うしおとセイバー

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371 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 18:04:07.43 ID:q9dcR5S+0


おんじ「げぇぇ〜〜!? 長飛丸ぅぅ〜〜!?」パリンッ

とら「けけっ」

おんじ「ど、どうなっとるんじゃ……。妖が復活するには、そりゃ長い時間がかかって」

うしお「それはまた今度説明するからさ!!」

うしお「おんじ、イズナだ!! イズナを呼んでくれ!!」

とら「イズナ? そういうことかよ」

おんじ「イズナだァ? あのな蒼月潮、妖怪と人間は」

とら「じじい、話が進まねーだろ。とっととイズナ呼んで来いよ」

バチバチ、ビリビリ

おんじ「は、はい〜〜〜〜!!!!」


リズ「トラ、頼もしい」

セラ「よ、よかったのですか、トラ様」

とら「いいんだよ。この手に限るぜ」

うしお「いいのかなァ……」

372 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 18:32:16.16 ID:q9dcR5S+0


イズナ「うしおーーっ!!」

うしお「イズナっ!! 元気だったか!?」

イズナ「バッカ、妖怪に元気もなにもないって言ったろォ!!」

セラ「本当に鏡の中から出て……。魔術ではないのですよね……」

リズ「かわいい」

イズナ「ん? こりゃまた綺麗どころが増えてるなァうしお」

イズナ「北海道まで駆けつけてくれた五人じゃ飽き足らず、また二人も増やしたのかい」

うしお「な、なんの話だ?」

とら「けっ」

イズナ「よォ、長飛丸〜〜!!」

とら「お前はあんまり驚かんのだな」

イズナ「どうせ長飛丸のことだからな!!」

イズナ「いつかはうしおのところに戻って来ると思ってたのよォ!!」

ゴォォォォ

イズナ「きゃーー!! これこれ久しぶり!! きっくーーっ!!」

リズ「いいノリしてる」

うしお「イズナは相変わらずみたいだなァ」

セラ「だ、大丈夫なのですか?」

イズナ「綺麗な姉ちゃん、妖怪にはこんなもん挨拶みたいなもんよォ」


イズナ「ふー、さてと挨拶も済んだってことで……。聞かせてもらおうかい」

イズナ「七十五匹の眷族をもつ人間体内のエキスパート……」

イズナ「この『イズナ』様を呼んだ理由を」

373 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 19:05:00.59 ID:q9dcR5S+0


イリヤ「上手いことやってるわね。キリオのほうはどう、こっちが専門でしょ?」

キリオ「駄目だ、完全に妖にとり憑かれてる。法力で無理やり倒すとこのお姉ちゃんが危険だよ」

凛「そんな……」

真由子「桜先輩……」


イズナ「なーるほどねぇ。大体の事情は分かったぜい」

麻子「イズナくん!?」

イズナ「よォ姉ちゃんたち、久しぶり!!」

セイバー「ウシオ、こ、この者は……?」

うしお「イズナさ。前に世話になった妖怪なんだ。詳しい話は今度するよ」

セイバー「分かりました……。そのときにはその、触ってもいいですか?」

うしお「えっ?」

セイバー「い、いえ、なんでもありません」


イズナ「こんなことは長の頼みでもない限りやらないんだが、うしおの頼みじゃ断れねえや」

イズナ「でもよォうしお、杜綱んときは獣の槍があったから体内に入れたんだぜい?」

イズナ「この姉ちゃんを助けたいのは分かるけど、人間のうしおを体内に連れてくことは出来ねえや」

うしお「いや、獣の槍はあるんだ。イズナ」

イズナ「け、けけ、獣の槍がある!?」

374 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 19:19:01.09 ID:q9dcR5S+0


