うしおとセイバー

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571 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/25(水) 00:55:32.75 ID:eroff3uG0


ダッダッダッダッ


うしお「言峰神父の目的はまだ分からねえ!!」

うしお「でも、本当に光覇明宗も動いてるなら……!!」


セイバー「あの男が聖杯で何かを行うことを止めようとしている?」


うしお「ああ!!」

うしお「前回の聖杯戦争で、言峰神父は白面を解き放とうとしていた……!!」


セイバー「今回も聖杯の力で似たような……いや、もしかするとそれ以上のことを……」


うしお「もしそうなら……。凛姉ちゃん、無事でいてくれ……!!」

572 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/25(水) 01:05:24.02 ID:eroff3uG0


ランサー「ハッハァー!! こいつはいいぜェ!!」

ランサー「こりゃライダークラスで召喚されるのもいいかもなァ!!」

とら「おい槍使い!! 次が来てんだろうが!!」


カァァン!!


ランサー「余裕よ余裕!!」

とら「てめぇ今危なかったぞ!!」


ギル「ククク……。なるほど、次の見世物はなかなか動き回る」


とら「ちっくしょ〜〜〜〜!!!!」

とら「避けるのが精一杯で近づくことも出来やしねえ!!」

ランサー「あの宝具の射出がある限り間合いには入れねえか……!!」


ギル「さて、次は何を見せてくれる?」


とら「見下しやがってェ……!!」

573 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/25(水) 01:18:46.51 ID:eroff3uG0


ランサー「見下し……そうか……」

ランサー「おい雷獣、無理にヤツに近づくことはねえぞ」

とら「ああ?」

ランサー「ヤツの間合いに付き合う必要はねえって言ってんだ」

とら「もうわしの話を忘れたかよ槍使い!!」

とら「まだ雷も炎も出せねえって言っただろ!!」

ランサー「忘れちゃいねーよ。それに仕掛けるのはオレだ」

とら「まさかおめえ…………」

ランサー「雷獣、出来るだけヤツの宝具を引き付けて、上空に飛んでくれ」


ランサー「そのあとはオレの仕事だ」


とら「ちっ、仕方ねえ……。おめえの話に乗ってやるかァ……!!」


ランサー「乗ってるのはオレだけどなァ雷獣!!」

とら「うるせーよ槍使いがァ!!」

574 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/25(水) 01:30:12.56 ID:eroff3uG0


カキィィン!!

カキィィン!!


ランサー「よし、今だ雷獣……!!」

とら「跳べばいいんだろォォ!!」


ギル「余興ごときの獣どもが、天に仰ぎ見るべきこの我の上を取るか」

ギル「痴れ者がァ……!!」


とら「どうだァ槍使い!! こんだけ跳べば文句ねーだろ!!」


ランサー「この跳躍……マジにバケモンだな……」


ランサー「だがよ、オレも猛犬の名前は伊達じゃねえよ!!」




ランサー「突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!!!!」



575 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/25(水) 01:45:39.56 ID:eroff3uG0


ギル「フンッ…………」パチンッ


ドゴォォォォン!!




とら「な、なんだこりゃ〜〜〜〜!?」


ランサー「壁……いや、盾か……!?」




ギル「クックックッ…………」




ランサー「こいつは…………!!!!」


とら「馬鹿デケエ剣かよ…………!!!!」



576 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/25(水) 01:58:25.81 ID:eroff3uG0


とら「くっそ〜〜!! 槍使いの宝具でも駄目かァ〜〜!!」

ランサー「これでいい。あの剣がある限り宝具の射出は遮られる」

ランサー「ここはもういいぜ雷獣。テメェは嬢ちゃんのとこに急ぎな」

とら「ああ!? なに言ってやがる!!」

ランサー「借りは返した。あとはオレの好きなようにやるだけさ」

とら「足ィやられたおめえが一人でアイツに勝てるワケねえだろうが……!!」

ランサー「テメェのほうこそなに言ってる、サーヴァントならなァ……」

とら「あ……?」


ランサー「サーヴァントならテメェのマスターを一番に考えやがれェ!!!!」


とら「りん…………」


とら「ちっ……。槍使いはどいつもこいつもうるせえなァ!!!!」


とら「死ぬんじゃねえぞ槍使い!!!!」


ランサー「ハッ、この程度でくたばるならオレは英雄になれてねえよ、雷獣」

577 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/10/25(水) 02:48:44.23 ID:eroff3uG0


ランサー「よっと……」


ギル「二対一の状況を自ら壊すか」


ランサー「あのままアレに乗り続けてたら坊主が羨ましくなっちまう」

ランサー「ま、テメェみてえに欲の皮がつっぱった怨霊には分からないだろうがな」


ギル「ククッ、死に際が鮮やかだった男は言うことが違う」

ギル「さあ、最後の見せ場だぞランサー」


ランサー「ハッ、もう少し付き合ってもらうぜ」

ランサー「テメェを嬢ちゃんたちのところに行かせるワケにはいかねえんでな」



578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/25(水) 05:35:48.70 ID:731kD1n1O
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/25(水) 10:17:19.36 ID:h/5PCYiv0


次も楽しみにしてる
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/29(日) 10:20:06.83 ID:GHt+mH2xo
乙ー
581 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/03(金) 00:51:50.09 ID:ha/uoHGz0


・大橋歩道橋・入口


ダッダッダッダッ


うしお「うわっ……」ガクッ


セイバー「ウシオ!? 大丈夫ですか!?」

うしお「あ、ああ、平気さ」

セイバー「まさか先ほどの戦闘の傷が……」

うしお「いや本当に大丈夫だ。ちょっと転びそうになっただけさ」

セイバー「そうですか……」


うしお「……サンキューな、セイバー」


セイバー「えっ?」


うしお「言峰神父が聖杯の力で破壊しようとした石柱……」

うしお「あそこには白面を封印してたオレの母ちゃんがいたんだ」


セイバー「石柱に、ウシオの母親が……」

582 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/03(金) 01:10:10.96 ID:ha/uoHGz0




うしお「セイバーと衛宮切嗣って人が聖杯を破壊してなかったら、白面は起き上がってた」




違う……


私は何も知らなかった


ただ、令呪で強制的に宝具を使用しただけ……




うしお「その頃はとらもいない、獣の槍もなかったんだ。もちろんオレだってただのガキさ」

うしお「きっとこの国、いや、世界中の人間が沢山死んだはずだぜ」


うしお「セイバーと衛宮切嗣さんが世界を救ったんだ!!」




まさかキリツグ……


貴方が言っていた世界の救済とは……




うしお「二人のおかげさ。だからサンキューな、セイバー!!」


セイバー「ウシオ、私は…………」




そんな目で……


あのときの私は、そんな目で見られる資格はない……



583 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/03(金) 01:27:54.96 ID:ha/uoHGz0


うしお「……っと、すまねえセイバー」

うしお「今はこんなこと言ってる場合じゃねえよな」


セイバー「そう、ですね……」

セイバー「リンたちが心配です。急ぎましょう、ウシオ」


うしお「ああ!!」




セイバー「…………」




キリツグ、貴方がくれたのですね


聖遺物などではないウシオとの確かな繋がり


白面から世界を救う


それを成し遂げた貴方と私は、たった三度の令呪のやり取りだけ……


どうして語ってくれなかったのです……




あの男は言っていた


聖杯が破壊された後、白面の使いは消え、貴方は死んだと




あの後、何があったのですか…………貴方に…………




キリツグ…………!!



