日菜「あたしのお姉ちゃん」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/07(水) 15:50:17.93 ID:6DSH4UOv0
BanG Dream!(バンドリ!)ガールズバンドパーティ!
氷川姉妹のSSです。
2ちゃんねる書き込むのは初めてですがよろしくお願いしますm(_ _)m
pixivにあらかじめ投稿してるものを添削しながら投下していきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496818217
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 15:53:17.15 ID:6DSH4UOv0
あたしには大好きなお姉ちゃんがいるんだーっ!

お姉ちゃんのどこが好きってー?

んー、全部っ♪

あー、いやいや、別にテキトー言ってる訳じゃないよ?

でもそうだなぁ……物心つく前から大好きだったから、改めて訊かれるとわかんないやっ♪

あっ、じゃあひとつ昔話をしてもいいかなー?

あたしがお姉ちゃんのことをもっともーっと好きになった、あたし達がまだ小学校の頃のハナシ♪
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 15:57:15.05 ID:6DSH4UOv0
それはあたしたちが小学校3年生に上がったばかりのこと‥。

あたしたちの学校では、双子の生徒は1〜3年までは同じクラスで、4〜6年では別々のクラスになるという決まりがある。

4年生に上がるときには、お姉ちゃんと別々になると聞かされて、そういえばめちゃくちゃ駄々をこねたなぁー‥笑

話を戻すと、小学校低学年までのあたしたちは、幼稚園からずーっと同じクラス。
何をするにもお姉ちゃんと一緒だった。

常に一緒にいるから遊ぶ友達は同じだし、家にいるときも部屋が同じだったので、別々になることはほとんどなかった。
(夜トイレに行くときは怖いから、よくお姉ちゃんについてきてもらってたのは内緒‥)

そんな冗談?はさて置き、本当にいつも一緒が当たり前だったんだけど、ちょうどその頃‥小学3年生くらいになってからは、あたしは女の子の友達よりも男の子に混ざって遊ぶことが多くなっていた。
(だって女の子の遊びってちょっと退屈なんだもーん‥)
男子と混じってサッカーや鬼ごっこをして遊ぶ方が、あたしには性に合っていたのだ。

そんなこんなであたしとお姉ちゃんは、家と学校にいるとき以外は別々で遊ぶことが多くなっていった。

それでも、家では一緒にお風呂に入ったり、遊んだときの出来事をお姉ちゃんに聞いてもらったりと、それまでとあまり変わらない生活が続いていたのだった♪
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 16:11:13.40 ID:6DSH4UOv0
たったったったったったったっ‥

ガチャッ『ただいまーっ♪』

お母さん「あらお帰りなさい♪早いわね〜」

日菜ちゃん8ちゃい「えへへ〜っ♪ お姉ちゃんとかけっこしてきたんだ〜っ あたしの勝ち〜♪」

紗夜ちゃん8ちゃい「こら日菜っ! あなた信号無視したでしょっ! 危ないからダメよってあれ程…っ」

お母さん「あらあら二人とも元気ね〜♪」

「じゃあそんな二人には と・く・べ・つ に……じゃーんっ ご褒美をあげましょう♪」

日菜「……!! プリンだーっ!」パァ-ッ

お母さん「ちゃ〜んと手を洗ってから食べるのよ〜♪」

「紗夜、日菜をお願いね♪」

紗夜「うんっ♪ありがとうお母さんっ♪」

日菜・紗夜『いっただっきま〜す♪』
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 16:15:17.37 ID:6DSH4UOv0
日菜・紗夜『ごちそうさまでしたーっ』

日菜「じゃああたし、遊びに行ってくるねーっ♪」

「日菜ーっ 宿題はちゃんとやったの?」

「あとでやるーっ いってきまーすっ♪」ガチャ


バタンッ


お母さん「もう日菜ったら…ふふっ」

紗夜「お母さん、はいこれっ♪」

「ああ、紗夜ありがとう♪ 流しにつけておいてもらえるかしらっ♪」

紗夜「うんっ」

紗夜「じゃあ…私は宿題やってきます‥」

「……? 紗夜は遊びに行かなくていいの?」

紗夜「私は…宿題やってから行くからっ♪」

「…あらそう? 紗夜はしっかり者で偉いわね〜っ♪」

紗夜「……♪ ありがとうっ♪ それじゃっ♪」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 16:18:51.68 ID:6DSH4UOv0
次の日の学校


