貴方「奴隷たちに救済を」【安価スレ】【2スレ目】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 22:06:28.43 ID:LKXlOUxOo
385 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 22:09:14.20 ID:kt2bqzem0
この町の本来の特徴を↓1、2に、名称を↓3にお願いします。おまかせだと、こちらで設定していきます。
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 22:15:05.32 ID:bSX7Jctlo
人材派遣を主な生業とする特急貴族の屋敷がある
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 22:20:19.84 ID:R8Q+sf1DO
狩猟が盛ん
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 22:21:10.23 ID:LKXlOUxOo
ギュンデーム
389 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 22:43:03.77 ID:kt2bqzem0
歩いている道が、少しずつ大きくなっていく。

「おっ、そろそろ到着するな」

「その町ってどんなところなんですか?」

こんな辺境に存在する町など、よっぽど特殊な町だろう、と貴女は思う。

実際には、海沿いの荒地にある『レステル』の方が特殊なのだが。

「名前は『ギュンデーム』。狩猟が盛んでな。美味しい肉がよく出されてたよ」

「確か…。アーバン家だったかな。ハイランディアの特級貴族様の屋敷が立ってたはずだ」

「へぇ…」

色々な場所を旅していたはずなのに、すらすらと特徴が頭に浮かんでくるなんて凄い。

と、貴女は純粋に驚嘆していた。

「この林を抜ければ到着なんだが…」

突如、グラウスが腕で貴女を制止する。

「…走るぞ!」

表情を険しくしたグラウスが走り出す。

「ま、待ってくださいよ〜!」

それを見た貴女も、慌てて追いかける。

町の中に入った二人は、惨状を見て驚愕する。

「んだよこりゃ…」

「酷い…」

町の建築物の半分が全壊、残りの半分もボロボロで、ところどころに血痕が残されている。

「…せめて、犠牲者に安らぎを与えよう」

グラウスは十字架を取り出し、祈りを捧げる。

十字架から漏れ出した光は、町中を包み、やがて消えていく。

「…魔獣に襲われたか、盗賊の仕業だな。ふざけてやがるぜ」

グラウスが壊れかけた屋敷を見ると、メイドと思しき女性が食料を配給していた。

その隣には、簡素な診療所が設置され、お抱えの医師なのか、妙に小綺麗な服装をした男性が診察、治療をしている。

首を鳴らしたグラウスは、屋根が吹き飛んでいる宿屋へと入っていく。

「嬢ちゃん、今日はもう休むぞ。明日、出発しようか」

「は、はい」

変わり果てた町を目にして、グラウスの胸中には怒りが渦巻いていた。
390 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 22:45:51.90 ID:kt2bqzem0
↓1、2に、町での行動をお願いします。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 22:47:51.02 ID:4o2fl8Afo
怪我人の治療の手伝いをする
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 22:54:49.77 ID:bSX7Jctlo
町を襲った敵の話を聞く
393 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 22:59:34.88 ID:kt2bqzem0
すみません、訂正が一箇所あります。アーバン家ではなくステラ家です。戦闘不能になったり湖に沈められる方です。

敵の判定を直下コンマで行います。十の位が奇数で魔獣、偶数で盗賊となります。一の位が規模となります。
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 23:01:37.52 ID:R8Q+sf1DO
395 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 23:10:01.16 ID:kt2bqzem0
今回は被害が確定しているので、規模が小さいほど強力な魔獣が敵となります。ご了承ください。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 23:10:02.97 ID:bSX7Jctlo
小さい規模の魔獣にボコられたアーバンのおじいちゃん
397 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 23:37:53.26 ID:kt2bqzem0
部屋に入って、荷物を纏める。

グラウスは既に、ベッドに入って寝息を立てている。

貴女は書置きを残して、屋敷へと向かう。

少しでも助けになれれば、という思いを胸に秘めて。

屋敷では、先ほどとは比べ物にならない惨状が広がっていた。

腕や脚を喪った人や、腹部から内臓が零れだしている人さえいる。

医師一人では、到底処置できる量ではなかった。

「私も手伝います…!」

怪我人に近づくと、悪臭が漂ってくる。

傷口が化膿して、腐敗を始めているのだ。

「きっと治るはず…」

手に魔力を集中させる。

右手は治癒魔法、左手は火炎魔法をそれぞれ詠唱させ、傷口を軽く炙って消毒。

その後、治癒魔法で消毒処置を施した部分を修復させる。

両手を傷口から離すと、綺麗になった体がそこに。

成功したことに安堵し、続けて別の怪我人の治療に向かう。

貴女が来たことで、怪我人は全員が完治。

後遺症を残すことなく、復帰できた。

「はぁ…。はぁ…」

怪我人全員の、それも、殆どが重篤だったため、魔力の消費が激しい。

貴女の体への負担も、相当なものだった。

「お嬢様、こちらをどうぞ」

医師が、紅い液体を手渡してきた。

それを受け取り飲む貴女だが、独特の風味が貴女には美味に感じた。

「美味しい…です…」

「これが美味しいとは…珍味好きのようで」

否定できなかった貴女は、頭に手を置いて微笑する。

「この液体はアイアンタートルという魔物の血です。魔力の回復を促進するのですよ」

今飲んでいたものが血だということに驚いている貴女に、医師は頭を下げる。

「改めて、感謝を申し上げます。貴女がいなければ、犠牲者の数が増えていたでしょう」

貴女は慌てて首を振り、答える。

「わ、私はするべきだと思ったことをしただけですから…」

それに、と付け加え、言葉を続ける。

「命が助かったっていうのは、嬉しいですから…」

元気になった人たちを見て、貴女は微笑む。

それを見た医師は、小さく呟く。

「優しいお方だ。貴女は」

その声は、喧騒に掻き消されて聞こえることは無かった。
398 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 23:40:41.31 ID:kt2bqzem0
直下コンマで、魔獣についての情報の判定をします。

