貴方「奴隷たちに救済を」【安価スレ】【2スレ目】

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484 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/05(日) 01:10:05.97 ID:CNScj63W0
↓1〜3に、助けるかどうかをお願いします。両方でも、片方でも問題ありません。

やっと奴隷を出せた…。今回の更新はこれで終了です。次回更新は水曜日予定です。お疲れ様でした。
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 01:15:12.12 ID:OCEUmhrwo

両方助けておく

主人公もグラウスの人助けの一環だったんだろうな
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 06:45:30.46 ID:erMPrqgDO
乙です
両方助ける
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 07:10:43.06 ID:Uxn9Fgico
両方とも助けるで
488 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/08(水) 23:44:03.67 ID:kQ+0RsFhO
本日の更新は無理そうです。申し訳ありません。土曜日なら更新できるはずです。

次回の更新に備えて、簡単な判定と安価を出しておきます。

↓1コンマがリーシュの戦闘力、↓2コンマがセフィの戦闘力となります。

また、同時に↓1にリーシュの年齢を、↓2にセフィの年齢をそれぞれお願いします。

最後に、簡単な小ネタ、番外編を一つ次回更新時に投下しようと思いますので、見たいもの、要望がありましたらご自由にお書きください。

書けるものから投下していきます。更新できず、誠に申し訳ありません。
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 23:46:36.50 ID:Wfh4HvqRo
17
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 23:48:03.20 ID:oHwzMzu9o
50
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 23:50:00.84 ID:ZXD2NsuDO
14
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 23:54:39.15 ID:oHwzMzu9o
両方0か……

番外編は任務失敗の末に捕縛された結果主人公の夢と彼の先祖から受け継いだ財産は破産になった話をアリサ視点で読みたいです
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 02:22:08.22 ID:SKaMOtYmO

途中からフェードアウトしちゃったレイスちゃんのお話が見たいです…
494 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/09(木) 18:57:12.63 ID:MjsSiBbrO
両方0とかウッソだろお前wwww なんで2人とも捕まったんでしょうか(真顔)

とりあえず0ボーナスで特殊能力を一つずつ追加です。↓1にリーシュ、↓2にセフィの特殊能力をお書きください。

小ネタの件、了解しました。書き溜めが完了次第投下していきます。
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 19:00:15.51 ID:oARFd2Gho
目利き(観察眼)
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 19:27:42.64 ID:PCBv7F2No
指を指された悪魔は死ぬ
497 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:00:44.65 ID:cqrHpGTW0
番外編を書いていたらこんな時間に…。今回は番外編投下だけにします。申し訳ございません…。

遺跡で流れていそうな、壮大だけど悲しい感じの曲って何か知っていますでしょうか。

エンカウントしても、音楽がそのまま流れそうな曲です。個人的に好きなので…。教えていただけたら幸いです。
498 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:01:52.15 ID:cqrHpGTW0
番外編 泡沫に帰えし理想 Alisa side


指示を受けたアリサは、西中島南方へと転移魔法で移動する。

「当主様が言うには、ここを通るらしいです…が」

「…最悪ですね。先を越されていたとは」

爆発音のする方向へ、アリサは飛翔する。

上空から見渡すと、黒煙が立ち昇る場所があった。

「…そこですか」

アリサは弓を引き、二発の矢を撃つ。

それは、目的地の上空で弾け、雨のように降り注いだ。

「次は…っと」

座標設定を終え、目的地へと転移する。

そこには、数十人は下らない死体の山と、三名の兵士に守られているエルフの女性?と対峙する、たった一人の少女がいた。

「クハハ…。神である私を、敵に回して勝てるものか」

その少女の耳は猫のようで、両手からは鋭い鉤爪が生えている。

「何というか。凄まじいほどの寒気がしますね。心臓を握られているかのような」

「クハハ。それは結構。どれ、遊んでやろうか」

少女がそう言ったのと同時に、姿が消える。

「ッ!皆さんは早く撤退を!ここは私が…」

「引き受ける、と?大した自信よな」

「つぅ…!」

後ろに回り込んだ少女は、鉤爪でひと裂き。

体を曲げて対応するが、背中が切り裂かれる。

「さて、そろそろ仕留めねば…ほう!」

少女が主導者を殺すために振り向く。

しかし、アリサが射撃に転じたことで、それは妨げられた。
499 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:02:49.86 ID:cqrHpGTW0
アリサの頬を、冷や汗が伝う。

たった一撃を喰らっただけ。

ただそれだけなのに、力の差が分かった。

分かってしまった。

そして、アリサは思う――。

――勝てないなら、時間稼ぎだけでもしますか――。

アリサは弓で弾幕を形成し、ナイフを片手に接近する。

しかし、その弾幕を少女は左手だけで全て霧散させる。

「この程度か。昂ぶりもせぬな」

「入った」

アリサの放つ矢は、全てアリサの魔力で構築されている。

即ち、遠隔操作で魔法を発動することや、エンチャントも可能ということだ。

今回アリサが施したものは。

「む…。ちと不味いか」

僅かに、少女の動きが遅くなる。

先ほど、少女が矢を破壊した。

その時に散布された魔力で、空間に干渉、一時的に時間の流れを鈍化させる。

ほんのコンマ数秒遅くしただけだが、それで充分。

一撃を当てる余裕は生じた。

「吹き飛べッ!」

アリサは少女の腹に手を当て、魔力を圧縮、破裂させた。

ダメージはおそらく無いが、かなりの距離を離せた。

目的を果たすのなら、それだけで充分だった。

「さっさと走ってください!数秒もせずに戻ってきますよ!」

「くっ…。了解…!」

アリサの言葉を受け、全速力で駆け抜ける兵隊たち。

それを見届け、アリサは笑う――。

――これで、目的は果たしました――。
500 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:03:39.57 ID:cqrHpGTW0
「クハハ…。油断したな。そうか…私には効かないと判断して、周りの空間に干渉したか」

「いい判断だ。汝はよき魔導士のようだな。だが、所詮ヒトでしかない汝ではそれまでだ」

首を一度鳴らした少女は、木々を足場に跳躍する。

「はや…があっ!」

音速を超えた蹴りが、アリサの腹部を捉える。

メキメキと骨が折れる音が聞こえ、アリサは苦痛に顔を歪める。

「ふむ…。今のは避けるべきだっただろうに」

「ゲボッ…」

内臓もやられたのか、アリサは吐血する。

「はぁ…。どうして…あなたのような方が…あんな人に…従っているんですか…」

愚問を、と少女はアリサの問いを切り捨てる。

「私は土着神でな。遠い昔に、信仰を失ってしまったのさ」

「それはもう辛かった。誰からも見られない、信じてくれない。長きに渡る孤独が、私の心を蝕んだ」

「…しかし、私を獣人と思った愚か者が来てな。奴隷として、この国に辿り着いたのさ」

「そこで逢ったのが、今の主だ。私は心底嬉しかったよ。形はどうであれ、私を信じてくれたのだからな」

「たとえ道具としてでも構わんさ。信じてくれるのなら、報いるまで。それが私たち神の在り方だ」

歪んでいる。

そんな思いがアリサの心を埋め尽くす。

だが、どんなことを思っても、何も変わらない。

「…すまんが、事情が変わった。しばし眠っているのだな」

拳を振り上げる少女の姿を最後に、アリサの意識は途絶えた。
501 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:04:24.61 ID:cqrHpGTW0
カツン、カツン。

