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日菜「あたしのお姉ちゃん」
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46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 03:47:03.97 ID:YrwqVrym0
ここまでで第2部完結となります。
前の文章を改めて見返すと、追記箇所が結構出てきて思ったより時間がかかりますね笑
また第3部も添削が済み次第投下していきます。
よろしくお願いしますm(_ _)m
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 12:54:06.67 ID:YrwqVrym0
【日菜の想い】
日菜は…私の妹は…
あの子が意図しなくても、その眩しすぎる輝きゆえに
周りの誰かを傷つけてしまう。
そんな風に見えてしまうようになったのでした。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 12:54:51.14 ID:YrwqVrym0
小学4年生になって、クラスが別々になってからの私の日常はとても平穏なものでした。
日菜は新しいクラスでもクラスの中心で、とても楽しそうにやっていました。
私は一抹の寂しさを感じながらも、出来の良い妹と比べられることが少なくなったことに、少し安堵していたのでした。
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 12:56:45.63 ID:YrwqVrym0
中学に上がり、私たちの日常は目まぐるしく変化していきました。
部活動が始まり、勉強も本格的になっていく中、日菜は遺憾無くその才能を発揮しました。
中間テストや学期末テストでは、3年間トップの座を譲りませんでした。
運動系のクラブからは助っ人として引っ張りだこで、大きな大会を前にすると必ず、上級生が日菜に入部を懇願していたという話を聞いたこともあります。
日菜はもう校内のちょっとした有名人でした。
中学での3年間では、日菜とは一度も同じクラスになることはありませんでした。
たまたま廊下ですれ違ったときなどは、日菜が私に「お姉ちゃ〜〜んっ♪」と抱き着いてくることもしばしばでしたが、私は委員会と部活、日菜は運動部の助っ人などでお互い忙しかったので、一緒にいる時間はほとんどなかったと言えました。
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 12:58:13.78 ID:YrwqVrym0
恐らく、私と日菜が双子であることを知る人は、もはや少なかったのではないかと思います。
もし私が日菜と一緒に居たとしても、見た人は私の存在など気にも留めなかったでしょう‥
それほどまでに、日菜は人の目を惹きつける存在でした。
どうして日菜ばかりが‥と考えたことがないといえば嘘になります。
ですが、もうある程度自分の中では割り切っているつもりでした。
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 12:58:51.83 ID:YrwqVrym0
そんな私が一つ信条としていたことがあります。
それは“コツコツと真面目に努力を積み重ねること”
それだけは、日菜にはできなくて私にできる唯一のことだったからです。
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 12:59:44.39 ID:YrwqVrym0
私は陸上部に所属していました。
真面目に練習に取り組んだことがそのまま記録に反映されるこの競技は、私にとってやり甲斐を感じさせてくれるものでした。
毎日の朝練や、雨の日の自主練習にも欠かさず参加しました。
2年に上がり、三年生が引退した後、次は私たちが後輩たちを引っ張っていく番だと意気込んでいました。
そんなとき‥
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 13:03:11.88 ID:YrwqVrym0
日菜が急に陸上部に入りたいと言い出しました。
私はどうして今更‥?と日菜に訊ねましたが、「んーっ、別になんとなくだよーっ♪」とはぐらかすのでした。
一つ懸念がありました。
日菜は、誘われたクラブに一度は興味を示して、何度か入部したこともあったのですが、どれもすぐに辞めてしまうのでした。
陸上部でも同じことをされては困ると、何度も釘を刺しましたが「お姉ちゃんと一緒だったら、きっと大丈夫だよー!」と、こんな調子でした。
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 13:04:01.57 ID:YrwqVrym0
紗夜「練習は厳しいわよッ 手を抜いたりしないからね?」
日菜「うんっ♪」
紗夜「それと、遅刻は厳禁‥」
日菜「うぐっ‥」
紗夜「返事は?」
日菜「はぁ〜い‥」
日菜「お姉ちゃんはさ‥辞めたりしないよね‥?」
紗夜「えっ‥?」
日菜「んーん、なーんでもないっ」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/06/09(金) 13:16:34.58 ID:v1ok2leP0