584 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/03(金) 01:38:13.30 ID:ha/uoHGz0




【遠景『最後の令呪』】




・第四次聖杯戦争終盤・市民会館・地下駐車場








切嗣「……手を上げろ」


言峰「なんともつまらぬ結末だな」







585 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/03(金) 02:02:43.93 ID:ha/uoHGz0


言峰「なぜ聖杯を、いや、白面を拒んだ?」


切嗣「……貴様にも見えていたのか」

切嗣「ならば、今のは幻覚などではなく……」


言峰「聖杯は白面に汚染されたとはいえ、願望機には違いない」

言峰「お前は全てのものを犠牲にしてここまで辿り着いたはずだ」

言峰「なぜそれを今になって拒む。愚か過ぎて理解出来ん」


切嗣「願望機だと?」

切嗣「あんなものは万能の願望機などではない……!!」


言峰「願望機だ。お前にとっても、私にとっても」


切嗣「なに……?」


言峰「お前の望み、理想とは紛争の根絶……」

言峰「その願いを叶えようとしたのだ。聖杯が、白面が」

言峰「ならばそれを願望機と呼ばずなんという?」


切嗣「あぁそうだな。争う人間すべてが消え去ればそれは根絶だろう」

切嗣「あの聖杯がもたらすものはそういうものだ。白面による滅びしか手に入らない」


切嗣「僕が望んだ奇跡は、あんなものじゃない」

586 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/03(金) 02:19:36.06 ID:ha/uoHGz0


言峰「理解出来んな」

言峰「闘争は人間の本性だ。それを根絶することなど出来るわけがない」


切嗣「いつまでも人類同士で争っている場合じゃない。いつか必ず白面は起き上がる」

切嗣「終わらぬ連鎖を終わらせ、人類が手を取り合わなければ白面には打ち勝てない」

切嗣「人間、いや、きっと人間以外とも……。それを果たし得るには聖杯という奇跡しかない」


言峰「……なるほど、それがお前の本当の望みか。ならば聖杯は私に譲れ」

言峰「あの聖杯がお前にとっては願望機でなくても、私にとっては願望機だ」

言峰「いや……私と白面の使いにとっては、か」


切嗣「貴様……!!」

切嗣「この聖杯戦争には、お役目の予見通り白面の使いが……!!」


言峰「お役目……白面の者と未来永劫ともにいる女か……」

言峰「やはり、お前は光覇明宗と繋がっていたようだな」

587 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/03(金) 02:55:56.59 ID:ha/uoHGz0


切嗣「言え。貴様とともに行動していた黒髪の女、あれが白面の使いだな?」


言峰「さぁ、何のことか」


ドゥゥン!!


言峰「がっ……」


切嗣「次はどこを撃ち抜かれたい?」


言峰「フッ、無駄だ。私を拷問しても……。すでに白面の泥はあふれ始めている……」


切嗣「貴様は何を考えて……」


言峰「白面の者……。この世全ての陰の気の化生……」

言峰「あんなものが存在するのなら、私の迷いの答えも出るというもの……」


言峰「だからこそ解き放つ必要がある……!!」


言峰「私は生まれながらにして善よりも悪を愛する者!!」

言峰「どんな事柄よりも他者の苦痛に愉悦を感じるのならば!!」


言峰「白面がもたらすものこそ、私の望みなのだから……!!!!」




言峰「それを見届けるまで、私は……!!!!」




ドゥゥゥゥン!!




切嗣「貴様こそ、愚か過ぎて理解出来ないよ」







588 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/04(土) 04:09:02.02 ID:qxJDulow0


・市民会館・通路


切嗣「くっ……」


切嗣(誰かが近づいてくる……敵サーヴァント、ではない……。あれは……)


紫暮「切嗣ッ……!!」


切嗣「紫暮……」


紫暮「その怪我……。言峰綺礼をやったのか?」

切嗣「あぁ、仕留めたよ」

紫暮「そうか……。とにかく移動しよう、この会館は崩れ始めている」


切嗣「待ってくれ紫暮。状況を、教えてほしい」


紫暮「あ、ああ、舞弥殿は無事だ」

紫暮「危険な状態だったが光覇明宗の病院に運んだ。もう安心していい」


切嗣「……紫暮。アイリは?」


紫暮「アイリスフィール殿は……」

589 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/04(土) 04:23:50.44 ID:qxJDulow0


紫暮「…………」

切嗣「…………」

紫暮「すまん……」

切嗣「紫暮、君が謝ることじゃない」

切嗣「僕もアイリも覚悟の上でこの聖杯戦争に挑んでいる」

切嗣「それに、謝るのは僕のほうだ」

紫暮「ん……?」

切嗣「さっき一瞬だが聖杯に触れたよ」

紫暮「聖杯に!?」


切嗣「ああ……。そのとき感じた……アイリは器になったんだとね……」


切嗣「すまない紫暮……。本当は、分かっていたんだ……」


紫暮「切嗣…………」


切嗣「お役目の言うとおりだったよ」

切嗣「聖杯はすでに万能の願望機なんかじゃなかった」

切嗣「僕が求めた奇跡は、すでに白面に汚染されている」


紫暮「白面を倒すために求めた聖杯すら、白面に染められて……」

590 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/04(土) 04:52:41.43 ID:qxJDulow0


切嗣「あれを白面の使いに奪われるわけにはいかない」

紫暮「ああ、それを阻止するために私はここにいるのだからな」


切嗣「この先のホールでセイバーが交戦中、相手はおそらくアーチャー」

紫暮「分かるのか?」

切嗣「これでも僕は魔術師、マスターだからね」

切嗣「僕はセイバーを令呪で使って、聖杯を破壊する」


紫暮「セイバー殿を……。結局、セイバー殿には何も話さなかったのか?」


切嗣「言えるわけがない。僕たちは願いを叶えるという餌で彼女を釣ったんだ」

切嗣「お役目に言われるまで、聖杯が白面に汚染されているなんて知らなかった」

切嗣「アインツベルンは白面のことを伏せていた。いや、話す必要がなかったんだ」

切嗣「ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンにとっては白面なんて関係ない」

切嗣「どんな聖杯でも、アインツベルンが手に入れた、という事実が欲しいだけなんだから」

591 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/04(土) 05:26:04.88 ID:qxJDulow0


紫暮「今更セイバー殿に、願いを叶えるかどうかも分からない聖杯……」

紫暮「白面入りの願望機のために戦ってくれ、とは言えないか」


切嗣「アイリにも、セイバーには白面のことは伏せるように言ってあった」

切嗣「僕は聖杯が万能の願望機ではないと確認出来たら、破壊するつもりだったからだ」


紫暮「それをセイバー殿に気づかれないために、か」


切嗣「いや、彼女の望みを叶えるのは聖杯ではないと思っただけだよ」


紫暮「お前……まさか……だからあえて何も話さず……」


切嗣「いつか彼女をあの呪縛から解放する者が現れる、でもそれは僕じゃない」

切嗣「結局、僕は僕らしく最後まで英雄様を利用するだけさ。何も変わっちゃいない」

切嗣「君と出会ったからって、僕とセイバーの関係が変わることはないんだ」


紫暮「なるほど……。お前らしくか」


紫暮(以前、アイリスフィール殿や舞弥殿に言われたことがある)

紫暮(私と出会い切嗣は変わったと。しかし本当は、お前は元はそういう人間だったんじゃないのか)

