うしおとセイバー

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471 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 01:21:56.11 ID:KUnV8ew50


・蒼月家居間


うしお「…………」

凛「うしおくん、立ってないで座ったら?」

うしお「え? あ、あぁ……」

凛「そんなにセイバーが心配?」

うしお「そりゃまぁね」

凛「そっか。うしおくんとセイバーは魔術の繋がりがないから不安になるわよね」

うしお「あぁ、でもセイバーが強いのは知ってるさ、それでもさ」

凛「大丈夫よ。私ととらは繋がってるから分かるの。戦闘にはなってないわ」

うしお「ってことは逃げられたのかな?」

凛「どうかしら。帰ってきたみたいだから直接聞きましょ」

472 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 01:29:36.93 ID:KUnV8ew50


とら「けっ、面白くねえぜ」

凛「どうだったの?」

とら「それが分からねえのよ。あの逃げ足の速さなら槍使いか、それとも……」


うしお「とら、セイバーはどこにいるんだ?」


とら「剣使い? わしが知るかよ」

凛「は……?」

とら「臭いが途中で分かれて二手になったからな」

凛「なっ……。それじゃセイバーは今一人で……」


うしお「セイバー…………」

ダッダッダッ


凛「ちょ、うしおくん……!?」

とら「なんだよ、剣使い帰ってねえのか」

凛「とらァ!! なんでセイバーと一緒に行動してないのよ!!」

とら「こっちも事情があったのよ仕方ねーだろ!!」

凛「このアホとら……。さっさと追いかける!!」

とら「はあ!? なあんでわしが」

凛「令呪をもって命ず」

とら「ば、馬鹿やめろ!! 分かった、分かったよォ!!」

473 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 01:35:59.22 ID:KUnV8ew50


・海浜公園


セイバー「…………」


??「どうしたセイバー」


セイバー「…………」


??「我(オレ)がわざわざ出向いてやったのだ。いつまでも黙っているのは無礼であろう」


セイバー「…………」ダダッ


??「山のなかに逃げ込んだか。身を隠すつもり……いや……」


??「ほう、抜け道か」

474 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 01:40:03.60 ID:KUnV8ew50


・海浜公園上空


とら「ちっ、なあんでわしがこんなこと……」


うしお「とら!! しっかり飛んでくれよ!!」

とら「分かっとるわい!!」


うしお「セイバー、どこだ……」


うしお「あっ!!」

475 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 01:49:32.28 ID:KUnV8ew50


・高台


??「フフ、逃げ込んだ先が行き止まりか。つくづく運のない女だなセイバー」

セイバー「……それは、どうかな」

??「ほう、まだ無駄な足掻きを続ける気か?」

セイバー「無駄などない。これまでの日々も、そして今日という日も」

??「なに……?」


うしお「セイバァァーー!!」

とら「なんだよ剣使い遊んでやがったのか。わしも混ぜなァァ!!」


セイバー「ウシオ!! トラ!!」


うしお「セイバー、大丈夫なのか!?」

セイバー「はい。ウシオならここで私を見つけてくれると思ってました」

セイバー「ここは貴方のとっておきですから」

うしお「へへっ、あぁそうだぜ」

476 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 02:03:44.82 ID:KUnV8ew50


??「ここがマスターとの合流地点だったわけか」

??「いいぞ。男を誘い込むとは、女としての自覚が出てきたかセイバー」


うしお「コイツは……キャスターのときの……」

とら「金色野郎……!!」


??「これで、小僧と獣を足して三対一の形は出来たわけだ」

??「それでどうするセイバー。我と戦うか、この場で」


セイバー「それは……」

うしお「ちょっと待ってくれよ。戦うとか、その前にさ!!」

??「どうした小僧」

うしお「教えてくれよ、お前はいったい誰なんだ!?」

うしお「いや、それよりも一番聞きたいことがあるんだ」


うしお「お前が持ってる獣の槍はなんなんだ!!」


??「獣の槍、か……。ククッ……フフ、ハァーハッハッハッ!!」


うしお「っ……!?」

477 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 02:15:04.20 ID:KUnV8ew50


??「小僧、貴様は獣の槍がどう創られたか知っているな?」

うしお「あ、あぁ、知ってるよ。いや、この目で見たよ」

??「ならば槍を打った鍛冶師、その人間はどこでその製法を知った?」

とら「なんでえ、なんの話だよおい」

うしお「とら、オレは覚えてるよ。ギリョウさんとおじさんの話を」


うしお「ギリョウさんは、干将と莫耶っていう名剣の話をおじさんにしたんだ」

うしお「それでおじさんはおばさんの髪を使って、神剣を造った。でもそれは折れちまった……」

うしお「だからギリョウさんは、もうあの方法しかないって……」

うしお「暗黒の邪法、人身御供で造られた大鐘の話さ。それを造剣の師匠から聞いたって言ってた」

うしお「でも、それが何だっていうんだ……?」


??「そうか。では獣の槍の元を辿れば、その名剣や大鐘になるわけだ」

セイバー「元を、辿る……?」

??「そうだセイバー。どんな宝具も元を辿っていけば『原典』に辿りつく」

セイバー「原典だと……」


??「伝説や逸話には必ず原典が存在する。それは獣の槍も例外ではない」


うしお「それじゃお前が持ってる槍は、オレたちが知ってる獣の槍じゃなく……」

とら「獣の槍の、原典の槍とでもいうつもりかよ……!!」

478 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 02:24:08.97 ID:KUnV8ew50


セイバー「馬鹿な……。宝具の原典を持つ英雄など、いるはずが……」

??「それは早計だなセイバー」

??「最も古い時代、まだ世界が一つだったころ、全ての財はたった一人の王の物だったではないか」

セイバー「なっ、そんな、貴方は……」

うしお「セイバー……?」


??「小僧、我が誰かと聞いていたな」

??「現存する英雄の端くれでありながら王の名を知らぬとは、戯けが」


??「知るがいい、我が真名を」


??「我は人類最古の英雄王、ギルガメッシュ」


うしお「英雄、王……!?」

セイバー「ギルガメッシュ……!!」




ギル「覚悟を決めよ。この身は、人間も妖怪も敵うべくもなき英霊よ」



479 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 02:36:49.06 ID:KUnV8ew50


とら「英雄王だかなんだか知らねえが、それがどうしたってんでえ」

とら「おめえはわしの獲物を横取りしやがった」

とら「わしは、その借りを返すだけよォォーー!!」


ギル「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

パチンッ


うしお「なにもない空間から剣や槍が、矢みたいな速さで……!!」

とら「ちぃぃ〜〜〜〜!!!!」

ガスッ!!

とら「ぐはっ!!」

セイバー「トラ!! 無事ですか!!」

とら「わしがこんなもんでくたばるか……こんな……な、なんだァ!?」

セイバー「これは……」

セイバー「トラに刺さった剣が、形状を変えて地面に同化している……!?」

とら「こいつァ似たようなやつをやられたことがあるぜ……」

とら「黒炎どもが使ってた妖を千年ぬいつける『千年牙』と同じやつかよ……!!」


ギル「これで分かったか獣よ。古今東西、対妖怪の宝具など幾らでもある」


うしお「あ、あぁ……。空一面に武具が……」

セイバー「まさか、これが全て、妖怪のトラに対して有効な宝具……」


ギル「言ったであろう、我は妖怪が敵うはずがない英霊だと」


ギル「クククク……。ハァーハッハッハッハッ!!!!」

480 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 02:52:24.83 ID:KUnV8ew50


とら「くそったれぇぇ〜〜〜〜!!!!」

とら「うしお!! 早くこいつを抜きやがれェ!!」

うしお「よ、よし……!!」


ギル「しかし白面を倒した英霊がこの程度か。まだ『紅煉』のほうが手応えがあったな」


とら「あんなカスと比べるんじゃねぇ……!!」

うしお「紅煉を、知ってる……!?」


ギル「戯れに遊んでやっていたが宿敵に見つかり、我から尻尾を巻いて逃げたがな」


うしお「宿敵……ヒョウさん……。それじゃ……」

セイバー「ギルガメッシュ、やはり貴様は……」


ギル「よい見世物であったぞセイバー」

ギル「白面に対峙する人間と妖怪の連合、その最終決戦はな」


とら「てめえ、あの場にいやがったのか……!!」

481 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 03:04:12.90 ID:KUnV8ew50


うしお「いや、そうだ。おかしい事じゃねえのか」

うしお「凛姉ちゃんの言うとおり、コイツが前回の聖杯戦争から生き残ってるなら……」

セイバー「ウシオとトラたちの最終決戦の場にいてもおかしくはない」

セイバー「だがギルガメッシュ、貴様が『白面の者』と戦ったのか?」


ギル「戦うだと、我があの道化と。戯けたことを抜かすな」

ギル「我が手を下すまでもない、ヤツは王の器ではなかったからな」


セイバー「王の器……」


ギル「いいだろうセイバー」

ギル「貴様も無関係な話ではない。我と白面の話を聞かせてやる」

482 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 03:09:44.42 ID:KUnV8ew50


