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【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/26(水) 02:44:40.48 ID:gvkSOEYi0
コブラ再開おめ
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/28(金) 01:08:30.45 ID:XzXNhDAw0
ジークマイヤー「勝機!!」ガバッ
何事かを閃いたカタリナの騎士は勢いよく立ち上がった。
同時に、背中からツヴァイヘンダーを抜いてもいた。
ジークマイヤー「はぁーーッ!!」ギャリリィン!
ツヴァイヘンダーは、騎士を囲う吊り牢の隙間から火花を散らして突き出され、転がる大岩の進路上にその刃先を晒す。
特大剣を握る騎士の手甲に力が入り、その手には予想以上の衝撃が伝わった。
ガッキィィン!!
酒瓶が飲み口を強打されて回転しながら宙を舞うように、ジークマイヤーの入った牢は吊るす鎖をたわませて、勢いよく錐揉みに回転しながら不規則に大きく揺れた。
牢は強固に作られ、魔翌力さえ込められてはいるが、それをろくに手入れもされないまま何百年と吊り下げた鎖に、同様の耐久力は残されていなかった。
蛇人は石壁すらも磨かない。牢の戸が一度でも開閉できた事すら奇跡だった。
べキン! ガッシャーーン!
捻れた鎖の一つの輪が千切れ、騎士の牢は大岩が通った後の石橋に墜落する。
一方、コブラをめり込ませた大岩は勢いを僅かにすら崩さずに転がり続け…
レディ「あっ!?」
ビアトリス「あっ!?」
ローガン「おや?」
そのまま、石橋の端に開いた、城の外へと続く横穴から落ちていった。
レディ「コブラーッ!」
一方、カタリナの騎士はというと、牢の隙間から手足を出して石橋の上に立つところだった。
だが、彼に気を配る者はいない。
ガッ!
皆の目線は、横穴の縁に掛かった掌に集まっていた。
そして縁から這い上がるだけの力を残せた、赤い男の恐るべき胆力にも。
コブラ「全く薄情な奴らだぜ。同じ蛇だからって味方ごと潰すのは無しだろ」グググ…
レディ「コブラ!」
コブラ「よぉレディ。流石の俺もさっきのでメシを戻しちまったらしいぜ。出来れば助けてくれると嬉しいんだけど…」ハハ…
レディ「お馬鹿さんね!もちろん助けるわよ!」ググッ
ローガン「なんと…こりゃたまげた…」
ローガン「い…生きているというのか?……あれだけの衝撃を受けて…」
コブラ「ジェット推進機が付いた鋼鉄の義手でぶん殴られるのと比べれば、あんな大玉はカワイイものさ」
レディ「グズグズしてると次のが来るわ!はやくこの橋から出ましょう!」
コブラ「おっとそうだった。でもその前にやる事があるかもな」
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/28(金) 06:40:10.49 ID:WvBu1wjDo
あれで戻ってこれるとかコブラさんすげぇ……
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/08/03(木) 22:53:44.44 ID:Cm4Psuiw0
石橋の左右に吊るされている牢には、現時点で三人の不死が囚われている。
そのうちの一人にはもはや意思はなく、身体を動かすための筋肉も思考も無い。
その者はソウルを溜め込んでいるだけの屍に過ぎず、だからこそコブラはその屍に目をつけた。
ダッ!
コブラは屍を捕らえている牢へ駆け出し、格子越しに屍に触れてソウルを抜き取ると…
ジャキィン!
ジークマイヤー「な、なんとぉーっ!?」
ローガン「これは…!?」
サイコガンを抜き…
ズオオォーーッ!!!
その強力無比なサイコエネルギーを銃身から迸らせた。
バゴォーン!! ズババーッ!!
放たれた威力はローガンとビアトリスを縛る牢の錠前を粉々に粉砕し、ジークマイヤーに絡まる牢をも破ると…
ドグワアァーーーッ!!
大岩が転がり込んできた横穴にぶち当たり、崩落によって大岩の侵入口を塞いだ。
ビアトリス(こんなことまで出来るのか…)
レディ「やるじゃないコブラ。ソウルのコントロールにも慣れてきたんじゃない?」
コブラ「まだまださぁ。じゃじゃ馬が過ぎて振り落とされそうだぜ。今のだけでもどっしり疲れた」
ジークマイヤー「き…貴公…その手はなんだ?…何をしたんだ?」
コブラ「なあにちょっとした演し物さ。コレで喰ってる大道芸人とでも思ってくれ」
ジークマイヤー「大道芸…」
ローガン「そんな言葉で惑わせられはせんぞ。見たところ義手に触媒を仕込んでいるようだが、そのような触媒も、先ほどのような魔法にも私は見えた事がない」
コブラ(鋭いじいさんだな。俺の左手を義手だと見抜くとはね…)
ローガン「貴公は一体何者であるのかな?」
コブラ「そうだなぁ……海賊、って言ったら信じるかい?」
ローガン「海賊?……そうか海賊か。ははは」
ローガン「確かに、それほどの術はおいそれとは教えられぬだろう。私がキミでもやはりはぐらかすか」
ビアトリス「いえ、彼の言葉に嘘はありません」
ローガン「ほう?」
ビアトリス「コブラ、貴公について知りうる限りを師に伝えたいのだが、構わないか?」
コブラ「OKだ」
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/04(金) 10:11:21.65 ID:RAuQIgWQO
ビアトリスいてよかった
コブラだけだと話がこじれたかもしれん
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/08/11(金) 18:16:46.79 ID:kybEzBqc0
数分後
ローガン「」ガクガク…
ビアトリス「…という事でして、つまり、信じがたいことですが、このロードランの外には人の地の他に空間的、時間的、あるいはそのどちらにおいても無限の広がりがあり、その広がりに散らばる無数の次元から、このコブラはやって来たというのです」
ローガン「」ガクガク…
コブラ「それで本当に伝わってるのか?難しい言い回しをするから爺さんが混乱してるぜ」
ビアトリス「仕方ないだろう。私の口からでは惑星という概念すら上手く言えないんだ。大地が実を伴う巨大な球形で、それが重力だのを持ちながら互いに支えあい、空中に存在しているなど……自分で言ってても訳が分からない」
コブラ「でもこの爺さん、かなりの賢人ぶりで有名なんだろう?キミが言ってたんだぜ?」
ビアトリス「そうは言ったが…このお方なら分かると思ったんだ…」
ローガン「………」ブツブツ…
ジークマイヤー「何か呟いているぞ」
レディ「どうするコブラ?岩が転がってくる事も当分ないだろうし、放っておいても大丈夫なんじゃない?」
コブラ「だとは思うが、こっちとしても色々知りたいことがあってね。俺としては…」
ローガン「ふふ……ふほほほほほほ…」
コブラ「?」
ビアトリス「せ、先生…?」
ローガン「素晴らしい…! 礼を言うぞ…! ありがとう…! 本当にありがとう!」
コブラ「礼だと?」
ローガン「永らく考えていたのだ!ソウルの根源とその行方、生誕の由来を!無より生まれたのではない!持ち込まれたのだ!」
ビアトリス「先生なにを…」
ローガン「そうでなければ、神でさえ有限なこの世界で、普遍的なソウルと人間性の流れは生じない!双方にも力の根源が必要なはずだ!」
ローガン「そして恐らくその根源に際限はない!無限だ!我ら魔導の士は無限を探らねばならん!無限を探るのだ!それが宇宙だ!」
ローガン「コブラ!貴公は宙を行く船で宇宙を泳いだと言ったな!それゆえ己を海賊と!」
ローガン「その宇宙は深く、多くの惑星を収める深海であるのだろう!だが海がそれらを収めるなどあり得ない!海などくだらん魚しかおらんではないか!」
コブラ「そんなこと言われても困るぜ。俺は…」
ローガン「はっ!!?」
コブラ「!?」
ローガン「………」プルプルプル…
コブラ「………」
ローガン「そらだ!!!」
コブラ「………」
ローガン「宇宙は空にあ…!!」
ジークマイヤー「ふん!」ボグゥ!
ローガン「」ドサッ
ビアトリス「おい貴様!何をする!」
ジークマイヤー「ここは敵地!こんなに騒がれちゃたまらん!」
ビアトリス「………」
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/11(金) 21:39:57.66 ID:+j5uG0YFo
宇宙…悪夢…赤い月…青ざめた血…うっ、頭が
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/12(土) 06:57:01.83 ID:Bl7UmF/ro
ローガンさん頭よすぎひん?
まさか宇宙と書いてそらと読むとこまでちゃんと理解できるなんて
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/12(土) 07:01:03.46 ID:7LqCpRD0O
ジークマイヤーさんに殴られたらローガンさん死んじゃうと思うんですけど
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/13(日) 16:12:30.43 ID:ijCzIJbbO
ローガンさん啓蒙高すぎィ!(だからすぐ発狂する)
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/13(日) 23:14:52.49 ID:dcY0oEoX0
コブラ「あらら…」
レディ「大丈夫なの?」
ジークマイヤー「峰打ちだ。私はカタリナの騎士だぞ?騒いだからと言って叩き斬る東国の騎士達とは違う」
ローガン「」
ジークマイヤー「…も、もしかしたら死んでいるかもしれんが、心配ない!死なんから不死なのだ!」
ビアトリス「先生が亡者にでもなれば、貴公、分かっていような」
ローガン「」ピクピク
ジークマイヤー「よ、よし!ほれ見たことか!」
コブラ「こりゃ痙攣だぜ。プレートで固めた拳で殴ったりするからだ」
レディ「もうめんどくさいわ。貴方がやったんだから貴方が担いでね」ポイッ
ジークマイヤー「ちょっ、お、おい」ドサッ
レディ「ついてくるんでしょ?文句言わないの。それに他に行くところもないのではなくて?」
ジークマイヤー「………う、うむ」
コブラ「あーあ、こりゃまた前途が暗いねー…」
負傷者を一人抱え、四人はコブラのワイヤーフックを頼みに、壁を進む事にした。
その様をコブラは「ターザン」と言い、レディは「スパイダーマン」を例に出したが、三人の不死には何も分からなかった。
一人は意識が無く、残りの二人には余裕が無かったのだから。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
ジークマイヤー「だああああああああああああああ!!!」
ビアトリス「とっ、とめろ!!何やってる!!」
コブラ「ヒャッホーイ!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
スタッ
コブラ「到着だ。シートベルトは外していいぜ。ところでここはどこだ?」
ビアトリス「訳もわからず飛んでいたのか!!?」はぁはぁ
コブラ「だってワイヤーフックだもぉん。地形をてっとり早く把握するには地形の最頂部に行く必要があるが、それをワイヤーでやるには壁を蹴って遠心力を生まなきゃならない。そのGに怪我人を背負った重装備のこいつは耐えられないぜ?」
ジークマイヤー「………」ぜーぜー
ビアトリス「何を言っているのか全然分からん!説明してくれ!」
レディ「タマネギは皮剥いて食べましょうって事よ」
ゴロゴロゴロゴロ!!
レディ「また大岩よ!」
コブラ「全くやんなっちゃうね!走れーッ!」ダッ!
ビアトリス「あーもうっ!」ダッ!
ジークマイヤー「ちょっ…ちょっと待って…」ダッ!
蛇人「ギ、ギャギャ!」ダッ!
ビアトリス「なんだコイツ!」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/14(月) 13:56:44.39 ID:UNx4aqV2O
ジークマイヤーさんあの装備で身軽なアクションは無理があるな……
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/14(月) 13:59:34.16 ID:pNqhZZFmO
ジークマイヤーさんは玉ねぎ装備に隠れてるけど実は想像よりめっちゃマッチョかも知れない
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/15(火) 07:51:10.33 ID:ORM0W59C0
コブラ(マズったぜ、ここは下り坂だ!俺たちより岩の方が速い!)
一本の坂道を大岩が転がる。
坂道の右手側は石壁、左手側は崖であり、とても足場があるとは思えない。
コブラはカードを切るしかなかった。
ダン!
走り幅跳びの要領で跳躍後、空中で身を翻したコブラは…
ジャッ!
滞空中に0.5秒でブーツからマグナムを抜き…
スチャッ
0.5秒で構えを終えた。
大岩がジークマイヤーにおぶさるローガンの帽子を削り始める。
そしてマグナムは放たれた。
ガウーーン!!
ビアトリス「!?」
ドグォーーッ!!!
衝撃波に触れただけでも、対象に小型ミサイルの爆風と同等のショックを与える弾丸は、大岩を砕き、石壁に穴を穿った。
コブラ「くっそー、一発撃っちまったぜ」
ジークマイヤー「?…?…なんだ?天の助けか?」
ビアトリス「貴公、今度は何を…」
コブラ「おっと!そいつは後まわしだ!」
蛇人「シャーッ!」ババッ!
命を助けられたとも知らず、また多勢に無勢とも分からずに、蛇は一行に斬りかかる。
体躯は大きく、首が長いため、その蛇が男だという事をコブラは見抜き、さらにその無闇な攻撃性を行動から推察した。
そして頭の悪い怪力馬鹿を一瞬で黙らせる方法を選択し、タイミングを見計らうこともせず振り回した。
ゴォッ!!
ガギィーーッ!!
金属塊をも貫通するコブラの鉄拳は、巨剣を振るい、蛇男の大鉈を叩き折って突き進み…
グシャアアッ!!!
