帰るか」
25 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 20:32:57.23 ID:VsHFjpXO0

------------------------------------------------------------


帰り道。俺はあやめと昔一緒に歩いていた道を通っていた。
あの時からあやめと会うのを避けていた俺はこの道を通っていなかったため、
懐かしく感じられる。


あやめ「それで、話とは?」


P「ああ、それはだな...」


P「あやめ...アイドルになる気はないか?」


あやめ「アイドル、ですか?」


おっ、ちゃんと言えるようになってるな。


P「ああ、昔言ってただろ?アイドルになりたいってさ」


あやめ「...覚えていてくれたのですね!嬉しいです!」


...まぁ、あれは忘れられないだろう。いろいろありすぎて。


あやめ「誘ってくださったという事は、P殿も...?」


P「ああ、俺もあやめのプロデューサーになれると思う」


あやめ「本当ですか?やった!」


あやめは無邪気にはしゃいでいる。可愛い奴め。
...だが、まだ話すことはある。
俺は無意識にあやめから目を背けていた。


P「あやめ..だが、俺と一緒にやるには一つ条件があるんだ」


あやめ「条件とは?」


P「デレフェスだ、知ってるだろ?」


あやめ「はい!もっとも素晴らしいアイドルを決める大会の事ですよね?」


P「ああ、その大会が二年後にある。
...その大会で優勝するのが条件だ」


あやめ「...えっ?」


...顔が見れない。


P「それができなければ、俺はプロデューサーを辞めることになるし、
あやめももうアイドルができなくなる...」


そこまで言うと、俺はあやめの顔を恐る恐る見る。あやめは今どんな顔を
しているだろうか。悲しむ顔は見たくない。


...だが。あやめは、笑顔のままだった。
26 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/17(土) 20:54:19.09 ID:VsHFjpXO0

あやめ「やります!」


P「...へっ?いやそんな、簡単に決める事じゃ...」


あやめ「念願の夢が叶うのですよ!?やるにきまってます!」


P「もし出来なかったらその夢も叶わなくなっちゃうんだぞ!?
それに、別にプロデューサーは俺じゃなくても...!」


あやめ「できないわけがないです!P殿がいますから!
P殿以外のプロデューサーなど考えられませんし!」


あやめ「さらに!...P殿、わたくしの夢はなんですか?」


P「...アイドルになる事?」


あやめ「[P殿がプロデューサーになり、わたくしがアイドルになる事]、です!
P殿がいないと駄目なのですよ?」


...俺なんかに、あやめはここまでの事を言ってくれたんだ。
俺も、期待に応えなきゃな...!

全く、あやめは...


P「...じゃあ、やろうか、アイドル」


あやめ「...はい!P殿もプロデューサー、やりましょう!」


そう言うあやめの笑顔は、俺にとって太陽のように
輝かしかった。


-------------------------------------------------------------------------


...俺は今、あやめの家の前に立っている。
あやめが俺に渡したいものがあると言っていたので、家まで送るついでに貰おうと
思っていたのだ。家も近いしな。

...玄関の扉が開いた。


あやめ「お待たせしました!プロデューサー殿!」


P「プロデューサーって...気が早いんじゃないのか?」


あやめ「何を言っているのですか!何事もまずは形から、ですよ!」


あやめは小包を胸に抱え持っていた。その小包はリボンで装飾されている。


P「これか?渡したいものって」


あやめ「はい!開けてみてください!」


そういいながらあやめは俺に小包を渡してきた。
俺はそれを受け取り、開けてみる。

...そこには手裏剣のストラップが入っていた。
27 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/18(日) 15:07:48.44 ID:gOIwCwrL0

P「...これは?」


あやめ「夢の道を歩む事となった記念と、誕生日の時に渡し忘れてしまっていましたので...」


恥ずかしいものですが。とあやめは言葉を付け足す。
これが、あの時渡そうとしていたもの...か。
その時、俺の中の止まっていた何かが再び動き出すのを感じた。
ああ...そうか、俺はあの時から...