静かな部屋に、靴音が響く。

その音で、壁に繋がれたアリサは目を覚ます――。

――やはり、捕まりましたか――。

アリサは冷静に状況を把握していく――。

――腕は…千切られたのでしょうか。根本から無くなってますね――。

手足の欠損には既に慣れている。

それは、治癒魔法を使えばすぐ再生するのが原因だ。

しかし――。

――チッ、封魔の呪印が書かれてますね。これでは魔力が使えません――。

露わになっている上半身には、黒いインクのようなもので印が刻まれている。

そのせいで、アリサは魔力の操作が出来ない。

反対側の壁――ドアが取り付けられている壁だ――には、義足が立て掛けられている。

どうするべきか、思考を回転させていたアリサだが、来訪者によってそれは中断された。

「よぉ。お目覚めのようだな。アリサ」

「うわぁ…。見たくない顔を見せられて死にそうです」

「お前マジでそういう言い方やめろ。傷つくわ」

その言葉とは裏腹に、リゼルの顔は冷徹だ。

「あぁ、貴方の暗殺は失敗したよ。だが、どっちにしろお前たちはここでおしまいだ」

表情を変えぬまま、リゼルは淡々と言い放つ。

「…は?」

対するアリサの表情は、困惑に染まった。
502 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:05:12.58 ID:cqrHpGTW0
「え…?終わりですか?私たちが…?」

リゼルは頷く。

「…冗談じゃありませんよ!どうしてここで終わるんですか!?」

呆れた表情のリゼルは、アリサを指差し言う。

「お前のせいだよ。お前が捕まらなきゃ、あいつだってまだ行動できた」

「これから、お前の命を条件に提案する。仲間想いの貴方のことだ。呑むに違いない」

アリサの思考が止まった。

あの時の約束を、貴方は絶対に守ろうとする――。

――私の存在が…枷になっていたのですか――。

そして、涙が零れる。

「あぁ…。あぁぁぁ…!」

主たる貴方のために、死力を尽くした。

しかし、自分の力不足が原因で、共に見た夢が、理想が、今までに築いたものが全て、消えてしまう未来が見えた。

そして今、その状況を打破しようと行動することができない自分があまりにも惨めで、流れる涙の量が増える。

「ハハハハハハ!そんなに泣くまで大切なことだったか!」

「だが、ここでお前らは終わりだよ。おとなしく諦めろ」

そう言って、リゼルは部屋を後にする。

リゼルがいなくなってなお、アリサは泣き続けた。
503 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:05:46.60 ID:cqrHpGTW0
城での対談を終えたリゼルは、アリサの独房へと戻って来る。

その頃には、アリサは既に泣き止んでいた。

しかし、目尻は赤くなっている。

「ほら、さっさと壁門まで行きな。そこで待つようには言っといたから」

鎖を外し、義足と弓、ナイフを目の前にリゼルは置く。

呪印が消えたのを確認し、アリサは肉体を修復。

綺麗に生えた手で道具を取り、無言で部屋を出る。

そしてもう一度、一分間だけ泣いた。

貴方の前で泣くことがないように。

弱いアリサを見せないために。

心配されることがないように。

色々な思いを込めた涙が、床のカーペットを濡らした。
504 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:06:32.59 ID:cqrHpGTW0
転移魔法の魔法陣を構築し、指定座標へと転移する。

目の前には、目尻が真っ赤になっている貴方がいた。

「…ごめんなさい。命令、果たせませんでした」

深々と頭を下げ、謝罪の意を示す。

決して、涙を流していた過去の自分を悟られてはならない。

「いや…。生きているだけで充分だ…!」

逆に、貴方が涙を流す。

それを見たアリサは、慌ててハンカチで拭う。

そして、今にも泣きだしそうな自分を押し止め、平静を装いながら答える。

「死ぬわけにはいきませんよ…。まだ、貴方と共に進まないといけませんから」

アリサは思う――。

――先ほどいっぱい泣いていて良かったです――。

それが無ければ、間違いなく一緒に泣いていたから。
505 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:07:20.17 ID:cqrHpGTW0
壁外に出ると、最前列に立っているカエデがこちらを見る。

それに反応したアリサは、口を開く。

「…私を待ってたみたいですね。すみません」

「気にするな。私たちは気にしてはいない」

いつもより、声色が少し高い――。

――優しいお姉さんで助かりました。心からのありがとう、です――。

この想いは伝わっているのだろうか。

いや、きっと伝わっている。

そんな根拠のない確信をしていた。

宛てもない旅の中、各々の意志を尊重した結果、貴方とカエデ、アルヴァ、アリサ、レイス以外はメンバーから外れ、自由に生きていった。

バジルスは、そもそも軍の所有だったため、この旅には同行していなかった。

あくまで捕虜としていたのだから、当然のことではあるのだが。

心が壊れたのか、貴方はただ、毎日空を眺めてばかり。

生活費を稼ぐため、アリサとカエデが依頼をこなしたり、ダンジョンの攻略をしたりしている。

アルヴァは掃除を、レイスはストリートライブをそれぞれ行う。
506 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:08:14.16 ID:cqrHpGTW0
そんな生活をしている最中、ある日の夜のこと。

アリサは、貴方と同じ布団にいた。

「…こうなってしまったのは、私の責任です。だから」

アリサは、スカートの裾に手を掛け、外す。

「…いや、選んだのは俺だ。アリサは悪くない」

貴方は距離を取る。

しかし、距離を縮めてアリサは顔を貴方の胸に押し付ける。

「…今からしようとしていること、分かりますよね」

「…分かってはいる。その上での拒絶だ」

気を遣っていると分かっていても、心にくるものがある。

「そうですか。なら、私が勝手にしますのでお気になさらず」

それでも、引き下がれない。

これは贖罪だから。

主の未来を破滅に導いてしまった、愚かな従者ができる唯一の贖罪。

甘い口付けをして、一言。

「どんな貴方でも、私は受け入れますから――」

――だから、今だけは私に夢を見させてください――。


番外編 泡沫に消えし理想 Alisa side 〜Fin〜
507 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 03:10:05.11 ID:cqrHpGTW0
以上でアリサ編は終わりです。放浪生活の中もちょこっとだけ載せてみました。明日は今度こそ更新をします。

