貴方「奴隷たちに救済を」【安価スレ】【2スレ目】

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584 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 01:15:54.38 ID:XysiuMTM0
インフルエンザのA型に感染して地獄を見てました…。すみません…。今日の昼なら更新出来ると思います…。
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 01:33:36.02 ID:KHuIkGx20
本当にお大事に
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 07:16:54.29 ID:o04Ojw+DO
更新待っていましたが、大変なことになっていたのですね…
無理なさらずに
587 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:16:10.98 ID:LgIWHDO30
夕方になってしまいましたが、今から再開します。今回で二周目が終わってしまう可能性があります。
588 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:18:28.68 ID:LgIWHDO30
「…あれー?気のせいかな?あのデカい建物からめっちゃ煙出てんだけど」

リーシュが指差す方向には、大きくて、この地にはそぐわない外見の建物が。

「ああ。あれが研究所ですよ。絶賛バーニング中ですが」

「は?何で燃えてんの?奴隷の反逆?」

「アホですか。反逆しようがないのは、身をもって知っているでしょう」

「うぐ…」

二人は元奴隷、契約によって縛られた経験を持っている。

当然、契約の強固さも理解している。

「じゃあ、誰がやったのさ」

問い掛けるリーシュの傍ら、貴女は不思議な感覚を覚えていた。

――何だろう、この感じ――。

――懐かしい感じがする――。

大変なことが起きている中で、貴女の精神は落ち着いていく。

――神…いや、亡霊の類ですか――。

そして、異端なる者は分析をしていた。

――炎の神に捧げられた供物、人間の魂の集合体であるが故に、弱者に手を差し伸べるのでしょうね――。

――では、その魂は私が解放しましょう――。

手に集う光は、救済となりて。

現世に縛られた魂を救う、一振りの剣へと形を変えた。
589 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:20:25.76 ID:LgIWHDO30
研究所の入り口に一行が到着すると同時に、研究所を包む炎の激しさが増し、柱が立つように燃え上がる。

「ああっ…」

「こりゃもうダメだね。皆死んだでしょ」

「ですね。…皆さん、警戒を」

火の粉が舞う中、空に燃ゆる一つの火の玉。

それは形を変え、人となった。

「え…!?」

貴女の記憶の中から、一人の恩人の姿が引き出される。

――間違いない。

あの眼は、炎は。

紛れもなく、あの人のものだから。

「あ…あの…!」

精一杯、声を振り絞って叫ぶ。

言いたいこと、伝えたいことがあるから。

ありがとうの一言すら、言えなかったから。

しかし――。

「誰だ貴様は。俺ぁガキなんかとの面識は無えんだがな」

「あ…え…」

それは、はっきりとした拒絶。

想い続けていた心を否定され、貴女は膝をつく。
590 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:21:17.44 ID:LgIWHDO30
「ひ…えぐ…。うあぁぁあん…」

涙が溢れる。

辛くて、悲しくて。

これまでの旅の原動力だったそれは、消えてしまった。

「…おい、あたしたちのリーダーさんを泣かすとか、いい度胸してんな」

ゴキゴキと腕をリーシュは鳴らし、空を見る。

「そこは同感です。元々浄化する気でしたが、これには私もおこです。激おこぷんぷん丸です」

「…は?だから俺は知らねえって」

「ってなわけで、今から脳天かち割るわ」

「懺悔しても遅いですよ。魂が集積して、過去の行為を忘れてるからって許しませんので。傲慢?結構。それが天使ですし」

一人は鬱憤を――。

一人は使命を――。

一人は困惑を――。

各々が異なった感情を胸に抱きながら、激突した。
591 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:28:54.55 ID:LgIWHDO30
勝利条件:???の撃退または浄化

敗北条件:リーシュ、セフィの行動不能

今回の判定は特殊です。成功するごとに特殊コンマ判定を行います。

1:ファンブル
2〜5:失敗
6〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 17:30:33.68 ID:4qZRC4/Ho
593 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:30:59.68 ID:LgIWHDO30
あ、指定を忘れてました。直下です。
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 17:34:24.05 ID:4qZRC4/Ho
595 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:35:37.10 ID:LgIWHDO30
遅かった…。上のコンマを採用します。もう一度直下コンマ判定です。

1〜3:撤退していった
4〜6:ダメージを与えた
7〜9:隙を作った。貴女のアタックチャンス
0:勢い余ってゴートゥヘヴン
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 17:38:58.73 ID:o04Ojw+DO
はい
597 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 17:59:24.42 ID:LgIWHDO30
「セフィ!あたしが前に出る」

「いえ、ここは私が」

「あーたーしー!」

「…何コントやってんだこいつら」

跳躍して、青年の目の前まで移動したリーシュは、鋭い正拳突きを繰り出す。

だが、炎の壁で受け止められる。

「あちち。卑怯だぞー」

「何で今ので腕が燃え尽きないんだ…!とぉ…!」

間髪入れず、上空から奇襲したセフィの光剣を、炎で作り出した槍で止め、セフィへと投げ返す。

「どうも。お返しです」

セフィは直撃前に光剣を消滅させ、今度はアルテマを高速詠唱。

無数の魔弾を生み出し、飽和攻撃を仕掛ける。

「へっ。弾幕勝負なら負けないぜ!」

すぐさま青年も対応し、同等の物量の火炎弾でそれを相殺する。

「原初の炎が人を導き、数多の炎が道を照らした」

「なれば、俺の炎で世界に蠢く悲しみを破却せしめん」

青年の詠唱と共にセフィとリーシュ、青年の周りの空間が炎に飲まれた。

そして、翡翠色の巨大な瞳が、そこかしこから二人を見据える。

「固有結界、ですか。わー凄い」

「…気持ち悪いな。ぶっ壊すか」

「ちょ待っ」

しかし、リーシュの放ったオルテガハンマーで固有結界は砕け散った。
598 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 18:17:01.09 ID:LgIWHDO30
「えぇ…。こんなバカと戦り合ってられるかよ…」