P「いや...ありがとな、あやめ。嬉しいよ」


俺はあやめに平凡な感謝の意を贈る。
だが、それはあやめには平凡には映らなかったようだ。


あやめ「...P殿、目から涙が」


P「え?」


俺は目元に手を当ててみる。...濡れている。確かに涙を流しているようだ。


P「はは、おかしいな。嬉しいんだけど。でも、涙が出てくるんだ」


P「ああ、やっとこうしてまた、二人で一緒にいれてっ、凄い、嬉しいんだ...っ!」


あやめ「P殿...わたくしも嬉しいです...っ」


そう言うなり、あやめも泣き出す。
人目も気にせず、俺たちは二人で泣き続けた。


----------------------------------------------


...恥ずかしいところを見せてしまった。
あの後、泣いていた俺たちはあやめのお母さんに怒られた。うるさいと。
だがその時に、懐かしいわね、とも言われた。


あやめ「...叱られてしまいましたね」


P「...ああ、そうだな」


そのまま気まずい雰囲気のまま俺は帰ろうとする。
...そうだ、その前にもう一度あやめにお礼を言っておこう。


P「あやめ...ストラップ、ありがとな!」


あやめは、俺が昔いつも見ていた、とびきりの笑顔でこう返した。


あやめ「主君に尽くすのが、しのびの役目ですから!」


-----------------------------------------------------


...もう迷いはない。俺はプロデューサーとして、あやめを必ずシンデレラにしてみせる。俺の全てをかけて...!
......それが俺が、あやめの隣にいられるただ一つの方法だから。


P「...12時の魔法は、解けさせてたまるか...っ!」
28 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/18(日) 15:24:57.54 ID:gOIwCwrL0

--------------------------------------------------


...ここは?
俺は今、砂浜に立っている。周りに人はおらず、どこまで見ても、あるのは砂と海だけだ。
なぜこんなところにいるのだろう...こんなところに来た覚えはないんだけどな。
そう考え込んでいると声がした。その声は近いようでとても遠い。


あやめ「...プロデューサー殿!」


声のする方へ振り向くと、そこには浴衣姿のあやめが立っていた。


P「あ、あやめ?その姿は?」


あやめ「...?何を言っておられるのですか?プロデューサー殿がお祭りに行こうと言ったのですよ!」


...お祭り?
その瞬間。周りにはさっきの何もない砂浜ではなく、
祭りにあるような屋台がいくつも並んでいた。


P「...へっ!?」


あやめ「......P殿」


急な変化に驚きを隠せていなかった俺だったが、あやめの声を聴き
再びあやめの方へ振り向く。あやめの後ろでは花火が上がっており、
火花のきらめきがとても綺麗だった。
あやめは俺の手を掴み、花火を背にしてこう言った。いつも見せてくれていた太陽のような輝きを持つ笑顔ではなく、
崖に咲く一輪のアサガオのような、明るいようでとても儚い笑顔で。


「わたくしの手を、離さないでくださいね」


29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/18(日) 15:49:14.74 ID:gOIwCwrL0

-----------------------------------------------


ぷろ......でゅ...さ...


...何やら微かに声が聞こえる。この声は...


あやめ「......起きてください、プロデューサー殿!」


P「...んぅ、あやめか。...てことは、もう朝か...」


あやめ「そうですよ!今日は898プロに行くのではありませんか!」


そういえば今日は898プロに行く日だったな...
あれから俺はPaPさんに連絡を取り、スカウトした
アイドル候補を連れて行く旨を伝えた。
もちろん父さんにもそのことを言ったが、条件を飲むなら問題ないと返された。
...とりあえず起きるか。俺は重い体を起こし、あやめの方に目を向けた。


P「...おはよう、あやめ」


あやめ「おはようございます!プロデューサー殿!」


-----------------------------------------------


起きた俺は母さんが作った朝ご飯を食べる。
食べている俺とそれを見ているあやめを見て母さんはこう言った。


P母「またねぼすけになったわね...これもあやめちゃんと仲直りしたからですかね?」


P父「ふっ...そうかもな」


P「...うっさいよ」


でもそうかも知れないな。重い枷が一つ外れたような気持ちだ。
実際外れたのか。そうしているうちに俺は朝ご飯を食べ終わり、身支度を始める。
今日は898プロに行った後、正式にプロデューサーとして働くことになるはずだ。
準備は念入りに行わなければ......よしっ!


P「じゃああやめ、行こうか」


あやめ「はいっ!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/18(日) 16:01:05.64 ID:gOIwCwrL0
あやめは先に玄関を開け、外に出ていく。
それに続き俺も外に出ようとすると。


P父「まて、P」


父さんが俺の事を呼び止める。
...一体何なんだ?こっちが気持ちよく向かおうとしてるってのに...


