島村卯月「マーキング」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/10(水) 05:04:12.13 ID:QDZTZ2910
プロデューサーさんはいつもと変わらないトーンで話している様ですけど、美穂ちゃんは違いました。


声を弾ませて、如何にも楽しそうな感じだといえました。


その声を聞けば……今の美穂ちゃんがどんな表情をしているかも、容易に察せられます。


きっと、嬉しそうに微笑んで……幸せそうな顔をしているのでしょう。


そして、それを思うと……何故だか、私は事務室に入るのが躊躇われました。


二人の楽しい会話を遮るかの様に私が乱入し、邪魔してしまうのは悪い気がしたからでした。


「……今日は、ちょっと……タイミングが、悪かったかな」


少しだけ苦笑して、私はそう言いました。


私もプロデューサーさんと話がしたかったけど……今の雰囲気を壊すのは、良くないですよね。


「うん、そうだね……だから……」


51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/10(水) 05:04:53.55 ID:QDZTZ2910






「今は……そう。我慢して……帰ろう」
『何で、我慢なんてしなくちゃいけないんですか?』






52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/10(水) 05:07:29.90 ID:QDZTZ2910
とりあえず、短いですがここまで

ようやくGWが終わったので、暇ができてきたから更新できる様になってきました

これからは更新頻度を上げていけたらいいな……

それでは、続きはまた……書き溜めてから投下します

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 06:13:42.84 ID:RQouNQjf0
手間が掛からないくらいに成長した長女が。
実は一番寂しい思いをしているんやな。
ままならんなあ
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 07:48:07.42 ID:0zqN+jrTo
卯月は我慢しすぎて闇に飲まれてしまうのか...
今回は救われるのか、それとも深みに入っちゃうのか期待
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 08:08:26.61 ID:MaJpKG98o
卯月は抱え込むタイプだよな、そして闇が深くなると
CuのPは複数のアイドルを担当するのか…次女が一番危険かもあの2人+CuとCo系アイドルと仕事するし
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/10(水) 10:22:46.56 ID:+9U35XfqO
[sage]
続き待ってるよ
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 11:51:23.23 ID:o5dXhMpJ0

別所でも見たけどこの[sage]はネタなの?
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 15:01:41.59 ID:+9U35XfqO
書き込み始めてでした
ごめんなさい
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:55:44.15 ID:ztO+xuwz0
「私は大した用事でも無いですし……また今度でも大丈夫ですから」
『今日一日、一緒にいたはずの美穂ちゃんが……何で、私の邪魔をするんですか?』


私はそう呟くと、ここから離れる事を強く意識して、来た道を引き返していく。


ふらふらとして足取りが重く、中々前にへと勧めない。


けど、それでも……私は外にへと向かって歩いていきました。


「美穂ちゃんだって……まだデビューしたばかりで……不安も多いですから、仕方ないですね」
『仕方がない? そんな事ぐらいで、私が我慢する理由にはなりませんよ』


「私はこれまで、プロデューサーさんを独り占めしてきたんですから……ここは、譲らないと」
『独り占めして、何が悪いんですか?』


「もう、あの人は……私だけの、プロデューサーさんじゃ無いですし」
『違うっ! あの人は……プロデューサーさんは、私だけの、プロデューサーなんですっ!』


足を踏み出す度に、頭痛がズキズキと響き渡る。


あまりの痛さに、私は頭を抱え込みました。


60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:57:08.58 ID:ztO+xuwz0
私としては……早くここから出て、帰ってしまいたかった。


けど、そんな簡単な事なのに、できないでいる。


それをする事を、心が拒絶しているのでした。


私の心は……今からでも事務室にへと入り、二人の会話を邪魔しよう……と、そう考えているのです。


「だ、駄目……駄目、ですから……」


私は首を左右に振って、その考えを振り払いました。


今日は、この場は美穂ちゃんに譲ると決めたのですから。


別に、プロデューサーさんと話す事ぐらい、いつだってできる事なんです。


だからこそ、私は身を引こうと……その歩みを進めていく。


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:57:42.02 ID:ztO+xuwz0
そうして、私は長い時間を掛けて、事務所の外にへと出ました。


外に出ると、私は一息吐いてから、振り返って上を見上げます。


私の視線の先……ちょうどそこは、事務室のある場所でした。


まだ煌々と明かりが灯っていて、それが中にまだ、人が残っている事を知らせている。


まだ、あの二人は……楽しく、会話をしているでしょうか。


数十秒程、私はそこを見続けた後、名残を惜しむ様に視線を外しました。


それからは振り返る事無く、自分の家にへと向けて、真っ直ぐに帰っていきました。


明日こそ、プロデューサーさんと会話できる事を信じながら……。


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 19:42:18.85 ID:3tDOcr8h0
一旦乙
卯月がOプロデューサーと会話出来ると信じて……
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 06:13:15.62 ID:+BjxyteV0



翌日。


この日の私は、事務所でレッスンの予定でした。


なので、私は学校が終わるなり、急いで荷物を纏めて事務所にへと向かいました。


「今日こそは、プロデューサーさんと話せるといいな」


その最中、私は軽くそんな事を呟きます。


レッスンの為に事務所に向かっているのに、私の気持ちはその事でいっぱいでした。


本当なら、昨日の内に果たされるはずだった私の目的。


だからこそ、自然と気持ちも逸ってか、進むスピードは徐々に上がっていく。


その為、私は普段よりも早く、事務所にへと辿り着きました。


64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 06:14:37.84 ID:+BjxyteV0
「まだ時間は……余裕があるから、大丈夫かな」


腕時計を見て、現在時刻を確認します。


早く着いた事で、まだレッスンの始まる時間まで、大分余裕がありました。


プロデューサーさんと話す時間ぐらいなら、十分といえる時間でした。


「ふふっ、どんな事を話そう」


まずは、昨日の仕事の事でも話そう……そんな風に考えつつ、期待で胸を膨らませる。


そして、私は止めていた歩みを進めて、事務所にへと入ろうとしました。


けど、その時でした。


「ん? あれ?」


私が事務所に入るよりも先に、入り口の扉が開き、中から人が出てきました。


その人は私を見るなり、怪訝そうな表情をしてから、そんな声を上げました。


「お、お疲れ様です、プロデューサーさん」


私はその人……プロデューサーさんに向けて、そう挨拶をしました。


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 06:15:48.73 ID:+BjxyteV0
こんな所で会えるとは思って無かったから、少しだけ、私の心は動揺気味になっています。


「うん、卯月もお疲れさん。けど、どうしたんだ? 今日はいつもより、来るのが早いな」


「あっ、はい。今日は、学校がいつもより早く終わりましたので、それだからです」


「あぁ、そうだったのか。それでなのか」


そう言いながら、プロデューサーさんはうんうんと頷き、私の言葉に納得していました。


でも、私がプロデューサーさんに言ったのは、嘘の言葉です。


学校が終わった時間は、普段と変わらない時間でしたから。


早くプロデューサーさんに会いたくて、急いで来た……という事実は、私の胸の中に秘めておきました。


「卯月は今からレッスンだったよな。頑張れよ」


「はいっ、頑張ります!」


プロデューサーさんからの言葉に、私は笑顔を見せてそう受け答えました。


プロデューサーさんの言葉は、私の活力であり、道標なのですから。


だから、この人からそう言って貰えると、私はいつも以上に頑張れるんです。


66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 06:16:35.12 ID:+BjxyteV0
「そ、それで、その……あれ?」


会話の波が途切れた所で、私はそこから話題を変えよう……そう思って、プロデューサーさんに切り出そうとしました。


けど、その時……私は、ある事に気付きました。


プロデューサーさんの姿を落ち着いて良く見てみると、その手には、営業用の鞄が握られていました。


「プロデューサーさん……今から、どこかに出掛けるんですか?」


「ん? まぁな」


持っていた鞄を掲げる様に私に見せて、プロデューサーさんはそう答えました。


「前から検討していた企画案が通ってな。これからテレビ局で、その打ち合わせがあるんだ」


「そ、そうなんですか。大変ですね」


「いや、そうでもないさ。俺としては、嬉しい限りだよ。自分で企画立案しただけにな」


そう言いながら、プロデューサーさんは私に嬉しそうな笑顔を見せました。


屈託の無い、幸せそうなその表情。


そんな表情をされると、私まで嬉しくなってきました。


「なら、おめでとうございます」


「うん、ありがとうな」


「それで……その企画って、どんな企画なんですか?」


「あぁ、それはだな……」


67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 06:17:09.01 ID:+BjxyteV0


「響子の、ソロでの番組企画なんだ」


68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 06:18:41.24 ID:+BjxyteV0
「響子ちゃん……の、ソロでの企画……ですか?」