・最終決戦、北海道上空


白面「かかかかかか!!!!」

白面「美味!! 他者の恐怖とはなんと美味なことか!!!!」


白面「獣の槍は砕け、全ての人と妖は我を恐怖している。くくくっ、もはや我に敵なし」


白面「ここがこの国の北端か。めぼしい所は焼き尽くし、ここまで来てしまったな」


白面「…………」


白面「何だ……。何かが近づいてくる」


白面「あの形状……。しかしこの速さ、自衛隊の戦闘機ではない……」


白面「そして我を恐怖しておらぬ。そのような者がまだこの国にいるのか……?」




「フハハハハハハハハハハ!!!!!!」




白面「何奴…………!?」



483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/09(土) 08:31:42.61 ID:GwP66kVUO
乙ー
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/09(土) 10:42:50.82 ID:8TShVQbsO

白面とAUOはどっちが古いんだろうか
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/09(土) 13:47:50.26 ID:cegWoYW70
世界が形成されたときに陰の気から生まれた白面のほうが設定的に古そうだけど
その白面を[ピーーー]ための槍の原典を英雄王が持ってるってどういうことなんだろ

486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/09(土) 18:30:17.15 ID:rHUxpJY1O
白面が白面として生まれたのはシャガクシャの陰気に触れてだっけ?
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/09(土) 18:54:30.67 ID:1o4ad+6uO
王の財宝は時間軸関係なく増え続ける
488 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 17:58:58.46 ID:RsDFV5Ls0


ギル「貴様が白面の者か」

ギル「この国の怪獣映画というのを見たことがあるが、まるでそれでな」

白面「人間では、ないな。だが妖怪でもない」

白面「一瞬で消滅させる前に聞いておこう、お前は何者だ」

ギル「クク、貴様を恐怖しない我の正体が気になるか、白面よ」

白面「見当はつく。おおかた守護者の類だろうな」

ギル「ほう、守護者を知っているのか」

白面「この国に封じられる前、我の前に幾度となく現れた」


白面「だが……」




白面「全て燃やしてやったがなァア」


ニヤァァ



489 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 18:11:24.86 ID:RsDFV5Ls0


ギル「面白い。我は貴様を気に入ったぞ白面よ」

ギル「特に、その眼にな」

ギル「そうだ。王である我への眼差しはそうでなくてはいけない」


白面「王か……。人間の言葉で国の君主、支配権を持つ者、それらの意味を持つ言葉だ」

白面「くっくっくっ。おかしなことを言うなァ人間でも妖怪でもない者よ」

白面「人間と妖怪の希望は砕け、この国は沈み始めている」

白面「今この国で最も強い者は我だ。ならば我を王と呼ばずなんという?」


ギル「ククッ、やはり貴様は我を愉しましてくれるな」

ギル「いいだろう、貴様の言葉に乗ってやる」

ギル「この小さな国が完全に沈んだとき、我は貴様をこの国の王と認めてやろう」

490 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 18:19:06.02 ID:RsDFV5Ls0


白面「我はこの国に飽いてきていた。ただ一人我を恐怖しない者よ」

白面「ならばこうしよう。この場所は北端、我は今より南下し更に蹂躙する」

白面「今度は人間と妖怪、全てを燃やし尽くして戻ってこよう」

白面「そして最後に残ったお前は、ついには我を恐怖し後悔する。くっくっくっ」

白面「我を王と認めながら上げる断末魔、それがこの国の最後を飾ることになる」


ギル「ククッ、フフ、いいぞ。それでいい。道化はそうでなくてはな」


ギル「だが、そう簡単に行くかな白面よ」


白面「何……」




白面(心なしか、人間どもの恐怖が薄らいできている……?)



491 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 18:22:42.49 ID:RsDFV5Ls0


ギル「白面は行ったか」


ギル「ククク、道化が。貴様は王の器ではない」


ギル「その見上げる眼で王を語るなど嗤わせる」


ギル「そして……」


ギル「貴様を恐怖していない者は、我だけではないようだぞ」


ギル「白面の者よ」






「雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ!!!!!!」





492 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 18:32:11.32 ID:RsDFV5Ls0


うしお「そんなことがあったのか……」

とら「てめえがあの場所にだとォ!!」


ギル「その後、白面は小僧と獣に倒され、我の前に戻ってくることはなかった」

ギル「賭けは我の不戦勝。いや、ヤツが戻ってこれなかったのだから完全なる我の勝ちか」


うしお「ギルガメッシュ、お前が前回の聖杯戦争の生き残りだっていうのは分かったよ」

ギル「そうだ。我は前回からこの世界に残り続けている」

うしお「でも、それならやっぱりおかしいぜ」

うしお「前回の生き残り、聖杯戦争の勝者なら聖杯で望みを叶えたんだろ!?」

うしお「なら今回の聖杯戦争に参加する必要はないじゃないか!!」

ギル「聖杯で望みを……?」


ギル「ククッ、フフ、ハハハハ!!」

ギル「セイバー、貴様、己がマスターに自分が聖杯に何をしたのか語ってないのか!!」


うしお「えっ……?」

セイバー「…………」

493 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 19:01:39.60 ID:RsDFV5Ls0


ギル「前回の聖杯戦争、その女は聖杯を前にして宝具を使い破壊したのだ」

うしお「セイバーがっ!?」

とら「聖杯を手に入れるために、聖杯戦争に参加してるのにかよ」

セイバー「それは……」

ギル「まったく愉しませる女だ」

ギル「その様子では、その聖杯破壊が小僧との繋がりだというのも気付いていないのだろう」

セイバー「な、に……。どういう意味だ……」

ギル「ククッ、いや、話がそれたな。小僧、我は別に今回の聖杯戦争に参加しているワケではない」

ギル「我が関心があるのはセイバーだけだからな」

うしお「セイバーだけ……?」

ギル「我は前回の聖杯戦争で、その女と婚姻することに決めたのだ」

うしお「えぇっ!? こ、婚姻って、結婚だよな……」

とら「なんだよそりゃ……」


セイバー「戯れ言はやめろ英雄王。言ったはずだ、私は誰のモノにもならないと」


セイバー「私は一人の女である前に……」


セイバー「王なのだから!!」



494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/10(日) 21:03:37.00 ID:GyZqHveZO
乙ー
495 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 22:45:51.82 ID:RsDFV5Ls0


ギル「あの聖杯問答を乗り越え、あくまで王を名乗るか」

ギル「ならば貴様のいう王の真髄、その後ろの民を守ってみせろよセイバー」


セイバー「あぁ、望むところだ……!!」


ギル「いい気迫だ。いいだろう、こちらもそれ相応のモノで相手をしてやる」

ギル「この英雄王しか持ちえない、剣でな」


うしお「あれが剣!? いや、本当に剣なのか……?」

とら「おいうしお、わしに刺さったコイツを早く抜きな……」

うしお「とら……?」

とら「この馬鹿が分からねえのかァ!! とんでもねーのが来るってんだよ!!」

うしお「えっ!?」

とら「剣使いっ!!」

セイバー「分かっていますトラ。ですが私は引くわけにはいかない」


ギル「行くぞセイバー」

セイバー「はああああああああ!!!!」


ギル「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!!!」


セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」



496 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 22:59:47.69 ID:RsDFV5Ls0


セイバー「ぐっ……。う、あぁ……!!」


ギル「味気ない。人類最強の剣がこの程度とは、相殺もまともに出来んのか!!」


うしお「そ、そんな……。セイバーの聖剣が、負けちまった……」

とら「当たり前だろうが、剣使いはりんと白いガキから魔力を少しずつ貰ってるだけよ」

とら「そんな状態で満足に宝具が撃てるかよ馬鹿剣使いがァ……」


セイバー「……ウシオ、トラ、私の後ろにいますか……?」


うしお「セイバー大丈夫なのか!?」

とら「もういい剣使い!! わしと代われェ!!」


ギル「ほう、耐えていたか。ククッ、そうでなくてはな」


セイバー「ウシオもトラも、そこにいるのですね……」

うしお「あ、あぁ、セイバーのすぐ後ろ、手の届く距離にいるよ」


セイバー「よかった。ならばそのままで……今までのように……」


セイバー「私を……私の道を、照らしていて下さい」


うしお「セイバー…………」

とら「おめえ…………」

497 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 23:10:39.79 ID:RsDFV5Ls0


セイバー「ギルガメッシュ、勝負はこれからだ……!!」


ギル「立ち上がるかセイバー。国のため、民のため、それが貴様の道か」

ギル「未だ分からないようだな、王にとって国とは己のモノに過ぎないことが」

ギル「そんな事だから騎士王よ、貴様は国によって滅ぼされたのだ」


セイバー「あぁその通りだ。だが英雄王よ、そんな事だから貴様は国を滅ぼしたのだ」


ギル「減らず口を……」

ギル「しかしそこまで言うのなら次も耐えれるな、セイバーよ」


セイバー「…………」


ギル「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!!!」


うしお「セイバァァァァ!!!!」

とら「剣使い…………!!!!」



498 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 23:17:19.30 ID:RsDFV5Ls0