P「...なに?父さん」


少しぶっきらぼうに返事を返してしまう。...もっと取り繕えるようにならなきゃな。


P父「...本当にいいんだな?プロデューサーで」


P「...ああ、俺はあやめと一緒に頂点を目指すよ」


P父「そうか...」


P「話はそれだけ?...なら俺はもう行くよ」


P父「...一つだけ忠告しておく」


P「...?」


P父「...浜口君の想いを、忘れるなよ」


P「...行ってきます」


俺は扉を開け外に出る。[あやめの想いを忘れるな]、ねぇ...意味がわからん。


--------------------------------------------


ふぅ、息子たちを見送ったことだし、私も仕事をするか。
そうして自室に戻ろうとすると。


P母「...あなた?」


P母の、やけに鋭さを持った言葉が突き刺さる。


P父「な、なんだい。P母?」


P母「また、余計な口出しをしましたね?」


...まずい、怒っているのだろうか?


P父「ま、まぁいいだろ?二人の為だ」


P父「...あの子たちはまだ若い。こんなことをするような歳でもないのに...特に、Pはな」


P母「...本当に心配性ですね、貴方は」


P父「そうかな?」


P母「そうですよ。私の時だって貴方は無茶ばかり...
それに、困難にぶつかる時があっても、それを解決できるのは当人たちだけ...
無駄に干渉するのも考えものだとは思いませんか?」


P父「...そうだな」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/18(日) 16:20:40.53 ID:gOIwCwrL0

--------------------------------------------


あやめ「うわー、広いですね!」


俺たちは今898プロの中を歩いている。あやめは内部の広さや綺麗にされている廊下等に目を輝かせている。


P「俺も初めて来た時にはびっくりしたよ...ん、着いたぞ、入ろうか」


あやめ「はい...少し緊張します...!」


P「ははっ」


この前行った部屋にもう一度来てくれと言われたので、その部屋の前まで歩いてきた俺は、扉を開ける。


P「おはようございます!」


ちひろ「おはよう、早いわね?、遅刻すると思ってたわ」


P「...するわけないだろ、こんな時に」


扉を開けると姉さんが迎えてくれた。


あやめ「おはようございます、姉上!」


ちひろ「おはよう、あやめちゃん」


P「...あれ、PaPさんは?」


ちひろ「ああ、あの人なら...」


PaP「おう、おはよう!」


あやめ「く、曲者!?」


PaPさんは天井から首だけを現した。


P「...何やってるんですか、PaPさん」


PaP「荷物整理だ!」


...荷物整理?


ちひろ「ここの上にはもう一つ部屋があって、倉庫として使わせてもらっているんですよ」


姉さんが事務員モードになって説明する。


PaP「そういう事だ!この上、みてみるか?...よっと!」


PaPさんは飛び降り、着地までの少ない時間で体を一回転半回し、華麗に着地した後、梯子を持ってくる。
その様子をあやめは898プロの中を見ていた時よりもキラキラとした目で見ていた。


あやめ「本物の忍者みたいでかっこいいです...!」


P「...どれぐらい鍛えたらあんなんになるんだろうな?」
32 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/18(日) 20:17:03.84 ID:gOIwCwrL0
そんな話をしているうちに、PaPさんはもう既に梯子をかけ終えていた。


PaP「さぁ上がれ!」


俺がまず上がり、その後に続いてあやめが上がっていくと...


P「...なんだこれ?」


部屋の至る所にきのこが生えていた。
そして、その中には少女が座り込んでいた。


「ヒヒ、ヒヒヒヒ、ぼっちのこー......」


あやめ「プロデューサー殿?中はどうなっていましたか?きゃっ!プロデューサー殿!?」


俺はあやめを抱え込み、上への扉を閉め、そっと降りる。


P「...PaPさん、あの子は?」


PaP「ん?あいつはうちが抱えているアイドルの一人だな!
きのこがすごい好きみたいだぞ!」


P「......」


...アイドルにも色々な子がいるんだな。


ちひろ「...色々紹介するのは構いませんが、早く説明しないとまた時間が無くなりますよ?PaPさん」


PaP「ち、ちひろさん...そんな怖い顔しないでください...」


PaP「よ、よし!説明するぞー」


そう言ってPaPさんは俺たちを前話し合ったソファーの所まで連れてくる。
その後、CoPさんとCuPさんもきて、仕事についての詳しい説明を受ける。


PaP「よし!こんなもんかな...」


そして、今日から俺たちは仕事を始める事となる。そうは言っても、
まずは基礎的なところから始めるので、あやめはひたすらレッスンをし、
俺はPaPさんたちの仕事に同行し、それを見て学ぶといった所だ。