紫暮(それがいつか、セイバー殿にも伝わればいいのだがな……)

592 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/04(土) 05:32:22.04 ID:qxJDulow0


切嗣「……セイバーのことで紫暮の言いたいことは分かる」

切嗣「自分でも、自分が器用な人間だなんて思っちゃいないよ」


紫暮「それはお互い様だな切嗣。私も器用な人間じゃなかった」


切嗣「紫暮が……? そうには見えないが」


紫暮「私にも荒れてた時期ってやつがあったんだ。妻に出会うまでな」


切嗣「妻に、出会うまで……」

切嗣「前にアイリが言ってたよ。僕と紫暮は似た者同士だって」


紫暮「私とお前がァ〜〜?」


紫暮「そりゃアイリスフィール殿の勘違いだ。私はお前より器用だぞォ〜〜?」


切嗣「フッ、相変わらず言ってくれるね」

593 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/04(土) 05:39:07.13 ID:qxJDulow0


切嗣「すまない紫暮、肩を貸してくれないか?」

紫暮「よし……これでいいか?」

切嗣「ああ、この先のホールの入り口まで頼む」




切嗣「はぁ……はぁ……」


紫暮「もう少しだ、切嗣」


切嗣「紫暮……」


紫暮「ん?」




切嗣「……僕はね、正義の味方になりたかったんだ」



594 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/05(日) 01:23:22.92 ID:CFMz64ls0


紫暮「正義の、味方……?」

切嗣「笑うかい?」

紫暮「お前とはまだ短い付き合いだが、こんなときに冗談を言うようなヤツじゃないのは知っている」

切嗣「フッ、そうか」

紫暮「それで、その、正義の味方というのは?」


切嗣「僕は世界を救いたかったんだ。獣の槍を使い、白面の者を倒して」


紫暮「獣の槍ッ……!?」


切嗣「ああ」


紫暮「そうか……。だから、お前は初めて会ったときに蔵の扉を……」


切嗣「でも、僕は伝承者じゃないみたいだ」

切嗣「それに調べたが、きっとあの扉はどんな爆薬を使っても壊せない」


紫暮「お前……私の家の蔵を吹き飛ばす気だったのか……」

595 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/05(日) 01:35:02.98 ID:CFMz64ls0


切嗣「そういえば、あのときの決着がまだだったね」

紫暮「あぁ、次にやるときはお前のあの動きを見切ってみせる」

切嗣「僕だって、次は君の千宝輪を全て撃ち落としてみせるよ」


紫暮「しかし……お前が獣の槍を求めていたなんてなァ」

切嗣「いや、獣の槍でなくてもいいんだ。白面の者を倒しうる兵器ならなんだって」

紫暮「兵器……。切嗣、お前の望み、理想は以前聞かせてもらった。だが……」

切嗣「その理由かい?」

紫暮「聞かせてもらってもいいのなら」


切嗣「…………」


切嗣「……紫暮、僕たち魔術師はね、さまざまな研究をしているんだ」

切嗣「でもね、どんな分野、系統、属性、あらゆる魔術の辿り着く場所は全て同じなんだよ」


紫暮「違う研究をしているのに同じ……。それは……?」


切嗣「……永遠さ。魔術師は必ず、永遠の命に辿り着く」


紫暮「永遠の、命……」

596 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/05(日) 01:51:28.38 ID:CFMz64ls0


切嗣「いつか必ず来るという世界の滅亡……」

切嗣「白面による絶対の滅びから逃れるために」

切嗣「魔術師は、永遠を目指す」


紫暮「白面から逃げるため……それが魔術師の辿り着く場所……」


切嗣「ああ……」

切嗣「白面が存在する限り魔術師は、どれだけ死体の山を積み上げるか分からない」


切嗣「…………」


紫暮「切嗣……?」


切嗣「……白面さえいなければ、僕の父親も狂うことはなかったはずなんだ」

切嗣「そして、僕の大切な人たちも……」


紫暮「お前が白面の者にこだわる理由は……そうか……」

597 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/05(日) 02:01:50.90 ID:CFMz64ls0


切嗣「紫暮、これを持っていってくれ」


紫暮「これは……。セイバー殿の聖遺物、聖剣の鞘か?」


切嗣「ここから先は僕一人で行く。紫暮は予定通り行動してほしい」


紫暮「ばっ、馬鹿を言うな!!」

紫暮「そんな怪我をしたお前を単独で行かせられるか!!」

紫暮「言峰綺礼は倒したようだが、まだ白面の使いがいる。どこに潜んでいるか分からんのだぞ!!」


切嗣「だからこそだよ、何が起こるか分からない」

切嗣「その鞘を白面の使いに奪われるワケにはいかないんだ」


紫暮「それは、そうだが……」


切嗣「アヴァロンを、いつか現れる獣の槍の正統伝承者に渡してほしい」

切嗣「白面との決戦で役に立つはずだ」

598 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/05(日) 02:19:22.35 ID:CFMz64ls0


切嗣「行ってくれ紫暮」

切嗣「それに住民の避難や誘導は、魔術師殺しの僕には出来ない」

切嗣「でも、光覇明宗の蒼月紫暮にはそれが出来る」


紫暮「…………」


紫暮「その人が出来ることを、その人が出来る限り精一杯やればいい」

切嗣「え……?」

紫暮「商店街の中華料理店の親父が、娘にそうやって言い聞かせてたのを思い出した」

切嗣「それは、いい父親だね」

紫暮「ああ、それに作るメシも美味いんだ」


紫暮「……前に約束したことを覚えてるか、切嗣」

紫暮「私の息子とお前の娘をいつか会わせようと」


切嗣「もちろん覚えてるよ」


紫暮「こんな聖杯戦争パーッと終わらせて、その店にメシを食いに行こう」


紫暮「私たちの子供を連れて」


切嗣「それは…………願望機に頼らなくても叶えられる…………」


切嗣「僕が一番、叶えたい望みだ」



599 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/05(日) 02:24:58.97 ID:CFMz64ls0




切嗣「……………………」




切嗣「紫暮…………。イリヤを、頼む…………」








紫暮「切嗣……?」


紫暮「いや、気のせいか。声が聞こえるはずがない」


紫暮「それよりも急いで光覇明宗に……」



600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/05(日) 04:56:08.69 ID:oJFCTLWQo
乙ー
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 06:17:37.27 ID:bmrZ/4naO

紫暮と切嗣いいね
602 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/09(木) 23:35:02.05 ID:AFVFBiJM0


・市民会館・コンサートホール




切嗣「衛宮切嗣の名をもって命ずる」


切嗣「セイバーよ、宝具をもって聖杯を破壊せよ」




ギル「我が婚儀を邪魔立てするか雑種!!」


セイバー「や、やめろ…………」




切嗣「セイバー。聖杯を、破壊しろ」




セイバー「やめろおおおおーーーー!!!!」



603 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/10(金) 00:07:15.41 ID:LP0ssVaW0


切嗣「ハァ……ハァ……」


切嗣「聖杯を、破壊……出来たのか……?」


切嗣「やった……終わった……。終わったんだ……」




??「それは、どうかしらねえ」




切嗣「お、お前は……!?」


??「この姿で会うのは初めてね、人間」


切嗣「言峰綺礼と協力し、この聖杯戦争を裏で操り、聖杯を手に入れようとした黒髪の女……」




切嗣「白面の使い…………!!!!」



604 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/10(金) 00:22:34.99 ID:LP0ssVaW0


