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【モバマス×龍虎の拳外伝】不破・茜「うおおおおおおおおお!!」
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202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/06/22(木) 23:38:01.82 ID:7cMfKXpH0
漢www
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 23:41:51.34 ID:hADh9yF4o
すごい漢だ…
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 03:51:55.41 ID:TZtN8SvV0
しかしよくよく考えるとこの世界線、地獄門まだ残ってるんだよな…
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 05:32:39.99 ID:slLO+CxNO
漢ってのはもはや概念なのさ
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/23(金) 08:00:23.70 ID:fJ3/CRxR0
なぜか影二はきちんとしたスーツ姿のプロデューサーになりそうな気がする
師範は天狗面にネクタイどまりかな?
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 01:05:03.03 ID:IJVlgcPA0
影二のガチ正装をイメージすると、どうしてもタークスになってしまう件
KOFライバルチーム仲間のビリーもスーツ姿ガチだし、仕方ないね
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 01:05:32.50 ID:vhxhRz8po
師範はKOFでTV出演した時でもいつもの格好だったから…
すごい漢だ…
209 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 11:47:15.09 ID:X5BKklAG0
外伝
エージェント・カーマン・コール
私は最高のエージェントだ。
何故なら、常に最高の仕事をするからだ。
己の仕事に全力を尽くすのはプロとして当然である。
だが、全力の仕事と最高の仕事とはイコールではない。
全力かどうかは己が決めることで、最高の仕事かどうかは、己以外が決めることだからだ。
210 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 11:50:13.34 ID:X5BKklAG0
好きこそものの上手なれという諺が日本にはある。
それはそうだろう。人は好きなものには他人に言われずとも熱中し、その錬度を高めようとする。
結果、上達は早くなる。
しかしその一方で、下手の横好き、という言葉もあるように、いくら好んでいても、上達が望めないケースもある。
それは多くの人間が直面する、『才能』という壁だ。
この壁がある故に、この世の人間全て、万人が己の好きな事を職業にすることが出来ないのである。
211 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 11:53:40.86 ID:X5BKklAG0
ならば、最高の仕事をするにはどうすればいいか?
それは、己の仕事に誇りを持つことである。
誇りがあるから人はベストを尽くし、最高を求めようとするのである。
誇りが持てないのであれば、その仕事も、また、それに捧げる人生もただただ虚しいだけだ。
しかし、時に人はその虚しさを自覚しながらも、それを抱えて仕事に従事しなければならない。
立場故か、生活の為か、はたまたそれ以外か。
212 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 11:57:49.42 ID:X5BKklAG0
かくいう私もそうだ。
いや、そうだった。
私はロバート・ガルシアの直属の部下で、彼に忠誠を誓ってはいるが、毎日毎日することは少女たちの送迎である。
そもそも彼が『日本でアイドルの事務所を作る』などと言った時、ガルシア財団の重役達は一斉に反対した。
彼の実の父、ガルシア財団の会長、アルバート・ガルシアもそうで、彼を社員たちの面前で阿呆と怒鳴りつけた。
213 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 11:59:54.67 ID:X5BKklAG0
当時の私も同意見だった。
何故イタリア・ミラノに本拠を置き、世界中に傘下の会社を持つ有数の財団がこんな極東の島国で、こんな不確かな事業をしなければならないのだ。
だがはねっ返りのロバート坊やにこの対応は不味かった。
案の定彼は反発、独力で事務所を作ると言い放ち、会議室を後にした。
214 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:04:12.06 ID:X5BKklAG0
重役たちの嘲笑や失笑が会議室に充満する中で、会長の目だけは笑わずに私の方を見ていた。
私の現在の肩書はロバート・ガルシア個人付けである。
つまり、彼が行くところにはどこであろうと付いていかなければならない。
例えそれが極東の島国であろうと、中東の砂漠であろうと。
―――――カーマン、アイツを頼んだ。
言われずとも聞こえる声に、私はただ頷くしか出来なかった。
215 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:11:52.40 ID:X5BKklAG0
日本に来てからの私は、日々疑問を抱える毎日だった。
何せ日本で初めてロバートから下ってきた指令は『秘蔵のワインを急いで事務所に持って来い』である。
そしてその次が夜間のアイドルの送迎である。
無論、手は抜かない。
常に最高の仕事をするのが私だからだ。