消えゆく炎を尻目に、青年は背を向ける。

「逃がすかぁ!」

「ここで浄化させてもらいます」

そうはさせまいと二人は接近するが、極大の熱線を放射されたので、やむを得ず後退する。

「…こっちだって、死ぬわけにゃあいかねえんだわ。死んだ奴が言うのも何だがな」

「…一つ聞きます。本当に貴女のことを憶えていませんか?」

「あ?」

セフィの問いに怪訝そうな顔つきで反応する青年。

「…知らねえよ。だが、何か引っかかる」

「ほう…!それは興味深い。では、お眠りください」

セフィの翼から放たれた光弾を回避し、青年は舌を出しながら返答する。

「断るね。お前たちに付き合ってる暇は無いんで、じゃあな」

「待てよ!」

殴り掛かるリーシュだが一歩遅く、火の粉となって消えた青年には当たらなかった。

「ちっ、間に合わなかったかぁ。あの炎人間は何なんだよ」

「貴女と訳ありみたいですね。詮索はしないでおきましょう」

「…そうだね。それが良さそうだ」

今もなお泣き続ける貴女の傍に寄り添い、二人は慰め続けた。
599 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 18:19:39.51 ID:LgIWHDO30
直下に次の行動をお願いします。研究所の生存者はいません。
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 18:25:11.08 ID:KHuIkGx20
研究所周囲からの聞き取りで目的を探る
601 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 18:47:09.00 ID:LgIWHDO30
「大丈夫だよー。あたしたちが付いてるからねーよしよし」

「ひぐ…えう…」

リーシュは、貴女を抱き寄せながらずっと頭を撫でている。

しかし、一行に泣き止む気配がない。

「…任せました!」

「あ、こら!逃げるな!」

リーシュの制止を無視し、そそくさと姿を消すセフィ。

「ったく…。悪い奴じゃないのは分かってるんだけど」

天使のくせに、おふざけが過ぎるような気もするが。

――今は、貴女をどうにかしないとね――。

この行動に意味が無いとしても。

それでも、リーシュは優しく貴女を抱き続けた。

なんだかんだで、セフィが戻って来る頃には泣き止んでいた。
602 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 19:05:24.19 ID:LgIWHDO30
「逃げてきたのはいいですが、どうしましょ」

先ほどの青年、否、亡霊のことを思い出す。

「…目的を洗い出しておいた方が良さそうですね。貴女にとってもいいことでしょうし」

「はは…。何をやってるんですか、私は。誰も信用しないと決めていたのに」

嘗ての親友。

共に武器を取り、戦場を駆け抜けた。

天使と悪魔、交わることのない存在だったが、心を通わせることが出来た。

いや、そう思っていただけだった。

天使と悪魔は、殺し合う宿命にある。

親友に裏切られたセフィは、親友をその手で討った。

それから、全てが醜く見えた。

何気なく見ていた仲間の天使も、笑顔を見せて信仰している人間も。

そして、見下していた。

同種を家族すらも躊躇いなく蹴落とせる、醜悪な人間を。

――ああ、そういうことですか――。

しかし、その少女は眩しかった。

穢れを知らず、いや、知ってもなお、優しく光る少女の笑顔が。

その女性は強かった。

あまつさえ、命を狙った異端な自分を許容し、共に進んで来た女性の瞳が。

いつしか、自分の心の闇すら取り除かれていた。

――私は既に、救われていた――。

「なら、それに応えるしかないですよね。ええ」

背中の翼は、一対から二対へと。

その表情は今までの中で一番、柔らかいものだった。
603 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 19:26:07.90 ID:LgIWHDO30
「そこのお嬢さん、少しいいですか?」

「なぁに、お姉ちゃん?わぁ〜、きれーな羽…」

「どうも。触ってもいいですよ」

「もふもふだぁ〜…」

翼に抱き着く少女を、温かい表情でセフィは見守る。

充分に堪能したのか、満足気に少女は手を離す。

「はぅ〜…。気持ちよかった…」

「それはよかった」

「あっ!何が聞きたかったんだっけ?」

「それはですね。そこの大きな建物を壊しちゃった人が、何でそんなことをしたのかな、って」

「人?そんなの誰もいなかったよ?」

「…ふむ」

それから何人かにも尋ねてみたが、同じ返答しか返ってこなかった。

――おかしい。どうして、誰も重大なことだと思っていない――。

街の中心部にある研究所が崩壊したのに、慌てている様子ではなかった。

それどころか、消火隊の姿すら見えなかった。

「…認識させないようにする能力でもあるのでしょうか。だとしたら、貴女と私たちが認識出来たのは…」

貴女は過去に会っていたから。

自分は、先ほどの亡霊たちを捧げた神の存在を理解しているから。

リーシュは。

「野生の勘ですね。正直、それ以外だと何も思いつきません」

これ以上の収穫は無いと判断したセフィは、二人の元へと急いだ。
604 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 20:26:17.61 ID:LgIWHDO30
「…ご迷惑をお掛けしました」

深々と頭を下げる貴女に、慌ててリーシュは首を振る。

「いやいや!あたしたちに謝ることないでしょ!?」

「そうですよ。気にしていたら、胃が先に駄目になりますよ」

「あぅ…」

しょぼくれる貴女をリーシュが宥め、セフィが説明を行う。

「まず、先ほどの方ですが…。生者ではありません」

「えっ」

「ある炎神への供物として捧げられた人たちの、精神の集合体です」

「故に、貴女のことを忘れたりしていても、何ら不思議ではないのです」

「え…。じゃあ、私は死んでる人に…命を救われたことになるんですか…?」

「はい」

訳が分からないとでも言いたそうな貴女。

「…言っておきますが、彼の存在は異常です。なので、浄化しなければなりません」

「死した者の魂は、天界に送られた後に冥界へと導かれます。導かれないといけないんです」

魂が現世を彷徨うことは、決していいことではない。

万物は流転する。

死者の魂も、生まれ変わってまた、生者となる。

それこそが摂理。

この流れが崩れてしまうと、生命が失われていくのだ。

天使として、それだけは避けなければならない。

「貴女が大切に想っているのは理解しています。ですが、だからと言って摂理を乱すことを黙認するわけにはいかないのです」

「…貴女だって、死んでもなお、この世界に留まり続けるあの人を見るのは嫌でしょう?」

「…っ!はい…」

「汚れ仕事は私が請け負います。貴女は穢れることなく、綺麗なままでいてくださいね」

貴女は何も言えなかった。

優しい表情を向けながらそう言ったセフィが辛くて。

そして、何も出来ない自分が惨めで。
605 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 20:26:44.62 ID:LgIWHDO30
直下に次の行動をお願いします。
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 20:42:26.51 ID:4qZRC4/Ho
炎神について調べる
もしくは炎神に縁のある地に行ってみる
607 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 20:50:19.64 ID:LgIWHDO30
場所の候補を挙げておきます。好きな場所をお願いします。ご自身が考えたものでも大丈夫です。