先生「はーい!それじゃあ宿題を集めまーす!」

日菜「あっ!!」

友達「日菜ちゃんどうしたの?」

日菜「宿題やるの忘れた……どうしよう‥」シュン

紗夜「(日菜、日菜っ!)」

日菜「(お姉ちゃん?)」

紗夜「(これっ‥あなたの分もやっといてあげたから‥あなた字も私とそっくりに書けるんだから、バレないでしょ!)」

日菜「(!!‥うんっ‥お姉ちゃんありがとうー‥)」グスン

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 16:21:41.24 ID:6DSH4UOv0

その夜


お母さん「日菜〜あなた昨日宿題やってなかったでしょう〜?」

日菜「うぅ…ごめんなさい…」

紗夜「まったく日菜は……私がいなかったら先生に怒られてたわよっ」

お母さん「もう紗夜も……本当はイケナイことなのよ?」

紗夜・日菜『エヘヘっ♪』

お母さん「そうだわ!じゃあこうしましょう♪」

「次のテストで100点をとったら、二人の好きなものを買ってあげる♪」

『ホントにっ!?』

「ええっ♪ た・だ・し 100点のときだけよ?」

『やったーっ!!』

日菜「お姉ちゃん頑張ろうねっ♪」

紗夜「ええっ♪ でも日菜は宿題忘れないようにねっ」

日菜「?っ、気をつけマス‥」


(西゚∀゚)アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 16:26:52.77 ID:6DSH4UOv0
最後の日菜ちゃんの台詞文字化けしてますね

う゛って言ってますすみませんm(_ _)m





9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 16:30:16.27 ID:6DSH4UOv0

そうしてそれから、あたしとお姉ちゃんは真面目に勉強に励んだ。
(あたしは実は、ちょっぴりサボって遊びに行ったりもしたんだけど‥笑)

まあ結果オーライ♪

晴れて二人でお揃いの靴を買ってもらうことができたっ

それでねっ、どっちの靴か見分けがつくように‥二人でマジックで「ひな」「さよ」って名前を書いたんだーっ♪

でもそのあと、実はちょーっとした事件があったんだよね〜‥苦笑

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 16:39:02.69 ID:6DSH4UOv0

校門前


「先生おはようございますっ」

内山田教頭「はい、おはよう♪」

「お姉ちゃん早く早くっ!!」

「ちょっと待ちなさい日菜っ!買ったばかりの靴で走ると靴擦れするわよっ!!」

友達「あっ、日菜ちゃんおはよう〜♪」

日菜「あっ、マミコちゃんおはようっ♪」

マミコ「今日はなんだかご機嫌だねっ」

マミコ「あっ、それもしかして新しい靴?」

日菜「えっへへ〜っ♪ テストで頑張ったご褒美にって、お母さんに買ってもらったんだーっ♪ お姉ちゃんとお揃いなんだよっ♪」

マミコ「へえ〜♪ 日菜ちゃんこの間のテスト凄かったもんね〜♪」

そんな、新しいクツ以外は、何の変哲も無い一日の始まりだった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:07:52.18 ID:6DSH4UOv0

その日は午後から体育の授業があり、体育館で跳び箱の練習をした。

ピッ

ダッダッダッダッダッダッダッダッ‥

ガコンッ

シュタッ


『おお〜〜!!』


「氷川スゲ〜!!8段はっべーよ、マジっべーわ」

「お前も跳んでみろよ」「ぜってー無理っ」

「日菜ちゃんすご〜い♪」

「どうやったらあんなに跳べるのー??」

日菜「えーっ これくらい楽勝だよーっ♪」

ホームルームが終わり、いつも遊んでいる男子たちと教室に残って少し戯れてから、上履きを履き替えに下駄箱へ向かった。


「……あれ‥」

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:13:23.10 ID:6DSH4UOv0



下駄箱に置いてある筈のあたしの靴が無かった。

昼休みに校庭で遊んだとき……いや今日は体操服に着替えて体育館で遊んでいた‥。

「どこ?!なんで??あたしの靴‥っ」

結局校舎中を探し回っても靴は見つからなかった。

上履きのまま泣きながら帰った。

「せっかく…お母さんに買ってもらったのに…」グスン

あたしは普段から忘れ物が多く、持ち物を無くしてしまうことがあった。

買ってもらったばかりの靴を、新品同然で無くしてしまったという現実が、子ども心に重たくのしかかったのだった。

(お母さん…きっと怒るよね? …帰りたくないな‥)

