勇者「集え!我らアリアハン高校野球部!」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 15:30:51.83 ID:se0pJIVuO
それは勇者が16歳になる誕生日のことであった




「起きなさい。起きなさい私の可愛い勇者や」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491719451
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 15:37:02.70 ID:se0pJIVuO
───

勇者「うーん……」

母「おはよう勇者。もう朝ですよ」

勇者「あと5分……」

母「今日はとても大切な日。あなたの高校の入学式だったでしょ」

勇者「あ!そうだった!」ガバッ

母「私は今日まであなたを立派な男の子として育ててきました」

勇者「うん」

母「さあ、母さんについてきなさい」

勇者「あれ?もう出るの?朝食は?」

母「あなたが寝坊したからそんな暇はないわ。歩きながら食べなさい」

勇者「寝坊だったのかよ!だったらもっと慌てて起こしてよ!」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 15:45:12.13 ID:se0pJIVuO
───アリアハン高校前

母「ここから真っ直ぐ行けば学校よ。あとは一人で行けるわね?」

勇者「……」モグモグ

母「どうしたの勇者。あんなに楽しみにしていたのに学校に行きたくないの?」

勇者「いや初めから一人で来れたんだけど。母さんがわざわざ付き添わなくても……」

母「入学式には父兄も出るのよ」

勇者「ああそうだっけ。帰りは先帰ってていいよ。俺色々見て回るから」

母「わかったわ。あ、最初に校長先生にお会いしていきなさい」

勇者「校長先生に?なんで?」

母「あなたにお話があるそうよ」

勇者「ふーん。なんだろ」

母「ちゃんと挨拶するのよ。さあ行ってらっしゃい」

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 15:51:55.00 ID:se0pJIVuO
───校長室

コンコン

勇者「失礼しまーす」ガチャ

校長「よくぞ来た。その精悍な顔つきはオルテガの息子じゃな」

勇者「父さんを知っているんですか?」

校長「うむ。我が校野球部の英雄じゃったからな」

勇者「へえ。今でも語り継がれてるんだ」

校長「そしてわしの教え子でもあった」

勇者「そうなんだ。俺も父さんに負けない英雄になってみせますよ」

校長「うむ……」

勇者「不安ですか?まあ俺の実力を知らなければしょうがないか」

校長「非常に言いにくいのじゃが……野球部はなくなってしまったのじゃ」

勇者「え?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 16:03:36.16 ID:se0pJIVuO
勇者「どういうことですか!?野球部がなくなったって!?」

校長「オルテガがいた時代、アリアハンは全国の頂点に君臨していた」

勇者「詳しくは知らないけど、それは俺も聞いたことあります」

校長「やつが卒業した後もいずれは監督として戻ってくるはずじゃった」

勇者「あれ?そんな話は知らない。戻ってくるはずって……?」

校長「他の強豪校、火山高校が横からオルテガを口説き落としたのじゃ」

勇者「え?」

校長「それからアリアハンは衰退し、力を失い、有力な人材も集まらなくなり、とうとう廃部じゃ」

勇者「そんな……」

校長「オルテガが火山に落ちたばかりに……!」

勇者「……父さんはずっと家に帰っていません。俺は父さんの記憶すらない」

校長「未だ連絡が取れないらしいな」

勇者「……はい」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 16:12:18.55 ID:se0pJIVuO
校長「お主を呼んだのは他でもない。もう一度野球部の栄光を取り戻してほしいのじゃ」

勇者「え?」

校長「オルテガの血をひくお主ならやれるはず」

勇者「ちょっと待って下さい」

校長「必要になるであろう布の練習着とひのきのバットを与える。それから……」スッ

勇者「この封筒は?中は……五千円?」ピラッ

校長「野球部復活のための活動資金に当てよ。わしからの特別な依頼なので他言無用じゃぞ?」

勇者「いやちょっと待って」

校長「とりあえず4人いれば部として認められる。まずは仲間を集めるのじゃ」

勇者「……」

校長「では行け。勇者よ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 17:26:40.64 ID:v0HZJMi3O
さすが最初の城の王、どケチやな
バット一本買えんぞw
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 17:35:41.12 ID:SIMgQieVo
火山に落ちたならしゃーない
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 18:28:07.15 ID:se0pJIVuO
───1年青組教室