1:火山地帯の竜人の村(比較的近距離だが超危険)

2:孤島の大穴(遠距離でそれなりに危険)

3:超文明の古代遺跡(中距離だが危険度は不明)
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 20:52:19.06 ID:n4XP6mHU0
609 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 21:19:04.40 ID:LgIWHDO30
目的地で信仰されている炎神の特徴を↓1、2、名前を↓3にお願いします。
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 21:23:08.64 ID:KHuIkGx20
表面温度が高すぎて声を出すことが出来ないので会話はテレパシー
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 21:29:05.10 ID:n4XP6mHU0
左手に太鼓を持つ
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 21:30:57.90 ID:2DlJOdIbo
ラーグ
613 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 21:55:20.75 ID:LgIWHDO30
「炎神と言っても、一人や二人とは限りませんからね」

炎を司る神、というより神自体、地域によって信仰されているものは全く違う。

同じものを司る神も、場所によって姿を変える。

「炎神で、主要な神は三人です。今回は、その中で最も信仰心が高い方へ向かいましょう」

「名はラーグ。何度か会話したのですが、まあ普通の神っぽい感じです」

「表面温度が非常に高いため、発声出来ないので基本テレパシーでしたけど」

「いつも左手に太鼓を持ってたりしますね」

「で、場所は?」

「ここです」

セフィが指差したのは、遥か彼方の海上の孤島。

世界の真反対だ。

「と、遠いですね…」

「レステルに移動してから、船を四回乗り換えなければいけませんからね」

「…その間に、グラウスが帰って来るんじゃない?」

「では、レステルで一度合流しましょうか」

セフィは一匹の子龍を呼び出し、尻尾に紙を括りつける。

「これをグラウスの元に届けてください」

「キュイ?」

「この仕事が終わりましたら、美味しいご飯を作ってあげますから」

「クルル…♪」

子龍は翼を広げ、大空へと飛び立った。

「行きましょう。手掛かりを探しに」

「…セフィ、変わったな」

「ふふ。皆さんのおかげです」

「???」
614 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 21:59:20.09 ID:LgIWHDO30
レステルまでの道のりをキンクリすることが出来ます。キンクリしますか?

また直下コンマでグラウスの現状を判定します。

1:グラウス大ピンチ(死亡判定)
2〜4:絶賛戦闘中
5〜0:既に嫁さんを連れて帰還してた(8、9、0時のみ、オマケで奴隷が一人増える)
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 21:59:56.56 ID:FloWOATT0
しない
616 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 22:27:40.31 ID:LgIWHDO30
直下に移動中のイベントをお願いします。無くても可です。直下コンマが3以下で魔物や盗賊との戦闘になります。

レステルまでにあと二回判定を行います。
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 22:39:55.14 ID:H+L15hWJo
奇妙な行商人に会う
618 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 23:10:23.57 ID:LgIWHDO30
ナバリーヒルズを後にし、一行はレステル向けて歩き出す。

平原を歩いていると、馬車に乗った男性が前からやって来る。

「もし、旅のお方」

「…?どうしました?」

「いえ、私はしがない行商人。よろしければ商品をご覧になってはいかがかな?」

「えーっと…」

後ろをチラリと覗くと、セフィが手をこまねいている。

「ちょっと待ってください…」

一礼をして、二人の元に小走りで向かう。

「ど、どうしましょう…」

「怪しいから無視だ無視」

「…たしかに普通の行商人とは違いますが、悪意は感じられません」

「一度、商品を見てみるのはどうでしょうか?」

貴女は数秒思考した後、一度確認することを決める。

「お、お待たせしました」

「おや、どうしますかな?」

「商品を一度見ておこうと思います」

「ほほう。それはそれは。どうぞ、ごゆるりと」

そう言って、階段を下ろす行商人。

顔はローブで隠されていて窺えないが、声色からして、上機嫌になっていた。
619 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 23:28:39.04 ID:LgIWHDO30
「わぁ…」

中を覗いてみると、そこには色々なものがあった。

小さなケージの中には小動物が、壁にはアクセサリーや武器が。

そして、色とりどりの植物が籠に入っている。

「ほほ。これらは私が自らの足で入手してきたものでしてな」

「こちらの龍は産まれてしまったのでお安いですが、既に親を認知してしまいまして…。手懐けるのは至難の業です」

「しかし、こちらの卵から孵せば、問題はありませぬ。私としては、是非とも卵をご購入いただきたく思いますがね」

「えっと…。この子はどうするんですか?」

「無論、買い手がいない時は私が育てます。独り身故、心細くてね」

「そうですか…」

処分するわけでもないようで、安心した。

「おっと、その結晶にはまだ触れませぬよう」

「え?」

藍色の綺麗な結晶に触れようとしたが制止される。

「それは封精晶。とある精霊が眠りに付いている結晶です」

「持ち主を認めた時姿を見せ、その者に忠誠を誓う、という逸話があるものです」

「精霊…」

神とは違う存在なのだろうか、などの疑問が浮かぶ。

「買う買わないはお客の自由。気のすむまでどうぞ」

そう言って、行商人はケージを開ける。

元気よく飛び出して来た龍は、嬉しそうに頬をすり寄せている。

それを見ていた貴女の口からは思わず。

「可愛い…」

と漏れ出ていた。
620 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 23:34:40.24 ID:LgIWHDO30
↓2までに何を買うかをお願いします。複数購入は可能ですが、全体の合計数が5を超えることは出来ません。無購入でも大丈夫です。

☆ラインナップ

武器:精巧な作りの長剣 禍々しい刀 両刃の槍

小動物:龍の卵 魔獣いっぱい 龍の幼体一匹

アクセサリー:封精晶 龍牙のブレスレット 竜胆色の竜玉

植物:薬草・毒草色々
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 23:41:05.90 ID:H+L15hWJo
龍の卵 封精晶 
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 23:47:38.80 ID:KHuIkGx20
魔獣買おうか
623 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/28(日) 23:55:02.70 ID:LgIWHDO30
魔獣は一匹だけですかね?特に指定が無ければ、一匹で進めていきます。