tんこtんktんkぉ
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:31:29.75 ID:YrwqVrym0
私はそのとき、曲がりなりにも陸上部のエースでした。
いくら日菜に才能があるとはいえ、今の私がそう簡単に抜かれることはないと‥そう思っていたのです。
一ヶ月でした。
一ヶ月で日菜は私が保持していた記録を、全て塗り替えてしまったのです。
私なりにたゆまぬ努力を続けた一年間。
それを日菜は、たったの一ヶ月でいとも簡単に踏み越えていってしまったのでした。
いったい何が違うのか‥
双子の私たちで‥こうも違うものなのか‥
私は自分の運命を呪わずにはいられませんでした。
しばらくして、私は部を辞めました。
日菜には勉強に専念したいから‥とだけ伝えました。
中学2年の冬のことでした。
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:37:53.17 ID:YrwqVrym0
部活を辞めてからは、学校が終わって家に帰ると、私は自室にこもるようになりました。
(中学に上がるときに、私と日菜は部屋を別々にしていました。お母さんにどうするかと訊かれたとき、日菜は最初猛反対していましたが、「もう子供じゃないんだから」と私が渋々了承させたのでした。)
父親が新しいのを買ったからと私にくれたMP3プレーヤーで、明かりもつけずイヤホンをしながら当てもなく曲を垂れ流していると、とあるロックバンドの曲が流れてきました。
激しい音楽はあまり好みではなかったので、早送りを押そうとしました。
でもなぜか思いとどまりました。
理由はよくわかりません‥。
ですが、荒々しい音の中にも何か繊細な情緒のようなものを感じた気がしました。
気がつくと私は涙を流していたのでした。
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:40:56.69 ID:YrwqVrym0
それから私は、夢中になってそのバンドの曲を聴きました。
レンタルショップで、そのバンドのアルバムは全て借りました。
ネットでそのバンドのことを調べたりもしました。
調べてみると、そのバンドはひと昔前一世を風靡した有名なロックバンドだということがわかりました。
ネット上で、そのバンドのギタリストのインタビュー記事を見つけました。
インタビュアーがそのギタリストにこう質問していました。
「国内外にファンを持つ超絶技巧ギタリストとして有名なsgzさんですが、ズバリ、ギターとは才能でしょうか?」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:42:55.53 ID:YrwqVrym0
「いいや、違う。才能なんてものは結局積み重ねなんです。目に見えないだけで、どっかで積み重なったものが現れてるだけなんですよ。音楽にしろ何にしろ、どれだけそれと真剣に向き合えるかが勝負なんです。」
ブルっと全身が震えました。
私の中で燻っていたものが、また燃え上がるのを感じました。
私の信じたものは、決して間違ってはいない‥!!
もう一度…そして今度こそは…!!
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:44:40.11 ID:YrwqVrym0
私はギターを買うために、それまでほとんど全額貯金していたお年玉を、両親に頼んで崩させてもらうことにしました。
その話を私が突然の言いだしたときには、二人とも驚いていましたが、お母さんはそういうことにあまり細かく口出しをする人ではありませんでしたし、お父さんもバンドの名前を出すと喜んで賛成してくれました。
(プレーヤーに元々そのバンドのアルバムが何枚か入っていたので、多分昔ファンだったのでしょう。)
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:45:50.17 ID:YrwqVrym0
それからというもの、私は取り憑かれたようにギターに没頭しました。
ギターを弾く時間以外は、全て無駄だと自分に言い聞かせました。
譜面を隈なくさらい、完璧なリズムで、ピッチで、フレーズを完璧に弾くことだけに全霊を注ぎました。
「私にはもうコレしかないっ‥! ギターだけでいい‥!!」
毎日毎日、指がボロボロになるまでギターを弾き続けました。
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:47:22.23 ID:YrwqVrym0
高校は、日菜とは別々の学校に通うことになりました。
進学に際して、日菜は私に何も言ってきませんでした。
高校生になり、私は更に自分の腕に磨きをかけようと、ライブハウスに出入りするようになります。
幾つものバンドを渡り歩き、自分の理想の妨げになるものは、例えバンドメンバーであろうと容赦無く切り捨てました。
そしてようやく、私と志を同じくする同志たちにも出逢うことができました。
私は高校2年になっていました。
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:48:54.90 ID:YrwqVrym0
