白垣根「花と虫」

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484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:13:30.56 ID:Q/r+SgUt0



(私たちの関係は、なんて歪で、例えようのないものだ。だけど、一つだけ言える)



垣根は左手を伸ばし、人差し指で初春の目尻の涙の轍を拭き取った。



「こんなことを言う資格がないのは分かってますが、貴女に、出会えてよかった。本当にそう思います」



初春は彼の左手をそっと握りしめ、微笑み返した。だが。瞳の涙はまだ止まらずにいた。



2人の手は固く繋がり合い、その間に流れる温度は、ただ暖かった。


485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:15:47.86 ID:Q/r+SgUt0








一方通行は船の墓場の上空を飛びながら、より天空に舞い上がった彼を睨む。黄金の翼が、再び輝き過ぎるほど輝くプラチナに生まれ変わる。



「死ねえェェェェェェェェェェェェェッ!!!」



時間、空間、認識の概念を超えた翼の一撃が一方通行に降り注ぐ。かつて手も足も出なかった巨大な力をに向かい、一方通行は手をかざした。



翼は彼の掌の上で静止し、そのまま右横に軌道を逸らされた。



「グッ、このっ……」



彼は苦虫を噛み潰したような顔で一方通行を睨む。本来、制御下に置かれないはずのない攻撃のはず。何故奴は、涼しい顔で防ぐことができる。彼の中でその疑念が暴れ出すと同時に、脳の片隅に淡々としている理性が、どうしようもなく合理的な回答を導いて行く。


486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:18:07.60 ID:Q/r+SgUt0



(理論上、絶対能力者に辿り着けるのはあいつだけだった。クソがッ! そうだよな。お前の方が、その力を上手く扱えるのは当然だッ)



受け継いだ力を、より昇華して練り上げた鈍い銀色の6枚の翼。それを背中にはためかせる一方通行は、一切表情を動かさずただ彼に向かう。



彼は回避するために翼を翻し、降下しようとした。



その瞬間、彼の周囲に白い氷柱のような、鋭利な包囲網が張り巡らされた。



「ッ……!」



垣根の時以上の協力な封じ手に、彼は迫り来る一方通行に対してただの「的」に成らざるを得なかった。


487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:20:47.80 ID:Q/r+SgUt0



(何でお前と俺が1位と2位に分けられているか知ってるか?)



「ッ、止めろッ!」



記憶の底から、一方通行の宣言が自分の魂を蝕む。



(その間に、絶対的な壁があるからだ)



そしてそのまま、一方通行の拳は彼の胸下に叩き込まれた。彼に絡みついた白い氷柱は、殴打の衝撃でいともたやすく砕け、辺りを雪のように旋回する。


488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:24:05.52 ID:Q/r+SgUt0



吹き飛ばされた垣根は錆びたトタンと鉄パイプに囲まれた漁船に墜落し、粉塵を巻き上げた。すぐに立ち上がり、追撃に備えようとする彼の頭上に、巨大な影が舞い降りた。



彼は上を向く。空が落ちてきたかのような、全長400メートルほどのタンカーが頭上を覆っていた。そのままタンカーは重力に導かれ地面に落下し、辺りに破滅的な轟音をまき散らした。



そのタンカーを蹴り飛ばした張本人。一方通行は、再び翼を広げタンカーのあった場所から墜落地点まで移動した。目の前に横たわるタンカーは、まるで国を隔てる壁のように圧倒的にそこにあった。



突如、タンカーの表面に亀裂が走った。亀裂は次第に表面を伝っていき、内部から押し出すように砕け、中から翼を震わす彼が一方通行めがけて飛び出してきた。


489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:29:06.11 ID:Q/r+SgUt0



彼の鋭利な翼が一方通行に照準を定めた途端、彼の周囲に16本の光の槍が円状に地面に突き刺り、彼の駆動を封じ込めた。



「チィッ! このッ」



彼は素早く包囲網を破壊しようと、魔神の力を使おうとした。だがその時、肋骨が溶けるような胸の蠢きを感じ、彼は思わず右ひざを地面についた。



「な、何が……」



彼は胸下を見た。一方通行に殴打された部位に、白い花のようなものが寄生し、脈動している。彼は息を呑み、目を見開いた。



「お前に攻撃した時。内臓に未現物質を送り込んだ。どうやら別の場所に移動させる時間はなかったようだな。まァ、幻想殺しの影響から肉体を再生させたばかりだ。それも仕方ねェ」



「ッ…………テメェ…………」



彼は怒りと、焦燥に身を任せ歯を食いしばる。生身の内臓に未現物質を寄生されたということは、自身が紡ぎ出す魔神の力の制御の法則を、目の前の男に制御されてしまうということだからだ。



だが彼はすぐに、不敵な笑みを浮かべた。


490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:31:43.08 ID:Q/r+SgUt0



「……これで魔神の力はもう使えない。とでも思ったか?」



彼の言葉に続くように、船の墓場のスクラップの山たちから白いツタが増殖し出した。一方通行は振り返る。



「この島に散りばめられた並列演算装置のこと忘れたか! あれに接続すれば、魔神の力の行使に必要な演算はまだ行えるんだよ!」



白いツタは血流のように島の隅々に行き渡り、演算装置に絡みついていく。



「生身の俺の主導権握ったからって、勝ち誇ったのがテメェの敗因だ。これでもう一度、世界を改変してやる!」



勝利を確信した笑みを浮かべる彼に、一方通行は冷ややかな表情で告げた。


491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:33:49.84 ID:Q/r+SgUt0



「つまらねェ小細工で勝ち誇った面してンのはお前だろ。まだ分からねェのか? もうお前は詰ンでるンだよ」



何? と彼は返した。そして異変に気付く。接続した演算装置たちから、反応が一切帰ってこないのだ。



「オイ、待て。何だこれは。一体どういうことだ!」



彼は打って変わって顔に焦りを浮かべる。その落差は、見ているものにどうしようもない哀れみを買うほどの乱高下だった。



「自業自得ってのは、このことだな」



一方通行の言葉に、彼は何かに気づき、島に張り巡らせた未現物質の一部と自分の視覚情報を共有させた。


492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:36:00.46 ID:Q/r+SgUt0



「初春っ、お前………………」



視界に移ったのは、傍に垣根を寝かし、演算装置のキーボードを操作する初春の姿だった。彼女のクラッキングにより、島全ての演算装置は使いようのない箱になっていたのだ。



「これで分かっただろ? もうお前は何もできねェ」



目の前の一方通行との距離は、3メートルもないほどだ。それなのに、この槍の囲いにより、手も足も出ない。彼の奥底から、ドロドロしたものが沸騰し、次第に顔面を醜く歪ませていった。



「殺す、殺す! お前だけはッ! 殺してやる! クソがッ! クソがあああああああああッ! 出しやがれェッ! ちくしょうッ! ぶっ殺してやる!」



彼は槍に殴りかかり、何とかしてここから抜け出そうとした。しかし槍は寸分の狂いもなく、ただそこにあり続ける。彼はそれに構いもせず、ひたすら槍に攻撃を加え続ける。



「ここがお前の通行止めだ」



一方通行の言葉に、彼はより憎悪を滾らせた。


493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:42:08.47 ID:tGvY6N++O



「ふざ、けんじゃねぇ」



血の滲むような声で彼は言う。



「認めてたまるか。諦めてたまるか。俺は俺を救い、学園都市の闇を晴らすんだよ。こんな、こんなところで」



彼の目から、赤黒い液体が一雫流れた。



「終わってたまるかああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」




彼の背中の黄金の翼が内部から弾け、虫に喰われたようなボロボロの黒い翼が現れた。勢いよく全貌を露わにした翼は、そのまま周囲の槍を全て破壊した。ガラスの破片のように地面に飛び散った砕けた槍を、彼は踏み潰す。