「響子が得意な家事をメインに置いてな。これが成功すれば、初のレギュラー番組になりそうだ」


嬉々として語るプロデューサーさん。それに対し、私の胸中は暗雲が立ち込めてきました。


私だって、嬉しくない訳ではありません。


同じアイドルの……同じユニットの仲間が活躍できるのですから。


でも……それとは裏腹に、複雑な心境なのでした。


企画がもし、軌道に乗った場合……今よりももっと、プロデューサーさんと会えなくなる。


そんな予感が……私の脳裏にふと、よぎったのです。


「きっと……響子ちゃんも、喜ぶでしょうね」
『喜ぶ? 私はちっとも、そんな気はしないのに?』


「そうだといいけどな。とりあえず、今から響子も伴って、打ち合わせてくるから……こっちは美穂と二人で、頼んだぞ」


「はいっ、任せて下さい」
『そんなの嫌です。わたしはもっと……プロデューサーさんの傍にいたいんです』


私にそう声を掛けると、プロデューサーさんは片手を上げ、行ってくるとばかりに手を振りました。


そんなプロデューサーさんを、私は笑顔を作り、見送ります。


無意識に浮かぶいつもの笑顔では無く、取り繕う様な作った笑顔。


自分の裏で湧き上がるどす黒い感情を知られない為に、必死になって偽ったのでした。


69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 05:28:34.13 ID:IjyzdT9e0
そして私の横を通り抜けて、プロデューサーさんはこの場から離れていく。


けど、その歩みは数歩歩いた所で止まってしまいました。


何かを思い出したかの様に立ち止まり、振り返ってから私にへと視線を向けるのでした。


「そうだ、卯月。一つ、言い忘れてた」


「えっ?」


「実は卯月にも、話しておきたい事があったんだ」


話しておきたい事がある。


具体的な内容にも触れないし、指し示さないその一言。


けど、その一言に……私の心は動かされました。


「今日は無理そうだから……明日にでも、時間を作れないか?」


「は、はい。大丈夫です!」


私は何も考えずに、反射的にそう返事をしていました。


70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 05:29:05.66 ID:IjyzdT9e0
「悪いな。それじゃ、また明日にな」


プロデューサーさんはそう言うと今度こそ、この場から去っていきます。


それを私はさっきみたいに取り繕う様な笑顔では無く、自然な笑顔で見送りました。


こうなったのも、プロデューサーさんの言葉で気分が高まったからでしょう。


どんな内容の事を話すかは分からないけれども、プロデューサーさんと話す機会ができたとばかりに、私は思っていました。


けど、実際はそうではありませんでした。


その内容は私の想像していたものとは、まるで違いました。


だって、あれは……私からすれば、死刑宣告の様なものだったからです。


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 05:37:44.87 ID:IjyzdT9e0
短いけど、今日はここまで

そういえば、総選挙の結果が出ましたね

まゆも頑張ったけど、智絵里も良く頑張った、おめでとう

それではまた、書き溜めたら投下していきます

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 12:02:52.84 ID:ldLXGxRQO
おつ
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 22:19:32.18 ID:DVyio0XaO

誰も悪くないのになぁ…
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/18(木) 05:34:05.32 ID:jhHLY+/s0
「―――ライブ、ツアー……ですか?」


「あぁ、そうだ」


翌日。


プロデューサーさんに話があると言われて、楽しみに待ちわびていた私。


けど、あの人からそう告げられると、私は衝撃を受けました。


「ニュージェネレーションの初となるライブツアーで、国内の五ヶ所を回ってもらう。北の札幌から始まって、福岡、大阪、名古屋……最後に東京だな」


「え、えっと……」


「うちの事務所としても、これ程の規模での企画は初となる快挙だ。流石の人気だと言うべきかな。本当に俺も、担当として鼻が高いよ」


興奮気味のプロデューサーさんは捲し立てる様に、私にそう言いました。


確かに、聞いていればこれが凄い事なのは、私にだって分かります。


開催される都市は、どれも大きな都市ばかり。


そして、大人数が収容できる会場が用意されているそうです。


そんな場所でライブができるだなんて……夢の様にも、思えました。


けど、それよりも……


75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/18(木) 05:35:55.83 ID:jhHLY+/s0
「あ、あの……ちょっと、いいですか?」


「ん? どうしたんだ?」


私が小さく手を挙げながらそう言うと、プロデューサーさんは私に視線を合わせ、そう聞き返しました。


「五ヶ所でのライブ……ともなると、長期的なスケジュールになります……よね?」


「まぁ、そうなるな。短くても……一ヶ月ぐらいの予定にはなるだろうな」


「そ、そうですよね。やっぱり、それぐらいには……なりますよね」


「何か、あるのか? どうしても、外せない用でもあるとか……」


「い、いえ、そういう事ではありません。ただ、一つ……気になる事がありまして……」


「気になる事?」


目を伏せ、俯きながらそう告げる私に、プロデューサーさんは首を傾げつつ、そう言いました。


最初にこの話を聞いた時から、私の脳裏にはある疑念が渦巻いていました。


もしかすると、こうなるのでは……という、確固たる疑念が。


それを私は一呼吸置いた後、プロデューサーさんに向けて、口にしたのでした。


「プロデューサーさんは、今回のツアー……一緒に、着いて回ってくれるんですか?」


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/18(木) 05:36:54.62 ID:jhHLY+/s0
この問い掛けは、私の望みを言っている様なものでした。


美穂ちゃんや響子ちゃんが入る前、ニュージェネレーションを結成したばかりの頃。


あの頃は必ずといって、プロデューサーさんは私の傍にいてくれました。


不安な私に対して、落ちつける様にと何かと声を掛けてくれました。


それがあったから、私も精一杯やり通せたし、不安も乗り越える事ができたんです。


……でも、最近は美穂ちゃんと響子ちゃんの傍にいて、構う事の多いプロデューサーさん。


だから、今回は……今回ばかりは、そうしてくれると……私は嬉しかったんです。


「……」


しかし、私がそれを聞くと、プロデューサーさんは黙ってしまいました。


眉間に皺を寄せて、苦々しい感情を隠さずに、その表情に浮かべている。


そんな顔を見てしまえば、私も察してしまいます。


私の、ほんのささやかな願いが……果たされないという事を。


77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/18(木) 05:39:25.75 ID:jhHLY+/s0
とりあえず、ここまで

亀更新で本当に、申し訳ありません

また書き溜めたら投下します
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/18(木) 10:02:40.30 ID:4pYaLBSHO

楽しみに待ってる
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/18(木) 22:52:22.21 ID:txPEB8q00
卯月…更新楽しみにしてます。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 05:53:25.47 ID:lmMBAEis0
「……悪いが、それは無理そうなんだ」


頭を掻きながら、プロデューサーさんはバツの悪そうに言いました。


「俺も着いて行きたかったが……美穂と響子を放っておく訳にはいかなくてな」


「……はい」


『何で、二人の心配はするのに……私の事は、考えてくれないんですか?』


『私の事は、放っておいても……いいんですか?』


「俺が着いてやれない分は、他の二人のプロデューサーに頼んである。何かあったら、その二人を頼ってくれ」


「……はい」


『他の誰かなんかが、何の役に立つというんですか?』


『私が頼りたいのは、プロデューサーさんなのに……何で、分かってくれないんですか?』


「とはいえ、卯月なら大丈夫だろう。俺なんかがいなくても、いつも通りにやれるな」


「……、は、い」


『……』


プロデューサーさんの言葉を聞く度に、自分のスカートの裾を握る手の力が強まっていきました。


そうして我慢していないと、抑えられなかったからです。


自分の我が儘を貫き通そうと、何かしらをプロデューサーさんに向けて、言ってしまいそうだったから。


81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 05:54:01.51 ID:lmMBAEis0
「そんな訳で、本当に申し訳無いが……今回のライブ、頼んだぞ」