勇者「くそ、なんなんだよ。勝手に話を進めやがって」ブツブツ

勇者「野球部が無いなんて知ってりゃこんな学校来なかったのに」ブツブツ

勇者「仲間を集めろったって、素人寄せ集めて何ができんだよ」ブツブツ

勇者「全部父さんのせいだ。どこで何やってんだよ……」ブツブツ

?「随分と小言が多いのね」

勇者「ん?」

?「初めまして。今日からクラスメイトね。あなたの後ろの席になったルイーダよ。よろしく」

勇者「……勇者だ」

ルイーダ「入学早々何かお困りかしら?」

勇者「関係ないだろ」

ルイーダ「そう。ま、いいわ」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 18:37:34.98 ID:se0pJIVuO
?「邪魔だ。どけ」

生徒「ひっ」



勇者「なんだあいつ。ガラの悪いやつだな」

ルイーダ「あら?彼は……」

勇者「知り合いか?」

ルイーダ「いえ、中学の頃有名だった悪ガキよ。盗賊さんって名前だったかしら」

勇者「ふーん……」



?「1!2!3!」



勇者「うわ、教室で腕立てしている変人がいるぞ。関わりたくねえ」

ルイーダ「あら?彼は……」

勇者「知り合いか?」

ルイーダ「いえ、中学の頃有名だったスポーツマンよ。武闘家さんだったかしら」

勇者「ふーん……」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 18:45:25.88 ID:se0pJIVuO
?「ええと、僕の席は……」



ルイーダ「あら?彼は……」

勇者「今度こそ知り合いか?」

ルイーダ「いえ、中学の頃有名だったガリ勉よ。魔法使いさんといったかしら」

勇者「お前さ、知らないやつのこと結構詳しいよな」

ルイーダ「そうかしら。普通よ」

勇者「俺なんて情報弱者の筆頭だからそれが普通だろうと羨ましいよ」

ルイーダ「野球一筋で生きてきた人だものね」

勇者「お、俺のことまで知っていたのか!?」

ルイーダ「お父さんが有名人だし」

勇者「すげえな……親が有名だからって子供のことまで知っているってさすがに普通じゃねえぞ」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 18:54:04.39 ID:se0pJIVuO
ルイーダ「そっか。野球しか生き甲斐がないのに、野球部が無いのを知らずに入学しちゃったんだ」

勇者「う……そうだよ。仕方ないだろ」

ルイーダ「近代野球には情報は欠かせない武器よ」

勇者「なあ、お前の情報網で調べてほしいことがあるんだが」

ルイーダ「いいわよ。何がお望みかしら?」

勇者「この学校にいる野球経験者」

ルイーダ「ちょっと待ってね……」ピッピッ

勇者(すでに押さえてあるのか……)

ルイーダ「……いるわね」

勇者「本当か!何人いるんだ?」

ルイーダ「あなたは入れないで8人ね。一年生に7人、二年生に1人いるわ」

勇者「上の学年まで……お前すごすぎだろ」

ルイーダ「どうも」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 19:02:50.51 ID:se0pJIVuO
勇者「経験者がいればなんとかなるかも。とりあえず近場から勧誘するか。そのリストくれよ」

ルイーダ「ここから先は有料よ」

勇者「金とるのか!?」

ルイーダ「そうね、これくらいだったら……五千円でいいわ」

勇者「そんな大金……あ」

ルイーダ「どうする?今ならオマケで各々の一口情報もつけるわよ」

勇者(校長にもらった金、こんなところで使っていいのか……?でも今一番必要なもの……)