だから私はこの仕事内容にではなく、「ロバート・ガルシア個人付け」という肩書に誇りを持つことでモチベーションを必死に維持していた。
216 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:17:14.75 ID:X5BKklAG0
ロバートの事は幼少の頃より知っている。
少々自分勝手で強情だが、ガルシア財団次期後継者としてこれ以上の男はいないと確信している。
かつてただワガママだった坊やが極限流空手と出会って人間としても大きく成長したように、本人が言い出したこのアイドル事業もまた彼を大きく成長させるものだと信じて。
この一介のお雇い運転手のような仕事も、そう思う事でなんとかやっていた。
代わりに、喫煙量が増えたが。
217 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:23:54.62 ID:X5BKklAG0
車中
加蓮「ねえねえ、カーマンさんって結婚してるの?」
カーマン「……いや?何故そんなことを聞くんだい、ミス・カレン」
加蓮「いや、カーマンさんって渋くてダンディだからモテそうだなって思って。そうなんだ、結婚してないんだ。意外〜」
加蓮「あっ、じゃあ本国の方に恋人とかは?イタリアだっけ?」
カーマン「いや、今のところ結婚を考えるような相手はいないな。……それと私はイタリア人ではない。ドイツ人だ」
218 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:27:48.41 ID:X5BKklAG0
加蓮「あっ、そうなんだ。社長がイタリアの人だって聞いてたからカーマンさんもそうなのかと思ってた」
カーマン「ガルシア財団の影響力は世界に及ぶ。それこそ社員も世界中にいる」
カーマン「それより……君もアイドルになって、どうだ?男どもからアプローチを受けているんじゃないか?」
加蓮「ん〜……確かに声を掛けられることは多くなったけど……言い寄られたりとかはあんまりないよ」
カーマン「なんだ、日本の男たちは随分と臆病だな。君のような可憐なレディに気の利いたセリフひとつ吐けんとは」
219 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:31:19.63 ID:X5BKklAG0
加蓮「ふふ……ありがと。けど、普段一緒にいるプロデューサーを見たら、ね」
カーマン「……フッ、そうだな。そういえば君たちにはあの龍虎が付いているのだったな。それでは並みの男なら足も竦むか」
加蓮「あはは……」
カーマン(……この少女も随分変わったものだ。初めて送った時は愛想笑いひとつせず、他者を寄せ付けない雰囲気を出していたものだが)
カーマン(今ではこんな軽口を叩けるようになっている。余裕が出てきたのだろう、この姿が本来の彼女なのかもしれない)
220 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:35:58.16 ID:X5BKklAG0
また別の日
車中
拓海「おう、カーマンのおっさん、いつもありがとうな!」
カーマン「……仕事だからな」
拓海「しっかしあんたいつみてもお堅いよなぁ。はっちゃけたりすることねえのか?」
カーマン「多少羽目を外すことはあっても君たちにそれを見せることはない。公私は弁えている」
拓海「おお……堅え……けど、羽目を外したらどうなるんだ?首都高を車でぶっ飛ばしたりすんのか?」
221 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:41:50.02 ID:X5BKklAG0
カーマン「……そんなに私も若くない。多少酒量が増えるくらいだ」
拓海「へえ〜……ん?そういえばあんた今いくつなんだ?」
カーマン「32だが」
拓海「……はあ!?32!?」
拓海「み、見えねえ!嘘だろ!?」
拓海(30前半の貫禄じゃねえだろ!)
カーマン「……褒め言葉として受け取っておくよ、ミス。」
222 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:44:50.49 ID:X5BKklAG0
また別の日
有香「あっ、カーマンさん!すみません、今日もよろしくお願いします!」
カーマン「ああ。だがいつも車の前で礼を取らなくていい」
有香「いえ!本当にいつもお世話になっていますので!」
カーマン「……」
223 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:50:32.92 ID:X5BKklAG0
有香「あの、カーマンさん、ひとつお聞きしてもよろしいですか?」
カーマン「なにかね」
有香「はい、以前Mr.BIGという悪漢が私たちを襲ってきた時……カーマンさんは実に鮮やかにあたしたちを助けてくださいました」
カーマン「そういうこともあったな」
有香「その時のご手腕からもカーマンさんが達人なのは疑いようもないと思うのですが……あれは何の格闘技なのですか?極限流空手とは全く別物に見えましたが」
カーマン「私は極限流の門弟ではないからな。私のスタイルは格闘技……というほどのものでは無いが……いわゆる護身術だ。相手を倒すというよりは制する技だ」
224 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:54:23.05 ID:X5BKklAG0
有香「な、なるほど……確かにあの時も瞬く間に相手を無力化していました……」
カーマン「どちらかと言えば防御主体だ。攻撃的な技を求める若い時分の君には退屈かもしれんがな」
有香「い、いえ!そんなことありません、技はすぐには無理かもしれませんが、立ち合いの際の心構えなど教えていただければ……!」
カーマン「……勤勉だな、君は……」
カーマン(思い返せば、そうだ。この娘たちが私によく話しかけてくるようになったのは件のMr.BIGとやらの襲撃事件からか)
カーマン(保安部の私はあちらの方が本来の任務には近いのだが……しかしあんな目に遭ったというのにタフな娘たちだ)
