勇者「集え!我らアリアハン高校野球部!」

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515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 21:58:51.52 ID:iDIvFp9mO
ザワザワ

\死んだ?/

\すごいの見ちゃった/

\死んだ?/



実況『大丈夫でしょうか……本日の登録選手は両チームとも9人。交代枠はありません』



一角兎「うぎぎ……」

大烏「大丈夫カァ?」

一角兎「い、痛いピョン……」

大烏「息があるなら大丈夫だな」

一角兎「は、薄情な」



実況『あ、今入った情報によりますと演出みたいです。大丈夫のようですね』



一角兎「ウサォ!?」
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 22:10:07.83 ID:iDIvFp9mO
───

戦士「えい!」スカッ

アンパイア「アアァイッ!」

戦士「どりゃ!」スカッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!チェンッ!」


戦士「あはは……ゴメン。やっぱり三球三振だ」

盗賊「それは計算通りだが……」



大烏「」ピクピク

スライム「」ピクピク



勇者「まさか三回とも外野殺すとは」
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 22:40:36.94 ID:iDIvFp9mO
ザワザワ

\死んだ?/

\あ、起き上がった/

\辛そうすぎて演出に見えない/



商人「やっぱりやりすぎじゃないの!?皆ドン引いてるよ!」

魔法使い「なぜ一度で学習しなかった……」

戦士「ゴメンなさい。でもこんな試合どうでもいいんじゃなかった?」

商人「それはそれ!興行なんだから事故みたいにするのはダメに決まってんでしょ!」

勇者「お前も怪我我慢したもんな」

商人「まずいよー。なんとか空気変えないと」ウロウロ

僧侶「一人ならまだしも三人もじゃ誤魔化しにくいな」

武闘家「くっ……」

僧侶「仕方ない。気休め程度だが俺の薬草を与えてくるか」

ブキヤ「待ってくれ」

僧侶「む?」

ブキヤ「そんな場面を見られたら本当の事故だとわかる。演出では通らなくなる」ヒソヒソ

僧侶「しかしあれでは」

ブキヤ「若やお客様に悟られないよう済ます。自分に任せてくれ」ヒソヒソ

僧侶「……?」

ブキヤ「若」

商人「なに?」

ブキヤ「ご相談が」
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:48:26.22 ID:Q6SR3SiOO
出塁したはずの勇者と遊び人がベンチにいるのはミスなのか?
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 22:52:34.62 ID:iDIvFp9mO
───イケメンインズベンチ

夢爺「大丈夫か?」

一角兎「うぎぎ……」フラフラ

大烏「もう嫌……」バタッ

スライム「ひでえよ……ひでえよ」ヒックヒック

ヤドヤ「この様じゃ続行は無理だな」

夢爺「棄権……するか」

一角兎「だ……大丈夫ピョン」

大烏「夢爺さんは気にせず投げてください……」

スライム「ひっく……ひっく」

夢爺「お前たち……」

ヤドヤ「……なんでそこまでして」

夢爺「一つの試合に懸ける意気込み。お前にもわかるはずだ」

ヤドヤ「……」
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 23:07:29.58 ID:iDIvFp9mO
ヤドヤ「……はあ。しょうがないな」

ブキヤ「ヤドヤ」

ヤドヤ「お?」

ブキヤ「話がある」

ヤドヤ「丁度いいところに来たな。俺も話したかった」

ブキヤ「そう……だろうな」チラッ

スライム「ひっく……ひっく」フラフラ

大烏「ひい……ひい……」フラフラ

一角兎「ふう……」フラフラ

ヤドヤ「できそうなのか?」

ブキヤ「ああ。というよりやるしかない。また客席の空気が怪しくなってきた」

ヤドヤ「……若は?」

ブキヤ「了承してくれた。お前もいいな?」

ヤドヤ「こんな状況だ。俺にはありがたいねえ」

夢爺「なんの相談だ?」

ヤドヤ「お前はこっち。ついてこい」

夢爺「……」

ヤドヤ「じゃあちょっと抜けるから頼むわ」

ブキヤ「了解だ。早く連れて行ってやれ」

夢爺「……」
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 23:27:04.06 ID:iDIvFp9mO
───イケメンインズ控室