行きつけの楽器屋で、いつものように交換用の弦を買い足していたときのことです。
顔馴染みの店員さんが、私に話しかけてきました。
「そういえばこの間面白い子が来てね、オーディションに出たいからってギターを買っていったんだけど、初めてなのにチューナーもなしで音を合わせちゃってさー」
「へえ‥でもなんだか変わった子ですね」
お会計の最中、そんな他愛もない話をしていると…
私の目はとあるポスターに釘付けになりました。
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:49:39.29 ID:YrwqVrym0
私が呆然と立ち尽くしていると‥
「ああ!この子だこの子!!ホントにオーディション合格したんだ?!いやはや恐れ入ったねー」
私は自分の目を疑いました。
「どうして……日菜が…」
「いやー世の中いるもんなんだねーー“天才”ってヤツが。これは紗夜ちゃんにもライバル登場かな?!なんつって」
「………っ!!」
「ああっ!ちょっと紗夜ちゃん!」
「どうして…あなたはいつもいつも…ッ」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:52:53.89 ID:YrwqVrym0
気がつくと、私は息を切らして自分の家の前に立っていた。
今家には誰もいないようだ。
私は躊躇うことなく日菜の部屋に向かった。
ドアを開けると、部屋には地球儀や望遠鏡、それに星をモチーフにした物が多くあった。
本棚には宇宙図鑑や分厚い天文辞典が並んでいた。
そういえば、日菜は今の学校で、一人天文部をやっていると言っていたような気がする‥
いや、今はそんなことはどうでもいい
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:56:20.74 ID:YrwqVrym0
一通り部屋を見渡したが、“それ”は見当たらなかった。
しかし、私の目は勉強机の上に“ある物”を捉えた。
ギターのピックだ。しかも先端が削れて丸みを帯びてきている‥
私の中で日菜がギターを弾いていることはほぼ確信に変わった。
そして私はクローゼットを開けた‥。
日菜「お姉ちゃん‥?」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:57:17.26 ID:YrwqVrym0
日菜「どうしたの‥お姉ちゃん‥私の部屋で…」
紗夜「日菜…これは‥どういうことよ…」
日菜「……っ!! それは‥事務所で‥バンドを組むことになって…」
紗夜「このギターで事務所のオーディションを受けたんでしょう?!」
日菜「…えっ‥どうして‥それを…」
紗夜「どうして?!どうして…あなたはいつも私の居場所を奪おうとするの?!」
日菜「っ‥そんなつもりじゃ‥!」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 17:59:10.30 ID:YrwqVrym0
紗夜「じゃあなんでギターなのよっ!!」
日菜「それは‥その‥でもっ、あたしにも“るんっ”てできる場所が欲しくて‥!!」
紗夜「“るんっ”てなんなのよっ!!そうやっていつもいつも…!!」
「私が必死に努力して積み上げたものを、あなたは平然と踏み躙っていくんじゃないっ!!」
日菜「ち、違うよっ!!」
紗夜「違わない!!」
日菜「違うもんっ!!!!」
紗夜「……っ!!」
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 18:00:39.35 ID:YrwqVrym0
日菜「だって……あたしに‥も‥居場所が‥欲しかったんだもん……っ」グスッ
紗夜「居場所ですって?!居場所ならあなたには…」
日菜「みんな勝手だよっ!!!」
日菜「あたし‥みんなの力になろうとして‥」
日菜「頼まれて‥困ってるから助けてくれって‥」
日菜「…でも用が済んだら‥あたしが邪魔者みたいに‥!!」
日菜「日菜ちゃんは“特別”だもんねって‥」
日菜「日菜ちゃんに私たちの気持ちなんてわかんないよって……でも…っ」
「他人のホントの気持ちなんて‥本当はみんなわかんないじゃんっ‥!!!」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 18:02:47.18 ID:YrwqVrym0
日菜「………ッ!!」ダッ
紗夜「日菜っ!?」
ダッダッダッダッダッダッダッダッ……ガチャン
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 18:07:03.23 ID:YrwqVrym0
以上で第3部終了になります。
余談ですが3部はpixivに投稿する前の文を添削していていました…
どうりで直しが多い…
次でラストですm(_ _)m
【姉妹】
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 19:55:29.37 ID:YrwqVrym0
日菜の残していった言葉が、残響のように頭の中で響いていた。
日菜があんなふうに感じているなんて…思いもよらなかった。
小学校ではいつもクラスの中心だった日菜。
しかし中学に上がって、皆が自他の違いを強く意識するようになれば、日菜のような存在はどのように映るであろうか?