PaP「じゃあ早速あやめちゃんだっけ?君のレッスン場に行こう!」


そうして、俺たちはレッスン場へと連れていかれる。
するとそこではアイドルと思われる人たちが汗を流して真剣に
レッスンに取り組んでいた。中にはよく見る有名なアイドルもいた。
33 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/18(日) 20:48:28.47 ID:gOIwCwrL0
PaP「ここがレッスン場だ。あやめちゃんはここで頑張るんだぞ?」


あやめ「はいっ!」


PaP「おおっ、いい返事だ!」


あやめ「プロデューサー殿、これよりあやめは修練を積んで参ります!」


そう言うと、あやめはトレーナーらしき人物の所へと走っていった。


CuP「僕は今手が空いているから可能な限り様子を見ててあげるよ。
だから君は今日は心配しないで仕事してきなよ!」


CuPさんもついててくれるようだ。なら心配はいらないだろう。


その後俺は仕事について行く事になったが、PaPさんは仕事まで少し時間があると言う事だったので、
俺はCoPさんの仕事に同行する事となった。
これから俺のプロデューサーとしての人生が始まっていくのか...
俺はこの時、何か漠然とした不安を抱えていた。
その不安の正体は仕事をしていく内に明瞭になっていった...。


---------------------------------------------


あやめ「はぁ...はぁ...っ!」


わたくしは今、初めてのレッスンをし、休憩時間へと入りました...
正直、レッスンはとても大変です。足が震えてしまって先ほどまで立つことも
やっとでした。ですが、ほかの皆さんはさすがというべきか、どんなレッスンも
余裕といった表情でこなし、談笑しています。
...わたくしも、早くあの方々のようにならなければ...!
そんなことを思っていると。


「ねぇ、ちょっといいかな?」


声をかけられました。


あやめ「...な、なんでしょうか?」


未央「やっ、たいした用事はないんだけどね。
新しく入った子だし、自己紹介でもしようかなって...」


あやめ「そ、そうなのですね?も、申し訳ありません。
ちょっとまだ息が...」


卯月「未央ちゃん、初めてのレッスンで疲れてるみたいだし、やっぱり後にした方が...」


あやめ「い、いえっ、大丈夫ですよ!少々お待ちを...」


そう言ってわたくしは深呼吸をします。
...少しづつ呼吸が整ってきたところで、再び三人に向き直ります。
34 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/18(日) 21:05:06.72 ID:gOIwCwrL0
あやめ「...わたくしは、浜口あやめと申します。
この度、アイドルというものになったものです」


未央「...なんか固くない?」


あやめ「そ、そうでしょうか?」


凛「...初々しいね」


卯月「そうだね、凛ちゃん!」


未央「じゃあこっちは私からいくよ〜っ!」


そう言って髪が短く、とても活気に満ち溢れている方が前に出てきました。


未央「私は本田未央っていうんだ!もちろんあやめちゃんと同じアイドルだよ!」


その紹介にほかの二方も続きます。


卯月「私は島村卯月っていいます、えへへ、よろしくね、あやめちゃん!」


凛「...渋谷凛だよ、よろしく」


あやめ「本田殿に、島村殿、渋谷殿ですね」


本田「名前でいいんだよー、二人もその方がいいよね?」


その問いかけに二人はうなづきます。


あやめ「では、そうさせていただきますね、未央殿!」


未央「うむ、よろしい!」


その後、私たちは他愛のない話で盛り上がっていると、互いのプロデューサーのお話になりました。


卯月「そういえばあやめちゃんは誰にプロデュースしてもらっているの?」


未央「タイプでいえば、私が近いのかな」


卯月「じゃあ...PaPさん?」


あやめ「いえ、違いますよ」


凛「...もしかして、Pって名前の奴じゃない?」


あやめ「...そうです!よくわかりましたね?」


未央「しぶりん、その人って?」


凛「いや、私もよくは知らないんだけど、最近入ってきたプロデューサーだよ。
一度だけあったことがあるんだ」


卯月「Pさんかぁ、あやめちゃん、Pさんってどんな人なの?」


未央「それ、私も気になる!」


あやめ「P殿の素性、ですか...」
35 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/19(月) 19:40:16.95 ID:gTd7muZ90
P殿の素性と言っても最近わたくしも再開したばかり...何か話せることは...