その道を信じている


太陽と月が照らす私の道は


間違ってなかったと信じている


結果は無残でも


その過程に一点の曇りもないのなら


それは……


それこそは……




セイバー「全て遠き理想郷(アヴァロン)!!!!」



499 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 23:29:00.84 ID:RsDFV5Ls0


ギル「な、に…………!?」


とら「こ、こいつァなんだァ!?」

うしお「あのギルガメッシュの攻撃をセイバーが防いでる!?」

うしお「あれもセイバーの聖剣の力なのか……!?」

とら「いや違うぜ、ありゃ剣じゃねえ……!!」


ギル「アヴァロン、何ものにも侵害されぬ究極の護り、それこそが貴様の真の宝具……」

ギル「伝説の聖剣の鞘の力か……!!」


ギル「憎らしい女だ。そうまで我に刃向かうか、それが貴様の答えかセイバー!!!!」


セイバー「あぁそうだギルガメッシュ」


セイバー「貴様のいう王の器ではない、ライダーの語った覇道でもない」


セイバー「だが、これこそが私の理想…………」


セイバー「私の夢…………」




セイバー「私の……王道だ!!!!!!」



500 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 23:34:04.88 ID:RsDFV5Ls0




ギル「世迷言をォォーーーー!!!!」




セイバー「ぐっ…………くぅ…………!!」




パシィッ、ガシッ


うしお「負けるなセイバァァーー!!!!」

とら「そんな野郎に負けるんじゃねえ剣使い!!!!」




セイバー(あぁ……。感じる、私が守りたいもの、その温かさを……)




セイバー「はああああああああ!!!!」


セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」



501 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 23:38:43.44 ID:RsDFV5Ls0




「アーサー王……?」




ああ……


確かに感じる


この木漏れ日の向こうに


貴方たちの温かさを……




「……見ているのですか、アーサー王」




「夢の、続きを…………」



502 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/10(日) 23:50:59.26 ID:RsDFV5Ls0


セイバー「ハァ、ハァ…………」


うしお「セイバー大丈夫か!?」

セイバー「はい、なんとか……」

とら「あの金色野郎をやったのかよ?」

セイバー「いえ、逃げられました」

セイバー「おそらくギルガメッシュのあの宝具は大量の魔力を消費するのでしょう」

うしお「そうか、魔力が低下したからとらに刺さった剣も消えたのか」

とら「けっ……!!」

とら「おい剣使い、わしは借りだなんて思っとらんからな!!」


セイバー「いや、借りが出来たのは私のほうだ」


とら「ああ?」

うしお「セイバー?」




セイバー(やっと見つけた、私の答え……)




セイバー「帰りましょう。ウシオ、トラ」

うしお「あぁそうだな」




セイバー(貴方たちのおかげだ)




セイバー「お腹が空きました」

とら「ったく、おめえはいつもそれだな」

セイバー「む……。トラに言われたくはない!!」

とら「ああ!? やんのかァ!?」

うしお「もう夜中だぞ静かにしろい!!」




セイバー(ウシオ、トラ、ありがとう)



503 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/11(月) 01:30:20.96 ID:/g5sbq6g0


・潮の部屋


うしお「白面とギルガメッシュ、か……」


うしお「なんだか眠れねえなァ」


うしお「あれ……」


うしお「セイバー……?」



504 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/11(月) 01:36:42.30 ID:/g5sbq6g0


・蒼月家蔵


うしお「セイバーも眠れねえのかな」


うしお「でも、だからってこんな夜中に蔵の整理なんか……」


うしお「おーい、セイバー」


うしお「蔵の整理を頼んだのはオレだけどよ、なにもこんな、あれ……?」



505 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/11(月) 01:44:00.94 ID:/g5sbq6g0


・蔵地下室


うしお「なんだセイバー、ここにいたのかい」

うしお「ここには何もねえぜ。いや、それよりもう遅いし」




セイバー「問おう、貴方が私のマスターか」




うしお「えっ……?」




セイバー「問おう、貴方が、私のマスターか」




うしお「…………」




うしお「……うわああああ!!」


うしお「なんだなんだ姉ちゃんなんだ!?」



506 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/11(月) 01:55:37.40 ID:/g5sbq6g0


セイバー「やれやれ、前回は無口な男だったが今回は騒がしい少年か」

セイバー「だが、サーヴァントセイバー、召喚に従い参上した」


うしお「サーヴァント、セイバー……」


セイバー「我が真名はアルトリア・ペンドラゴン」

セイバー「問おう、我がマスターの名を」


うしお「オレの名前は、蒼月潮さ!!」


セイバー「ウシオ、これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある」

うしお「運命か……。負けたくねえぜ、オレは」

セイバー「この聖剣に誓って、我は貴方の勝利を約束する」


セイバー「ここに、真の契約は完了した」




セイバー「…………」

うしお「…………」




セイバー「フフ……」

うしお「ふ、ふふ……」


うしお「あはははははは!!!!」



507 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/11(月) 02:05:47.38 ID:/g5sbq6g0


うしお「はははっ、どうしたんだよセイバー、急にこんなこと」

セイバー「フフ、すみませんウシオ。貴方が私の後ろについて来ていたのに気づいて、つい」

うしお「いやいや、いいんだけどさ。昔とらと似たようなことやったしよ」

セイバー「トラと……。なるほど、ここはそういう場所なのかもしれませんね」

うしお「でも、なんで……」

セイバー「あの日、ランサーの襲撃がなければこうなる予定だったのです」

うしお「そうか、あのときは大変だったもんなァ」

セイバー「それに……。貴方には知っておいてもらいたかった、私の真名を」

うしお「真名、セイバーの本当の名前……」

セイバー「はい」

うしお「アルトリア・ペンドラゴン……。アルトリアかァ……うん……」


うしお「いい名前だな、アルトリア!!」

セイバー「っ……」


セイバー(まったく、確かにこれではアサコも怒るわけだ……)



508 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/11(月) 02:10:22.21 ID:/g5sbq6g0


うしお「それじゃ今度からはアルトリアって呼んだほうがいいのかい?」


セイバー「……いえ、残りサーヴァントが少ないとはいえ、それは敵に正体を晒すことになります」

セイバー「それにアルトリアは過去の人間、自分の信じる王道を貫いて死んでいった王の名前です」


セイバー「今の私は貴方の剣、セイバーです」


うしお「そうか、そうだな。それじゃセイバー、これからもよろしく頼むぜ!!」


セイバー「はい、ウシオ」



509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/11(月) 03:49:58.42 ID:Z+E74Wm2O
乙ー
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 12:22:55.26 ID:kYDXkAXMO
良いシーンだ
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/12(火) 10:40:02.21 ID:TcxiXPmnO
藤田絵のセイバーは割りと想像しやすいな
エレオノールっぽい感じ

癖があるようで案外藤田センセの絵って他作品との親和性高いんだよね どう想像しても藤田絵は藤田絵なんだけど
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/12(火) 19:08:14.36 ID:4KRxK5N4O
藤田絵で見たいなぁ、藤田絵のうまい絵師で誰か描いてくれんかね
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/13(水) 00:31:30.10 ID:tyyG7Q70O
続きが楽しみ
514 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/28(木) 21:37:28.70 ID:nyPr54ua0


【第二十二話 遠景『最後の令呪』 】

515 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/28(木) 21:49:36.42 ID:nyPr54ua0


・蒼月家縁側


凛『前回の聖杯戦争の生き残り、英雄王ギルガメッシュか……』

凛『今回参加するつもりはないって言われても、あんな手出しされたら参加してるのと一緒よ』

凛『対策が必要ね……。そういえば前回の戦いなら私の家に少しは資料が残ってるかも』

凛『協会の機密があるからって、綺礼にほとんど処分されちゃって期待出来ないけど……』

凛『うしおくん、ちょっと私は家をかき回してみるわ』


うしお「そう言って凛姉ちゃんは出て行ったけど、とらは一緒に行かなくていいのか?」

とら「おめえが昨日みたいに飛び出さないようにとり憑いたように見張ってろってよ」

うしお「へっへっへ、返す言葉もごぜーません」

うしお「あ、でもサーヴァントなしで凛姉ちゃんの護衛はどうしてるんだ?」

とら「剣使いがついて行ったのよ。そもそも家捜しなんてのはわしよりアイツ向きだしな」

うしお「まぁ確かにそうか、とらよりは」

とら「それに前にりんが家を綺麗にしろとか言いやがるから炎で色々燃やしたら怒ってよォ」

とら「あれ以来、家に入れてくれねーのよ」

うしお「凛姉ちゃん……」

516 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/28(木) 22:00:22.17 ID:nyPr54ua0


