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【モバマス×龍虎の拳外伝】不破・茜「うおおおおおおおおお!!」
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302 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:01:58.21 ID:q4IL0fG90
リョウ「アーニャ、今いいか?」
アナスタシア「シトー?プロデューサー、どうしましたか?」
リョウ「ああ、こっちに来て、調子はどうかと思ってな」
アナスタシア「アー、オス。とても、ジョートー、です」
リョウ「……ん?」
アナスタシア「……?」
303 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:04:36.94 ID:q4IL0fG90
リョウ「あ、いや、すまんな。ジョートーってのは日本語でなんて意味なんだ?」
アナスタシア「……?ジョートー、日本の言葉でしょう?」
リョウ「……上等?」
アナスタシア「ダー、ジョートー」
リョウ「……押忍?」
アナスタシア「オス」
リョウ(……まぁ、良いか)
304 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:07:34.39 ID:q4IL0fG90
リョウ(事務所に来てから、事務所のメンバーもアーニャには積極的に話かけてくれてるな。アーニャも少しづつ慣れてきてくれているようだが……)
リョウ「美波、どうした?相談ってのは」
美波「あ、ごめんなさい、お忙しいのに。その、アーニャちゃんの事なんですけど」
リョウ「ああ、どんな様子だ?俺が見てる時は楽しそうにやってくれてると思ったが」
美波「そうですね、事務所のみんなともたくさん喋ってますし、アーニャちゃん、素直だから……とってもかわいいです」
305 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:10:36.66 ID:q4IL0fG90
美波「ですけど……ふとした時……アーニャちゃんはひとりでいる時が多いんです。もちろんアーニャちゃんが私たちを遠ざけてるわけでもないし、私たちがアーニャちゃんを遠ざけてるわけでもないんですけど」
リョウ「……」
美波「それで、どうしたの?って聞いてもアーニャちゃんは大丈夫ですよ?って笑顔で答えるんです」
美波「本人にとってもひとりになりたい時があると思うから、私もそれ以上は何も聞けなくて」
リョウ「……アーニャは、見た目や言葉の事で日本に来てからはあまり人と積極的に話せなかったらしい。もちろん仲の良い友達もいただろうが」
306 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:13:10.26 ID:q4IL0fG90
リョウ「ただ、この事務所に来てからはもう心配なさそうだとは踏んでいたんだが」
美波「きっと……まだこっちに来たばっかりで戸惑ってるんだと思うんですけど」
リョウ「だが、その話を聞いたからにはこのままで良いとは思わない。なにかきっかけがあれば……」
リョウ「美波、何かアーニャが好きなモノとか聞いてるか?趣味とかでも良いんだが」
美波「そうですね……あっ、そういえば星を見るのが好きだって」
307 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:15:23.13 ID:q4IL0fG90
リョウ「星か……天体観測は、この都会ではな……都会……」
リョウ「……!」
リョウ「……よし、決めたぞ。美波、ありがとう。良い事を思いついた」
美波「いえ、私が相談したことですし……もし私がお手伝いできることがあったら、何でも言ってくださいね」
リョウ「ああ」
308 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:17:55.20 ID:q4IL0fG90
某キャンプ場
リョウ(……という訳でキャンプだ)
美世「坂崎さん!荷物結構車に積んできてたけどどうするの?」
リョウ「ああ、美世、すまないな。ここのキャンプ場はかなり古いところなんで設備があまりないからな。その分荷物が増えちまったな」
有香「美世さん、車出していただいてありがとうございます!」
美世「ううん、全然大丈夫だよ!みんなで車で遠出とかもう楽しみ過ぎて!」
309 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:21:10.21 ID:q4IL0fG90
拓海「しっかし、ホントに山奥だなこりゃ……なんもねえ」
美波「でも、普段はこうやって自然に触れ合う機会ってなかなかないから、とても貴重な体験になると思うよ」
加蓮「……けど坂崎さん、ここってお風呂とああるのかな?トイレはあるみたいだけど……」
リョウ「風呂はない。だから簡易シャワーを持ってきた」
加蓮「ええ……」
310 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:23:30.70 ID:q4IL0fG90
リョウ「まぁみんな見てくれた通り、基本ここには何もない。だから自分たちで用意する必要がある」
リョウ「まず、寝床だな。1泊2日の予定だから今日の夜泊まる場所が必要になる」
リョウ「あと、食い物だ。食材は買ってきてあるし、簡易ガスコンロやクッカーはあるからこれを使って調理する」
リョウ「そこで、メンバーを2つに分ける。テント設営班と調理班。どっちかやりたいって希望はあるか?」
311 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:25:46.25 ID:q4IL0fG90
拓海「それならアタシはテントだな。建て方わかんねーけど坂崎が教えてくれんのか?」
リョウ「ああ、もちろん教えるし調理器具の使い方も教える。だが、基本
的には俺は補助だ。メインはお前らにやってもらう」
美世「みんなで力を合わせて!ってことだね。じゃああたしもテントに回ろうかな?料理でもいいけど、こっちのが人手いるよね」
美波「じゃあ、私はお料理の方に回りますね」
312 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:27:14.88 ID:q4IL0fG90
リョウ「……よし、じゃあテント班が拓海、美世、有香、加蓮。調理班が美波、ユウキ、アーニャだな」
リョウ「俺はまずテント班に設営の方法を教えるから、調理班は持ってきた食材で何を作れるか相談だ。で、決まったら教えてくれ。調理器具の使い方を教える」
美波「はい。悠貴ちゃん、アーニャちゃん、頑張ろうね!」
アナスタシア「ヤー スタラーユシ……私、がんばりますね」
悠貴「はいっ!お二人とも、よろしくお願いしますっ」
313 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:31:21.08 ID:q4IL0fG90