「…………………………」




一方通行は無言で彼を見つめる。胸元の花弁が、硫酸に沈めたように消滅していった。


494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:43:52.73 ID:tGvY6N++O




「内臓に、魔力を通わし未現物質を排除した。これで、俺も力を使える……」



そういう彼の姿は、誰がどう見ても悲惨だった。体には至る所に小さな亀裂が走り、目と口からは血が流れ出ている。



「能力者に魔力は馴染まねぇ。今まではその副作用をダミーの内臓に肩代わりさせてたんだが、こいつは、かなりキくな……。早く、終わらせるぞ」



悲しげに笑う彼の瞳には、殺意の眼光が宿っている。それを見た一方通行は、翼を震わせ上空に飛翔した。彼もすぐさま後を追う。



「お前さえ殺せば、後はどうとでもなる! どうせ世界を改変すれば、お前だって違う人生を送って生きてるんだよ! 今ここで、ぶっ殺すのに何の問題もねぇ!」



自分を追いかけて上昇してくる彼の背後の翼は、まるで昆虫の足のように濁っていて、無機質だと一方通行は感じた。彼はその翼を一方通行に向ける。


495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:47:55.52 ID:tGvY6N++O



「殺してやる。粉々に切り裂いて、跡形もなく殺してやる。絶対に、殺してやる」



その瞳には、狂信的な信念が見えた。彼は血反吐を吐きながら、翼の先端を一方通行目掛け、射出した。



「ゥァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」



焼け付くような憎しみと懇願を腹に込め、絶叫上げた彼に向けて一方通行は右手を前にかざし、透明の防御壁を精製した。






翼の突撃はそれにぶつかり、クラッカーを割るように容易く砕け散った。






彼の瞳の殺意は一瞬で消え、曇りなき絶望に支配された。



「一つだけ教えてやる」


496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:49:31.69 ID:tGvY6N++O



目の前の絶対強者の声が、彼の鼓膜を執拗に揺らしていく。



「例えこの絶望的状況から、大逆転を起こして俺を殺し、世界を作り変えたとしても、その世界で幸せになった人間を見届けたとしても」



一方通行は自身の瞳に憂いを乗せ、彼に告げた。



「自分の犯した罪からは、決して逃れることはできねェ。一生背負い続けるしかねェンだ」



一方通行の背中の6枚の翼が脈打ち、融合し、一つの塊になっていく。



(彼を、殺すつもりですか?)



垣根の言葉が、脳内で再び自分に問いかけてきた。一方通行は、あァと答える。


497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:51:55.47 ID:tGvY6N++O



「殺してやるよ。メルヘン野郎」



やがて翼の融合は完了し、6枚だった銀色の翼は、2つの純白の噴出へと生まれ変わった。この世のあらゆる美しさを統合したような神々しい白を掲げる一方通行に、彼は呆然と見とれてしまった。



「その、惨めな幻想をな」



最早自分が負けることは決まりきっている。だが、そんなことを歯牙にもかけず、彼は心のままに叫ばずには入られなかった。



「何で、何でだよ! お前だってこんな世界に生まれて後悔してるはずだろうが! 何にも悪くねぇのにこんな力を植え付けられた挙句血に塗れたんだぞ! おかしいだろ! 俺たちにはもっと、相応しい世界が」



「必要ねェよ」



彼の悲痛な訴えを遮った一方通行は、拳を強く握った。


498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 16:53:59.53 ID:tGvY6N++O



「俺の欲しかったものは全部」




一方通行の脳裏に、様々な人影が過ぎった。ジャージ姿の女教師。白衣を着た元女研究員。アオザイを身にまとった目つきの悪い少女。そして、自分を闇から救ってくれた、最愛の少女。



その全てを、余すことなく胸に秘め、一方通行は白翼の噴出を強める。そして最後に、彼にこう言い残した。



「ここにある」



一方通行の豪速の拳が、一瞬の内に彼の腹部に炸裂した。彼の背中の翼は砕け、そのまま一気に地面に墜落し、地表に大穴を開けてその下の空洞へと突き抜けていった。



圧倒的な瞬殺だった。


499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:08:01.39 ID:Q/r+SgUt0







一方通行は穴の側に降り立ち、白翼をしまった。穴は直径50メートルほどはある。その下は空洞になっており、穴の周囲には無造作にチューブや鉄骨が突き出ている。下へ行くには、この出っ張った廃材たちに足を引っ掛けて行くべきだと彼は思った。



「第1位さん」




声の方向へ彼は振り向いた。肩に垣根を抱えた初春がそこにいた。垣根の全身の亀裂は、少し元どおりになりつつある。




「あの人と話させてください」




彼女の言葉に、彼は無言で側に立ち寄り、垣根を背負う役を交代した。初春は頭を下げ、廃材の足場を伝い下に降りていった。


500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:12:18.87 ID:Q/r+SgUt0



「彼女に任せていいんですか?」



垣根の問いかけに、一方通行は鼻で笑う。



「心配すンな。此の期に及ンでまだくだらねェ答えだすなら、迷わず殺すつもりだ」



彼なりの情が詰まった返答に、垣根は思わず笑ってしまった。



「何笑ってンだコラ」



「いえ。何でもありません」



垣根はそう言い、ふと辺りを見渡した。すると、とあるものが目に入ってきた。



垣根は気のせいかと思い、もう一度目を凝らす。海の向こうに見える親指サイズの軍艦の、砲台がこちらに向いている気がしたのだ。


501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:13:51.47 ID:Q/r+SgUt0







穴の奥底。太陽の光が差し込むその中心で、彼は力なく、仰向けに横たわっている。



(……クソが。結局、何もできず終いかよ。畜生…………あのクソ一位。虫けら。お前らのせいで……)



心の中の罵倒も、ただただ虚しさが募るだけだった。今の自分に、未来などありはしない。降り注ぐ太陽の光を見ないように、彼はそっと目を閉じようとした。



その時、自分の体に影が覆い被さった。彼はその影の本体を見て、皮肉げに笑う。



「……何だよ。恨み言でも言いにきたか? 初春」



初春は彼の足元に立ち、無言で彼を見下している。



502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:17:50.01 ID:Q/r+SgUt0



「何とでも言えよ。どうせ太陽になれなかった負け犬だ。今更何言われたって、どうってこと」



彼が言葉を言い終わる前に、初春は彼の胸元に近づき、そこ思いっきり手繰り寄せ、二発鋭いビンタをかました。



「ガッ、な、何……」



彼は冷水を浴びたような目で、彼女を見る。



「あなたに対する怒りは、これくらいで収めておきます。そしてここからが、私の言いたいことです。垣根さん。逃げないでください」



その真っ直ぐな視線に目を合わせた後、彼は力なく笑って俯いた。


503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:20:04.37 ID:Q/r+SgUt0



「……どいつもこいつも。じゃあ俺はどうすればいいんだよ。このクソったれた世界で背負わされた罪に、成すすべなく打ちのめさせれて、這い蹲るしかねぇのかよ」



「そうです」



初春は即答した。



「自分の過ちを背負い、一生苦しみながら生きてください。それが、本当の意味での救いになるんです」



初春は一つ一つ、丁寧に紡いだ言葉を彼に届けようとする。


504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:22:52.66 ID:Q/r+SgUt0



「あなたなら出来ますよ。自分の汚れた部分にばかり、目を向けないでください。あなたの中には、優しさも、強さも、勇気も兼ね備えた、色んなあなたがいるんです。学園都市のない世界を作って、実験に晒された人を救おうとしたのも、あの世界で太陽の門を作ったのも、紛れもない優しさの一部じゃないですか」



「……違ぇよ」



彼は言い返す。余りにもか細い声で。



「あいつらの言う通りだ。全部、自分なんだよ。自分が良ければそれで良かったんだ。もういいよ。俺に構うんじゃねぇ」



「嫌です」



初春は迷わず告げた。



「あなたを諦めたくない」



その言葉に彼は、胸ぐらを掴む両手をそっと払いのけ、再び地面に仰向けになった。


505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:26:09.69 ID:Q/r+SgUt0



「何なんだよ。もう。お前は一体、俺に何を求めてるんだ」



その姿は、まるで駄々っ子のように無防備だった。初春は少し口元を緩め、彼にとある提案を言おうとする。



「垣根さん、良かったらーーー」






その時、突如飛来した白い槍が彼の腹部を貫いた。






「………………え?」


506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:29:30.61 ID:Q/r+SgUt0



初春の口から思わず声が漏れた。



「あ、ガ、ぅ、うああああああああああああああああああああああッ!!! グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!! ガアアアアアアアアアアアッ!!!」