225 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 12:58:59.38 ID:X5BKklAG0
また別の日
美波「カーマンさん、すみません……今日もお車出していただいてありがとうございます」
悠貴「よろしく……おねがい……」
カーマン「……だいぶ疲れているみたいだな」
226 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 13:02:14.60 ID:X5BKklAG0
車中
悠貴「すぅ……すぅ……」
美波「……悠貴ちゃん、眠っちゃいましたね……カーマンさんが静かに運転してくれてるおかげですね」
カーマン「車中で眠ってしまうのは久しぶりだな……以前の、クイーン・オブ・ザ・アイドルズ……アレの特訓をしていた時は毎日皆眠りこけていたものだが」
美波「あはは……確かにあれ以来、体力的にあそこまで追い込まれることはないですけど、悠貴ちゃんは夜遅くなってくると、眠くなっちゃうみたいなんです。まだ13歳ですしね」
227 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 13:07:18.34 ID:X5BKklAG0
カーマン「フッ、そうか……とは言え、あのQOI以来、君たちは劇的に成長したといえるだろう。実際の仕事量もそうだが、皆自信に満ちている。良い表情だ」
美波「ありがとうございます。でもそう言ってもらえるのも坂崎さんやロバート社長……ちひろさんにトレーナーさん……もちろんカーマンさんも、皆さんに支えてもらっているからですよ」
カーマン「私はただの護衛に過ぎん。君たちの育成にはノータッチだ」
美波「いえ、本当にみんな、感謝してるんです……あの、これ、もし良ければ」
スッ
カーマン「……これは……もしや私への贈り物か?」
228 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 13:12:46.33 ID:X5BKklAG0
美波「はい、本当は5人揃ってる時にお渡ししたかったんですけど、最近はみんな忙しくてなかなか揃う機会が無くて。だから代表で、私が渡すことになったんです」
カーマン「……開けて見ても?」
美波「はい」
カーマン「……ネクタイか。……良いデザインだ」
美波「気に入って貰えたのなら良かったです。みんなで相談して、出来るだけ実用性のあるものが良いかなって」
カーマン「せっかく選んでもらったんだ、有り難く頂こう。……だが、君たちは別に私に恩や義理を感じる必要はないぞ?これは仕事だから……」
美波「ええ、ですけどこれは私たちが勝手にやりたいと思ってやったことですから。カーマンさんもそんな肩肘張らずに受け取って貰えれば」
229 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 13:19:17.86 ID:X5BKklAG0
カーマン「……わかった。ありがとう」
悠貴「……んん……あれ、私、眠っちゃってたんですか……っ」
美波「あ、ごめんね悠貴ちゃん、起こしちゃったね」
悠貴「……あっ、カーマンさん、ネクタイっ!受け取ってくれたんですねっ!」
パァッ
カーマン「ああ。素晴らしいプレゼントをありがとう」
悠貴「美波さんっ!やりましたねっ!」
スッ
美波「うん、これでみんなにもいい報告ができるね」
パシッ
カーマン「……」
230 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/25(日) 13:20:38.69 ID:X5BKklAG0
今日はここまで
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 13:39:08.40 ID:Xndb/KVDO
カーマン?あの脱衣KOできない紳士の中の紳士か?
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 13:54:01.00 ID:b0wfay7FO
https://imgur.com/a/8jUpO
この人やな
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 14:02:56.15 ID:27r2Moo+0
仕事が完璧なうえにハンサムで紳士
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 14:19:06.03 ID:VZ+N0TeA0
コミカライズでは主役を務めたエージェント
ちょっと優等生すぎるせいで影が薄いタイプやね
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 17:39:37.71 ID:+laZDeF/0
……渋い漢だ
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/25(日) 19:00:37.47 ID:UEeISNWd0
龍虎コンビの社長とプロデューサー、運転手のカーマン、近場には不破と影ニ。
そしてかつてはギース。冷静に考えれば世界最上位レベルの戦闘の達人が集う街と化しておる…
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/26(月) 01:02:21.68 ID:rOSoM17Eo
カーマン・コールさんの名前を美波に連呼してほしい
238 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:06:45.64 ID:eb58AR/20
ロバート「ん?カーマン、そのネクタイどないしたんや?」
カーマン「アイドル達から贈られた。送迎の礼だそうだ」
ロバート「へ〜、良かったやん。なかなかいい趣味のネクタイやな」
カーマン「全く義理堅い娘たちだ。私はただプロとして仕事をこなしているだけだというのに」
ロバート「ハハハ……まぁそういう性格やから、わいらもあの娘たちの為に頑張ろうと思えるんや。それに応えてくれるしな」
239 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:16:20.66 ID:eb58AR/20