リョウ「さて、テントだが……今回は7人もいるからな。2つテントを建てる」
美世「え?坂崎さん入れたら8人じゃないの?」
加蓮「……ええ!?」
リョウ「……いや、俺はさすがに一緒に寝られないだろ……個人用のソロテント持ってきてるから大丈夫だ」
美世「あっ……そ、そうだよね、あはは……」
拓海「全く、とんでもねえ事言い出すな……」
314 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:34:16.32 ID:q4IL0fG90
リョウ「……で、だ。お前たちにはテント二張り建ててもらうんだが……最近のテントは昔よりわかりやすくてな」
リョウ「基本的にはポールを差し込んでいけば自立するようになってる。コツがいるのはペグ……杭の打ち方とロープの結び方だな。一通り手本を見せるからやってみよう」
加蓮「へえ〜……テントって建てるのってすごく力がいるって印象だったけど、そうでもないんだ」
リョウ「最近は女性のキャンパーも増えてるらしいからな。作る側もいろいろ考えてるんだろう」
315 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:38:50.41 ID:q4IL0fG90
拓海「つーかもうしっかり自立してんじゃねえか!早速アタシが寝心地確かめてやるぜ!」
ダダダダ
リョウ「拓海!待て!」
ズン
拓海「……固ぇ……」
プルプル
リョウ「……そりゃそうだ。今はテントの下にシート一枚しか敷いてない。これだとほとんど地面みたいなもんだ」
316 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:40:09.45 ID:q4IL0fG90
有香「だ、大丈夫ですか拓海さん」
美世「あわてんぼだね……」
リョウ「だから、建てたテントの床部分にもう1枚マットを敷く。これで寝られる程度の柔らかさになるんだ」
拓海「くそ……先に言えよ……」
プルプル
317 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:41:53.35 ID:q4IL0fG90
美波「……さて、、ここにあるのが材料だね。にんじんにじゃがいもにお肉に……」
悠貴「なんだかカレーとか作れそうですねっ!」
美波「カレーって確かにキャンプの定番のイメージがあるね。アーニャちゃんはどう?」
アナスタシア「ダー、カレー、とても良いと思います」
美波「そう?じゃあそんなに難しくないし、カレーを……」
318 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:45:19.55 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「……あっ……」
悠貴「?アーニャさん、どうしたんですかっ?」
アナスタシア「……イズヴィニーチェ、なんでもありませんね、ユウキ」
美波「……アーニャちゃん?もし何か気になる事があったら教えてほしいな。遠慮なんかしなくていいんだよ」
アナスタシア「……アー、でも……」
悠貴「教えてくださいっ!アーニャさん!」
319 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:48:59.69 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「……材料の中に、ビーツが、ありました」
悠貴「ビーツ?」
美波「この缶のことかな?」
アナスタシア「はい。ビーツあれば、ボルシシ作れるって、思いました」
美波「ボルシシ……ボルシチかあ……私はまだ作ったことないんだけど、アーニャちゃんは作り方知ってる?」
アナスタシア「ダー、ロシアにいたころ、グランマに教わりました」
悠貴「それでしたら、ボルシチ作りましょうっ!」
320 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 00:49:53.20 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「え?でも、カレー……」
美波「ううん、アーニャちゃん。私も教えてほしいな、ボルシチの作り方」
アナスタシア「……ダー!スパシーバ、ミナミ、ユウキ。上手にできるか、わかりませんけど……」
美波「それは何を作るにしても同じだよ、アーニャちゃん」
悠貴「みんなキャンプ経験無いですしねっ!
アナスタシア「……」
321 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 01:33:50.03 ID:q4IL0fG90
リョウ「そうだ、ペグはテントとは逆の方向の角度で打ち込む。まぁ何度、とかあんまり神経質にならなくていい」
加蓮「ねえ、坂崎さん?今は風とか全然吹いてないけど、この杭打ちってしなきゃいけないの?」
拓海「そうだぜ、めんどくせえしいらねえんじゃね?」
リョウ「今は穏やかだが、山の天気は変わりやすい。それに、しっかり杭を打っておくことでテント全体の強度も上がって、形も整う。面倒かもしれないが、これは重要だ」
有香「……それに、これはなかなか難しいですけど、慣れると楽しいですよ、ハンマー打ち!」
コンコン
リョウ「おっ、有香、筋が良いな」
322 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 01:36:09.39 ID:q4IL0fG90
美波「坂崎さん!料理、決まりました!」
リョウ「お、そうか。じゃあ器具の使い方教えるから、あっちに行こう。美世、テントの建て方は大体今の通りだ。もう一張りも同じ要領で建ててみてくれ」
美世「うん、わかったよ!さっ、みんな!残り一張り、アクセル全開で行こう!」
323 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 01:36:54.82 ID:q4IL0fG90
今日はここまで
324 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 06:51:18.38 ID:q4IL0fG90
リョウ「そうか、ボルシチか……なら必要な器具はガスコンロと、あとこのダッチオーブンを使う。まあ鍋だな」
悠貴「わあ……重い!」
ズシッ
リョウ「まな板と包丁はここにあるから、皮むきとか切ったりはこれでやってくれ」
リョウ「水は水道があるからそこから引いて使うんだ」
リョウ「……説明はこんな所か。あとは大丈夫か?」
美波「はい、道具の使い方はもう大丈夫です。ありがとうございました!」
悠貴「それじゃあアーニャさんっ!ボルシチ作りましょう!」
アナスタシア「ダー!」
325 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 06:54:59.27 ID:q4IL0fG90
悠貴「アーニャさんはいつもお料理してるんですか?」
トントントン
アナスタシア「アー、いくつか教わりましたけど、日本の料理は、まだ詳しくありませんね」