夢爺「こんなところまで……なんのつもりだ」

ヤドヤ「いいから」

大烏「俺たち歩くのもしんどいんだぜ……」

夢爺「大体次はお前の打順だろう。こんなところで油を売っていて」

ヤドヤ「黙ってこの中に入れ」パカッ

夢爺「なんだこれは」

ヤドヤ「怪我人用の酸素カプセル。うちのチームの持ち物だ」

スライム「さんそかぷせる?」

ヤドヤ「この中で眠ってりゃ怪我も多少は回復する。4つあるから丁度定員だ」

一角兎「俺たちが使っていいのか?」

ヤドヤ「おお。滅多に使うことなかったから、こいつもしばらくぶりのお客だ。嬉しいねえ」

夢爺「……」

ヤドヤ「勘違いするなよ。お前らがいないと試合が中止になって困る。それだけ」

夢爺「……なぜ俺も連れてきた?」

ヤドヤ「怪我してんのが見え見えなんだよ。クソみたいな球しか投げないし、バットは振らないし、守備しないし、走塁はてんで遅いし」

夢爺「……お前には言われたくなかったな」

一角兎「そうだったんですか?」

大烏「全然わからなかった……」

夢爺「言うほどのものじゃない」

ヤドヤ「いーや。あのままじゃ打たれるどころか試合中にぶっ倒れていただろうね」

夢爺「……」

ヤドヤ「本当は一晩寝りゃ完全回復といったところだが、そんなに待ってくれる人はいない」

夢爺「当然だ。次の攻撃を終えたらすぐ守備につく。寝ている暇はない」

ヤドヤ「40分。そんだけ寝てりゃこの試合くらいは乗り越えられる」

夢爺「40分?俺たちの一回の攻撃がそんなにかかるはずがない。誰もあのピッチャーを打てていないんだぞ」

ヤドヤ「いいから寝てろ。40分だぞ。経ったら熟睡してても叩き起こすからな」

大烏「助かる……」

一角兎「お先に……」スヤァ

スライム「ありがてえ……ありがてえ」

夢爺「……」
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 23:30:53.21 ID:iDIvFp9mO
つづく

>>518
すみません。ミスです。設定忘れてました
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 17:53:31.09 ID:T+WNxseB0
忘れないために投稿ペース上げよう(提案)
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/07(木) 09:17:54.23 ID:+E0tksKA0
まあよっぽどの初心者で無い限りは、ナジミの塔宿屋使用より飛び降りて勇者実家で休むのが節約になるんだが。
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:21:58.08 ID:t9qAKjiVO
───

解説『遅い。誰も守備につかないで何してんだよ』

実況『ただいま入った情報によりますと、どうやらあれが始まるようです』

解説『あ、あれが!?』



勇者「何が始まるんだ?」

ブキヤ「ショニーズ野球ではイニングの合間に何度かファンサービスが入る」

勇者「へえ。そんなのあるのか」

ブキヤ「今日は事情が事情なだけにできないと思っていた。マネージャーや事務所の人間に相談したいところだったが、謎の食中毒に倒れてしまった」

武闘家「……」

魔法使い「そっちにも手を出してたの!?」

ブキヤ「しかしせっかく来てくれたお客様を退屈させて帰らせたくない。君たちも協力してほしい」

戦士「まあこんな退屈な試合しちゃっている以上責任感じるしね」

魔法使い「いやそもそも僕らのせいだから」

武闘家「空気を変えるためにも必要か」

僧侶「なるほど。そして怪我人の治療の時間も稼げる一石二鳥というわけか」

遊び人「なになに?何やるの?」

ブキヤ「一番簡単なパターンだ。サインボールを客席に投げ入れてプレゼントする」

魔法使い「ええ……」

勇者「それなら俺たちでもできそうだな」

魔法使い「でもショニーズを見に来たお客さん、僕らのサインボールなんか欲しがるかな」

遊び人「いいじゃん。やろうよ」
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:35:25.14 ID:t9qAKjiVO
魔法使い「遊び人君は受け入れられそうだけど……」

ブキヤ「試合も大事だが、お客様もそれ以上に大切だ」

魔法使い「それはわかるんですけどね」

ブキヤ「試合の後にはお客様の投票でMVPが決まる」

魔法使い「え?」

ブキヤ「ここでサービスしておけば株も上がる。若やヤドヤ、それに自分が活躍できていない今、君たちにはチャンスだ」

勇者「MVPって何かもらえるのか?」

ブキヤ「教えたらそれ目的になってしまうから言いたくなかったが、仕方ない」

魔法使い「え……そんなにすごいものが?」

ブキヤ「MVP受賞者には……」

魔法使い「……」ゴクリ

ブキヤ「その選手のグッズが作られる」

魔法使い「しょうもねえ!」
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:44:20.78 ID:t9qAKjiVO
ブキヤ「し、しょうもない……?」