レイス編はもう少し待ってください…。ちょっと難産となっております…。申し訳ない…。
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 07:43:12.71 ID:4xTtPSVXo
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 18:08:04.12 ID:O4q/2NT10

主人公の決断前に大喜びして逃がすアリサに武器まで返しちゃうリゼル

独房でアリサに自決されてたらリゼルは詰んでたな
510 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 23:01:43.58 ID:1LspvTdx0
>>509、約束しているから自決は無理ですね…。いつの間にかリゼルが知将に。どうしてこうなった。

今から再開していきます。ダイス機能ってこの板にはないですよね?あったらカジノとかがやりやすいんですが…。
511 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 23:48:55.03 ID:1LspvTdx0
貴女は、二人の目を見つめる。

どうなっても後悔しない、とでも言いたそうなリーシュと、気にしていない風のセフィ。

かつて、渓谷で貴女が言ったことを思い出す。

「…命を見捨てない…。それが私にできること…」

そして、貴女は二人に向けて言う。

「私は命を見捨てません。だから、あなた達を助けます」

「いいんですか?その結果、あなたが犯罪者になったり殺されたりしても」

「それでも、見捨てることだけはできません――」

――私も、あの人に救われたから――。

真っ直ぐな貴女の目をじっと見つめるセフィ。

やがて、根負けしたように手を挙げる。

「やれやれ。では、おとなしく助けられますかね」

「ありがとう…!一生あんたについて行くよ…!」

「あ…あはは…」

そのやり取りを見たグラウスは微笑み、貴女のエウルスを二人に投げ渡す。

「ほれ、さっさと契約を解除しな。そうすりゃ、お前さんたちも自由に動けるだろ」

「契約…?」

「…あぁ。嬢ちゃんには言ってなかったか。奴隷は皆、魔法で契約をしてるんだよ」

簡単に逃げられないようにな、とグラウスは言う。

二人をよく見れば左の鎖骨付近に刻印のようなものがある。

これが契約の証なのだろうか。

「…恥ですよ。天使たる私がこのような契約をしたなど…」

「まぁいいんじゃない?どうせおさらばだし」

「それでもです…。これでは天界に帰った時にどう茶化されるか…」

二人はエウルスを手に持つ。

すると、刻印は徐々に霧散して、元の柔肌が姿を現す。

「これは…。あの祭壇に祀られていた聖盾エウルス。よくアッティラを始末できましたね」

「冗談じゃねぇよ…。あんな化け物とは二度と戦いたくないわ…」

「残念。この世界が存在する限り、どこかにはいますよ」

「………」

口を開けたままグラウスは硬直するが、すぐに話を戻す。

「っと。早く逃げないと追手が来るぞ」

「どう逃げんの?」

先ほどとは違い、冷静に問うリーシュ。

それに対し、グラウスは指を二本立てる。

「旅の扉を使うか、近くの町に逃げるか。さあお選びください」

「軽くねぇかな。あんた」

「グラウスさんはこういう人だから…」

呆れた顔でグラウスを見るリーシュ。

貴女は胃痛でお腹を押さえる。
512 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/12(日) 23:50:43.74 ID:1LspvTdx0
↓2に、どちらのルートを取るかをお願いします。危険な方は旅の扉ルートですが、現在の貴女一行だと過剰戦力なので余裕でしょう。
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 23:55:23.65 ID:6jTGA4Fjo
旅の扉ルート
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 23:56:05.39 ID:8/NLwr8DO
じゃあ旅の扉の方で
515 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/13(月) 00:24:01.33 ID:UQ/nAM3K0
「遠くに逃げるのなら旅の扉を介した方がいいでしょう」

「近くの町に逃げても、情報が行けば駄目ですし」

「へ?」

「じゃあそっちで」

「…マジかよ」

グラウスの表情がどんどん険しくなり、汗が流れてくる。

「…あの道、夜は危険な魔物がいるって…」

「…ああ。ベヒーモスだ」

聞いたことがない魔物の名前を出され、リーシュと貴女は首を傾げる。

「光を嫌う『混沌の獣』。夜の世界を徘徊し、命を食む犬っころですよ」

「犬っころって…。お前なぁ…」

「あんなの雑魚じゃないですか」

「えぇ…」

正反対の反応をする二人がおかしくて、リーシュと貴女は笑ってしまう。

「…早く移動しませんか?」

「あ、ああ。しっかりついてこいよ!」

「っし。体が軽くなったおかげで楽に動ける」

「み、皆速いよぉ…」

この中で最も遅い貴女は距離を離されていく。

それでも、貴女は充分なほど速いのだが。

「大丈夫?あたしがおんぶしてあげようか?」

「え?…あぅ…。お願いします…」

「ん」

軽く返事をしたリーシュは、貴女を片手で背中に乗せる。

そして、リーシュは音を超え、町を駆け抜けた。
516 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/13(月) 00:43:54.49 ID:UQ/nAM3K0
「ふぅ…。ここからが正念場だ…」

旅の扉の設置場所、湖の近くに逃げてきた貴女たち。

予め双剣を手に持つグラウスと、光を片手に集めるセフィ。

貴女は月切とエウルスを構え、リーシュは何もせず、後ろを歩く。

「おや、リーシュは素手ですか」

「武器を買う金なんか無かったからさ。あたしとしてはこれが一番しっくりくる」

拳を握りしめるリーシュは、周りの様子を確認する。

「ん…。なんか大きな奴がいるな」

「じゃあそれがベヒーモスだな」

「さて、どうでしょう」

各々の発言が噛み合っていない。

いったいどれが正しいのか。

貴女では判別がつかない。

「あ、気付いた」

湖の畔に辿り着いた時に、リーシュが呟く。

すかさず、全員が同じ方向を向いた。

迫りくる地響き。

薙ぎ倒される木々の音。

その正体は。

「ガォォォォォォアァ!」

全身が白い、猛々しい獣。

「ね。言ったでしょう」

「…ナラシンハかよォォォォ!?」

白目を剥くグラウスと、優雅に浮かぶセフィ。

「あーもう!ふざけてないでとっとと仕留めるぞ!」

「お…大きい…」

巨大なる獣の剛腕が、一行に迫る。
517 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/13(月) 00:47:19.55 ID:UQ/nAM3K0
直下コンマ判定 0が二人いるため判定強化&勝利条件緩和 二回成功で勝利

1(補正値なし):ファンブル
2、3:失敗
4〜6:成功
7、8:クリティカル
9、0:特殊判定
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 00:48:05.56 ID:8hVqiSRDO
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 00:58:34.65 ID:Gn7qPqIN0
りーシュが素手なのは「耐えられる武器を」買う金が無かったからなのではなかろうか
520 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/13(月) 01:07:52.58 ID:UQ/nAM3K0
「おらァ!」