カーマン「……確かに彼女たちは想像以上の成果を挙げている。本社に報告をしている身としても、社内の空気が変わっているのを感じるよ」
ロバート「おっ、ホンマか?初めボロクソに言うてくれた重役たちも少しは見返せたか」
カーマン「……だが、未だ懐疑的な者もいるようだ。財団の事業の一つにするには規模が小さすぎると」
ロバート「ハッ、今さら頼み込まれたってこの事業を財団に渡すつもりは更々ないっちゅー話やねん。これはわいの個人事業や。最初から最後までな」
240 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:24:08.96 ID:eb58AR/20
ロバート「……ただ、規模というか、アイドルの数に関してはわいも考えとったところや。極娘のみんなに関してはもう安定軌道に入ったけど、それに続くアイドル達をウチから出していきたい」
ロバート「事務所を作ったばかりの手探り状態の頃とは違って、今はもう常駐のトレーナーもおるし、ある程度のノウハウもわかった。ここいらで2、3人新しい娘を入れたいけどなぁ」
カーマン「またスカウトを始めればいいだろう」
ロバート「ただ、わいもリョウも最近完成した極限流日本支部の道場も交代で見とるから余裕がないんや。かといって、スカウトに関してはこの目で直に見るか、信用できる奴に任せたいからあんまり外部から雇いたくないんや」
241 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:29:25.58 ID:eb58AR/20
カーマン「全く、ワガママ放題だな。言っておくが私はそこまでは手伝わんぞ」
ロバート「チェッ、あんたの目利きなら間違いないと思って内心期待しとったのに……まぁスカウトに関しても考えんとな……」
カーマン「ああ、そうしろ。……ところでロバート、私は明日は非番でいいのか?リョウは出張中だろう。人手は足りるのか?」
ロバート「ああ、明日は珍しくロケの仕事一本だけやしわい一人で大丈夫や」
242 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:34:55.43 ID:eb58AR/20
今日は久々の非番だ。
かといって羽目を外しすぎる事はない。いついかなる時にエマージェンシーコールが入ってくるとも限らない。プロとはそういうものだ。
ただ、折角貰った心の籠った贈り物を身に着け、久しく走らせていなかった愛車を転がす……それくらいの休息は許されるだろう。
カーマン「日本の道はどうにも狭く入り組んでいるが、海岸沿いまでくればそれなりに快適にドライブできるものだな……」
ガガガガ
カーマン「む……?」
243 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:42:41.29 ID:eb58AR/20
カーマン「全く……こんなところでエンストとは、少し乗らな過ぎたか」
スッ
カーマン(……近くに整備できそうなところも無い。まいったな)
ブルル
女性「あれれー?どうしたのー?エンストー?」
カーマン「ん?ああ、そのようだ」
女性「どれどれ……わあ……赤いポルシェ……かっこいい!」
244 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:49:10.60 ID:eb58AR/20
女性「……うーん、これはレッカーかな……」
カーマン「やはりそうかね……仕方あるまい」
スッ
女性「……あっ、待って!ねえ、もし急いでなかったら私この子の事ちょっと診てもいい?」
カーマン「診る?君がか」
女性「うん、私これでも整備士なんだ!ほら、工具一式も持ち歩いてるし!」
245 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 20:58:35.29 ID:eb58AR/20
カーマン「……驚いたな。だが見ず知らずの君にそこまで頼む義理は……」
女性「……原田美世」
カーマン「……ん?」
美世「私の名前だよ。あなたは?」
カーマン「……カーマン・コールだ」
246 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:01:07.04 ID:eb58AR/20
美世「カーマンさんね。はい、これでお互いもう見ず知らずの仲じゃないってことで……ダメ、かな?」
カーマン「……好きにしてくれ」
美世「やったあ!まさかこんな珍しい子をいじれるなんて!」
ウキウキ
カーマン「……」
247 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:05:29.98 ID:eb58AR/20
カチャカチャ
美世「へぇ〜、こんな風になってるんだ……やっぱ外車は国産とは違うなぁ」
カーマン(……熱中している)
美世「おお〜、凄い……けど、確かここは実習で見たやつに似てるから……」
カチャカチャ
カーマン(こんな年頃の娘が整備士など、俄かには信じられなかったが……)
248 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:09:52.57 ID:eb58AR/20
美世「あ〜、なるほど……カムギアが取れちゃってる……病巣はボルトのあたりかな……?」
カーマン(どうやら腕は間違いないようだ。だが……車をいじる彼女の姿は……)
チンピラ「おい、そこの外国人」
カーマン「……私のことかね?」
チンピラB「おう、日本語話せるのか。アンタどこのモンだ」
249 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:14:35.45 ID:eb58AR/20
カーマン「……私はこういうものだ」
ピッ
チンピラ「……寝男地男工業、課長、ハンス・ミューラー?」
チンピラB「聞いた事ねえ会社だな」
カーマン「小さな会社でね」
カーマン(全てダミーだが)
250 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:19:36.44 ID:eb58AR/20