グツグツ
美波「そうなんだ。今日はアーニャちゃんにボルシチの作り方教わるんだし、もし良ければ私からもお料理教えてあげたいな」
ジュージュー
アナスタシア「ハラショー!ぜひ、お願いしたいです」
悠貴「美波さんっ!私も教えてほしいですっ!」
美波「ふふ、もちろん!」
326 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 06:57:26.13 ID:q4IL0fG90
夕方
拓海「ふい〜……これで大体テント完成か?」
加蓮「やっぱり慣れてないのもあったけど、かなり大変だったね」
有香「確かに……これは良い鍛錬になりそうです」
美世「……ん?なんだかいい匂いがするよ」
拓海「なんの匂いだこりゃ」
クンクン
327 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:00:39.99 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「……フクースナ!良い、味ですね!」
悠貴「うんっ!おいしいですっ!」
美波「すごいよアーニャちゃん!こんなに美味しくできるなんて」
アナスタシア「いえ、ミナミ、ユウキが一緒に作ってくれたから、ですね?」
拓海「おうおう、いい匂いしてんじゃねえか!これは……カレー?」
328 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:03:30.70 ID:q4IL0fG90
加蓮「いやいや、ボルシチでしょ」
有香「わあ……!すごく美味しそうです!」
リョウ「おっ、料理、出来上がってそうだな」
美世「坂崎さん!どこ行ってたの?」
リョウ「ああ、自分用のテントを建ててた」
クイッ
拓海「……なんか、小せえし、ボロくね?」
329 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:07:57.74 ID:q4IL0fG90
リョウ「なっ、なんてこと言うんだ。アレは俺が山籠もりする時にいつも持っていく、謂わば相棒だぞ」
有香「や、山ごもりって実在するのですね……」
アナスタシア「……穴、開いてますね」
美波「あ、雨とか大丈夫なんですか?」
リョウ「……ちょっとは入って来るな」
加蓮「ダメじゃん!」
リョウ「い、いや、良いんだ。一人用はあんなもんで、良いんだ」
330 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:10:14.09 ID:q4IL0fG90
夜
リョウ「それじゃあ……いただきます」
美世「いただきまーす!いや〜、おなか減ってたんだよね!」
拓海「……おお!?うめええええええ!!」
加蓮「うん、美味しい!」
有香「いろいろと具も入ってますし!」
331 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:13:50.74 ID:q4IL0fG90
悠貴「アーニャさんが教えてくれたんですよ!」
拓海「そうなのか!?すげえじゃねえかアーニャ!」
アナスタシア「スパシーバ……ありがとう、けど、ふたりが手伝ってくれた、おかげです」
リョウ「メシも炊いてある。みんなたくさん食ってくれ」
332 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:18:14.27 ID:q4IL0fG90
拓海「ふい〜、食った食った……ん?坂崎、何してんだ?」
リョウ「焚火の準備だ」
美世「おっ、キャンプファイヤーかな?いいよね!」
リョウ「ああ、これをやらずにキャンプは終われんからな」
有香「おお……あたしもお手伝いします!」
美波「それじゃあその間に私たちは洗い物済ませちゃおっか?」
アナスタシア「ダー♪」
悠貴「はいっ!」
加蓮「あ、私も手伝うよ」
333 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:21:05.17 ID:q4IL0fG90
パチパチ
美世「……うん、あそこのメーカーのはいい音出すよね〜」
拓海「だろ!?いやあ〜、やっとわかる奴が現れたか!だよな、サイッコーにマブイよな!」
美波「美世さんはいつ免許取ったんですか?私もそろそろ運転免許が欲しくて……」
美世「もう解禁されてからはすぐに行ったよ!楽しみ過ぎてずっとお小遣い貯めてたから!」
334 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:23:12.88 ID:q4IL0fG90
有香「そういえばあたしももう免許が取れる年齢ですね……」
加蓮「私はあと2年か〜……そういえばアーニャって今いくつだっけ?」
アナスタシア「ダー、15歳、です。カレンのひとつ下、ですね」
悠貴「私はまだあと5年もありますね……はやく運転してみたいなっ」
拓海「そういや年齢と言えばさ、こないだカーマンのおっさんがさ……」
リョウ(……このキャンプで、美世もアーニャもみんな打ち解けてくれたようだな)
335 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:25:07.79 ID:q4IL0fG90
リョウ(自然の中の不自由の中で協力しあい、お互いの理解を深めてゆく。今回のキャンプは成功だったな)
リョウ(……ただひとつ、残念だったのは)
リョウ(曇ってんな……昼は晴れてたんだが……星はまた次の機会か)
リョウ「……よし、お前らあんまり遅くなる前に寝るんだぞ。あと、テントの中に寝袋入れてるからちゃんと使うんだぞ。夜は気温が下がって寒いからな」
美波「はい」
336 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:28:02.16 ID:q4IL0fG90
夜中
リョウ「……ん」
パチ
リョウ(なんか目が覚めちまった……小便でも行くか)
ノソノソ
リョウ「……ん?」
リョウ「……!」
リョウ(雲が消えて、星満開じゃねえか)
リョウ(あいつらは……もう寝ちまってるか。まあしょうがないか)
337 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:32:46.81 ID:q4IL0fG90
リョウ(ん?あそこに立ってんのは……)
リョウ「アーニャ」
アナスタシア「アー、ドーブルイ ヴェーチル、こんばんわ、ですね、リョウプロデューサー」
リョウ「どうしたんだこんな時間に……って星を見てたんだよな」
アナスタシア「ダー、ズヴェズダ……星が見えないかと思って、ずっと空見てました。そうしたら、さっき、見えてきましたね」
338 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:36:41.35 ID:q4IL0fG90
リョウ「ああ、夕食後に星が見えてたら全員で天体観測でもやろうと思ってたんだが……曇ってたからな。それにしても思ってたよりずっと星がきれいだな。ここにして正解だったか」