いつも遊んでいる公園の前を通りかかったとき、今日はたまたま誰もいなかったので、“あの場所”に行こうと思った。

かくれんぼをしているときに見つけた、あたしとお姉ちゃんしか知らない秘密の隠れ処があったのだ。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:16:29.83 ID:6DSH4UOv0


どれくらいの間、泣いていたであろうか。


気付いたときには、辺りはもうすっかり暗くなっていた。

辺りは不気味なほど静かで、普段は気にも留めない虫たちの声が五月蝿く響いていた。

(そろそろ帰らないと…)

そのとき、

ガサガサッ

(近くで物音がした)

ザクッ

(誰かが近づいてくる!)

ザッザッザッ‥

(足音はまっすぐこちらに向かってくる!!)

怖くて堪らなかった。

たかだか当時8歳のあたしに、冷静な判断などできるはずもなく、真っ暗闇の中あたしひとりという状況で、何者かが自分に近づいて来るということがたまらなく恐ろしかった。

「(怖いよ‥助けて‥お姉ちゃん‥っ!!)」

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:20:31.76 ID:6DSH4UOv0


「日菜‥」



優しい声がした



世界で一番、優しい声だった



15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:30:35.89 ID:6DSH4UOv0

お姉ちゃんは、怖くて腰が抜けてしまったあたしを、家までおぶって帰ってくれたそうだ。

あたしは余程安心したのか、帰る途中お姉ちゃんの背中で眠ってしまったらしい。

次の日の学校は、お姉ちゃんと一緒に欠席した。

両親に事情を話すと、お母さんは「あなたが無事に帰ってきてくれたことに比べたら、靴なんて些細な事よ…」と優しく抱きしめてくれた。

次の日の朝、学校へ向かうため玄関を出ようとしたとき‥

(あっ……そっかあたしの靴‥)

紗夜「日菜、私の靴を履いていきなさい‥」

日菜「えっ、でもどうして‥」

紗夜「私はどうせしばらく、その靴を履けないから……」

紗夜「それにあなたの靴なら、多分すぐに戻ってくると思うわ‥」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:36:58.81 ID:6DSH4UOv0

驚いたことに、お姉ちゃんの言った通りになった。

その日の夕方、家にマミコちゃんとそのお母さんが訪ねてきたのだった。

マミコちゃんはその日、学校を休んでいた。

あたしの靴を隠した犯人は、クラスメイトで仲の良かったマミコちゃんだった。

下駄箱からあたしの靴を持ち出し、校庭の隅にある雑木に隠したらしい。

流石にそこまでは見つけられなかったなぁー

動機はこうだった。

マミコちゃん「わたし……跳び箱の授業で4段を跳べなくて……そしたら日菜ちゃんが、どうしてマミコちゃんは跳べないの?って、それで……本当に゛ごめ゛んな゛さい…」グスン

どうやらあたしはマミコちゃんを傷つけてしまったらしい。

しかし、あたしたちが次の日学校を休んだことで、マミコちゃんは気が動転して、次の日学校に行きたくないと両親に漏らしたそうだ。そこから事態の発覚に至ったというわけだった。

靴は無事に帰って来たし、今さらマミコちゃんを責める気にはなれなかったので、(マミコちゃんがご両親からたっぷりとお説教をうけたことは見て取れた。)今回はお互い様ということで、事件は丸く収まったのだった。

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:40:40.94 ID:6DSH4UOv0

紗夜「日菜、良かったわね‥」

日菜「うんっ♪ あっそうだ…お姉ちゃん。はいこれっ!」

紗夜「……? こっちはあなたの靴じゃない?」

日菜「うんっ、でもあたしこっちの方がいい♪」

紗夜「同じ靴じゃない‥それに名前だって‥。ふふっ、まあいいわっ」

それから、あたしとお姉ちゃんは足が小さくなるまで、名前があべこべな靴を履いた。

履けなくなった今でも、その靴は押入れの中に大事にしまってある。

あたしの大切な思い出と一緒に、その靴はあたしの宝物になったのだっ♪

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:41:56.97 ID:6DSH4UOv0

んーっ!やっぱりっ











お姉ちゃんだーい好きっ♪

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 18:45:52.32 ID:6DSH4UOv0

以上で第1部完結です。
全部で第4部まであるんですが、ここで初めて見てくれている人っているんでしょうか?