「……はい、頑張ります」


私がそう答えると、プロデューサーさんは安堵した様な表情を浮かべました。


私が理解して、納得してくれたのだと思ったからでしょう。


先程に浮かべていた苦々しさはもう消えていて、表情は晴れ晴れとしていました。


肩の荷が下りた……いえ、重荷でしょうか。


それが無くなって、楽になれた……私には、そんな感じに見て取れました。


そして、話が終わると……プロデューサーさんは直ぐに私の下から、いなくなってしまいました。


何か用事があるとか、そんな事を言っていましたが、その内容は、入ってきませんでした。


私としては……それ所では、ありませんでしたから。


82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/20(土) 05:54:33.12 ID:lmMBAEis0
「どうして……?」
『……何で?』


これまで、私は何度も我慢をしてきました。


あの人に迷惑を掛けては悪いと思って、ずっと耐えてきました。


「どうして……?」
『……何で?』


でも、そうした事で……私が報われた例なんて、一度もありませんでした。


いつも、いつも……私一人が、不安な思いを……寂しい思いを、抱えている。


「どうして……?」
『……何で?』


でも、プロデューサーさんは一向に、私がそんな風に思っているだなんて、気づいてはくれない。


美穂ちゃんや響子ちゃんは、私に気を使って、譲ってはくれない。


「どうして……、」
『……何で、』


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 05:55:01.63 ID:lmMBAEis0






「『私の事は、構ってはくれないんですか?』」






84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 05:55:28.49 ID:lmMBAEis0
あの人にとって、私なんかはどうでもいい存在なんでしょうか。


あの二人がいれば、私はいらない娘なんでしょうか。


私はこんなにも……あの人を、プロデューサーさんの事を必要としているというのに。


「頑張り、ます……」


今まで何度も口にしてきた言葉を、私はそっと呟きました。


とにかく、今の私ができる事は、それしかありませんでしたから。


頑張って、頑張って、頑張って……。


……その先、私は……どうすればいいのかな。


明確な答えや出口を見出せないまま、私は彷徨い続ける。


いつか自分の下に、報われる時が来るのを信じて、求めてもがいていくのでした。


85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 05:56:58.00 ID:lmMBAEis0
とりあえず、ここまで

また書き溜めてから投下します

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 06:20:11.09 ID:rECu7E6M0
ついに心と体(の意見)がつながったか……未来が悲しみの終わる場所と信じて
なにはともあれ一旦乙
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:15:39.01 ID:WZZUaiy20



「―――月、ねぇ、卯月」


「……えっ?」


とある某所のレッスンスタジオ内。


ライブツアーが始まり、既に二ヶ所での公演を終えた頃の事。


私達はダンスの振り付けの確認を行う為、そこを利用していました。


その休憩中、横からそう声を掛けられた私は、その方向に向けて視線を送りました。


「大丈夫? 何だか、ボーっとしてたみたいだけど」


その視線の先には、ニュージェネレーションでのユニットメンバー、凛ちゃんの顔がありました。


凛ちゃんは若干の不安そうな表情で、私を心配する様に見つめていました。


物思いにふけっていた、私を見兼ねてでの事でしょうか。


88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:16:33.48 ID:WZZUaiy20
「あっ、は、はい。大丈夫ですよ、凛ちゃん。何でもありません」


「……そう。それなら……いいけど」


私がそう言うと、凛ちゃんは納得したかの様にそう返してきました。


けど、本当は納得していないというのは、表情を見れば分かります。


不安が残って曇ったままで、晴れてはいませんでしたから。


「でも、無理はしないようにね。最近の卯月……ちょっと危ないから」


「危ない……ですか?」


「うん。偶にだけど、今みたいに上の空な事が多いし。それに、思い詰めた表情をしてる時もあるからさ」


少し言いにくそうに、表情を変えないまま凛ちゃんはそう言いました。


私はその言葉を……肯定も否定もできずに、黙って受け取るしかできませんでした。


だって、凛ちゃんが言った事に……間違いなんて、ありませんから。


89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:17:12.00 ID:WZZUaiy20
「だから、ね。気を付けた方がいいよ」


「はい、分かりました。これからは……気を付けますね」


凛ちゃんの注意を促す言葉に、私は今度こそ不安を残さない様にと、精一杯の笑顔でそう言いました、


それを見て安心したからか、凛ちゃんは良かったとばかりにちょっとだけ頷き、固かった表情を緩めました。


これで、一先ずは大丈夫でしょう……私はそう思って、話題を変えようと話を切り出しました。


「そういえば……未央ちゃんは? 未央ちゃんの姿が見えませんけど、どこに行ったんでしょう?」


わざとらしく辺りを見渡しつつ、私はそう言いました。


先程までは一緒にいたはずの、同じくメンバーである未央ちゃん。


けど、その姿は今、この周辺には見当たりません。


私が考え事をしている内に、どこかに消えてしまった様でした。


90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:18:15.75 ID:WZZUaiy20
「未央なら……さっき、『ちょっと抜けるね』って言い残して、出掛けたっきり戻ってきてないよ」


「あっ、そうなんですね」


「多分、お手洗いとか……そんな所だと思うけど」


未央ちゃんの行き先を予測してでの、凛ちゃんの言葉。


確かに、それ以外には思い当たるものはありませんでした。


今は休憩中であり、あともう少しもすれば、レッスンが再開される。


それなのに、どこか遠くに行ってしまったとかは考えられません。


「きっと、そんな感じでしょうね」


なので、私は凛ちゃんの言葉に同意する様に、そう言いました。


それから別の話題を出そうとして、口を開こうとした……その時でした。


私の視界の外の方から、ガチャという物音が聞こえてきました。


それが何の音なのかは、考えるまでもなく分かります。


誰かがこの部屋に入ってきた音……きっと、未央ちゃんが帰ってきたんだろうと、私はそう思いました。


その考えに思い至った私は、音のした方向にへと、視線を向けました。


91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:18:48.49 ID:WZZUaiy20
「……あれ?」


けど、その先に待っていたのは、予想していたものとは違った結果でした。


出入り口の前に立つのは、未央ちゃんとは似ても似つかない体格の背の高い男性。


「二人共、お疲れさん」


その人―――凛ちゃんのプロデューサーさんは私達に近づきながら、手を振ってそう言うのでした。


近づいて来るにつれて、その体に染み付いている煙草の臭いが漂ってきました。


凛ちゃんのプロデューサーさんはかなりの喫煙家みたいですので、そればかりは仕方がありませんでした。


「プロデューサー? 何で、ここに?」


そして凛ちゃんにとっても、それは予期せぬ来訪だったらしく、驚いた様にそう言いました。


「確か今、打ち合わせの時間じゃなかった? こんな所にいて、大丈夫なの?」


「いや、打ち合わせの方が早く終わってな。それで、様子を見に来たって訳だ」


「そうだったんだ。でも、わざわざ別に……それだからって、来なくても良かったのに」


凛ちゃんはそんな風に言っていますが、本当は来てくれた事を嬉しく思っているのでした。


ちょっぴり顔を赤らめて、照れた素振りをしていれば、それぐらいは簡単に読み取れます。


92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:19:34.08 ID:WZZUaiy20
「で、こっちの方はどうなんだ? うまくやれてるか?」


「うん、今は休憩中だけど……何とか問題無くやれてる。そうだよね、卯月」


「え? は、はい。そうですね」


同意を求められたので、私は同調する様にそう答えました。


そうした言葉を聞いて、凛ちゃんのプロデューサーさんはうんうんと二度も頷きました。


「それなら安心だな。また今週末も、前の二回と同様に頼んだぞ」


「うん、分かってる。けど、その前に……」


「ん?」


そう言ってから、凛ちゃんは自分とプロデューサーさんとの距離をグッと詰めて接近しました。


それから凛ちゃんのプロデューサーさんの首元―――ネクタイにへと手を伸ばす。


曲がっていたそれをピンと伸ばして、真っ直ぐに正すのでした。


「ネクタイ、曲がってたから。ちゃんとしてよね、もう」


「おっと、すまんな。ありがとう」


93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:20:55.10 ID:WZZUaiy20
凛ちゃんからのしっかりしてという苦言の言葉。