魔獣の設定を↓2までで募集します。種族名も書いていただけたらありがたいです。戦闘力は直下コンマです。

設定はこちらにおまかせでも構いません。また、↓3で付ける名前を募集します。

龍、精霊は誕生時に設定を行います。
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 00:02:02.88 ID:p1L1X57Q0
何でも食べられるネズミ
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 00:05:10.87 ID:58QQjSxwo
味方にはとても人懐っこいが敵にはどこまでも凶暴
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 00:17:46.04 ID:D2vLWYPDO
イート
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 00:17:58.75 ID:p1L1X57Q0
キャット
628 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 01:03:51.67 ID:Z8NNuvEN0
「あ」

ケージを覗いていたら、一匹の鼠と目が合った。

鼠は後ろ足で立ち、首を傾げる。

その姿が可愛らしくて、ついつい撫でてしまった。

「いけません!」

「ひうっ!?」

急に声を荒らげた行商人に、貴女は驚く。

「その鼠はグラトニア。何でも捕食してしまう鼠なんです。不用意に触れてもし齧られでもしたら…」

「え…?あの、嫌がったりしないいい子だったんですけど…」

「…むぅ…。お客を仲間と認めた、というわけですか」

「あ、えっと。私、この子を買いますね」

「え、はあ。それはありがたいですが」

「あと、その、この卵と封精晶も一つ」

「…ふむ、代金はこちらとなります」

「…あ、足りてる。良かった…。これでお願いします」

「毎度。では、お気を付けて」

商品とグラトニアを貰って、馬車を降りる。

既に日は沈みかけており、二人はテントを準備していた。
629 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 01:16:17.57 ID:Z8NNuvEN0
「お、買い物してきたのかい」

「はい。この子と龍の卵、あと封精晶というものを買ってきました」

「チチッ」

「あっはは!くすぐったいよ!人懐っこい可愛い鼠じゃないかい」

「あ、リーシュさんもそう思います?」

リーシュは頷きながら、愛おしそうにグラトニアを撫でる。

「それで、名前は決めたんですか?」

「あ、えーと。イートって呼ぼうと思ってます」

「そうですか。ではイート、よろしくお願いします」

「チチチッ」

イートはセフィの差し出した手の指先を一舐めし、貴女の上着のポケットに潜り込む。

「あ…。イート、この卵と、結晶を食べたらめっ、だよ?」

イートはその言葉を理解したのか、コクコクと頷く。

「…それ、タオルか何かで温めておかないと、孵化しませんよ」

「じゃあ、あたしがやっとくよ。割ったりはしないから安心して」

「お願いします」

卵を手渡し、貴女は封精晶をチェーンに通して、首に掛ける。

「不思議…。暖かいようで冷たい」

眠り続けているという精霊。

それが目醒める日は来るのだろうか。

疑問を胸に、その日は終わりを迎えた。
630 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 01:18:13.19 ID:Z8NNuvEN0
本日の更新はこれで終了です。明日も更新出来ると思います。これからボチボチ回数を増やしていきたいですね…。

お疲れ様でした。
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 01:25:19.71 ID:p1L1X57Q0

種類にもよるだろうけど神はアリサより強いし喧嘩を売るのはやめよう
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 08:24:13.41 ID:k3UIb7Lco
乙乙
とりあえず二周目はまだ続くようですね
633 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 21:24:14.29 ID:NquZr1C40
>>631、弱っちいのもいますが、基本的に神はチート級(0)です。まぁ、貴女の仲間二人が0なんですけど…。

>>632、終わる条件が恩人と話をすること、浄化すること、貴女の死亡となっております。ので、まだまだですね。

今から再開します。
634 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 21:25:53.98 ID:NquZr1C40
沈んだ太陽は、また昇る。

清々しい朝が、旅人たちを祝福する。

「…んぅ…。朝かぁ」

ブランケットを畳み、リュックサックの中に入れる。

「キュー」

「あ、ごめんね。寝てたのに」

気にしてないように、イートはポケットに潜り込む。

どうやら、ここが気に入ったようだ。

「おはようございます」

「ふむ。では、私は三枚換えますか」

「ふーん。あたしは一枚ね」

二人は机越しで向かい合い、ポーカーに興じているようだ。

貴女は横の椅子に座り、二人を眺める。

「うんうん。バッチリバッチリ」

「…いきますよ」

せーので二人が手札を見せる。

「…はぁ!?ウッソでしょ!?」

「残念でしたね」

リーシュの手札は5〜9のストレート。

対するセフィは10とAのフルハウス。

「あ、おはよ。勝てると思ったんだけどなぁ」

「おはようございます。そろそろ出発しましょうか」

「はい」
635 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 21:27:44.47 ID:NquZr1C40
直下に移動中のイベントをお願いします。無くても可です。直下コンマが3以下で魔物や盗賊との戦闘になります。
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 21:35:05.95 ID:D2vLWYPDO
ぽつんと小屋がある
637 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 21:53:16.19 ID:NquZr1C40
草原を抜け、湿地帯に入る。

レステル周辺は荒地だが、その外側は自然に溢れている。

「ジメジメするなぁ」

「仕方ないですよ。蛭に注意してくださいね」

「蛭?」

「血を吸う生き物です」

「気持ち悪っ」

談笑しながら進んでいると、一軒の小屋が見えてきた。

気になって近づいてみると、小屋付近の地面だけ固められている。

「中には誰もいませんね」

「入ろうぜ」

我先に扉を開けたリーシュ。

小屋の中には、何もない。

人が暮らした形跡すら。

「あれ?」

しかし、小屋の片隅に、小さな取っ手が地面に取り付けられていた。

引き上げてみると、地下に繋がる梯子が。

「…どうする?行っちゃう?」

「貴女の判断に任せた方がいいでしょう」

「えぇ〜…」

何となく、本当に何となくだが嫌な予感がする。

勘違いな気もするのだが。
638 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 21:54:04.70 ID:NquZr1C40
地下に突入しますか?直下でお願いします。
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 22:02:39.58 ID:ti+Lr09Ao
しない
640 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 22:41:21.11 ID:NquZr1C40
「…やめておきましょう」

「了解です」

嫌な予感というのは、案外当たるものだ。

態々、自分から死にに行く必要も無いだろう。

「しかし、何でこのようなところに小屋があるのでしょうか」

「さあ?」

小屋を出て、進むべき方向へ向きを変える。

首元をペロペロ舐めるイートを撫で、空を見上げる。

点のように見える、龍の群れ。

それは、雲の切れ目から更に上へと飛んでいく。

「…降ってきましたね」

「イート、こっちにおいで」

「キューン」

小雨の間に、ポケットのイートを胸元に移す。

湿地帯故か、辺りから蛙の鳴き声が聞こえてくる。

それどころか、のっしのっしと人の数倍もある蛙が、堂々と歩いてさえいる。

生き物って凄い。
641 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 22:42:17.15 ID:NquZr1C40
直下に移動中のイベントをお願いします。無くても可です。直下コンマが3以下で魔物や盗賊との戦闘になります。