1〜3:あまりにも一瞬の出来事だったので、情報皆無
4〜6:姿のみ判明(グラウスと相談すれば、正体の判定が行われます)
7〜9:姿、特徴、名称全てが判明
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 23:46:02.17 ID:4o2fl8Afo
はい
400 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/23(月) 23:48:13.74 ID:kt2bqzem0
↓1、2に魔獣の特徴を、↓3に名称をお願いします。おまかせの場合は、こちらで選んでいるものから出します。
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 23:49:27.60 ID:bSX7Jctlo
全長30m
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 23:52:12.58 ID:4o2fl8Afo
大蛇
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 00:02:09.08 ID:vAJUkZ0Wo
ダイボロス
404 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/24(火) 00:21:57.57 ID:QthULUwm0
「…この町は、たった一匹の魔獣によって、滅びかけました」

不意に、医師が口を開いた。

「名は『ダイボロス』。全てを喰らう『暴虐の化身』」

「…私が止めても、貴女は倒しに行くのでしょう」

「…ですが、あれは人が触れていいものではありません」

「どこから来たのか、何を求めているのか、それさえも分からないのです」

医師の声が震えていた。

それほどまでに、恐ろしいものだったのだろう。

「…忠告、ありがとうございます」

貴女は、礼儀正しいお辞儀をする。

「でも、私には頼りになる人がいます」

「それに、このまま放っておいたら、また酷い目に遭ってしまいますから」

貴女の決意は固かった。

嘗て、いや、今も自分は弱者だ。

だが、何度もグラウスに救われてきた。

だから、自分も弱者を救う。

恩人のように、グラウスのようになりたいから。

貴女は、踵を返して宿屋へと向かう――。

――グラウスさんと一緒なら、絶対に大丈夫――。

持ち主の想いに呼応してか、背中の『月切』と『エウルス』は、淡い輝きを放っていた。
405 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/24(火) 00:38:31.05 ID:QthULUwm0
夜が明け、朝がやって来た。

支度を終え、渓谷へと続く道で合流を終える。

クレゾンヌの森への道中で、グラウスから『ダイボロス』についての話を聞く。

「『ダイボロス』だが、ありゃあ魔界の魔獣だ」

魔界、という単語が引っ掛かる――。

――そういえば、大穴でもグラウスさんが――。

『ここは…『魔界』の『それ』と然程変わんねえ!』

貴女の中で、何かが繋がった――。

――もしかして――。

「正解だ。あの大穴に『ダイボロス』が呼び出されて、そのまま『ギュンデーム』まで移動したんだ」

「俺が繋ぎ合わせたのは空間だ。『魔界』へと繋がっていたそれを、塞いだのさ」

「不幸中の幸い…というやつかね。あのまま放置してたら、もっとヤバい連中がこっちに来てた」

淡々と言うグラウスだが、その危険性は理解できた。

「まっ、暗い話をしてても仕方ないさね。ここで一つ、レクチャーしよう」

「大型の魔物の弱点ってどこだと思う?」

貴女は思考する。

柔らかそうな腹か、それともお尻か。

グラウスが発した答えは、全く予想していなかったものだった。

「人間と同じように考えればいい。俺たちだって、背中には中々手が届かないだろ?」

貴女は頷く。

「基本、背中に乗ってればそうそう攻撃を受けやしない。構造上の弱点ってやつだ」

触手持ちとかは例外だがな、と笑うグラウス。

続けて、口を開いた。

「それと口内。っていうか体内。肉が丸見えだから簡単に斬れる」

考えただけでも気持ちが悪い。

貴女はしかめっ面をする。

「…これはあまりお勧めできねぇな。下手したらすぐ消化されてトイレにポットンだ」

グラウスが言うと冗談に聞こえない。

貴女は頬を膨らませるが、グラウスはそれを軽くあしらう。

「そうならないように俺がいるんだ。安心しな」

何度されたか分からない。

グラウスに頭を撫でられて、笑みを浮かべる貴女。

その心は、いつものように穏やかになっていた。
406 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/24(火) 00:40:05.70 ID:QthULUwm0
直下コンマで、盗賊との遭遇判定です。

1、2:戦闘になる
3〜5:遭遇無し
6〜0:『ダイボロス』にフルボッコ
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 00:43:32.06 ID:Gd0Rzc+po
まともな盗賊は居ないはず
408 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/24(火) 00:49:25.52 ID:QthULUwm0
フルボッコにされて壊滅してました。

↓1、2に盗賊団(若しくはお頭)の特徴をお願いします。
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 00:52:56.35 ID:wWiZsPlDO
傭兵くずれや魔術師くずれが多くいた
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 01:10:20.26 ID:Gd0Rzc+po
ギュンデーム壊滅の情報を知り火事場泥棒の予定だった
411 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/24(火) 01:23:33.10 ID:QthULUwm0
とばっちりだけど同情の余地もありませんね…。今回の更新はこれで終了です。次回は土曜日の予定です。