ナラシンハの剛腕を、右足一つでリーシュは蹴り返す。

「天使の力、その身に刻みなさい」

よろけたナラシンハに、セフィは光の柱を大量に突き刺す。

そして、セフィは一振りの剣を掌に作り出す。

「救済の光よ。形となりて魔を裂け」

振り下ろした剣から、大きな衝撃波が放たれる。

大きい、というレベルではない。

その衝撃波は、海を割ったのだ。

「おや、避けましたか」

柱を折り、横に跳ぶことで回避するナラシンハ。

危機を感じたのか、後ろ足で立ち、前足で角を抜く。

角は剣と化し、肉体は修復される。

更に、その肉体は肥大して力を増す。

「仕切り直し、というわけではありませんか」

「どうでもいいさ。潰せば終わるんだから」

「同感です」

二人の出す気迫に気圧されるナラシンハ。

「…なぁ嬢ちゃん」

「はい…」

「なんで二人は捕まってたんだろうな…」

「酔っぱらってたんじゃないですか」

「かなぁ…」

格の違いを見せつけられた二人の心は、ポッキリと折れていた。
521 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/13(月) 01:09:01.78 ID:UQ/nAM3K0
直下コンマ判定 

1(補正値なし):ファンブル
2、3:失敗
4〜6:成功
7、8:クリティカル
9、0:特殊判定
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 01:18:48.07 ID:Gn7qPqIN0
523 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/13(月) 01:39:43.69 ID:UQ/nAM3K0
「フッ」

ナラシンハの横薙ぎを、上から叩き付けることでリーシュはやり過ごす。

その一撃で、ナラシンハの剣は折れてしまう。

「そんな武器じゃ無理だよ」

リーシュは空中でクルリ、と一回転し、剣の破片を足場にナラシンハの腹部に突撃する。

「ゴガァァァ…!」

空に弾かれたナラシンハ。

その上から、翼を煌かせるセフィが無数の光弾を放つ。

「全身穴だらけにしてあげますよ」

光弾は吸い込まれるようにナラシンハに降り注ぎ、全身を穿つ。

そして、塵すらも残すことなく、ナラシンハはこの世を去った。

「おいセフィ。消えてるじゃんか」

「うーん。半分くらいで良かったですかね」

大穴が空いた地面を見ながら、セフィは呟く。

「確信したわ。コイツラが喧嘩したら世界がヤバい」

おそらく、今の戦闘でも全く本気を出していない。

本気を出した時、この世界がマトモな形を保っていられるか。

真面目に心配になったグラウスだった。

「おーい。旅の扉とかいうのを使うんでしょ?」

「…今の戦闘の余波で潰れたんじゃね?」

「いいえ。未だ健在ですよ。天使の私が言うのだから間違いない」

「それに先ほどのあなたの言っていたことは間違っていましたし」

「それをほじくんなチクショウ!」

「………」

貴女は、先ほどの戦闘を見て気絶していた。

なお、旅の扉は機能していたので、一行は普通に戻って来た。
524 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/13(月) 01:43:24.09 ID:UQ/nAM3K0
>>519、リーシュゴリラ説が浮上してきましたね…。

直下に、これからの行動、若しくは、目的地をお願いします。

本日の更新はこれで終了となります。次回は木曜日を予定しております。間に合えばレイス編も同時投下予定です。お疲れ様でした。
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 01:50:08.63 ID:Gn7qPqIN0
乙乙
クレゾンヌの森の方角途中にある町
食料の補給


リゼルは知将と呼べる配下が多数居ないと不自然な設定ではあった
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 06:52:22.62 ID:8hVqiSRDO
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 07:01:51.33 ID:+6uoFwsAo
乙です
528 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 00:42:46.21 ID:m0MDDdui0
すみません。今日の本編更新は無理そうです…。レイス編は完成しましたので、そちらを投下します。

来週の木曜日なら再開できるかと思います。申し訳ございません…。
529 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 00:44:28.69 ID:m0MDDdui0
番外編 すれ違う二人


ハイランディアを後にして2年。

アーバンとの約束は、ハイランディアが滅んだことでお釈迦になり、今もなお、各地を転々としている。

これから綴られるのは、その中で立ち寄った港町『ホルム』での出来事。

「んぅ…。もう朝かぁ…」

12歳を迎え成長したレイス。

その海のように蒼い髪は腰まで届き、下半身のヒレの鱗も鮮やかに色づいている。

リビングに向かうと、温められたミルクが机の上に置いてある。

既に探索に向かったカエデが用意したものだ。

少しずつ、喉を温めるように口にしていく。

歌は喉が命、素晴らしい歌は、完璧に管理された喉から出るもの。

「…かいぬしはまだ寝てるのか。堕落しすぎだよ」

閉められたドアを見ながら呟くレイス。

その目には、憐憫の色が表れていた。

「はぁ…。ご飯だけでも作ってあげておくかな」

アリサ謹製の椅子に上り、野菜を切り刻む。

次に、それをフライパンに放り込み、油を投入して炒めていく。

サッと炒めた野菜に、塩を軽くまぶして皿に乗せる。

今のレイスにはこれが限界だが、本人は満足気だ。

「…ふん。別にかいぬしの為じゃないし。お姉ちゃんたちが悲しむのが嫌なだけだし」

そう自分に言い聞かせながら、レイスは机に皿を置いて家を出た。
530 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 00:48:33.53 ID:m0MDDdui0
「〜〜〜♪」

レイスが一言紡げば、歓声が上がる。

二言紡げば、涙を流す。

三言紡げば――。

――ああ、もう俺死んでもいいや――。

――ワイの命と金はレイスたんのためにあったんや――。

――Leithhhhhhhh!saikoooooooooo!――。

――レイスちゃん可愛い…可愛くない…――?

――人々が崇める。

彼女の歌の魔力は、人の心を魅了した。

「ありがとうございましたっ!」

アリサ直伝のお辞儀で、ストリートライブは締めくくられる。

途中から見ていたカエデに抱きかかえられ、帰路につく。

その間に、レイスは不安を零していた。

「…かいぬし、いつまで落ち込んでるんだろ…」

曲がりなりにも貴方が主人であることを、レイスは理解している。

それが未だに塞ぎ込んでいるのが、レイスにとっても気掛かりだった。

「分からんな。だが、原因は私にあるだろう」

「スジャータ嬢を守り切れなかった私にな」

そう言ってカエデは拳を握りしめる。

「………」

レイスは何も言えなかった。

家族を喪う痛みを、レイスは理解している。

だから、貴方がそれに苛まれているのも理解できる。

だからこそ、何も言えなかった。

今更、何度も蔑んできた自分が、どのような顔をすればいいのか。

それが分からなかったから。

「…レイス、お前は私のようになるなよ」

「…お姉ちゃんは悪くない」

レイスは思ったことを言う――。

――悪いのは、この世界なんだから――。
531 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 00:49:57.24 ID:m0MDDdui0
家に戻ると、アリサとアルヴァが洗濯、貴方が調理を行っていた。