この次は、グラウスの妻(鬼)の名前を募集する予定です。
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 22:47:22.44 ID:p1L1X57Q0
地震、地割れ
643 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 23:29:14.66 ID:NquZr1C40
蛙に追われたりして、どうにか荒地へと入った。

ここまで来れば、レステルはもうすぐそこだ。

「あと少しですね。ほらリーシュ、だらけてないで足を動かしてください」

「もうかれこれ一週間だよ。だらけもするよ」

「あの、あと少しですから」

「…しゃーないね」

リーシュが腰を上げたその時だった。

「きゃっ!?」

「…地震ですか」

「な、なんだよこれ!?地面が揺れる!?」

地震が発生し、大地が揺れる。

その揺れは凄まじく、そこかしこに亀裂が走っていく。

そして、その亀裂のうち一つが、貴女たちの真下を通った。

「あ、マズい」

亀裂が大きな口を開け、一行を飲み込む。

「っとぉ!」

「くぅっ!」

しかし、リーシュは足を壁に埋め込み、貴女は『月切』を抜刀し壁に突き立ててその場を凌ぐ。

「何なんだ今のは…。神の怒りか…?」

「さあ。それより、早く手を掴んでください」

「あ、ああ」

自然の力の偉大さを、改めて感じた二人だった。
644 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/29(月) 23:30:58.80 ID:NquZr1C40
グラウスの妻の名前を↓2にお願いします。
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 23:46:41.67 ID:cP+6gb/lo
マナサ
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 23:50:03.33 ID:YPhWcNZg0
ソラ
647 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 00:05:03.30 ID:wmv4SE6c0
地割れから這い出て、他の亀裂に注意を払いながらレステルへと向かう。

「あ、キャラバンですね」

「へぇ。あんないっぱい馬車とかが連なってるのか」

別方向から、数十個の馬車が連なった旅団がやって来る。

彼らもレステルを目指しているのだろう。

「ちょうどいいや。あたしたちも乗せてもらおうぜ」

「ですね。交渉は私が請け負いましょう」

そう言って、セフィがキャラバンの中列に飛び、騎手と話をする。

驚いたような顔をした後、大笑いして頭を上下に振る騎手。

セフィが手をこまねいているので、許可は得たのだろう。

貴女たちがキャラバンに近づいていくと、そのうちの一台がこちらに寄って来る。

「お邪魔します」

「ついでだついで。そこでくつろいでな」

言葉に従い、壁に寄りかかって座る。

「…その鼠、グラトニアか」

「はい」

「よくも手懐けたもんだ。そいつは気性が荒くてな」

「えっと…。行商人の方から買ったんです」

「チチッ」

イートは、貴女の手のひらの上で寝転んでいる。

「…その行商人、普通じゃないな」

「え?」

「いや、何でもない。忘れてくれ」

騎手の言葉が気になったが、これ以上は教えそうにないので、貴女は諦めた。
648 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 00:23:13.95 ID:wmv4SE6c0
レステル内に入り、キャラバンと別れる。

これから目指すのはグラウスの教会。

そこで落ち合う手はずだ。

「ここが貴女の故郷か。凄い活気だな」

「土地が貧しいことを考えると、ここまで繁栄出来たのは流石というか」

「貿易を中心にした国王たちは中々の慧眼で」

「…私はよく分からないですけど」

貴女がここに住んでいた時は物乞いだった。

国が豊かになった恩恵など、あるわけがなく。

「グラウスさんの教会は、この路地裏を進んで曲がったところです」

「…随分と辺鄙なところに建ってるんだね」

「スラム街の統括をしてるらしいので」

「あぁ…」

数週間も留守にしていたから、きっと家はもう他の誰かに占領されているだろう。

思い出のある場所だが、取られたのなら仕方ない。

その時は、教会で過ごせばいい。

愁いを帯びた瞳で前を向く貴女。

セフィたちは気にしながらも敢えて触れず、貴女について行く。
649 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 00:38:34.93 ID:wmv4SE6c0
「あ、ライトが付いてる」

教会内からは、弱々しい光が漏れ出している。

となれば、グラウスがいると見て間違いないだろう。

三回ノックをして、ドアが開くのを待つ。

するとほどなくして、ゆっくりとドアが開かれる。

「お、客人か。ちょっと待って…って、おぉ!貴女じゃねえか。暫く見ないうちにいい顔つきになったなぁ」

「…どちら様でしょうか?」

おかしい。

こんな小さな子供が、グラウスの妻だっただろうか。

記憶では、明朗快活な大人のお姉さんだったはずだ。

もしや、所用の中で連れてきた女の子かもしれない。

幼女趣味はいけないと思うのです。

「…あぁ。この姿は初めてだったな。おかえりなさい、貴女。また会えて嬉しいわ」

「…え。えぇ…!?そ、その声…」

「そう、何を隠そう。俺がグラウスのたった一人にして最愛の妻、ソラさ」

ケラケラと笑う少女もといソラ。

俄かには信じ難いが、グラウスの妻であるのは確かなようだ。

「…立ち話もなんだ。セフィとリーシュだっけ?お前たちも入んな」

「失礼します」

「うーっす」
650 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 00:52:28.07 ID:wmv4SE6c0
「ほれ、俺特製のカレーライスだ。好きなだけ喰え」

皿いっぱいに盛られたカレーライス。

香ばしいスパイスの香りが、食欲をそそる。

「ラウ、お前こんな可愛い女たちと旅してたんだな。浮気しちまったかぁ?」

ニヤニヤ笑いながら、鋭い爪になっている腕で小突くソラ。

「なわけないだろハニー。後にも先にも、俺が心から愛するのはハニーだけさ」

「ハハッ!嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。妻冥利に尽きるってもんだ」

傍目から見ても甘くて砂糖を吐きそうになる空間が広がる。

二人の時にやってもらいたい。

「…ああ、嬢ちゃん。急に旅を抜けて悪かったな」

「いえ…。事情は知りませんが、グラウスさんにとって大変なことがあったんだろうし、何も言えません」

「あー…。まぁ…な」

チラリとソラの方を見て、ばつが悪そうに頬を掻くグラウス。

どうやら、ソラ関係のことのようだ。

「…隠す必要はねえよ、グラウス。俺の失態で起きたことなんだ。伝えておけ」

「いいのか?」

「ああ。別に減るものじゃあねえだろ」

「…分かった」

グラウスは髪を掻き上げ、食卓の椅子に座る。
651 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 01:05:42.88 ID:wmv4SE6c0
「…俺が抜けた理由は、ハニーが攫われたから、なんだ」