大岩に潰されようが潰されまいが、どの道そうなっていたであろう形を、蛇男の頭に与えた。
カウンターだった。
レディ「横穴があったわ!さぁみんな急いで!」
ジークマイヤー「あ、穴があったら入りたい…」
ビアトリス「そんな事言っている場合か!早く来い!」
道行く者を轢き潰す坂を抜け、五人は横穴に転がり込む。
通る瞬間に、一瞬だけ霧の抵抗を受けたが、手で掻くと抵抗はすんなりと彼らを受け入れた。
だがその感覚は、コブラにとっては不吉そのものだった。
コブラ「こりゃアスレチックなんてもんじゃねえな。健康ランドだ」
ジークマイヤー「はぁ、はぁ、こんなに走ったのは久しぶりだ…」
ビアトリス「その鎧脱いだらどう?この調子じゃ鎧は役に立たなそうだ」
ジークマイヤー「何を言う!この鎧は我が魂!脱いだらそれこそボンクラになるぞ!」
ローガン「………」ぐったり
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/15(火) 09:00:15.79 ID:5VfxndQ3O
脱いだらそれこそボンクラになるってそりゃまあそうかもしれないけど自分で言っちゃいますかジークマイヤーさん……
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/16(水) 00:34:23.47 ID:uUDFYGclo
このあと爆弾エリアだっけ
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/16(水) 09:43:45.25 ID:nFHYD3ER0
一行が入った小部屋には、侵入口の他にもう一本、石積みの壁と天井に囲まれた小道があり…
コブラ「!」ササッ
その先には蛇男が仁王立ちしている。
コブラは一度壁に隠れた後、侵入口付近に転がる、大岩のかけらを引っ掴む。
そして小道の正面を避けて蛇男に見つからないような角度から、力一杯小道の床に、大岩のかけらを投げた。
バガッ!
かけらは床の石畳にぶつかると、砕けて飛散し、即席の対人地雷のように小道にいくつもの鋲を打ち込む。
ドスドスドス!
蛇男「ゲッ!」ドサーッ
だが蛇男を倒したのは、石壁の隙間から飛んだ三発のボルトだった。
コブラ「おっと、何か仕掛けてあったようだな」
レディ「発動し終わったみたいだけど、どうするの?」
コブラ「再装填するほどの技術が無いことを祈ろう」
コブラを先頭に、一行は小道の片側の壁に背を着けつつ、先に進む。
だが人を一人背負っているうえ、背中と腹の他に色々突出した構造を持つ鎧を着込んだ男は、壁に寄ることが出来ない。
コブラとレディが抜け、ビアトリスも抜けると、彼らだけが小道に取り残される形となった。
ジークマイヤー「………」ずりずりずり…
だがジークマイヤーは、ローガンを背負ったまま匍匐前進をする事によって、トラップを最低限回避できる形で進んだ。
ビュンビュンビュン!
ジークマイヤー「………」ずりずりずり…
二人のすぐ上をボルトが三発飛んだが、被害は無いようだった。
コブラ「再装填ありか。壁の中に人がいても驚かないぜ」
ジークマイヤー「ふー、死ぬかと思ったわ」
ローガン「マジェスティック…」ボソリ…
ジークマイヤー「ん?」
小道を抜けた先はまたも小部屋だったが、粗末な机と椅子の他、出口もあった。
しかし出口の先が問題だった。
ドドーッ!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!
ドドーッ!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!
コブラ「………」
ビアトリス「………」
ジークマイヤー「………」
レディ「あらー…」
小道の先は棚田のように曲がりくねった坂道と、そこを絶え間なく転がる大岩と…
蛇女「………」
その棚田を見下ろす蛇女がいた。
大岩を一定の間隔で供給する機構は、精密に、そして果てしなく動いた。
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/16(水) 10:30:10.49 ID:Y1m/OA0Po
罠ありすぎぃ!
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/08/16(水) 10:33:20.17 ID:oQZI4T+Q0
どんどんミコラーシュ化しつつあるな
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/16(水) 13:32:18.07 ID:eoBnAwutO
鎧着て探検って大変なんだなと思わざるをえない
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/16(水) 14:19:24.59 ID:C1pOLhABo
代わりにダンボーを着せてあげたい
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/16(水) 16:18:58.35 ID:q1sr5L/1O
鎧着ても死ぬときは死ぬんだからダクソ世界は怖いな
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/16(水) 18:03:47.71 ID:t6Cz48rzo
>レディ「あらー…」
このレディかわいいなww
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/17(木) 00:41:58.45 ID:AFni3WQs0
コブラ「……はぁーあ、やれやれまたコレか」
レディ「芸がないなら無いなりに、打つ手はあったみたいね」
コブラ「しょうがない、ちょっくら走ってくか」
ビアトリス「えっ?」
コブラ「………」ダッ!
ビアトリス「なっ!?おい待てどこに行く!?」
レディ「止めなくても大丈夫よ。まぁ見てなさい」
仲間をおいて一人駆け出したコブラは、棚田状の上り坂を駆け上がる。
それを察知した蛇女は腕に力を込めると…
シュビッ!
掌から雷を放った。
だが雷がコブラのこめかみに刺さる瞬間、コブラは瞬時に身を屈めた。
さらに、その姿勢は跳躍に必要な『溜め』の動作にも繋がっていた。
ターン!
コブラが跳躍すると、今度は大岩がコブラの進路を殺しにくる。
しかしコブラの跳んだ方向は、垂直ではなく斜め上。
踏むべきものは壁だった。
ガッ!
石畳を蹴り、壁を蹴り、天井に両手の指と両足のブーツを減り込ませたコブラの『頭上』を…
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…
大岩は通過していった。
コブラは天井から離れて着地すると、また走りだし、大岩の供給源を突き止めた。
コブラ「ほーらやっぱり。どんなアトラクションにもスタッフはいるもんだ」
岩を坂に流すための広間には、中心に岩の受け皿と方向機が据えられ、壁の上部四辺からは、岩に推力を加えるための鐘つきが備わっていた。
そして何よりコブラをニヤつかせたのは、広間の天井に空いた穴から、巨大な影が大岩を降ろそうとしている光景だった。
コブラ「だが、この遊具は使用禁止だ。危ないからな」シャリン
タン!
コブラ「そりゃーっ!」ガキーッ!!!
ガラガラガラ…ガシャーン
コブラ「機械は故障。これにて閉園だ。あんたも休んだらどうだ?どうせ給料安いんだろう?」
影「………」
影「………」スッ
コブラ「そうそう、そうやって引っ込んでてくれ。たまには休まなきゃ」
黒騎士の大剣に仕掛けを破壊された広間は、静かになった。
レディが不死達を連れてコブラと合流する。
ビアトリス「この物騒な大仕掛けの数々……やはりこの城全体が一つの罠のようだな。拠点としての働きなど考えられていない」
コブラ「ああ。嫌な方の予想が当たっちまったぜ」
ビアトリス「予想?」
レディ「みんな、こっちに通路があるわ。先に進めそうよ」
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/08/17(木) 04:42:32.11 ID:M9QjU/uv0
ホントクオリティ高いな
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/17(木) 09:03:33.06 ID:RhBewvG2O
仕掛け壊されたら素直に引っ込むのか怪しい影ww
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/03(日) 13:40:05.41 ID:GP6D5wdf0
罠。ビアトリスの言葉は、まさしくこの城の全てを簡潔に表していた。
古城は食堂や倉庫、鍛冶場や練丹場、浴場などを欠き、それどころか住居として最低限持つべき食料そのものや、寝床と厠すら無かった。
中の造りは侵入者の迎撃一辺倒であり、打ち倒すべき対象には番兵たる蛇人達をも含まれているようだった。
一行はその蛇の巣窟ですらない死地を進んだ。
通路を歩けばボルトの嵐が襲い、落ちれば即死であろう細道の上はペンデュラムが守っていた。
それらを越えると蛇人達が押し寄せ、蛇人達を斬り伏せるとまた罠があった。
細道とペンデュラムと蛇女の雷の組み合わせは、ビアトリスの魔法のありがたみを、一層コブラに感じさせたほどだった。
身体能力に優れるコブラとレディはともかく、不死達はいくらか負傷し、その治癒にいくらかのエストを消費し、かくして一行は古城を抜けた。
正確には、古城の下層構造から。
コブラ「まだあるのかよ、いい加減飽きたぜ…」はぁー
暗所を抜けたコブラの見上げた先には、灰色の雲が積み上がった青空と、その下に広がる古城の上半分がそびえていた。
石積みの構造物はまたも複雑に絡み合い、各所に不穏な空気を漂わせている。
レディ「登るしかないわ。ここまで来たんですもの」
コブラ「憂鬱だなー。遊具に飽きたんだしおうち帰ってもいいだろ?ダメ?」
レディ「フフッ、だめね」
ジークマイヤー「うーむ…うーむ…」
ビアトリス「どうした、また唸って」
ジークマイヤー「エストを使い切ってしまったのだ…」
ビアトリス「人を背負って鎧まで着ているからだ。その鎧、本当に脱がなくていいのか?」
ジークマイヤー「そ、それは無理だ」
ビアトリス「人を二人担いでいるようなものだぞ」
ジークマイヤー「我慢すればいいだろう」
ビアトリス「………」
コブラ「なぁ、ちょっとばかしエストとやらを分けてもらえやしないか?」
ビアトリス「!? お、おい!これは限られた治癒の術だぞ!次の篝火までは補充も出来ないんだよ!」
コブラ「それは分かってんだよぉ。でも俺は不死人じゃないしここに来てからまともに水も飲んでないんだぜ?喉がカラカラだ。なぁ頼むよ」
ビアトリス「…まぁ、ろくに食べ物も無いのは確かだな…」
ビアトリス「仕方ない……一口だけだぞ」サッ
コブラ「ひゃー助かるぜぇ!」クイッ
コブラ「………」
ビアトリス「どうだ?」
コブラ「なんの味もしないな。飲んだ感触も無い。なんだこりゃ?」
ビアトリス「飲んどいて失礼な奴だな。不死人の味覚では結構な馳走だぞ」
コブラ「これがご馳走ねぇ…どういう味覚してるんだ?」
ビアトリス「食べたもの全てが口の中で灰になるようなものだ。故郷の味も忘れたよ」
ビアトリス「で、どうだ?喉は潤ったか?」
コブラ「それが全然」
ビアトリス「あぁ…貴重なエストを…」
コブラ「俺も残念だよ。あー腹減った…」
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/03(日) 17:01:28.63 ID:9jnnFhwio
ビアトリスさんカワイソス
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/11(月) 03:44:25.52 ID:KiJ0g45S0
古城の上層階層は主に四つの要素で構成されていた。
広場と、通路と、階段と、石橋。
どの広場も焦げ臭く、全ての通路には血の跡。
あらゆる階段には炭化した何かが撒かれており、石橋という石橋には尽く手すりが無い。
そしてそれらに対してイレギュラーをもたらす存在がひとつ。
巨人「………」
ジークマイヤー「おお、あれは巨人か!」
コブラ「へへっ、ありゃあスタッフと言うより用心棒ってところかな?」
ビアトリス「古き神々の盟友か……しかし、なぜこんな所に…」
古城の最上部に建つ物見の塔から、巨人は一行を見下ろしている。縄を用いて鉄板を粗雑に組んだだけの面で顔は隠されていた。
だがコブラには巨人の視線がこちらに向いているのが分かった。7メートル程もあるであろう巨体を使って、何をしてくるのかも。
少なくとも仕掛けが壊れるまでは、別の巨人が別の場所で、大岩を仕掛けに供給していた。
コブラ「神の盟友ね…そんな大層な御仁がこんな所に詰めてるって事は、ここは『罠』ではなく『試練』だったって訳か」
レディ「金の鎧の彼は関係なかったみたいね。でもそしたら…」
コブラ「ああ。やはりこの旅は神々とやらにお膳立てされている。だがその試練の目的がまだ分からない。不死の使命を遂行できる英雄を選別するためなのか、それとも、この試練こそが不死の使命なのか…」
ザッ!
ジークマイヤー「!」
バルデルの騎士「………」シュッ!
コブラが思慮に耽っていると、一行が立つ踊り場の影、下へと続く階段から、赤いマントを羽織った亡者化した騎士が細い刃を振るった。
刃は、刃を持つ騎士から最も近い不死の首元へと向かって、空気を裂いて進む。
ビアトリス「!?」
コブラ「ムッ!」
ジークマイヤー「ふん!!」ババッ!
ガシィン!!ドシャアアーッ!
その突進は、総重量が160キロを超える塊の体当たりを受け、登ってきた階段の一番下まで弾き飛ばされた。
騎士が持っていた剣は、ジークマイヤーとの接触時に放り投げられ、空中で弧を描いて騎士の頭に突き刺さった。
この瞬間に騎士は事切れたが、不死の耐久性にどのような限りがあるか知らないレディは、念押しとして既に飛び後ろ回し蹴りを放っていた。
ドガァッ!!シャリシャリシャリゴォン!!ガラガラ…
レディの蹴りは騎士の肋骨を背中に触れるほど押し込み、騎士は鎧の破片を撒き散らしながら石畳をコマのように滑って、石壁に激突した騎士の死体は積まれた石を打ち砕いた。
ジークマイヤー「不意打ち卑怯なり!……というか、凄い力だな…」
レディ「それほどでもないわよ。どう?怪我は無い?」
ビアトリス「あ、ああ、大丈夫だ。すまない、手間を掛けて…」
ジークマイヤー「なあに、両手が塞がっていても戦えるのがカタリナの騎士。重い鎧も使いようだ」
レディ「コブラ、ここも安全じゃないみたいよ。先に進みましょう」
コブラ「………」
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/12(火) 00:26:44.38 ID:lvpSzzBr0
>>266
「魔力」が「魔翌力」に化けてた
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/12(火) 09:56:14.49 ID:6nGPvzXTO
たまねぎさんカッコいい!