それを凛ちゃんのプロデューサーさんは苦笑しつつ、頭を掻いてそう返しました。


普通なら、この光景を見れば微笑ましくも思えてしまう。


特に二人の知り合いであれば、余計にそう思えるでしょう。


けど、私は……


「そ、そういえば、未央ちゃんの姿を見てませんか?」


「えっ? 本田さんだって?」


ついさっき、凛ちゃんにも投げ掛けたこの質問。


唐突に、脈絡も無く、二人の間に割って入る様にして、私はそう尋ねました。


「どうだったかな……」と小さく呟いた後、凛ちゃんのプロデューサーさんは思い返そうとする。


94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 22:21:23.74 ID:WZZUaiy20
けれども、心当たりは無かったのか、分からないという風に首を横にへと振りました。


「悪いけど見てないな。何か、あったの?」


「い、いえ。休憩に入ってからどこかに行ったきりで戻ってきませんので、プロデューサーさんは会っていないかなと思いまして……」


「あぁ、そうだったのか」


「もう少しでレッスンも再開されますし、私、心配で……」


「なるほど。そういう事なら、俺が今から探してくるけど?」


「いいの? プロデューサー」


「こんな時ぐらい、任せとけ」


凛ちゃんのプロデューサーさんは右の二の腕で力こぶを作り、私達に向けて頼りがいがある所をアピールしようとしました。


けど、それを見た凛ちゃんの反応は冷ややかなもので……


「じゃあ、行ってらっしゃい」


と、早く行ってとばかりにそう告げるのでした。


95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 06:15:29.16 ID:BBmYIb/t0



来たばかりだというのに、早々に去る事になってしまった凛ちゃんのプロデューサーさん。


その後ろ姿を、私と凛ちゃんは並んで見送るのでした。


「それにしても……凛ちゃんとプロデューサーさんって、仲が良いんですね」


「え、えっ?」


いなくなったタイミングを見計らって、私はそんな質問を凛ちゃんに向けて投げ掛ける。


投げ掛けられた当の本人は、「何を言ってるの?」という表情をその顔に浮かべていました。


「さっきもネクタイを直したりしてましたし、普段からあんな感じなんですか?」


「べ、別に……そんな事は無いよ」


「そうですか? その割には、手馴れてましたけど」


「そ、その、偶に……そう、偶にあんな風にだらしが無いから、仕方なく……」


出ていったばかりの扉を見つめ、右手で髪をいじりながら、凛ちゃんはそう言いました。


まるで迷惑な感じに凛ちゃんは言いますけど、それが満更でも無い事は、良く分かります。


だって、表情が違いますから。


本当に嫌ならば、こんな表情―――嬉しそうな表情はしないはずです。


そして、そんな所を公然と見せつけられでもしたら……


96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 06:16:02.66 ID:BBmYIb/t0






私でも、嫉妬してしまいます。





97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 06:17:12.63 ID:BBmYIb/t0
「だから、ね。本当にしっかりして欲しい……というか、何というか……」


「ふふっ、大変ですね、凛ちゃんも」


切れの悪い凛ちゃんの言葉に、私はそう言って返しました。


心の奥底では嫉妬の炎が燃え上がっている事を悟られない様に、努めて笑顔のままで。


「もし、プロデューサーが何か迷惑を掛ける様なら……私に言ってね。私からきつく言っておくからさ」


『凛ちゃんはプロデューサーさんの保護者か何かなんだろうか』と、思えてしまうその言葉。


私はそれに対して何かを言う訳でも無く、ただ頷いて答えるのでした。


そして、それから数分が経った後、未央ちゃんを引き連れた凛ちゃんのプロデューサーさんが戻ってきた所で、レッスンは再開されました。


98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 06:22:21.12 ID:BBmYIb/t0
短いですがここまで

中々更新速度が上がらない上に、今日から一週間程、海外研修が始まるというジレンマ

という事なので、しばらく海外にいますので、更新は帰国してからします

一週間以上経っても更新されなかったら、死んだとでも思ってください

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 20:58:46.49 ID:YsY6xJy6O
乙。どんな未開の地に行くんだよ…
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 01:04:14.50 ID:Oxw99VoL0
乙。無事を祈ってる
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 11:46:36.53 ID:h6n3JeX8o
何の印を刻むのか楽しみにしてる
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 19:22:11.98 ID:Im+6Xg/jo

生きてくれ

卯月のコレも一種の長女シンドロームだったんだろうか
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:42:21.10 ID:MjO1zGnk0
「はぁ……」


レッスン終了後、ホテルの自室にへと戻った私はため息を吐きつつ、備え付けられたベッドの上にへと突っ伏しました。


戻ってきて直ぐの事ですので、着替えなんてしていません。


「今日も、疲れたなぁ……」


そう呟くと、私は仰向けになって部屋の天井を見上げました。


見上げた先には、何かがある訳ではありません。


ましてや、私が最も話したい相手の顔がある訳でも無いのです。


そんな風に考えていると、私の脳裏には昼間にあった一幕の光景が蘇ってきました。


「……羨ましいなぁ」


思わず私はそう口にしていました。


あの休憩中に、凛ちゃんとそのプロデューサーさんとの一連のやり取りを見てしまったせいか、そう思う様になってしまったのです。


「私だって……同じ事をしたいのに……」


けど、願ってもそれは叶わない。


プロデューサーさんは割りと几帳面なのか、そんな所を見かけた試しは無いですし、いない人のネクタイを直すなんて、更に無理ですから。


104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/10(土) 08:43:05.51 ID:MjO1zGnk0
「せめて……お話ぐらいは、したいな」


私が天井に向かってそう吐き捨てた、その時でした。


唐突に、どこからか軽快な音楽の音が鳴り、私の耳にへと届きました。


体を起こさずに、顔だけを音のする方向にへ向けると、部屋に隅に置かれた机の上で、チカチカと私の携帯が光を放っている。


音の発生源はそこから……つまり、着信が入った事を、私に知らせているのでした。


「誰からだろう……」


凛ちゃんか、未央ちゃんでしょうか……そう思ってから私は起き上がり、携帯にへと向かってのそのそと歩いていく。


机の上の携帯を手に取り、煌々と輝くディスプレイに表示された名前を見た時、私はカッと目を見開きました。


「プロデューサーさんだ!」


思わず大声を上げてしまった私。けれども、それ程に嬉しかったんです。


プロデューサーさんも美穂ちゃんや響子ちゃんの付き添い、更に自分の仕事もあって忙しいというのにも関わらず、こうして電話を掛けてくれたから。


そして私は慌てながらも電話が切れてしまわない様に、急いで電話に出るのでした。


「もしもしっ! 卯月ですっ!」


『おぉ、卯月。久しぶりだが、随分と元気だな』


携帯越しに聞こえてくる、私が待ち望んでいた声音。


他の誰でも無く、私のプロデューサーさんの声でした。


それを聞くだけで、胸の鼓動が高鳴り、心はときめいてしまう。


さっきまでの憂鬱な気持ちなんて、いつの間にかどこかにへと吹っ飛んでいました。


105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:43:35.75 ID:MjO1zGnk0
「はいっ! 島村卯月はいつも元気です」


『うん、それなら良かったよ。実は少し、心配だったからな』


「心配、ですか?」


『あぁ、渋谷さんのプロデューサーから卯月の調子が悪そうだと聞いていたからな。けど、この感じだと、大丈夫そうだな』


調子が悪い……私は凛ちゃんのプロデューサーさんに、そんな事は言った覚えは無い。


という事は、感付かれたかもしくは、凛ちゃんが私の様子を危惧して、伝えたのでしょう。


余計な真似を……なんて、そんな事は思ったりはしません。


寧ろ、ナイスな判断だと思います。


それがあったからこそ、こうしてプロデューサーさんが電話を掛けてくれたのだから。


『それで、どうだ? ライブの方は順調か?』


「はい。凛ちゃんや未央ちゃん……それに、スタッフの皆さんのお陰で、何とか頑張れてます」


『そうか……しかし、ごめんな』


「えっ?」


『本来なら俺も卯月の傍にいてフォローすべきなんだろうが、一緒にいれなくて、本当にすまない』


「い、いえ、仕方がありませんから。プロデューサーさんも、お仕事でお忙しいですし……」


目の前にはいないプロデューサーさんへそうでは無いのだと、私は空いている手を振りながらそう言いました。


「でも……こうして電話してくれたのは、嬉しかったです。私もちょっぴり、不安だったので……プロデューサーさんの声を聞けて、会話ができて、それも解消されました」


『……ふっ、そんな大袈裟な』


「そんな事はありませんよ、本当の事です」


鼻で笑うプロデューサーさんに、私はそう言って返しました。


プロデューサーさんは分かってないけど、私にとって、あなたはそれぐらいに特別な人なんですよ。


少し話しただけで不安が消し飛んでしまう様な、そんな特別な人。


106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:46:42.17 ID:MjO1zGnk0
お久しぶりです、何とか帰ってこれました