「ん…。ああ、カエデとレイスか。お疲れ様…」

貴方の目の周りには、濃ゆい隈が。

本人は語っていないが、その原因は嘗ての悪夢。

守るべきものを目の前で喪った、あの瞬間。

「かいぬしはもう寝て。いても寧ろ邪魔だから」

フライパンから手を離し、水を取りに行った隙に、貴方の背中を押す。

しかし、貴方は頑なに動かなかった。

「これくらいはどうってことはないさ…」

「寝てって!」

珍しく大声を出したレイスに驚き、貴方は硬直する。

「お姉ちゃん、お願い」

「任されました」

その間に、アリサが手刀を当てて気絶させた。
532 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 00:52:00.08 ID:m0MDDdui0
その日の夜、レイスは一人、リビングに佇んでいた。

「かいぬしが悪い人じゃないってのは、分かってるはずなのに…」

嘗て母を殺めた男の顔がフラッシュバックする。

男を見るだけ、ただそれだけで。

「…いや、きっと私がそう思ってるんだ。どこかで悪い人だって。男は皆そうなんだって…」

「ひゃっ!?」

唐突に開かれたドアの音に驚く。

「…あれ、レイスちゃん」

「アルヴァお姉ちゃん…」

「わわっ!どうしたの?」

アルヴァを見たレイスは、堪らず抱き着く。

そして、その思いをアルヴァに向けて吐き出した。

「なるほどねぇ…。ご主人様が悪者に見えちゃう…か」

こくん、と頷くレイス。

その目は、答えが分からなくて揺れていた。

「…まずは、ご主人様のことを知るべきだと思うな」

「ご主人様も辛い思いをしてるから。それを知れば、変わるはずだよ」

いつになく、はっきりと断言するアルヴァ。

貴方が絡むといつもこうなっている気がする。

「…うん。そうしてみる」

昔、レステルにいた時に聞こうと思って聞けなかったこと。

それを、今度こそ――。
533 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 00:52:41.49 ID:m0MDDdui0
目が覚めた貴方は、頭を抱える。

「…また、あの時の記憶か」

嫌気が指すほど見せられた光景。

スジャータに庇われ、スジャータの胸が穿たれるあの光景。

それは、今もなお心を蝕んでいた。

コンコンコン、と響く丁寧なノックの音。

「鍵は開いてる…。入っていいぞ…」

開かれた扉から見えるのは、蒼い長髪。

そう、レイスだった。

「…かいぬし、少しだけいい?」

「ああ。レイスこそ、ライブはいいのか?」

「今日は夕方からだから」

レイスはそう言って、貴方の膝に座り込む。

「…大丈夫か?熱でも出てるんじゃ…」

「何それ。偶にはいいでしょ」

「それより、かいぬしのことを知りたいの。聞かせて」

遠慮がちに頷いた貴方は、ぽつり、ぽつり、と口を開く。
534 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 00:53:56.29 ID:m0MDDdui0
「…そっか…。お父さんの望みだったんだ…。奴隷解放は」

「もう叶わないがな…」

貴方は目を伏せる。

その目はどこか虚ろだ。

「…だけど、無駄じゃなかったでしょ」

「かいぬしがその望みを叶えようとして、お姉ちゃんたちも、わ…私も救われたんだから…」

「か…感謝だってちょっとだけしてなくもないんだからね…!」

素直にありがとう、と言えない自分を恨めしく思いながらも、思いを伝えるレイス。

それを見た貴方は、少しだけ柔らかい表情になった。

「感謝…か。寧ろ、こっちがする方だよ」

「こんな俺に付いてきてくれて、一緒にいてくれて、本当にありがとう」

「これでも、一応奴隷なんだから当然じゃない!ふん」

そっぽを向くレイスの頭を、貴方は撫でる。

いつもと態度は変わらないかもしれない。

しかし、その心は確かに、貴方と、皆と共に。


番外編 すれ違う二人 〜Fin〜
535 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/17(金) 01:06:02.91 ID:m0MDDdui0
これでレイス編は終了となります。気になるレスがあったら、文章に起こして投下するかもしれません。

>>525、現在位置はギュンデームから復路を少し進んで、それから山沿いの旅の扉に向けて移動した感じです。

従って、目的地は自動的にギュンデームとなりますが、それ以外でも比較的近い位置に街があります(ギュンデームよりも奥)。

直下に、ギュンデームを目指すならその旨を、別の街を目指すなら街の特徴と名前をお願いします。お疲れ様でした。
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/17(金) 07:31:33.58 ID:TIjpKQ3co

ギュンデームを目指す
537 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/24(金) 01:25:24.58 ID:onvVYn/a0
遅くなってしまいましたが、今から少しだけ再開します。安価を出すところまでは書き溜めていますので、少々お待ちください。

また、ちょこちょこ出ている魔物の名前は、FF13-2に出てくる魔物と同一のものとなっております。(ロングィやナラシンハ、アッティラなど)
538 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/24(金) 01:26:42.55 ID:onvVYn/a0
旅の扉を利用して、ギュンデーム付近に戻ってきた貴女一行は、食料補給のためにギュンデームへと戻る。

既に瓦礫は撤去され、修理に勤しむ人たちでいっぱいになっている。

「そっちの木材は宿屋の天井用だぞ!何?トタンをもう張った?このバカ野郎!」

そう言って飛び膝蹴りをかますデコが光る青年。

触れてはいけないものと判断した一行は、それを無視して広場に荷物を置く。

「んーと。リーシュは嬢ちゃんを見ておいて、セフィは俺と買い物だ」

「分かった」

「天使にそんなのさせるんですか?」

グラウスは笑顔でエウルスを手に持つ。

「…仕方ないですね」

セフィは渋々グラウスに同行する。

「ん…。…あれ?ギュンデーム?」

「おっ。目が覚めたかい」

膝枕をされていた貴女は、目をパチクリさせている。

「あのバカ二人は買い物に行ったからさ。あんたもゆっくりしてな」

「あ、はい」

不思議と、彼女の言うことを聞いてしまう貴女。

その理由が何なのか思案するが、正体は分からない――。

――でも、リーシュさんの膝枕。あったかいなぁ――。

貴女はその暖かさに身を委ね、目を閉じた。
539 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/24(金) 01:27:16.93 ID:onvVYn/a0
「重い…。これ持ってくださいよ」

「無理だ。俺だって重いんだから」

そう言う二人の手には何もなく、その周りに食料が浮いている。

「一々浮かすのも面倒なんですよ」

「………」

「あの、本当にやめてください。ちょっと心折れそうなんです」

エウルスを見せるたびに、セフィの表情が固まる。

余程屈辱的なものだったのだろう。

「あなた…。悪魔よりも悪魔してますよ」

「バカ言え。人も天使も、そして悪魔も、皆性格は違う」

「天使みたいに優しい悪魔もいれば、悪魔みたいな天使もいる」

否定はしません、とセフィは返す。

「ですが、悪魔は悪魔。それは変わらない事実です」

「だから、私は全ての悪魔を滅します」

強い意志を持った目で、グラウスを見つめるセフィ。

「…滅する…ね。嫌な記憶だよ。マジで」

――昔の俺みたいだな。セフィは――。

生き写しのようなセフィを見て、グラウスの表情は少しだけ暗くなる。

「…ん。なんで伝書鳩が俺の肩に」

突然肩に停まった伝書鳩。

その足には、一枚の紙が。
540 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/24(金) 01:27:51.41 ID:onvVYn/a0
「どれどれ…」