奴隷と関係するSSなのに、奴隷が今回一度も出てきていない問題はどうするべきか…。ううむ…。何はともあれ皆さん、お疲れ様でした。


ダイボロス:魔界に棲む大蛇。稀に発生する時空の裂け目から、こちらの世界に迷い込むことがある。

食欲が旺盛で、何でも体内に取り込んでしまう。好きな食べ物はマングース。

口からはゲロビを放てる。高圧縮された魔力なので、エウルスで反射される地味な弱点付き。

実は雌しか存在せず、時期が来ると脱皮して大きくなる他、全く同じ小さな個体を口から吐き出す。

どういうわけか、肉は滅茶苦茶美味しい。だけど魔力たっぷりなので、耐性が無い人が処理無しで食べると即死する。

情報がある理由は、昔は普通に生息していたのだが、あまりの美味さに乱獲されてこちらの世界では絶滅したため。
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 01:25:57.57 ID:Gd0Rzc+po

前作だって酷使される奴隷はそこまでクローズアップされたわけではないしセーフ
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 07:19:50.22 ID:vAJUkZ0Wo
乙です
414 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 20:17:09.70 ID:WCsa2yWM0
今から再開していきます。今回は、最低でも『ダイボロス』戦までは進める予定です。
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 20:19:45.42 ID:FrWYpV1Jo
待ってました
416 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 21:06:00.10 ID:WCsa2yWM0
クレゾンヌの森へと続く渓谷が、眼前に広がる。

同時に、グラウスは違和感を感じた――。

――前来た時はここまで抉れてなかったぞ――。

そこら中の崖に、鎌で抉り取ったような跡が残っている。

グラウスが手で触れると、掌全体に粘液が付く。

「…少し前にここを通ったのか。音とかはしなかったがな」

注意を払って辺りを見回すと、小さな血痕が散見される。

「嬢ちゃん、感覚強化魔法で周りの音を聴いてくれ」

一つの可能性が出てきたので、それが真実かを確かめる。

分かりました、と返事をし、貴女は耳に魔力を集中させる。

数秒後、微かな呻き声が貴女の耳に聞こえてくる。

「誰か怪我してます!」

「待て」

走ろうとした貴女を、グラウスは肩を掴んで制止する。

「どうしてっ…」

「ここにいるってことは間違いなく盗賊どもだ」

「ッ!?」

グラウスの声が、目が、冷えていた。

「まずはその目で確認しろ。それから考えるんだ」

そう言うと、いつもの表情に戻る。

「考えた上で助けるのなら止めないさ。旅の主役は嬢ちゃんだしな」

グラウスの言葉を頭で反芻させ、貴女は前に進む。

50mほど進むと、崖に寄りかかっている集団がいた。

集団の近くには、手足が何本か落ちており、彼らのものだと判断できた。

いずれも大怪我をしており、処置をしなければ危険な状態だ。

「そこの旅人方…。俺たちに慈悲をください…」

「ギュンデームを襲おうとしてる奴らを助ける義理があんのか?」

「なっ…!?」

グラウスの声がまた冷える。

目的が一瞬でバレてしまったからなのか、目を白黒させている。

「やっぱり盗賊か。まぁ、助けをギュンデームまで呼びに行ってない時点で黒だわな」

「嬢ちゃんは助けるのか?このクズどもを」

貴女は、眼前で息絶え絶えの盗賊たちを見やる。

誰もが、救いを求めるような目でこちらを見ている。

貴女が選んだものは――。
417 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 21:06:49.13 ID:WCsa2yWM0
直下に、盗賊たちを助けるかどうかをお願いします。
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 21:09:57.07 ID:Cy8uUuXIo
届け出る義務はないかな
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 21:19:55.44 ID:FrWYpV1Jo
助ける
420 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 22:09:12.10 ID:WCsa2yWM0
貴女は、無言で傷口を修復していく。

昨日の治療で慣れたのか、ものの数分で処置を終える。

呆気に取られている盗賊を無視して、貴女は歩いていく。

「…行きましょう。グラウスさん」

「りょーかい」

「おい!あんたら!」

何事もなかったかのように歩いていく貴女たちを盗賊の一人が呼び止める。

「あの蛇を殺すつもりならやめとけ!人間が勝てる相手じゃねぇんだ!」

その言葉を聞いても、歩くスピードは変わらない。

ギュンデームの人たちのためにも、倒さなければならないから。

今の自分の行いが、ギュンデームにとっていいことではないと、心のどこかで理解していながらも。

「優しいねぇ。嬢ちゃんは。俺なら殺してたよ」

不意に、グラウスが口を開いた。

「…確かに、私のしたことは間違いかもしれません」

「…だけど、命を見捨てることだけはしたくないんです…」

大切な人を喪う辛さは知っている。

彼らにとって、仲間は大切な人のはずだ。

同じような辛さを経験させたくなかったから。

だから、助けた。

「…正しい選択とか、間違ってる選択とか、そんなのは無いんだ」

「自分が正しいと思ったことをすりゃあいい。それが、きっと一番正しい選択のはずだから、さ」

グラウスの言葉が嬉しかった。

自分のやったことが間違いじゃない、と言ってくれたから。

慰めだとしても、その言葉を掛けてくれたことが何よりも嬉しかった。
421 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 22:34:17.90 ID:WCsa2yWM0
渓谷を抜け、クレゾンヌの森に到達したが、酷い有様だった。

地面は抉れ、樹はへし折れている。

この地に棲んでいたものだろうか。

無数の魔物が押し潰されて、凄惨な光景を見せていた。

えずきそうになる貴女を背負い、グラウスは素早く駆け抜けていく――。

――ここを越えたら、間違いなく攻撃してくる――。

深く入り込むにつれて増していく瘴気を忌々しく思いながら、グラウスは槍を呼び出す。

グラウスの予想通り、開けた場所に出たと同時に、鋭い牙が地面を喰らう。

「っと。あっぶねぇ」

バックステップで回避し、貴女を下ろす。

そして、優しい声色でアドバイスをする。

「背中に乗るのが一番だが、嬢ちゃんは無理しなくていいよ」

「エウルスは絶対に離さず、『ダイボロス』のブレスはしっかり受け止めるんだ」

グラウスは、槍を手で回転させながら言う。

「そうすりゃあ、あとはおじさんが終わらせるからさ!」

『ダイボロス』が吼える。

それを合図に、グラウスは槍を構えて突進する。

今、戦いの火蓋が切って落とされた。
422 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 22:43:01.45 ID:WCsa2yWM0
直下コンマ判定 三回成功で終了です。