一週間程、上海に研修に行ってましたが、帰国後に高熱を出して今まで更新できませんでした

またこれから再開していこうと思いますが、その前に明日は特別な日なので

何か別のものを考えれたらなと思っています

実現できたのなら、明日にでも投下すると思います

それでは、短いですが今から出勤なので今回はここまでで

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 10:38:36.31 ID:+5U+DP5C0
一旦乙
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 11:37:29.20 ID:8HWoGq3fo
おつ、無理せず自分の体調に合わせて早く書け(無茶苦茶)
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 08:45:33.57 ID:g/h+z7u80
「所で、プロデューサーさんの方はどうですか? 美穂ちゃんや響子ちゃんとしっかりやれてますか?」


『あぁ、その辺は大丈夫だ。二人共しっかりとしてるから、心配しなくても良さそうなぐらいだ』


「……なら、良かったです」


『それなら……早く二人から離れて、私の傍に来て下さい』


『私はポンコツで、しっかりなんてしてませんから、心配して下さい』


プロデューサーさんの言葉に反応して、心の奥底からそんな声が込み上げてくる。


私はそれをグッと我慢して、口に出さない様に、また奥底にへと呑み込む。


本当は言いたいけど、言ってはダメなんです。


我が儘な娘だと思われて、敬遠されるのは嫌だから。


『二人も卯月に会えなくて寂しい……って、言ってたぞ。渋谷さんといい、本田さんといい、卯月は友人に恵まれてるな』


「えぇ、本当にその通りだと思います。私も、早く帰って……二人と、お話したいです」


『あの二人なんかより、もっとプロデューサーさんとお話がしたい』


『私が会えなくて寂しいのは、プロデューサーさんだけ』


『それ以外の有象無象なんて、どうだっていいんです』


一瞬の頭痛の後、目の前の景色が歪んだ様に見えました。


心の奥底で声が響く時はいつも頭痛だけが響いたけれども、この時には目眩もしました。


時に揺れる様な、ぐにゃりとした曲がりくねった世界。


110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 08:46:20.67 ID:g/h+z7u80
時に揺れる様な、ぐにゃりとした曲がりくねった世界。


目が回る様な光景に、気持ち悪くなりそうだった……けど、これにも私は何とか頑張って耐えました。


こんな事なんかで、せっかくのプロデューサーさんとの会話を、止めたくはない。


「だから、今の話……プロデューサーさんから、二人に伝えてくれませんか……?」


『ん? 別にいいが……でも、それだったら直接……』


「私からよりも、プロデューサーさんが伝えてくれた方が、二人に伝わりますから」


『あ、あぁ、そうか。なら、分かったよ』


「はい、よろしく、お願いしますね」


困った様にそう言うプロデューサーさんですが、今頃は、怪訝そうな表情をしているでしょう。


私が言った言葉の意味を、把握できないで、納得していないから。


私が美穂ちゃんと響子ちゃん、二人に直接電話をするのは別に構いません。


けど、今の私が二人と会話をしたら、何を言ってしまうか、分からない。


伝える事を伝えられずに、私の悪意を撒くだけ撒き散らして、それで終わるだけ。


それでしたら、プロデューサーさんを介した方が、問題は起きません。


頭の回らない今の状態でも、それだけは分かって、理解はしています。


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:00:37.73 ID:Plqn2Zsn0
だからこそ、こういった話は直ぐに切りにしてしまわないと。


私にとっては、さっきのは話の切り出しでしかありません。


二人の話を聞くよりも、プロデューサーさんには、私の話を聞いて欲しい。


ここしばらくは話せていなかったから、別に、いいよね。


誤って何かを言ってしまう前に、早く、話題を変えてしまいましょう。


『まぁ、二人にはそう伝えておく事にして……引き続き、卯月は卯月で頑張ってくれ』


「あっ、はい。大丈夫です。頑張ります」


『うん、頼むな。……さて、それじゃあ伝える事は伝えたから、そろそろ切るぞ』


『「……えっ?」』


プロデューサーさんが最後に放った一言。


何を言ったのかが分からず、私は咄嗟に、そう聞き返していました。


『いや、そろそろ切らないと、明日に響くからな』


正直、最初は私の聞き間違いかと思いました。


112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:01:24.90 ID:Plqn2Zsn0
けれども、そうでは無い。違いました。


話題が途切れた所で、別の話を挟もうとした矢先……プロデューサーさんはそう宣言してきたのでした。


私の言葉も聞かず、私の了承も得ずに、一方的に。


『あまり遅くなると、卯月に迷惑が掛かるしな』


『遅くなる』と、言われて私は反射的に時計を見ました。


まだ時刻は夜の九時を指す前。全然と遅くは無い時間帯。


それなのに、電話を切ろうとするなんて、あんまりじゃないですか。


『レッスンとかで疲れていると思うし、今日はもう、ゆっくりと休んでくれ』


「あ、あの……」


だから、ちょっと待って欲しい。まだ終わりにはして欲しくは無い。


まだ私は何も伝えられてはいない。


今日起きた事や昨日の事、それからライブでの詳しい話。


私がどう感じて、どう考えて、どう耐えて、どんな風に頑張ったのか。


プロデューサーさんに聞いて欲しい事は、幾らでもある。


だから、だから、だから……、


113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:02:29.94 ID:Plqn2Zsn0
『それじゃ、明日も頼ん……』


『「待って下さいっ!」』


プロデューサーさんが私との会話を締め括ろうとして何かを言いかけた時。


私は叫ぶ様にしてそう言って、プロデューサーさんの言葉を遮りました。


『う、卯月……?』


電話越しからでも分かる、プロデューサーさんの困惑する声。


驚きましたか? びっくりしましたか?


普段の会話の中では、こんな風に大声なんて出した事はありませんからね。


あなたに対して、声を張り上げた事なんて、一度もありませんから。


でも、そうでもしなかったら、電話を切られそうでしたから……ごめんなさい。


『「……まだ、いいですよね?」』


『え、えっ?』


『「もう少し……続けませんか? 私との……お話」』


114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:03:08.59 ID:Plqn2Zsn0
『あ、いや、その……』


『「プロデューサーさんには、聞いて欲しい事がたくさんあるんです。なのに、切ろうとするなんて、あんまりじゃないですか」』


すらすらと、言葉が淀みなく流れる様にして、口から紡がれる。


まるで、今まで遠慮して抑圧していたものが、堰を切って出てくる様に。


私が何かを考える前に、勝手に自由にと口は動いているのでした。


『けど、卯月も疲れてるんじゃ……』


『「私もプロですから、体調管理は万全です。疲れてませんから、大丈夫ですよ」』


『しかし、だな……』


『「それとも、嫌なんですか? 私と、お話をするのは……」』


『べ、別に、そんな事は言ってない……』


『「なら、いいですよね。私との、お話♪ ふふふっ♪」』


『あ、あぁ……』


プロデューサーさんに対して、こんな我が儘を言うのは、初めてでした。


ずっと、ずっと……私は耐えて、忍んで……迷惑を掛けない様にと、何も言わなかった。


でも、私は遂に言ってしまった。


自分の為の、プロデューサーさんにとって得にはならない、そんな我が儘を。


115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:03:42.89 ID:Plqn2Zsn0
『まぁ、でも……あまり長くはならない様に、ほどほどでだからな』