??「ふふふ、よーく知ってるのね」

??「そう……。私は白面の御方の分身、斗和子」


切嗣「斗和子……。残念だったな、すでに聖杯は破壊した」


斗和子「ええ、そのようね」

斗和子「この聖杯戦争で貴方はことごとく邪魔をしてくれたわ、セイバーのマスター」


切嗣「これで、貴様の計画は水の泡だ」


斗和子「ふふふふ」

斗和子「そうね、綺礼もお世話になったようだし、お返しをしないとね」


切嗣「なに……?」


斗和子「空を見上げてご覧なさい」


切嗣「なっ……なんだ……あれは……!?」



605 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/10(金) 00:37:06.75 ID:LP0ssVaW0


切嗣「馬鹿なっ!! 聖杯は破壊したんだぞ……!?」


斗和子「すでに御方の力は器からあふれ始めていた。それなら器を破壊しても……」

斗和子「ね、分かるでしょ?」


切嗣「そ、そんな……そんな馬鹿なことが……」

切嗣「白面の聖杯は、もう止められないっていうのか……!!」


斗和子「ふふっ……。ほほほほ!!」


切嗣「まだだ、まだ!! 貴様にさえ聖杯を渡さなければ……!!」


ドゥゥン!!


斗和子「本当に残念ねぇ」


切嗣「妖怪用の銃弾が効かない……!?」


切嗣「今のは銃弾を体外に反射した……。こいつの能力は、まさか……」



606 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/10(金) 00:57:30.26 ID:LP0ssVaW0


斗和子「セイバーのマスター、私は聖杯戦争のお返しをすると言ったのよ」


切嗣「ぐっ……。なんだ、黒い靄、囲まれて……!?」


斗和子「私とお揃いの黒いドレス。よーく似合ってるでしょう?」


切嗣「アイ、リ……。くっ……はっ、放れ、ろ……!!」


斗和子「先ほどの聖杯はちょっとした試験だったの」

斗和子「貴方が綺礼のように御方の素晴らしさを理解出来たら聖杯を与えようと」

斗和子「でもね、御方を拒否するというのなら……。染まりなさい……」


切嗣「くそっ……このォ……!!」


斗和子「今度のは戯れも何もない。本物の御方の聖杯、極大の呪い……」




切嗣「ぐっ……うっ……ああああああああ!!!!」




斗和子「染めさせておくれ、人間」


斗和子「ふふふふ……。ほほほほほほ!!!!」



607 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/11(土) 18:03:26.06 ID:CXou20dr0


切嗣「………………」


切嗣「ここは……?」




『片方の船に三百人、もう一方の船に二百人。この二隻に同時に致命的な大穴が開いた』




切嗣「なんだ、これは……」




『船を修復するスキルがあるのは衛宮切嗣だけだ。時間的にどちらか一隻しか修復出来ない』


『さて、どちらの船を修復する?』




切嗣「そんなものは……。当然、三百人の船のほうだ」




『正解。それが正しい選択、賢い選択。それでこそ衛宮切嗣だ』



608 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/11(土) 18:18:59.62 ID:CXou20dr0


切嗣「やめろ白面……!!」

切嗣「こんなものを僕に見せてなんになる!!」


切嗣「もう僕はそんな選択をしたくないから、奇跡を……」


切嗣「聖杯を求めたんじゃないか……!!」




『しかし、生き残った三百人の船、その船には人間以外のバケモノが混ざっていたようだ』




切嗣「化け物……?」




『白面の者だ。白面は次に滅ぼす国を、弄ぶ国を決め、この船に乗っている』


『あの島で起こった悲劇を、白面はまた引き起こすつもりだ』




切嗣「そんな……。そんなこと、させるものか……!!」



609 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/11(土) 18:35:08.21 ID:CXou20dr0


『もう船は港に着く。衛宮切嗣には三百人のなかの誰が白面の者かは分からない』


『さて、どうする?』




切嗣「それは……だが……」


切嗣「やめろ、待ってくれっ……!!」




『正解。全員を殴殺する。正しい選択、賢い選択だ。これで次の国の大勢の人間は救われた』




切嗣「やめてくれ……」


切嗣「こんな天秤の計算なんてやりたくないから、僕は……!!!!」




「だが、残念だったなァ……」




切嗣「っ……!?」




「すでに我は、その船にはいなかったのだ」



610 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/11(土) 18:47:34.17 ID:CXou20dr0


切嗣「な、なにを……なにを言ってる…………」


切嗣「そんな…………それじゃ…………」


切嗣「僕が、救いたかった四百九十九人は…………」




「無駄死に、だったなァア」




切嗣「あ、あぁ…………」


切嗣「ふざけるな白面…………ふざけるなっ…………」


切嗣「馬鹿ヤロウ…………馬鹿、ヤロウ…………!!!!」




「くっくっくっ…………」




切嗣「貴様は……貴様は……」


切嗣「なんて、嬉しそうな……カオなんだ……」




「我を、憎め……」




切嗣「う、あ…………あぁ…………」


切嗣「ああああああああああ!!!!!!」








「我を憎めよ…………人間…………」







611 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/12(日) 03:10:20.13 ID:qPzrXHll0




切嗣「…………っ…………」




斗和子「その苦痛の顔、たまらないわァ」


斗和子「ふふ、御方の泥で溺死出来るのだから光栄に思いなさいな」




切嗣「……………………」






泥、か……




ああ……そうだ……




あの時も、僕は…………





612 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/12(日) 03:24:58.82 ID:qPzrXHll0


舞弥『切嗣。切嗣?』


切嗣「ん……。あ、あぁ、舞弥……」


舞弥『どうしたのです切嗣。放心するなど貴方らしくない』


切嗣「いや、何でもないんだ舞弥。気にするな」


舞弥『はい。それで、紫暮との定時連絡は?』


切嗣「ああ、終わったよ」

切嗣「これから紫暮は息子と用事があると言っていた」


舞弥『それでは予定通り別行動で動きます』

舞弥『しかし、紫暮のご子息に会わなくてもいいのですか?』


切嗣「必要ない。紫暮の家族や周辺に接触することは最小限に抑える」

切嗣「光覇明宗と僕が繋がっていることを他のマスターに知られるワケにはいかない」


舞弥『そうですね。どの陣営に白面の使いが紛れ込んでいるか分かりませんから』




少女「あぁっ……!!」



613 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/12(日) 03:40:36.50 ID:qPzrXHll0


切嗣(なんだ……?)