うしお「でもいいのかなァ」

とら「何がだよ?」

うしお「これじゃまるでサーヴァントを交換してるみたいじゃないか」

うしお「聖杯戦争のルール的に大丈夫なのかなァ」

とら「こいつアホウかよ!! 今さら聖杯戦争の決まりごとなんて気にしてんのか!?」

うしお「なにをとらァ!!」

うしお「人間はなァ!! ルールを守って、ルールを……」


うしお「それだっ!!」


とら「ああ?」

うしお「なんで気付かなかったんだ。そうだよ、聖杯戦争にはルールがあるじゃないか!!」

とら「なんの話だ?」

うしお「聖杯戦争の監督役、教会の言峰神父さ。あの人に言えばよかったんだよ」

うしお「今回の聖杯戦争に前回のサーヴァントが参加してる、八人目のルール違反がいるってよ」

うしお「ギルガメッシュみたいなのがいたらまともに戦えないだろ、そうなれば聖杯戦争は中止さ!!」

うしお「中止になればランサーのマスターだって戦うのをやめる、妙案だぜ!!」

とら「けっ、そんなに上手くいくかねえ」

517 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/28(木) 22:17:13.90 ID:nyPr54ua0


うしお「とにかくオレは言峰神父にギルガメッシュのことを報告に行くぜ」

とら「おい待ちなうしお。せめてりんが帰ってきてからに……」

うしお「凛姉ちゃんやセイバーだって頑張ってるんだ、負けてられねえさ」

うしお「とら、凛姉ちゃんが帰ってきたらオレは教会に行ったって言ってくれよ!!」


タッタッタッ


とら「ちっ、うーつけ者がなにを言ってやがる」


うしお「とら!?」


とら「わしはりんにおめえを見張ってろって言われたのよ」

とら「とり憑いたようになァ!!」


うしお「へっ…………」

うしお「好きにしろォ!!」



518 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/28(木) 22:37:29.04 ID:nyPr54ua0


・言峰教会


うしお「おーい、言峰神父さーん。いないのかーい?」


うしお「とら、何か分かるか?」

とら「人間の気配はしねえな」

うしお「留守か……。教会の扉は開いてたけど不用心だなァ」

とら「おめえのトコも似たようなもんだろうが」

うしお「うっ……。ウチは大丈夫だろ、照道さんもいるし……ん?」


うしお「へぇ、教会ってここから奥に入れるんだなァ」


とら「おい、入っていっていいのかよ」

うしお「今回は緊急事態さ」

うしお「早く言峰神父にギルガメッシュのことを伝えて、聖杯戦争を中止にしてもらいたいからな」

とら「けっ、いつもわしに勝手に行動するなとか言っといてこれだぜ」


うしお「言峰神父、本当にいないのかーい?」

519 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/28(木) 22:54:30.40 ID:nyPr54ua0


・中庭


うしお「ひゃー、とら見てみろよ。シャレてるぜ〜〜」

とら「なぁうしお。もういいだろ帰ろうぜ」

うしお「ウチとは大違いだ。こんな中庭があったらスケッチするんだけどなァ」


とら「なぁなぁうしお帰ろうぜ。なーなー、なーなー、なぁってばよォ」


うしお「だーーっ!! うるせーぞとらァ!!」

うしお「今オレは脳内スケッチをだなァ!!」


とら「だってよー、なんかわしここ嫌いなんだよ」

うしお「そりゃ教会が好きな妖なんて聞いたことねえけどさ」

とら「そういう意味じゃねえよ。教会で吸血鬼ブッ倒したわしがそんなもん気にするかよ」

うしお「それじゃ……」

とら「臭いがな、他と違うのよ。何かありそうだぜ、ここは」

うしお「この教会に……?」

うしお「ははっ、とら考えすぎじゃないのか? 言峰神父は凛姉ちゃんの後見人だぜ?」

520 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/28(木) 23:14:35.21 ID:nyPr54ua0


うしお「いいからコッチに来てみろよ、中庭がキレイだぜ」


とら「相変わらずニブイよなァ…………ッテェ!!」

とら「なんだァ!? (※)ぎやまんかっ!?」

(※)ガラスの古い呼び名


うしお「とら……?」

とら「おめえどうやってそこに入ったんだよっ!!」

うしお「なに言ってんだとら、オレは普通に……」


とら「うしお後ろだ!!!!」


うしお「ッ……!?」




「チッ、まーた外したか」




とら「おめえは…………!!!!」

うしお「ランサー…………!!!!」




ランサー「よォ坊主。久しぶりだな」



521 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/29(金) 00:30:10.61 ID:DWUWs5GH0


とら「てめえか槍使い、こんなチンケな罠ァ張りやがったのはァ!!」

ランサー「おいおい人聞きが悪いな。オレがそんなトラップ仕掛けて気長に待つと思うか?」

ランサー「ここは教会だぜ。妖のための結界なんて腐るほどある。それをちょっと借りただけさ」

ランサー「だが……ハッ、こんなに上手く分断出来るとは思ってなかったがな。雷獣さんよ」

とら「ちぃ〜〜〜〜」


うしお(コイツは槍を使うサーヴァント、ランサー……)

うしお(キリオから聞いた赤い槍の男、オレがこの聖杯戦争で初めて戦った相手だ……)


ランサー「そんなに身構えるなよ坊主。あのとき殺しかけたことを根に持ってんのか?」

うしお「それもあるさ。それよりこの教会、聖杯戦争では不可侵だってオレは聞いてるぜ」

ランサー「そんなルールもあったかもな」

うしお「それじゃ……!!」

ランサー「だから戦いは止めましょうってか。坊主、忘れてるみてえだな」

ランサー「オレたちがやってんのは何でもありの戦争、聖杯戦争なんだぜ?」

うしお「……本当は分かってたさ」

うしお「ルール違反なんてない。この戦いを終わらせるには勝つしかねえんだろ」

ランサー「そういうことだ坊主」

522 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/29(金) 00:46:07.33 ID:DWUWs5GH0


ランサー「さてと、そろそろ始めるか。坊主、早く出しな」

うしお「えっ、なにを……?」


とら「タコがっ!! 槍だよ!!」

とら「早くわしの宝具、獣の槍を呼べってんだよ!!」


うしお「で、でも、凛姉ちゃんの許可なしに宝具を使うなんて……」

とら「馬ッ鹿ヤロウ!! そいつは槍なしのおめえが敵う相手じゃねえ……!!」

とら「そいつと戦ったことがあるならおめえも分かってんだろうが、うしお!!」

うしお「それは…………」


ランサー「いいぜ。待っててやるよ」

ランサー「というより、オレはそれを期待してるんだがな」




うしお「…………槍よ」




うしお「来い!!!!」




パシィッ!!




ランサー「そうこないとな」



523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/29(金) 08:59:45.25 ID:+su5Rn0bO
乙ー
524 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 01:09:43.97 ID:hUnlMYrV0


うしお「…………」


ランサー「へぇ、本当に噂通り髪が伸びるんだな」


うしお「噂……?」


ランサー「あぁ。坊主、お前がセイバーを召喚したあの日の夜を覚えてるよな?」

ランサー「あのときは驚かされたぜ。オレの槍を何度も避けるんだからな」

ランサー「それもあってお前を調べたんだ。そうしたら面白い話が山ほど出てくるじゃねえか」


ランサー「獣の槍……白面の者……。もちろんあそこの雷獣も含めてな」


ランサー「あんな決戦をくぐり抜けた英雄が槍兵で、しかも現存しているときてる」

ランサー「そしてこの聖杯戦争でも、その槍を手にあのバーサーカーを倒した」

ランサー「そんな話を聞いたらよ……」

ランサー「同じく槍を使う者としては戦ってみたいと思うのが自然だよなァ」


ランサー「お前もそう思うだろ?」


ランサー「獣の槍の使い手、蒼月潮もよ」

525 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 01:18:32.74 ID:hUnlMYrV0


うしお「……オレもセイバーからお前の正体を聞いてるよ」




セイバー『ランサーの正体は、クー・フーリンです。間違いありません』

凛『アイルランド神話の……。そっか、まぁあんな槍の使い手、他にはいないわよね……』


うしお『食う風鈴……』


うしお『遠坂先輩、アイルランドには食える風鈴があるのか!?』


セイバー『え…………』


凛『……蒼月くん、この前の世界史のテスト、何点だったのよ』


うしお『い、いやァ、人に言える点数じゃねえかな』


セイバー『リン、これは…………』

凛『ダメみたいね』




うしお「お、お前は外国のすげえ槍の使い手なんだろ……!!」


ランサー「えらく大雑把な覚えられ方だな……」



526 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 01:31:25.41 ID:hUnlMYrV0