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/11(水) 00:38:52.44 ID:/C8M2c490
難産
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/11(水) 03:15:05.66 ID:a6gWW5h40
どれだけ時間かかっても大丈夫よ
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/15(日) 15:53:46.08 ID:p05zDUDs0
安全な場所はどこにもない。だが、その場にこそ求めるものはある。
果ての無い試練であれば、尚のことそうであって欲しいという願望は強まり、願望は足を進ませる。
敵が姿を現した、階段の先にさえ。
コブラ「それっ!」ブーン!
バルデルの騎士「グエッ!」ドカーッ!!
階段の先は袋小路だったが、そこにはもう一人騎士が潜んでいた。
しかし敵と相対した時の反射神経でコブラに適うはずも無く、騎士は咄嗟に構えた盾ごと特大剣で叩き斬られ、地に伏した。
そして自身の後ろにあった宝箱を一行の前に晒し、コブラは箱を開けた。
コブラ「そうだよ!これだよこれ!やっぱり宝箱にはこういうのが入ってなくちゃあなッ!」
ようやく求めたもの『らしさ』を備えた一品を拝めたコブラは、小躍りした。
その指輪は炎のように紅い宝石を讃え、石は鋭い輝きを綺麗にカットされた一辺一辺から発していた。
ビアトリス「炎宝石の指輪か……良いものを見つけたな」
コブラ「炎宝石?」
ジークマイヤー「炎宝石は炎を弾く石だ。騎士達の宝石とも呼ばれている」
コブラ「へえー…あんた意外と石に詳しいんだな。ここに来る前はヤンチャしてたクチかい?」
ジークマイヤー「はっはっは!宝石と聞いてヤンチャが浮かぶとはな」
ジークマイヤー「だが、あいにくそういう訳では無い。魔法の戦指輪を知ることは騎士たる者の嗜み。いや、義務なのだ。鎧も剣も盾も騎士の友であり、指輪も同じなのだ」
コブラ「ふーん…騎士の戦指輪ね。炎を弾くって事は、コイツを着けてりゃ火の海も歩けるのか?」
ジークマイヤー「流石にそこまでの力は無い。燈台の火を握っても軽い火傷で済むぐらいにするだけだ。溶岩なんて渡れば死体が残るだけだろうなぁ」
コブラ「よく分かった。死体が残るだけマシって思う事にするよ」
指輪を右手人差し指に嵌め、コブラは仲間と共に上を目指した。
皆鈍足なカタリナ騎士を気遣いつつも、階段を駆け、踊り場を駆け、石畳の上を駆ける。
行く手を阻む亡者はおらず、蛇人達も姿を見せない。だが表に出ないには、出ないだけの理由があった。
巨人「………」グオッ…
ただの大岩にしてはやけに丸い、砲丸と言って差し支えない大玉が、巨人によって掲げられた時、一行は脚を止め…
コブラ「戻れ!」
引き返した。そして一拍子遅れて…
ドオオオーーーン!!!
不死達が元いた場所は火の海に包まれた。
落とされ砕けた大玉は、炎と黒煙をあたりにぶち撒けた。
確かに指輪一つで凌げるようには見えないと、コブラは思った。
コブラ「無茶しやがるぜ。あいつこの城を壊す気だぞ」フフッ
ビアトリス「あの距離では私の魔法も届かない…打つ手無し、か…」
レディ「いいえ、あるにはあるわ。でも代償が要る」
コブラ「そこなんだよなー…誰か魂貸してくんない?弾丸でもいいけど」
ビアトリス「弾丸…?」
ジークマイヤー「いや、なんとかなるだろう」
ビアトリス「へ?」
ジークマイヤー「このカタリナ騎士、ジークマイヤーに秘策あり」フッ
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/15(日) 18:12:53.06 ID:+TqjdNaAO
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
300 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/16(月) 06:31:02.49 ID:xwCzCUK20
依然として眠り続けるローガンを壁際に寄りかからせ、ジークマイヤーは威風堂々に歩き出した。
石畳を焼いた炎はすで沈静し、所々に燻りを残している。
その燻りの一つを踏み退けて、ジークマイヤーは大玉の着弾地点に立った。
ビアトリス「!? おい!気でも触れたのか!?」
ビアトリスは焦った様子で声を荒げたが、カタリナの騎士は巨人を見上げたまま動かない。
コブラとレディは静観しているが、事が起きればレディはジークマイヤーを引き戻し、コブラは無けなしのサイコエネルギーを放つだろう。
巨人は逃げも隠れもしない侵入者を訝しく思いつつも、やはり仰せつかった使命に忠実に従った。
ゴオオオッ!!
火薬を満載した大玉が、ジークマイヤー目掛けて飛んでくる。
レディは駆け出し、コブラはサイコガンを抜いた。
ジークマイヤー「フン!」バッ!
カタリナの騎士はタリスマンを握りしめ、大きく胸を張った。
彼のとった行動はそれだけだった。
ドオオオォォーーーン!!
レディ「!?」
コブラ「なにっ!?」
だが、それだけを行なった不死の全身から、爆発とも呼べる強烈な衝撃波が発せられた。燻る炎は掻き消され、レディは元いた場所まで押し戻された。空気中の埃や塵も巻き上げられ、ジークマイヤーを中心に大きな球状の無風地帯が形成された。
更に、衝撃波が撥ね除けたのはそれらだけではなかった。
巨人「むぉっ!?」
巨人は驚嘆した。
侵入者へ向け投げつけた火薬玉が、小男に投げ返されたのである。しかも、巨人には選択肢が無かった。
大玉の殻は薄く、受け止めれば割れて爆発し、撃ち返しても爆発する。避ければ作り置きされた残りの大玉に、眼前の大玉が直撃して爆発する。そして如何なる爆発も、全ての大玉を連鎖的に吹き飛ばすだろう。
巨人「オオオオオーーッ!!」
ゆえに、巨人は塔から飛び降りるしか無かった。
ドグワアアアアアァァァ!!!
物見の塔は粉々に吹き飛んだが、巨人は九死に一生を得た。
キノコ雲さえ立ちのぼらせる程の炎に包まれれば、巨人といえど跡形も残らなかっただろう。
巨人の判断は正しかったが、使命の完遂にはあまりにも不都合だった。
ズドドドオォン!!
巨人「むおお!?ふおおおお!?」ガラガラガラ…
城は遥か昔からあり、長年風雨に晒されてきた。
蛇人達に整備をするほどの知能は無く、巨人達は大きすぎて、重すぎたのだ。
城は誰からも顧みられる事無く、手入れはされなかった。
そんな古城に、飛び降りた巨人を受け止めるほどの頑強さなどは無かったが、泥の山のように崩れて、衝撃を吸収するくらいの耐久力は残していた。
巨人「おおおおおおおお!?」ガラガラガラ…
巨人はゆっくりと古城を削りながら滑り、鬱蒼とした森へと落ちていった。
不死達の体にソウルが流れ込まないのだから生きてはいるが、もう古城へは戻れないだろう。
登ろうにも、登れば崩れるのだ。
ジークマイヤー「見たか!これが騎士の奇跡!フォースの力だ!」えっへん
コブラ「スターウォーズかな?」
ビアトリス「まさか跳ね返せるとは…」
レディ「なんだかすごい事になったけれど、これ登れるのかしら?」
ビアトリス「わからん…」
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/10/17(火) 03:46:34.98 ID:NTTj+9fB0
崩れた塔は大量の瓦礫を吐き出し、瓦礫は城の各部を連鎖的に破壊した。
物見の塔から別の塔へと延びる石橋は断たれ、石畳は埋まり、または落ち窪む。
噴煙は収まり、跡には静かな積み石の山だけが残ったが、破壊されたのはあくまで物見の塔とその周辺のみ。
古城の大部分は健在であり、旅の行く先はまだ消えてはいなかった。
コブラ「なんとまあ随分と殺風景になっちまったなぁ」ガラガラ…
ビアトリス「正直言って、ここまでの事になるとは想像していなかっただろう?」ガラガラ…
ジークマイヤー「うむ」ガラガラ…
コブラ「奇跡って言ったか?神々の威光は少々ありがた過ぎたみたいだな。危うくこっちも立ち往生するところだ。よいしょっ」ガシャーン…
レディ「神に崩された塔って、まるでバベルの神話ね。でも敵もいなくなった事だし、生きてるだけで丸儲けと考えましょう」ガラガラ…
ジークマイヤー「バベル?ハベル神話ではないのか?」
レディ「?」
コブラ「この中に宝でも埋まってないかねー…これだけ歩いて指輪が一個だけって割に合わないぜ」ガラガラ…
不死達とレディがただ瓦礫を踏み越えるなか、コブラは未練がましく積み石をひっくり返しつつ、歩みを遅くしている。
元々明確な道筋や達すべき目標が示されない旅である以上、空腹である事も相まって、コブラは美女や宝といった褒美が無ければ戦意を維持できない状態にあった。
コブラ「ふぅー…」
そんないわゆる『元気のない』状態で、コブラ達は呆気なく古城の最終目的地と思われる部屋に着いてしまった。
その一室の上には本来物見の塔があったが、塔の崩壊により天井は消失している。
本来、別の塔へと続く石橋、物見の塔への階段、扉の無い霧のかかった門、狙撃兵に守られた横穴の、計四つの出入り口がその部屋にはあったが、石橋と階段は崩落し、狙撃兵は死んで埋もれ、霧を形作っていた門は崩落によって力を失ったのか、門の積み石から弱々しく白煙を漏らすだけだった。
そして、力を失った門の向こうには、壁の無い石造りの広場と、その奥地に建つ鉄の巨人像が見える。
何故コブラはため息を吐いたのか。
霧の先にあったものから、散々な目に遭ってきたからだ。
コブラ「今度の相手はアイツか……まったく分かりやすいぜ」
レディ「ジーク、ローガンは門の陰に寝かせておいた方が良さそうよ」
ジークマイヤー「うむ、そのようだな」スッ…
ローガン「………」グッタリ
ビアトリス「痛ましい……で、作戦はどうする?私の魔法もそろそろ使用限界が近い」
コブラ「作戦と言っても、敵の手の内が分からないからな。下手な考え休むに似たり。愚直に行くさ」
ビアトリス「愚直ね。分かったよ」
コブラ「………」スッ…
コブラの歩みが門を潜る。不死達もコブラの後に続く。
だが、些細なそれだけの動きも、攻撃の対象だった。
アイアンゴーレムは起動し、大斧を構え直すと、歩き始める。
像の起こしたアクションはコブラの予想の範疇にあったが、その歩みがすぐに止まったのを見て、怪訝に思った。
そして、侵入者を遠くに見据えたまま、何故大斧を振り上げるのかも。
コブラ「おっと、こりゃヤバい」
飛んでくるのは大斧だと思った。
しかし、アイアンゴーレムは更に予想を上回った。
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/13(月) 17:11:43.06 ID:Cnwxt8h4O
待ってます
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/14(火) 03:33:42.47 ID:eW3zdmjH0
ブオーーン!!!
大斧が風を斬る。
コブラ「避け…ありゃ?」
しかし、大斧は飛ばない。
巨像は握った得物をただ振るっただけであった。
少なくとも、誰しもにそう見えた。
ユラッ…
コブラの眼前の空気が揺らめく。
声を上げるには既に遅すぎて、避けるにしても、その揺らめきは大きかった。
ゴワッ!!!!
レディ「えっ!?」
ジークマイヤー「おおっ!?」
コブラは大剣を用いて辛うじて直撃だけは防いだものの、その両脚は宙に浮き…
コブラ「ぐふっ!」ドドォーッ!!
石壁を破る勢いで、背中をしたたか打ちつけた。
ジークマイヤー「なんだ今のは!?放つフォースか!?」
ビアトリス「い、いや、そんな気配は何も…」
レディ「大丈夫コブラ!?立てる!?」
コブラ「お、俺の事はいい…それより気をつけろ…次が来るぞ」
レディがコブラを介抱する瞬間を隙と感知し、アイアンゴーレムはまたも大斧を振り上げる。
刃の欠けた斧は太陽の光を反射して異様にぎらつき。その鋭い輝きは、コブラの眼には剥き出しの殺意に映った。
ボッ!!! ボッ!!! ボッ!!!
大斧は今度は三度振るわれ、空気を破る音も三度鳴る。
不死達の前にまたしても揺らぎが現れたが、揺らぎは大きく分厚く、そして鋭かった。
バチュン!!
身軽なレディは、コブラを肩に担いで揺らぎを飛び越す。
ジークマイヤー「ふんおおお!!!」ドゴォン!!!
カタリナの騎士はフォースによって揺らぎを大きく削ったが、残る風に鎧を撫でられ、大きく体勢を崩した。
ボゴオォーーーッ!!!