アナスタシア「……はい、こっちにきて、こんなにたくさんのズヴェズダ、初めて見ました」
リョウ「……やっぱり故郷が恋しいか?」
アナスタシア「……ふるさと、パパもママもいます。さみしくなることも、あります」
アナスタシア「でも、事務所のみんなはとても優しくて、温かいです」
339 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:48:47.93 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「……星を見てたら、昔の事を思い出しました。ヴァスパミナーミエ……孤独だった頃のこと」
アナスタシア「プロデューサー、スカウトの時に、小さい頃のお話、してくれましたね?」
リョウ「ああ」
アナスタシア「私の一番古い記憶……小さい、日本にいた頃は……銀髪だから、お人形みたいって言われました」
リョウ「……」
340 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:51:29.06 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「それからロシアに住んだ頃には……イポンカ……日本人って、呼ばれたかな」
アナスタシア「そしてロシアから帰ってきたときは、ロシアの子。いつも、どこでも、私は違う何かでしたね、ずっと……」
リョウ「……」
アナスタシア「日本では、よく冷たそうな人って、言われてました。だから、なるべくほほえむようにしていました」
リョウ(そうか。……この娘がほほ笑むのは、他者に受け入れてもらうための手段だった。しかし、同時に他者との間に引いた境界線が、あの笑み)
341 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:52:51.29 ID:q4IL0fG90
リョウ「……君は、諦めたのか?他者に自分を理解してもらうことを」
アナスタシア「……そうだったかも、しれません。寂しい、と思う顔をすると、私きっと怖い顔になってました」
アナスタシア「自分の、本当の気持ちを出すと、人が離れていく……そう思っていました」
アナスタシア「……でもここのみんなは違います。ありのままのアーニャを、受け入れてくれる気がします」
342 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:54:58.31 ID:q4IL0fG90
アナスタシア「リョウプロデューサー、今日の料理、はじめからボルシシを作らせる気で、いましたね?」
リョウ「……!なんのことだ?」
アナスタシア「材料の、ビーツ……日本ではあまり馴染みありません。なかなか売ってなくて……探すの、大変だったと思います」
アナスタシア「それに、ボルシシの作り方なにもしゃべってないのに、必要な道具の使い方、すぐ教えてくれました」
343 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 07:57:32.83 ID:q4IL0fG90
リョウ「……美波と相談してた。そもそも今回のキャンプもそうだが……」
アナスタシア「……ふふ、プロデューサーはニィウクリュージェ……不器用、ですね」
リョウ「む……」
アナスタシア「だけど、優しい……あったかい、です」
アナスタシア「プロデューサー……私もこんなズヴェズダ……星に、なれますか?」
リョウ「……君は自分を変えるための一歩を、勇気を持って踏み出せたんだ」
リョウ「変わる事を、変化を恐れない限り、何にだってなれるさ。星にだって、太陽にだってな」
アナスタシア「ダー……私、もっと色んなモノを見たい……色んな景色が見たい、です」
344 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 08:00:59.39 ID:q4IL0fG90
ロバート「おう、リョウ、最近のアーニャちゃん表情が豊かになったな」
リョウ「ああ、キャンプで大分打ち解けたな。ああいう風に表情を顔に出すのが本来の彼女なのかもしれない」
ロバート「いや〜、最初に来たときはミステリアスクールビューティー路線で行こうと思ってたけど、あんだけ色んな表情が出せるなら方向性にも幅が出るな」
リョウ「まだまだ、これからだ。本人次第でどんな方向にだって彼女は歩き出せるさ」
345 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 08:02:36.68 ID:q4IL0fG90
リョウ(彼女の心は雪のように真っ白だ。それは彼女の純粋さ故か、それとも今までの人生で心を染める機会がなかった故か)
リョウ(だから、これからだ。彼女が心を、自らをどんな色に染めていくのか。人は、心次第で何にでもなれる。龍にも、虎にも、そして悪魔にも)
リョウ(だから俺たちはその行く末を、見守る。見届ける義務がある)
外伝
北の大地から来た少女
完
346 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/05(水) 08:03:18.65 ID:q4IL0fG90
今日はここまで
あと短編ひとつで終わりの予定です。
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/05(水) 08:26:21.47 ID:3g1+g70x0
アーニャの星の光りのように静かな話
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/05(水) 21:37:47.48 ID:5cSdoe6A0
極限流で山という話題が出るとどうしてもリョウが巨大熊を倒すような話が連想してしまう。
そういやMOWで熊も門下生になってる臭いんだよなー
349 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:10:18.03 ID:H++MdoGr0
外伝
烈風の行く先
都内 カフェ
茄子「皆さん!お元気でしたか〜?」
つかさ「もちろんだろ。てかこのメンツ全員で集まるのも久しぶりじゃね?」
真奈美「そうだな。解散が発表された時以来だから……半年ぶりくらいか」
志希「あたしと真奈美さんはいっつも顔合わせてるけどね〜♪」
350 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:17:49.43 ID:H++MdoGr0
レナ「ああ、真奈美ちゃんと志希ちゃんはあの後美城に移ったんだっけ?どう?美城は?」
真奈美「業界最大手だけあってアイドルの数も含めて規模が大きいな。スタッフの数も多いし、アイドル活動だけに専念出来る環境がある」
つかさ「……まっ、アイドルやりつつ秘書やれだの衣装作れだのボイトレやれだのって方が異常なんだけどな」
志希「そう言うつかさちゃんは今もっと無茶してるって聞いてるよ?なんでも事務所立ち上げようとしてるんだってにゃ?」
つかさ「……まぁな。けどやっぱイチからはなかなか難しいよ」