チンピラ「小さな会社の課長程度がこんないい車に乗れるもんかい?」
カーマン「車好きでね。給料全てを注ぎ込んでる。……それで、何か御用かね」
チンピラB「ああ、こんな所に赤いポルシェが止まってりゃ目立つからな。おっさん、金置いてけや」
チンピラ「ああ、金が無いんだったらその車でも良いぜ。売りゃ良い金になるだろ」
チンピラB「ん?ちょっと待て、あの車の下に潜り込んでるの、女じゃねえか?」
カーマン(……ふう)
251 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:23:48.00 ID:eb58AR/20
カーマン「……せっかく美しいものを見ていたのに台無しだ。この代償は安くないぞ、ヤパーナー?」
スッ
チンピラ「やる気か?こっちは二人で……」
カーマン「これ以上君たちを視界に入れている時間が惜しい。良いから早く来い」
チンピラB「てめえ!」
バッ
パシッ
グイッ
252 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:28:40.41 ID:eb58AR/20
ブンッ
チンピラB「ぐはっ!」
ドサッ
カーマン「ふんっ!」
ズドッ
チンピラB「」
ガクッ
チンピラ「な、なに……!?」
カーマン「さて、お前には2つ選択肢がある。伸びた仲間を連れて消えるか、誰かが通報してくれるまでここで二人仲良く野晒しになるかだ」
253 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:32:21.95 ID:eb58AR/20
チンピラ「な、な、なめんじゃねえ!この野郎!これでエグッてやる!」
スチャ
カーマン「……ふん、それだけか?」
チンピラ「……なに?」
カーマン「ナイフ程度で良いのかと聞いてる。拳銃でも日本刀でも、なんなら機関銃でも構わんぞ」
チンピラ「ふざ、ふざけんなああああ!!」
254 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:38:10.64 ID:eb58AR/20
チンピラ「」
カーマン「出直して来い。素人が」
パッパッ
カーマン(さて、彼女は……)
美世「……」
美世「う〜んと……あとはここを組めば……」
カチャカチャ
255 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:42:38.93 ID:eb58AR/20
美世「よし!これでどう!?動くんじゃない?」
バッ
カーマン「……これを」
スッ
美世「え、ハンカチ?……あ、もしかして」
カーマン「ああ。顔に……」
美世「えへへ……熱中しちゃうと、ついね……こんなの女の子っぽくないよね」
フキフキ
256 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:43:45.53 ID:eb58AR/20
カーマン「……確かに女性の身だしなみとしてはそうかもしれん」
カーマン「だが、車に触れる君には、顔についた油でさえ最高の化粧だった」
美世「えっ?」
カーマン「いいや、何でもない」
257 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:48:30.09 ID:eb58AR/20
カーマン「……」
ブルルン ブルルン
美世「あっ!良かった〜!かかった〜!」
カーマン「すまないな、助かった。修理代は幾らになるかね?レディ」
美世「えっ!?お、お金なんて良いよ!私が好きでやったことだし、ポルシェいじれて満足だし!」
カーマン「そうは言うが、こちらも車を直して貰った上、良いモノも見せてもらった。良い仕事にはそれに応じた報酬が与えられなければならない」
258 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:51:24.30 ID:eb58AR/20
美世「え?良いモノって?」
カーマン「とても美しいものさ」
美世「ええ〜……よくわからないけど……あ、じゃあ、いっこお願いしていい?」
カーマン「構わんよ」
259 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:54:44.73 ID:eb58AR/20
美世「……いや〜、乗るのは初めてなんだけどホントにポルシェって全然違うんだね。ちょっとアクセル踏んだだけなのに回転数が凄いよ」
カーマン「だが、もう慣れてきたようだな。下手なクラッチ操作ではこうはいかん。整備も運転も、良い腕だ」
美世「えへへ……そうかな?車はいじるのも見るのも乗るのも、全部好きだから」
美世「……ねえ、えっと、カーマンさん?」
カーマン「なにかね?」
260 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 21:58:39.91 ID:eb58AR/20
美世「実はね、さっき車直してる時……ホントは気づいてたんだ。怖い人たちが因縁つけてきてたの」
カーマン「……!」
美世「それで怖くて車の下から出てこれなくて……けどカーマンさんあっという間にふたりともやっつけちゃって」
カーマン「……」
美世「あなたは何者なの?よくわかんないけど、なんか海外のすごいFBI?みたいな人なの?」
261 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 22:04:11.21 ID:eb58AR/20
カーマン「……そんな大層な身分ではない。今の私はただの運転手だ……アイドル事務所付きのな」
美世「アイドル……?」
カーマン「もし興味があるなら、来るかね?もしかすれば、君が車と同じくらい夢中になれるものがあるかも知れん」
美世「それって、勧誘?見かけによらず、面白い人だね。でも……見てみたいな。あなたのいるアイドル事務所」
262 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 22:04:37.42 ID:eb58AR/20
カーマン「疑わんのかね?」