魔法使い「ファンサービスって全員参加しなきゃいけないんですか?」

ブキヤ「強制ではないが……え?まさかMVPを諦めるのか?」

魔法使い「いやグッズとか作られても僕らショニーズじゃないから意味ないし」

勇者「行かないのか?」

魔法使い「怖いし僕は遠慮させてもらうよ」

勇者「でもお前にだって声援くれた客いるだろ。応えてやろうぜ」

魔法使い「うん……でも……いいや」

勇者「そうか。俺は行くぜ」
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:54:25.12 ID:t9qAKjiVO
───

ブキヤ「受け取ってくれ」ポイッ

\キャーキャーブキヤー!/



商人「アリアハンの女子生徒いるはずだし、いい顔見せておかなきゃ」ポイッ

\商人君怪我に負けないでー/



盗賊「ふん。くだらねえ。が、しょうがないから付き合ってやるか」ポイッ

\盗賊君の欲しーい/



勇者「おりゃ」ポイッ

武闘家「やれやれ」ポイッ

僧侶「サインなど初めて書いたぞ。わはは」ポイッ

\まあいいか。もらっとこ。今後に期待/



戦士「はいどうぞ」ポイッ

\いるかボケ/ポイッ
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:06:41.38 ID:t9qAKjiVO
\キャーキャー/



勇者「ん?なんかあっち盛り上がってんな。誰だ?」チラッ



\遊び人くーんボールちょうだーい/




勇者「遊び人か。何やってんだあいつ」

僧侶「注目を集めているな」

盗賊「あ、あれは……!」



遊び人「ダンス部に体験入部して得たタップダンス」タッタタッタ

遊び人「さらに……」

遊び人「ジャグリング部に体験入部して得たこの技をご覧あれ」シャシャシャシャ



\すごーい。サーカスみたい/



戦士「アドリブでなんかやってる!?」

武闘家「あのピエロ……タップダンスしながらいくつものボールをお手玉している」

僧侶「あの器用さを野球に役立ててもらいたいものだ」

勇者「女目当ての数撃ち体験入部がこんなところで役に立つとは……」

盗賊「これも女目当てには変わらないけどな」
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:20:27.52 ID:t9qAKjiVO
遊び人「はい。これ全部僕のサインボールでしたー」ポイッポイッポイッ



\キャー欲しーい/



勇者「馴染みすぎだろあいつ……」

ブキヤ「ファンサービスにおいて彼ほど心強い者はいない」

勇者「なんかこのままショニーズに入っちゃいそうな勢いだな」

ブキヤ「さて、自分の分は投げ終わった。皆も終わったようだな」

戦士「喜んでもらえたか微妙だなー」

盗賊「そ、そうだな……」

武闘家(戦士……)

勇者「いいじゃねえの。今はあれだけど、野球部で全国優勝して俺たちのサインボールをプレミアものにしてやろうぜ」

僧侶「わはは。それはいいな」

ブキヤ「これでまた会場の空気も良く……」



\うう……ブキヤのボールもらえなかった/

\あんたブキヤの熱狂的ファンだもんね。戦士のボール転がってきたけどいる?/

\そんなのいらない。せっかく見に来れたのに……グスン/



ブキヤ「……」
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:36:32.90 ID:t9qAKjiVO
───

魔法使い「はあ……」

魔法使い「残酷なほど一目で人気があるかわかるよ」

魔法使い「MVPとかいっても所詮人気投票だろうし、どうせ元々人気のあるブキヤさんか、商人君は……微妙か」

魔法使い「ショニーズ勢に対抗できるとしたら、ここまで株上げまくった遊び人君」

魔法使い「大穴でちょっと活躍して割とイケメンの盗賊君」

魔法使い「勇者君と武闘家君と僧侶君も顔面偏差値は悪くないけど、さすがに試合で目立ってないし無理だ」

魔法使い「あとはヤドヤさんか……」

魔法使い「ヤドヤさん、勝ちにはこだわってなさそうだしMVPは貰う気ないんだろうな」

魔法使い「そもそも向こうのチームはファンサービスに参加してないし、ってかヤドヤさんベンチにもいないし」

魔法使い「でも僕たちが負けちゃったらどうせヤドヤさんで決まりでしょ」

魔法使い「……」

魔法使い「負けること考えてちゃダメだ。こんなにたくさんの人たちが僕らを応援してくれているんだから」
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:49:41.04 ID:t9qAKjiVO
───イケメンインズベンチ