『「はい、分かってます。プロデューサーさん」』


以前の私なら、こんな事を言えば罪悪感を感じ、心の中はあの人に対する申し訳無さでいっぱいになっていたかもしれません。


だけど、今の私の心の中には、そんなものは一切無かった。


いつもの曇天模様の心境では無く、清々しいまでの雲一つ無い晴れ空。


嬉しさと興奮からか、不安や寂しさなんて全てが吹き飛んでいました。


『「あっ……それと、もう一つ……いいですか?」』


『ん? どうしたんだ?』


『「こうして電話をするの……今日だけじゃなくて、明日も、明後日も……して、いいですか?」』


『……メールやSNSじゃ、駄目なのか?』


『「駄目です」』


私の要求に妥協案を提示してきたプロデューサーさんに対して、私ははっきりとそう告げて拒否をしました。


というよりも……そんなもの、駄目に決まってるじゃないですか。


私はそんな、文章での言葉のやり取りを求めたいとは思っていません。


私が求めているのは、プロデューサーさんとの会話、それだけです。


それ以外の妥協案だなんて、受け入れられないですから。


1
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:04:26.56 ID:Plqn2Zsn0
なんて思いながら、私はプロデューサーさんからの返事を待った。


悩んでいるのか、数秒程考え込み、そして……、


『……分かった、分かったよ』


『「……!!」』


『卯月がそこまで言うのなら……俺としては、構わないぞ』


そう言って、プロデューサーさんは私の要求をそのまま受け入れてくれた。


嬉しさのあまり、胸が弾んで、心が躍る。


『「はいっ、ありがとうございますっ!」』


『ただし、あまり遅くはならない様にな。お互い、忙しくはある事だしな』


だけれども、釘を刺す所はしっかりと刺す。


そこは当然といいますか、プロデューサーとしての責務でしょうか。


でも、何だろうと構いません。


プロデューサーさんとお話ができるのなら、それでいいですから。


『「分かりました。それじゃ、まず……今日の事なんですが……」』


私はそう言った後、手始めに今日起きた事を話し始める。


大事な事も、何でもない様な事も含めて全部を。


その結果、伝えたい事が多過ぎて、通話は数分では終わらずに、数時間も掛かる始末でした。


流石に長過ぎて、プロデューサーさんには苦笑されてしまいました……けど、良かったです。


不安や寂しさのほとんどが、プロデューサーさんとの会話で払拭されましたから。


……貴重な、私とプロデューサーさんの、お互いの睡眠時間を削って、ね。


117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 20:12:54.27 ID:AP+RG1lDO
マダカナー
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:48:33.52 ID:IQGbnOTy0
……………


………





「――――まむー、しまむーってば!」


「え、えっ?」


そう声を掛けられながら横から肩を揺すられて、私はハッと目を覚ましました。


「あ、あれ……?」


二度、三度とまばたきをした後、周りを見渡す。


目の前に広がるのは、主に灰色が目立つ、大型ワゴンの殺風景な車内の光景。


それから左側にある、窓の外にへと視線を向けると、体育館の様な大きな建物が見えました。


この建物が何なのかは、前日に調べてはあったので、はっきりと分かります。


ここは今いる都市でもかなりの規模の多目的ホールで、今日の私達が活動する現場でもありました。


「え、えっと……もう、着いたんですか……?」


寝惚け眼をこすりつつ、まだはっきりとしない意識の中で、私はそう言いました。


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:49:37.04 ID:IQGbnOTy0
私が覚えているのは、移動中の高速道路での風景。


そこまでは覚えているけれども、それ以降はさっぱりと記憶に無い。


どうやら、その辺りからここに至るまで、私はずっと眠っていた様でした。


「もうちょっと……掛かると思いましたけど……」


「いやいや……ホテルを出てから、それなりには時間は経ってるからね」


私の言葉に、そう言って反応してくれた声。


その方向に視線を向けると、そこには苦笑した表情の未央ちゃんが待っていました。


「おはよう、しまむー」


「あっ、はい……おはようございます」


おはようと言われたので、私は未央ちゃんに当たらない角度で頭を下げて、おはようと返しました。


出掛ける前にも未央ちゃんとは一度は挨拶は交わしているので、これで二回目の挨拶になります。


120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:50:18.86 ID:IQGbnOTy0
「でもさ、しまむー。本当に良く寝てたね」


「えっ、そ、そうですか? そんなには、寝ていないとは思いますけど……」


「ううん、ぐっすりと熟睡してたよ。どれだけ呼び掛けても、全然反応が無かったから。肩を揺すった所で、ようやく目を覚ましたって感じだね」


「うっ……それは、すみません……」


「けど、どうしたの? それだけぐっすりと眠ってたという事は、昨日は寝れてないとか?」


「え、えっと……」


未央ちゃんからの素朴な疑問による問い掛け。


普通なら答えられるはずの、何でも無い質問。


でも、私はそれを聞いて、何も返す事ができない。


口を一文字に閉じたまま、視線をあちこちにへと泳がせるだけでした。


「あれっ? しまむー?」


返事が無い事を見兼ねて、未央ちゃんは不思議そうに顔を覗かせてくる。


聞いているのに相手が答えないのだから、当然の反応とも言えます。


121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:51:03.65 ID:IQGbnOTy0
「……ははーん、なるほど」


けど、未央ちゃんはしばらくすると何やら得心してか、納得をした表情で私から離れていきました。


「そういう事ね、何となく分かっちゃった」


「分かった……ですか?」


「多分だけど、しまむーの事だから……夜遅くまで長電話をしてたとか? それで寝る時間が短くなったんじゃない?」


「そ、それは、その……ははは」


「……うん、その反応を見ると、図星って所だね」


私の空笑いを見て聞いてか、未央ちゃんはうんうんと首を縦に振ってそう言った。


普通なら『何をやってるの』とか、非難されるかもしれなかった。


仕事を前にして、体調管理を考えない行動をしていれば。


けど、未央ちゃんの口から叱責の言葉は飛んではこない。


ただその表情を緩めて、愉快そうに笑みを浮かべていました。


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:51:36.09 ID:IQGbnOTy0
「まぁ、でも、私も実は同じ事をしてたから、人の事は言えないんだけどね」


「えっ? 未央ちゃんも……ですか?」


「うん、そうだよ。あーちゃんと夜遅くまで話し込んでたんだ」


未央ちゃんの言うあーちゃんとは、同じ事務所のアイドルの高森藍子ちゃんの事です。


ゆったりと落ち着いた雰囲気を持つ女の子で、頻繁にではありませんが、私も何度か会って話した事があります。


「ちょっと相談事があって、ついつい長くなって……という訳」


「な、なるほど、そうだったんですね」


「それで、しまむーは誰と話してたの? みほちー? それともきょーちゃん?」


美穂ちゃんに響子ちゃん。


未央ちゃんが予想で上げた話し相手は、私と同じユニットの二人。


けど、違います。そうではありません。


二日、三日前であれば、話し相手はその二人で合ってます。


私が昨日話していたのは……、


123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:52:16.08 ID:IQGbnOTy0
「えっと、秘密……です」


私は唇の前でバツ印を両手の人差し指で作り、申し訳無さそうにそう言いました。


「えー、何でさ」


私の『秘密』という言葉を耳にして、未央ちゃんは苦笑しつつも苦情の声を上げます。


「別にいいじゃん、教えてくれてもさ」


「だ、駄目です。こればかりは、教えられません」


どんなに懇願されようとも、私は口にするつもりはありません。


昨日の話し相手が、プロデューサーさんだという事を。


それに、少しでも口を割れば、余計な事まで話してしまいそうですから、言わないんです。


例えば、先週にプロデューサーさんから電話を貰って以降、毎日電話を掛けているとか。


「もう、仕方ないなぁ。しまむーがそこまで言うなら、聞かないでおいてあげる」


「う、うん、ありがとう。ごめんね、未央ちゃん」


「でも、あれだからね。長電話のし過ぎで、体調を崩すとかは無しだよ」


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:53:08.05 ID:IQGbnOTy0
「わ、分かってますよ、それぐらい」


未央ちゃんからの追及に、私は反論する様にしてそう言いました。


心配してそう言ってくれているのでしょうけど、大丈夫です。


眠気に関しては言い訳できませんが、体調に関しては問題はありません。すこぶる調子が良いです。


以前は頻繁に起きた頭痛も吐き気も、最近は起こらなくなってますから。


これも、プロデューサーさんと話せる様になったからかな。


不安や寂しさ、ストレスが解消されて、万全の状態になれているのだと思います。


「おーい、二人共」


と、そんな風に考えていると、前の方から私達を呼ぶ声が聞こえてきました。


顔を上げて視線を向けると、そこには未央ちゃんのプロデューサーさんが顔を覗かせていました。


「そろそろ降りてくれると、助かるんだが」


「ごめんごめん。今出るから」


「す、すみません」


私達は謝りながら頭を下げると、自分の荷物を持ち、ワゴン車の外に向かって移動を始める。


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:53:45.94 ID:IQGbnOTy0
「全く、しっかりしてくれよ、未央」