美世「疑わないよ。助けてもらったし、それに……」
カーマン「それに?」
美世「赤いスポーツカーに乗ってる人に悪い人はいないもんねっ!」
263 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 22:10:33.66 ID:eb58AR/20
後日
ロバート「おう、カーマン、あんたが連れてきてくれた美世ちゃん、正式に契約決まったで」
カーマン「そうか」
ロバート「いや〜、あれはエエ娘や。ウチの事務所は車乗りもバイク乗りもおるから本人もかなり喜んでたわ。そしてもちろんわいらも大助かりや」
カーマン「ふむ」
ロバート「それにしてもどういう風の吹き回しや?あんな私は手伝わん、みたいなことを言うとったのに、あんたが事務所に連れて来たときにはあの娘かなり乗り気やったで。どんな口説き方したんや?」
264 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 22:15:17.25 ID:eb58AR/20
カーマン「別に口説いちゃいない。私はただ連れてきただけだ」
カーマン「だが、アイドルを始めたとして、ここから先はお前たちの仕事だ。あの娘をシンデレラに出来るか、灰かぶりのままにしておくかはな」
ロバート「それはそうやな。せやけど、あんたがそれだけ見込んだって事は……あんたにはもうそのシンデレラの片鱗を見せたんやろ?」
カーマン「フン……」
265 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 22:19:00.72 ID:eb58AR/20
人は、誰でも幸福を捜している。
しかしその形は一定ではない。
時には死す時までその形が分からない者もいるだろう。
幸福とは実に様々に姿を変え、私たちを惑わせる。
富に、愛に、権力に……
私にとっては、誇りがそうだ。
最高の仕事をしているという、誇り。
266 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 22:28:02.72 ID:eb58AR/20
彼女が、彼女たちが光り輝く瞬間。
私は、その時確かに誇りを感じた。
すなわち、幸福を。
今は彼女たちを見守るのが最高の仕事なのだと思う。
今の私はそう思える。
そう思わせてくれた者たちがいたのだから。
外伝
エージェント・カーマン・コール
完
267 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/06/28(水) 22:30:33.06 ID:eb58AR/20
今日はここまで
>>232
のカーマンの漫画すっごい出来が良いからぜひ読んでみてね(不破師範は脳筋扱いだけど)
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/28(水) 22:41:07.24 ID:4py2LSdSo
天獅子さんの漫画は渋いキャラ書かせると実にいい
若いころのタクマとロバートの執事の話なんかもよかった
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/28(水) 23:20:40.02 ID:LNeJHWGtO
これは漫画版買いたくなるスレ
いや、前回も名作だったけど、今回も良い
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/29(木) 20:50:24.27 ID:010Sn/gDO
乙
龍虎は掘り下げたらまだまだ伸びしろのあるコンテンツなんだがな…
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/30(金) 22:03:40.53 ID:F1By+4XM0
天獅子漫画って龍虎1・2版は昔立ち読みしたけど外伝版って実物見たことないから本当にあったことすら最近まで知らなかったわ
272 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:00:21.01 ID:bVTGWxfw0
ロバート「キャンプ?」
リョウ「ああ、新しいメンバーも入ったことだし、親睦を深める意味こ込めてな」
ロバート「それやったら別に食事会とかでエエやろ。何でわざわざキャンプなんや?」
リョウ「俺も良く山に籠るからわかるが、自然の中での不便さってのは、人と人が向き合うのに最適だ」
リョウ「何もない故に協力しあい、何もない故に飾りの無い、心の触れ合いがある」
273 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:05:04.81 ID:bVTGWxfw0
ロバート「へぇ〜……まぁ新しい娘らが早く打ち解けられるならそれに越したことはないけどな」
リョウ「……それに、それだけじゃない。山の方なら、都会に比べて星が多いからな……」
ロバート「星?」
外伝
北の大地から来た少女
リョウ(『彼女』が事務所に来たのはほんの少し前。出会ったのは、ここ東京よりもずっと寒い。秋に差し掛かった頃だった)
274 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:08:57.47 ID:bVTGWxfw0
北海道・小樽市内
リョウ「……ロケの現場の下見とは言え……流石に一人で来るもんじゃな無かったな。地理が全然わからん」
リョウ「ええっと……一応ここは小樽市内なんだよな?で、小樽運河ってのが港の方だから……ううむ……」
リョウ(人に聞いた方がはやいなこりゃあ)
リョウ「あ、そこの人、すみません」
通行人「ひっ、す、すみません、急いでますので」
タタッ
275 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:15:17.28 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……見た目で怖がられるのも久しぶりだな」
リョウ(まぁ馴染みのない土地だから仕方ないか……他に人は…)
リョウ(おっ、前に人が歩いてるな……銀髪?外国人か?)