あやめ「...昔のP殿の事になりますが、よろしいですか?」


未央「うんうん、大丈夫!」


あやめ「では...」


そう切り出し、わたくしは語り始めました。
そう、あれはわたくしがまだ小学1年生のころ...


--------------------------------------------------------


あやめ「うっ...ひっく...」


あやめ母「あやめ、もう泣き止みなさい...?」


あやめ「だって、だって...!」


あやめ父「お義父さんからもらったおもちゃの苦無、なくしちゃったんだもんなぁ...」


あやめ「うぅ...」


あやめ母「あなた!掘り返すとまた泣いちゃうでしょ!」


あやめ父「うう...すまん」


あやめ母「大丈夫よあやめ、おじいちゃんに言えばまたもらえるわよ?」


あやめ「ですが、ひぐっ、あれはわたくしがしのびとして成長したあかしとしてっ、うわぁぁぁぁん!」


あやめ父「...困ったなぁ」


昔のわたくしはお祖父様からもらった苦無をなくしてしまってとても落ち込んでいました。
その後、わたくしは毎日学校が終わるとなくした泥川のあたりを服を汚しながら探していました。


あやめ「うぅ...ないよぉ...」


そうしていると。


P「...どうしたの?」


その時、小学4年生だったP殿が話しかけてくださいました。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/19(月) 19:56:00.62 ID:gTd7muZ90

-----------------------------------------------


P「...それは、大変だったね」


あやめ「ひっぐ、ひっぐ...」


私がいつまでも泣いていると、


P「...泣かないで」


P殿がわたくしの頭をなでてくださいました。


P「僕も一緒に探すからさ、頑張ろう?まだ壊れたわけでもないんだからさ」


あやめ「...うん」


そうしてP殿は見ず知らずのわたくしのために一緒に泥だらけになりながら
苦無を探し続けてくれました。
そして...


あやめ「み、見つかりました!!」


P「本当!?」


あやめ「ありがとうございます!良かったぁ...」


あやめ母「あやめ!こんなところにいたのね!心配したのよ...」


見つかったと同時に母上が迎えに来てくださいました。


あやめ「母上!見つかりましたよ!お祖父様の苦無!」


あやめ母「そう!...よかったわね...」


あやめ「はいっ!」


P「...よかったね、...じゃあ、僕はこれで...」


あやめ「...待って!」


P「...?」


あやめ「わたくしは、浜口あやめと申します!あ、あなたは...?」


P「ああ、僕は、Pっていうんだ」


あやめ「P殿...ですね!明日、ここで待ってます!一緒に学校に行きませんか!?」


P「...わかったよ、じゃあまた明日ね」
37 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/19(月) 20:10:42.13 ID:gTd7muZ90