ランサー「こっちもセイバーには必殺の槍を見せたんだ、正体ぐらいバレてると思ってたさ」

ランサー「まぁ、これでお互い実力は分かってるってワケだ」

ランサー「それにお膳立てはもう出来てるしな」


とら「チィッ!! 雷も炎も駄目かァァ!!」


うしお「とら……!?」


ランサー「無駄だ。この中庭の結界はかなり頑丈なものだぜ」

ランサー「あの雷獣だって、ここの結界を破壊するには時間がかかるはず」

ランサー「これで邪魔は入らねえ。サシの勝負の出来上がりだ」


うしお「お前を倒さない限り、この中庭からは出れないってことか」


ランサー「そのとおり。さぁ槍を使うランサー同士、楽しくやろうじゃねえか……!!」



527 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 01:42:06.61 ID:hUnlMYrV0


ランサー「まずは槍兵としての腕試しだ。かかってきな」


うしお「ランサー……。行っくぞォォーー!!!!」


ランサー「ハッ!! いいぜ、いい突進力だ!!」


うしお「うおおおおおおおお!!!!」


ランサー「なるほどな、驚かされるぜ」

ランサー「その宝具の槍を使えば坊主でもサーヴァントとやり合えるってワケか」


うしお「なんで…………槍が、当たらない…………!?」


ランサー「おいおい。オレは槍のサーヴァント、ランサーなんだぞ?」

ランサー「そんな攻撃に当たってやるワケにはいかねえよなァ」


うしお「くっ、これならァァーーーー!!!!」


ドガァッ


ランサー「どこ攻撃してる。それは中庭の柱、オレはここだぜ?」


うしお「そ、そんな…………」



528 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 02:04:57.69 ID:hUnlMYrV0


とら「あんのォ〜〜〜〜馬鹿たれがァ〜〜〜〜」


とら「なにを槍使いにいいように遊ばれてやがる…………ん…………?」


とら「けけ…………」



529 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 02:15:50.28 ID:hUnlMYrV0


うしお「はぁ……はぁ……」

ランサー「まさか槍兵がもう足を止める気か?」

うしお「まだまだ……!!」

ランサー「いいぜ。出来ることは全部試してくれ。その上を行ってやるからよ」


うしお「言ったなァーー!! ランサァァーー!!」

うしお「おおおおおおおお!!!!」


ランサー「ハッ!! 槍の一撃が当たらないからって、破れかぶれの乱撃かァ!!」


うしお「全部、避けられて……!?」


ランサー「この調子じゃ教会が穴だらけになりそうだな」


うしお「くっそォォ〜〜〜〜!!!!」


ランサー「あのなァ、槍を使うからってお前は攻撃が直線的過ぎるぜ」


うしお「ッ……消え……!?」


ランサー「終わりだ」


うしお「がっ……はっ……。蹴、り…………」



530 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 02:27:31.29 ID:hUnlMYrV0


ランサー「期待外れだな」


うしお「な、に…………」


ランサー「あんな巨大なバケモノ、白面を倒した槍の使い手がこの程度か」

ランサー「いや、本当は白面は雷獣が倒し、バーサーカーもセイバーが倒したってところか」

ランサー「どっちにしろ期待外れだぜ」


うしお「ぐっ…………」


ランサー「坊主、お前に師はいるのかよ?」

うしお「し……?」

ランサー「師匠だよ師匠。槍の師匠さ」

うしお「槍の師匠…………」


うしお(う〜〜〜〜ん…………?)

うしお(親父はケンカ相手……。麻子のおじさんは空手か……)

うしお(杜綱さんの空骸の糸の骸……。いや、あれを師匠って呼ぶのはちょっとなァ……)


うしお「う〜〜ん……」

ランサー「そのツラ見る限り、いねえみたいだな……」

531 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 02:37:22.07 ID:hUnlMYrV0


ランサー「どうりでおかしいと思ったぜ」

ランサー「お前の槍はなにかがモノ足りねえと思ったからよ」

ランサー「まぁスジは良かったぜ。その宝具の槍の力といっても英霊とやり合えるワケだからな」

ランサー「違った形で出会ってれば、オレが教えてやったんだが仕方ねえ」

ランサー「槍使いのよしみだ。手向けとして槍の一撃で終わらせてやる」


うしお「……ランサー。オレも同じだって言ってたよな」


ランサー「あ……?」


うしお「オレは別に、誰かと戦いたいとか思ってねえよ」


ランサー「そうかい。そいつは残念だな」

ランサー「でもな坊主、そんなお前はここで死ぬんだぜ」


うしお「いや、そんなオレでも出来ることは…………」




うしお「あるさ…………!!!!」




ドゴォォォォォォン!!!!




とら「へっ、お前にしちゃ上出来よォ」



532 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/30(土) 02:50:13.76 ID:hUnlMYrV0


ランサー「雷獣……!?」

ランサー「こんな短時間で、あの結界を壊せるはずが……!!」


とら「周り見てみなァ槍使い」


ランサー「中庭の四方の柱……結界の起点が壊されて……」

ランサー「ハッ、そうか、あの大振りな槍の攻撃は柱を破壊するために……!!」


とら「よく気付いたな、うしお」

うしお「西の空屋敷を脱出したときの間鎚の結界線を思い出したのさ」

うしお「四方の柱を壊せば結界線が途切れるんじゃないかと思ったんだ」

とら「けけけ、やるじゃねえか」


ランサー「一杯食わされたな……」

ランサー「だが坊主、まさか結界がなくなったからってオレから逃げれるなんて思ってないよな?」


とら「うしお、こいつァ結界があろうがなかろうが関係ねえよ。どこまでも追いかけてきやがるぜ」

うしお「そんな、それじゃ……」

とら「やるしかねえってことよ」

533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/30(土) 08:31:38.35 ID:akU6pVvAO
乙ー
534 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/03(火) 00:16:40.64 ID:bgPzaXSv0


ランサー(中庭の結界がなくなり二対一か……)

ランサー(だが坊主の槍を見させてもらったことに変わりはねえ)

ランサー(あっちは気にすることはない。動きは英霊並みとはいえ、あの程度の槍なら問題ないな)

ランサー(問題は雷獣だ。雷に炎、宝具も他にあると考え)

とら「まだだぜ槍使い、まだ言い足りねえよなァ?」


ランサー「は…………? なんのことだ?」


とら「この馬鹿に言い足りてねえって言ってんだよ!!」

とら「てめえの言うとおりだぜ!! このクソは戦い方がまるでなっちゃいねえのよ!!」

うしお「んだとォ!? とらァ!!」

とら「はっ、おめえの槍なんざ槍使いに比べりゃ三流よ三流」

とら「そのせいでわしは毎回メーワクかけられんのよ!! 分かるか槍使い!?」

うしお「おめーはどっちの味方だとらァ!!」


ランサー「お、おいおい……。お前ら、今はオレと戦って……」

535 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/03(火) 00:24:42.19 ID:bgPzaXSv0


うしお「そこまで言うなら見てろよォとらァ!!」

うしお「行くぞォォ!! ランサァァーー!!」


ランサー「ハッ、またそれかよ」


うしお「くっ、外した……!?」


ランサー「だから言ったろ。お前の槍は足りてねえ、直線的過ぎるってな」


ランサー(この一撃で坊主は仕留めて、雷獣に専念と……)




「な、だからもっと言えって言ったのよ」




ランサー「…………ッ…………!?」




とら「この馬鹿は言うこと聞かねえからよォ!!!!」




ランサー「ぐぅっ…………!!!!」


ランサー(雷獣…………。オレの動きを読んで…………)


ランサー(いや違う。今のは違うぜ…………)


ランサー(雷獣は、坊主の動きを読んで先に動いていた……!?)



536 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/03(火) 00:37:16.67 ID:bgPzaXSv0


とら「おいうしおォ!! もう終わりかァ!?」

うしお「なにをォーー!! まだまだこれからさァ!!」


ランサー(こいつ…………こいつらは…………)


うしお「ランサー!! これならどうだァァ!!」

うしお「うおおおおおおおお!!!!」


ランサー「その乱撃はもう見させてもらったぜ坊主……!!」


うしお「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!」


ランサー(なんだ、さっきより動きが…………避けきれねえ…………!?)


ランサー「チィッ…………!!」


とら「どうしたァ槍使い、遊びでもマジメにやらなきゃなァ!!」


ランサー(そうだろうと思ったぜ。お前が坊主のただのフォロー役なら…………)


とら「いねえ!? 消えやがった!?」


ランサー(こっちもそれを想定して動くまでよォ…………!!!!)


ランサー「その背中、貰い受ける…………!!!!」


キィィィィン!!!!


ランサー「毛の中から槍が…………!?」


うしお「危なっかしーなァ!!!! とらァ!!!!」




とら「いらんことすんじゃねえチビ人間!!!!」


うしお「そうかい、オレには大ピンチに見えたがな大妖怪!!!!」




ランサー(……ハッ、坊主の槍がモノ足りないだと……そりゃそうだ……)


ランサー(こいつらは、これで完全なんだからな……!!)