ヤドヤ「ただいま。お、やってるな。サインボールプレゼントか。まあ今日はそんなとこだろ」

フロッガー「おろおろ」

人面蝶「あたふた」

ヤドヤ「ってお前らはボール投げに行かないのか?」

大蟻食い「何がなんだか……」

バブルスライム「俺たちがやってもいいのか?」

ヤドヤ「それもそうだな。お前らのサインボール欲しがる人間なんかいないから、このファンサービスは無視していいよ」

フロッガー「なんだと」

人面蝶「でも事実だし……仕方ない」

大蟻食い「お前だけでも行けよう。グスン」

ヤドヤ「俺もお前らのチームメイトだ。付き合うよ」

バブルスライム「え?大事なファンサービスだろ。やんないのか?」

ヤドヤ「悪役は悪役らしくしていようぜ」

人面蝶「お前……」

ヤドヤ「あれが終わって大体20分……まだ足りないな」
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:50:39.66 ID:t9qAKjiVO
つづく
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:19:21.52 ID:GqlK6Y2QO
───七回表

ウェポンズ 0-0 インズ


実況『ボールをもらえた人、もらえなかった人、もらえたけど捨てた人、様々な反応が見られた時間でした』

解説『坊っちゃんのボールをもらえた人は幸運ですなあ』

実況『あの反応で決まるといっても過言ではありません。そろそろMVPの行方も気になるところです』

解説『坊っちゃんが有力でしょう』

実況『そしてこのファンサービスを嘲笑うかのように傍観していたインズの攻撃。4番ヤドヤ選手から始まります』



\ヤドヤの欲しかった……/



ヤドヤ「悪かったねー」

勇者「あれ結構楽しかったぜ」

ヤドヤ「そっか。まあ協力には感謝しとく」

勇者「なんであんたやらなかったんだ?」

ヤドヤ「別に関係ないだろ。もう頭切り替えろよ」

勇者「はいはい。わかってるって」
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:28:38.02 ID:GqlK6Y2QO
魔法使い「えい!」ピュッ

パシッ

勇者「ん……?」

アンパイア「ボール」

ヤドヤ「……」

勇者「振らないのか?」

ヤドヤ「振ってほしかったら空振りしやすいところに投げさせろ」

勇者「難しいこと言うなよ」

魔法使い「えい!」ピュッ

パシッ

アンパイア「ボール」

勇者「う、またわかりやすいボール球……」

魔法使い「えい!」ピュッ

パシッ

アンパイア「ボール」

勇者「まずいな。間隔空けちゃったから集中切れたか?」
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:40:36.58 ID:GqlK6Y2QO
魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「……」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

魔法使い「あ……」

勇者「当てられた」

ヤドヤ「……」

勇者「打とうとしたのか?それとも空振り狙い?」

ヤドヤ「……やっぱりな」

勇者「何が?」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「……」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「またかよ。でも追い詰めたぜ」

ヤドヤ「お前、気づいてるのか?」

勇者「あの球の秘密?さっき夢爺のおっさんから聞いた」

ヤドヤ「……あの野郎。自分も敵に塩送ってんじゃねえかよ」

勇者「まあそれを教えてもらえたところでって感じだけど」

ヤドヤ「ってそうじゃないよ。あいつあの球何球投げた?」

勇者「さあ……どうだったっけな」

ヤドヤ「キャッチャーだったらそれくらい把握しとけ」

勇者「そういうもんなのか」

ヤドヤ「そろそろあいつ危ないぜ」

勇者「え?」
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:47:31.17 ID:GqlK6Y2QO
魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「ほら」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「また……どういうことだ」

ヤドヤ「あんな球をいつまでも投げられると思うな」

勇者「!?」

ヤドヤ「そっちのチーム、さっきあいつだけ参加していなかったよな」

勇者「まさか……」

ヤドヤ「よりによってボールを投げるファンサービスときたもんだ」

勇者「手を休めていた……?」


魔法使い「はあ……はあ……」
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:03:02.88 ID:GqlK6Y2QO
ヤドヤ「残念だが限界だ」