351 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:21:58.84 ID:H++MdoGr0
つかさ「アタシが先に始めてる事業から拡張する感じで進めようとしてるんだけど、やっぱりなかなか人が集まらない。そうなると必然的にアタシがやらなきゃいけない事が増えるんだけど……やっぱり限界があるわ」
真奈美「……そう考えると、ギース・ハワード……あの男は人間性はともかく、やはりその能力は認める他ないな……」
つかさ「……確かにアイツは頭にくるけど天才だった。んで、アタシは天才じゃない。だからあがくんだよ。あがいて、もがいて……」
つかさ「……それでも……アタシは絶対やって見せる。でかい事務所作って、アタシら以上の……Reppu以上のアイドル育てて、目に見せてやるよ。アイツにさ」
352 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:25:51.77 ID:H++MdoGr0
茄子「……そうですね、つかさちゃんならきっと出来ますよ!」
つかさ「ていうかさ、そう言う自分とレナさんは今何してんだよ?ヨソに移ったって話も聞かないけどさ」
レナ「う〜ん、私は今自分探し中、かな……Reppuでの約1年が今までの人生でも濃すぎてね……」
茄子「え、え〜っと……わ、私も充電中です♪」
つかさ「ふ〜ん……まっ、どこかに移るにしても何か始めるにしても早い方が良いぞ?時間は小休憩も大事だけど、時間は待ってくれないからな?」
茄子「そ、そうですね……あはは」
レナ「……」
353 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:31:33.14 ID:H++MdoGr0
志希「それよりさ、つかさちゃん前会った時と違う香りがする〜♪香水変えた?」
ハスハス
つかさ「前会った時の香り覚えてんのかよ……けど、解かる?実はコレアタシがプロデュースしたフレグランスでさ……」
茄子「……」
夕方
つかさ「……っと、もうこんな時間か……そろそろ帰って仕事しないとな」
真奈美「そうだな、今日はこの辺りでお開きとしよう。とても有意義な時間が過ごせたよ」
志希「また集まろーね♪みんなの匂い嗅ぎたいし!」
レナ「そうね。次に会う時は何か報告出来る事を作っておくわ」
茄子「皆さん、今日はありがとうございました♪」
354 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:35:47.01 ID:H++MdoGr0
茄子「……」
スタスタ
レナ「茄子ちゃん……ちょっと待って」
茄子「あっ、レナさん。どうしました?」
レナ「いえ、もし良かったらウチの家で少し飲んでいかない?すぐ近くなんだけど、さっきは未成年もいたしね」
茄子「そうなんですね……けど私はお酒はそんなに……」
355 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:37:57.30 ID:H++MdoGr0
レナ「今無職なのは私と貴女だけだし、良いでしょ?もちろんお酒じゃなくてもいいし、無理にとは言わないけどね」
茄子「……そうですね、それでしたらお言葉に甘えさせてもらいます」
レナ宅
茄子「お邪魔します……わあ、大人っぽい素敵なお部屋ですね!」
レナ「ありがと。とりあえず居間に座ってて、何かつまめるものと飲み物出すから」
茄子「はい」
356 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:42:06.02 ID:H++MdoGr0
茄子「……」
キョロキョロ
茄子(あっ、Reppuのみんなで撮った写真……ハワードさんは……そっぽ向いてる)
レナ「お待たせ……ん?写真見てるの?」
茄子「あ、ごめんなさい、勝手に」
レナ「いいのよ。この写真撮る時……あの人、大概目立ちたがりのくせに写真には写りたがらなかったわね」
シュポン
357 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:46:13.87 ID:H++MdoGr0
茄子「そうですね……でも、最後は嫌々でしたけどちゃんと写真に入ってくれました」
レナ「……ねぇ茄子ちゃん。貴女さっきのカフェで……充電中って言ってたわよね。……はい、茄子ちゃんの分。けっこう良いワインよ」
スッ
茄子「ありがとうございます。……はい、そう言いました」
レナ「でも、その充電はちゃんと電源が入ってるかしら?コンセント抜けてるんじゃない?」
茄子「えっ?」
358 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:48:59.64 ID:H++MdoGr0
レナ「乾杯♪」
スッ
茄子「あっ、か、乾杯♪」
チン
レナ「……うん、いい味。茄子ちゃんは普段飲まないんだっけ?」
茄子「……はい。お正月の甘酒とかは好きなんですけどね」
レナ「あら、それなら日本酒とか用意しておけば良かったかしらね」
359 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 19:54:03.68 ID:H++MdoGr0
茄子「いえいえ、そんなお構いなく……それに、このワインも美味しいです。初めて飲みましたけど」
レナ「そう、それなら良かったわ」
レナ「……実は、私もなのよね」
茄子「えっ?」
レナ「自分探しなんて言ったけど、どこを探したって見つかるわけない。だって、答はもうわかってるんだもの」
レナ「あの人の事が気にかかって仕方ないのよね」
茄子「……!……はい」
360 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:00:22.84 ID:H++MdoGr0
レナ「私もそう……別にあの人が好きな訳じゃない。けど、曲がりなりにも一緒に仕事をして、結果も出して……その結末があの別れじゃあ、踏ん切りつけて新しいことも始められない」
茄子「……はい。私、あの人の本心の言葉が聞きたいです。最後に言っていた言葉……あれが本心だったとは思えないし……思いたくないです」
レナ「……茄子ちゃんはあの人の事どこまで知ってる?」
茄子「え?……海外から来た、青年実業家……だけど、それだけじゃない何かを持っている人……ですか」
レナ「まぁ概ねそれで合ってるんだけど、問題はその何かって部分よ。……まぁこれは私がアメリカにいた時聞いた噂だし真奈美ちゃんから聞いた話も混じるけど……」
361 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:06:49.68 ID:H++MdoGr0
茄子「……サウスタウン?」
レナ「そう。あの人はそこにある大きな裏組織に身を置いている……そして表に出せないような悪事にも手を染めている……という噂よ」
茄子「……確かにそう聞いてもあまり不思議はないですけど……でも……」
レナ「そう。私も実際にあの人と一緒に仕事をしてみて……噂ほど彼を悪い人だとは感じなかった。性格は意地悪だったし偉そうだし最悪だったけどね」