「ハニーから助けてほしいという手紙が来た時、そりゃもうはらわたが煮えくり返ってよ」

セフィはギュンデームでのことを思い出す。

――まあ、文の頭文字を読むだけの簡単な暗号でしたからね。すぐ分かりましたとも――。

「…だから、ハニーを助けるために、奴隷大国で戦争をしてたんだ」

「正直、何人殺したかは分からねえ。なるべく死なないようにはしたが」

「おい、別にグラウスは悪くねえだろ。俺だって殺してる」

表情が曇るグラウスと、険しい顔つきのソラ。

「…今更、だけどな。少年兵として散々殺してきたのによ」

初めて聞いた、グラウスの過去。

だが、これであの異常な強さも説明が付く、気がする。

「まあ…そういうことだ。次は孤島に向かうんだろ?これからはハニーも同行させる」

「おい。そんなホイホイ話を進めたら、皆がついていけないだろ」

「あぁ…。悪い」

全員の食指は完全に止まっている。

食事をしながら聞ける話でも無かったので、当然かもしれないが。
652 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 01:06:30.25 ID:wmv4SE6c0
ソラ、グラウスに聞きたいことがあれば、↓2までどうぞ。
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 01:09:27.25 ID:nTAhJ1fDO
ソラの体の変化について
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 01:25:38.67 ID:xHh4ymFM0
つまり危険は去っていないということ?
655 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 01:40:41.78 ID:wmv4SE6c0
「あの…。姿が違うのは、どうしてなんですか?」

「ああ、それか。鬼っていうのは、昔は人に紛れて生活してたんだよ」

「その名残として、俺たち鬼は肉体をある程度作り変えることが出来るんだ」

肉体を作り変える。

つまり、その能力を使って姿を変えて、人のように振舞っていた、ということなのだろうか。

「これにゃあ魔力を使うんだが、魔法とかとは体系が違くてな。鬼以外では使えない」

「…凄い能力ですね」

「ハハッ。俺の能力はもう一つあるんだが。それは置いておこう」

「はいはーい質問いーですかー」

「なんだ、リーシュ」

手をぶらぶらさせてリーシュがアピールし、それを見てソラが発言を促す。

「何であんたが旅に同行するの?まだヤバいってこと?」

「…それは俺が説明する」

説明しようとしたソラを抑え、グラウスが身を乗り出す。

ソラは頬を膨らませ、グラウスにもたれ掛かる。

「…鬼ってのは結構閉鎖的な種族でな。数もかなり少ないんだ」

「だから、鬼は相当高額で取引される。いわば『金のなる木』なんだ」

「…この通り。変化してなければ、角が目立ってすぐに分かっちまう」

「成程。だから傍に置いておくことで守ろうってわけだ」

グラウスは頷き、酒を一杯飲む。

色からして、赤ワインのようだ。

「まぁ、そういうわけだ。お前たちは二階で寝てくれ」

「俺とグラウスは、隣の寝室で寝るんでな」

そう言って、二人は部屋へと入っていく。

「…私たちも、食事を済ませたら寝るとしましょう」

「…だな」

少し冷えてしまったが、カレーライスは今までで一番美味しかった。
656 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 01:56:13.77 ID:wmv4SE6c0
「…なあ、起きてるか?」

「…ああ」

静寂と暗闇が広がる寝室。

少し大きめのベッドの中に二人はいる。

「ごめん」

「何で謝るんだよ…。ハニー」

「…俺が強けりゃ、お前を態々旅から連れ戻すこともなかった」

ソラの声色は、先ほどとは違い消え入りそうだ。

暗い表情のソラは、顔をグラウスの胸へと押し付ける。

「…大丈夫だ。何があっても、俺はハニーを守る。守り切ってみせる」

「俺の力は殺すためじゃない。大切な人たちを守るためにあるんだ」

グラウスははっきりと言い、ソラを優しく抱き締める

「ハッ…。ったく…。カッコつけてよぉ…」

そして、ソラは微笑み身を委ねる。

「…なぁ、今日もやるか」

「え…。嬢ちゃんたちが上にいるのに?」

ソラは腕から抜け出し、グラウスにキスをする。

「あいつらがいるから、だ。見せつけてやるんだよ」

「俺がグラウスを心から愛してることをな」

「そして」

もう一度、今度は長いディープキス。

「俺も、そろそろガキが欲しくてな。スイッチが入った以上、どうにかしないと、だろ?」

「…俺たちは種族が違う。だから、子供は非常に出来にくい」

「ハハッ!そんなの、愛の前では些細な問題だ!」

「…愛してくれるんだろ?グラウス。なら、それを態度で示してくれよ」

暗闇の中、ソラの目が紅く光る。

「参ったな…。そう言われたら断れない」

「ハハッ。今日もよろしく頼むぜ?あ・な・た♪」

夜は、まだ始まったばかり。
657 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/01/30(火) 01:57:56.29 ID:wmv4SE6c0
本日の更新はこれで終了です。次回は今の段階では未定です。再開出来る時に報告しようと思います。お疲れ様でした。
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 02:06:38.23 ID:xHh4ymFM0

待ってます。
行商人は再登場するのかも?
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 07:54:31.36 ID:dYLtqTDAo

のんびり待ってます
660 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/01(木) 18:26:49.12 ID:7Tk6j16RO
>>658、シュレディンガーの行商人なので、どこかにいたりいなかったり。

突然ですが、本日の夜に再開したいと思います。
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 18:57:51.94 ID:w8F04cgDO
了解しました
662 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 01:01:29.50 ID:8jtToA9y0
だいぶ遅くなってしまいましたが、今から再開です。
663 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 01:02:39.47 ID:8jtToA9y0
「ふわぁ…。うぅん…」