最も大きい被害を被ることは、硬い鎧も身軽な体捌きも持たないビアトリスにとっては必然だった。
幸いにして良い眼を持ってはいたが、それも辛うじて命を繋いだだけにすぎない。
ビアトリス「ぐ……あっ…」
眼前が揺らいだ瞬間に飛び退いたことにより即死こそは免れはしたが、ビアトリスは深手を負った。
右足首から先を削ぎ飛ばされた彼女の戦術からは、回避という選択肢が消えてしまった。
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/25(土) 21:51:09.15 ID:JH2xK5bP0
ビアトリス「………」ハァハァ…
ジークマイヤー「貴公、脚を…!」
ビアトリス「これぐらい平気さ…エストを飲めばなんとかなるよ…」
ビアトリスは息も絶え絶えに強がって見せたが、それは嘘だとジークマイヤーでさえ気付くことが出来た。
彼女がエストを飲むと切り飛ばされた足先は灰となり、再び彼女の右足首に纏わりついて形を成したが、接合は不完全であり、傷口からはすぐさま血が滲み始めた。
辛うじて立ち上がる事は出来る。しかし回避だけでなく、ビアトリスは回復という選択肢をも失った。
ビアトリス「貴公はあの像をとにかく斬りつけろ…私はここから魔法を放ち続ける…」
ビアトリス「…他に手は無い。行け」
ジークマイヤー「しかし…」
レディ「ヤケを起こすのは早いんじゃなくって?」ササッ
そんな覚悟を決めかけた彼女をレディは小脇に抱えて、ジークマイヤーの前に立った。
レディのそばに、負傷したであろうコブラの姿は無い。
レディ「なっ、おい、離せ!足手まといはごめんだぞ!」
レディ「わがまま言わないの。しょうがないでしょ?」
ジークマイヤー「き…貴公、コブラはどうしたのだ!?」
レディ「コブラ? ああ、彼ならあそこにいるわ」
レディの視線を二人の不死は追い、そしてアイアンゴーレムのすぐ足元に眼にした。
脇腹を抑えながらも、しかし力強さを感じさせるその立ち姿を。
特大剣を握る右手には力が溢れ、剣の切っ先は石畳から離れていた。
ジークマイヤー「む、まさか…!」
レディ「ビアトリス、私が貴女の脚になるわ。彼を支援するのよ」
ビアトリス「そういう事か。分かった」
グン!!!
眼前の侵入者を叩き潰すべく巨像が斧を振り上げる。上体を反り返すその渾身の一撃を、コブラは待っていた。
必殺の間合いに獲物が寄れば、間合いを持つものは必ず必殺を狙う。
そんな悪党どもの足元を文字通り掬うのだ。
ブーン!!!
巨大な鉄塊は…
コブラ「………」ササーッ!
地を滑る蛇の頭上を抜け…
ゴオッ!!
蛇の大牙は…
ガァーーン!!
巨像の足首を捉え、股の間を抜けた。
手応えはあった。だがあり過ぎた。
コブラ(腕にジーンとくるぜ。戦艦ぶっ叩いたみたいだ…)
黒騎士から奪いし特大剣の威力は、しかし鉄の像に全て受け切られた。
巨像は股下を潜った小虫を踏みにじるため、今度は脚を上げ、降ろした。
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/25(土) 22:10:46.48 ID:IWnP1aAhO
剣でどうにかなんのかこんな化け物……
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/27(月) 05:17:20.05 ID:vx9J4ulM0
先の衝撃に内臓を痛めたコブラだが、鈍重な踏みつけを貰う程には弱っていない。
コブラ「!」
しかし、やはり援護射撃は有り難かった。
少なくとも少しの間、疲れた身体に鞭打つ必要が無くなるのだから。
シュドン! バスッ!
ソウルの太矢の狙いは精確で、巨像の体格に比しても小さいその頭にも、ビアトリスは連続した小爆発を次々と与えた。
レディに小脇に抱えられているため見た目は少しあれだが、その隙にコブラは巨像の背後に回り込む事に成功する。
タッタッタッタッ…
ジークマイヤー「ふーん!!」ブオン!
ガギィッ!
ビアトリスの魔法に続いて、ジークマイヤーも助走をつけて巨剣を振るい、巨像の脛に渾身の一撃を叩き込む。
金属同士の鋭い衝突音が響き、その音はジークマイヤーの脳裏に微かな勝利の予感をもたらした程だった。
だが、その一撃は巨像からの攻撃の呼び水にしかならず、そしてその矛先は…
ブオッ!
ジークマイヤー「おっ…」
ビアトリス「逃げろ!掴まれる!」
ジークマイヤーに掌として向かい…
ジークマイヤー「おろっ?」チッ!
ビアトリス(えっ?)
ジークマイヤーの頭上を掠め…
コブラ「!?」ガシィッ!
巨像自身の股下を通り抜け、巨像の背後にいたコブラに終着した。
その様子は滑稽とも言え、コブラに極めて古い地球の民俗学的知識を想起させた。
烏に睨まれた者には災いが降りかかる。それを逸らすため、睨まれた者は自身の股下から烏を睨む。
その姿勢で烏に向かって石を投げれば、災いから逃れられるという。
コブラ「ちょ、ちょっと待ってくれ!毒蛇投げるなんてカラスが可哀…」
ブオオオーーッ!!
突如突風の中に晒されたコブラは、ジークマイヤーに向かって一直線に飛んで行き…
ジークマイヤー「うげぇ!」ドガーーッ!!
彼を巻き込み…
レディ「コブラ!」サッ!
ビアトリス「痛っ!」ドテッ
バスーーン!
レディに受け止められ、ようやく止まった。
急に石畳に落とされたビアトリスは腹を痛め、コブラとジークマイヤーは全身を痛めた。
旅の一行は元いた場所に戻され、全員が負傷した。
四人の元へ巨像が近づく。
307 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/29(水) 19:05:57.35 ID:Rmrhqz4a0
ビアトリス「大丈夫か!?」
コブラ「大丈夫じゃないよまったく…あんたはどうだ?」
ジークマイヤー「む、無理だ…もう動けん…エストも空だ…」
ジークマイヤー「貴公は…?」
コブラ「そうだな、ほうれん草があればすぐにでもアイツを倒せるんだがね。掴まれ」サッ
ジークマイヤー「ハハ…またわけの分からんことを…」ヨロッ
力無く笑ったジークマイヤーは、コブラに肩を貸されてよろめきながらも立ち上がる。
レディはビアトリスを再び担ぐ。
レディ「コブラ、彼をお願い。私は彼女と一緒に巨人を食い止めるわ」
コブラ「分かった。なんならそのまま倒してもらっても構わないぜ」
レディ「それは貴方に譲るわ。来たわよ」
ズーーン!
石畳に足を減り込ませ、巨像は一行の前に立った。
コブラはジークマイヤーを壁際に休ませるため、巨像から離れる。
それを追撃しようと巨像が身構えると…
ボボン!
巨像の頭部に魔力の爆発が生じた。巨像は破壊目標をレディとビアトリスに切り替え、即座に反撃する。
ブオォン!!
レディ「………」サッ
バフォーッ!!
レディ「………」バッ!
矢継ぎ早に繰り出される鉄塊の連撃を、レディは大きく余裕を持って回避する。
振り下ろしにはバックステップ。横降りには跳躍で対応した。
だが巨像には近付かず、一定の距離を保った。
レディ「だんだん慣れてきたわ。そっちはどう?」
ビアトリス「良い感じだよ。おかげさまで」シュイーン!
ボン! バシィーン! ボォン!
攻撃の役割はビアトリスが担っているため、レディが攻勢に回る必要は無い。
ビアトリスは回避をせずして好きなだけ魔法を巨像に叩き込めるため、彼女の攻撃は全て巨像の頭部に集中する。
二人は確かな手応えを感じていた。巨像の頭部からはカケラの一つも落ちてはこないが。
レディ「良い感じだけれど。効いてるのかしらね」ササッ
ビアトリス「そのはずだ。そうでなくては困る」シュイーン!
ボボン!
ビアトリス「あっ…」
レディ「?」
ビアトリス「ここまでだね…魔法を使い切った」
レディ「あら…」
308 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/29(水) 19:23:05.98 ID:Rmrhqz4a0
コブラ「様子が変だ。なんで魔法を撃たないんだ?」
ジークマイヤー「回数が来たんだろう。奇跡も魔法も無限に振るえるわけでは無いからな」
コブラ「世知辛い話だなぁ」フフッ
ジークマイヤー「随分余裕そうだが、貴公は分かっているのか?窮地なんだぞ?」
コブラ「分かってるって。だからこそ笑うのさ」
ジークマイヤー「わら…なに?」
コブラ「まぁ見てな。ちょいとばかし命を懸けてくる」ザッ…
ザッザッザッザッ…
309 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 19:43:17.76 ID:ZGp/e3EA0
遂に抜くのか
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/29(水) 20:19:25.37 ID:Rmrhqz4a0
レディ「膠着状態ね…そろそろコブラと合流したいところだけど…」
レディ「!」サッ
ガゴーーン!!!
レディ「そうもいかないみたいね」
ビアトリス「ちょっと酔ってきたよ…あんまり身体を振り回さないでくれ…」
レディ「片手で持つには脇に抱えるしか無いのよ。両手が使えたら貴女を背負えるのだけれど」
二人は攻めあぐね、逃げあぐね、徐々に詰まりつつあった。
アイアンゴーレムは戦法を切り替え、斧の振り回しではなく、素手による素早い突き下ろしを攻撃の要としている。
レディが一歩でも歩けば、巨像はそこへ向け即座に鉄塊を打ち降ろす。巨像の動きは単純だが、それゆえレディは身動きが取れなくなって来ていた。
ゴッ
そんな緊張した場を破ったのは、アイアンゴーレムの頭に当たった一個のブロックだった。
もはや脅威ではなくなった二人を放置して、巨像は振り向き、石を投げたであろう男に向かって歩を進め始める。
コブラは、石橋を失った塔を指差しながら、得意の軽口を口から出るに任せた。
コブラ「よぉ、へへへ、怒らせちまったかな?」
ズーーン!
コブラ「まぁ来てくれよ。ここからの眺めは最高だぜ」
ズーーン!
コブラ「もっとも、おたくはもう見飽きたかな?」
ブォン!!
ドガァーーン!!!
コブラに数歩近づき、巨像は斧から風を放った。
コブラのいた石畳は粉々に粉砕され、辺りに岩塊が散らばる。
コブラ「ヒューあぶねえ。それはYESってことか?」
しかし、コブラは斧が振られた瞬間にその場で跳躍し、直撃を避けていた。
いくらか破片を喰らいはしたが、それもかすり傷の範疇だった。
ブーーン!!
ガキーーン!!!
巨像は更に数歩近づき、今度は斧をコブラの脳天めがけ振り下ろす。
コブラは大きく横に跳んで回避し、飛んできた破片を背中で防ぐ。
コブラ「いやNOか?なんか喋ってくれよ。おたくのジェスチャーは派手すぎてわか…」
ガシィッ!!
十分に接近した巨像は、コブラを掴んだ。
ブン!!!
そしてコブラは凄まじい速さで振り上げられ、コブラの手首から伸びたワイヤーは鞭のようにしなった。
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/29(水) 21:22:05.49 ID:eLjImqMXo
サイコガンじゃないのか……?一体何をする気だ
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/30(木) 00:17:06.80 ID:xz1EoYSY0
黒い鉄の塊が飛翔した。
その塊は永きに渡って塔に立ち、選ばれた不死の英雄の到来を待っていた。
鉄の巨像を打ち倒す為に、力を貸してくれるであろう不死の到来を。
そして時は合一し、機会は訪れた。
塔に向かって伸びた一本の鋼線を、彼は自身に巻きつけた。
奇抜な衣装を身にまとう男の、常軌を逸した行動の意図を読み取ったのだ。
時間という狂気に半ば蝕まれ、故に育った狂気的行動への共感力が、鉄塊にそうさせたのだった。
ブオオオーーッ!!!
巨像に向かって飛翔する鉄塊は、身の丈ほどもある大鉄剣を空中で振り上げ…
「ウオオオオオオォーーーーッ!!!!」
飛翔の速度に己の剣勢を乗せ、アイアンゴーレムの頭に激突した。
ドゴオオォーーーン!!!
大鉄剣は巨像の頭部に深々と減り込み、剣の先端は巨像の後頭部から貫通した。
アイアンゴーレムは上半身を大きく仰け反らせ、バランスを崩し…
ズドオォーーン!!
転倒して、灰色の砂埃を巻き上げた。
ビアトリス「今度はなんだ!?今のは!?」
レディ「人に見えたわ……アレは一体…」
ジークマイヤー「おーい!今のはなんだーっ!?何か見たかーっ!?」
レディ「彼も見たって事は、少なくとも幻じゃ無いわね。魔法?」
ビアトリス「こんな破壊力のある魔法、私は知らないよ…」
困惑する不死達が見守る中、濛々と立ち上る砂埃から出てきたコブラは、服をポンポンと叩いた。
コブラ「ふー助かったー…イチかバチかだったが、なんとかなったみたいだな」
レディ「コブラ、これはどういう事?貴方は大丈夫なの?」
コブラ「外れた肩はさっき嵌めた。で、アイツについては、一度掴み上げられた時に見かけてね…」
巻き上げられた砂埃は風に流され、薄まり、巨像の全体像を一行の前に晒す。
巨像は頭部に穿たれた穴からソウルを立ち上らせ、巨像の上に立つ鉄塊を撫でた。
コブラ「助太刀してもらう事にした」
黒鉄のタルカス「オオオーーーッ!!」ドグォーーーッ!!!