537 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/03(火) 00:51:54.55 ID:bgPzaXSv0


そうか、そういうことか

分かったぜ、お前たちのことが




とら「うしおォ!!!!」

うしお「任せろォォーー!!!!」


ランサー「ぐううぅぅ…………!!!!」




雷獣はアーチャーの枠を使って特殊に召喚された

この聖杯戦争、どの陣営もお前を重要視して監視した

それはお前が規格外の妖怪の英霊だから

いや、それもあるが一番の理由じゃない


それはクラスが分からなかったからだ


しかしお前と戦っても何もクラス補正を感じない

どんなイレギュラーなエクストラクラスなのか見極められなかった


気づけるはずがねえ……


特定の相手とともに戦わねえと……


クラス補正すら発動しねえ英霊なんて…………!!!!



538 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/03(火) 01:02:33.39 ID:bgPzaXSv0


坊主、お前は槍を使うがランサーなだけじゃねえ

しかし何かを乗りこなすだけのライダーも違う


雷獣、お前の宝具は槍だがランサーじゃねえよな

しかしその気性とは違って理性のないバーサーカーでもない


お前は…………お前たちは…………


どちらが欠けても、補正すらなくなるクラス


だが混然一体、混ぜるとキケンなほど力を発揮するサーヴァント


しいて名づけるとするなら…………協力者…………相棒…………いや…………




うしお「行っくぞォォーー!! とらァァーー!!!!」

とら「決めちまいなァ!!!! うしおォォーー!!!!」




戦友のサーヴァント!!!!




ランサー「ぐっ…………はっ…………」




二体で一体の英霊…………




うしおととら!!!!







539 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/03(火) 01:12:25.33 ID:bgPzaXSv0


ランサー「…………負けちまったか」


ランサー「よっと……。だが妙に清々しい気分だ」

ランサー「お前たちにやられたヤツらは皆こんな気分になるのか?」

とら「何を抜かしてやがる槍使い……。わしはこれがおめえとの決着だなんて思っとらんぞ!!」

とら「大体なんで宝具を使わねえ!!」

とら「その赤い槍の力を使えば、クソうしおなんて一発で仕留めれるはずだぜ!!」

うしお「えっ……!?」

ランサー「おっと坊主、勘違いするなよ。オレは手加減なんてしねえ、やるならいつも全力だ」

ランサー「ただ、そうだな、そろそろ雇い主に嫌気がさしててね」

ランサー「お前たちと派手にやり合って、大暴れしてスカッとしたかったのさ」

うしお「ランサー…………」

とら「こっちはそんなことに付き合わされたのかよ」

ランサー「まぁそう言うなよ雷獣。わりと楽しかったろ?」

とら「けっ…………」

うしお「なぁ、ランサーのマスターって」




「何をしているランサー」




うしお「え…………」




言峰「私は侵入者の始末を命じたはずだが」



540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 02:51:38.14 ID:ygarwC/eO
アニメOPをぶっ込んでくるとか最高かよ…
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/03(火) 21:37:38.15 ID:Opq1Np79O
乙ー
542 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 02:09:51.93 ID:waWJtVxu0


うしお「言峰、神父…………」

言峰「あの夜以来か蒼月潮。よく来た、とでも言っておこうか」

言峰「しかし、いくら教会とはいえ勝手にこんな奥まで入り込むのは考えものだがね」

うしお「今、ランサーに命じたって…………」

言峰「あぁそうだが?」


うしお「ウ……ウソだろ……。ランサーのマスターは言峰神父……!?」


とら「けっ、思ったとおりかよ」


言峰「ほう、雷獣のほうには勘付かれていたか」


とら「あたりめえよ。わしは中庭の結界とかいうのを壊すのに特大の雷を落としたんだぜ」

うしお「そうか……こんな真っ昼間に落雷なんかあったら……」

とら「教会の、いや、ここら周辺の人間どもが集まってくるもんだろうが!!」


とら「それが人っ子一人かけつけねえ。そいつァこいつが教会全体に結界を張ってるからよォ!!」


言峰「そのとおりだ。まぁ、教会の結界はあくまで聖杯戦争のためのものだが」

543 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 02:19:47.86 ID:waWJtVxu0


ランサー「おい、そんなことより聞いてた話と違うぜ言峰」

ランサー「テメェはこの聖杯戦争、最後まで姿を晒さずに勝ち残るんじゃなかったのかよ」

言峰「意外だな。お前が私のそんな話を信じているとは思ってなかった」

ランサー「信じちゃいねえよ。テメェの話も、テメェのこともな」


うしお「ど、どういうことなんだ……?」

うしお「言峰神父がランサーのマスターっていうのは本当なんだよな……?」

ランサー「あぁ、今はな」

とら「今はァ?」

ランサー「こいつはオレの正規の召喚者じゃない」

ランサー「オレを召喚したマスターは言峰に殺され令呪を奪われた」

うしお「殺されて、令呪を……!?」

とら「ちっ…………」

ランサー「契約者を失ったサーヴァントは魔力が枯渇し消滅を待つだけだ」

ランサー「だが、そのまま消えるには寝覚めが悪すぎる。だからオレは言峰と再契約した」

ランサー「いつか言峰を討つためにな。ま、今は令呪の縛りで言うこと聞くしかねえがな」

うしお「そんなことが……」

544 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 02:35:13.53 ID:waWJtVxu0


言峰「殺された、か。フッ、まぁいい」

言峰「しかしランサー、蒼月潮にそんなことを語ってどうする?」

言峰「彼は聖杯戦争に巻き込まれただけの少年だぞ」

言峰「まして魔術師でもない彼に令呪の奪い合いの話をしてなんになる」


うしお「ちょっと待ってくれよ言峰神父……」

うしお「ランサーの話は、マジなんだな……?」


言峰「うむ……。そうだな、こちらとしては訂正する箇所はなさそうだ」


うしお「そうかい……。でもよ、他は訂正してもらうぜ」


言峰「なに?」


うしお「ここで言峰神父に初めて会ったときは、オレは何も知らねえガキだったよ」

うしお「ワケも分からねえ戦いに巻き込まれただけのさ」


うしお「でも、今ここにいるのは…………」


うしお「セイバァァァァーーーー!!!!」




セイバー「……マスター、指示を」




うしお「この聖杯戦争のいちマスター、蒼月潮だいっ!!!!」



545 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 03:16:01.45 ID:waWJtVxu0


言峰「令呪による空間転移……。セイバーを呼び出したか……」


セイバー「あの男は……それにランサー……。なるほど、そういうことですか」


言峰「蒼月潮、それは確かに聖杯戦争のマスターとしては正しい選択だ」

言峰「フフ、こちらとしては好都合な展開だがね」




「どういうつもりだ。まさかこのような場所で宴の開幕を告げるつもりか」




セイバー「なっ…………」

うしお「お前は…………!?」




ギル「教えたはずだがな言峰。宴にはそれ相応の場所と余興が必要だと」



546 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 03:26:06.80 ID:waWJtVxu0


言峰「紹介しよう。彼は、前回の聖杯戦争で私のパートナーだった英霊だ」


うしお「前回の聖杯戦争の……!?」

ランサー「どういうことだ!! そいつがお前のサーヴァントだとォ!?」


言峰「フフフ……。それはそうと十年前の再現になったなセイバー」


セイバー「なんだと……?」


言峰「私とサーヴァントと協力者、そしてお前もマスターと協力者」

言峰「十年前の再現だと思わんかね?」


セイバー「貴様、なにを言っている……」


言峰「ほう……。なるほど……」

言峰「ギルガメッシュの言うとおり、衛宮切嗣はセイバーには何も語っていないようだ」


うしお「えみや……? 誰のことなんだ……?」

とら「てめえ、さっきから何を言ってやがる……!!」


言峰「そうだな。ならば教えよう蒼月潮に雷獣よ」

言峰「なに、お前たちも無関係な話ではない。むしろお前たちはこの聖杯戦争の関係者なのだから」


とら「なにィ……?」

547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/13(金) 03:39:37.00 ID:mLS1ROtpO
乙ー
548 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 03:41:01.25 ID:waWJtVxu0


言峰「まずは順序を追って話すとしよう」

言峰「前回の聖杯戦争のその前、第三次聖杯戦争の話だ」

言峰「ある陣営は早期に敗退した。だが、その陣営は他の陣営に聖杯が渡るのを阻止したかった」

言峰「そう……聖杯そのものを破壊してでも……」


言峰「その陣営は密かに手に入れたある物を、聖杯に混ぜた」


うしお「ある物……?」


言峰「蒼月潮、君も知っている物だ」

言峰「カムイコタンにあった物と同じ物だよ」


うしお「カムイ、コタン…………」


うしお「まさか…………白面の者の…………体の欠片…………!?」


とら「馬鹿がァ、んなことしたらなァ…………!!」


言峰「無論、聖杯は白面の陰の気により汚染された」


言峰「その陣営の計画通り、第三次聖杯戦争の聖杯は誰の手にも渡らなかったが……」

言峰「聖杯は白面に汚染され、時間をかけて龍脈から力を吸い上げることになる」

549 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 03:58:06.01 ID:waWJtVxu0