少女「そんな……風で、帽子が……」


切嗣「…………」


切嗣「舞弥、そこから見えるか?」

舞弥『はい、見えています』

切嗣「あれをどう見る?」


舞弥『……少女の帽子が突風で飛ばされ、沼のなかに落ちた』

舞弥『幸い、帽子は木の枝にかかり泥に浸かったわけではない』

舞弥『少女はそれを見て、取りに行くか迷っている。簡単な罠ですね』


切嗣「ああ、その通り。子供を使った典型的なトラップだ」


舞弥『近づけば少女の身体に巻きつかれた爆薬が爆発』

舞弥『それとも帽子が落ちた沼のほうに仕掛けが?』


切嗣「あの子に話しかけた瞬間に狙撃、いや、少女自体が特殊な訓練を……」

切嗣「どれにせよ、こんなもの戦場で腐るほど見てきた」

614 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/12(日) 03:47:51.54 ID:qPzrXHll0


切嗣「フッ……」


舞弥『切嗣?』


切嗣「あの程度のトラップを切り抜けられないようじゃ、この聖杯戦争は勝ち残れない」


舞弥『なるほど。受けて立つと』


切嗣「舞弥、周辺の確認を任せる」

切嗣「事の顛末を見ている狙撃者、マスター、サーヴァントを見逃すな」


舞弥『了解です切嗣』



615 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/12(日) 04:07:52.40 ID:qPzrXHll0


切嗣「どうかしたのかい?」


少女「えっ……あ……」


切嗣「ああ、帽子が飛ばされてしまったんだね」


少女「はう……。赤いリボンが可愛くて、お母さんに買ってもらった帽子……」

少女「取りに行きたいけど……」


切嗣「暗くてじめじめしている。そんなに深くはなさそうだが泥の沼だ」


少女「私やあさこ、みんなはヘビ沼って呼んでるの」


切嗣「ヘビ沼か。それは危険だね、どんな蛇がいるか分からない怖い沼だ」


少女「ど、どうしよう……」

616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 10:35:51.57 ID:cv4LZe8SO

切嗣も救われてほしい
617 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 03:15:53.27 ID:Qz7TCnNO0


切嗣(洗脳は違うな、魔力は感じられない)

切嗣(トラップではなかった、か……。いや、油断はしない)

切嗣(だが接触した以上、何も言わずに立ち去るのも不自然か)


切嗣「…………」

少女「うぅ……」


切嗣「君は……。君は、賢い子だね」


少女「え?」


切嗣「君は正しい選択をしたんだ。賢い子だ」

切嗣「あの帽子と、この沼に入って帽子を取りに行く危険性を天秤にかけたんだ」


少女「てん、びん……?」

618 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 03:34:08.89 ID:Qz7TCnNO0


切嗣「それでいいんだ。それは正しい選択だよ」

切嗣「危険性だけじゃない。君のその綺麗な洋服、きっと泥だらけになってしまう」

切嗣「そんな姿を見たら君の親御さんも心配する」

切嗣「帽子を買ってくれた大好きなお母さんに心配をかけたくないだろう?」


少女「は……う……」


切嗣「賢い君は、あの帽子を天秤にかけて計算したんだ」

切嗣「大のために小を切り捨てる。当然だ」

切嗣「天秤が傾かなかった帽子は尊い犠牲さ。気にすることはない」


少女「で、でも……!!」




ガッポォ、ガッポォ、ガッポォ、ガッポォ




少年「……………………」



619 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 03:48:42.10 ID:Qz7TCnNO0


少女「えっ……!?」

切嗣「な……!?」




ガッポォ、ガッポォ


少年「…………」




少女「あっ……あっ……」


切嗣「お、おい!! 君、駄目だ!! この沼は危険なんだ!!」

切嗣「何をしてるんだい!! 戻ってくるんだ!!」




少年「…………」


ポフ



620 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 03:58:02.03 ID:Qz7TCnNO0


ガッポォ、ガッポォ


少年「ん!!」


少女「あっ、ありが」


切嗣「……待ってくれ、どうしてだい」

少年「ん?」

切嗣「どうして君は帽子を取りに行ったんだ」

切嗣「あれは救うことが出来ない少数、助けられないんだよ」

少年「……?」

切嗣「駄目なんだ……諦めるしかないんだよ……」


ビュゥゥウ


少年「あっ……!?」


少女「また帽子がっ……!!」



621 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:04:59.30 ID:Qz7TCnNO0




切嗣「くっ……!!」




バシャ、バシャ、バシャ、バシャ


バシャァァァァ




切嗣「…………」




切嗣「……やった」




切嗣「間に合った!! 帽子に泥はついてない!!」



622 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:19:50.10 ID:Qz7TCnNO0


少女「わ、私……」

切嗣「今日は風が強い日だ。もう飛ばされないようにね」

少女「はいっ」


少年「へへ」


切嗣「君は……。いや、教えてくれないかい」

少年「ん?」

切嗣「その格好は結婚式かなにかの服だ、しかも下ろし立ての」

切嗣「きっと君は、今から親御さんに酷く怒られるだろう」

少年「うっ……」

切嗣「計算しなかったのかい?」


少年「だって……。大事なんだろ、それ?」


少女「う、うん」


少年「それならさ」




切嗣「たった、それだけの理由で…………泥だらけに…………?」



623 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:36:51.73 ID:Qz7TCnNO0




少年「…………!!」




切嗣「今、なんて……」


少年「でもオジサン、変なこと聞くんだね」


切嗣「え?」




少年「オジサンだって、泥だらけじゃーないか」




切嗣「えっ…………あ…………」




グイグイ


少女「あの……てんびんのはなし分からなくてごめんなさい……」


少女「でも、帽子を取ってくれて……」




少女「ありがとう!!」




切嗣「……っ……」






ああ……




僕は……




僕は、本当は…………





624 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:51:06.25 ID:Qz7TCnNO0




斗和子「そろそろ終わりかしらねぇ?」


切嗣「………………ぃ……」


斗和子「な、なにィ……?」


切嗣「……て…………」


斗和子「あっ……ありえない……御方の極大の呪いを受けて……」


斗和子「人間が立ち上がれるはずがない……!!」




斗和子「聖杯の泥を浴びて……!!!!」




切嗣「…………だ……い……」






切嗣「泥なんて、なんだい……!!」





625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/13(月) 14:09:18.49 ID:jxQVKFeYO
乙ー
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 15:52:48.76 ID:Nviu0g8CO
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/13(月) 19:26:03.25 ID:W4YHcz7FO
泣いた
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/13(月) 20:12:02.83 ID:jxQVKFeYO
下げ
629 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 00:14:28.76 ID:Nw0QlOgW0


斗和子「魔術師ごときがァ……!!」


切嗣「…………」

カチャ


斗和子「ふ……ふふふ……」


斗和子「いいわよ、何度でも撃ちなさいな」

斗和子「私も何度だって溺れさせてあげる……」


ドゥゥン!!


斗和子「ッ……!?」


斗和子「こ、これは…………!?」


切嗣「貴様の能力は、もう分かってる」



630 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 00:33:01.69 ID:Nw0QlOgW0


切嗣「その弾は反射出来ないだろう?」


切嗣「僕の起源弾と紫暮の念を合わせた、特製弾さ」


斗和子「た、たかが特殊な銃弾で……御方の分身である私がァア……!!」




ドゥゥゥゥン!!




斗和子「きええええええええ!!!!!!」




切嗣「いつか貴様に会ったときにお見舞いするために準備していたんだ」


切嗣「遠慮せず味わうといい」



631 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 00:52:12.02 ID:Nw0QlOgW0


斗和子「そう……そうよねぇ……」

斗和子「準備していたのは貴方も一緒なのね、セイバーのマスター」

斗和子「でも貴方が何をしても勝者は私よ」


斗和子「あの聖杯……御方の泥は、貴方には止められない」


斗和子「ふふ、この周辺は灼熱地獄になり、人間は全て悶え死ぬことになる……」


切嗣「僕には止められない、か……。ああ斗和子、確かにその通りだ」

切嗣「でも、それならば僕以外が止めてくれればいいさ」


斗和子「なに……。おのれ、以外……?」


切嗣「まだ気付かないのかい。この会館の周りに人の気配を感じないか?」


斗和子「な、なんだ、あれは……。大勢の人間が会館を囲っている……」


斗和子「まさか……光覇明宗の法力僧!?」


切嗣「貴様の言葉だ。僕はこの聖杯戦争に準備をしてきたと」



632 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 01:08:03.67 ID:Nw0QlOgW0


斗和子「おのれ…………おのれええ…………!!!!」

斗和子「魔術師でありながら、本当に法力僧と繋がっていたのかァァ!!!!」


切嗣「これは驚かされるな斗和子。貴様は魔術師の事情に詳しいらしい」

切嗣「でもね、およそ僕ぐらい魔術師から程遠いところにいる魔術師もいないんだよ」


斗和子「きききき!! 謀ったなセイバーのマスター!!」


切嗣「炎の、尾……!?」


斗和子「法力僧のちゃちな結界など内側から破壊してくれるわ!!!!」


ドゥゥゥゥン!!