リョウ「……あー、コホン」
リョウ「Hello, excuse me.」
少女「……シトー?」
クルッ
276 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:21:47.98 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……ッ!?」
リョウ「……ああ、ロシア語……か?参ったな、ロシア語はわからん……」
少女「アー……日本語、わかりますよ。英語も、わかりますけど」
リョウ「あ、そうなのか。それは助かる……運河の方に行きたいんだが、道はわかるかい?」
少女「カナール……運河の方はですね、えーと……ここを、まっすぐに……」
277 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:30:05.72 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……なるほど、わかったよ……君が日本語が上手で助かった」
少女「……私を外国の人と思いましたか?ちがいます、日本人よ」
アーニャ「ミニャー ザヴート アナスターシャ……アー、名前は……アナスタシア。日本とロシアの、ハーフです」
リョウ「……これは失礼だった。俺はリョウ・サカザキ。東京で空手の師範とアイドルのプロデューサーをやってる」
スッ
アナスタシア「アー……どうも……」
278 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:34:33.23 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……」
リョウ「……なぁ、アナスタシアさん。いきなりこんな事を言われても困るかもしれないが……アイドルに興味はないか?」
アナスタシア「アイドル?……イズヴィニーチェ……ごめん、なさい、あまり、詳しくありません」
リョウ「そうか……テレビで見たことないか?」
アナスタシア「……何度か、見たことはあります。けど、なにをするのですか?ピヴィーツァ?バリリーナ?歌とか、踊りですか?」
279 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:38:16.92 ID:bVTGWxfw0
リョウ「ああ、歌ったり踊ったり……演技したり、トークしたり……色々だな」
アナスタシア「つまり、なんでもですね……プリクラースナ、すごい、です」
アナスタシア「……ですけど、私には、無理ですね」
リョウ「……どうしてだい?」
アナスタシア「さっき……あなたは日本語、上手と褒めてくれました。でもそれは、たぶん外国人にしては……という意味だったと、思います」
リョウ「……」
280 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:45:19.42 ID:bVTGWxfw0
アナスタシア「ほんとうの事ですから、仕方ないです。けど、私は日本語も、ロシア語も……話すのは少し、苦手です」
リョウ「ロシア語も?」
アナスタシア「……私、もともと日本で生まれました」
アナスタシア「それから、とても小さいときにロシアに行って……そしてまた、10歳のとき、北海道に戻ってきました」
アナスタシア「だから、言葉はうまくなかったです。ママは日本語を教えてくれましたけど、パパはロシア語。どちらも上手では、ありませんでしたね……」
アナスタシア「ですから……私には……」
281 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:50:25.23 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……それは、大変だったな。言葉の苦労、土地の苦労……特に幼少期に仲の良かった友人と頻繁に分かれるってのは、辛いもんがあるよな」
アナスタシア「……あなたも、わかりますか?」
リョウ「ああ、俺も生まれは日本だったんだが、8歳の時に親父の仕事の都合でアメリカに行った。まぁそれからはずっとそこに住んでたから君ほどじゃあないけどな」
アナスタシア「……もしかして、あなたも」
リョウ「ああ……まぁあまり見えないかもしれないが、俺もハーフだ。この髪も自前だ。……ただ、日本にいた頃……ガキの頃にはこのアタマで大分苦労した記憶もある」
282 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:54:16.37 ID:bVTGWxfw0
リョウ「なんでお前の髪は自分たちと違う色なんだ、ってな。特に子供の時分ってのは自分たちと違うものは好奇の目で見られる。良くも悪くもな」
アナスタシア「……私も、わかります」
リョウ「そうかい?まあ確かに俺たちは境遇的には似ているところがあるかもな」
リョウ「ただ、俺は男だからな。やっぱりその辺は年頃の女の子にしかわからない悩みもあるだろうから、一概に君の気持ちが全部わかる、なんて事は言えないけどな」
283 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 11:59:27.81 ID:bVTGWxfw0
アナスタシア「……あなたは、日本にいた時、どんな風に過ごしてましたか?」
リョウ「そうだな……その時はあんまり深く悩むことも無くて、周りにいたやつもカラッとした気質の奴も多かったからな。近所の男の子たちとは打ち解けられた。よく相撲取ってたりしたよ」
アナスタシア「スモウ……」
リョウ「ただ、それは俺の場合だ。君が言う通り、言葉が上手くないってことだったら……周りと打ち解けるってのはかなり難しかったと思う。コミュニケーションの基本はやっぱり言葉ってのは動かし難い事実だからな……」
アナスタシア「……そう、ですね」
アナスタシア(だから……私には……)
リョウ「だが、それが全てでもない」
284 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 12:04:36.00 ID:bVTGWxfw0
アナスタシア「……え?」
リョウ「さっき少し話したが、俺は空手をやっててな。小さい頃から続けてるが……色々な奴と闘った。強いヤツ、弱いヤツ……良い人間、悪い人間……言葉が通じる相手、通じない相手」
リョウ「相手がどんなヤツでも、最近は拳を交わせばそいつがどんなヤツかわかるようになってきた」
アナスタシア「……」
リョウ「もちろん、闘うだけじゃない。一番わかりやすいのは感覚的なものさ」
285 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 12:08:30.04 ID:bVTGWxfw0
リョウ「歌に音楽……踊りに芝居……格闘もそうだがこういった芸術にも国境や偏見は無い」
リョウ「分かり合う方法は会話だけじゃない……相手の魂に訴えかけるものは、言葉だけじゃないのさ」
アナスタシア「タマシイ……ドゥシャー……」
リョウ「……俺は君の何を知っている訳じゃない」
リョウ「……ただ、もし……もし、君が他人に理解されなくて、今苦しんでいるんだとしたら」
リョウ「少し、変わってみないか?もちろんそれがアイドルになる、という選択肢じゃなくてもいい。俺は、君を応援したい。君を見て、そう思った」
286 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 12:10:16.60 ID:bVTGWxfw0
アナスタシア「変わる……」
アナスタシア「……」
アナスタシア「リョウ……プロデューサー……?私にも、出来るでしょうか?」
リョウ「出来るさ……君が諦めなければ」
アナスタシア「……アーニャ、です」
287 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 12:14:13.32 ID:bVTGWxfw0
リョウ「ん?」
アナスタシア「私の、ニックネーム。ママが、付けてくれました」
リョウ「アーニャ、か。親しみやすい良いニックネームだな」
アナスタシア「……もし、デビューをするなら……ここを離れなければいけませんね。雪とレンガの大好きな街……」
リョウ「ああ、親御さんにも挨拶しないとな」
アナスタシア「ママやパパと離れるのは、寂しいです……でも、私、覗いてみたいです。まだ知らない遠くの……アイドルの世界……」
288 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/01(土) 12:21:34.60 ID:bVTGWxfw0
今日はここまで
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/01(土) 12:48:48.27 ID:PRypqnq20
師範「スモウ……SUMOU……うっ、頭が」
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/01(土) 15:35:44.89 ID:xaYq/RLDO
アイドルとスモウ取りたい
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/01(土) 16:49:41.84 ID:r6nWloDJO
北海道ならこの世界にはカムイコタンはあるのだろうか
残ってたら嬉しいが、厳しいだろうな・・・
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/01(土) 19:14:41.29 ID:LAR6yrvBO
サムライたちがタイムスリップしててもおかしくない!