そう言ってP殿が手を振り、わたくしも両手を振って、P殿が見えなくなるまで降り続けました。
そうして、P殿は遠くなっていきました。


あやめ「P殿...」


あやめ母「あやめ、今の子は?」


あやめ「...わたくしの苦無を一緒に探してくれた、とても優しい方です!」


あやめ母「そう...じゃあ今度何かお礼しなくちゃね?」


あやめ「はい!」


この日から、P殿はわたくしの主君となりました。


------------------------------------------------------------


あやめ「以上が、わたくしとP殿の初めての邂逅、というわけです」


...少し話す内容を間違えてしまったでしょうか?
少し恥ずかしくなって急いで言葉を付け足します。


あやめ「で、ですのでP殿はとてもお優しいお方なのですよ!」


そう言って、未央殿たちの方へ目を向けると。
みなさん、一同に感動したような顔もちでした。


未央「...よかったねぇ...Pさんがいてぇ!」


卯月「私、感動しました!」


凛「...中々やるじゃん、あいつ」


未央「そうか...それであやめちゃんはPさんに惚れたんだね!」


未央殿の一言でわたくしの顔が自分でも熱くなっていくのを感じました。


あやめ「ち、違いますよ!わたくしとP殿はそのような関係では...」


未央「ん〜?本当かなぁ?」


未央殿がとてもにやけた顔で聞いてきます。


凛「はぁ...未央、もうそろそろ休憩終わるから戻るよ!」


見かねた凛殿が未央殿を止めてくださいました。


未央「ちょしぶりん!?そんな引っ張らないでってば〜!」


卯月「あっ二人ともまって!...じゃあね、あやめちゃん!」


卯月殿は満面の笑みを浮かべて去ってい行きました。
...わたくしもいつかはあのような笑顔をしたいものです。


三人が去った後、わたくしは残り少ない休憩時間で軽くリラックスをしていました。
38 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/19(月) 20:13:22.00 ID:gTd7muZ90
...実は、あの話でまだ、あのお三方には話していないことがありました。
なぜなら、そのことはP殿の為にも秘密にした方がいいと思ったからです。


------------------------------------------------------


P
39 : ◆LwyZOMDa4U [sage saga]:2017/06/19(月) 20:14:43.12 ID:gTd7muZ90
間違えて途中で送ってしまいました...今の部分から書き直しますね。申し訳ありません
40 : ◆LwyZOMDa4U [ saga]:2017/06/19(月) 20:27:49.28 ID:gTd7muZ90
...実は、あの話でまだ、あのお三方には話していないことがありました。
なぜなら、そのことはP殿の為にも秘密にした方がいいと思ったからです。


------------------------------------------------------


それはわたくしたちが一緒に泥川で苦無を探していた時の事です。


P「...君が落とした苦無ってそんなに大切なものなの?」


あやめ「...はい、お祖父様からもらった、とても大切なものです...」


P「そっか...そりゃ探したほうが良いよね」


あやめ「あなたは、どうして手伝ってくれるのですか?」


P「...大切なものを失うのはつらいからね」


あやめ「......」


P「どうでもいい話かもしれないし、君にはまだ理解できないかもしれないけど...
昔ね、僕も大切なものをなくした...いや、奪われたんだ」


あやめ「うばわれた...?」


P「...小さい頃、姉さんが僕の好きなキャラクターの絵をかいてくれたんだ。
それを僕は受け取ってとても喜んだ...でも、それを破り捨てられたんだ...」


P「僕の...そのとき一番仲が良かった子にね...」


P「ばかげた話だろ?仲が良いと思ってたのは僕だけだった。なんてさ...」


...その時のPさんの顔はとても悲し気で、今でもわたくしの頭に強く残っています。


----------------------------------------------------


トレーナー「休憩時間終わりー!、さぁ、続きを始めるわよー!」


休憩が終わったようです。
わたくしはまだ疲れが残っている体を動かします。

...もう、P殿のあんな悲しい顔は見たくない。
そのためにもあやめは努力します。
胸を張って、P殿の隣に立てる、立派な忍ドルになるために...!
41 : ◆LwyZOMDa4U [saga]:2017/06/19(月) 22:27:43.67 ID:4g0exg3GO
------------------------------------------

…俺がプロデューサーになってから早1ヶ月がたった。梅雨は早くも過ぎ去り、夏の暑さをじわじわと感じ始めている。それと同時に俺は焦りも感じ始めていた。

……仕事を取れない。
いいところまでは行くのだが、どうも取り付ける所まではいかないのだ。
PaPさんからすると1ヶ月で仕事がないのは初めてなら当たり前らしいが、俺たちは当たり前ではいけない。驚かせるくらいの成長をしなければ駄目なのだ。

P「はぁぁ…」

思わずため息をつく。
その時背中に衝撃が走った。

友「何学校でそんな暗い雰囲気飛ばしてんだ!」

P「友か…」

友「何か心配事でもあるのか?話してみろよ?」

P「んー、なんていうかな…友は人に何かを勧めたりする時どんな感じに話す?」

友「?なんの話だ?」

P「例えばな、何か自分が好きな物があって、それに関して人と企画したい時はどう誘う?」

我ながらたとえ話が下手な気がした。
だが友は真面目に考えてくれる。

友「うーむ、俺なら語るかな?」

P「語る?どういう事だ?」

友「だって好きなものなんだろ?だったらその好きなものに関して思いっきり話すんだよ。そうすれば魅力が伝わって協力してくれるかもしれないだろ?」

それは…一理あるのか?

P「…すまん、あまりためにはならないかもしれん」

友「そっかー…」
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