勇者「限界って……もう投げられなくなるのか?」

ヤドヤ「少なくともあの魔球はな。疲れでフォームがバラバラ。そして何より握力がなくなっている」

勇者「確かにさっきとは違う球だった。でもそんなに投げてないぞ」

ヤドヤ「それだけ握力を消耗するんだろ。元々体力もなさそうだし」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「棒球なら俺でも対応できる」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「まさかわざとカットしてんのか?」

ヤドヤ「いい時間稼ぎになるもんでね」

勇者「なんのことだ?」

ヤドヤ「ただいつまでもやってたら、今度はあいつが潰れちゃうな」

勇者「よくわかんねえけど、ファウルで粘って魔法使いを消耗させる作戦か?」

ヤドヤ「警笛鳴らしてやってんの。あれはすでに棒球だ。あんなの投げてりゃ他のやつに打たれる」

勇者「三振は厳しいってだけだろ。打たれても守備陣がいる」

ヤドヤ「もうそんな次元の話じゃないんだよ」

勇者「なに?」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「……」ブン

カキィン



実況『打ったー!大きい!大きい!』



勇者「い!?」



実況『入るか入るか……切れましたファウル。しかし惜しい当たりでした』
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:16:42.38 ID:GqlK6Y2QO
勇者「あ、危ねえ……」

ヤドヤ「あんな球じゃ簡単に運べる」

勇者「い……今のもわざと?」

ヤドヤ「言っただろ。警笛」

勇者「……」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「交代しろよ」ブン

勇者「え?」

キィン

アンパイア「ファール」

ヤドヤ「お前ピッチャーなんだろ?ずっとうちのピッチャー観察してやがって」

勇者「……」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「実力は知らないが、今のあいつよりはマシなはずだ」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「なんでそんな助言してくれるんだ?」

ヤドヤ「なんでもいいだろ」

勇者「でももう商人投げてないし、あんたが加勢する意味ないだろ」

ヤドヤ「交代しないなら打つぞ。今度はバックスクリーン狙ってみるか」

勇者「……」
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:24:41.45 ID:GqlK6Y2QO
実況『ヤドヤ選手粘ります。魔法使い選手はそろそろ苦しいか。肩で息をするようになりました』

解説『あんなに粘られたんじゃピッチャーは精神的にきついでしょうなあ』



魔法使い「はあ……はあ……」



実況『ちょっと心配ですがブルペンには誰もいません』



勇者「……」ピュッ

魔法使い「あ……」ポロッ

勇者「!?」

ヤドヤ「ほらな。もうキャッチすら危ういじゃねえか」

勇者「……タイム」

アンパイア「ターイ!」
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:25:14.50 ID:GqlK6Y2QO
つづく
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 13:37:32.87 ID:WQxnB32iO
杉内かな?
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 15:33:04.14 ID:IbfeHgKeO
トゥールールットゥットゥールー♪
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 21:31:06.89 ID:mv/3GhVmO
───

勇者「お前、限界だったのか」

魔法使い「……ゴメン」

武闘家「3イニングか。やはり荷が重かったのだな」

魔法使い「……ゴメン」

僧侶「慣れないことを急にやったんだ。それでも想像以上によくやってくれた」

魔法使い「……うん」

遊び人「胸を張りなよ。あんなに女の子に注目されるなんて滅多にないよ」

魔法使い「う、うん……」

僧侶「交代だ。勇者、準備はいいな」

勇者「……」

僧侶「どうした?」

勇者「投げたくない」

僧侶「なに?」
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 21:40:39.73 ID:mv/3GhVmO
遊び人「なんで?あんなに楽しみにしていたでしょ」

武闘家「わかっている。後は俺に任せておけ」

勇者「そうじゃなくてさ」

武闘家「なに?」

勇者「悔しかったよ俺は」

僧侶「どういうことだ?」

勇者「あいつ俺に言ったんだ。交代しないならホームラン打つって脅してきた」

魔法使い「……」

勇者「敵に手助けしてもらってさ、ヒット打つ気がないのにファウルで遊ばれているみたいで」

魔法使い「……」

勇者「悔しくないか?」

僧侶「それは悔しくないと言えば嘘になる。だが」

勇者「……」

武闘家「ではどうする?」

勇者「ヤドヤとは魔法使い、お前がそのまま勝負しろよ」

魔法使い「え……」
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 21:53:00.03 ID:mv/3GhVmO
勇者「初めて本気でやってくれるかもしれないんだ。だったら勝負に乗っかってみようぜ」