1(補正値なし):ファンブル
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 22:44:08.33 ID:LyE8oOvDO
424 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 22:48:11.55 ID:WCsa2yWM0
あ、ごめんなさい…。補正入れるの忘れてました。再判定です。

直下コンマ判定 

1(補正値なし):ファンブル
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

聖職者:+1 無慈悲なる■■■■:+1
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 22:49:38.76 ID:LyE8oOvDO
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 22:50:11.65 ID:RgLPSYXiO
はい
427 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 23:34:09.84 ID:WCsa2yWM0
『ダイボロス』は、その大きな尻尾を振り回す。

「そぉらっ」

しかし、それは容易く往なされる。

槍を斜めに持ち、受け流す。

足まで攻撃を逸らしたら、そのまま地面を蹴って回転し、槍を投擲する。

槍は、払い除けようとした尻尾に刺さり、淡い光を纏う。

「戻ってきな」

クルリと一回転し、尻尾を切断して持ち主の元に戻る。

グラウスは槍と杖を取り換え、先端を『ダイボロス』に向け詠唱を始める。

「雷よ、我が杖に集え」

「そして、敵の身を穿ち、骸と変えよ」

詠唱を終えると同時に杖から放たれる、極大の雷槍。

危機を察知した『ダイボロス』は、口からビームの如きブレスを吐く。

しかし、そのブレスでも、軌道を逸らすだけに止まり、『ダイボロス』の側面を抉り取る。

「チッ、魔力の干渉が厄介だな」

グラウスは杖の先端を構え、『ラグナロク』の準備をする。

魔力の増幅に反応し、『ダイボロス』は『ラグナロク』ごとグラウスを捕食しようとする。

「待ってました!」

大地を抉り、『ダイボロス』は『ラグナロク』を飲み込んだ。

そう、『ラグナロク』だけ″を。

グラウスは尻尾の切断面に瞬間移動し、再度呼び出した槍で滅多刺しにする。

「俺は転送魔法は使えなくてな。魔力でマーキングして飛ぶしかねぇんだ」

あの時の淡い光は、遠隔操作に起因したものではなかった。

この時のための、下準備に過ぎなかったのだ。

「俺ばかりを見ちゃいけねぇぞ」

こちらを睨む『ダイボロス』に向けて、一言だけ放つグラウス――。

――嬢ちゃんだって、結構強いんだぜ――?

自分への警戒が無くなったと同時に、貴女は『ダイボロス』の背中を目指して走っていた。
428 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/28(土) 23:35:42.90 ID:WCsa2yWM0
直下コンマ判定 

1(補正値なし):ファンブル
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

聖職者:+1 無慈悲なる■■■■:+1
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 23:37:57.68 ID:Cy8uUuXIo
430 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/29(日) 00:06:23.26 ID:n99KJqTh0
「『月切』!」

グラウスが言っていた通りに、念じて『月切』を振るう。

すると、3mはくだらない大きさの魔力刃が、『ダイボロス』の背中付近の鱗を斬り飛ばす。

直感で、『ダイボロス』は振り向いてブレスを吐く。

だが、『エウルス』の魔力反射によってそれは弾かれ、開いたままの口に逆流する。

内臓が焼かれ、巨体が揺らぐ。

無防備になった隙に、貴女は背中に飛び乗り、『月切』を突き刺す。

そして、もう一度念じ、一直線に魔力刃を撃ち出す。

魔力刃で貫かれた衝撃で、『ダイボロス』の首が大きく上を向く。

首の下に潜り込むグラウスは、槍に魔力を纏わせ、大きな刃を形成していた――。

――言ったろ?強いってさ――。

そして、無慈悲に首を斬り落とした。

「流石だ嬢ちゃん。俺が戦う必要は無かったかねぇ」

吹き出す血を浴びながら、グラウスは言う。

グラウスが驚いたのは、貴女が動いたことだ。

自分一人で終わらせると言っていたのに、注意が逸れた瞬間にアクションを起こした。

その判断力の高さが、一番驚くところだった――。

――動くと分かってた風に言ってた俺もアレなんだろうが――。

心の中でそう吐き捨て、武器を戻す。

数拍空けて、慌てて貴女は否定する。

「グ、グラウスさんがいなかったら勝てませんでしたよぉ…!」

実際、貴女一人で勝てる相手ではなかっただろう。

「でも…。私でもちゃんとできるって実感できました。今までの頑張りは…無駄じゃなかった…!」

元々実戦経験は皆無で、今回だって、グラウスが作り出した隙を突いただけだ。

しかし、強敵を相手に、それを成し遂げた時点で弱くはない。

グラウスとの特訓が実を結んだ、と実感できた貴女だった。
431 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/29(日) 00:33:19.08 ID:n99KJqTh0
討伐を終え、『ギュンデーム』へと戻った貴女は、グラウスに疑問を投げかける。

「魔獣、全然いませんでしたね」

その言葉に対し、グラウスは首を傾げる。

「いなかった?御冗談を」

「入口で大勢死んでた奴らだよ。魔獣は」

「え?」

「外来種である『ダイボロス』をやっつけるために、魔獣が増えた」

「だけど、見事返り討ちに遭って全滅した」

そんな感じさ、と笑いながら言うグラウス。

貴女は、困惑するしかなかった。

グラウスは一つの疑問を抱えていた――。

――どうして、盗賊が町の修理を手伝ってるんだ――?