ルイーダ「……まあいいわ。今日は特別にタダであげる」

勇者「本当か!?」

ルイーダ「今日だけよ」

勇者「なんで今日だけなんだ?」

ルイーダ「あなたの誕生日じゃない」

勇者「!?」

ルイーダ「おめでとう」

勇者「お前……」

ルイーダ「別に感謝の言葉はいらないわ」

勇者「さすがに怖い」

ルイーダ「……」

勇者(そういえば家族以外に祝ってもらったの初めてだ。今日は家族すらなかったけど)
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 19:03:30.41 ID:se0pJIVuO
つづく
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 20:32:13.11 ID:5Ck6znIjO
これは期待
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 01:17:33.30 ID:0e1gWDxwo
冷静に考えると高1の子供に魔王退治させるドラクエっておかしいな
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 14:53:34.55 ID:tqq10fDD0
はよ
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 20:42:21.85 ID:Ks3HHP6sO
勇者「ちょうど8人か」ペラッ

勇者「まあ野球しに入ったやつなんて俺くらいだろうし、足りて良かったと思っておこう」

勇者「ほとんど一年生なら面倒な規律とか気にしなくてよさそうだし」

勇者「こうなったらなんとか全員引き入れないとな」

勇者「とりあえずあと2人。リストによると……お、うちのクラスに3人もいるじゃん」ペラッ

ルイーダ「待って。なんであと2人なの?」

勇者「俺とお前で2人。あともう2人集めりゃ部になる」

ルイーダ「誰が野球部に入るって言ったのよ」

勇者「お前役に立ちそうだしマネージャーやってくれよ」

ルイーダ「私は色々忙しいの。私を頼る人なんてそこら中にいるんだから」

勇者「お前探偵か何かか?」

ルイーダ「いいでしょなんだって。さっさと勧誘してくれば」

勇者「今してる」

ルイーダ「入らないって言ってるでしょ。もう面倒くさいわね。魔法使いさーん、勇者さんがお呼びよー」

勇者「あ、お前勝手に」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 20:50:38.34 ID:Ks3HHP6sO
魔法使い「え?僕?なんだろ」



勇者「仕方ない。お前は後回しだ」

ルイーダ「……」ベー

魔法使い「勇者君って君だよね?なんの用?」

勇者「野球部に入らないか?」

魔法使い「え?」

勇者「たしか経験あるんだよな、魔法使い君」

魔法使い「魔法使いでいいよ。あと経験があるといっても小学生の頃だよ」

勇者「小学……まあ経験あるだけいいよ。入ろう」

魔法使い「うち野球部はないはずだけど」

勇者「これから作るんだよ。きっと楽しいぞ」

魔法使い「でも……」

勇者「入る部活決めてんのか?」

魔法使い「まだだけど……」

勇者「だったら人助けだと思って!」

魔法使い「ええ……」

勇者「お願い!」

魔法使い「うーん、わかったよ。でも上手くはないから期待しないでね」

勇者「やった!サンキュー!」

勇者(一口メモの通りだ。魔法使いは押しに弱い、と)
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 20:57:46.74 ID:Ks3HHP6sO
勇者「ポジションはどこだったんだ?」

魔法使い「キャッチャー。でも身体が強くないし諦めちゃったんだ」

勇者「そうなんだ。俺ピッチャーやるしバッテリー組めるかもな」

魔法使い「僕の体格じゃ高校野球で通用しないよ。できれば他のポジションをお願いしたいな」

勇者(まあそうだよな。ここは押してもいいことはない。もっと強そうなやつにやらせよう)

勇者「強そうといえば……」チラッ
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 23:16:39.06 ID:Ks3HHP6sO
武闘家「1!2!3!」



勇者「あの変質者も経験者だったとは」

魔法使い「武闘家君だっけ。彼も誘うの?」

勇者「ああ。その筋じゃ割と有名人だったみたいだし期待できるかもな」

魔法使い「そうなの?僕リトルリーグにいたけど聞いたことないな」

勇者「じゃあ中学から始めたのかな」

武闘家「さっきから何を見ている」

勇者「野球やらないか?」

武闘家「助っ人か?」

勇者「助っ人?野球部に誘っているんだが」

武闘家「俺は様々な競技の助っ人として銭を稼いでいる。特定の部活には入らない」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 23:24:45.48 ID:Ks3HHP6sO
勇者「なんだそりゃ」