「だから、ごめんって。この後にしっかりと汚名挽回はするからさ」


「汚名は挽回じゃなくて、返上な」


「はいはい、分かってますよ」


通り過ぎようとする未央ちゃんに対して、未央ちゃんのプロデューサーさんはそう言いました。


更に、任せたとばかりに擦れ違い様にポンッと肩を叩き、見送ったのでした。


それを後ろで見つつ、私も降りて出ようとその横を通り抜けようとする。


「卯月ちゃんも、頑張ってくれよ」


すると、未央ちゃんに続き、未央ちゃんのプロデューサーさんは私にもそう言ってくる。


それから同じ様に通り過ぎようとする私に対して、肩を叩こうとその手を挙げました。


振り上げられたその手は、真っ直ぐ、ゆっくりと私の肩に降り立つ。


軽く触れただけですので、当然痛みは無く、ちょっとした衝撃が走るだけ。


でも、何でだろう。


126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:55:10.50 ID:IQGbnOTy0
「……っ!?」


未央ちゃんのプロデューサーさんの手が私の肩に触れた瞬間、ゾクッとした悪寒が背筋を走る。


それと同時に、何故だか腕には鳥肌まで立っていました。


突発的に起きた症状に、私は思わず立ち止まってしまいます。


「……? 卯月ちゃん?」


私が立ち止まったのを不思議に思ってか、未央ちゃんのプロデューサーさんは怪訝そうな表情で私を見ていました。


「えっと、何かあったのかい?」


「な、何でもありません、大丈夫です」


私は首を横に振りながらそう言うと、そそくさとその場から離れていきました。


「……?? 何だったんだろう」


「ん? プロデューサー、どうかしたの?」


「いや、未央と同じ様に卯月ちゃんの肩を叩いたら、何か様子がおかしく……」


「……もしかして、プロデューサー。しまむーにセクハラでもしたんじゃ……」


「いやいや、そんな事してないって!」


後ろから二人のそんな会話が聞こえてきますが、頭には入ってこない。


会話の内容よりも、今の私には何で悪寒なんて走ったのかが気になって仕方がありません。


風邪でも引いたのか……いえ、体調は万全ですから、それとは違います。


なら、一体……何で急にそんな事が?


答えを探ろうと考えてみても、何も思いは浮かばない。


その原因について頭を悩ませつつ、私は会場の中にへと足を踏み入れていくのでした。 


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 06:08:27.37 ID:IQGbnOTy0
最近、全く更新が出来ていなかった件

というのも、先月末で会社を辞めたので、その引継ぎやら何やらで忙しく、更新できませんでした

まぁ、言い訳なんですがね、そんな事

今は以前に比べたら比較的に落ち着いているので、今月中には完結を目指していきます

そういえば、交流会とかやってるみたいですけど、あれってどうなんでしょう

参加できれば、参加してみたいですね(←こんな事ばかりしてるから、更新が遅れる)

それではまた書き溜めたら投下していきます

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/04(火) 06:16:10.38 ID:EEbvIe1l0
お疲れ様です
ゆっくりと待ってるよ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/04(火) 07:55:39.60 ID:+5xKOmWyo

今更だけどこのシリーズ美波以外のアインフェリア、Masque:Radeも李衣菜除いて全員出てるのか
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 03:02:54.72 ID:ciD1yO2bo
お疲れ様です、色々と
交流会の方は7月からの完全新作だそうで
締切14日までなんで、やるなら今から書き始めないと厳しいですかねー
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 07:29:37.36 ID:LQD6ol260
乙、まずは自分の生活を最優先してくれ
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:25:38.43 ID:E9baXYTG0
イベントホールに入ってから数十分ぐらい経った頃。


着替えやメイクといったこの後の仕事に必要な準備を済ませて、凛ちゃんと未央ちゃん、それと私の三人は楽屋で出番が来るの待ってました。


いつもならここでみんなとお話とかをしたりして、緊張を和らげたり、気合を入れたりする場。


でも、私は楽屋にいるのが落ち着かなくて「外の空気を吸ってくる」と、言って二人を置いて一人楽屋から抜け出す。


それから少し離れた場所にある、通路に置かれたベンチの上で休んでいました。


「ねぇ、卯月。本当に大丈夫なの?」


そんな私の下に、同じく楽屋から出てきた凛ちゃんがやって来て、そう声を掛けてきました。


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:26:09.23 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:26:24.60 ID:E9baXYTG0
「えっ? えっと、その……何が、ですか?」


「何って……卯月の体調の事だよ」


『何で分からないの』とばかりに、凛ちゃんは少し強めの口調で訴える。


「先週にも言ったけど、今の卯月はどうも……様子がおかしいからさ」


「そ、そんな事は無いですよ。私は……」


そう、そんな事は無いと思います。それこそ、凛ちゃんの思い過ごしじゃないかと。


体調は万全の状態であって、精神的にも比較的に落ち着いている。


これだけしっかりとしていれば、問題という事は無いはずです。


それなのに、凛ちゃんは何がおかしいのだと言うのでしょうか。


135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:27:04.59 ID:E9baXYTG0
「今の私は、元気が有り余ってますので、大丈夫ですよ」


「……それ、本気で言ってる?」


「えっ?」


私がそう言うと、凛ちゃんは訝しむ様な目で私を見つめてきました。


まるで、私が言っている事が間違いだと告げる様にして。


「私の目にはとてもじゃないけど、卯月が元気そうだなんて見えないよ」


元気そうに見えない? ……何で? 何でそんな事を言うのだろう。


別に、今の私はいつもと変わらない、いつもの島村卯月なのに。


私のどこを……一体、何を見てそう判断をしているんですか。


136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:27:34.08 ID:E9baXYTG0
「移動中はずっと寝てるし、未央のプロデューサーもどこかおかしいって言ってたし……これのどこが元気なの?」


「さ、流石に、疑い過ぎじゃないですか。私は、どこも……」


「……どこも?」


「どこも……おかしくなんて、無い。多分、凛ちゃんの気のせいだと思います」


「……そう、分かった」


凛ちゃんはそう言うと、私の側からゆっくりと離れていく。また楽屋にへと戻る為に。


でも、途中で一度足を止めると、振り返って再び私を見つめる。


「でも、これだけは言わせて。絶対に、無理だけはしないで」


「わ、分かってますよ、それぐらい」


「ううん、分かってない。分かってないから、こうやって言ってるの」


凛ちゃんは首を横に振って、またも私の言葉を否定する。


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:27:35.87 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:27:59.65 ID:E9baXYTG0
「みんな卯月の事を心配してるの。私や私のプロデューサー……未央や未央のプロデューサーだってそう思ってる」


「……」


「それだけは、忘れないでね」


それだけを言うと、今度こそ凛ちゃんは立ち去っていった。


一人残った私は目の前にある殺風景な通路の壁を見つつ、考える。


私は果たして、無理をしているかという事を。


凛ちゃんは私が分かっていない、無理をしているという風に言った。


けど、そんな事は絶対に無い。私はただ、自分にできる事をやっているだけ。


頑張って、頑張って……自分の仕事をこなしているだけに過ぎないんです。


「そうだよ……私は、頑張ってるだけだから」


私は立ち上がると、凛ちゃんと同じ様に楽屋に戻ろうとして歩き出す。


楽屋に戻れば二人からまた何かを言われるかもしれないけど、構いません。


だって、二人が何を言おうと……私の体調は万全なんですから。


139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:28:00.91 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:28:54.29 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:29:34.56 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 14:30:35.78 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:33:06.24 ID:HWaFrKsf0




……………


………





「それでは島村さん。そろそろ始まりますで、準備の方をよろしくお願いします」


「はい、分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします」


開始の報告をする為に声を掛けてきたイベントのスタッフさんに、私はそう言ってから頭を下げました。


それを確認すると、スタッフさんは直ぐに私の下から離れていく。


次は凛ちゃんの下に向かうのか、それとも未央ちゃんの下か。


それとも、自分の持ち場に戻ったのでしょうか……いえ、こんな事を考えても何にもなりませんね。


私は自分の……これからの仕事に向けて、集中するだけですから。


今日のお仕事はファンの皆さんの前で歌ったり踊ったりするライブではありません。


私達、ニュージェネレーションのメンバー一人一人と交流を深める握手会。


ファンの人達と間近で直接触れ合える、又と無い機会です。


144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:33:36.09 ID:HWaFrKsf0
「はぁ……やっぱり、緊張するなぁ」