彼は地面をのたうち回る。痛々しく?くその姿からは、一目で想像できる激痛の気配があった。初春は顔を青ざめ、後ずさる。



「予想通りだったよ。やはり君では、彼らは越えられなかったか」



初春と彼は、声の方向に顔を向けた。地上の穴の淵。垣根と一方通行がいる方向とは逆の場所に人影が見える。緑色の手術服に身を包み、銀色の長髪をたなびかせる異質な存在。



吐血し、番犬のように唸る彼は、その「人間」の名前を口にした。



「アレイスター、クロウリーッ!」



男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』がそこにいた。彼の登場に、向こう岸の垣根と一方通行も息を飲んでいる。


507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:32:55.47 ID:Q/r+SgUt0



「とりあえず、礼は言っておくよ。君との競り合いのお陰で、未元物質の進化。そして一方通行の力をより『プラン』の実現に近づけることができた」



とすると、と彼は告げる。



「君の存在は最早完全に不要なんだよ。これ以上過去に干渉されるのも、あまり好ましくないしね。未元物質の現統率者の彼はその心配はないようだが、君は、そうじゃないだろ?」



アレイスターの冷ややかな眼光が、彼の充血した眼を貫く。彼は槍の刺さった腹部を抑えながら、何とか言葉を発しようとした。



「まさか………」


508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:36:31.73 ID:Q/r+SgUt0



「そうさ。察しの通り、君を貫いたその槍は妖精化の槍だよ。君が右方のフィアンマを利用して作った、魔神を殺す用の変異型を小型化したものだ」



垣根は怨嗟と屈辱の篭った目で、槍を見た。



「今は君の体内にある魔力が微量のため、効果も今ひとつのようだな。だが、その力を10倍に高めたら、どうなるかな?」



アレイスターは手にしたねじれた銀色の杖を彼に向けた。彼の顔は、死期を悟り蒼白になった。



「その恐れが、君の死因だよ」



無慈悲な宣告と共に、アレイスターは杖の効果を発動させた。『衝撃の杖(ブラスティングロッド』。魔術の効果を、標的の想像の10倍に強化する補助術式。



それにより、彼の腹部に刺さった槍が、より一層輝きだした。


509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:40:22.49 ID:Q/r+SgUt0



「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!! グ、ガアッ! ぃ、アアアアアアアアアアッ!!! アアッ!!! は、ハハハハハハッ! ガアアアアアアアアアアアッアアアアアアアアッ!!!」



余りの激痛に、途中笑い声を挟みながら、彼はただ地面を無様に転げ回った。



「垣根さん! 垣根さんっ!」



目も当てられないその姿に彼女は悲痛に叫び、垣根と一方通行は、顔を歪めながら、杖を振るう彼を食い止めようと拳を構えて突撃した。



しかし、彼は瞬時に自分たちが元いた場所に移動していた。



「どうした第1位。彼を救いたいのか? 私を止めたかったか? だが真の科学の世界を操る時間はもうないだろ? 彼が死ぬのは、もう確定だよ」



その宣告に、垣根は何かを言おうとしたが、上空から甲高い音が聞こえたのをきっかけに、空を見上げた。


510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:43:25.79 ID:Q/r+SgUt0



「これは…………」



そこには渡り鳥の群れのように、列を描いて飛行する戦闘機の姿があった。



「この島には、彼が寄生した未元物質の残骸が数多く眠っている。やるなら徹底的に、だよ。君にはこの島ごと、眠ってもらおう」



アレイスターがそう言うと、海上の軍艦から砲撃音が鳴り響き、数拍の間を置いて島の岸辺に砲弾が炸裂した。火柱と鉄屑が、島の中央から確認できるほど強く巻き上がる。



「原型制御(アーキタイプコントラー)で、この島に対する人類の認識を変換させた。かつて世界に混乱をもたらした魔神の古巣。それを早急に取り除く為、いち早く学園都市が動きだした。というシナリオさ。これなら沖合で島が一つ消滅しようと、対岸で見守っている人々は安心できるだろ?」



「原型、操作…………?」



虫の息の彼が、アレイスターに問いかける。


511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:45:30.03 ID:Q/r+SgUt0



「ああ。私の力の一つさ。人間の共通価値観、認識を自由に変換する。要するに君は、この力により世界から完全に拒絶されたということだよ。異物を司る者として、皮肉な最期だな」



アレイスターは眉一つ動かさず、ただ事実を淡々と彼に告げ、そしてこの場から背を向け去ろうとした。



「待て!」



穴の底からの声に、アレイスターは振り向く。



「人間の、認識の操作っ、だと? お前、まさかその力であいつを……」



芋虫のように這いずりながら、眼球が飛び出そうな勢いで彼はアレイスターを睨む。


512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:49:01.33 ID:Q/r+SgUt0



「……あいつ、というのは君を裏切った彼女のことかな?」



アレイスターは一瞬記憶を辿り、そして彼に問いの答えを告げた。






「そんなわけないだろ。彼女は自分の自分の意思で私に忠誠を誓い、自分の意思で君を裏切ったんだ」






今度こそ、彼の目から一縷の隙間もなく、希望が消滅した。初春は再び訪れた無惨な末路に、思わず口を押さえる。



「……仮に彼女が私に操られていたとして、それで何なんだ? 今際の際に、私に全ての責任をなすりつけられるとでも思ったのか? 自分がここまで堕ちたのは、私のせいだとでも言いたいのか?」


513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:52:23.73 ID:Q/r+SgUt0



作り物のように微動だにしなかったアレイスターの顔が、深い軽蔑の表情を浮かべた。



「甘ったれてんじゃねぇよクソガキが。私はお前のような奴が一番嫌いなんだ」



腐った内臓を見るような目で彼を見下し、アレイスターは続ける。



「大層な理想や信念を語って自分を大きく見せたがる。そのくせ何の犠牲も背負う覚悟がない。確かに君を暗部に堕ちるよう仕向けたのは私だ。だがそこまで腐りきったのは、ひとえに君のその弱さが原因じゃないのか?」



アレイスターは背を向けて、最後の言葉を吐き捨てた。



「軟弱者に与えられる役目の駒などない。大人しくここで死んで、今すぐ盤上から失せろ。負け犬が」



直後にアレイスターはこの場から姿を消した。そして戦艦と、戦闘機による砲撃が巻き起こり、少しずつ島を破壊していく音が無造作に響いていく。


514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:56:21.36 ID:Q/r+SgUt0



だが穴の底では、アレイスターが去った後を見つめたまま、ぴくりともしない彼と、その様子を見つめる初春が、静寂に取り残されている。



「垣根さん…………」



初春は言葉を発したが、それは砲弾の音と、どうしようもない虚夢に晒されたこの場の空気に負け、情けなく消滅していく。



「フッ」



彼はようやく、一言を発した。



「ハハハハハハハハハッ。ハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハ…………アハハハッ!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!! アヒャハハハハハハハハハハッ!!!」



途端に堰が切れたように、止まらない乾いた笑いが彼の口からあふれ出した。


515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/25(日) 23:58:40.64 ID:Q/r+SgUt0



「何だよ。結局何もできず終いじゃねぇか。なぁ? アハハハハハハハハッ!」



彼は初春を見た。剥き出しの自棄が宿ったその瞳に、初春の胸は抉るような痛みに襲われる。



「分かったか初春? これが現実なんだよ! 幻想に溺れた人間に、現実は容赦しねぇんだ! 分かったらとっとと失せろ! ここに居たら巻き込まれて死ぬぞ? ハハハハハハハハハハッ!」