いればこのまま書き続けたいと思いますm(_ _)m



20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/07(水) 19:22:57.56 ID:kY3njlh00
期待してる、支援

http://i.imgur.com/ELhIRKM.jpg

お姉ちゃん大好き努力知らずの天才、
アイドルバンド・Pastel*Palettesのギタリスト、
氷川日菜(奥)

その努力のことごとくを才能で凌駕され続ける複雑な心境の姉、
本格派バンド・Roseliaのギタリスト、
氷川紗夜(手前)
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 03:21:35.40 ID:HDDjVf7S0
>>20
支援ありがとうございますm(_ _)m

では、このまま続けさせていただきます。



22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:07:03.82 ID:HDDjVf7S0

それでは続きいきます。
第2部では第1部の出来事を紗夜目線で綴ったものになります。


【私の妹】


23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:08:08.90 ID:HDDjVf7S0

私には双子の妹がいます。

私たちは容姿こそ似ていましたが、内面や性質といった部分では全くの別物、あるいは真逆であったと言っても過言ではないかも知れません。

妹の日菜は昔から天真爛漫

明るい性格で人を惹きつける。
まるで太陽のような子でした。

24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:09:07.67 ID:HDDjVf7S0

加えて彼女には天賦の才というものがありました。

何をやっても人並み以上

大抵のことは努力するまでもなく、一番になってしまうのでした。


それにひきかえ、私はまさに月でした。

太陽の下でしか輝けない…

己自ら光を放つことができない月でした。

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:11:40.41 ID:HDDjVf7S0

私たち姉妹は、小学校4年のクラス替えのときまで、ほぼ全ての時間を共有していました。

もっと正確にいうと、小学校3年に上がった頃まででしょうか。

というのも、その頃になると日菜は男の子たちに混じって遊ぶようになり、以前のように女の子グループで遊ばなくなったからです。

私は以前と変わらず、女の子のグループで遊んでいたのでした。

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:13:32.35 ID:HDDjVf7S0

そんなあるとき、ずっと一緒に遊んでいた友達にこう言われました。

「あれっ? 今日は日菜ちゃん来ないの?」

紗夜「うん……最近は男の子たちと遊んでいるみたい……」


「なーんだっ、つまんないの」


27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:15:53.09 ID:HDDjVf7S0

子どもというのは残酷なものですね。

どうやら、私というのはその子たちにとって、人気者な日菜のおまけ程度だったということなのでした。

その日から、私はそのグループの子たちとは距離を置くようになりました。

そしてその後、その子たちが私をわざわざ遊びに誘ってくれることもなかったのでした。

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:31:13.02 ID:HDDjVf7S0

私たちは、傍目から見てもとても仲の良い姉妹だったと思います。

それはハリボテではなく、私と日菜の間には確かな絆がありました。

日菜は幼い頃から要領がよく、なんでも出来てしまう子でした。しかし、それを鼻にかけるようなことはなく、誰にでも気さくに接することができる清々しい子でした。

ですが、落ち着きがなく少々忘れっぽいところがあるため、慎重派の私がよく世話を焼いていました。

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 15:35:27.82 ID:HDDjVf7S0

日菜はそんな私をとても慕ってくれていました。

「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ」と後ろをくっついてきて、私を頼ってくれる妹が可愛くないはずもありませんでした。

しかし、学年が上がるにつれ、日菜はより一層の輝きを増していくのでした。

私などでは目が眩んでしまうほどに…

そんなことを象徴するような出来事が起きたのは、ちょうど私たちが小学3年に上がって2ヶ月ほどが経った頃です。

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:04:59.42 ID:HDDjVf7S0

日菜は何もしなくてもテストの成績は良かったのですが、やりたくないことはとことんやりたがらなかったので、遊ぶのに夢中になって宿題を忘れることもしばしばでした。

それを見かねた母が、あるとき私たちにこう言いました。

「次のテストで100点をとったら、二人に好きなものを買ってあげる」…

私たちは大喜びで勉強に励みました。

が、日菜は途中で飽きて、またいつものように遊びに出掛けてしまいました。

私はというと、女の子グループで遊ばなくなってからは、家で一人過ごすことが多かったので、別段勉強が苦にはなりませんでした。

それに、いつも何かと勝負しては負けている日菜に、今回ばかりは一泡吹かせられるチャンスだと思ったのです。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:09:32.16 ID:HDDjVf7S0