開かれた紙には、こう記されている。

―――――――――――――――

親愛なる我が夫へ


旅は順調に進んでいるのなら、俺も喜ばしい。

進む場所を見失った時は、一度空を眺めるのもいいと思うぞ。

結構、そうしたら次にすることが見つかるものだ。

適当に進む、というのもいいかもしれないがな。

誰よりもお前を愛す妻より

―――――――――――――――

紙の端には、血判が一つ押されている。

「ハハ…。ハニーからの手紙だったわけか」

「アツアツですね。文の意味が少々おかしいですが」

「ぶっ飛ばすぞオラ」

そう言いながら、血判に指を当てるグラウス。

血が淡い光を帯びると同時に、グラウスの表情が険しくなる。

「…悪い。用事ができちまった。お前さんたちは好きに行動してくれ」

「…はい?」

「加速帯形成完了。方向修正良し。目標地点への最短到達ルート確認」

――跳べ。音を、世界すらも置き去りにして――。

そして、グラウスは雷を纏って空を駆けた。

「…荷物、増えたじゃないですか」

くすねておいた紙を折り畳みながら、セフィは呟く。

「視たところ、目的地は奴隷大国の首都みたいですね」

――はてさて、そこに何があるのやら――。

セフィは、心底愉しそうな笑みを浮かべると同時に、地面に落ちている荷物とエウルスを浮遊させて、貴女たちのところへ戻る。

広場には、気持ちよさそうに眠る貴女と、貴女の頭を優しくなでるリーシュの姿があった。
541 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/24(金) 01:29:37.66 ID:onvVYn/a0
直下に、これからどうするかをお書きください。グラウスが離脱したこと以外は、変化は生じておりません。

短いですが、今回はこれで終了となります。次回予定している日は金曜日…今日です。お疲れ様でした。
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/24(金) 02:20:28.00 ID:6jOAPd8q0

ギュンデームの復興支援のために魔物の残党狩り
543 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 00:43:40.39 ID:tR+Xhzjb0
遅れましたが、今から再開していきます。
544 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 00:44:13.75 ID:tR+Xhzjb0
「ただいま戻りました」

「お疲れ。これからどうする…って、グラウスはどした?」

「所用で一時的に脱退するようです」

リーシュの目が点になる。

経験が豊富であろうグラウスが脱退した今、どこに行けばいいのかも分からない。

冒険というものを内心楽しみにしていたリーシュにとっては、辛い状況だった。

「とりあえず、この町の不安要素を取り除きましょうか」

「ダイボロスに破壊された後なら、混乱した魔物に攻撃されてもおかしくないですし」

「何、そのダイボ何たらって」

「図鑑でも見れば分かるんじゃないですか?」

「…字、読めないんだよ」

脳内に警鐘が鳴ったセフィは逃げ、イラっとしたリーシュは後を追う。

「学校行く金なんか無かったんだよぉぉぉ!待てオラァァ!」

「怖い怖い怖い。風圧だけで空を飛ぶとか、どこの諜報部員ですか」

変態軌道で空を駆けるセフィも大概だが、それに追従できるリーシュが特におかしい。

これで、ただの人間なのだから恐ろしい。

「ぐえっ」

追い付かれ、首を掴まれるセフィ。

間髪入れず、リーシュは全身を固めて身動きを取れなくする。

「あっ不味い」

「チェストォォォォ!」

そして、超速のパイルドライバーを叩き込む。

「ぐえー死んだー。死にましたー。これ絶対死んでますー」

「それだけ喋れるなら充分だろ。前にも言ったけど、それで弄るのはやめて」

「…考えておきます」

「よし、もう一発かますか」

足までめり込んだ状態で当たり前のように話すセフィと、気にも留めないリーシュ。

二人にとって、これこそが普通の日常だった。
545 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 00:44:42.94 ID:tR+Xhzjb0
「そういや、冒険者ってどんな感じなの?」

眠っている貴女を背負いながら、セフィに問う。

「一般的には、四人で組んで冒険するのが多いですかね」

「前衛二人、回復役、支援役って感じです」

「ふむふむ。あたしはどれよ」

「ゴッドハンド。脳筋の前衛です」

「首折るよ?」

目を逸らすセフィの横腹を小突く。

「…まぁ、リーシュが前衛、私とグラウスがオールラウンダー…何でもできる人ですね。貴女が回復役って感じでしたかね」

「ふーん」

軽い返事をして、歩く速度を上げる。

樹に刻まれている傷痕が増えてきているのだ。

「…こりゃ、セフィの言う通りかな。だいぶ混乱してるみたいだ」

傷痕に手を触れる。

樹液が漏れ出ていることから、最近付けられたものだと考えられる。

「それでは、楽しい楽しい残党狩りと行きましょうか」

「危害を加えるなら、潰すだけってね」

左手に、四色の光を纏うセフィ。

紐で貴女を固定し、拳を合わせて笑うリーシュ。

これから始まるのは残党狩りではない。

ただの、一方的な蹂躙である。
546 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 00:45:15.10 ID:tR+Xhzjb0
直下コンマが3以上で残党討伐完了となります。8〜0だと何かが…?
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 00:49:08.45 ID:WB03kJhmo
548 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 01:52:30.96 ID:tR+Xhzjb0
「根幹成す四元素。我が手に集い、暴虐となりて」