言峰「そして十年前の第四次聖杯戦争」

言峰「白面の者は龍脈の、いや、自身の力を察知し聖杯戦争に使いを送り込んだ」


セイバー「そんな……。前回の戦いに白面が……」


言峰「しかし、白面のこととなると現れるのが光覇明宗のお役目だ」

言峰「光覇明宗はその事実を知ると、聖杯戦争に蒼月紫暮を参戦させた」


うしお「親父が…………!?」


言峰「ああ、そうだ」


うしお「ほ、本当なのかセイバー!?」

セイバー「はい、あの男の言っていることに嘘はありません」

うしお「親父が聖杯戦争に…………」

セイバー「すみませんウシオ……。いつか話すつもりではあったのですが……」


言峰「それから蒼月紫暮は前回のセイバーのマスター、衛宮切嗣と出会うことになる」


うしお「衛宮、切嗣……。セイバーのマスター……」


セイバー(……しかし、キリツグもシグレも白面の話などしていなかったはず……何故……)

550 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 04:11:19.87 ID:waWJtVxu0


言峰「蒼月紫暮と衛宮切嗣は協力関係になった。白面の使いを倒すという目的のために」


うしお「白面の使い…………」


言峰「そうだ蒼月潮。そして、私も出会った…………」

言峰「私の心の虚無を埋める方法、それを享受してくれた存在…………」


言峰「それがこのギルガメッシュと、白面の者だ」

ギル「ククク…………」


とら「白面だとォォ〜〜!?」


言峰「私は白面の使い斗和子を通じて、白面の者と出会ったのだ」


うしお「斗和子……。キリオのときのアイツか……!!」


言峰「そして白面は私に命じた」

言峰「汚染された聖杯、龍脈を吸い続ける白面の欠片の力を使って…………」


言峰「白面の者を封印するお役目、その者がいる石柱の破壊を」




うしお「石柱…………母ちゃんがいた場所…………!!!!」



551 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/13(金) 04:25:04.57 ID:waWJtVxu0


言峰「しかし聖杯戦争も終盤、それを知った衛宮切嗣はセイバーに聖杯を破壊させた」

言峰「聖杯の破壊による反動……。その火災により私はその場から離れた」

言峰「そして斗和子は消え、衛宮切嗣は死んだ。そのとき何があったのかは私も知らない」


うしお「それじゃ、セイバーが聖杯を破壊してなかったら…………」


とら「白面が起き上がってたってことかよ…………!!!!」


セイバー「だからキリツグは、私に…………」


ギル「その聖杯破壊こそセイバー、貴様と小僧の繋がりよ」


ランサー「過去と現在で同じバケモノから国を守り、世界を救った英雄同士か」

ランサー「確かにこれ以上の繋がりはねえな」


言峰「フッ、だから初めて会ったときに言っただろう蒼月潮」

言峰「お前がセイバーを召喚したのは偶然ではない、必然だと」

552 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 00:44:31.51 ID:fru2Z94G0


とら「この聖杯戦争に白面が関係してるってのは信じてやらァ」

とら「確かにヤツがかかわってるなら、わしもうしおも無関係とは言わねえよ」

とら「だがな、もう白面はいねえ。わしらがブッ倒したからな」

とら「それで白面入りの聖杯で何が出来るってんでえ。わしらを戦わせて何が目的なんだよ?」


言峰「フフ、何か思い違いをしているようだな雷獣よ」

言峰「私は白面に聖杯を汚染されたと言ったが、何も機能を失ったとは言っていない」


セイバー「まさか……願望機としての力を残していると……?」


言峰「そのとおりだセイバー。考えてみろ、お前たち英霊を召喚出来ていることが何よりも証明だ」

言峰「聖杯は汚染された。しかし聖杯降霊の儀式、それが壊されたワケではない」


言峰「そして教会の監督役、私の役割はその聖杯の持ち主を見極めることだ」


うしお「見極める、だけ……?」

とら「てめえ、槍使いを仕向けておいて、やり合う気はねえとでも言うつもりかよ!!」


言峰「誤解があるようだな」

言峰「私はお前たちが望むなら、お前たちにも聖杯を与えようと言っているのだよ」

553 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 00:59:30.53 ID:fru2Z94G0


ランサー「待てよ言峰。聖杯はサーヴァントが残り一人になるまで現れないんじゃなかったのか?」

言峰「そうだ。残り三人ではまだ早いが、二人なら完成に近い。聖杯は降霊出来る」


言峰「……どうだセイバーよ」

言峰「その隣のマスターと雷獣を斬り殺せば、聖杯を与えよう」


セイバー「なに……?」


言峰「雷獣のことを案ずることはない。ギルガメッシュとランサーも協力させる」

言峰「お前たち三人なら雷獣にも負けることはない」


言峰「さぁ…………セイバーよ…………願いを叶えるがいい…………」


セイバー「……………………」


うしお「セイバー…………」




セイバー「聖杯など…………いらない…………」




言峰「ほう……。願いが叶わなくてもいいと?」




セイバー「あぁそうだ。聖杯など必要ない、ウシオもトラも殺させない……!!」




セイバー「私の願いは、すでに叶っていたのだから…………!!!!」



554 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 01:20:23.11 ID:fru2Z94G0


うしお「セイバー……!!」

とら「くくく…………」


言峰「つまらん答えだ…………。お前たちはどうだ、蒼月潮に雷獣よ」

言峰「セイバーを殺せば聖杯、あらゆる願いを叶える器が手に入るぞ」


とら「そもそもわしは聖杯なんてものに興味ねえのよ」

とら「わしはただ気に喰わねえヤツらをぶっ飛ばす、それだけよォ」


言峰「フン……。いや、人間と価値観が違う妖怪に何を言っても無駄か……」


うしお「あらゆる願いを叶える、か…………」


言峰「そうだ蒼月潮。どんな物でも手に入る、欲しいと思うもの全てがお前のものだ」


うしお「悪いね言峰神父、もうオレは欲しいもんは持ってるしよ」


言峰「なに…………?」


うしお「見えないかい?」




うしお「オレの両隣に、オレの欲しいもんは揃ってるぜ…………!!!!」




セイバー「ウシオ…………」

とら「ったく…………」



555 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 01:35:19.91 ID:fru2Z94G0


言峰「予想通りとはいえ、くだらん結果だ」

言峰「まぁいい。ランサー、宝具を使用し蒼月潮を始末しろ」


ランサー「…………」


セイバー「くっ、ランサーの因果逆転の魔槍か……。ウシオを守らなければ……」


ランサー「……やめだ、やめやめ。オレは降ろさせてもらうぜ」


ギル「ほう、聖杯を目の前にして契約を切るというのか」

ランサー「テメェと一緒にするな。もとよりな、オレは二度目の生なんぞに興味はない」


ランサー「それにな言峰、まさかオレがこの教会の地下にあるもんに気付いてねえと思ってねえよな?」


言峰「さて…………?」


ランサー「とぼけるんじゃねえ」

ランサー「調べたがよ。坊主と雷獣の戦い、白面との決戦で大勢の犠牲者が出てる」

ランサー「そりゃそうだ。あんなバケモノと戦って、死人が出ないなんてことはねえ」


ランサー「だがな、おかしいんだよ…………」


ランサー「この町だけ多くねえか、死亡者より行方不明者がよ…………!!!!」




言峰「さぁ、何のことを言っているのか分からんなァ……ランサー?」




ランサー「言峰ェ…………!!!!」



556 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 01:43:39.34 ID:fru2Z94G0


言峰「しかし……。どういう心情の変化だ、ランサー」


ランサー「さーてね。まぁ、あの坊主の真っ直ぐな眼を見てたらよ……」

ランサー「死んだ魚のような眼ェしたヤツなんかに従うのが嫌になっただけかもな」


ギル「クク、よく吠える」

言峰「彼と共同戦線を張れば必ず勝てるとしても、降りると?」


ランサー「フンッ、それこそ死んでもごめんだ」


言峰「……そうか。ならば死んでもらおう」


ランサー「あ?」


言峰「ギルガメッシュ、先ほど宴には余興が必要だと言っていたな」


言峰「最後の令呪をもって命じよう」




言峰「自害しろ、ランサー」



557 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 01:56:11.87 ID:fru2Z94G0


ランサー「なっに…………なっ、身体が…………勝手に…………!?」




セイバー「ランサー…………!?」

うしお「待っ…………!!」




とら「ちぃっ…………!!」




ザシュッ……




ランサー「おい…………」


とら「ぐぅ…………がっ…………」


ランサー「なに、やってやがる、雷獣…………」


とら「けけ、お前は、槍使いだろが…………」




とら「槍を使うヤツはなァ、わしの前でそう簡単に殺させねえのよ…………」




セイバー「トラ…………!!!!」

うしお「とらァ!!!!」



558 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 02:08:10.10 ID:fru2Z94G0