魔法使い「一応経験者は経験者みたいだね……」

勇者「それにしたってまともな指導も受けていないお遊びレベルかよ」

武闘家「……」ピクッ

勇者「助っ人なんて聞こえはいいけど、ただの数合わせなんだろ」

魔法使い「ち、ちょっと……」

武闘家「訂正しろ。俺は今まで確実に実績を残してきた。どのスポーツでもエースになれた」

勇者「だったら俺たちと勝負して証明しろ。それでお前が勝ったら認めて謝ってやる」

武闘家「いいだろう。万が一俺が負けるようなことがあれば野球部に入ってやる」

勇者(これもルイーダ情報の通りだ。武闘家は煽りに弱い、と)
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 23:33:01.09 ID:Ks3HHP6sO
───グラウンド

勇者「へえ、かなり荒れてはいるけど野球グラウンドは残っているんだな。マウンドやベースまでついてらあ」

魔法使い「ねえ、本当に大丈夫なの?」

勇者「任せとけって。今グローブは俺のしかないからこれでキャッチャー頼むな」

魔法使い「う、うん……」

勇者「勝負は一打席。ヒットならお前の勝ち。アウトなら俺の勝ち。わかりやすいだろ」

武闘家「いいだろう。来い」スッ

勇者「吠え面かくなよ」

魔法使い(あ、そういえば変化球何投げるのか知らない)

勇者「不安そうな顔するなよ魔法使い。変化球なんか投げないから」

魔法使い「え?」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 23:39:02.21 ID:Ks3HHP6sO
勇者「俺の人生を捧げてきた野球がちょっとかじった程度のお遊び野球に負けるかよ!」ピュッ

魔法使い「速い!」

武闘家「ふん!」ブン

カキィン

勇者「……え?」

魔法使い「あ……」

ヒューン

ポトッ

武闘家「ヒットだ」

勇者「嘘だろ……初球で……」

武闘家「なかなかいい球だ。ホームランを狙ったのだが」

勇者「俺が……負けた?」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 23:39:35.06 ID:Ks3HHP6sO
つづく
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 00:35:45.79 ID:W1tbHSjb0
勇者さん晩成型だから
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/11(火) 21:01:52.36 ID:eBrug9OcO
武闘家「さあ謝ってもらおうか。俺をバカにしたことを」

勇者「……」

武闘家「ふん、プライドが邪魔をしているか」

勇者「……」

武闘家「素直に負けを認めないようでは余計惨めだがな」

勇者「……」

武闘家「帰る」ザッ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/11(火) 21:09:37.24 ID:eBrug9OcO
魔法使い「いや、君の負けだよ」

武闘家「なんだと?どこからどう見ても……」

魔法使い「君の打ったボールを取ってきた。それで動かない君にタッチアウト」ポン

武闘家「は?」

魔法使い「勝負の内容は一打席勝負。ヒット性の当たりを出すゲームじゃないよ」

勇者「!?」

武闘家「そんな屁理屈が通用すると……」

魔法使い「屁理屈?これは野球だよ。打ったら走る。当たり前じゃないか」

武闘家「おい、お前はこれでいいのか?明らかに……」

勇者「ああ。いいね」

武闘家「!?」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/11(火) 21:18:34.47 ID:eBrug9OcO
勇者「魔法使い、お前気が弱そうに見えて実は腹黒いやつだったんだな」