茄子「ちょ、ちょっと言い過ぎですよ……」
362 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:13:41.70 ID:H++MdoGr0
レナ「でも、だからこそ納得が行かないのよ。これが評判通りの男だったらさっさと忘れられるんだけど、そうじゃなかった。あなたもそうじゃない?茄子ちゃん」
茄子「……はい」
レナ「だからこそ、確かめる必要がある。じゃないと、私はいつまでたっても前に進めない」
茄子「……レナさん、もしかして……」
レナ「ええ。私はサウスタウンに飛ぶつもりよ。それであの人に会って……納得できる言葉をもらうか、ビンタの一発でもお見舞いしてあげる」
363 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:16:16.15 ID:H++MdoGr0
茄子「……レナさん。私も……一緒に行きます」
レナ「……こんな話をしておいてなんだけど、サウスタウンは危険な街よ?今は大分落ち着いているらしいけど、ギャング同士が抗争しているような街だもの」
茄子「……それでも、私はあの人に会いたい。でないと、私も一歩を踏み出せないから……」
レナ「……そう。だったら、準備が出来たらまた連絡を頂戴。準備って言うのは、言わなくても解かると思うけど……身辺整理とか、そういうものよ」
茄子「……はい」
364 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:18:03.92 ID:H++MdoGr0
空港
レナ「あ、来た来た。茄子ちゃん、こっちよ」
茄子「レナさん!お待たせしました」
レナ「一応確認しておくけど、ここに来たってことは……覚悟は出来てるということよね?」
365 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:20:16.97 ID:H++MdoGr0
茄子「はい。しっかり神社でお願いしてきました♪」
レナ「……まぁいいわ。行きましょう」
レナ「目指すは北アメリカ大陸の南東にある街……サウスタウンよ」
真奈美「……あれは?」
366 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:25:12.89 ID:H++MdoGr0
セントラルシティ
サウスタウンエアポート
レナ「……やっと着いたわね」
茄子「ここが……サウスタウン」
茄子(……あの人が、いる街)
レナ「ここは繁華街に近いみたい。そっちにまずは行ってみましょう」
367 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:30:53.12 ID:H++MdoGr0
繁華街
茄子「けっこう広い街なんですね」
レナ「サウスタウンはいくつかにエリアが別れているみたい」
ガサ
レナ「えっと……ここがサウスタウンの中心街のセントラルシティね」
レナ「で、港の方がサウスタウン・ベイ。治安もいいみたいで、閑静な住宅街が続いてる」
茄子「……すごく治安が悪いイメージでしたけど、静かな住宅街もあるんですね」
368 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:36:23.30 ID:H++MdoGr0
レナ「そうね。私も詳しいわけじゃないけど、このサウスタウンの南東にある人工島……イーストアイランドには観光出来るところがたくさんあるみたいだから、世間的には観光地としてのイメージが強いみたい」
レナ「けど、情報収集はこの繁華街が良さそうね。ちょっとこの辺りで人に聞いてみましょう」
レナ「Excuse me?」
通行人「……No」
スタスタ
369 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:38:58.13 ID:H++MdoGr0
茄子「……あまり人が相手にしてくれませんね……さっき応じてくれた人はハワードさんの名前を出したら慌てて走って行っちゃいましたし……」
レナ「……この街に住んでいる人はあの人の真の顔を知っている……という事なのかしらね」
茄子「……」
男「……なぁ、そこの姉ちゃんたち」
370 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:42:35.57 ID:H++MdoGr0
レナ「……!何か用かしら?」
サッ
男「お、おいおい、いきなり警戒するなよ。まぁ仕方ないか……」
茄子「あの、貴方は……?」
男「ああ、さっき姉ちゃんたちがギース・ハワードの名前を出していたのが気になってな」
レナ「……それが何か?あなた何か知ってるの?」
371 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:45:14.96 ID:H++MdoGr0
男「ああ、この街にいる奴は誰でも知ってる……だがな、この繁華街ではその名前を迂闊に出さない方がいい」
茄子「……何故ですか?」
男「……知らねえようだから教えてやるが……ギースってのはこの街の覇権を狙う組織の大幹部なんだ。で……この繁華街には同じく街の覇権を争ってるチャイナタウンの勢力の連中が多くいる……連中の本拠はこのセントラルシティにあるからな」
男「連中にとってはギースはその命を狙う今一番のターゲットなんだ。そいつらにギースの事を嗅ぎまわってるなんて知れたら、とっ捕まって、何されるかわかったもんじゃねえよ」
372 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:50:49.23 ID:H++MdoGr0
レナ「……なるほどね。筋は通ってるわ」
茄子(……やっぱり、あの人は)
レナ「ありがとう、忠告をくれて……情報収集は他でやるわ」
男「……あんたたち、見たところ日本人だろ?ここまで聞いてギース捜しを続けるのか?危険なんだぜ」
レナ「……ええ」
茄子「……あの人に聞かなきゃいけないことがあるんです」
373 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:57:31.13 ID:H++MdoGr0
男「ワケありって事か……」
男「……もし姉ちゃんたちが良ければ……俺がギースのところに途中まで案内しても良いぜ」
レナ「……!あなた、あの人の居場所を知ってるの!?」
男「ああ……今あの男は……ポートタウンにいる」
茄子「ポートタウン?」
374 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 20:59:55.57 ID:H++MdoGr0
男「ああ、サウスタウン南西にある貿易港なんだが……軍港でもあってな。そこで大量の武器を仕入れてるって話だ」
レナ「……武器……」
男「ああ、解かると思うが……治安はサウスタウンでも最悪だ。日常的に抗争や喧嘩が起こってる無法地帯……この街の闇の部分だよ」
男「……どうだ?ここまで聞いてまだあの男を追う気はあるかい」