そう言っている間にも、彼の口からは血が溢れ、全身は痛々しくひび割れていく。深く重い絶望の淵で、彼は今すぐ目の前の彼女が居なくなることを望んだ。



「…………嫌だ」


516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:00:13.68 ID:z9MlvUfY0



その返答に、彼は疼くめていた顔を上げ、彼女を見た。



「…………は?」



初春は潤んだ瞳で彼を見つめ、言う。



「ここであなたを見捨てたら、あなたは本当に1人になる。そんなの嫌だ! 」



「……お前、何言って」



「私が」



初春は彼の側に寄り添い、乾いた餅のように割れた彼の右手をにぎりしめた。



「最期まで、側に居ます!」


517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:02:13.29 ID:z9MlvUfY0



彼の目は彼女を見つめ、固まる。



「何言ってんだ、お前っ。死ぬぞ」



「分かってますよ」



初春は言う。



「何、言ってんだ! 俺がお前に何したのか忘れたのか!」



「分かってます」



変わらずに彼にそう告げる。



「…………………何で」



「言ったじゃないですか」



初春は彼の手を握る力を強めた。


518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:03:39.27 ID:z9MlvUfY0



「あなたの味方だって」



自分の手に走った温もりが、改変した世界でそう言っていた彼女の姿を思い出させた。彼女と過ごした情景が、止まらない速さで彼の脳裏を駆け巡る。



澱んだ感情の油に火が灯り、震える口元から言葉が漏れ出した。



「失せろ」



彼は初春を思っ切り突き飛ばした。彼女は尻餅をつき、彼を見る。


519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:06:11.51 ID:z9MlvUfY0



「失せろ! ウゼェんだよお前! 自分に酔ってんじゃねえ! 目障りなんだよ! 今すぐ目の前から消えろクソガキがッ!」



彼の罵倒を喰らっても、瞳に宿った決意を変えない彼女はゆっくりと立ち上がった。



「止めろ。来るんじゃねぇ。消えろ。こっちに来るな!」



彼の言葉を物ともせず、初春は彼へと一歩を踏み出す。



「来るなつってんだろッ!」


520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:08:00.69 ID:z9MlvUfY0



彼は後ずさり、近くにあったL字の鉄パイプを初春に思いっきり投げた。パイプは回転しながら彼女の左目の上の額に激突し、カランと地面に転がった。彼女は顔を伏せ、立ち止まる。



顔を上げると、傷口から血が滴っていた。それでも彼女は、彼に向かい足を進める。



「止めろ! いいか? そこから後一歩でも動いてみろ。お前をぶっ殺すからなッ!」



彼は後ずさり続け、そして背中に廃材の壁が当たった。息を荒げ、充血した目で彼女を睨み続けている間にも、妖精化の槍の破壊が全身を蝕み、彼はまた呻き出し胸元を抑える。



初春はそんな彼を見て少し足を止め、また歩き出した。


521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:09:14.27 ID:z9MlvUfY0



「止めろ! 来るなっ」



掠れた声と共に、口から血を吐き出す彼は、右手で自分の口を覆い、その後、顔全体を覆い隠した。



「頼むっ、から…………」



地べたに吐き出された血溜まりの上に、透明な雫が落下した。彼はより強く掌で顔面を覆い隠すが、頬を伝う涙と、歯を食いしばった口元は隠し切れずにいた。



「垣根さん…………」



初春は震えた声で、彼の名を呼んだ。



その時、砲撃が穴の淵に炸裂し、爆音と共に崩れた瓦礫が初春の頭上に向かい降り落ちてきた。


522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:11:41.61 ID:z9MlvUfY0



「ッ!」



初春は身動きを取れず、ただ反射的に両腕を顔の上にかざした。彼の顔に、焦りが浮かび上がった。



瓦礫は彼女の居た場所に降り注ぎ、粉塵と小さな鉄の破片を巻き上げた。やがて視界が晴れてくると、彼の視線の先に、2つの人影が見えてきた。



「っ、第1位さん!」



彼女を抱き抱え、瓦礫の倒壊から避難した一方通行が、彼から5メートルほど離れた位置に凛と立っていた。



「行くぞ」



彼は初春に告げた。


523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:13:03.75 ID:z9MlvUfY0



「え? ちょっと待って、嫌だ。あの人が、まだ! 離して!」



初春は一方通行の腕の中でもがくが、彼は彼女の額の傷口に触れ、血中酸素のベクトルを操作した。彼女は安らかに、気絶する。



瓦礫越しに、一方通行は瀕死の彼を見る。互いの瞳はじっと見つめ合い、そこに言葉は一向に交わらない。



「行けよ」



「あァ」



ただそれだけを言い残し、一方通行はこの場から飛び去った。たった1人になった彼はズルズルと壁を伝い、仰向けに地べたに倒れこんだ。


524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:14:53.58 ID:z9MlvUfY0



遠くから聞こえる砲撃の音と、地響きの揺れが、自分の終わりを着実に運んでいることを、細胞に染み渡るように感じる。



「グッ」



彼は息を詰まらせ、瞳から氷が溶けたように涙を溢れさせた。



「ウッ、グッ、アァッ! ッ、ウゥッ! アッ! ガァッ! ァッ…………」



彼は泣きながら、何度も何度も、廃材の壁を必死で右手で叩き続ける。



「ァッ……グッ……クソ、クソッ、ちく、しょう…………」



そうしている間にも、妖精化の破壊に内臓は削り取られていき、口からは血反吐が飛び出す。彼は地面にうずくまり、潰れそうな勢いで拳を握った。


525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:16:08.39 ID:z9MlvUfY0



不意に、彼の霞んだ視界の先。鉄くずの群れのその向こうに、白い影が現れた。



彼は最期の力を振り絞り、震えながら立ち上がる。



「気分は、どうだ? あ? これでお前は、晴れて垣根帝督だ。嬉しいだろ? 何か、言えよコラ」



目の前の、自分と全く同じ形をした白い男に、彼はそう言う。



「ふざけんじゃねえ」



彼の目が、殺意に濁る。


526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:17:23.57 ID:z9MlvUfY0



「何で俺が死んで、紛い物のお前が残る! ふざけるな! せめて、お前だけは、お前、だけはああああああああああああああああああああッ!!!」



彼は背中から、ボロボロになった白い6枚の翼を展開する。それはもうかつての面影など微塵もないほど哀れな翼だったが、それでも彼はその翼をはためかせ、男に向かい突撃する。





その男、垣根帝督は、俯いていた顔を上げ、素早く彼の懐に潜り込み腹に拳を炸裂させた。






刺さっていた槍は粉々に砕かれ、胴体も呆気なく貫通された。カウンターも出来ぬまま、瞬時に反撃を食らった彼は、口から盛大に血を吐き出す。



彼の体が、徐々に白化していき、繊維状に分解され垣根の肉体に吸収されて行く。


527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:18:49.67 ID:z9MlvUfY0



「………素直じゃない方だ。こんな回りくどいやり方をしなくても、介錯くらい、頼まれればやりますよ」



垣根はやり切れない表情で、彼に言う。



「何言ってんだよ。ボケ。お前に何が分かるんだ」



もう上半身しか残っておらず、体もほとんど白化した彼が、悪戯げな笑みを浮かべる。



「分かりますよ」



垣根ははっきりと、彼に告げた。彼はそれに何も返さなかったが、垣根に完全に吸収され、消滅する寸前、小さく口を開いた。


528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 00:20:00.84 ID:z9MlvUfY0



「そうかよ」



彼は煙のように棚引きなから、消滅した。



垣根は彼の体を貫いた、自分の右手に目を落とし、そして、翼を広げて上空に飛び立った。



ある程度の高度に達した時、船の墓場を見下すと、軍艦や戦闘機の砲撃により至る所から黒煙を上げ、ゆっくりと、海上で死んでいく様が見えた。



夕刻の近い時間の微睡んだ太陽も、西の方からそれを見届けていた。


529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:26:36.77 ID:ldGZ8cbIO







日が傾き、茜色になった太陽が海面に光の道筋を刻んでいく光景を、東京湾のとある港から一方通行は眺めていた。背後にはトタンで覆われた倉庫がぽっかりと扉を開け、その奥に影をもたらしている。



彼は振り返る。倉庫の手前には、目を閉じた初春が座り込み、壁際にもたれかかっている。額の傷は、ベクトル操作で細胞を活性化させて癒着させた。彼女は寝息を立て、静かにそこにいる。