巨大な盾と巨大な剣を持ち、漆黒の大鎧に身を固めた騎士はまさに鉄塊の如くであり、振るった特大剣がアイアンゴーレムを叩くと、巨像の脚は跳ね、衝撃は巨像の背中を伝わってジークマイヤーの足までも震わせた。
そんな芸当はコブラにさえも不可能なものであり、賭けにコブラは勝利したのだった。
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/30(木) 01:18:47.56 ID:xz1EoYSY0
ガゴオォーーーン!!
ドガァーーッ!!!
ビアトリス「す、凄まじいな…」
コブラ「ああ、釣ってきた甲斐があったぜ。予想以上だ」
タルカス「フン!!!」ゴオッ!!!
バキィン!!!
レディ「危ない!」サッ
コブラ「!」サッ
ビアトリス「!?」サッ
ドガァン! ゴロンゴロン…
レディ「すごいわ彼、腕を斬り飛ばしたわ…」
コブラ「俺たちの出番は無さそうだなぁ。なんでコイツはあそこに突っ立ってたんだ?」フフッ
ビアトリス「あそこって何処だ?なんだか分からん。話が見えない」
コブラ「コイツは俺たちが今いる広場の近くに建つ塔から釣り上げて来たんだ。風も斧も避けられたら巨像は必ず掴みに来ると俺は踏んで、コイツに向かってワイヤーを飛ばしておいたのさ。そうすると巨像が俺を振り回したらコイツも飛んでくるだろ?」
コブラ「あんなデカイ剣を猛スピードで顔に突っ込まれたら、誰だってタダじゃあすまない。その目論見は見事に的中したわけだ」
コブラ「流石にここまで強いとは思わなかったがね」
タルカス「ウオオオーーッ!!!」バオッ!!
ガッコォーーン!!!
破城槌の如き特大剣を何度も打ち下ろされ、巨像の胴体部の装甲は遂に崩壊し、騎士はアイアンゴーレムの胴体に落下して渦巻くソウルに漬かった。
渦巻くソウルは巨像の動力として機能していたが、高まった力の開放点を求めて、巨像の胴体に開いた大穴に殺到する。
一方、怒れるタルカスは構わずに巨像内部で縦横に大鉄剣を振り回す。その振り回された大鉄剣にソウルが巻き込まれ、まとわり着こうとも、剣を振るう手を止めようとしない。
必然として、タルカスの振るうグレートソードと呼ばれる大鉄剣は、一時的に強大な魔力を帯び、巨像の内部で破壊の嵐を巻き起こした。
巨像自体を斬り裂き、撃ち砕く程の嵐を。
ズガアアァーーーン!!!
コブラ「うおおーっ!?」
広場の中心で生じたソウルと鉄の爆発は、ジークマイヤーとローガンを巻き込まなかったものの、コブラとその近くにいたレディとビアトリスを飲み込み、弾き飛ばす。
コブラは瞬時にワイヤーフックを再び伸ばすと、空中に投げ出されたレディとビアトリスを捕らえ、残った手で足場の淵に掴まり、ぶら下がった。
しかし、引き上げることが出来ない。痛めた脇腹がコブラから力を奪っている。
コブラ「無茶をするヤツだ。花火は空に撃ってくれ。イテテ…」
タルカス「………」ヌオッ
コブラ「よお。あんた亡者じゃないよな?見ての通りだ。釣り上げてくれ」
タルカス「………」ガシッ
手首を掴まれたコブラは、一瞬そのまま握り潰されやしないかと冷や汗をかいた。
三人の人間を、鎧を着たまま片手で引き上げるのだから、それだけの力が込められる事は分かっていた。
コブラ「!?」コキッ
しかしついさっき嵌め直した肩を、もう一度外されかける事は予想していなかった。
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/30(木) 02:36:24.35 ID:xz1EoYSY0
コブラ「ふぇーっ、助けてくれた恩人に文句を言うのもなんだが、次からはもう少し手心を加えてくれると助かるね」
ビアトリス「死ぬかと思ったぞ…」
タルカス「………」
コブラ「お、オイオイさっきまであんなにはしゃいでたろう?返事がないと心細いぜ」
タルカス「はしゃいでいたように見えるのか?」
コブラ「そりゃ見えたさぁ。贔屓にしてるチームが勝った時の俺みたいだったぜ」
タルカス「なんの話か知らん。俺は貴公を利用しただけの事だ」
コブラ「ああそうだ。ならもっと利用すべきだろ?」
タルカス「………」ザッ
コブラ「? おい、何処行くんだ?」
レディ「待ってコブラ。彼、何か…」
騎士はコブラを無視して広場の中央に立ち、その場に屈み込む。
すると、騎士の足元に白金色に輝く小さな輪が数秒現れ、消えた。
騎士は輪の消失を見届けると、立ち上がって空を見上げる。
コブラ「瞑想でもしてるのかい?」
タルカス「俺は神の国に行く。絵画が俺を呼ぶ」
レディ「絵画?」
コブラ「神の国だって?そんなものがこの先にあるのか?」
その問いにも騎士は答えない。ただ空だけを見つめている。
コブラは言い知れぬ不安を騎士に覚えたが、恩人である彼に対して強い態度を取りきれないところもあり、問いただす事に引け目を感じた。
バサーーッ!!
突然、コブラ達の目の前、タルカスの周囲に、翼を生やした色白の怪物が降り立った。
怪物の翼はコウモリの翼膜を持ち、身体は痩せこけてはいるが大柄であり、人型の四肢の末端は紅く染まっている。
手に持つ槍は骨の様な棘を持ち、雷を纏っている。
そして複数匹降り立ったうちの一匹が、目が無く、脳を剥き出しにした顔をコブラに向け、皮膚に覆われていない人間の口から、無臭の息を吐いた。
コブラ「なんだコイツらは…!」
ビアトリス「こっ…彼らはレッサーデーモンだ…神の御使にして、悪魔の子供たち…」
ビアトリス「気をつけろ…彼らを記した文献はほぼ存在しない。何をしてくるか分からないぞ」
全力を尽くした末での、未知の存在との戦いになるが、コブラ達は構えるしか無かった。
ジークマイヤーとローガンは戦えず、ビアトリスは魔法を使えず、レディはビアトリスを守るために戦いに加わることが出来ない。
頼れるのは、負傷し、サイコガンも多くて二度しか打てないコブラだけ。
そのコブラの構える黒騎士の大剣も、翼を持つ三匹の悪魔を相手にどこまで通用するか分からない。
三方向から同時に飛びかかられた場合、全滅は免れないという、絶望的な状況が形成されてしまった。
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/30(木) 02:48:05.37 ID:UDC29sH60
タルカス先生じゃないか!
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/30(木) 06:58:24.43 ID:PaovCwRco
一体何者なんだこのタフガイ……
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/30(木) 08:29:20.37 ID:xz1EoYSY0
>>316
周回がカンストする頃には強くなりすぎてて
主人公が必死こいてボス相手に820ダメージ出してる隣で
同じボス相手に3400ダメージとか平気で出してくるキ○ガイ
プレイヤー操作の闇霊とかにも一撃必[
ピーーー
]るものだから
一時期「タルカス道場」なんてのも生まれて闇霊に嫌われてた
弱点は動きが鈍いこと
あと大抵クソ硬い
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/30(木) 08:32:08.88 ID:b1nCHoD6o
しかしこの世界ハードだなぁ
回復少ないのに敵がいちいち強いからキツイ
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/30(木) 09:49:04.09 ID:xz1EoYSY0
思ったんだけど、ダークソウル知ってる人にしか分からない小ネタを沢山仕込んだしこれからも仕込むけど
これってフロムゲー知らずにコブラだけ知ってる人は楽しめるのだろうか…
書いてて不安になってきた
あとダークソウル知ってる人向けにメタ的な説明として
コブラの冒険における条件設定とコブラの大まかなステータスを書いとく
・コブラのステータス
体力99 滅茶苦茶硬い。不死より不死してるから。
記憶力99 宇宙のありとあらゆる芸術品を網羅し、一度見た美女は絶対に忘れないから。古代人レベルのマリリンモンローさえ覚えてる。
持久力99 体力と同じ理由。あと時速72キロで走っても息を荒げないから。
筋力99 厚さ20センチの特殊合金や最新型サイボーグを素手でぶち抜き「牢屋の鉄格子を曲げられる」から。だから本当は100。
技量70 基本万能だけど、一分野のプロには負けるから。ダクソの技キャラも技量50以降はあんまり見ない印象なので、そこに宇宙的技として+20。
耐久力99 体力と同じ理由。ほっといても怪我が治っていくのでゲーム的都合で書くとフルアンバサの超耐久タイプ
理力50 宇宙の科学知識について造形が深く、色んな神秘も見てるから基本高い。でも魔法はてんでダメなので99にはならない。
信仰30 信じてはいないけど神を文字通り見たことあるし知っているので30。神の業レベルの奇跡は使えない。
啓蒙40 ダクソのパラメーターじゃないけど、宇宙的超技術をいくつも知っているし、それはダクソ世界に無いものだから。
・条件
難易度はカンストなので敵も味方も強さMAX
侵入あり
基本的にノーデス
初見プレイ
体力自動回復
不死と違って腹が減るので空腹による体力自動減衰あり
寝不足による装備重量低下などの状態異常あり
不衛生による毒を始めとした状態異常あり(耐性は超高い)
周回カンストの場合、タルカスの筋力は多分180とか超えてるからこの冒険だとコブラより強い
コブラの攻撃力は99の範疇に一応は収まるレベルにしたいから(例外も作るけど)一撃でボスに3400ダメージとかは与えない
サイコガンについては戦艦とか吹っ飛ばしたり小惑星を砕いたり出来るから、最悪、最大攻撃力が一億とかになるかもしれない
全盛期グウィンの雷でさえ古竜の角を一本吹き飛ばす程度なのに寺沢武一さんはほんま恐ろしい人やで
あとこういうの見ると話に集中出来なくなる人もいるかもしれないから、万が一まとめに載る場合、このレスと
>>317
は本文中からは消してちょ
見てしまった人は一足遅いTRPGスレの設定羅列レスとでも思って見れば精神衛生上うんたらかんたらです
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/30(木) 10:35:01.25 ID:aTliSjS/O
>>319
設定とか見るのも好きだから自分は良いと思う
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/30(木) 11:24:12.91 ID:Hz5dSY9wO
怪我が勝手に治る
太陽の王女の指輪を常に装備してるような物か
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/30(木) 11:47:25.34 ID:b1nCHoD6o
世界観とかノリで読んでるからむしろ解説あるなら嬉しい
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/30(木) 11:53:41.96 ID:6nPpWuTT0
ダクソはやってないが楽しく読んでる
情景描写が的確だから何となく掴めてる気になれるw
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/30(木) 15:04:24.40 ID:UDC29sH60
ゲームじゃ喋らないNPCが会話してるの見ると新鮮でいいな
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/13(水) 04:31:53.81 ID:47z60U5T0
コブラ「へへっ、神に雇われる悪魔ね。検察官からの引き渡しじゃあ満足出来なかったか!」
コブラ「来るなら来てみろっ!サタンの元へ送ってやるぜ!」
超常の者を相手にしているとは思えない口を叩き、コブラは戦闘態勢を保ってはいるが、それらの威嚇は己が戦える状態に無い事を相手に伝える行為であり、現に今のコブラに戦闘能力などは無かった。
ロードランの時は歪んでおり、街路の昼はいつまでも続き、森の夜もいつまでも続く。その影響を睡眠を必要としない不死たちは受けないが、コブラはそうではない。
コブラの腕時計は、この地に来た際に彼自身の手によって一度リセットされているが、その時計のカウンターが既に3日目を数えている。
ろくに休めず、おまけに栄養を失調しかけている肉体は、長旅でいくつも生傷を背負いつつも今までは持ちこたえていた。
その崩れかけた均衡を巨像の一撃が崩してしまった。
それ程までに、コブラの体内にある折れた肋骨は、決定的なダメージをコブラに刻みつけていた。
コブラ(とは言ったものの、やれやれ言うんじゃなかったぜ)
コブラ(剣を持ち上げてるだけで精一杯だ。今にも女の子みたいに気絶しちまいそうだ…)
そんなコブラの肉体の主張を、当然デーモン達も察知している。
火の時代の始まりから都に仕える者達。彼らは多くを両眼無き顔で見てきたのだから。
スッ…
一匹のデーモンが槍で空を突くと…
ブオッ!