「あ!旅人の方じゃないか!生きてたんだな!」

あの時忠告をしてきた人が近寄ってくる。

「そりゃ殺したからな。で、お前さんたちがなんでいんの?」

殺した、という単語を聞いて驚く盗賊だが、すぐ元の表情に戻り、頭を下げる。

「仇を討ってくれたんだな…。ありがとう…!」

お前さんたちのためじゃねぇよ、とそっぽを向いて頬を掻くグラウス。

それに対して、貴女はまた疑問を投げかける。

「あなたたちはなんでここにいるんですか?」

盗賊が突然黙った。

そして、頭を数回掻いた後、ようやく口を開く。

「…あんたに助けられてさ、皆で考えたんだ」

「悪人である俺たちを助けてくれたのに、俺たちが盗みをしたら、それこそ恩を仇で返すことになっちまう」

「俺らは傭兵くずれと魔術師ばっかりだが、助けられた後に盗みを働けるほどできた人間じゃない」

「償いにはならないとは理解してる。だけど、やるって決めたからにはやり通さないとな」

そう言う盗賊の顔は、清々しかった。

「まぁ、復興が終わったら出頭するよ。盗賊稼業もこれでおさらばだ」

「そう…ですか…」

自分の行いで、他の人が変わった。

それが嬉しくもあり、怖くもあった――。

――こんな簡単に、人って変わっちゃうんだ――。
432 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/29(日) 00:36:51.93 ID:n99KJqTh0
直下に、恩人についての情報を聞くかをお願いします。
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 00:42:55.23 ID:8zVtPinpo
聞く
相手はアーバンのおじいちゃん?
434 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/29(日) 00:44:31.02 ID:n99KJqTh0
>>433、色々な人に聞きますよ。指定があれば、その人に聞きます。

直下コンマが7以上で、情報を入手できます。
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 00:48:16.01 ID:8zVtPinpo
436 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/29(日) 01:03:26.02 ID:n99KJqTh0
修繕に戻った盗賊を見送り、屋敷へと向かう。

グラウスは、近くのベンチで昼寝をしている。

怪我人がいなくなったので、診療所は撤去され、食料配給所が拡大されていた。

そこで、一仕事を終えて背伸びをしているメイドに声を掛ける。

「あ…あの…。すいません…」

「どうしました?食料が必要なのでしょうか?」

「い、いえ!ちょっと聞きたいことがあって…」

貴女は、恩人のことを伝えた。

と言っても、翡翠色の眼をして、炎を操ること以外は知らないのだが。

ふむ、とメイドは顎に手を当て思考する。

だが、帰って来た答えは非情だった。

「申し訳ございません。翡翠色の眼をした方が多くて判別できません」

「あっ…そうですよね…。すいません…」

貴女とメイドは深々と頭を下げ、貴女はその場を離れる。

考えてみれば、情報が少なすぎて恩人だと断定することが不可能だ。

もっと人が多いところで聞けば、あるいは。

そう思った貴女は、グラウスの元に戻る。

「んぁ…。ふぁ〜あ…。ダメだったみたいだな」

「あうぅ…」

待っていたかのように起きたグラウスに、失敗を言い当てられる。

「まぁ、こんな辺鄙なところに来るわけないか」

グラウスは地図を呼び出し、目を通す。

「さてさて、次はどこに行きましょうかね」
437 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/29(日) 01:10:47.85 ID:n99KJqTh0
↓2に次の目的地の特徴と名称をお願いします。
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 01:37:12.08 ID:8zVtPinpo
ステラ家が人材を派遣している事故の多い鉱山
439 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/29(日) 01:53:30.33 ID:n99KJqTh0
時間が遅くなってまいりましたので、本日の更新はこれで終了にします。次回更新は来週の土曜日の予定です。

安価を踏んでいる場合はずらします。皆さん、お疲れ様でした。
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 08:12:43.13 ID:4KwuQbeUo
交流や物流の拠点となっている港町 ホルム
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 08:24:20.13 ID:m0RLnyXDO
乙でした
次の更新待ってます
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 11:46:37.36 ID:8zVtPinpo

>>――こんな簡単に、人って変わっちゃうんだ――。
恩人悪いことしてるフラグ?
443 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 20:03:19.84 ID:HZRPHbBl0
>>442、恩人が悪いことをしている、と言い切ることはできません。理由は本編内で触れられたらいいのですが…。

異世界スマホを見て精神が摩耗している>>1ですが、今から再開していきます。直下コンマでホルムまでの距離を判定します。
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 20:06:45.36 ID:8UMsQ72DO
待ってました
445 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 20:33:42.84 ID:HZRPHbBl0
グラウスは数分地図を眺めるが、地図を置くと同時に頭を抱える。