そして両者の間に、6枚の翼から羽毛を散らし、垣根が上空から降り立ってきた。



一方通行は垣根と目を合わし、また海の方面へと振り返った。垣根は初春を見る。


530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:28:18.95 ID:ldGZ8cbIO



「もうしばらくしたら起きるだろ。その時に、ちゃンと伝えてやれ」



一方通行は背中越しの彼に向けてそう言った。



「申し訳ありません。貴方に、心苦しい役目を負わせてしまった」



「気にすンじゃねェ。嫌われ役は性に合ってる」



垣根は一方通行の方へ向く。



「アイツはどうなった?」



彼の質問に、垣根は憂いた笑みを浮かべて答える。




531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:30:36.91 ID:ldGZ8cbIO



「最期は、私の手で葬られることを望みました。この手で彼を貫き、未元物質のネットワークの中へと吸収した」



そう言って垣根はまた、自分の掌に視線を落とした。



「戻ってくる可能性は、あるのか?」



彼は首を横に降る。



「私が未元物質の統率者である限り、彼の人格は、ネットワーク上のデータに過ぎない。戻ってくることはまずないでしょう」



波の音が、両者の間に虚しく響く。一方通行は何も言わず、垣根は、しばしの沈黙の後事実を告げた。



「生身の内臓が消滅した今、『人間』垣根帝督は、完全に死にました」



そうか。と一方通行は返した。


532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:31:53.68 ID:ldGZ8cbIO



垣根はまたしばし沈黙する。脳内に、アレイスターが言っていたあの言葉が浮上してきたらだ。



(どうした第1位。彼を救いたいのか?)



垣根はゆっくりと、言葉を切り出す。



「一方通行。貴方本当は………」



「アァ?」



一方通行は上半身を振り返らせ、赤い瞳で彼を睨んだ。その反応に、垣根は笑う。


533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:33:27.72 ID:ldGZ8cbIO



「……いえ、貴方と私の関係に、それは無粋だった」



ただ、と垣根は言う。



「これだけは言わせてほしい。ありがとう。本当に」



その言葉に、一方通行はハッとため息をもらした。



「行きますか」



垣根はそう言い、初春の方へと歩き出し、彼女を抱き上げた。一方通行も彼に続き、そちらへ歩き出す。



道中、彼はまた海の方面を向いた。


534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:34:50.25 ID:ldGZ8cbIO



「…………………………」



海は太陽を飲み込み、その表面を赤く焦がしていく。そこにはもう、船の墓場の姿はない。戦闘機と戦艦の爆撃により、海底深くに沈んでいる。それでも彼は、かつてそこにあったはずのそれを思い浮かべ、ただ海を見つめた。



ポケットの中の携帯電話が震えた。彼はそれを取り出し、応答する。



『あなたー? もうそろそろ帰ってくるの? ってミサカはミサカは待ちきれない思いを伝えてみる!』



電話の向こうには、自分が守るべき最愛の少女の声がした。彼は彼女の姿と、そこにいる、大切な人たちの顔を思い浮かべて答えた。



「アァ。もう終わった。今から帰る」


535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:37:22.09 ID:ldGZ8cbIO



…………………………。



少し前に、本で読んだことがある。



エジプト神話の神々の1人、ネフェルティムと言う美しい花の神のことを。


彼は頭に睡蓮の花を携えていた。



その花の香りは、エジプト神話を代表する神、太陽神ラーに捧げられた。彼が冥界の深くで復活を待つ間、花は絶えず花弁の中に彼を内包し、活力を与え続けたという。



そして、復活を遂げたラーは、蓮の花の上で神々しく輝いたそうだ。


536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:38:55.36 ID:ldGZ8cbIO







一週間後、垣根と初春は、互いが始めて出会ったカフェのオープンテラスに居た。時刻は午後4時を過ぎ、太陽は茜色になりつつある。



テーブルの上には、初春が注文した大型甘味パフェがある。彼女はそれをスプーンで掬い、満面の笑みで頬張り続ける。



「ん〜、やっぱり美味しい! あ、垣根さんも食べます?」



初春はスプーンに乗ったパフェを彼の口元に運んだ。垣根は微笑む。



「遠慮しておきます。貴方が全部食べればいい」



彼女はまた笑顔で、分かりましたと答えた。彼女の周りには、張り詰めた陽気さが漂っている。


537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:40:23.09 ID:ldGZ8cbIO



お待たせしました、と言いながら店員は垣根の注文を持ってきた。バラの香りが漂うダージリンティーが机の上に置かれ、彼はありがとうと告げる。



垣根はカップを持ち、鼻先へと近づけ花の香りを味わい、そして一口すする。カップを皿の上に戻し、彼は暖かいため息を吐いた。



(あのことを思い出した時、思わず笑ってしまった。頭に花なんて、正に目の前の彼女だ)



初春は依然と、幸せそうにパフェを食べている。垣根はそんな彼女の姿を見ながら、思索に耽る。


538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:42:03.19 ID:ldGZ8cbIO



(もう1つ、笑ってしまったことがある。太陽神ラーは数ある形態の1つとして、夜明け前、蓮の花に包まれている時は、スカラベの姿をしたケプリと言う神になるらしい)



古代、スカラベは神聖な甲虫として崇められていた。スカラベが転がす糞球が、沈んではまた登る太陽の運行と同一視されていたからだ。



そのことからスカラベは、復活と再生の象徴とされていたようだ。



(花から生まれ出る、復活と再生の象徴の虫、か)



垣根は思い出して、また微笑む。



(初春さん。貴女は紛れもない花だ。汚れた泥土を吸い上げても尚、美しく咲こうとする立派な花だ。ならば私は、そんな貴女に勇気を貰い、復活を遂げた一匹の虫だ)


539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:43:11.23 ID:ldGZ8cbIO



ずっと、この関係を何と呼べばいいのか分からなかった。最低の出会いから始まった、この奇妙な関係は、名付けるのにはあまりにも複雑だった。



男と女でもない。



被害者と加害者でもない。



(ようやく見つけた気がしますよ。貴方と私の、絆の名前を)



例えるなら、そう。


540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:44:24.62 ID:ldGZ8cbIO



「花と虫」



垣根の言葉に、初春はパフェを頬張る手を止め、彼を見た。



「垣根さん、何か言いました?」



「いえ、何でもありません」



垣根はそう言い、また手前の紅茶を軽くすすった。



やがてカップを皿に置いた彼は、初春に向かい語り出す。


541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:46:42.77 ID:ldGZ8cbIO



「初春さん。まずは、今日時間を取っていただいて感謝します。そして、謝らなければいけない。私は結局、彼を救い出すことができなかった」



あの日、眠りから目覚めた初春に全てを伝えた。彼女はただ頷き、一言も喋らず、終始顔を埋めていた。垣根はその時のことを思い出し、彼女に謝罪する。



初春は黙っていたが、すぐに顔に笑顔を戻す。



「嫌だなぁ。垣根さんが謝ることじゃないですよ。仕方なかったことなんですから」



その笑顔の真意を理解している垣根は、一切表情を緩めない。



「それに、あの人は最後まで、救われることを拒んでた。きっと、私なんかが何言っても意味がなかったんですよ。だから垣根さんも、そんな顔しないでください」



それは違う。と垣根は素早く返す。


542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:49:06.77 ID:ldGZ8cbIO



「貴女は最後まで、彼を救おうとした。その想いはきっと彼に伝わっていたはずだ。でなければ、あんな涙は流さない。違いますか?」



初春は笑顔を続けるが、次第にそこに暗い影が混ざり始める。



「分からないですよ」



彼女は顔を下に向ける。



「確かめようにももう、あの人はいないんですから」



その言葉に、垣根は答える。



「そうだ。彼はもうこの世界にはいない」



彼女の顔から笑顔が消えた。それを見た垣根は、そっと手を伸ばす。



「だが、ここに『もしも』の世界がある。もし、あの時彼が死ななかった後の世界が」


543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:51:04.96 ID:ldGZ8cbIO



その言葉に、初春は顔を上げた。自分に向かって伸びた垣根の掌から、万年筆ほどの大きさの、軍神の槍が発されていた。



「垣根さん、それ…………」



「彼を吸収した際、彼が記憶していた軍神の槍のデータを元に、新たに作り上げたものです。これで私も、魔神の力を制御できるようになった。後は法則制御と組み合わされば、彼が行なったような過去改変を行える」