残りのデーモン達はタルカスを抱えてはばたき、彼らは天高く聳える壁の如き山々を超えて、頂きを照らす陽光に消えていった。
それらを見送ると、残った一匹は槍を下ろし、その刃先をタルカスがいた岩の床に向ける。
そして飛び立ち、彼らと同じく、山を超えて姿を消した。
レディ「これは…」
コブラ「フゥー……まぁた意味深な事をしてくれるぜ。果たしてコイツは罠か、招待か」
ビアトリス「神に仕えるとてやはりデーモン。殺してソウルを奪うだけかもしれない。神の都にすんなり招くなど…」
コブラ「ありえない、か」
下ろした大剣の柄頭に顎を乗せ、コブラは考え込んだが、心の内に既に答えはあった。
芸術を知ることは文化を知る事であり、文化を知ることは宗教を知る事に繋がる。
神話そのものの世界において確信を持つほどの材料など持てるべくも無いが、宇宙において数千もの崇拝対象を知るコブラにとって、神と呼ばれる者達の趣味趣向に尊大な共通項を見出す事など容易だった。
人の眼前に恵みと試練があるならば、大いなる者は、人に対して同時にそれらを課してくる。その権利を持つからだ。
ジークマイヤー「おーい!ビッグハット老が目を覚ましたぞ!」
コブラが答えを口にする前に、ローガンを連れたジークマイヤーがコブラ達に合流した。
ローガンからエストを分け与えられたのか、カタリナ騎士の足取りは軽かった。
コブラ「遅いぜ爺さん。良い夢でも見てたか?」
ローガン「いやはや面目無い…高き啓蒙に触れると、どうにも思考の海原に沈んでしまいおるのでな」
ビアトリス「で、では既に智慧を纏められたと…?」
ローガン「それは違う。あの思索を完成させるには足りない物が多過ぎるゆえ、今は考えないだけだ。私が話すのはここで起きたデーモンの飛翔についてだ」
コブラ「………」
ローガン「これは罠であり招きでもある。試練はこの砦のみで終わるわけでは無い」
ローガン「そして恐らく、これらが真の試練という訳でも無い。不死が何かを成すのではなく、神々が不死らに何かを成させたいのだ」
ローガン「しかし、そうなると疑念が燻る」
ローガン「かの者達が何故、星界からの使者たるコブラに、不死の試練を課したのかという燻りだ」
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/13(水) 08:09:41.54 ID:MUOo8DYbo
試練もいいけど飯と睡眠をとらせてやらんとコブラ死んでまうで神様
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/12/21(木) 04:58:58.65 ID:tUUFIg8R0
コブラ「そいつは俺も知りたい。分かっているのは、薪の王と名乗る何者かが俺をここに送り込んだ事だけだ。蜘蛛の魔女に聞いても謎が増えるばかりだった」
ローガン「!?. 薪の王が名乗り、混沌の魔女が口を利いたと!?貴公、超常なる者共と話せるというのかっ!?」
コブラ「動物に好かれるタチでね」
ローガン「?…??…よ、よくは分からんな」
コブラ「忘れてくれ。で、なにかピンときたか?閃きってヤツ」
ローガン「閃き……ううむ…薪の王は最初の火だが、偉大な力と言えど話はせんだろうし…混沌…いや蜘蛛の魔女はなんと?」
コブラ「んー、彼女が言うには俺は不思議ちゃんらしい。人間性にそっくりな精霊を、太陽王が閉じた門の上に住まわせてるそうだ」
ローガン「太陽王…光の君主か…」
コブラ「どうだい?さっぱりだろ?」
ローガン「………」
ジークマイヤー「うむむむ…」
ビアトリス「貴公が頭を捻ってどうする」
ローガン「……分か…分かるかもしれんが…」
コブラ「おお!」
ローガン「いや、やはり駄目だ。靄がかかる。考えが回らん」
コブラ「あら…」
ローガン「うむ…貴公と出会った時の蒙がどこかへ行ってしまったようだ。惜しい…なんとも…」
コブラ「そうかい。そいつは困った。そうなるといよいよ神様とやらに直接会ってご教授願うしかないか?」
レディ「そうなるとしたらまた賭け事ね。天国かそれとも悪魔のお腹の中か」
コブラは背伸びをすると、誰に断ることも無く、悪魔の飛び立った地点にしゃがみ込み、石畳に触れた。
ビアトリスとジークマイヤーは不意な事に声を漏らしたが、制止する暇もなかった。
石畳が輝く輪をほんのひと時浮かばせると…
ザザッ!
即座に9匹の悪魔が舞い降り、コブラとレディ、不死達を持ち上げ始めた。
ビアトリス「わっ…わっ…!」グググ…
ジークマイヤー「本当に大丈夫であろうな!?」バサバサ
コブラ「なぁに、喰われた時は化けて出てやればいいさ」バサバサ
バササーッ!
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/21(木) 06:45:02.92 ID:SGpm7dUhO
あんたは喰われても化けるまでもなく腹の中から出てきそうな男やんww
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/12/21(木) 14:27:52.50 ID:tUUFIg8R0
コブラ一行を抱え、悪魔達は飛翔した。
ジークマイヤーは多少身を硬くしているが、ビアトリスは腹を据えたといった感じで大人しく吊り下げられ、ローガンは当事者の一人ながらも、事を静観している。
何が起きるかはコブラにさえも分からない。鉄塊の騎士の言葉が出鱈目なら、ここで旅は終わりを迎える。
たとえ生き延びたとしても、やはり出鱈目ならばコブラはロードランから出られず、不死達も新たに道を探さなければならないだろう。
ビュオオオオオオオ…
悪魔達は山肌に近づき、山々を超えんとして一層に高度を高める。
一行の目の前を岩壁が高速で落下していき、上方からは輝きが漏れ始めた。
コブラのこめかみに力が入る。
ゴオッ!
悪魔達は更に昇り、進路を塞ぐ山脈を風を切って飛び越す。
そして、彼らを栄華の輝きが包んだ。
ジークマイヤー「おおお…!」
ビアトリス「これはまさか…本当にあっただなんて…」
ローガン「おお、真の叡智がここに…」
レディ「彼の言葉は正しかったみたいね、コブラ!」
明るくも緊張に溢れた、心を騒つかせる空が一変。
金色の陽光が雲間を割り、海を照らすが如く降り注ぐ、天界と言って障りのない偉大な輝きが現れた。
そのあまりの美しさに、文字通り星の数ほどの美を味わったコブラすらも圧倒された。
コブラ「こいつはたまげた……」
ローガン「貴公でも驚くか…やはりそうであろうな…」
ローガン「ここは人の身で踏み入るには余りに畏れ多い地。伝承の地であり、お伽の国そのもの」
ローガン「神々の御国」
ローガン「アノール・ロンドだ」
330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/21(木) 14:34:47.96 ID:x0x2VmLzO
ついに……
331 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/16(火) 21:32:42.14 ID:CBwj3UzY0
遥かな昔、人が言葉すら持たなかった時、古のものたちは偉大なソウルを用いて竜を弑し、光を持ち、いくつもの都を築いた。
火から光を得る、ぬくもり溜まりの地底の都。
人を導き、そして縛る、二つの人の都。
神の死を祀り、人の死に祈り、光の眠りを慰める大墓の都。
光により生まれたソウルを、人や神々に分け与えた、深緑と黄金の都。
それらの都が築かれる前、一つの国が建てられた。
それは他の全ての都の原初となり、巨人も、魔女も、悪魔も、蛇も、人も、それに従い、また敬った。
偉大なる火の顕現となる太陽を持ち、世界の昼と夜を司る、神秘と眷属に護られし輝ける神の国。
アノール・ロンドと呼ばれるその国には、荘厳な教会とも山とも形容できる建造物が燦然と建ち並び、しかもそれらは途方も無く大きかった。
建物の様式はコブラに地球古代美術史、とりわけ建築史のゴシック・リヴァイヴァル様式を想起させる。
しかしコブラの瞳に見える建築物はどれもそれとは似て非なり、なにより美しく映った。
そして特にコブラの目を引いたのは、眼に見える限りの都の中心にそびえる、コブラをして神の家と語るに相応しいとさえ思える城。
巨大な城は陽光を背負い。輝く都にあってただ一つ、薄暗がりを一杯に纏い、金と黒の塊として光の中に浮かぶ。
威厳に満ちたその城は、旅の一向に、天啓にも似た確信を与えた。
今までの旅路は神の与えた試練であり、ここで与えられるのは、神の恵みであると。
だが、コブラは知っていた。
神の恵みが与えられる時、本当の試練が始まると。
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/16(火) 22:43:51.76 ID:OU6hcBano
あれだけ試練与えておいてまだ足りないとか神様は相当意地悪なんだな……
333 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/19(金) 03:54:45.17 ID:MTllhXRC0
「!」
神々の国、その偉大なる神殿の守護神は、微かに、しかしありありと異質と分かるものを感知し、頭を上げた。
多くの神秘と栄光、そして悲劇を神々と共に歩んできた、大聖堂とも言うべき大広間には、白い象牙とも大理石ともつかぬ柱の森が間隔を空けて広がる。
それらは壁一面に並ぶ装飾窓からの光を受け、白く輝き、彼の黄金の鎧を照らし、まどろみを見せていた。
大広間の中央で手に持つ得物を石床に突き立て、意識を閉ざし、彼は時の到来を待っていた。
そして時は満ち、まどろみは晴れたのである。
神殿の守護神は、今の己が支える主神を思う。
太陽の王と、暗月の姫君に思いを馳せ、それにより行える業を行使して、己の実体を主の元へ帰す。
そして王の間へと続く、神聖かつ不可侵な廊下の始まりへと姿を現し、遠くに揺らめく主君へ向け跪き、報を伝えた。
「不死が来てございます」
報を受けた主は数瞬の沈黙のあと、守護者へ静かに語りかけた。
その言葉はささやきだったが、守護者の眼の前に声はあるようだった。
「承知している」
「しかし、異なる者も…」
「語るに及ばぬ。我にも視えている」
「成すべきことを成すがよい……だが心せよ。あの者達の一人は、人であり人ではない」
「………」
「竜狩りの騎士よ」
「汝に我が王の加護と、火の導きを」
竜狩りと呼ばれた守護者は立ち上がり、主の元から消え、再び大広間の中央に立った。
それを待っていたかのように、白く輝く柱の陰から、顔は愚か光さえ映さぬ黒い外套を纏った者が現れ、竜狩りに語りかけた。
黒い外套の者「竜狩りオーンスタインともあろう者が、たかが不死の数人を斬るのに何を焦っているのだ」
オーンスタイン「焦りは無い。不死のみに我が主の試練は荷が勝ち過ぎただけの事」
オーンスタイン「今はその方も法官の一人であろう。臣民の去りし都にあって、我が使命に口を出す意味も無いはず」
オーンスタイン「違を唱えるというのなら、この地を去るか、憐れな『抱かれ』をあの者達へと差し向けるがいい」
黒い影は竜狩りの言葉に身を震わせ、声を殺して笑った。
声には嘲りが含まれていることなど竜狩りは百も承知であったが、かつての王の下した取り決めがいかなるものであるかを知る彼に、黒い影を討つことなど出来はしなかった。
そう、ずっと遥か以前から…
黒い外套の者「クックックッ…貴様の口からこれほど大雑把なセリフが飛び出すとはな。ではそうさせてもらおう」
黒い外套の者「ただし、抱かれの騎士一人では少々心もとない」
黒い外套の者「そうだな……では『仮面』を呼ぶとしよう」
影は再び柱の白さに霞み、消えた。
竜狩りの騎士は高く飛び、大広間を見渡せる回廊状の二階に降り立つ。
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/19(金) 16:44:53.95 ID:MTllhXRC0
「………」
二階には、人を十人纏めて叩き潰せるほどに巨大な鎚を背負い、石床にあぐらを掻く巨体があった。
竜狩りのそれと同様に黄金色の鎧を身に纏っているが、その者は脚も胴も腕も太く、兜はそれらと比べ小さく、人型としては歪だった。
瞳は鎧に隠れており、外から表情を伺うことは出来ない。だが竜狩りには確かに、その者の心の震えが届いていた。
オーンスタイン「処刑者スモウよ。暗月の姫君は良しとは言わぬ」
処刑者スモウ「………」
オーンスタイン「それに、お前に討てる相手ではない。何故王がお前を終に騎士へと加えなかったかを考えよ」
オーンスタイン「技や戦果が足らぬからでも、愚鈍であるからでもない」
オーンスタイン「お前も知る通りだ」
スモウ「………」
処刑者と呼ばれた巨躯の神は、掻いたあぐらに置く掌を拳へと変え、今にも迸らんとする衝動を堪えている。
スモウは愚鈍で誠実であった。王から賜った使命を頑なに守り、血肉に飢えた殺戮者の誹りを受けてもなお、彼らに彼らの望むままを決して行わぬほどに。
竜狩りオーンスタインは、装飾窓の外にいる、今ここに向かって来つつある者達を思う。
幾人かの不死が手を組んでいる事が分かるが、そこに混じる正体の掴めぬ輝きに、竜狩りの意識は向けられている。
己の支える主にならば、あるいは輝きの中にあるものを覗き見ることが出来るかもしれない。
だが、それは不死達が法官の毒牙を掻い潜り、試練としての竜狩りと処刑者を斃し、主の姉君に謁見すればの話である。
何があろうと、主の眼を通して己が見定める事は出来ない。それは畏れ多いことでもある。
竜狩りはそう結論づけ、そして新たに決意する。
オーンスタイン(ならば闘いで計るまで)
装飾窓から差し込む陽光に照らされ、竜狩りの纏う金獅子の鎧は、刺すような輝きを放っている。
それは、己の身命を賭して、使命を得るに相応しいかを見極めんとする、捨て身の闘志のようだった。
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/19(金) 17:20:13.31 ID:cjSRYJPfO
輪の都の法官かな?