斗和子「かっ…………まだ……その、弾が…………」




切嗣「そんなことはやらせはしない。戦友との約束があるからね」


切嗣「斗和子……。貴様は聖杯ともども、ここで燃え尽きるんだ」



633 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 01:25:10.58 ID:Nw0QlOgW0


紫暮「なんなのだ……あの炎の渦は……!!」


紫暮(切嗣、お前は聖杯を破壊したらすぐに脱出するのではなかったのか……!?)

紫暮(まさか一人で白面の使いと……。お前はこうなると知っていたから私を外に……)


紫暮「くっ……。通せ!! 通してくれ!!」


法力僧「し、紫暮様!? いけません!!」

法力僧「結界内には誰も通すなとお達しが出ております!!」


紫暮「私はそんな命は出していない……!!」




御角「私が出しました、紫暮」




紫暮「お…………お役目様…………」



634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/22(水) 23:43:06.95 ID:gZAdzuNfO
乙ー
635 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 00:43:15.77 ID:z6USdcTE0


和羅「お役目様、やはり本山で待たれたほうがよかったのでは……」

御角「いいえ和羅。白面の使いが現れたというのなら私は出向かねばなりません」

御角「白面を三百年封じた二代目お役目、日崎御角として」

和羅「しかし……いえ、分かりました……」


紫暮「申し上げます、お役目様」

紫暮「あの炎上する会館のなかに逃げ遅れた者がおります」

紫暮「ご命令いただければ、今すぐに私が救出に」

紫暮「ですので、結界を……」


御角「紫暮、それは出来ません」


紫暮「で、ですが……!!」


四師僧「紫暮っ!! 貴様ァ!!」

四師僧「お役目様に意見する気かァ!!」

636 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 01:02:35.56 ID:z6USdcTE0


御角「下がりなさい」

四師僧「うっ……」

四師僧「は、はい……」


御角「紫暮、貴方にこそ聞こえているはずですよ」

御角「あの炎のなかで戦う彼の者の叫びのような念……」


紫暮「そ、それは……」


御角「自分に構わず結界を張り続けろと、聖杯の泥を一滴とも外に出すなと」

御角「この念が聞こえないとは言わせませんよ」


紫暮「お役目様……」


御角「紫暮、彼の者の名前を教えてはもらえませんか?」


紫暮「はっ……。名前は、衛宮切嗣……」


紫暮「魔術師殺しの異名を持つ魔術師であり……私の……戦友です……」

637 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 01:27:25.43 ID:z6USdcTE0


御角「衛宮、切嗣……」

御角「その名、このお役目がしかと覚え込みました」


紫暮「お、お役目様が……」


御角「我が光覇明宗の長い歴史のなかでも、今日は特別な日になります」

御角「おそらく魔術協会は、聖杯戦争に白面の使いが紛れ込むという失態を隠蔽するでしょう」

御角「ですが、我が光覇明宗だけは語り継ぐのです」

御角「いつか獣の槍を抜くといわれる伝承者……その者が現れる前に……」


御角「白面からこの世界を護った彼の者の名を」


四師僧「い、いけませんぞ!! お役目様……!!」

四師僧「仏門光覇明宗に西洋魔道の輩の名を残すなどと……!!」


和羅「……お役目様、確かに受け賜りました」


御角「頼みましたよ、和羅」


四師僧「そ、僧正様……」


和羅「………………」



638 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 01:49:12.83 ID:z6USdcTE0




紫暮(切嗣……。お前はなったのだな…………)


紫暮(世界を救う……正義の味方に…………)




和羅「聞けえい!!!! 光覇明宗の僧たちよ!!!!」

和羅「あの燃え盛る泥を外に出すでないぞ!!」


和羅「念を振り絞れええい!!!!」


法力僧「はっーー!!」

法力僧「はっーー!!」


紫暮「お役目様。私も結界の列に加わりたいと思います」

御角「そうですね。紫暮、頼みます」


御角(御髪が……。また貴方には心憂い戦いをさせてしまいましたね……)


紫暮「よし……!!」


紫暮(切嗣、お前がそこで戦うというのなら……私もここで戦うぞ……!!)


紫暮(場所は違えども最後まで、お前と、ともに…………!!!!)



639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 12:09:54.38 ID:NPPLF39hO
お役目様かっこいい
640 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 01:28:44.79 ID:fvVmTm7F0


切嗣「はぁ……はぁ……」

切嗣「どうした斗和子、もう暴れ回るのは終わりかい?」


斗和子「ふ……ふふ……そうねぇ……」

斗和子「これだけ撃ち込まれたら……さすがの私も動けないわ……」

斗和子「喜びなさい。聖杯戦争の勝者は貴方よ、セイバーのマスター」


切嗣「勝者だと? そんなものは存在しない……」


斗和子「それならやはり私の勝ちかしらねえ。私は得るものがあったのだから」


切嗣「な、に……?」


斗和子「西洋魔道……ホムンクルス……」


斗和子「ふふ、この聖杯戦争で手に入れた知識は使えそうだわ」


切嗣「き、貴様ァ……!!」

641 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 01:39:49.21 ID:fvVmTm7F0


斗和子「まさか魔術師……」


斗和子「私の計画が、この聖杯戦争の一つだけなはず……」




斗和子「ないわよねぇ……?」


ニヤァア




切嗣「斗和子っ……!!」


斗和子「ふ、ふふふ…………ほほほほ…………」


切嗣「ホムンクルスだとォ……。やめろ、イリヤにはっ……!!」


斗和子「かか……」


切嗣「貴様は何を企んでいる!!!! 言えっ!!!!」




斗和子「かかかか、かかかかかか!!!!」




切嗣「斗和子ォ!!!!」



642 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 01:59:33.14 ID:fvVmTm7F0




切嗣「……っ…………」


切嗣(炎と煙で、僕は意識を失って……)


切嗣(斗和子は……。そうか、完全に燃え尽きたか……)


切嗣(いや、ヤツは白面の分身……。ここで消滅しても本体がいる限り……)

切嗣(だが妖怪の復活にはそれなりの時間がいるはず……)


切嗣「ぐっ……う……」


切嗣(身体に魔力を通して、無理やり動かそうとしても駄目か……)

切嗣(あんな化け物を相手にしたんだ、当然といえば当然……)


切嗣(だけど、紫暮が上手くやってくれたみたいで……よかった…………)




切嗣(ああ……本当に、安心した……よ…………)



643 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 02:17:20.77 ID:fvVmTm7F0




紫暮『……なぁ切嗣、もしもの話だ』


切嗣『なんだい急に、紫暮』



644 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 02:32:41.62 ID:fvVmTm7F0