テストの前日、日菜が寝てしまった後も私はテストの復習をしていました。

紗夜「ふぅ‥よーし出来たっ‥ これでテスト範囲は完璧…」

日菜「んー……お姉ちゃん〜…」ムニャムニャ

紗夜「ふふっ。日菜ったら…テストで私に負けて、泣きべそかいてもしらないんだからっ‥♪」

時計を見ると、もう夜中の2時を回っていた。

紗夜「ふわぁ〜‥もうこんな時間‥私もそろそろ寝ましょうか‥」

机の灯りを消して、ベッドに潜り込んだのだった。

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:13:21.20 ID:HDDjVf7S0




週明け、テストの返却日がやってきた。

先生「じゃあみんなお待ちかね〜 この間のテストを返しまーす」

「えー」「ヤダー」

「私自信ないよ〜」

先生「はいはいではし〜ず〜か〜に〜!」

先生「えー今回のテストはちょーっと難しかったみたいですが、なんと! 一人百点満点をとった子がいまーす!」


『えーー誰!?』


紗夜(……っ!)ドキッ

先生「それでは、呼ばれた人は前に取りに来てくださーい!」

先生「それじゃあ、……相生さんっ!……安中さんっ!……」




先生「……氷川紗夜さんっ!」


テストを受取っても、自分の席に着くまでは見ないと決めていた。

もし100点だったら、思わずガッツポーズをしてしまいそうだったからだ。

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:18:11.40 ID:HDDjVf7S0




「やったっ!!」




先生「よく頑張りました〜! 100点は氷川日菜ちゃんでしたー!」

(‥えっ……)

「氷川スゲーじゃん!?」

「なんだよーお前ちゃんと勉強してたのかよ〜」

日菜「え〜〜そんなしてないよ〜っ でもこれくらいは楽勝かなっ♪」

「お前テストの前の日俺らと遊んでたじゃんかよ〜笑」






自分のテストを広げてみた

私は95点だった

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:21:31.93 ID:HDDjVf7S0

家に帰るなり、嬉しそうにお母さんにテストを見せにいく日菜。

私はそのまま自分の部屋にこもって、テストをクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げつけた。

しばらく机に突っ伏していると、ノックの音が聞こえた。

私は返事をしなかった。

お母さん「紗夜、入るわね‥」

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:26:44.19 ID:HDDjVf7S0

「テスト‥残念だったわね。でもお母さんは紗夜がとっても頑張ってたこと‥ちゃ〜んと知ってるわ」


「何か好きなもの‥言ってごらんなさい?」





スン‥ヒック‥グスン‥ズズッ


声を押し殺して泣いた

お母さんはそんな私を傍で、優しく撫でてくれた

久しぶりに母の胸で泣いた



36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:32:00.53 ID:HDDjVf7S0

日菜と私は、お揃いの新しい靴を買ってもらいました。

「やったーっ! お姉ちゃんとお揃ーい♪」

日菜は無邪気に笑っていましたが、私は心の底から笑うことができませんでした。

日菜は何も悪くない…なのに、私はその笑顔を見ることが辛いと‥そのとき初めて感じたのでした。


そして一つの事件が起きました。



37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:39:06.02 ID:HDDjVf7S0

その日の学校は5限目が体育で、私たちのクラスは跳び箱の授業を受けていました。

日菜は8段の跳び箱も悠々と跳んでいました。
(8段というのは、私たちの小学校の跳び箱では一番高いものでした。)

私たちのクラスに8段を跳べる生徒は他にいなかったため、日菜はクラスメイトからの称賛を独り占めしていました。

みんな口々に、「どうやったら跳べるのー?」と日菜に質問していましたが、日菜は「んー‥ダダダーっていって、シュバっ!ってとぶだけだよーっ♪」といった具合だったので、結局訊いた誰もが首を傾げていたのでした。