答えは簡単だった
他ならぬ私自身が、日菜の一番近くで妹をそのように見つめていたからだ。
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 19:57:15.65 ID:YrwqVrym0
私は、どこかで常に日菜のことを恐れていた。
私がギターを始めたことだってとどのつまりは、日菜に対する劣等感の呪縛から逃れようとしてのことだった。
あの子はもしかしたら、私たちがあの子のことを“特別”と認識したそのときから、ずっと一人ぼっちだったのかもしれない…。
「あーらっ、ここは紗夜のお部屋だったかしら?」
「お母さん…」
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 19:58:17.80 ID:YrwqVrym0
「何があったか‥聞かせてくれる?」
私はお母さんに今までのことを全て話した。
お母さんはいつかこんな日が来る事を予見していたかのように、とても落ち着いた様子で話を聞いていた。
話を聞いたお母さんが、こう切り出した。
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:00:12.31 ID:YrwqVrym0
「紗夜、あなたたちがまだ小学校のとき、テストで100点をとったら好きなものを買ってあげるって‥私が言ったこと憶えてる?」
「うん‥でも私はとれなくて、日菜は100点だった」
「あのときね。日菜が嬉しそうにテストを見せにきて、紗夜はこなかったから、実はわたし‥ああしまったって思ったのよ‥」
「ホントは逆になると思っていたから。そうなったら、日菜には良い薬になるかなって♪」
お母さんは茶目っ気たっぷりに言った
…日菜のあの性格は‥絶対お母さん譲りですね‥
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:03:31.33 ID:YrwqVrym0
「でもね…日菜は私のところに来てなんて言ったと思う?」
「あの子、お姉ちゃんとお揃いの靴がほしいって言ったのよ♪」
(…日菜がそんなことを…)
「最初はあなたを気遣って言ったのかと思ってたんだけど‥」
「でもあの子、そんな気遣いなんて言葉とは無縁な子じゃない?」
(随分はっきりと…まあその通りですね‥)
「あの子にとっては、テストの点数で勝っても負けても、関係なかったんじゃないかしら?」
「日菜はただ純粋に、紗夜とゲームをして遊んでいた。」
「だから、自分が勝っても一人だけご褒美がもらえるだなんて、端から考えていなかった‥」
「そのまま伝えてもあなたは悔しがるでしょうから、頑張ったご褒美にって‥言ったんだけどね?」
そういえば、思い出した
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:07:52.98 ID:YrwqVrym0
私はお母さんに好きなものを言ってごらんと言われても、答えられなかったのだ。
自分は100点をとれなかったのだから、そのご褒美には値しない‥と
テスト前に日菜に、100点をとったら何がほしい?と訊ねたところ、「お姉ちゃんとお揃いがイイっ♪」と話していたので、私は日菜と同じものでいいからと答えたのだった。
そうか‥日菜は最初から私とお揃いのプレゼントを買ってもらうつもりで‥
なんだか自分が情けなくなってきました‥。
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:10:04.10 ID:YrwqVrym0
それで…紗夜はどうしたいの?」
「えっ…?」
「日菜とのこと…これからどうしていきたいの?」
「…私は‥」
「…日菜に、謝りたいです‥」
「…じゃあ、あなたが迎えに行ってあげなさいっ♪」
「でも‥私にはその資格が…」
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:13:12.18 ID:YrwqVrym0
「資格?!そんなもの…誰の許可が要るというの?」
「あなたたち姉妹が仲直りをすることに、誰が異論を唱えるというの?」
「私は日菜のことをっ‥!!正直疎ましく思っていました…」
「紗夜?人はね‥相手のこと全部を好きになれなくても、許せなくても…傍にいていいの」
「それにね。紗夜? あなたはわたしから見れば、十分立派にお姉ちゃんをやっていると思うわよ‥?」
「私は…っ」
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:15:41.36 ID:YrwqVrym0
「……こうしていると、あのテストのすぐ後、日菜が行方不明になったときのことを思い出すわね‥」
「あなた普段はしっかりしてるのに、日菜のこととなるとわたしとの約束も忘れて飛び出していっちゃうんだからっ!」
「それも履き慣れてない靴で走っていったもんだから、ひどい靴擦れで‥」
「でも‥その足で日菜をおぶって‥家まで連れて帰ってきてくれたのよね?」
「…………」
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:16:55.64 ID:YrwqVrym0
「お互いのことが分かり合えなくてぶつかった。そんなの、よくある姉妹喧嘩じゃない♪」
「紗夜?あなたが日菜に抱くその感情は、日菜と対等でありたいと願うから‥」
「普通はね‥そんな自分の中の醜い嫉妬心なんて、みんな蓋をして見ないようにしてしまうの。その対象と壁を作ってね?」
「でもあなたはそれをしない。それどころか根っから真面目なあなたは、誰もが抱くであろうその嫉妬さえ、許そうとしないの」
「その気高さと誇り高さを、わたしは心から尊敬するわ?あなたはもっと自分自身を誇りなさい‥?」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:20:34.32 ID:YrwqVrym0
「わたしは今までただの一度もっ!……あなたが日菜より劣っているだなんて‥思ったことはないわ‥」
「お゛母さん゛‥っ!!」
もう堪えようがなかった
今まで言葉にできなかった想いが、堰を切って溢れ出てきた。
まるで赤ん坊みたいに、声を挙げて泣いた
私が落ち着くまでお母さんはずっと抱きしめてくれていた。
母というものは偉大だと、心からそう思った。
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:22:01.31 ID:YrwqVrym0
その後、日菜を探しにいく前に、私は自分の部屋の押入れからある物を取り出した。
“ひな”と名前の書かれた小さな靴だ
「あの時は、こんなに小さかったんですね‥」
日菜は、待っていてくれているであろうか
私のよく知った日菜のままで
また戻れるだろうか?