ただ、と垣根は続ける。



「幻想殺しをこの身に宿らせた後遺症が少し、発生しましてね。法則制御の力を、安定して使うことが出来なくなってしまった。このまま過去改変をしても、おそらく5分もしないうちにバランスを崩し、元の世界に戻ることになるでしょう」



5分。初春はその言葉を繰り返す。


544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 16:52:29.40 ID:ldGZ8cbIO



「これが所詮、幻想なことは分かっています。だがそれでも、私は貴女に伝えたい。貴女がどれだけ、彼を、垣根帝督を、救ってくれたのかを」



あり得たかもしれない世界。



たった5分の間の幻想。



そんなものに縋ったって、現実が変わるわけじゃない。



そんなことは彼女にも分かっている。



だが、それでも彼女は、彼が差し出した手に、触れようと手を伸ばした。



世界が白に染まり、生まれ変わる。


545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:12:22.10 ID:z9MlvUfY0



…………………………。



初春が目を開けると、そこは学園都市を見下ろせる展望台がある、レンガ式の道が敷かれた遊歩道だった。



「ここは…………」



初春は辺りを見渡す。道の脇には木々が並び、山中に建てられた風力発電のプロペラの回る音が耳に過ぎる。視線の先には下へ続く階段があり、その先に展望台がある。



「さあ。行ってきてください」



隣の垣根が、初春の背中をそっと押した。彼女は振り返り、無言で頷く。


546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:15:50.34 ID:z9MlvUfY0



初春は歩き出し、階段を降り、展望台から学園都市を見下ろしたた。改変前と同じく、時刻は夕方で、街はオレンジ色の光を反射して切なく輝いている。



初春はそこで、あることに気づいた。



(……何か私、少し大きくなってるような)



自分の顔や胸や腹をペタペタと触り、改変前よりも成長していることを感じる。とすると、ここは未来なのだろうか?



そんなことを考えていると、不意に左側から声がした。


547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:16:30.47 ID:z9MlvUfY0










「初春」









548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:17:47.73 ID:z9MlvUfY0



聞き覚えのあるその声に、彼女は振り向く。そして、息を詰まらせた。



「…………垣根、さん?」



目の前に居たのは、紛れもない、かつて自分を殺そうとした『本来』の垣根帝督だった。初春は言葉を失い、じっと、彼を見つめる。



「何ボッーとしてんだコラ。パトロールは済んだのか?」



「へ?」



パトロールと言う言葉が彼の口から出たことに、初春は呆けた声を漏らす。そして、彼の右肩にかけられたものを見て、震えながら指を指した。


549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:19:21.23 ID:z9MlvUfY0



「あ、あの……その、腕章は……」



「ハァ? オイオイ。天然なのは知ってるけどよ、遂にボケが始まったのか? ずっと付けてんだろうがよ」



彼は腕を上げ、彼女にそれを見せびらかす。それは自分がずっと掲げてきた、風紀委員の腕章だった。



(そうか。この、世界は……)



初春はあの時、彼に言いそびれた言葉を思い出した。


550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:20:06.25 ID:z9MlvUfY0










ー垣根さん。もし良ければ、風紀委員に入りませんか?ー









551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:22:25.29 ID:z9MlvUfY0



(それじゃあ、あの後、垣根さんは私の誘いに乗って…………)



初春はそれに気づき、唇を固く結わえる。そして、すぐに顔の緊張を解いて笑みを浮かべた。



「そうでしたね。うっかりしてました」



「ったく。しっかりしろよ。あ、悪りぃ電話。もしもし……ああ、白黒か。んだよウルセェな……分かってるよ…………ああ、ちゃんと用意してる………ウルセェよボケ。殺すぞ」



彼は電話越しに会話を続ける。白黒、ということは、おそらく相手は黒子だろう。初春は少し笑い、掌をぎゅっと握り締めた。



(良かった)



彼女の奥底で、感情の波が荒立ち、激しさを増していく。彼女はそれを抑え込み、自分に言い聞かせる。


552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:23:38.11 ID:z9MlvUfY0



(あなたは、ちゃんと自分に打ち勝てたんですね。じゃあ、泣くなんてダメだ。あなたの為にも、最後まで笑顔でいて、この世界と別れよう)



この世界で過ごせる時間は、後4分を切った。初春は息を吸い込み、彼へと向かう。



彼は眉間に皺を寄せながら電話を切った。そして初春の方へ向くと、彼女は満面の笑みをして、すぐ目の前にいた。



「パトロール完了しました。さあ、本部に帰りましょう」



「おう」



彼はそれに微笑みながら答えたが、その後直ぐに掌を彼女に向け、静止させる。


553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:25:35.13 ID:z9MlvUfY0



「その前に、初春。手ぇ前に出してくれないか? ちょっと、赤ん坊を抱き抱えるようなポーズで頼む」



初春は怪訝に思いながら、言われた通りのポーズをとる。



「よっしゃ。3、2、1!」



彼が指を鳴らすと、初春の腕の中に突然花束が現れた。赤や黄色、紫の花々が咲き誇る、華やかなギフトだ。初春はわっと驚き、花束を握りしめたまま少し後ずさった。



「ハハハッ! ビビったか? 未元物質を駆使した瞬間移動だ。白黒のお株を奪っちまうが、俺の未元物質に常識は通用しねぇからな」



彼は無邪気な笑みを浮かべて手を叩く。そして、一転して真摯な表情で、彼女と向かい合う。



554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:27:22.66 ID:z9MlvUfY0



「初春。今日で俺が風紀委員に入って、2年が経った。そいつは、お前への礼だよ。どうしようもねぇ俺に手を差し伸べてくれた。お前へのな」



初春の口元が、歪に震えた。



「俺は最初、お前を殺そうとしていた。それなのお前は、そんな俺に光を与えてくれたんだ。その思いを、全部言葉で伝えるってのは、ちと難しいだろ? その花束が代わりだよ。初春。ありがとな」



彼は照れ臭さそうに、時々視線を逸らしながらそう言う。



(ダメだ)



初春は必死で、自分に言い聞かす。


555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:28:27.94 ID:z9MlvUfY0



(甘えちゃダメだ。泣くな。泣いちゃダメ)



彼女は顔を上げて、笑う。



「ありがとうございます。垣根さん。これからもよろしくお願いします」



ああ、と垣根は笑った。



「でも、もう2年か。早いもんだな。色々あったよな」



彼はまた語り出す。


556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:29:54.27 ID:z9MlvUfY0



「俺が犯人捕まえる際にやり過ぎて、始末書に追われたりした時は皆んなにめちゃくちゃ怒られたよな。特に白黒がうるさくてよぉ。よく2人であいつの悪口言い合ったよな」



「ですね」



ダメだ。



「夏皆んなで海行ったときもよ、お前の貧相な体と美偉の体比べてイジったら、顔真っ赤にして怒りまくってたな。あの後やった花火で俺に向かって火花ぶっ放してきた時は、マジでヤバい奴だと思ったぜ」



「あはは、まあ」



泣くな。


557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:32:23.04 ID:z9MlvUfY0



「一端覧祭の時は、一位の野郎と組んでバンドやらされたな。あんなに空気の悪りぃライブ初めてだったぞ。あいつと音楽の趣味も全く合わねぇし。ニルバーナが好きなんて、信じられねぇよ。お前の頼みだからやったんだぜアレ」



「うん」



甘えるな。



「クリスマスの日には、カブトムシと一緒に学園都市中のガキにプレゼント配ってたよな。あれは恥ずかったぜ。サンタの代わりに天使が来たとかそこら中に言いふらされてよ。あ、そうそう。最後にお前にマフラー渡したら、満更でもねぇ顔してたな。あの時のお前の顔、中々見ものだったぜ」



「……うん」



ダメだ。ダメだ。ダメだ。



「入って一年も経てば後輩も出来るし、ようやく一番下っ端から抜け出せたと喜んだもんだ。どいつもこいつも、学園都市2位を顎で使いやがって。中でも1番こき使ってやがったのは、お前だけどな。負い目に漬け込みやがって。腹黒い野郎だ」