魔法使い「!?」

勇者「冗談だよ。機転が利いて助かったぜ。キャッチャーの素質あるよお前」

魔法使い「あ、ありがとう」

武闘家「お前にはプライドがないのか」

勇者「そんなもん目的を達成するためならゴミの価値しかないね」

武闘家「!?」

勇者「だが野球に対するプライドはある。だから約束通り謝る。舐めたことを言ってすまなかった」

武闘家「……」

勇者「勝負は俺の負けだ。だが、野球は俺の勝ちだ」

武闘家「……」

勇者「……」

武闘家「……ふん。俺こそ野球を知った気になって舐めていたようだ。悪かった」

勇者「じゃあ」

武闘家「約束通り野球部に入る」

勇者「やった!」

魔法使い「よかったあ」

勇者(あんな屁理屈が通用するとは単純なやつだ。頭の方は弱いらしい)

勇者(だが実力は本物。これならクリーンナップも任せられる)
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/11(火) 21:26:06.32 ID:eBrug9OcO
勇者「ポジションはどこだったんだ?」

武闘家「どこでもいい。ピッチャーもできる」

勇者「どこでも守れるなら二遊間やってもらおうかな。鍛えているから肩も強そうだし」

武闘家「肩には自信がある。ピッチャーもやっていたからな」

勇者「じゃあ今日のところはもう帰ろうか」

武闘家「やれというのならピッチャーでも構わない」

魔法使い「そうだね。もう遅くなっちゃったし」

武闘家「ピッチャーでもいいぞ」

勇者「じゃあまた明日な」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 21:42:02.81 ID:KYmMYBx1O
なんだこいつは......(歓喜)
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/11(火) 21:45:36.32 ID:eBrug9OcO
───家

勇者「ただいま」

母「おかえりなさい。校長先生にちゃんと挨拶できた?」

勇者「ねえ、今父さんって……」

母「わからないわ」

勇者「母さんはそれでいいの?」

母「父さんを信じているもの」

勇者「……」

母「疲れたでしょ?もうお休みなさい。ゆっくり休むのですよ」

勇者「……飯は?」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 21:46:12.05 ID:eBrug9OcO
つづく
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 17:33:00.63 ID:X9e4SQiUo

5千円で雇うのかと
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 19:51:09.63 ID:Y03CERrGo
DQ4なら金で雇っても問題なかったな
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 19:29:31.29 ID:aeSz3VKQO
───次の日

ルイーダ「おはよう」

勇者「……おう」モグモグ

ルイーダ「いきなり早弁?もしかして今日も午前で終わりって知らなかったのかしら?」

勇者「うるせえな。夕……朝飯だよ」

ルイーダ「あ、これ新発売のジュースね。ちょうだい」

勇者「おい、俺の朝飯だって言ってんだろ」

ルイーダ「ある野球経験者の情報と交換」

勇者「なに?仕方ないな。なんだよ」シブシブ

ルイーダ「その人、お昼は屋上で過ごすのが日課らしいわよ」

勇者「へえ。なんてやつ?」

ルイーダ「おかずと交換」

勇者「ふざけんな。いいよ。屋上に行けば会えるだろ」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 19:37:58.98 ID:aeSz3VKQO
魔法使い「おはよう」

勇者「おう。今日も勧誘行くぞ」

武闘家「どの組だ?」

勇者「うちのクラスにもう一人経験者がいるんだ。盗賊ってやつ」

魔法使い「え……あの人?」

勇者「でも見当たらないな」キョロキョロ

魔法使い「だって来てないもの」

勇者「え?」

武闘家「いわゆる不良だ。サボりだろう」

魔法使い「彼は諦めた方がいいんじゃないかな」

勇者「……まあ様子を伺ってから決めようぜ」

勇者(たしかに諦める必要も出てくる)

勇者(だがそうなると素人を補充しなくちゃならない)

勇者(一人分カバーするためには経験者でも確実な戦力……できたら大砲が欲しいところだが)
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 19:45:01.88 ID:aeSz3VKQO
───放課後・1年赤組