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/20(土) 01:11:29.51 ID:hP0R+szl0
ドテーッ!
コブラ「イデッ!いててて……どうやらロードランにはファーストクラスは無いらしい…」
レディ「私は優しく降ろしてもらえたわよ?」
ジークマイヤー「たんに着地に失敗しただけな気もするが…」
一行を高台に送り届けたレッサーデーモン達は、一匹を残して皆いずこかへ飛び去り、姿を消した。
残ったデーモンは翼を畳み、高台の縁に止まり、陽光を眺めている。
コブラ「ここはヘリポートにしちゃ小さいぜ。今度はもう少し上等なサービスを期待したいね」
ローガン「神の国に来て最初の感想がそれとは、驚かし甲斐のない男だなキミは。ハハハッ」
コブラ「映画の感想を胸にしまっとくタイプなのさ。さてと、まずは休める所を探さないとな」
ローガン「なに?休む?」
コブラ「なんだい文句あるのか?俺はここのところ働き詰めで、少しは寝ないと本当に死んじまうってところまで来てるんだ。誰がなんと言おうと俺は休むぜ」
ローガン「ふむ…まぁ、仕方がない。それもいいだろう」
ビアトリス「先生、探索には私が付き添います。私も神々の智慧に触れたいのです」
ビアトリス「後悔はさせません。私は仮初めの黒衣達とは違います」
ローガン「そうだといいがな。では行こうか」
コブラ「今別れるのか?しばらくは一本道だしここは一緒に行こうじゃないの」
一行の降りた高台からは、長い下り階段が山沿いに続いている。
整形石で組まれたそれには、滑らかな手すりまで備え付けられており、都を一望しながら降りられる造りになっている。
コブラ達は階段を降り、その間に束の間の安息を楽しんだ。
だが、それもほんの一分と続かず、目の前に早くも脅威と思しき鎧姿が現れた。
コブラ「冗談じゃないぜまったく…また鉄の巨人か」
コブラ「まさかこの先ずっとコイツが出てくるんじゃないだろうな…」
巨人近衛兵「………」
疲弊したコブラの前方十数メートル先に、古い黄銅の重鎧に身を固めた巨人が立っている。
左手には城門の如き大盾を構え、右手に備わった金色のハルバードは柱のようであり、猛々しい矛先を空へと掲げている。
だが何よりコブラをうんざりさせたのは、積層する鎧のせいで巨人の素顔は愚か、素肌の一片も見えない点である。
この巨体が、試作機より安価かつ高性能で、弱点を克服した新兵器ではないという保証はどこにもない。
もしもアイアンゴーレムの上位種であったならば、この都にいる敵とは一度も戦わない。
コブラは内心そう誓った。
ジークマイヤー「どうするか……あの盾の厚さじゃ我が剣も樫の枝だろうし…」
ビアトリス「ソウルの太矢で頭を狙えれば…」
ローガン「あの盾を掻い潜れるとは思えん。ソウルの槍で貫くという手も無くはないが、あれは手数に限りがある。秘奥を真っ先に使っては早晩全滅するだろう」
レディ「逃げればいいんじゃない?」
ローガン「………」
ジークマイヤー「それは……駆け抜ける、という意味か?」
レディ「そうよ。私がジークを抱えて、コブラがビアトリスとローガンさんを抱えて走ればいいのよ」
ビアトリス「………」
ジークマイヤー「……うーむ…」
コブラ「いーや、それは良い所突いてると思うぜ」
ビアトリス「えっ?」
コブラ「考えてもみろ。あのバケツ頭の騎士が俺達より先にここに来ているはずだ。なのにどうしてこの巨人も、騎士も死んでない?どちらかの、あるいは両方の死体がここに残ってても良いはずだ」
コブラ「恐らく逃げ切ったんだろうが、だからってあの騎士が走り抜けたとも思えない。あの装備で走り回れるのなら、そもそも何年も前にここにたどり着いてる。俺達が鉄の巨人に大立ち回りを演じる事も無かったはずだ」
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 01:52:55.73 ID:it8l/J6iO
ファーストクラスには座れなかったが立派なお出迎えは寄越してくれたようだな
実際俺がプレイしててこんなお出迎えが来たら涙流すだろうね絶望のだけど
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 12:46:10.58 ID:JNy2CssdO
カンストだと地獄だろうな
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 12:53:02.34 ID:Wv/ugOpZo
これで全体の何割?
まだ半分くらいなら流石のコブラも死にそう
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 13:51:35.12 ID:dW0RjqXuO
ボスの数的には半分ぐらいとかググったら出てきた
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 16:39:57.52 ID:mwJ8F2ADO
本当に半分とか不死身のコブラもさすがに年貢の納め時かな?
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 16:50:07.13 ID:Za4gb6oV0
神様なら不思議な力で飢えと疲労くらいはなんとかしてくれるでしょ
たどり着ければ
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 17:14:45.50 ID:PSXGVSaKO
絶対に攻略しなきゃいかんルートがアノロン後にあと4ルート、ボスの数は6だか7、その後ラスボスだっけか
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 17:16:58.28 ID:d8bFWiB3o
3要素あるなら輪の都もあるし…
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 17:38:06.67 ID:kbQhktpsO
でもコブラは神を罪を作り出したつまらん男って言ってるしなぁ……
そんなコブラがおいそれと了承するかね?
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/20(土) 18:47:49.43 ID:hP0R+szl0
ジークマイヤー「回りくどいなぁ。つまりは何が言いたいのだ?」
コブラ「ここを抜けるのに速さはいらないって事さ。どーれ、ひとつ試してみるか」
スッ
ジークマイヤー「!?」
突然、コブラは歩き始めた。恐る恐る、震えを起こさずに、足音を消して。
警備装置を掻い潜って宝石を手に入れる時と同じ要領、同じ緊張感を持ちつつ、心をなだめて。
ビアトリス(また無茶を…!)サッ
無策な仲間を助けるため、ビアトリスは杖を構える。
巨人が少しでも動けば、その頭部に魔法を叩きつける腹積もりだ。
しかしそれも効果のほどは未知数であり、彼我の戦力差なども無視した警戒だった。
コブラ「………」スッ…
一歩二歩と、コブラは巨人と一定の距離を保ちつつ、巨人の目の前を素通りするべく歩く。
巨人の顔も、巨人の全体像もコブラは見ていない。ただ自分の足元を見て、早く寝たいと考えるだけ。
失敗したら仲間が死ぬなんて事も考えない。今や足元だけがコブラの世界だった。
コブラ「………」スッ… スッ…
巨人の騎士が立つすぐ横には、都の奥に見える巨影程ではないにしろ、巨大な聖堂がそびえている。
巨人はその聖堂の衛士であり、コブラはその衛士の前で不法な侵入をしようとしていた。
スッ…
コブラの足先が、聖堂内部を覆う影を踏む。
巨人近衛兵「………」
衛士は動かない。
コブラ(何故だ…何故動かない…)
コブラ(コイツも何かの罠か?それとも只のハリボテだったりするのか?)
コブラ(俺の世界だと、ここらで巨人の頭がパックリ割れて、セントリーガンが顔を出してるだろうな)スッ…
コブラは疑いつつも、歩みを止めない。
影に入った片足は両足になり、コブラの金髪も陽光から身を潜め、コブラの足音は巨人から遠ざかった。
大聖堂の中は静寂と薄闇に包まれ、そよ風すらも入ってこない。
巨人の衛士はやはり、動かなかった。
コブラ(やれやれ…今までで一番ヒヤッときたぜ)サッサッ
ビアトリス「………」
ジークマイヤー「………」
暗がりからのコブラの手招きには、不死達は誰も応えようとしない。
何故巨人がコブラを見逃しているのか皆目分からないからだ。
レディ「………」スッスッスッ…
唯一、コブラについて多角的に要領を得ているレディだけが、コブラの招きに即座に反応した。
彼女の忍び足は軽やかで、夜道を歩く猫のようだった。
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 18:56:08.64 ID:i6RhoWS+o
目が見えないとかかね
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 20:29:24.14 ID:mwJ8F2ADO
つまりジークマイヤーさんの冒険はここで終わってしまうのか……全身鎧じゃ忍び足とか無理だろう
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/20(土) 22:21:21.36 ID:sBH2/8Em0
バケツ頭がここ抜けてる以上音は関係なく闇雲に攻撃する無分別で克己心がないやつを振り落とす試練かもね
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/21(日) 03:16:14.18 ID:8rCo7bsG0
ローガン「………」ササッ…
レディが無事に聖堂に入るのを確認すると、ローガンは躊躇なく巨人の前を通った。
原理や法則を掴んだら迷わず事を行う。それが蒙を開き、後陣を導くと信じているからこその行動だった。
ローガンが確信を持った原理は『近づかないこと』『敵意を見せないこと』『攻撃しないこと』
確信に至らずもその候補に上ったものは『音を立てないこと』『走らないこと』
万全を期すなら、全てを行うのが望ましい。
ビアトリス「………」スッ…スッ…
そして、ローガンの信念は正しかった。
師が示した道を、疑う理由の証明なく無下にする事は出来ない。
真面目に過ぎる弟子には、尚のこと。
ビアトリス「………」スッ
不満を抱きつつも、ビアトリスは師の無言の言いつけを守り、聖堂に入った。
そして、一見して無闇な行動をとったコブラを小突いて、残った一人に心配そうな視線を送る。
ジークマイヤー「………」
ジークマイヤーは、実のところローガンの無言の忠告に全く気付いていなかった。
状況を打開するために知力を絞るという、冒険者にとっては利点と言える癖をジークマイヤーは持っている。
だが、思索をするには兜の覗き口はあまりに細く、ジークマイヤーの視野はあまりに狭すぎた。
ジリッ…
重鎧から音が漏れないよう、ジークマイヤーは極めて遅く、すり足を床に這わせ始めた。
一歩進むのに三十秒は要する、ナメクジのようなその歩法は、それを見る者にさえ緊張を伝える。
そんな細心の注意を払っても、彼の鎧は震えて擦れ、カタカタと小さく鳴り続ける。
そして遂に辛抱耐えかね、ジークマイヤーは声を殺して言葉を発した。
ジークマイヤー「走ってよいかな?」ヒソヒソ…
ビアトリス「!?」
ローガン(それもありかもしれん)
ジークマイヤー「いいかな?」ヒソヒソ…
コブラ「いや、そりゃマズい」ヒソヒソ…
ジークマイヤー「いいだろ?」ヒソヒソ…
コブラ「ダメだ」ヒソヒソ…
ジークマイヤー「じゃあ飛ぶから受け止めてくれ…隠密など無理だ…」ヒソヒソ…
コブラ「待て早まるな!そのままゆっくり来ればいいんだ!」ヒソヒソ!
ジークマイヤー「昔からこういう事が上手くいった試しがないんだ…」ヒソヒソ…
コブラ「よしてくれ恐れを知らないカタリナ騎士だろ!?」ヒソヒソ!
ビアトリス「おいコブラ、アレ…」ヒソヒソ…
小声で怒鳴るコブラの肩を叩いて、ビアトリスは聖堂の奥を指差した。
聖堂に入っている者たちは、その指が示す方向、聖堂奥の壁と、そこに刻まれた装飾を見る。
コブラ「おっと…」
聖堂の壁にあったのは装飾では無く、人の形をした巨像だった。
影のせいか色は薄いが、鎧と斧槍は鈍く光り、盾は大きく、僅かに上下に揺れていた。
恐るべきことに、巨人の影は二つ並んで、同じく一行を見下ろしていた。
その表情の見えない、虚ろな兜の覗き穴から。
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/21(日) 03:54:37.29 ID:RaUmP5ruO
ジークマイヤーさんェ……いや気持ちは分かりますが
その装備で隠密とか魚に空を飛べというのと大差ないし
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/21(日) 13:16:48.10 ID:3CZwPpig0
そこの鉄だるまもうちょっとだから辛抱せいw
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/20(火) 23:35:12.24 ID:qy6RiIel0
危なし
保守
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/21(水) 08:05:20.65 ID:jnk90/vYO
>>1
が書き込まないといけないから保守はあまり効果が無いよ
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 05:05:10.11 ID:xvV0Mgy20
>>304
訂正です。
「なっ、おい、離せ!足手まといはごめんだぞ!」
というセリフはジークマイヤーのものでした。
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/03/03(土) 06:57:11.01 ID:wW6mgGE20
カイーン!
一行「!」
ジークマイヤー「!?」
緊張した静寂を、金属の鋭い衝突音が割った。ジークマイヤーは咄嗟に音の出所を正面に捉え、盾を構える。
しかし、そこにあるのは建造物の白く美しい石壁だけ。敵も罠も無い。
そして、ジークマイヤーは己の握るツヴァイヘンダーが僅かに振動している事に気付いた。
大業物を担ぎ、余った左手に円盾を持ち、全身をすっぽりと覆うふてぶてしい重鎧を着て壁際を歩けば、一度や二度は壁を叩きもするだろう。
忍びではない、正面戦闘を是とする誇りある騎士に、密やかさなど無用であり、また不可能だったのだ。
ジークマイヤー「………」
言葉には出さないが、ジークマイヤーは仔ウサギのように臆病と見えるであろう己の姿を幻視し、また違った意味で駆け出したい思いを強めた。
そして、その思いは正しく、今しなければならない事と合致した。踵が巨人の影を踏んでいたのである。
コブラ「走れジーク!巨人が気づいたぞーっ!」
ジークマイヤー「え?」クルッ
ガギーーッ!!!