あの頃のような姉妹に…
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:27:18.40 ID:YrwqVrym0
どれくらいの間、泣いていたであろうか。
気付いたときには、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
あの頃からあたしも成長して、大抵のことは一人でどうにかできるようになった気でいたが、どうやらそうではなかったらしい。
奇しくも、あたしは8年前と同じ格好でこうしているのだ。
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:29:33.18 ID:YrwqVrym0
「お父さんとお母さん…心配してるかな…」
「お姉ちゃんに……嫌われちゃったかな…」
あれっ?
さっきまであれだけ泣いたのに、また涙が溢れてくる
もう体内の水分の5パーセントくらいは目から流した気がする
ちょっと頭痛がするし、あながち大袈裟ではないかもしれない
涙を流しすぎて死んだ人間というのはいるのだろうか?
でもソレって、ちょっとロマンチックだなー‥なーんて…
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:30:58.68 ID:YrwqVrym0
ガサガサッ
(大きな物音がした)
ガサッ
ガサガサッ
パキッ
「痛っ」
日菜「!?!?」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:32:59.73 ID:YrwqVrym0
日菜「だ、誰‥?」
「日菜‥」
「お姉ちゃん‥?」
「どうして‥」
紗夜「どうしてって‥」
紗夜「この場所はあなたと私しか知らないでしょう?」
紗夜「帰るわよ、皆心配してるわ」
日菜「でも、あたし‥ナイショでギターを‥嫌われちゃったのかなって思って‥」グスッ
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:34:45.83 ID:YrwqVrym0
(大きな溜息が聞こえた)
暗くてお姉ちゃんの表情まではよく見えない‥
バッ
へっ?!
急に抱き寄せられた
「どうしたの、急にっ?!」
「あっ、あなたが中学のとき、いつもこうやってっ!!」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:36:33.39 ID:YrwqVrym0
お姉ちゃんの鼓動の音が聞こえる
「日菜‥ごめんなさい‥」
「……どうして‥謝るの?」
「あなたを‥今まで身勝手な理由で遠ざけていたわ‥」
「……そうだったの?」
「はぁ?!気付いてなかったの?!」
「えへへ‥ウソウソ。でも、怒ってないよ‥」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:38:44.60 ID:YrwqVrym0
「…………ッ!」グスッ
「……お姉ちゃん…泣いてるの?」
「……ごめんなさい‥あなたが抱えていた孤独にも‥気付いてあげられなくて…」
「うん‥寂しかった。……でもお姉ちゃんのせいじゃないよ‥」
「あたしも‥お姉ちゃんのこと‥いっぱい傷つけてたんだよね‥?」
「それこそ‥あなたのせいじゃないわ」グスッ
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:40:52.95 ID:YrwqVrym0
「あたしね‥お姉ちゃんが嫌なら‥ギターやめるよ」
「日菜‥?」
「パスパレは…… るんっ、な場所だったんだけどさっ」
「それでお姉ちゃんを傷つけるのは‥嫌だから‥」
「……辞めなくていいわ‥」
「やっと見つけた‥居場所なんでしょう?」
「……うん‥ッ」
また涙が溢れてきた
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:43:31.63 ID:YrwqVrym0
「日菜…私はもう‥自分の弱さから……あなたから目を背けたりしない…」
「…お姉ちゃん…っ」
「日菜‥」
「大好きよ」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/09(金) 20:51:01.60 ID:YrwqVrym0
以上で完結となりますm(_ _)m
読んでくださった方いたかわかりませんが、氷川姉妹に興味を持ったり、好きになってくれた方がいれば幸いですm(_ _)m
html化依頼出しておきます。
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/09(金) 20:51:50.57 ID:Sj/fRNlZO
おつおつ
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/24(土) 00:50:04.92 ID:agvByne8O
おつるんっ♪
氷川姉妹は最高です!
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