「ちょっと」



「でも、悪くなかったぜ。初めて俺に、まともな居場所が出来たたんだ。背負った罪は一生消えねぇけど、それでも少しずつ、削ぎ落としながら進むつもりだ。初春。本当に」



「ねぇ」


558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:34:53.95 ID:z9MlvUfY0



彼はそこで、言葉を失った。目の前で笑顔を保っている彼女の瞳から、大粒の涙が溢れていたからだ。



「止めて…………」



初春はもう、耐え切れず、手にした花束の影に顔を隠してひたすら涙を零す。



「初春……?」



彼は口を開け、彼女をただ見つめる。



そしてあることが、頭によぎった。


559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:36:22.50 ID:z9MlvUfY0



「違うの……何も、出来なかった。こんなの、貰う資格なんてない……私は、あなたを救えなかったの……だから、止めて…………」



初春はそこではっとしたように顔を上げ、涙を拭き取り、また顔に笑顔を灯す。だが、一度流れ落ちた涙は決して止まらず、頬を伝うのを止めようとしない。



「あ、アハハ。何、言ってんでしょう私。垣根さんが言うように、ちょっとボケて来ちゃったのかなー? ハハハハハハ」



「……お前、ひょっとして」



「さあ、もう帰りましょうよ! この花どうしましょっか? んー、風紀委員の本部に飾るのは邪魔かなあ? じゃあ、寮の部屋にでも、飾ろっ、かなあ……」



何度も瞳を擦り、涙を拭き取ろうとするが、その度にまた溢れ出す涙に、初春は逆らう気力を失くしつつあった。


560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:39:06.29 ID:z9MlvUfY0



「えへへ。垣根さん。ありがとう。私、大事に」



それでも何とか笑いながら、彼に礼を言おうとしたが、言い終わるよりも先に彼は初春を抱きしめていた。花束が花弁を散らしながら、地べたに落ちる。



「へ? あの、垣根さん?」



彼は強く、初春を抱く腕に力を込める。彼女の体に、何度も肌に触れたあの感触がよみがえる。彼は右手で彼女の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと話し出す。



「そっちじゃ、俺はもういないのか?」



その言葉に、初春は腹が痙攣した。それでも彼女はまだ、自分の意思を貫こうとする。


561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:40:16.07 ID:z9MlvUfY0



「な、何言ってるんですか? そっちて、垣根さんもちょっと疲れて」



「ごまかすんじゃねぇよ」



彼の声は低く、暖かく、初春の鼓膜を満たす。



初春はそこで反逆の意思に、決定的な亀裂が走ったのを感じた。



「俺も世界改変をやった身だ。大体分かる。答えてくれ。そっちじゃ、俺はもう居ないのか?」



意思が儚く崩れ落ちていく音が、自分の口から嗚咽に変わって漏れ出すのを初春は感じた。


562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:41:55.12 ID:z9MlvUfY0



「風紀、委員に、誘おうとしたんです。だけど、アレイスターって人に、それで…………」



そこから先は言葉にならなかった。ただ胸元で泣き続ける彼女を、彼は頷きながら、しっかりと抱きしめる。



「そうか。頑張ったんだな。最後まで諦めずに、俺を救おうとしてくれたんだな。初春。ありがとな。本当に」



彼の言葉が、優しい感触で内側に入ってくる度に、それが巡り巡って涙に変わり、瞳から溢れかえってくる。初春はその激情を乗せるようにして、首を勢いよく横に振った。



「結局、何も出来なかった。私はあなたを、どうすることも、だから、あなたにそんなこと言われる資格なんか」



彼は首を、ゆっくりと横に振る。


563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:43:50.74 ID:z9MlvUfY0



「例え俺はもうそっちに居なくても、お前の言葉が、お前の優しさが、俺の心に光を指したのは変わらねぇよ。お前は十分、俺を救ってくれたんだ」



「違う、違うっ」



初春は涙を散らしながら、何度も首を横に振り否定する。



「私じゃない。あなたが、自分に勝っただけなの。だから、違うの。そんな優しいこと、言わないで……」



「俺はそんなに強くねぇよ」



彼は囁く。



「俺にそんな力があるなら、それはお前から貰ったもんだ。ずっと、自分の弱さにムカついてた。俺がこの世界でこうしてられるのも、お前が側に、居てくれたからなんだよ」



彼は初春の頬を伝う涙を指で拭き取り、その頬を掌で包む。彼女は顔を上げた。


564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:45:35.28 ID:z9MlvUfY0



「だから、そんな顔すんな」



彼は笑う。一点の曇りのない笑顔で。



「俺はもう、大丈夫だ」



その笑顔を見た初春は、何かを言おうとして、そして、大声を上げて泣いた。自分の存在は、確かに彼の中で花開いていた。そのことが分かった今、彼女は何も包み隠すことなく、ただ涙を流し続けた。彼はそんな彼女の頭を、優しく撫でていた。






一秒、一瞬、一目でも、この笑顔を見れてよかった。






私たちはこんなにも、分かり会えたんだ。





565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:48:12.63 ID:z9MlvUfY0



「グェッ?!」



突如、自分を抱きしめていた彼がバランスを崩して前に倒れてきた。初春は咄嗟に彼から離れ、彼はただ1人地べたに倒れ落ちる。



「全く。気になって来てみれば、よくもまあ初春に熱い抱擁をしやがりましたわね。このペ天使」



そこに居たのは黒子と、彼女のテレポートで同伴してやって来た固法だった。黒子が彼の後頭部にドロップキックをかましたたのだ。2人とも2年経って、少し体が大きくなっていると初春は感じた。



「初春さん! どうしたの? 泣いてるじゃない! 帝督に何か言われたの?」



固法は急いでテッシュを取り出し、初春の目元を拭く。初春は戸惑いつつ、為すがままでそれを受け入れた。


566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:49:39.47 ID:z9MlvUfY0



「どう言うことですの? 説明によっては磔にしてやりますわよ」



「やってみろよ雑魚が。よくもやりやがったな。いつまでもナメていられると思ったら大間違いだぞ白黒」



彼は後頭部を摩りながら立ち上がり、怒りのオーラを周囲に発散する。だが、横から固法に耳を抓られ、その怒気は一瞬で消滅した。



「帝督? 説明しなさい。あなた一体初春さんに何言ったの?」



「イテテッ! ちょ、止めろ美偉。何も言ってねぇよ! だろ初春!? 説明してやれ!」



彼の懇願に、初春はプッと吹き出し、したり顔で固法に言った。


567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 23:51:04.68 ID:z9MlvUfY0



「とっても、とっても酷いことしました。死ぬかと思った」



彼の顔から血の気が引いた。



「ちょ、初春、おま」



彼の言葉は、今度は顔面に直撃した黒子のドロップキックにより遮られた。



「やっぱりそうですのねこのペ天使があああああああああッ!!! 私のパートナーを痛ぶった罪、覚悟するんですのォッ!!!」



黒子に足蹴にされる彼と、それを見つめてため息を吐く固法。そんな光景を眺めながら、初春は心の底から笑った。その瞳からまた一筋、涙が垂れ落ちた。



そこから少し離れた、遊歩道の柵にもたれていた垣根は、耳に入ってくるそのやり取りを聞き静かに笑った。



空を見上げると、茜に混じった薄い紫色の向こうに、透明な月が輝いていた。


568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 18:52:08.45 ID:3RpTEa7NO



…………………………。



12月の太陽は、死んだ動物の皮膚のような温度を街中に放っている。彼はその空気の中を当て所なく歩きながら、そんなことを思った。



(まさか、この世界でもあいつらと共にいるとはな。とんだ縁を用意してくれたもんだ。魔神の力って奴はよ。ムカつくなクソったれ)



彼女の凄惨な裏切りから逃れる為、彼は2度目の世界改変を行なった。



それは、彼女と合わなかったという前提の世界だった。その世界で彼は、スクールの面々を引き連れ学園都市の闇に戦いを挑んでいた。



思いがけずまた、彼らと行動を共にすることになった彼の胸中には、逃れられない自分の業というものを感じた。


569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 18:53:29.61 ID:3RpTEa7NO