紫暮『なーに、ただの暇つぶしだ』

紫暮『いつの日か現れるといわれる獣の槍の伝承者、お前はどんな人間だと思う?』


切嗣『伝説の獣の槍、その伝承者か……。そうだね……』


切嗣『あの白面を滅ぼす力があるといわれる槍の使用者だ。屈強な身体の人間だろうな』

切嗣『いや待て……。おそらく、それだけではないはずだ』

切嗣『槍を補助する近代兵器の技術……いや、それよりも妖怪に対しての知識が……』

切嗣『そうだ。きっと僕よりも爆薬に』


紫暮『ふふっ、はははは!!』


切嗣『……紫暮、これでも僕は真面目に』


紫暮『すまんすまん、あまりにもお前らしい答えだからついな』




紫暮『だが、本当にどんな人間なのだろうなァ、伝承者とは』




切嗣『獣の槍を抜き、白面の者を倒す人間か……』



645 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 02:43:53.67 ID:fvVmTm7F0




そうか……


今なら分かる……




獣の槍の伝承者……


白面の者を倒す人間というのは……




きっと…………


あの少年のような…………






「……ああ。ただいま、アイリ」




「その、一つ聞きたいことがあったんだ」




「君は、僕といて……幸せだったかい?」




「そうか……」






「ありがとう」





646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/24(金) 16:44:37.41 ID:O1jlozw1O

幸せに逝けるのが藤田作品
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/24(金) 22:55:31.72 ID:IHziz2RGo
藤田先生は好きなキャラを最高にカッコよく死なせるからな
648 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 01:45:07.94 ID:GiaGRL0h0






法力僧「はい、そうです。二名発見しました」



法力僧「おいお前、何か着るものを」


法力僧「は、はいっ」





649 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 01:53:20.91 ID:GiaGRL0h0




言峰「…………ここは?」




ギル「やっとお目覚めか、綺礼よ」

言峰「ギルガメッシュ……。これは、どうなっている?」

ギル「どうもこうもない。あの薄汚れた聖杯が我たちを結界の外に吐き出したのだ」

言峰「結界……?」

ギル「見るほうが早かろう」


言峰「なんだ、あれは……」


言峰「馬鹿なっ、あんな建物一つ炎上しただけで終わるはずがない!!」

言峰「聖杯は……白面の泥は……この周辺全てを焼き尽くすほどの……!!」


ギル「セイバーのマスター、あれが何か仕組んでいたようだな」


言峰「衛宮切嗣……。ヤツが……!!」

650 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 02:09:01.28 ID:GiaGRL0h0


言峰「私はヤツに撃たれた……何故……。心臓の鼓動が、ない……」


ギル「あの泥に飲み込まれ、お前は生き返り、我は受肉した」


言峰「そんなことが……有り得るというのか……?」

言峰「だが確かに、私の身体から溢れるこの黒い力は、聖杯の……」


ギル「あの女がセイバーのマスターにやられる寸前で計画を変更したとも考えられる」


言峰「斗和子が……。そうだ、それしか説明が……」


ギル「妖の分際でしたたかな女だったからな。しかし、もしかしたら……」

ギル「聖杯のなかにある確かな意思が、同属のお前をそうさせたのかもしれないな」


言峰「白面が……私を生き返らせ、炎のなかから逃がした……?」


ギル「クックックッ、ヤツはまだお前に何かをやらせたいようだぞ、綺礼よ」


言峰「フフ……。そうか……白面が、私に……!!」

651 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 02:20:56.04 ID:GiaGRL0h0


ギル「我もヤツには興味が湧いた」

ギル「綺礼よ。白面を海底から引き上げ、我の前につれて来い」


言峰「いいだろうギルガメッシュ。契約は継続だ」


言峰「白面が自力で起き上がるか、それとも次の聖杯戦争が先かは分からぬが……」


言峰「必ずや私は、白面を世界に解き放とう」




言峰「それこそが、私が産まれながらに持つ疑問の……」




言峰「答えなのだから……!!」



652 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 02:47:10.63 ID:GiaGRL0h0






・大橋歩道橋・出口






セイバー(……キリツグに何があったのか、私に知るすべはない)


セイバー(だが、これだけは言える)


セイバー(やり方は違えど、確かに貴方と私が目指した場所は同じだったと)




セイバー(ならば、迷うことなどない)




うしお「どうしたんだセイバー? 急に立ち止まって」


セイバー「ウシオ、先ほどの話の続きになるのですが」


セイバー「私は……白面から世界を救おうと聖杯を破壊したワケではありません」


うしお「そう、なのかい……?」


セイバー「はい。ですが、もしこれから同じことが起きようとしているのなら……」


セイバー「今度は私の意思で、聖杯を破壊します」


うしお「ああ……!!」


うしお「セイバーならそう言ってくれると思ってたぜ!!」


セイバー「はい、マスター」



653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/25(土) 05:21:00.34 ID:GEG9kHLeO
乙ー
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/19(火) 23:19:32.08 ID:Ru2+CkF0o
655 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/21(木) 23:36:44.48 ID:U3ImgoxB0


【第二十三話 白面と聖杯『この世全ての悪』 】

656 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:07:09.34 ID:5bO41AvZ0


・教会中庭


ギル「クックックッ」


ランサー「まだ、まだァ……」

ジャラ……


ギル「鎖に繋がれ狗らしさが増したな、ランサーよ」

ギル「退屈よなァ。我が手を下すまでもなかったわ」


ランサー「どこに行く……。待ちやがれェ……!!」


ギル「ランサークラスといえど、マスターを失ったあとに宝具を連発すれば魔力は尽きる」

ギル「猟犬よ。そのまま身動き出来ずに、己の無力さを噛み締めながら逝くがいい」


ランサー「待てって……言ってんだろォ……!!」


ギル「ククッ……フフフ……ハーッハッハッハッ!!!!」

657 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:29:07.83 ID:5bO41AvZ0


・蒼月家付近


真由子「それで凛先輩が録画のやり方を教えてくれって」

麻子「え〜? あの凛先輩が〜?」


言峰「これはこれは……。探す手間が省けたか」


麻子「あれ? 言峰さん?」


言峰「このような場所で会うのは珍しい。米次店主は壮健かな?」

麻子「あはは……。また言峰さん用に新しい激辛麻婆を試作してるみたいです……」

言峰「それは楽しみだ。是非伺わせてもらうとしよう」


真由子「麻子、その……」


麻子「あぁ真由子ごめん。こちらは言峰さん、ウチの常連なの」


言峰「そう警戒することはない、井上真由子」


真由子「どうして私の名前……」

658 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:41:40.65 ID:5bO41AvZ0


言峰「私はこの土地を任された教会の神父だよ」

言峰「いわば光覇明宗の蒼月紫暮と同じ立場の人間だと思ってくれるといい」


真由子「うしおくんの、おじさんと同じ……」


言峰「無論、私も君のお役目の力は知っている」

言峰「魔術協会……いや、世界中の組織が狙っていることも」


真由子「それは……」


言峰「君をホルマリン漬けの標本にしようとする連中がいるなど許し難い」

言峰「しかし井上真由子、安心していい」

言峰「この国の光覇明宗はもちろんのこと、私もそんなことはさせはしない」


真由子「は、はい……。ありがとう、ございます……」


言峰「フフ、分かってもらえたようで嬉しいよ」

659 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:54:40.78 ID:5bO41AvZ0


言峰「ところで、君たちはどこに行こうとしていたのかな?」


麻子「それはうし……同級生に会いに芙玄院に」


言峰「なるほど。実は私も芙玄院には行くつもりだったのだよ」


麻子「言峰さんも? 教会のお仕事で?」


言峰「ああ、そんなところだ」

言峰「道すがら君たちに同行することになるかな」


真由子「それは……そうですね……」


言峰「では、行こうか」

660 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 01:15:01.46 ID:5bO41AvZ0