「赴くままに命を食み、全てを無へと還し給え」

四元魔法『エレメト』、その最上位魔法である『エレメガ』。

炎、水、風、雷。

魔術の、現象の基本となる元素を、互いに干渉させ攻撃に用いる魔法。

四元素が交わる時、それぞれが干渉し合うことで、膨大なエネルギーと共に辺り一面を破壊する。

それを強制的に起こすこの魔法は、四元素を交わらせる魔法の中で当然、詠唱難度は最も高い。

二つ交わるだけでも干渉が起きるため、同時に詠唱する混合魔法も、干渉によって事前に消滅しないように注意しなければならない。

四つを同時に、完全なバランスで干渉させるこの魔法は、非常に繊細な調整を要求される。

左手の光が集い一つになり、地面へと潜り込む。

刹那、地割れのように光が噴き出し、森の大部分が消し飛ぶ。

混乱していたが故に、人間を見つけて飛び出した魔物は、肉塊すらも残さず、悲鳴も上げられず、無になった。

「滅茶苦茶なことするなぁ」

魔法の勢いを利用して、上空に飛びながらいうリーシュ。

「面倒なので後はよろしく」

「あいよ」

空中でハイタッチをし、一気に地面へと加速する。

「プルプっ」

「次はあたしだ。悪いね。これも仕事なんで」

偶然着地点にいたスライムを踏み潰し、残っている魔物に急接近する。

「ガルルッ!」

「残念」

鋭い鉤爪をひらりと避け、左足で蹴り上げ、右足の回し蹴りで吹き飛ばす。

その一撃で魔物は絶命。

勝機が無い、と判断した魔物は一目散に逃げ出す。

「逃がさない」

が、退路にリーシュは回り込み、適当に木々を折る。

そして、それを投擲。

凶悪な弾丸となったそれは、脳を抉り命を奪う。

「1、2…40匹くらいか?」

「私は72匹です」

「あーあ。負けたかぁ」

更地と化した森を後に、一行は去る――。

――何か言われる前に逃げるのが一番だしね――。

この後、色々あって更地にダンジョンが出現。

凶悪な魔物が潜む、腕試しの名所となったんだとか。
549 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 01:53:26.25 ID:tR+Xhzjb0
直下に次の行動をお書きください。
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 02:09:10.72 ID:ZwAN9YjN0
ギュンデームで怪我人の治療
をしながら奴隷大国の首都の情報を聞いて回ってみる
551 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 02:16:38.74 ID:tR+Xhzjb0
怪我人は現時点では一人もおりません(>>397参照)。

魔物の残党狩りも、ギュンデームが襲撃される前に行っています。

ですので、今回の行動は情報収集のみとなりますが、それで良ければその旨を、変えたいのなら、新たに行動をお書きください。
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 02:19:25.30 ID:ZwAN9YjN0
全員完治かごめんなさい
情報収集のみでお願いします
553 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 02:34:44.80 ID:tR+Xhzjb0
岩場に荷物を置いたところで、貴女は目を覚ます。

「…あれ?ギュンデームにいたはずなのに…」

「お。目が覚めたか」

目を白黒させる貴女に、畳み掛けるようにセフィは口を開く。

「いいですか。グラウスは所用で奴隷大国の首都に単身、乗り込みに行きました」

「ほえ?」

「これからどうするか。これは一応のリーダーである貴女に委ねます」

「貴女が望むのなら、情報を私たちが収集して来ましょう」

――理由も特徴も知ってはいますが、すぐ教えてばかりでは成長しない――。

――少しは自分でどうするか決めさせなければ――。

悪魔憎し、という思いが強いセフィだが、天使らしい、人を導こうという思いも同時に内包している。

その手段が真っ当だとは限らないが。

「…グラウスさんが、私たちを置いて行くということは、それだけ大変なことが起きていると思うんです」

「私じゃ力にならないかも…。だけど、少しでも役に立ちたいんです…!」

その言葉を聞いたセフィは微笑む。

「行きますよ。これからは私たち従者の仕事です」

「ん。あたしたちも大きな恩があるからな。返すためなら何だって」

そして、二人は姿を消す。

「…グラウスさん。どうしたんだろう…」

一抹の不安が、貴女の胸の中で燻っていた。

その不安は的中するのか。

それとも、杞憂で終わってくれるのか――。
554 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 02:36:50.41 ID:tR+Xhzjb0
直下コンマが5以上で、奴隷大国の首都の情報及び、近況の情報が開示されます。

田舎町:-1
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 03:24:03.24 ID:ZwAN9YjN0
556 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/25(土) 03:38:05.25 ID:0nMQXK/2O
本日の更新はこれで終了となります。次回予定は木曜日です。お疲れ様でした。
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 03:46:04.75 ID:ZwAN9YjN0

軍と戦えるレベルの力をもちがなら奴隷になった二人がする情報収集
主人公なら出来るとは言わないけど
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 09:14:10.83 ID:cgDptq/0o
559 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/01(金) 01:21:29.18 ID:VYHYdb070
遅れましたが、今から再開します。更新できる量は少ないと思います…。
560 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/01(金) 01:22:24.78 ID:VYHYdb070
「そこの人ー、奴隷大国のことって知ってるー?」

「なんだそれは…。俺はそんな国知らないけどな」

「うぇ。知らないのか…」

まずはデコ光りの青年に声を掛けるが手掛かりなし。

気を取り直して、屋敷のメイドや医師にも聞いてみるが、結果は芳しくなかった。

「…ダメだこれ!」

ベンチにもたれ掛かるリーシュ。

その顔は疲れ切っている。

「…ダメみたいですね」

リーシュの上に、セフィが飛んでくる。

リーシュの額に青筋が立つ。

「…セフィは良かったのかよ」

「…残念ながら」

「「はぁ〜…」」

そして、二人して大きなため息を吐き、ベンチに横たわる。

「流石に、こんな田舎町で情報収集は無理がありました」

「あの国は、別の大陸にありますからね。空路は未だ、人類が確立できていないので、船が必要ですし」

「…おい、情報知ってそうじゃん」

「…知ってますが、ホイホイ教えても貴女のためにはなりません。彼女自身の意志で決めることですから」

答えになってねえ、とリーシュはセフィにチョップを入れる。

「つまり、便利な物に頼り続けるのではなく、その場にある物を活用して乗り越える。そういうことです」

「回りくどいなぁ。それが天使のやり方かい」

頷くセフィを見て、リーシュは頭を抱える。

「…まぁ、セフィの言うことも間違ってねえし…。ここでの収穫だってゼロだし…。そう伝えるか…」

ゆっくりと起き上がったリーシュは大きく跳躍。

後を追い、セフィも飛翔した。
561 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/01(金) 01:22:59.05 ID:VYHYdb070
大きな岩の上で、体育座りをして待つ貴女。

その視線は、空に佇む月に向かって。

「…月切…。月を切る剣…」

一回、軽く振ってみるが、当然月が二つに割れるはずもなく。

「無理だよね。どんなに遠いのかも分からないんだもん」

鞘に納め、人差し指を空に向ける。

小さな蝶が、指に留まる。

「綺麗…」

紫と青のコントラスト。

それが月光を浴びて、様々な光を放つ。

興味をなくしたのか、すぐに飛び立っていく蝶。

顔を少し落とした貴女。

その直後に、セフィとリーシュが戻ってくる。

「ただいま戻りました。収穫は無し、です」

「別の街に行った方がいいのかねぇ…。場所なんかどこも知らないわけだけど」

「地図なら買いました。普通の地図ならどの町でも売ってますし」

「少しだけ見直したわ」

「はいアルテマ」

小さな光弾をリーシュに放つ。

右手で掴んだリーシュだが勢いは殺せず、森の方へと吹き飛ばされる。

「…何かヤバいな。捨てとこ」

上に投擲して1秒後、大きな爆発が発生する。

「むぅ。この程度じゃ流石に傷一つ付きませんか」

「…いつもの行動が悪いから見直したけど、勘違いだったか」

セフィの後ろに回り込み、チョークスリーパーを掛けるリーシュ。

「酷いです。泣きますよ?」

ムスッとした表情をするセフィ。

「…いい歳した大人が」

「天使に年齢なんて些細なものなんです!数千年生きるのはザラなんですよ!」

また何かやらかしそうな二人を諫めて、貴女はどうするかを考える。
562 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/01(金) 01:23:50.14 ID:VYHYdb070
直下に、これからどうするかをお願いします。何かイベントが起きるのでも構いません。
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 01:32:22.88 ID:irwrfGx50
顔は知られていると思うので特急貴族の屋敷まで行き奴隷大国とそこへいく手段について聞いてみる
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 01:34:07.43 ID:irwrfGx50
って今聞いた相手が屋敷の人たちかごめんなさい