魔法使い「でも今の僕じゃ」

勇者「俺が投げてわざと三振されるなんてもっと嫌だ。本気の勝負にならないなら負けた方がマシだ」

遊び人「意地ってやつかい?」

武闘家「プライドをゴミとまで言っていたお前がな」

勇者「プライドが邪魔ならいつでも捨てるよ。でもあいつに打たれたからって負けるわけじゃないし、そもそも打たれるって決まっていることなのか?」

魔法使い「……」

勇者「それにこの試合って盗賊には悪いけど……野球部にとっては勝ちが一番の目的じゃない気がする」

僧侶「公式戦ではないからと言いたいのか?」

勇者「意地だけで言っているんじゃない。ギリギリの勝負ってやつを経験しなくちゃ先に進めない。世界の見え方が変わらない」

魔法使い「……」

勇者「俺はここが、その一番大事な局面だと思う」

武闘家「……」

遊び人「……」

僧侶「……どうする?魔法使い」

魔法使い「……」
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:02:39.39 ID:mv/3GhVmO
───

ヤドヤ「ちょっと待て……」

勇者「さあ勝負だ」

ヤドヤ「なんでだよ。警告しただろ」

勇者「別に。抑えられると思ったからあいつが投げるだけだぞ」

ヤドヤ「んなわけないだろ。最後まであいつを使う気か?」

勇者「代えてほしかったら打ってみろよ」

ヤドヤ「……本当に痛い目見なきゃわかんないみたいだな」


魔法使い(多分、一球)

魔法使い(次の一球が僕の最後の投球)

魔法使い(集中しろ)グッ

魔法使い(やっぱりちゃんと握れない。でも……)

魔法使い(ここだけは投げきらなきゃ)
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:10:50.83 ID:mv/3GhVmO
魔法使い「これが僕の……」スッ

ヤドヤ「やっぱりフォームも戻っていない。確実に棒球じゃねえか」

勇者「来い!」

魔法使い「最後の球だ!」ピュッ

ヤドヤ「ん?」

スゥー

ヤドヤ(これは……ストレートじゃない)

スゥー

ヤドヤ(こんな奥の手取っておいたのか。タイミングが……)グググ


武闘家「なんだと」

僧侶「先ほどまでと全く違う球筋!」

遊び人「こりゃひょっとしたらひょっとするかも」

勇者「やったか!?」


ヤドヤ「……だが」ブン

カキィン
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:18:14.67 ID:mv/3GhVmO
魔法使い「あ……」

勇者「……」

武闘家「……」

僧侶「……」

遊び人「これは……」



実況『打ったー!今度は確実にフェアゾーン!打球は綺麗にセンターへ!』



盗賊「おいおい……」タッタッタッ

盗賊「……」タッタッ

盗賊「……」ピタッ

盗賊「……マジかよ」


ガン


実況『入ったー!バックスクリーン直撃!ヤドヤ選手のホームランでついに、ついに試合が動きました!』



ヤドヤ「一時の感情で試合を壊しやがって……若いんだよ」
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:18:53.93 ID:mv/3GhVmO
つづく
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/16(土) 22:33:52.68 ID:a4QY9U4uO
宿屋に攻撃されるとか、サマルトリアの王子以来かな
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 12:37:22.99 ID:lxC6M/CSo
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 13:43:19.58 ID:k3yHSxfA0
>>551
初代でも、ローラ姫と泊まってお楽しみでしたねと嫌み攻撃されてる
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/05(金) 00:52:09.53 ID:+0ydT0eNo
エタったか
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 20:31:21.94 ID:0XFzuiYOO
ヤドヤ「……」タッタッタッ

商人「また空振りするつもりで打っちゃった?」

ヤドヤ「いや。世間知らずの若者に勝負の厳しさを教えてやりました」タッタッタッ

商人「ふーん。ま、いいけどね。相対的に俺がすごいってことになるし。ファンサービスに参加しなかったヤドヤは印象良くないだろうしね」

ヤドヤ「……そっすね」タッタッタッ



実況『ヤドヤ選手ゆっくり回ってホームイン。ようやく待ちに待った先制点が入りました』

解説『坊っちゃんが投げていればあり得ない得点ですがね』



勇者「ナイスバッティング」

ヤドヤ「これが現実だ。わかったら代われ」

勇者「ああ。そうさせてもらう。勝負してくれてありがとうな」

ヤドヤ「……」
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 20:47:37.96 ID:0XFzuiYOO
───