「おはよー貴女…。ダメだ、全然寝れてない…」

昨日は結局、下の部屋で何があったのかが気になって、一睡も出来なかった――。

――それは貴女だけで、リーシュは何が行われていたのかは知っており、その上で眠れなかった――。

「ったく…。あんなしゅきしゅき言うなよな…。こっちまで丸聞こえだよ…」

「…?リーシュさんは何をしてたのか分かるんです?」

「え!?あーいやその…。ちょっと分かんないかなー…?」

階段を降り、広間に出ると、既にソラとグラウスは起床していた。

「おはようさん。飯はもう出来上がってるぜ」

「おはよう…。うぷ…」

ツヤツヤなお肌をしたソラと、死んだ魚のような目をしたグラウス。

何があったのだろうか。

「グラウス。何回致しました?」

「…十回。俺もう四十なんだぜ…。死ぬ…」

「…お疲れ様」

「ハハッ。人間の底力はそんなもんじゃないだろうに」

「…こんなことで底力見せるのもどうかと思う」

「それは俺も同意見」

ソラはケラケラと笑っているが、本当にグラウスは大丈夫なのだろうか。

正直心配だ。
664 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 01:03:58.29 ID:8jtToA9y0
出発前に何かしたいこと、聞きたいことがあれば、直下にお願いします。無くても大丈夫です。

この後、目的地に向けて出発となります。
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 01:09:12.13 ID:MWb2I2830
逃げる必要があるならソラを追う奴隷商?の規模を知りたい
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 01:12:49.61 ID:0GzTMl9DO
軽くグラウスにマッサージでもするか
667 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 01:37:37.06 ID:8jtToA9y0
「あ、美味しい…」

「おっ、故郷のレシピに従って作ってみたんだが、貴女の舌には合うみたいだな」

「ん…。酒とかに合いそうだな」

貴女が食べているのは、酸っぱい液体が胡瓜と海藻にかかっている和え物だ。

「ちょっとだけ生姜とかを入れて味を調えてるんだ」

「へぇ…」

料理など全くしたことがない貴女には新鮮だ。

「あの、ソラさん」

「んー?」

「ソラさんを狙ってる商人たちって、どれくらいの規模なんですか?」

食器を洗っていたソラの手がピタリと止まる。

「…分からねぇ。俺自身、どこが欲しがってるのかなんて何も知らねえんだ」

「ただ、一つだけ言えるのは、俺の正体を知った輩が挙って捕まえに来ること…。だろ?ラウ」

「…ああ」

食器を拭き、体を伸ばすソラ。

「まぁ、どうにもならないことさね。俺に出来ることは、ただただ足掻くだけ」

そう言うソラの顔は、どこか悲し気で。

「…っし。食器も片付けたし、出発の準備といきますかね」

「ラウ、先に皆を連れて、埠頭でチケットを買っといてくれ」

「…構わないが、一人は護衛を付けておくぞ」

「ハハッ!俺だって、それなりには戦れるさ。信じてくれよ」

「…。待ってるからな…」

「おう」

静かに部屋を出たグラウス。

慌てて、貴女たちも後を追う。

一人ぼっちになった広間で、ソラは笑う。

「気持ちは嬉しいが、俺に付いてばかりじゃダメだろうよ。ラウ」

「…俺は鬼で、お前は人間。決して相容れない種族なんだ」

嘗て、鬼は人を喰らい生きていた。

遠い昔のことだが、それは確執として残っている。

だが、それを越え、二人は結ばれた。

「『過去を乗り越え、未来へと進む』か。分かっちゃいるが、どうにも上手くいかねえもんだな」

「…心の奥底、先祖の記憶が怯えているのかねえ。人間の裏切りを」

前髪を角の外へ流し、視界を良くさせる。

「…かと言って、突き放すのは夫婦としてダメだよな。クソ」

――俺は未熟だな。鬼として、妻として。

戒めを込めた一撃を、右頬へと放った。
668 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 01:58:03.29 ID:8jtToA9y0
「グラウスさん…」

無言で、海を眺めるグラウス。

その心中は、貴女たちには計ることは出来ない。

「悪ぃ。待たせちまったか」

明るい声でソラが後ろから近づく。

やはり、この姿だと夫婦には到底見えない。

いいとこ、歳の離れた子供と父親くらいだ。

「…いや、まだ時間はある。大丈夫だ」

「ん。じゃあ乗ろうぜ。最近の船には乗ったことねえから楽しみなんだ」

小走りで船に乗り込むソラは、可愛らしくて。

貴女は思わず見とれていたが、周りの人たちも同様に、ソラに視線が釘付けになっていた。

「ソラさんって、結婚する前は何してたんだ?」

「何って言われてもだな。結婚前は故郷にいたり、ラウと旅したりだ」

「出会った時って何歳?」

「二、三歳」

「は?」

「どした?」

聞き間違いだと信じ、リーシュは再度尋ねる。

「十二、三歳だよね?聞き間違いかと思ったよ」

「んにゃ、二、三歳の時に旅に出たんだ」

「………」

ロリコンでしたか、この神父。

「待て嬢ちゃんたち。鬼の年齢を人間と同じように考えたらダメだ」

「鬼の自我の確立は早いけど、それを考えても早すぎではあるがな」

「ハニィィィィィィ!?」

「リーシュさん、レッツゴーです」

「へいお待ち」

「何でだァァァァ!」

出発を告げる汽笛のように、拳骨の音が海に響いた。
669 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 02:00:56.08 ID:8jtToA9y0
移動中のイベント一回目です。直下にお願いします(現在船上)。直下コンマが3以下だと、海賊、魔物等に襲撃されます。

船を四回乗り換える(五回船に乗る)ため、この判定は合計で五回行います。
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 02:04:14.09 ID:MWb2I2830
3割
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 02:06:45.80 ID:MWb2I2830
コンマ判定ではなくどんなイベントがあるかということか
ごめんなさい

霧と岩礁に出くわす
672 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 02:28:16.13 ID:8jtToA9y0
「綺麗な海ですね…」