流通の多い街へ行く
565 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/01(金) 01:44:27.86 ID:VYHYdb070
そんなわけで、>>339の都市ルート中の街のうち一つへと移動することとなります。海とは面しておりません。

↓1、2、3に街の特徴と名前をお願いします。特徴は全て採用、名前はこのレスのコンマで採用するレスを決定します。

1〜3:↓1のレス
4〜6:↓2のレス
7〜9:↓3のレス
0:こちらで適当にそれっぽい名前を
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 02:08:32.19 ID:irwrfGx50
亜人奴隷の臓器を使った薬品研究所がある

町の名前はミルト
567 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/01(金) 02:35:11.35 ID:VYHYdb070
時間が遅くなりましたので、本日の更新はこれで終了です。名前は直下のレスのものになります。他の安価も一つずつずらします。

次回予定は金曜日です。お疲れ様でした。あまり更新できなくてすみません…。
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 03:03:14.31 ID:HUaUYqJo0
ナバリーヒルズ
新興住宅地だったが最近は落ち目
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 08:00:38.87 ID:YYr/E7gDO
治安が良い所と治安が悪い所の差が激しい

ザルブルク
570 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/02(土) 01:34:08.08 ID:yoPJIoi00
地名は『ナバリーヒルズ』となります。また遅くなりましたが、今から再開です。
571 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/02(土) 01:35:20.52 ID:yoPJIoi00
貴女は、グラウスが過去に提案したルート、即ち、都市のことをセフィに伝える。

「…ふむ。レステル〜ギュンデームの道中で通過する都市ですか」

地図を開いて貴女に見せる。

「現在地はこちらですので、一番近い街はナバリーヒルズですね」

「なんだそこ」

「新興住宅地として開発された街だったのですが、付近にも大都市ができまして」

「最近は落ち目になっている哀れな街ですよ。一応、研究所がありますが」

首を上下に振りながら、うんうんと頷くリーシュと貴女。

地図をじっと見ながら、どれぐらい時間が掛かるかを計算する。

だが、スラムの住民だった貴女は分からない。

自分たちがどれほどの速度で動いているかと、地図が示している地形が何なのか、が。

「私たちが本気で動けば、数時間で着くでしょう。のんびり歩くなら、数日は掛かります」

「…なら急ぎましょう。手遅れになる前に」

「んじゃ、貴女はあたしが背負うよ」

ヒョイと貴女を背負い、腕を伸ばすリーシュ。

ついてきてくださいよ、と一言だけ言い、空を駆けるセフィ。

対するリーシュは一本の樹を折り、空に向かってぶん投げた。

「ほいっ」

「きゃあぁぁぁぁぁ!」

そして、その樹に軽々と飛び乗るリーシュ。

どこかの殺し屋みたいなことを平然とやってのける。

「そこに痺れもしないし、憧れもしないですが」

「黙らないと、全身の関節を逆に曲げる」

あははと笑うセフィだが、その表情は引き攣っている。

どうやら経験済みのようだ。

仲が良いのか悪いのか、よく分からない二人である。
572 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/02(土) 01:35:51.55 ID:yoPJIoi00
地面にめり込んだ樹の上に立つリーシュは、目の前の街門を通って中に入る。

夜にホルムから逃げ出し、ナバリーヒルズに到着した今は、既に昼を越えている。

研究所へと続く大通りは綺麗で、しっかりと整備されている。

「外見は良く見えますが、裏に入ると非常に汚らわしいですよ」

「スラムとかが可愛く見えますから。治安が悪いのなんの」

貴女の地元はスラムだったが、そこまで治安が悪いわけではなかった。

グラウス等が抑止力として働いていたのだろうか。

「研究所って何ですか?」

そう問う貴女を見て、セフィは難しい顔をする。

「…奴隷の臓器を実験材料とした、薬品の研究所ですよ」

「命を救うには、命を犠牲にしなければなりません」

「貴女だって、食事をするでしょう?それは、命を奪っているからできることなんです」

「…まぁ、この方法が褒められたもの、だとは人間は思いにくいでしょうね」

「私は天使です。根本的な考え方が違うので、この方法が悪いとは到底思えません」

何を言っているかは、貴女の頭には難解でよく分からない。

だが、酷い目に遭っている人がいることだけは理解できた。

「…皆が、楽しく生きていける未来って…。あるんですかね…?」

「…人間がいる限り、そんな未来は絶対に来ませんよ」

「人間は、争うことで繁栄してきた生き物ですからね。それを奪ったら、もう人間ではないんですよ」

そう言うセフィの表情は、達観していた。
573 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/02(土) 01:36:28.65 ID:yoPJIoi00
直下に、これからの行動orイベントをお願いします。
574 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/02(土) 02:03:33.00 ID:yoPJIoi00
すみません…。頭痛がするので、誠に勝手ながら終了させていただきます…。

次回はいつになるのか分かりませんので、分かり次第連絡します。本当にすみません…。
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 07:49:55.10 ID:2/65H4Kgo
乙です
イベントは研究所が火事になっているで
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/14(木) 19:13:39.51 ID:PD78By3e0
頭痛してから音沙汰ないが大丈夫か?
まさか脳か!?
577 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/18(月) 09:36:21.17 ID:Fsyq8F8NO
過労でぶっ倒れてました…。気が付いたら、見知らぬ天井が見えてビックリしましたよ。

再開は本日の夜の予定です。日を跨ぐ可能性大です。
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 11:33:45.43 ID:A8AGBogDO
待ってました
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 22:26:30.50 ID:KThgpCJH0
生きてて良かった
580 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/12/19(火) 03:03:18.28 ID:+anPTjjcO
すみません…。残業で時間を取られてしまいました…。火曜日なら流石に再開できるはず…。期待させておいて本当に申し訳ありません…。
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 03:56:36.97 ID:Il0PeUhGO
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 07:41:52.36 ID:vVmgX8a3o
仕事お疲れ様です
無理なさらずに
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 18:31:57.38 ID:xkOhPWDFo
年末だからしょうがないけど心配だ
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