巨人へ振り返ったジークマイヤーの盾に、黄銅色に輝く甚だ巨大なハルバードが撃ち込まれた。
ドガッ!! グシャーッ!!!
ジークマイヤーは蹴り飛ばされた小石のように空中を突っ切り、聖堂の天井にぶち当たると跳ね返って、床に墜落した。
床に激突してからコブラとレディに担ぎ上げられるまで、数秒の時間があったが、その間ジークマイヤーはピクリとも動かず、蓋を開けて転がした水筒のように血を流すばかりだった。
レディはジークマイヤーの懐を弄り、エスト瓶を探り当てたが、中身は空だった。
コブラ「クソッ!俺たちはジークを連れていく!ビアトリスとじーさんは巨人を足止めしながらついて来い!いいな!」
ビアトリス「やるしかないようだね…」
レディ「しっかりしてジーク!ここにも篝火があるはずだから、それまで頑張るのよ!」
ジークマイヤー「………」ドボドボ…
コブラ「行くぞっ!」ダッ!
ズーン!!
逃亡を始めた侵入者を殲滅すべく、巨人の衛士達は一斉に動き出した。
聖堂の中に居た二体の巨人は盾を構えて歩みを進めるが、ジークマイヤーを斬りつけた一体はコブラ目掛けて駆け出していた。
目標はコブラではない。血だるまになったカタリナの騎士だ。
ビアトリス「私は走る巨人を討ちます!先生は向こうの二体を!」
ローガン「よろしい。任された」
ビアトリスは浮遊するソウルの小球を展開すると、杖にソウルを込める。
ローガンは大きすぎる帽子の長つばを上げると、二体の巨人を見据える。
ビュオーーッ!!
カタリナ騎士を斬るべく、走る巨人が振り下ろしたハルバードの大刃は…
ズドーーン!!
ジークに貸していた肩を外し、背負った特大剣を振り上げたコブラに受け止められた。
コブラ「ぐふっ!」
特大剣ごと床に叩き伏せられたコブラの脳裏に、ついさっき乗り越えたはずの障壁が浮かぶ。
鉄の巨像が蘇り、再びコブラに立ち塞がった。
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/03(土) 12:44:46.99 ID:xrJIDYkdO
やはり無理だったか……仕方ないね
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/03/06(火) 13:20:52.13 ID:tpiYufG/0
巨人はコブラを叩き伏せ、二の太刀をジークマイヤーに浴びせんとハルバードを振り上げる。
バシバシーッ!
その掌に五つの光球が着弾し…
ボォン!
次いでソウルの太矢が突き刺さる。
ハルバードは巨人の手から離れ、小城の城門が倒れるが如き轟音を鳴らした。
追撃する巨人の攻撃対象は、ジークマイヤーからビアトリスに切り替わる。
ここからが正念場と、ビアトリスは杖に魔力を込めて再び小球を生み出す。
バキッ
ビアトリス「あっ?」
その魔力が強すぎたためか。
それとも、古城に囚われた際に異形の像に叩き折られた杖の修復が甘かったためか。
杖は再び折れ、魔力が散ってしまった。
一方、二体の巨人の始末を任されたローガンは、まるで庭園を歩くような無防備さで、巨人たちに近づいていった。
二体の巨人も歩調を合わせてローガンに接近していくが、ローガンの歩みは崩れない。
そのローガンの進行方向は、ほんの少しだが巨人達から見て右に寄れている。
ドン!
右側の巨人は、己の得物の距離にローガンが踏み込んだ瞬間、歩みに力を込めた。
そして大股に構え、ハルバードを天井に突き刺さんばかりに掲げた。
ローガン「やはり、距離によるか」ヒュイイイ…
シュゴーッ!!
掲げられたハルバードが振られる事は無かった。
ビッグハットの名を人の世に広めたものは、大きい帽子と叡知と偏屈だけではない。
大岩を穿ち、神の一撃との比較を許されるほどに強力な恐るべき魔術にこそ、その名の真髄がある。
ローガンにソウルの槍と名付けられた青い閃光は、巨人の胴体に大穴を開け、聖堂の壁を甚だ傷つけた。
ドガーン!!!
風穴を開けられた巨人は仰向けに倒れ、全身から白いソウルを吹き出し、靄を残して消えた。
ブワッ!
その靄を割って、もう一体の巨人がローガンに突進する。
前面に大盾を構え、面攻撃によって侵入者を叩き潰すことが突撃の目的だった。
しかし、巨体であることは弱みにもなりうる。例えば、大盾の隙間から覗く足の甲などだ。
ローガン「………」スッ…
やや気だるげにローガンは伏せると、匍匐の姿勢で杖から魔力を放つ。
ドバーッ!!
駆け出した脚の先を破壊された巨人はつんのめり、ローガンの頭上を飛び越え…
ガゴーーン!!!
聖堂の石壁に頭から突っ込み、神聖なものだったであろう彫刻を粉砕し、動きを止めた。
伏せたことによってついた埃を払いつつ、ローガンは片手間にソウルの太矢を巨人の尻目掛け撃ち出して、二体目の始末を終える。
なぜ尻を撃ったのかはローガン自身も深くは考えていなかったが、撃ったことによって悪戯心が満たされたことは確かだった。
ビアトリス「せ、先生申し訳ありません!杖が!」ハァハァ…
二体目の巨人が消える頃、ビアトリスは斬撃の雨に晒されていた。
回避に専念しているため無傷ではあるものの、体力的に致命打を貰うのも時間の問題であるようだった。
ローガン「修理の光粉を切らすとは、迂闊よなぁ。ははは」
ビアトリス「笑ってないで助けてください!ひぃ!」ブオーン!!
ローガン「分かった分かった」ヒュイイイ…
シュゴーーッ!!
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/06(火) 15:23:55.88 ID:i+kscLGnO
杖が折れたとあった時にはビアトリス死んだかと思ったわ……
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/06(火) 17:49:29.66 ID:/jDO/q8DO
巨人にソウルの座薬が……
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/03/08(木) 08:33:06.74 ID:c3T6gxPX0
二人の魔法使いが巨人達を打ち倒した、ちょうどその時…
負傷者を抱えたコブラとレディは聖堂を抜けた先にある大バルコニーを走り、バルコニーの壁に開いた横穴に入った。
横穴からは下り階段が伸び、その先には小さな石造りの個室があり、個室は暖かな光に照らされていた。
レディ「見てコブラ!篝火よ!」
コブラ「ヒェー助かったーっ!間一髪ってところだな」
コブラは篝火の近くにジークマイヤーを座らせると、個室の壁際に座り込み、ズボンのポケットを探る。
しかし、目当てのものは手に触れなかった。
コブラ「あー、またやっちまった。ハマキはタートル号の中だぜ」
レディ「フフッ、もう立派な葉巻依存症ね」
コブラ「あんな調べもの、すぐに終わるはずだったんだ。こうなると知っていたらリュックいっぱいに詰めてたさ」
コブラが愚痴をこぼす中、ジークマイヤーの鎧からは流血による汚れが消えて、歪みも修復されていった。
まるで時間が巻き戻っているかのような現象だったが、コブラもレディも大して驚きはしなかった。
疲労困憊のコブラには驚く程の体力は無く、それを分かっているレディはコブラを体力回復に努めさせるため、疑問を口にはしないようにしている。
あぐらを崩し、コブラは大の字に寝転がり、天井に向かって呟く。
コブラ「はぁ…腹減ったなぁ…」
コブラ「こんな事なら森で山菜採りでもしてりゃよかったぜ…」
レディ「コブラ!起きて!」
コブラ「んー?」
チャキッ
コブラ「かーっ!人がこれから寝ようって時に!」
喉元に突きつけられた細剣にコブラは悪態をつく。
剣の持ち主は真鍮製の重鎧を着込んでいたが、その佇まいはどことなく女性的で、コブラに幼ささえ感じさせた。
コブラが細剣を叩き折るなり取り上げるなりをしなかったのも、これが理由だった。
真鍮鎧の騎士「貴公、何者だ?不死では無いようだが、英雄にしては先程から隙が多すぎる」
真鍮の兜から聞こえるくぐもった声は、コブラから更に攻撃の意思を失わせた。
その女の声は、冷徹さの裏に慈悲を隠していたのである。
真鍮鎧の騎士「幾度か英雄の宿命を背負う者達と遭ったが……」
真鍮鎧の騎士「………ふむ…」
コブラ「おっと待った。剣を向けたまま考え込まないでくれ。あんたのうっかりで俺は死んじまうぜ」
真鍮鎧の騎士「………」
スッ…
真鍮の騎士が納刀すると、コブラは上体を上げて壁に寄りかかり、脚を投げ出した。
そのだらしのない姿を見ても、真鍮の騎士の気力は一切緩むことは無かった。
真鍮の騎士「ここに来た者達の素性など、私は一度も尋ねたことが無い」
真鍮の騎士「だが、貴公においては是が非でも聞いておかねばなるまいという気が、どういう訳か湧き上がる」
コブラ「質問攻めなら今はお断りだ。口説こうってんなら、まずは俺の胃袋を満たしてもらいたいね」
コブラ「あとそれとフカフカのベッドだ。それさえ用意してくれたなら、俺はなんだって喋るぜ?」
真鍮の騎士「そんなもの、あるように見えるか?」
コブラ「無いから欲しがってるんだがね」
真鍮の騎士「………」
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/08(木) 21:06:34.14 ID:4uQtI1LmO
そりゃそうだな
持ってるならくれなんて言わんか
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/04/01(日) 02:33:57.60 ID:J+Cpf2y90
ビアトリス「………」
ローガン「ふむ、やはり手遅れだ。この杖は全く壊れてしまった。やれやれ、神の地まで赴いて鍛冶屋探しとは」ホッホッホ
ビアトリス「…申し訳ございません」
ローガン「謝るのなら、術に杖に」
ビアトリスに折れた杖を返すと、ローガンは周囲を見渡す。
そして、消えゆく地の足跡を見つけ、痕跡を辿り、横穴に行き着いた。
ローガン「幸いだな。篝火の輝きが見える。鍛冶道具もあることだ。貴公の杖にもこの灯りはありがたいだろう」
ビアトリス「鍛治道具?何故そのようなものを先生が?」
ローガン「不死教区の鍛治職人が世話をしてくれるのだよ。無論、いくらかのソウルを渡すことにはなるがね」
ビアトリス(自らを律する道具を、なんと軽々しく扱うんだ…)
罠に警戒しつつ、二人はゆっくりと階段を下っていった。
先の古城とは違い、階段に罠などは無く、ローガンとビアトリスは支障無く小部屋へと入り、コブラ達に合流した。
ビアトリス「無事だったか、コブラ。ジークマイヤーはどうしている?」
コブラ「やっこさんならおねむの時間さ。俺もそうしたいんだけど…」
ジークマイヤー「グゥ…グゥ…フゴーッ」
コブラ「この調子じゃあなぁ……ハラも減ったし…あーあ」
真鍮鎧の騎士「大所帯とは珍しい……貴公らはこの男の仲間か?」
ローガン「仲間?ふむ……まぁ、互助の類ではあるかな。しかし大所帯と言うには少々数が足りない気もする」
ビアトリス「失礼するが、貴公は何者で?」
真鍮鎧の騎士「私はこの篝火の番だ。名を聞いているというのなら、悪いがそのような物はこの任を主から仰せつかった時に棄てている」
真鍮鎧の騎士「火防女とでも呼ぶがいい」
ビアトリス(鎧姿の火防女とは……いや、見た目の詮索はよそう。篝火にありつけるだけ幸運と思うべきか…)
ローガン(火防女は人間性を溜め込むゆえ、人の女にしか務まらん。それでいて神の地にあり、主から仰せつかった任があるとすれば…)
ローガン(多くの信仰にある、人は神の地においては使役されるべき者という伝承は正しいようだ。とするならば、神が人に分け与えた術や、その原型もこの都にあるに違いない)
ローガン(求めし神の書庫も近いか…)
コブラ「火防女ねぇー…女の子から名前取っちまうなんて、相当女が怖いと見えるなぁ」
真鍮鎧の騎士「……その口ぶり、我が主に二言物申すというわけか?」
コブラ「別になにもぉ?流石神様と感服してるのさ。この世で女ほど怒らせて怖いものは無い」
コブラ「………」グゥ〜…
ビアトリス「今の音……腹の音か?なんて懐かしい響きだ…」
レディ「そんなに感動すること?」
ローガン「不死になれば分かる。いつか糞尿にも郷愁を思うものだ」
ビアトリス「いえ、流石にそれは…」
ローガン「腹が減ったと言うのなら、なんとか出来るやも」
コブラ「なにっ!?」ガバッ
ローガン「緑花草という植物は、疲弊した兵に力を与える。そして古き神話をまとめた伝承に、光の王は、その緑花草を人の都の王に約定の証として贈ったという一説があったはず。神代の物と言えど、所詮は草。そこらに生えているだろう」
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/01(日) 03:30:13.65 ID:fHe7en8Bo
神話の地まできて飢え死にとか笑い話にもならんしさすがのコブラも目の色変わるか
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