視界に広がる海は、透き通るような青色へと変わり、島々を囲む砂浜は、真珠を思わせる白色だ。

「リゾート地にもなってるところだからなぁ。遊んだことは無いけど」

グラウスの頭部には、大きなたんこぶが。

魔法か何かで凍っているので、大丈夫なのだろう。

『お客様方にご連絡を申し上げます。これから先、岩礁地帯を通りますので、船内に避難してください。繰り返します…』

アナウンスを聞き船首方向を見てみると、海上にせり出した無数の岩礁が。

ここを通過するしかないのだろうか。

「海流の影響で、外側を使うのは無理なんだよ」

「だから、多少危険でもここを通るしかない」

「しかし…」

ソラの言葉を待っていたように、視界が悪くなる。

『現在、霧による視界不良のため、航行速度を減速しております。ご了承くださいませ』

「不味いな、ハニー」

「ああ」

顔を見合わせ、武器を構えるグラウスと、首を鳴らすソラ。

「何がマズいんですか?」

「いやな。岩礁地帯で霧による視界不良。魔物が出てくる条件が揃ってるわけよ」

「出てくるとしたらアレか。リヴァイアサンとかクラーケン。テュポーンとかか?」

「いや…。もしかしたらアレが来るかもしれない」

「…ああ。アレか」

二人で会話が完結していて、貴女は理解出来ない。

「アレって何ですか?」

二人は一呼吸置いて、口を揃える。

「「幽霊船」」

「へ…?」

幽霊ならまだしも、幽霊船。

貴女の知識に、そんなものはありはしない。

未知の恐怖が、貴女に近づく。
673 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 02:30:39.15 ID:8jtToA9y0
>>671、コンマ判定と安価を同時に行う、という意味です。説明不足ですみません…。

直下コンマが3以下で魔物との戦闘、0で幽霊船と出会います。これは特殊判定なので、前のレスの回数には含まれません。
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 02:34:31.83 ID:MWb2I2830
これはコンマ判定
675 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/02(金) 02:37:34.48 ID:8jtToA9y0
魔物との戦闘が確定しましたところで、今回はこれで終了です。次回予定は本日の昼、もしくは夕方です。

どの魔物と戦うかは次回開始時に決めます。皆さん、突然の再開でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 02:38:15.96 ID:MWb2I2830
乙乙
待ってます
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 07:25:34.68 ID:uZ5qk6eko
678 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/03(土) 00:07:36.04 ID:aCyIgYxd0
また夜遅くなってしまいましたが、今から再開です。魔物設定は直下コンマで決めたいと思いますが、皆さんが考えたものでも大丈夫です。

コンマ判定ですが、魔物の特徴が書かれていたら、そちらを優先します。

1〜3:リヴァイアサン(難易度:難)
4〜6:クラーケン(難易度:普)
7〜9:テュポーン(難易度:易)
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 00:09:48.60 ID:/DC6YDzAo
とりあえずコンマ取る
魔物の案が来たら安価下
680 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/03(土) 00:16:31.02 ID:aCyIgYxd0
0出た…。アカン。エクストラバトル発生となります。死ぬ可能性はあるかもしれない。少々お待ちください。
681 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/03(土) 00:29:59.73 ID:aCyIgYxd0
船速が遅くなって数分。

乗客たちに異変が生じる。

「熱い…。熱い…!」

大量の汗を流しながら横たわる乗客たち。

「大丈夫ですか!?えっと…水魔法ってどうやって唱えるんだろう…」

「元気な奴は、上に駄目な奴も連れていけ。このままじゃ不味い」

「だな。ラウ、こりゃ只事じゃあねえな」

ひょいひょいと人を抱えていくグラウスとソラ。

その目は真剣そのもので、こちらの気も引き締まる。

「とりあえず、氷塊を二つ作っておく。適宜破壊して、体を冷やしておいてくれ」

グラウスはそう言った後、剣を召喚して甲板へと移動する。

後を追い貴女たちも甲板に降りると、周囲の状況は更に変化していた。

「参ったな。霧かと思ったが、これは全部蒸気だったか」

海水が沸騰し、蒸気が周囲を包む。

このままでは、この船も保たないだろう。

「…この魔力。まさかなぁ」

汗でべたついた前髪を掻き上げ、剣を構えるグラウス。

それに釣られ、セフィ、ソラ、リーシュの三人も臨戦態勢に入る。

「貴女、もう気付いたはずでしょう」

セフィの言葉を聞き、精神を集中させる。

刹那、空へと巨大な水柱が立った。
682 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/03(土) 00:51:04.60 ID:aCyIgYxd0
「…ハハハハ。ウッソだろオイ。嫌だぜ俺」

グラウスは焦りを含んだ笑みを浮かべる。

「お久しぶりです。私たちを憶えていますかね?」

セフィの声色は、言葉よりも冷淡で。

「…フン。我は汝らのことなど知らぬよ。…ああ、知らぬさ」

水柱の頂点には、見知った顔の青年が。

「…!あなたは…!」

声を張り上げる貴女を、青年はチラリと一瞥する。

「…汝は。ああ、憶えて…うん?何故だ、記憶がどうにも混濁している」

青年は頭を押さえ、ブツブツと呟く。

「…まぁいいや。どんな理由があろうと、お前さんが嬢ちゃんの恩人だろうと、危害を加えてくるなら殺すしかねえ」

グラウスの剣は水を纏い、面積を増やしていく。

「あーあー…。炎使いとか勘弁してくれよ。俺の能力じゃ分が悪いじゃねえか」

ペロリと指を舐め、ソラは指を鳴らす。

すると、手の甲から血液が噴出し、右手に集う。

集まった血液は形を変え、赤黒い一本の刀となった。

「誰かは知らないが、ラウが敵と見てるなら俺にとっても敵だ。ここで死んでもらう」

「やれやれ。血気盛んなことだ」

頭に当てていた手を振り払い、青年は船を見下ろす。

そして、燃え上がる炎が船の周りを包む。

「何故かは知らんが、汝たちをここで殺めねばならない。我の心がそう告げている」

「…どうして。どうして!あなたと殺し合わないといけないんですか!?」

涙を浮かべ、鞘から『月切』を抜く。

「さて。そういう世界に産まれたが故なのだろう」

「そんな世界じゃ…。世界は!そんなものじゃないでしょう!」

「我を否定するか。人の下らん願望で生み出された我を」

碧眼が見るは、少女の心。

その揺れる心は、ひたすらに叫ぶ。

――戦う必要は無いはずなのに、どうして――!?
683 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2018/02/03(土) 00:55:10.54 ID:aCyIgYxd0
勝利条件:???の撃退、もしくは浄化

敗北条件:貴女の死亡、もしくは仲間の全滅

今回の判定もナバリーヒルズ戦と同じです。判定成功後、特殊コンマ判定を挟みます。

直下コンマ判定

1:ファンブル
2〜5:失敗
6〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定
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