遊び人「大事な大事な先制点。本当に重要な局面になっちゃったね」

武闘家「公式戦ではこんな我が儘は許さんからな」

勇者「悪かったって。でもこれで心置きなく代われるな」

魔法使い「もう。打たれた僕は置いてきた気分だよ」

遊び人「それにしてはスッキリした顔だよね」

魔法使い「そう?ピッチャーの重圧から解放されるからだよきっと」

僧侶「わはは。何事も経験だ。これが後の糧となることを祈ろう」

魔法使い「うん。僕次第だよね」

武闘家「そういえば最後に投げたあの球はなんだったんだ」

勇者「そうだよ。あんなのあるなら言っておいてくれないと俺捕れなかったぜ」

魔法使い「え?何か変わっていた?」

武闘家「気づいていなかったのか?」

魔法使い「う、うん」

僧侶「球種はわからんが、おそらく変化球だった」

魔法使い「僕が変化球を……?」

遊び人「偶然投げられたの?それはまた……」

勇者「どこか投げ方変えたのか?」

魔法使い「前みたいな握り方できなかったから、ちょっと握りを変えてみたんだ。あとは必死で覚えてないよ」

僧侶「あれを磨けばまた武器が増えるかもしれん」

武闘家「雨降って地固まるか。無駄な失点にならずに済みそうだな」
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:05:54.60 ID:0XFzuiYOO
勇者「でも、ヤドヤだって初めて見たはずなのに……それでも打たれちゃったのかよ」

僧侶「自分の間を持っているんだ。やつは相当な実力者だぞ」

武闘家「ショニーズなど道楽で野球をやっていると思ったが、あんな男もいたとはな」

勇者「すげえな。俺もあいつと本気の勝負してみたかったな」

武闘家「やめておけ。結果は見えている。まずは目の前のことに集中しろ」

遊び人「そうそう。のんびり相手を賞賛している場合じゃないよ」

勇者「別にまだ負けたわけじゃないぞ。取り返せばいいんだ」

僧侶「その前にこの一失点で留める方が先だ」

勇者「ああ」

武闘家「正直なところ、お前が投げることで魔法使いの投球時より楽はできないと思っている」

勇者「俺だって初めて試合してみて思ったよ。俺はまだまだ弱い。知らないことも多すぎる。だから……」クルッ
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:17:20.84 ID:0XFzuiYOO
勇者「外野陣も聞いてくれ!」



戦士「ん?」

盗賊「なんだよ」

ブキヤ「……」



勇者「俺これから投げるけど、打たれるかもしれないからよろしく頼むな!」



盗賊「な……」

戦士「ええ……?」 

ブキヤ「……」



僧侶「なんともはや……」

武闘家「まったく。敵にも聞こえる声で弱気な宣言をするな」

魔法使い「はは……勇者君らしいや」

遊び人「野球ってそういうものさ。一人じゃできない。だから支えてくれる仲間や応援してくれる人が力になって、そんな皆とチームの勝利のために頑張れる」

勇者「お前が締めるのかよ」
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:24:54.76 ID:0XFzuiYOO
───イケメンインズベンチ

ヤドヤ「……やっちまった」ズーン

人面蝶「なんで項垂れてんだよ。ホームランだぞ。チョウ凄えよ。喜べって」

ヤドヤ「……」

バブルスライム「伏兵のお前が先制点取るなんてブルったが、よくやったぜ?」

ヤドヤ「……」

フロッガー「ピッチャー消耗してたんだろ。カエルみたいだ」

ヤドヤ「……」

大蟻食い「アリがてえ。あいつが代わればチャンスだ」

ヤドヤ「はあ……」

フロッガー「他の連中どこ連れてったんだ?向こうピッチャーカエルならこの回打順回ってくるかもしれんぜ」

ヤドヤ「……そうだな。そろそろ起こしてくるか」
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:25:33.42 ID:0XFzuiYOO
つづく
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 21:30:03.53 ID:szAizcUmO
いちいち駄洒落入れんなやwww
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 13:34:20.05 ID:97oWo4sXo
まだかな
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/04(日) 10:33:30.85 ID:d8yNsB0Yo
待ってる
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/12/29(水) 01:56:17.71 ID:G/gNiSU1o
勇者プラス野球か
期待してる
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