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/01(土) 19:48:16.25 ID:GXKjV6QP0
その場合、シレッと右京さんがチャムチャムのPやってるかも知れない
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/02(日) 08:02:26.03 ID:ZHvZYj97o
アーニャ最近色々と日本語がおかしいな事になってるけど本来は普通に話せるんだっけ?
アーニャの両親どんな人物なんだ…
295 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/04(火) 23:41:00.04 ID:v8ZyVAwd0
リョウ(そうして事務所に来たアーニャだったが、事務所のメンバーは良く受け入てくれた)
リョウ「……」
プルルルル
ガチャ
ユリ『もしもしー?』
リョウ「ああ、ユリ、俺だ」
ユリ『あ、お兄ちゃん。元気だった?』
296 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/04(火) 23:43:02.97 ID:v8ZyVAwd0
リョウ「ああ、俺はいつでも元気だ。お前の方は?親父は……聞くまでもないか」
ユリ『うん、私も元気だよ。お父さんはもう元気すぎて困っちゃう……もう少し元気なくてちょうどいいくらいかも』
リョウ「ははは、そうか……ユリ、少し相談したい事があるんだが、良いか?」
ユリ『お兄ちゃんが私に?珍しいね、女の子関係の事かな?』
リョウ「……なんとなく人聞きが悪いが、まあその通りだ。新しく入った娘でな……」
297 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/04(火) 23:46:36.99 ID:v8ZyVAwd0
ユリ『……なるほどね〜、その娘、なかなか日本で馴染めなかったんだ』
リョウ「ああ、俺たちも海外移住経験があるが、そこはやはり同じ女子のお前の方が気持ちがわかるんじゃないかと思ってな」
ユリ『う〜ん……そうは言っても私たちがサウスタウンに移った時は私は4歳だったから……もうその頃の事ってほとんど覚えてないんだよね』
ユリ『言葉の方もそこから覚えてあんまり苦労しなかったし……』
リョウ「そうか……」
298 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/04(火) 23:49:43.56 ID:v8ZyVAwd0
ユリ『あっ、でもそのアーニャちゃんに似た娘がいたよ!』
リョウ「似た娘?」
ユリ『うん、私の友達にまどかちゃんって子がいるんだけどさ』
ユリ『その子もお父さんのお仕事の都合でアメリカに来て……言葉がわかんなくて、寂しそうにしてた』
ユリ『それで、その時たまたま私と知り合ってね。で、英語を教えてあげたの。そうしたら、徐々に周りの子とも馴染んでいって、今ではグループのムードメーカーだよ』
299 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/04(火) 23:52:17.14 ID:v8ZyVAwd0
リョウ「ふむ……やはり言葉か……」
ユリ『まあ、言葉はもちろんだけど、やっぱりコミュニケーションをたくさん取るのが大事なんじゃないかな?』
リョウ「そうか……そうだな、助かった、ユリ」
ユリ『良いよ!それよりそのアーニャちゃん、早く打ち解けさせてあげてね』
リョウ「ああ!」
300 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/04(火) 23:55:40.38 ID:v8ZyVAwd0
拓海「良いか?まず基本は夜露死苦、んで、親友はマブダチ……」
アナスタシア「ヨロシク……マブダチ……」
美波「ちょ、ちょっと拓海ちゃん。そういう応用編はまだアーニャちゃんには早いかなって……」
加蓮「ちょっとやめてよ拓海。アーニャのガラが悪くなっちゃうでしょ」
拓海「ああ?どれも基本にして知らなきゃ生きていけねえ重要語句じゃねえか」
301 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/04(火) 23:58:49.38 ID:v8ZyVAwd0
悠貴「アーニャさんっ!『かわいい』ってロシア語でなんて言うんですかっ?」
アナスタシア「カワイイ?ミーラャ、です」
悠貴「なるほど……アーニャさんっ!とってもミーラャっ!ですっ!」
アナスタシア「スパスィーバ……ユウキも、とっても、ミーラャ、ですね」
ポッ
悠貴「え?えへへへっ」
ポッ
加蓮「二人とも素直過ぎる……ちょっと似てるかも」
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