ギル「ククッ、フハハハ!! 獣が狗を助けたか!!」

ギル「いいぞ!! 余興としては盛り上がりに欠けるが趣向は悪くない!!」


言峰「ギルガメッシュ、ここは任せる」

言峰「光覇明宗と蒼月紫暮が動き出した。私はことを進めるとしよう」


うしお「光覇明宗が…………。何を、企んでるんだ…………」


うしお「何をする気だよ言峰神父…………!!!!」




言峰「フフフ……。ギルガメッシュ……」


言峰「ゴミを始末しろ」



559 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 02:18:25.58 ID:fru2Z94G0


とら「ぐっ……聖杯、だ……」


うしお「とらァーー!!」

セイバー「トラ、大丈夫なのですか!?」


とら「胸ェ貫かれたぐらいで、わしがくたばるかよォ」

とら「おめえら人間の英霊と一緒にすんじゃねえ、剣使い」


セイバー「全く貴方は……。ランサーの槍をその身で受けるなど無茶をする……」


とら「それより、やつァ槍使いを消して英霊の数を減らすつもりだった」

とら「それなら目的は聖杯しかねえ」


セイバー「あの男が聖杯降霊の儀式を強攻すると?」


とら「ああ、だが槍使いは殺せなかった。うしおはここにいる。それなら次の獲物は……」


うしお「まさか、凛姉ちゃん……!?」


セイバー「そうか……。リンを殺せば、一番の強敵のトラも消せる……!!」

560 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 02:29:06.82 ID:fru2Z94G0


とら「ちぃっ〜〜!! 胸の傷塞ぐのに魔力使っちまった……!!」

とら「わしとしたことが、しばらく動けそうにねえかよ……!!」


とら「うしお、剣使い、りんのもとへ行きな!!!!」


セイバー「トラ、ですが……!!」


とら「わしのこたァーいい!! どの道りんが死んだらわしも終わりよォ!!」


うしお「そ、そうか……そうだよな……。分かったよ、とら」

うしお「早く凛姉ちゃんに知らせねえと……。セイバー!!」


セイバー「分かりました……。ただ、ここから脱出するには……!!」




ギル「クックックッ…………」




ランサー「行きな、坊主とセイバーは」



561 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/14(土) 02:35:19.80 ID:fru2Z94G0


うしお「ランサー……?」


ランサー「坊主、言峰にやった啖呵の切りかたはよかったぜ」

ランサー「そうだ。槍使いは敵を貫くだけじゃねえ、信条を貫いてこそだ」


ランサー「雷獣には借りが出来た、もう令呪の縛りはねえ」


ランサー「必ずお前たちのもとに雷獣は送り届ける。だから先に行きな」


うしお「ランサー、兄ちゃん…………」

セイバー「しかし、いくら貴方でもあの宝具の雨に無事には…………」


ランサー「けっ、仲間意識なんか持つんじゃねえセイバー」

ランサー「お前の剣に誓いがあるように、オレの槍にも誇りがある。ただそれだけだ」

ランサー「さっさと行け、育ちのいい騎士王様は目障りだぜ」


セイバー「ランサー……。ご武運を」


とら「うしおォ早く行けェ!!!!」


うしお「とら…………。兄ちゃん、頼んだぜ…………!!!!」



562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/14(土) 04:15:35.64 ID:E/8jF8iCO
乙ー
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/14(土) 16:09:13.29 ID:Ay6ee/TeO
胸糞展開クラッシャーいいぞ
564 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/24(火) 00:48:05.06 ID:/5V9MxA/0


ギル「フフ……」


ランサー「テメェ、何故だ。なんで何もしねえ」

ランサー「オレたちを始末するように言われたはずだぜ」


ギル「実はなランサー、我もこのような決着は好みではなかったということだ」

ギル「貴様がそうやらなければ我がやっていた」


とら「うしおや剣使いを見逃すつもりだったってのか?」


ギル「あの女は我のモノだ」

ギル「そして、聖杯を呼ぶ儀式にはサーヴァントを残り一体にする必要がある」

ギル「ならば必要のないサーヴァントは誰と誰だ。クックックッ……」


とら「ちっ……。こいつの狙いはハナっからわしらかよ……」


ギル「それにだ、この聖杯戦争で言峰が主催する最初で最後の宴だ」

ギル「それ相応の参加者がいなければ盛り上がりも欠けるというもの」


ランサー「テメェら、一体なにを考えて……」

565 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/24(火) 00:59:27.76 ID:/5V9MxA/0


ギル「ランサーよ、この場は余興だ」

ギル「獣に助けられた命、余興なら余興らしく我を愉しませろ」

ギル「ククッ……。だが貴様に勝ち目などない」

ギル「狗畜生らしく逃げてもよいぞ、ランサー」


ランサー「テメェ……。今、オレのことを狗といったか……!!」


とら「待ちなァ!! そいつの宝具は……!!」


ギル「フフ……」パチンッ


ランサー「チィィ……!!」カキィィン!!カキィィン!!


とら「この馬鹿槍使い!! なーにをやっとる!!」

とら「あんな野郎の挑発に乗るんじゃねえや!!」


ランサー「へっ、言ってくれるぜ……!!」

ランサー「いいからテメェはオレに守られてなァ!!」


とら「な、なにィィ〜〜〜〜!?」

566 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/24(火) 01:05:15.74 ID:/5V9MxA/0


・遠坂邸


うしお「セイバー!! そっちはどうだ!?」


セイバー「いえ、こちらもリンの姿は見当たりません」


うしお「そうか……。凛姉ちゃん、どこに……」


セイバー「おそらく、探し物を終えたリンはウシオの家へ戻ったのではないでしょうか?」


うしお「オレの家に……。よし、セイバー急ごう!!」


セイバー「はい、ウシオ!!」

567 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/24(火) 01:18:07.58 ID:/5V9MxA/0


ランサー「ハッ……ハッ……」


ギル「どうしたランサーよ」

ギル「槍兵が足を止めるなと語っていたのは貴様のはずだが?」


ランサー「ハァッ……!!」カキィィン!!


ギル「ククッ、獣をかばいながらとなると自慢の足も使えんか」

ギル「己が信念を貫くのは厳しいな、ランサー」


ランサー「これも成り行き。ま、こういうのもいいもんさ」


とら「…………いいや、よかねえな」


ランサー「お、お前…………」


とら「槍を使う人間になァ、守られるなんざ…………」




とら「わしが一番キレエなことよォ!!!!」



568 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/24(火) 01:31:03.86 ID:/5V9MxA/0


ランサー「おいおい、もう動けるのか……」

ランサー「バケモンかよテメェ……いや、バケモンか……」


とら「りんに渡されてた石ころだ。そいつを喰ったからな」

とら「うげぇー、こいつが不味いのなんの……」

とら「はんばっかになァ、はさまねえと喰えたもんじゃねえや」


ランサー「ハッ、魔力入りの宝石を持たせてたのか」

ランサー「あの嬢ちゃん、うっかりしてそうでそういうところは抜け目ねえな」


とら「まぁ悪かねえぜ」


ランサー「それに美人で強情で肝が据わっているときている」

ランサー「女をマスターにするんならああいうのがいいよなァ、雷獣」


とら「りんはやらねえぞ。ありゃわしの喰いもんだ」


ランサー「そいつは残念」

569 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/24(火) 01:53:02.19 ID:/5V9MxA/0


とら「足ィやられてんのか?」

ランサー「まぁな、テメェの傷に比べりゃまだマシだが」

とら「わしはまだ動ける程度だ。雷も炎も出せやしねえ」

ランサー「刺されてすぐに動かれちゃ呪いの朱槍の名折れだぜ」

とら「ぬかせェ。わしは槍に貫かれてもそのまま五百年は平気な能力持ちよォ」

ランサー「ハッ、それがマジならテメェとやり合うランサーは相当長生きしねえとな」


ギル「クク……。どうだ、次の余興の準備は整ったのか?」


ランサー「……悪いな雷獣。テメェが動けるまで時間は稼げたが窮地に変わりなしだ」

とら「そうでもねーさ」

ランサー「あ? 何かあんのか?」

とら「わしは動けるが雷も炎も出ねえ、おめえは足ィやられてる」

とら「ならやるこたァ、一つさ」


ランサー「……おいおい、オレはランサーだぞ?」


とら「けけ、退屈はさせねーぜ?」


ランサー「へっ……。ま、これも成り行きかね」

570 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/24(火) 02:08:01.16 ID:/5V9MxA/0


ギル「ほう、次の余興は曲芸か。ククク、愉しませるではないか」


ランサー「よっと……。おー、意外に乗り心地はいいな」

とら「てめえ槍使い!! わしを乗り物扱いすんじゃねえ!!」

ランサー「ワリィワリィ、そう怒るなって」

とら「ちっ……。わしはヤツの妖怪用の宝具に一発でも当たったら終わりよ」

ランサー「安心しな。オレの槍で全部弾き落としてやる」

とら「ったく、本当だろうな」


ランサー「さてと、そろそろ始めるかい…………」

とら「おう、それじゃ…………」




とら「ドジるんじゃねえぞ槍使い!!!!」


ランサー「テメェもな雷獣よォ!!!!」



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