少しでも緊張を和らげようと、私は二度、三度と深呼吸をして心を落ち着かせる。


これまでに握手会の経験が無い訳ではありません。


アイドルとしてデビューした直後に、ユニットの宣伝とCDの販促でみんなと初めて参加しました。


それ以外にも何度か……今のライブツアー中にもと、経験はそれなりには積んでます。


だけど、それでも……何度も経験を積んでも、不安からの緊張は絶対に起きます。


「……でも、頑張らなくちゃ。うん」


けど、それだからといって、沸き起こる不安に負ける訳にはいきません。


私達に会う為に……せっかく来てくれているファンの皆さんに、不安な表情なんて見せられない。


そんな表情で出迎えられでもしたら、失礼ですからね。アイドルとして失格です。


それにファンの人達の声を直接聞けるのは、こうしたイベントの時でしか無い。


だからこそ、私は最高の笑顔で皆さんを出迎えたいと思います。


そしてそんな風に思っていると、外からの騒めきが強まった様に感じました。


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:34:03.48 ID:HWaFrKsf0
列が進みだしたのかな……と、そう思うのと同時に、私の前に一人目のファンの方が現れる。


見た所は二十代ぐらいの痩せぎす男性で、Tシャツやらリストバンド等と、随所に私達のグッズを身に着けている人でした。


この人も緊張しているのか、表情は強張っていて引き攣っている様に見えました。


「こんにちは! 島村卯月です!」


けど、私が笑顔でそう言うと、強張っていた表情が緩んで自然体に近づく。


あぁ、良かった。私の笑顔を見て緊張が和らいだのだったら、嬉しい限りです。


「う、卯月ちゃん。い、いつも、応援してるよ」


男性はそう言うと、私に向けて右手を差し出しました。


握手会なのですから、握手を求めてくるのは当然の事です。


「はいっ、ありがとうございます!」


私はそれに応えるべく、両手で男性の手を包み込む様にして、がっちりと手を握って握手を交わす。


これまでの私のアイドル人生、又は十七年の人生の中で何十、何百以上としてきた行動。


何でも無い……そう、何でも無い普通の行動。それなのに、


「……っ!?」


男性の手に触れた瞬間、何故だかまた、ゾクッと背筋に悪寒が走る。


会場に入る前、未央ちゃんのプロデューサーさんに触られた時と同じ症状が、再び起きたのです。


また、何で?


不可解な出来事にまた直面してか、私は思わず笑顔を崩してしまう。


146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:34:32.83 ID:HWaFrKsf0
「……? 卯月ちゃん?」


そんな私の様子を不審に思ってか、男性は覗き込む様に私の顔を見てからそう声を掛けてきました。


どうかしたのだろうか……と、怪訝そうに私の顔を見つめる男性。


それを見た時、『しまった』と思った私は直ぐに元の笑顔に戻る、戻そうとして、


「ご、ごめんなさい。何でも、無いんです」


取り繕う様に、弁明を言う様にして私は男性にそう告げた。


「え、えっと、これからも、私達をよろしくお願いしますね」


「あ、あっ、うん。卯月ちゃんも、頑張ってね」


「はいっ、頑張りますっ!」


取り繕う事に成功したのか、はたまた男性が気を遣ってくれたのかは分からない。


けど、これ以上の事を追及する事はしてきませんでした。


「今度のライブ、楽しみにしてるね」と、言って男性は私の下から去っていく。


その後ろ姿を「ありがとうございました」と、言いつつ手を振って、私は見送りました。


147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:35:19.06 ID:HWaFrKsf0
男性が離れて、いなくなったタイミングを見計らって、私は目の前で両手を広げてそれをジッと見つめる。


「……何で、だろう」


何でまた、悪寒なんて走ったのか。


その謎を解こうにも、幾ら考えた所で答えは出てこない。


考えれば考える程、袋小路に迷い込む様なものでした。


そうしている内に、次のファンの人が私の目の前にへと現れる。


私は落としていた視線を元に戻し、気を取り直して笑顔でその人を出迎えました。


「やぁ、卯月ちゃん。今日も頑張ってるね」


さっきの人と違って今度はピンク色の法被を羽織って、頭に鉢巻を巻いた男性。


奇抜な恰好をしていますが、以前にも何度か会った事があって、私も見覚えはありました。


ニュージェネレーション……というよりも、私が出るイベントに毎回の様に現れる、常連さんと言ってもいい人です。


「あっ、はい。今回のイベントも来てくれたんですね。いつもありがとうございます!」


「ははっ、卯月ちゃんの現れる所なら、僕はどこにだって駆けつけるさ」


その言葉通り、本当にどこにだって駆けつけてくれているんです。


このライブツアー中にも最前列で応援している姿を見掛けていますし……こういう人を、ファンの鑑と呼ぶのでしょうか。


私を応援する為だけにそこまでしてくれて……アイドルとして、嬉しく思ってしまいます。


そしてこの人もさっきの男性と同じく、握手を求めて自分の手を私に向けて差し出しました。


148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:35:49.73 ID:HWaFrKsf0
「今度のライブも期待してるから、頑張ってね、卯月ちゃん」


「はいっ! 島村卯月、頑張りますっ!」


私はそう言うと、数分前と同じ行動をまたしてみせる。


両手を前に差し出して、男性の手を包み込む様にして握手を交わす。


今度こそは、何も起こらないだろう……と、そう思いながら。


だけど……


「……っ!?」


また、だ。またも男性に手が触れた途端、背筋に悪寒が走り、全身が寒さに包まれる。


以前にもこの男性とは握手を交わした経験はあった。そしてその時には何も起きなかった。


なのに、それなのに、不可思議な症状が再発してしまった。一体、どうして……?


訳の分からない出来事に、思考が止まってしまいそうでした。


でも、私は戸惑いながらも心配されない様に、表情を崩してしまわない様にと、笑顔だけは維持し続ける。


その甲斐があって、男性は私の異変に気づかないまま「またライブで」と、言って満足気に去っていきました。


そして手が離れ、男性がいなくなれば寒さは消えてしまう。まるで何事も無かった様にすっきりと。


そのままの状態が続いてくれれば良かった。でも、そうはいかなかった。


149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:36:24.99 ID:HWaFrKsf0
「卯月ちゃん」


「ありがとう、卯月ちゃん」


「頑張ってね」


「今日も可愛いよ」


「卯月ちゃんと話せて良かったよ」


何人、何十人と何回も握手を交わす。その度に悪寒が走り、私を蝕んでいった。


しかも、症状はそれだけに止まらなかった。


回数を重ねていく内に、声を聞くだけで頭痛がして、吐き気が込み上げて、症状はますます悪化していく。


正直な所、その場に立っているのもやっとなぐらいでした。できる事なら、一度この場から抜けて休憩を取りたいぐらい。


でも、握手会が始まってからしばらく経ってるし、会場を見渡せばまだまだ大勢のファンの人達が控えている。


それなのに……体調不良なんかで、そんな理由で抜ける事なんてできません。休みたいなんて、我が儘を言っている場合じゃありません。


「今日は、来てくれてありがとうございます」


声が震えそうになるのを何とか抑えて、荒れていく呼吸を必死に落ち着かせて、表情が歪みそうになるのを笑顔の仮面で隠して。


平然であるのを装い、体調が悪い事を悟られない様にと懸命に立ち回りましたが、うまく隠せていたかは分かりません。


自分ではどう見えているかなんて確認しようが無いので当然ですが、それでも何も言われなかったという事は、隠せていたのでしょう。


『私の目にはとてもじゃないけど、卯月が元気そうだなんて見えないよ』


言い表せない辛さが増していく中、イベント前の凛ちゃんが放った言葉を私は思い出す。


気のせいだと、勘違いだろうと言われた時にはそう思った。けど、実際には違った。


今の私の状態から鑑みれば、凛ちゃんの言葉が正しかったのは明らかでした。


151.72 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)