375 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:04:36.69 ID:H++MdoGr0
茄子「……レナさん」
レナ(茄子ちゃん……私が止めるって言っても一人で行きそうな目しちゃって……)
レナ「……追うわ。けど、貴方は何者なの?どうしてそこまで手を焼いてくれるのかしら」
男「ああ、姉ちゃんたち何か事情があるみたいだし……俺もギースに世話になったことがあってな」
レナ「……」
376 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:07:14.43 ID:H++MdoGr0
ポートタウン
レナ「ここが……ポートタウン」
茄子「……これは、まるで……」
男「スラム街さ。観光で栄えたサウスタウンの影の部分を一手に引き受ける……」
男「奴は今夜ここの廃工場に取引で現れるって噂だ」
茄子「……」
レナ「……」
377 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:15:10.23 ID:H++MdoGr0
レナ「……もう1時間くらい待ってるわよ。さっきの話、本当なの?」
男「ああ……準備が出来たようだぜ」
茄子「え?」
男「全員出てこい!この女たちだ!」
ザザザ
男「へへ……」
レナ「……!大人数の男たちが……!やっぱり騙したのね……!?」
378 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:22:30.81 ID:H++MdoGr0
茄子「……!」
男「ふっ……俺が喋った内容で嘘だったのはギースがポートタウンにいるって話だけさ……あとは全て本当の話だ」
男「ここであんたたちを捕らえて、未だ帰らぬ我らが頭、Mr.BIG様の組織内復権のための対ギースの切り札にする……あんたらはヤツの愛人か何かなんだろう?」
レナ「誰が愛人よ!いい加減な事言わないでくれる!?」
クワッ
男「おお怖い……だが、お前らがなんであれ、奴にとって無視できない存在であれば俺はそれでいい」
379 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:28:04.96 ID:H++MdoGr0
レナ(くっ……迂闊だった……!)
茄子「……っ」
男「へっ、早速この女たちを……」
グワ!ギャア!
男「なんだ!どうした!」
???「……BIGならもう帰ってはこないよ。ヤツは日本で行方不明だからね」
スタ
男「……!?マントに、道化の面!?誰だ!」
380 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:33:15.78 ID:H++MdoGr0
???「あんたと元同僚だよ。まっ、私は不本意だったけどね」
レナ「……!」
男「ちっ……貴様、キングか!」
キング「ふっ、それにしてもBIGの部下は働き者だね。奴の何がそんなに良いんだか」
バサッ
男「抜かせ!組織の裏切り者め……行け!全員でかかれ!」
男たち「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」
ドドドドド
381 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:36:23.01 ID:H++MdoGr0
男たち「……」
男「ば、馬鹿な……素人だったとはいえあれだけの人数を……」
キング「……はん、数だけ揃えても私に勝てやしないよ」
キング「あの男に忠誠を誓うのは勝手だけど……彼女たちは私の飲み友達なんだ。手を出そうとした報いを受けてもらうよ」
ザッザッサッ
男「く、くそおおおおお!」
ダダダダダ
382 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:41:01.85 ID:H++MdoGr0
キング「……やれやれ、上司に似て逃げ足だけは早いね」
レナ「……キングちゃん……ありがとう、助かったわ……でもどうして」
キング「……日本のマナミから連絡を貰っててね。空港であんた達を見かけたから、もしかしたらサウスタウンに来てるかもしれないって」
茄子「真奈美さん……」
キング「それでエアポートのところで待ってたら、怪しい男にホイホイ付いて行ってるし……ちょっと警戒心が無さすぎるんじゃないかい。ここは安全な日本じゃない……欲望と暴力の街、サウスタウンだよ」
383 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:45:46.76 ID:H++MdoGr0
レナ「……返す言葉もないわ」
茄子「……あの、キング、さん?」
キング「ん、あんたはReppuにいた娘だね」
茄子「はい、鷹富士茄子といいます」
キング「カコ……ああ、あんたがリョウが言ってた娘ね。あんたの事は楽屋裏からしか見たことなかったけど、会えてうれしいよ」
384 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:49:19.57 ID:H++MdoGr0
レナ「キングちゃんは真奈美ちゃんの友人で、一時期6810プロの……極限drea娘のダンストレーナーをやってたの。だから私たちの事を知ってるの」
茄子「そうなんですね……やっぱり縁って大事です。こうして助けて頂いて」
ペコ
キング「……ちょっと独特の間合いの娘だね」
キング「……話を戻すけど、ここは危険な街なんだ。あんたたちが居るような場所じゃないよ」
レナ「……キングちゃん。助けてもらっておいて言うのも気が引けるけど……私たち、ハワードさんに会いに来たの」
385 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:54:51.96 ID:H++MdoGr0
キング「……ギースにかい?だったら尚更さ。あいつが日本でプロデューサーをやっていた時、どんな感じだったかは知らないけど……」
キング「本当のあいつはアイドルのプロデューサーなんてやる男じゃない。あの若さで組織の幹部になってるような男だよ。もうあんたたちはあの男に関わるべきじゃない」
レナ「……あのね、キングちゃん……」
茄子「……キングさん」
キング「……なんだい」
386 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 21:58:59.26 ID:H++MdoGr0
茄子「確かにキングさんが仰ってることは正しいと思います。現に今私たちは危険な目に遭いましたし、街の人達を見てもあの人は畏れられてるようです」
茄子「だけど……だけど、ハワードさんが私たちに見せた表情は……必ずしもそれだけじゃなかったと思うんです。……だから、私たちはあの人の本当の言葉が聞きたい」
茄子「あの人は本当にただの悪人なのか、それともそうじゃないのか……あの人の本当の気持ちはどこにあるのか。そうじゃないと、私たち……前に進めないんです」
レナ「茄子ちゃん……」
キング「……」
ジッ
茄子「……」
キッ