勇者「このクラスに経験者が一人いるらしい」

武闘家「4人目か。まだまだ先は長そうだな」

魔法使い「うん。でも頑張ろう」

勇者「名前は戦士というらしい」

武闘家「知っているか?」

魔法使い「知らないなあ」

勇者「聞いたことあるような有名なやつがうちの学校にいるはずないしな。行こうぜ」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 19:54:30.85 ID:aeSz3VKQO
生徒「こんにちは。ここは1年赤組の教室だよ」

勇者「戦士ってやついるか?」

生徒「彼ならいないよ」

武闘家「帰ったか。まあ仕方あるまい」

生徒「いや、部活に行ったんだよ」

勇者「なに!?もう別の部活に入っちまったのか!?」

生徒「まだ入ってはいないんじゃないかな。そこら中の部活から勧誘されているんだよ」

魔法使い「すごい。スポーツエリートってこと?」

武闘家「……」ピクッ

勇者「こりゃ絶対引き入れないとな」

武闘家「俺は存在すらない野球部にしか勧誘されなかったのに……」

勇者「お前より上手いのかもな」

武闘家「だったらお前よりも上手いだろう!」

魔法使い「まあまあ。僕たちも早く勧誘に行こうよ。早くしないと他に獲得されちゃうよ」

武闘家「面白い。どれほどの男か見極めてやる」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 20:01:01.07 ID:aeSz3VKQO
───体育館

魔法使い「今バスケ部に体験入部しているみたいだね」

勇者「なあ、バスケってなんだ?」

魔法使い「知らないの?本当に野球一筋だったんだね……」

勇者「へへ」

武闘家(褒められたと思っているのか……)

魔法使い「身体能力が相当高くないと通用しないスポーツだよ」

勇者「そうなのか。やっぱり期待できるな」

武闘家「俺だってバスケくらいできる!それこそどのポジションでもな!」

魔法使い(ライバル視!?)

勇者「どれどれ、どんなやつかな?」チラッ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 20:19:51.17 ID:aeSz3VKQO
バスケ部員「リバウンド任せたぞ戦士君!」


ドスーンドスーン



魔法使い「えっ!?」

武闘家「な……」

勇者「あいつが……戦士?」



戦士「はい!」ズーン



勇者「でかい……2mはあるんじゃないか」

魔法使い「それに横幅もかなりある。あの体格ならどこも欲しがるわけだよ」

勇者「うちも大砲として是非欲しい」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 20:25:46.87 ID:aeSz3VKQO
武闘家「だ、だがでかいだけでは意味がないぞ!あの身体を活かす技術と───」



戦士「あっ」スカッ

バスケ部員「何やってんだよ!それくらいのボール取れよ!」

戦士「す、すみません」ドタドタ



武闘家「身体能力が───」



戦士「うわっ」ズルッ

ドスーン

バスケ部員「……」

戦士「いてて……」



武闘家「なければ……」

勇者「……」

魔法使い「……」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 20:41:34.08 ID:aeSz3VKQO
バスケ部員「……ああうん。じゃあ体験入部は終わり。楽しかったかい?」

戦士「え、えっと……はい」

バスケ部員「なら良かった。いい部活に巡り会えたらいいね」

戦士「……はい」




武闘家「……期待していたような人材ではなかったようだな」

勇者「……」

魔法使い「こ、声かけてみようよ。まだどこも獲ろうとしてないみたいだし」

武闘家「あの身体をもってしても、どこにも必要とされていない。ということになる」

魔法使い「で、でも誰だって得意不得意はあるものでしょ?」

勇者「そうだ!ルイーダメモに何か武器になるような情報が書いてあるかも」ペラッ


『戦士:大食い』


勇者「……」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 20:52:23.38 ID:aeSz3VKQO
───

戦士「はぁー……またやっちゃった」

戦士「今日だけでラグビー、相撲、バスケ」

戦士「結局俺に向いているスポーツなんてないんだよな……」

戦士「部活は諦め……」

戦士「……」

戦士「そうだ!調理部に入ろう!」

戦士「調理部なら女の子ばかりだろうし皆優しいに違いない」

戦士「むふふ……つまり」

戦士「きっと食い放題だぞ(食べ物が)!」
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