「ふーむ…。この大陸から出るべきかねぇ…」

そう呟いたグラウスは、地図を人差し指で数回叩く。

「わっ!」

突然、地図に描かれていた大陸に複数の蒼い光が浮き出たのだ。

貴女が驚いたのを気にすることもなく、グラウスは独り言を呟いている。

「こっちは…ダメだな。ロングィ相手は正直しんどい。…仕方ない。ホルムを目指すか」

グラウスは地図を折りたたみ、顔を上げる。

「…どうした嬢ちゃん?そんな顔をして」

「…なんでもないですっ」

プイッ、とそっぽを向く貴女だが、なぜそうなっているかをグラウスは理解できない。

首を傾げながらも、グラウスは立ち上がり先導する。

「次の目的地はホルムだ。かなり距離はあるが、今日中には着く」

グラウスの言葉が引っ掛かる。

距離はあるのに、どうして一日で到着するのか。

その理由が、皆目見当もつかないのだ。

「意味が分からねえって顔だな」

貴女は頷く。

「まぁ、見てからのお楽しみさね」

『ギュンデーム』を出た二人だが、前にここまで来た道を逆走する。

最初は何とも思わなかった貴女だが、少しずつ不安の色が見え隠れしてくる。

対するグラウスは、どこか楽し気だった。
446 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 20:34:40.45 ID:HZRPHbBl0
直下コンマに、何かイベントがあればお願いします。コンマが1〜3で戦闘発生です。0だと…?
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 20:42:22.34 ID:AR6svJb2o
迷子らしき子供がいる
448 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 20:45:52.26 ID:HZRPHbBl0
おや、迷子(?)ですか。簡単に設定をしますね。↓1に性別、↓2に種族、↓3、4に性格をお願いします。
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 20:48:26.17 ID:6zWt5GwFo
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 20:54:09.56 ID:AR6svJb2o
竜人
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 20:54:59.56 ID:jQH6bFO7o
猫かぶり
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 20:55:54.94 ID:8UMsQ72DO
泣き虫
453 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 21:13:55.10 ID:HZRPHbBl0
一つ判定を忘れていました。直下コンマが1〜3、0だと…?
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 21:14:42.64 ID:AAUSRj2EO
455 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 21:18:15.38 ID:HZRPHbBl0
往路を大きく逸れ、二人は山脈の傍を進んでいた。

道はみるみる険しくなり、徐々に高度を上げていく。

同時に、出没する魔物の種類も変わっていっている。

「ふぃ〜。犬っころが多くて大変だ」

周りには樹が茂っており、間隙を縫って奇襲を行われている状況だ。

危険な種族ではないので、数回叩けば鳴いて逃げ出すのだが。

「…ん?」

不意にグラウスが立ち止まり、耳を澄ませる。

釣られて貴女も、感覚を強化する。

貴女の耳が捉えたものは――。

――ひぐっ…。お兄ちゃんはどこに行ったのぉ…。

――僕だけじゃ…。勝てないよぉ…。

「ッ!」

「おい!?嬢ちゃん!?嬢ちゃーん!」

走り出す貴女を、グラウスが止めることはできなかった。
456 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 21:35:12.94 ID:HZRPHbBl0
木々に囲まれた小さな岩陰。

そこに、竜人の少年は姿を隠していた。

「お兄ちゃん…。どこなの…」

少年はポーチから小さな結晶を取り出す。

「これを壊したら、助けが来るんだっけ…。…だけど、本当に危ない時以外はダメって言われたし…」

「ひうっ!?」

ガサガサ、と葉が掻き分けられる音が聞こえ、少年は怯える。

「うぅ…」

両肩を抑え、小さく縮こまる。

見つかる可能性を、少しでも減らすために。

「ひぃ!」

眼前を横切った影を恐れるあまり、声を上げてしまう。

「よ、良かったぁ…。やっと見つかった…」

その陰の正体は人間、貴女だった。

「だ、大丈夫…?迷子みたいだけど…」

おずおずと手を差し伸べる貴女だが、その手が握られることはなかった。

「く、来るな!私を捕まえようとするお、愚か者め!」

手を払い除けた少年は、涙を浮かべながらも貴女を睨む。

「わ、私は人攫いじゃないよ…!」

「妄言を…!」

人攫いであることを否定する貴女。

しかし、それを聞こうともしない少年。

千日手になり得ない状況を、あの男はぶち壊す。

「嬢ちゃん…。いきなり走り出すのはちょっと疲れるから…って迷子じゃねぇか」

グラウスは少年を見るや否や、手を上に突き出して光を放つ。

「これで、近くの仲間が気づくはずだろ」

その言葉は正しく、数分後、雄々しい翼を広げて竜人が数人、少年の救助に来た。
457 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 22:01:20.32 ID:HZRPHbBl0
「弟が迷惑を掛けましたァッ!」