387 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:02:11.30 ID:H++MdoGr0
キング「……やれやれ、本気ってことだね」
茄子「……はい」
キング「……だったらいいよ。あんた達がギースに会うまで、私がボディーガードをしてやるよ」
レナ「……本当!?キングちゃん!」
茄子「良いんですか!?」
キング「……本当は良くないけどね。けど、本気の眼をした人間てのは止めても行っちまうもんさ」
キング(そう……あの事件の時のリョウと同じようにね)
388 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:05:25.44 ID:H++MdoGr0
キング「だったら私が守ってやらなきゃならない。マナミにも頼まれてるしね」
レナ「キングちゃん……ありがとう」
茄子「この御恩は……忘れません」
キング「礼なら日本に帰ってマナミにしな。……ギースが居るのは恐らくイーストアイランドだよ」
レナ「イーストアイランド?観光で人気の?」
389 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:08:17.04 ID:H++MdoGr0
キング「ああ。確かに世間ではビーチもあって有数の観光地だけど……あそこにはギースタワーがある」
レナ「ギ、ギースタワーって……」
キング「まぁ通称だけどね。あの男が建てた高い高層ビル……普段あの男がいるとされてる」
茄子「そこに、あの人が?」
キング「ああ……だから今からイーストアイランドに移動……」
ギャアアアアアアアアアア
390 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:12:15.74 ID:H++MdoGr0
茄子「……悲鳴!?」
キング「……このポートタウンでは悲鳴くらい珍しくないけど……この声は」
レナ「さっきの男じゃない……!?」
男「……」
ピクピク
レナ「……!」
茄子「……っ」
サッ
391 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:17:03.83 ID:H++MdoGr0
キング「……これは、あんたがやったのかい?」
少年「……そいつよ、あんまり金持ってなかったんだ」
レナ「うそ……まだ十代くらいでしょ……?」
茄子「そんな……」
キング「……その血まみれの鉄パイプを捨てな」
少年「全然、足りねーんだよ……これっぽちじゃ……」
392 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:20:22.12 ID:H++MdoGr0
少年「あんたたち、旅行者だろ……?だったら金はたくさん持ってるよなぁ」
キング「やめな……私には勝てないよ」
少年「関係ねーよ……俺が……金持って帰れねーと……」
少年「妹に、パンを食わせてやれねえだろうがァァァァァ!!」
グワッ
茄子「……!」
393 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:23:16.26 ID:H++MdoGr0
キング「……!はっ!」
ブオン
ドカッ
少年「ぐはっ」
ドシャ
レナ「っ……キングちゃん……!」
キング「……安心しな、ちょっと眠ってもらっただけ……!」
少年「くそ……クソが……」
フラフラ
394 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:27:59.79 ID:H++MdoGr0
茄子「……!」
少年「……ちくしょうが……!さっきのヤツみてえに……潰れたジャガイモになりやがれェェェェ!!」
ガバッ
少年「イヤアアアアアアアアアアオオオオオ!!!」
ブンブンブン
キング「……!ベノムストライク!」
ゴッ
ズドン
395 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:31:09.87 ID:H++MdoGr0
少年「―――――」
ドサッ
カランカラン
レナ「……キング、ちゃん」
茄子「……」
タッ
茄子「この子の、手当をしないと……」
キング「……これが、この街の本当の姿だよ。大人も子供も関係ない。みんな餓えて餓えて……食べるものが無いから生きる為に他人を喰いちぎろうとしてる」
396 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:35:03.66 ID:H++MdoGr0
キング「そういう街に、ギースは帰ってきたんだ。……その意味をあんたたちも考えることだね」
レナ「……」
茄子「……」
キング(……けど、妹の為、か……)
キング(私も、リョウも……一つ道を違えばこの少年と同じようになってたのかもしれないね……)
397 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/08(土) 22:36:49.39 ID:H++MdoGr0
今日はここまで
次回更新で完結予定です
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/09(日) 00:58:45.41 ID:veGU58YP0
乙
完結予定に、乾杯
399 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/09(日) 10:03:01.81 ID:RQqOxXj80
イーストアイランド
キング「……見えてきたよ。あの高層ビル……」
茄子「あれが……ギースタワー」
レナ「どれだけ目立ちたがりなのよ……一番高いビルじゃない」
キング「このビルは……わざわざ観光地として賑わってるイーストアイランドに建てられてる」
400 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/09(日) 10:08:31.43 ID:RQqOxXj80
キング「それはつまり、あの男がサウスタウンを表も裏も両面で支配してるっていう強烈なアピールなんだよ」
茄子「……」
茄子「……ここは、本当に人で賑わってますね。みんな幸せそうな顔をして……」
レナ「……まぁ観光地だしね」
茄子(ほんの少し外れたところにはあんなスラム街があるのに……まるで天国と地獄……)
茄子(ハワードさん、貴方はこの街で何をしてるんです?)
401 :
◆z4l4K/HkZ2
:2017/07/09(日) 10:11:25.25 ID:RQqOxXj80
ギース・タワー
ギース「チャイナタウンの連中か?」
リッパー「はい。我々の直属の部下ではありませんが、『組織』の人間がここ数日だけで4件、襲撃を受けています」
ギース「場所はどこが多い」
リッパー「奴らの庭先のセントラルシティで3件、このイーストアイランドで1件です」
ギース「セントラルシティだけならともかく……イーストアイランドでも事が起こっているのは見過ごせんな。人の家の庭先で勝手に花火を上げられるのは不快だ」
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