(なあに。前とは違う。あいつらとも上手くやって、今度こそ俺はこの街をあるべき姿に戻してやるさ)



彼は自信のある笑みを浮かべた。



しかし、その表情はすぐに崩れ、代わりに虚しさを顔に浮かべた彼はその場に立ち止まった。人の往来が、自分の左右を満たしていく。



彼の脳内に、彼女に裏切られた時に堪らず発した言葉が蘇る。



(俺が本当に望んだのは……何だ? 俺は何がしたかったんだ。この街を正して、俺のような奴を生み出さないようにすることじゃ……)



彼の自分自身への確認は、空風のように胸の内を通り過ぎていくだけだ。


570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 18:56:05.54 ID:3RpTEa7NO



(ホント、ムカつくな。ああ。分かってんだよ。俺はただ、自分を変えたかっただけなんだ)



彼は自覚していた。幼い頃に絡みついてきた人間の残酷さ、非情さ、どうしようもなく汚れた闇が、いつの間にか自分の中にも同じような闇を作り上げていた。



(分かってんだよ。こんな奴が、幸せになれるわけがねぇってことくらい。それなのに、俺はどうしても俺を認めることができねぇんだ)



元の世界で、自分が引き起こしてきた様々な血染めの惨劇が頭に再生される。その度に彼は、自分を正当化し続け弱さから目を背けてきたのだ。



その末に手に入れた魔神の力。これでやっと、彼は自分が変われると思った。過去に根付いた闇をなかったことにさえすれば、自分は本当の存在に生まれ変われる気がした。


571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 18:59:02.35 ID:3RpTEa7NO



だが、何度世界を変えても、前提を変えても、自分の記憶を、感情までも塗り潰すことはできない。



掴みかけていた答えが、敢え無く散っていく幻想だったことに彼は気づき、その空漠を紛らわすためこうして彷徨くことになった。



彼はまた、歩き出す。



(どうするつもりだ。こうしてブラブラしてても、何の解決にもならねぇってのに)



彼は自分にまた問いかける。答えも出ぬまま歩き続けていると、とあるカフェのオープンテラスに差し掛かり、そこで見覚えのある人影を見つけた。


572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:00:30.97 ID:3RpTEa7NO



(あのガキ、確か…………)



それは、かつての世界で自分が殺そうとしていた花飾りの少女だった。



彼女は自分の手で死の淵に追い込まれても、己の信念を曲げようとはしない強い女性だった。



そして自分はその直後、一方通行との戦いに敗れたのだ。だから自分が手をかけてきた人間の中でも、一際印象に残っていた。



(こいつもまた縁なのか? 魔神様よ)



自分は結局、彼女を救うことも、自分を救うことすらもできなかった。



その業が、今度はこの花飾りの少女に、償いを求めているとでもいうのか。


573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:02:13.71 ID:3RpTEa7NO



気づけば彼はカフェの中に入り、彼女に近づこうとしていた。彼女は立ち上がり、ここから去ろうと振り返った瞬間、彼とぶつかる。



「うおっ」



「ひゃ、あ、すみません」



その衝撃で、鞄の中の荷物が地面に盛大に散らばった。



「あ、あわわ。ごめんなさい」



慌てふためく彼女を見て、彼は内心笑い、2人してしゃがみこみ荷物を拾い始めた。彼はその時、1つの黒いUSBを見つけ、それをそっとくすねた。


574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:03:47.38 ID:3RpTEa7NO



「おい。ホレ」



「あ、ありがー」



ついでに見つけたピンク色の巾着も彼女に渡す。セクハラかもしれないが、自分の顔立ちなら許されるだろう。彼は自然にそう思った。



「ちょ」



彼女は素早くそれを受け取り、顔を俯かせながら警戒した瞳で彼を睨む。



「おいおいお嬢さん。悪気はねぇって。白昼堂々セクハラするほど飢えてねぇよ」



彼は冗談交じりの弁明をするが、彼女の表情は和らぐことはない。だが直後に、警戒とは違う何とも言えない顔をした。自分のことを覚えているのか? それはないだろ。彼は思い直した。


575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:05:43.16 ID:3RpTEa7NO



「悪かったって。あんまジロジロ見るなよ。何だ? 通報でもする気か? そういやその腕の腕章……」



「へ? あ、いや、そういうわけじゃないんです。まあ、周りを見てなかった私も悪いですし、それじゃあ」



彼女は立ち上がり頭を下げ、去ろうとしたが、立ち止まって振り返り、ゆっくりと彼に問いかけてきた。



「……あの、名前は?」



「帝督。垣根帝督だ」



彼ははっきりと答えた。



「……そう、ですか」



「何だ? 聞いただけか?」



「いや、その……それでは」


576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:36:18.15 ID:3RpTEa7NO
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:40:31.37 ID:3RpTEa7NO




彼女はその答えに満足したのか、その場を離れていった。彼は彼女が座っていた席に座り、メニューを開いて卓上に置いた後、くすねたUSBを見つめる。



(……何、バカなことやってんだろうな)



自分はまた、幻想に縋ろうとしている。そもそも、彼女は自分のことなど覚えていないだろう。一体どうしてこんなことをしたのか、彼は甚だ疑問に思った。



ふと、記憶の奥底から声がした。それは自分が学園都市に来る前。孤児院に居た頃に教師から聞いた言葉だった。






(いい? 誰かを想う心さえあれば、どんな時でも希望は消えないの)





578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:45:02.22 ID:/h5vBD7I0



彼はUSBを、ギュッと握りしめた。



(くだらねぇ)



記憶の奥底からの声を、彼は一蹴した。



(これは断じてそういうつもりじゃねぇ。そうだ。あいつは風紀委員なんだろ? じゃあ、この街の闇の正体を知らせれば黙っちゃいないはずだ)



彼は右目の虹彩を黄金に染め、魔神の力を使用し、彼女の過去に軽く干渉した。



(名前は、初春飾利。オイオイ。学園都市有数の凄腕ハッカーじゃねぇか。こいつは使えるな。初春。お前のその正義は、俺たちの目的の為に役立たせてもらうぜ)



少し、彼女を側で見てみたくなった。殺されようとしても尚曲げながった、風紀委員としての意思の強さ。結果的にそれは、スクールの活動にも役立ってくれるだろう。



彼はUSBを懐にしまい、静かに笑った。


579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:46:49.83 ID:/h5vBD7I0





もう一度やり直そう。





垣根帝督は、己にそう誓った。





580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:49:11.74 ID:/h5vBD7I0










とある魔術の禁書目録SS 白垣根「花と虫」








ー完ー









581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/29(木) 19:51:49.42 ID:/h5vBD7I0
以上で、垣根帝督と初春飾利の物語は終了です。時々レスをくれた方々、本当にありがとうございました!



新約6巻で白垣根が登場した時から、いつかこいつを初春と元の垣根と絡ませるSSを書きたいと思っていました。そうこうしていると、元垣根が船の墓場でバレーボールになったりオティヌスが世界をぶっ壊したり、フィアンマがラリアットで吹っ飛ばされたりと色んなことがありました。



しかし、このパーツから何か新しいモノを作れそうだと思い、色々考えた末にようやく去年から執筆に取り掛かることができました。原案では僧正や上里や美琴を絡ませようとしたこともあります。でも、最終的にこの形に落ち着くことになりました。



僕の中では、白垣根が「今生きる理由」を作ってくれたのがフレメアと打ち止めの2人だと思っています。なので、初春は白垣根の「垣根帝督としての過去」を救ってくれた存在として描いたつもりです。



至らぬ所は沢山あると思います。こんなSSでも見てくれる誰かがいると思うと、感謝の気持ちでいっぱいです。



ラストはELLEGARDENの「花」を聞きながら一気に書き上げました。もしよければこの曲を聞きながらもう一度ラストシーンを読んでみてください。



それでは、ここで筆を下ろさせていただきます。もう一度、本当にありがとうございました!
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 01:06:50.07 ID:MxWPeaHBo
乙!
一年近く掛かったんだな・・・
途中からだったけど、楽しみに読ませてもらったぜ
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 13:12:16.39 ID:Z0Y1j9u5O
>582 感想ありがとうございます! 楽しんで頂けたのなら幸いです。
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