凄まじいスピードで土下座をする竜人。

どうやら迷子だった子の兄らしい。

「旅人のあなた方のお手を煩わせて申し訳ないッ!」

立ち上がった後も、十回二十回と頭を下げる竜人兄。

「いやいや、お前さんも弟さんが無事でよかったじゃないか」

「ええッ!本当に良かったッ!」

弟を抱きしめる竜人兄だが、弟の方は胸に顔をうずめていて様子が分からない。

「しかし、こんな可愛い子を人攫いって判断するとはねぇ」

凛々しい黒髪を伸ばしている女性が、貴女を見て言う。

「ホント、可愛い子だねぇ…」

「…!?」

ペロリ、と指を舐める女性を見て寒気がした貴女は、グラウスの後ろへと隠れる。

「ありゃ、警戒されたか。痛くしないのになぁ」

「その手で言っても説得力が無いじゃろ…。儂でも痛いというのに…」

隣の竜人が諫める間に、竜人兄は弟を前に向ける。

「ほら、お礼を言いなさい。漢として恥ずかしいぞ」

「う、うん…」

申し訳なさそうに、弟は貴女を見る。

貴女は、グラウスの後ろから顔だけを覗かせる。

「た、助けてくれて…ありがとう…ござい…ます…」

その言葉を聞いた貴女は、戸惑いつつも返答する。

「ど、どういたしまして…」

感謝を伝えた弟は、また顔をうずめる。

「うわぁぁぁぁん…!怖かったよぉ…!」

「よしよし。帰ったら美味しいご飯を食べような」

コクリ、と頷いた弟は、静かに寝息を立てる。

「ではッ!私たちも失礼しますッ!僭越ながら、私たちも平穏無事を祈っておりますッ!」

「儂たちの村は来るもの拒まず、じゃ。次があれば、客人として存分にもてなそうぞ」

「可愛い子もよろしくね」

「これ」

「あいたっ!」

そんな言葉を残して、竜人たちは山脈の向こうへと飛び立っていった。

「…行ったか。俺たちも行こうか」

「…あの人たちの村に、行けますかね…」

「たぶん、な」

地図を片手に持ちながら、グラウスは答える。

しかし、その心中は――。

――あいつらと会うなら、死ぬ覚悟をしないといけないな。
458 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 22:31:30.30 ID:HZRPHbBl0
木々を越え、魔物を退け、ただひたすらに進む。

疲弊している貴女と、飄々としているグラウス。

どうしようもない、経験と地力の差が出ていた。

「もうちょいだ。頑張んな」

「はい…!」

今にも崩れ落ちそうな崖を進むと、そこには小さな空洞が。

「到着だ。よく頑張った」

「え…?何ですかここ…」

空洞には、高さ2mほどの小さな祭壇がある。

そして、祭壇の中心からは蒼い光が漏れ出している。

気になって貴女は覗くが、その時、光が渦巻いているのを理解できた。

「ここは『旅の扉』。遠い場所を繋ぐ、過去の賢人が生み出し、歴史に埋もれてしまった叡智さ」

グラウスは説明を始める。

貴女はよく分からなかったが、何やら凄い物だというのは理解できる。

「あー…。つまり『同じ旅の扉』にワープする装置と思ったらいいよ」

ようやく理解した貴女だが、同時に疑問が一つ生まれる――。

――どうして、ここまで便利なものが利用されてないのか、と――。

「理由は単純。移動手段が増えたからさ」

「態々こんなところまで来なくても、今なら移動手段が意外とある」

「大陸間の移動は船か飛空艇があるからな」

どちらかが栄えればどちらかが廃れる。

そんな簡単な理屈だった。

「そんじゃ、移動するぞ。渦の上に乗るんだ」

言われるがままに、貴女は渦の上に乗る。

そして――。

――アッシェンテ――。

そう呟くと、二人の姿が消えた。
459 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 22:58:08.39 ID:HZRPHbBl0
視界が白くなり、全身が浮く。

周りを見ると、後ろに向かって世界が動いているのが見える。

前には白い大穴があり、そこに吸い込まれていく。

反射的に目を瞑る貴女。

目を開くと、そこには綺麗な湖が広がっていた。

「いい景色だが、もう少ししたら日が暮れちまうから急ぐぞ」

「ここは夜になると、とんでもない化け物が出てくるんだ」

いつものような声とは違うことから、冗談の類ではないと判断する貴女。

急ぎ足のグラウスを追って走る貴女だが、突然後ろを振り向く。

当然、そこには誰もいない。

「気のせい…かな…?」

首を傾げながらも、自分を呼ぶ声を聞いて走る貴女。

湖の近く、小さな丘からその『何か』は見ていた。

――我を追ってここまで来るとは、大した熱意よな――。

そう呟いた『何か』は、焔となりそこから消えた。

「ッ!」

グラウスはその言葉に反応したかのように、丘を見上げる。

「…まさか、ずっと見てるわけじゃあねえ…よな」

グラウスは口角を上げ、心の中で言う。

――だとしたら、とんだお人好しだぜ。あんたは――。
460 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 23:25:19.31 ID:HZRPHbBl0
湖を抜け、一時間ほど大通りを進むと、町明かりが見えてくる。

「わあぁ…」

「あれがホルム。レステルみたいに貿易が盛んな町だ」

苦々しい顔で、グラウスは言う。

「どうしたんですか…?」

「ちょっと…。ハニーがここで一回攫われてな」

ハニーは鬼だから、とグラウスは小さく呟く。

だが、貴女には最後の呟きは聞こえなかった。

「えぇっ!そんなの初めて聞きました…」

「言ってなかったしな…」

グラウスは辺りを見回すが、不思議な点を見つけて首を傾げる。

「変だな…。ここまで治安がいい町じゃなかったぞ」

貿易で得た資金を基に整備したのだろう。

それでも、気になる点が消えないのだが。

「…屋敷の数が嫌に多い。住みやすい場所ではあるが、それだけとは思えねぇな…」

地図を見てみると、奴隷市場の範囲も相当なものだった。

レステルほどではないが、それでも充分な大きさを誇っている。

「…いや、まさかな」

一抹の不安を抱えながらも、グラウスと貴方は宿へと入る。
461 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 23:28:43.34 ID:HZRPHbBl0
直下に、ホルムで行うこと、もしくはイベントをお願いします。
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 23:37:29.67 ID:8UMsQ72DO
奴隷市場から何人かの奴隷が逃げ出したことで騒ぎになる
463 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 23:40:10.26 ID:HZRPHbBl0
直下コンマで、何人逃げたか判定します。その後に、逃げた奴隷の設定を軽く行おうと思います。