麻子「そういえば言峰さんっていったら前にお父さんが変なこと言ってたわ」

言峰「ん……?」

麻子「商店街の催し物で空手をやったじゃないですか?」

言峰「ああ、米次店主が主催したものだ」

言峰「参加者が少なく、私も無理やり出場させられて困りものだった」

真由子「そんなことが……」

麻子「それがお父さん、言峰さんはもっと強いんじゃないのかって言ってましたよ?」


言峰「フ……。それは米次店主の買いかぶりだ」

言峰「私も昔はそれなりだったんだが、衰えていた」


麻子「やっぱり言峰さんなにかやってたのね」

麻子「でもお父さん残念がってたなァ」

麻子「言峰さんは得体の知れない強さがあるから、きっと強いって」


言峰「得体の知れない、か……。フフフ……」

661 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 01:37:34.17 ID:5bO41AvZ0


言峰「さて、芙玄院はすぐそこだ。人通りも消えた」

言峰「頃合いだ」


真由子「え……?」

ガシィッ


真由子「な……んで……」

言峰「結界を張るのが一瞬遅れたな、井上真由子」


麻子「言、峰さん……? なに、してるの……」


言峰「感謝しよう中村麻子」

言峰「お前が警戒を解いてくれなかったら、こうも簡単にはいかなかった」


麻子「放して……。真由子を放して……!!」

662 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 02:41:54.01 ID:5bO41AvZ0


麻子「はぁ……はぁ……」


言峰「悪くない蹴りだ」

言峰「娘が空手をやめてしまったと相談されたが、なるほど……」

言峰「才能はある。そのまま鍛えていれば凛に及ばずとも、それなりには」


麻子「きぃえええ!!」

ビシィッ


言峰「無駄だ」

麻子「そ、そんな……。う、あ……」

真由子「あ……麻子ぉ……」

言峰「衰えたといってもお前のような小娘に負けることはない」


麻子「言、峰……さん……どう、して……」


言峰「フフ、いい顔だ中村麻子」

言峰「その顔が見れるなら地域のくだらん交流というのも時間の無駄ではなかったな」


麻子「うぅ……あ……ぁ……」

663 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 03:11:59.62 ID:5bO41AvZ0


麻子「…………」

真由子「…………」


言峰「なに、殺しはしない」


言峰「お役目の力は最も厄介だが……」


言峰「同様に、最も魅力あるものなのだから」




言峰「フフフ……!!」



664 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 00:48:36.77 ID:nGJHk2hU0


・蒼月家居間


凛「桜、イズナ見なかった?」

桜「イズナさんなら先ほど、妙な臭いがするから仲間を呼んで来ると言って出て行きましたけど」

凛「なにそれ……。ま、妖怪には妖怪の事情があるか」


凛「書庫にいたはずのセイバーは急に消える。とらとは連絡つかない。今日はどうなってるのよ」

凛「うしおくんも勝手に出歩いてるみたいだし、これは帰ったらお仕置きね、お仕置き」

665 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 01:04:04.36 ID:nGJHk2hU0


凛「あっキリオくん、いいところに……」

キリオ「え?」

凛「ちょーっと聞きたいことがあるのよねぇ」

キリオ「うん、お姉ちゃん」

凛「蔵を整理してたら綺麗な石が出てきたじゃない?」

キリオ「綺麗な石……。お祓いを頼まれてる宝石のことかな……」

凛「そうっ、それ!!」

キリオ「う、うん」

凛「それって光覇明宗のお祓いが済んだら、ど、どうなるのかしら?」


キリオ「詳しいことは紫暮様に聞かないと分からないけど……」

キリオ「多分持ち主に返したり、処分したりしてると」


凛「しょ、処分!?」

666 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 01:35:54.59 ID:nGJHk2hU0


凛「…………」


凛「キリオくん、実は私は魔術でお祓いが」

桜「姉さんっ!!」

凛「さ、桜!? 聞いてたの!?」

桜「いくら金銭的に厳しくなったとしても、お祓い品を宝石魔術に使うなんて!!」

凛「冗談よ冗談っ!!」

凛「キリオくんも今のは忘れて、ね?」

キリオ「お姉ちゃん、僕も分かるよ……」

凛「え?」

キリオ「本当は僕もスーパーカーのプラモデルが欲しかったんだ……」

凛「キ、キリオくん……?」


キリオ「お金って、大事だよね……」


凛「よく分からないけどキリオくんも苦労してるのね……」

桜「姉さんのとは少し違うような感じですが……」

667 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 01:48:19.53 ID:nGJHk2hU0


凛「……っ……!?」

桜「姉さん……?」


イリヤ「リン」

凛「分かってる。さてと、これはどういうことかしらねぇ」

セラ「すでに正門は越えられています」

リズ「迎撃、する」


凛「なーんでとらもセイバーもいないときに限ってこれなのよ……!!」


凛「うしおくん、早く帰ってきてくれないと本当に怒るわよっ」



668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/23(土) 05:39:31.30 ID:0LZZ2yOWO
乙ー
669 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/27(水) 00:22:09.28 ID:/XXi9kGY0


・蒼月家玄関前


言峰「どうした凛。そのように身構えて」


凛「……綺礼…………」


麻子「…………」
真由子「…………」


凛(後ろの二人に目立った外傷はない。おそらく魔術で操られてるだけ……)


凛「それで、説明ぐらいしてくれるんでしょうね?」

言峰「お前のことだ、大体の予想はしているのではないか」

凛「まぁね。でも監督役がゲームに参加するなんて、ルール違反なんてもんじゃない反則よ」

言峰「ルール違反か……」

言峰「フフ……。凛、お前は未だ聖杯戦争をしているようだな」

凛「どう、いう意味よ……」

言峰「聖杯戦争とは聖杯を降臨する儀式のことだ」

言峰「ならば、この聖杯戦争は始めから聖杯戦争ではないのだよ」

凛「なにワケの分かんないことを……。とにかく二人を解放してもらうわよ」

言峰「出来ない相談だな、凛」

670 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/27(水) 01:06:54.69 ID:/XXi9kGY0


イリヤ「待ちなさい監督役」

凛「イリヤ……」


言峰「うむ、アインツベルンが用意した器か」


イリヤ「私が必要なんでしょ。だったら連れて行けばいいわ」

セラ「お嬢さまっ!!」

リズ「イリヤ、駄目」

イリヤ「ウシオやキリオには悪いけど、いつかこんな日が来るかもって覚悟はあったわ」

イリヤ「アサコとマユコをどう聖杯の器にする気だったかは知らないけど、私のほうが適任よ」

イリヤ「だから二人を解放しなさい」

凛「イリヤ、アンタ……」

イリヤ「勘違いしないでリン。二人を巻き込めばウシオが悲しむ、だからよ」

イリヤ「それに、アサコとマユコのお弁当は美味しかったから」


言峰「フフフ……!!」

言峰「勘違いをしているのはお前だ、アインツベルンの器よ」

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