私は運動はそれなりでしたが、運動が苦手な子にとって、跳び箱は出来不出来が目に見えてしまうので、嫌がる子も多くいました。

私たちの友達のマミコちゃんもそんな一人でした。

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:42:46.30 ID:HDDjVf7S0

マミコちゃんは引っ込み思案で、以前は一人でいることが多いような子でした。

しかし、日菜はどんな子にも見境なく声をかけるので、初めはおどおどしていたマミコちゃんとも次第に仲良くなっていきました。

マミコちゃんは「引っ込み思案な自分を変えたかったから…だからこんな自分に話しかけてきてもらえて…とても嬉しかった」と、そう話していました。


39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 20:48:51.60 ID:HDDjVf7S0

マミコちゃんは最初に並ぶ、一番端の4段の列に並んでいました。

跳べた人は徐々に高い列に移っていく仕組みで、最初の列は次第に短くなり、最後にはマミコちゃんだけが残っていました。

先生が付きっきりで指導にあたっていましたが、なかなか上手くは跳べないようでした。

そんなとき、跳び箱に飽きてその辺をぶらぶらしていた日菜が、マミコちゃんのもとへと駆け寄っていきました。

(あの子‥また余計なことを言わなければいいけれど……)

日菜は、自分が努力しなくても大抵のことは出来てしまうからか、“それが出来ない人”に対して少し無神経なところがありました。


その日はそれが最後の授業だったので、後はホームルームを残すのみでした。


40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 21:07:17.60 ID:HDDjVf7S0

ホームルームが終わって、先生の手伝いで職員室に届け物をしたあと、2階の渡り廊下からなんとなく校庭の方を眺めていると、マミコちゃんが何やら急いで駆けて行く様子が見えました。

マミコちゃんは校門の方ではなく、校庭の隅にある雑木林に向かっていくようでした。(何かただならぬ雰囲気だったので、少し気になっていました。)

教室に戻ると、日菜はいつも遊んでいる男の子たちと戯れていました。
少し声を掛けずらかったので、まあいいかと私だけで先に帰ることにしました。

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 03:04:24.66 ID:YrwqVrym0

家に帰って宿題を済ませたあとは、楽しみにしていたお気に入りの動物番組を観ていた。

時刻は夕方の6時になろうという頃だった。


「紗夜〜」

お母さんに呼ばれた。

「何〜〜?」

「日菜がまだ帰ってこないんだけど、あなた何か聞いてない〜?」

「知らな〜い。帰るときいつもの子たちと話してたから、そのまま遊んでるんじゃな〜い?」

帰り際に見た日菜はいつもと変わった様子もなかったので、どこかで道草でも食っているんだろうと思っていた。


しかしその夜、日菜は真っ暗になっても家に帰ってこなかった。


42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 03:07:09.42 ID:YrwqVrym0

お母さんが学校に電話したが、学校にはもう残っていないという。

お父さんが仕事から帰ってきたので、一緒に探しにいこうという話しになっていた。


紗夜「お母さんっ! 私も‥っ」


お母さん「ダメよ紗夜。外はもう暗いから、お家でお留守番しててね?」

「そうだ…それともし、わたしたちが居ない間に誰かから家に電話があったら、すぐにわたしの携帯に連絡して。お願いね?」

そう言ってお父さんと一緒に家を出た。


43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 03:28:38.87 ID:YrwqVrym0

お母さんたちが家を出てから20分ほど経った頃、家に一本の電話がかかってきた。

いつも日菜と一緒に遊んでいる男の子のお母さんからだった。

学校から連絡が回ってきて、子どもに話を聞いてみると、放課後学校で何かを捜している日菜を見かけたのだそうだ。

(日菜は学校で何かをなくした? でもあの子にはよくあることだし…よほど大事なものかしら?)

(今日私が見ていた限りでは、日菜に変わったところはなかった…。じゃあ気付いたのは放課後…? もしかして日菜が無くしたものって…!!)

跳び箱の授業でのこと

放課後のマミコちゃんの気になる行動

そして放課後に無くしたと気付くもの

私の中で全てがつながった


「もう学校にはいないのだとしたら‥きっと“あの場所”だわっ‥!!」
“それ”を無くしたのだとしたら、きっと日菜は酷く落ち込むだろう。
そして日菜には、落ち込んだときよく行く場所があった。

私はお母さんとの約束も忘れて家を飛び出していた。


44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 03:37:11.87 ID:YrwqVrym0

ことの顛末はもうご存知のことと思います。
日菜は無事見つかり、その後靴も帰ってきたのでした。

まったく今思い返しても人騒がせな話ですっ‥

まあ、無事で何よりでした‥。


45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 03:39:50.47 ID:YrwqVrym0



……ただ、この二つの出来事はある意味きっかけになったのかもしれません。

この頃から、私の中で日菜を見る目というのが、変わっていったのだと思います。





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