1〜4:二人
5〜9:三人
0:四人
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 23:41:53.43 ID:AR6svJb2o
465 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/04(土) 23:50:04.25 ID:HZRPHbBl0
一人目の性別を↓1、種族を↓2、性格を↓3、4、名前を↓5、二人目も同じ順番で、↓6〜10でお願いします。
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 23:54:34.14 ID:AR6svJb2o
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 23:55:32.12 ID:6zWt5GwFo
人間
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 23:56:42.68 ID:8UMsQ72DO
男勝り
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:04:45.79 ID:OCEUmhrwo
貧困から盗賊をしていた
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:06:32.82 ID:imeIQb/mo
リーシュ
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:06:46.27 ID:k1mzjR9hO
両性
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:08:00.60 ID:erMPrqgDO
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:10:35.72 ID:erMPrqgDO
種族は天使で
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:14:20.59 ID:OCEUmhrwo
悪魔は絶対に滅ぼす
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:15:35.34 ID:imeIQb/mo
自分以外信じない
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:20:47.69 ID:8D7ugzHn0
セフィ
477 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/05(日) 00:23:24.74 ID:CNScj63W0
ちょっと悪魔のボーダーラインを設定しますね。直下コンマが1に近いほど悪魔っぽいのはアウト、9に近いほど悪魔じゃなければセーフです。
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:25:54.97 ID:k1mzjR9hO
はい
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 00:26:06.44 ID:OCEUmhrwo
480 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/05(日) 00:28:26.54 ID:CNScj63W0
結構寛容ですね…。グラウスの嫁はセーフになります。少々お待ちください。
481 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/05(日) 00:38:44.26 ID:CNScj63W0
貴女は夕食を少な目で済ませて、シャワーを浴びる。

全身を洗い、余計な脂肪が付いていないか、お腹や二の腕をつまんで確かめる。

「…むぅ。ちょっと筋肉が付いてきたかぁ…」

旅を始めてから、ほぼ毎日戦闘をしていたのだ。

当たり前だとは思うが、やはり悲しい。

お湯を止めて、体を拭き、服を替える。

「そろそろ寝なくちゃ」

そう思って、ベッドに寝転んだ瞬間に、それは起きた。

「ひゃっ!?」

凄まじい爆発音が、耳をつんざく。

慌ててグラウスの部屋に向かうと、既にグラウスは出立の用意を済ませていた。

「嬢ちゃん、奴隷が市場から脱走した」

貴女は驚くが、それを無視してグラウスは続ける。

「俺は奴隷の確認に向かう。嬢ちゃんも荷物を纏めろ」

そう言って、グラウスは姿を消した。
482 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/05(日) 00:53:29.06 ID:CNScj63W0
ホルムの郊外、閑散とした町並みを、二人の奴隷が走る。

「はぁっ…はぁっ…」

「遅いですよ。急がないと追手が来ます」

「飛んでる奴が偉そうに…!」

悪態を吐く女性――リーシュ――と、警戒しながらも軽口を叩く天使――セフィ――。

特に、リーシュの顔に余裕は無く、逃げ切りたい、という思いで辛うじて走っている状況だった。

しかし、その希望も呆気なく砕ける。

「脱走者を確認。捕縛します」

「…最悪だ」

じりじりと近寄ってくる警備兵に、二人はただ諦めていた。

だが――。

――清浄なる暁光よ。汝らを守護する障壁となれ――。

二人と警備兵の眼前に、巨大なる光の壁が聳え立つ。

「この光は…聖職者?…いや、ここまでの聖職者がいるはず…」

「間に合ったか」

呆気に取られている二人の前に、グラウスは降り立つ。

そして、二人の間を走る瞬間に囁く。

――生き延びたい、と少しでも思うのなら、俺についてきな――。

「あたしはついていく!捕まるよりは万倍マシだ!」

真っ先に走るのはリーシュ。

「…信用したわけではないですが、一番手堅いですからね」

続いて、セフィも後を追った。
483 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/11/05(日) 01:07:56.02 ID:CNScj63W0
部屋で待っている貴女の元に、グラウスがやって来る。

手招きをするグラウスを追い、裏路地へと到着した。

そこには、汗をかきながら息を切らしているリーシュと、脚を組んでこちらを観察しているセフィがいた。

「えっと…。二人は誰ですか…?」

貴女の問いに答えようと、リーシュは口を開こうとするが、グラウスによって遮られる。

「まぁ待て。…嬢ちゃんには酷だが、今から二人の話を聞いて、二人をどうするかを選んでもらう」

意味が分からない貴女は焦る。

しかし、グラウスは尚も言う。

「元々俺は嬢ちゃんの付き添いだ。最後に決めるのは嬢ちゃんなんだよ」

「だから、嬢ちゃんに助けるべきだと思わせろ。嘘を言ったらこの場で首を落とす」

グラウスの目は冷えていた。

「はぁっ!?何言ってるんだあ…」

リーシュは、剣に手を掛けたグラウスを見て口を閉じる。

「…分かったよもう!あたしはリーシュ!元盗賊!」

「元々あたしは貧乏で、生きるためには盗賊になるしかなかった!」

「人は殺してない!あと、奴隷になってから受けた教育は地獄だった!」

「あたしを生かしてくれるのなら、あたしにできることは何でもする!以上!」

そうハキハキ言い切った後、リーシュはドカン、と地面に座る。

「私はセフィ。天使です。先に言っておきますが、あなたたちを信用することはありません」

「あくまで、生きるための利害一致でしかないことを頭に入れておいてください」

「悪魔は何があろうと滅ぼします。絶対に」

ピクリ、と反応したグラウスは、冷徹な声で問い掛ける。

「鬼もか?」

それに対して、セフィは毅然とした態度で言い返す。

「悪魔ではないのでその必要はありません」

「…言いたいことは言ったようだな」

「嬢ちゃん。決断を」

手が震え、頭が眩む――。

――それでも、答えを出さないといけないのなら、私は――。
386.70 KB Speed:0.3   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)