うしお「とら、頼む」

とら「待ちなうしお。おめえ分かっとんのか?」

とら「わしの宝具『獣の槍』には制限時間がある」

とら「この女の体内に入ることに力を使えばいつもの二倍、いや三倍の早さよ」

とら「本物の獣の槍のように妖になるワケじゃねえ、魔力がなくなり次第おめえはただの人間になる」

とら「そうなりゃイズナの力があったって、おめえは死ぬだけよ」

うしお「杜綱さんのときと同じ、いや、それよりもか……」

うしお「それでもよ、とら、オレは行きてえんだ」

うしお「桜姉ちゃんに何がとり憑いてるかは知らねえさ」

うしお「でもよ、もし婢妖みてえのがとり憑いてて苦しんでるなら助けてやりてえよ」

とら「てめえが死ぬかもしれねえ、それでもかよ?」

うしお「これからだったんだぜ。桜姉ちゃん、遠坂先輩を姉さんって呼んでた。もっと呼んでもらいてえよ」

凛「蒼月くん……」

とら「けっ、まぁ分かっとったがな」

とら「だが決めるのはわしじゃねえ。りんだ」

凛「私……?」

375 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 19:35:39.44 ID:q9dcR5S+0


とら「宝具は大量の魔力を消費する」

とら「連戦で魔力が低下してるおめえじゃ獣の槍を維持出来るか分からねえぞ、りん」

凛「…………」

凛「まだ、よく理解出来てないけど……」

凛「宝具『獣の槍』を使えば桜を救えるっていうなら……。やって、とら」

とら「やれるのかよ?」

凛「私の魔力が完全になくなったとしても、維持してみせるわ」

とら「……おめえがそこまで言うとはな」

凛「だってここでおりたら、それこそ本当に姉なんて名乗れないわよ?」


キィィィィン

パシィッ


うしお「とら!!」


とら「わしは行かんぞ。人間の体内なんて二度と行かんと決めとるからな」


うしお「へっ、ありがとよ!!」

凛「これだけで十分よ、とら!!」

376 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 20:39:13.24 ID:q9dcR5S+0


イズナ「うしお……。それ、本当に獣の槍なのかよ!?」

うしお「すまねえイズナ、説明してる時間はねえんだ。頼む、やってくれ」

イズナ「よ、よし、分かったぜい」


うしお「キリオ、イリヤ、何が起こるか分からねえ。桜姉ちゃんを抑えといてくれ」

キリオ「うん、分かったよ」

イリヤ「こっちは任せなさい、ウシオ」

うしお「セイバーもキリオたちを手伝ってやってほしいんだ」

セイバー「分かりました。サクラを助けに行くのですね?」

うしお「あぁ」

セイバー「止めるつもりはありません。ウシオ、ご武運を」


真由子「うしおくん、桜先輩を助けてあげて」

うしお「真由子、もちろんさ」

麻子「えいっ」

うしお「な、なんだよ麻子?」

麻子「私たちはまだ遠坂先輩がお姉さんだとかの話を聞いてないわよ?」

うしお「し、しかたねーだろ。そんな時間なかったんだ」

麻子「だから、絶対無事に戻ってきて説明しなさいよね、うしお」

うしお「……あぁ、分かったぜ」

377 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 20:48:25.78 ID:q9dcR5S+0


うしお「それじゃ、行ってくる」

凛「待って!!」

うしお「遠坂先輩……?」

凛「私も連れて行って」


とら「はぁ〜〜〜〜!?」


凛「私も行くわ」

とら「馬鹿言うんじゃねえ!! りん、おめえはここで宝具の維持に専念すんだよ!!」

凛「その宝具の維持だって蒼月くんの状況が分からないと出来ないわよ」

とら「馬鹿より馬鹿がいやがったかよ……。おいうしお!! こいつを止めな!!」

凛「蒼月くん。あの声、いえ、桜にとり憑いてるヤツに心当たりがあるの」


凛「きっとこの戦いは……『遠坂』の私が行かなきゃならない使命なのよ」


うしお「……よし、行こう!!」

378 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 21:01:22.22 ID:q9dcR5S+0


イズナ「長飛丸は来ねえのかー?」

とら「うるせえーーっ!! そんな馬鹿どもに付き合いきれるか!!」


凛「とら……」

とら「りん、おめえ死ぬかもしれねえんだぞ!? 聖杯戦争はどうすんだよ!?」

凛「それでも行くわ。もう決めたのよ」

とら「わしは行かんぞ!!」

とら「わしを連れてきたきゃ令呪でも使うんだなァ!! 令呪でもよォ!!」

凛「使えないわよ、令呪なんて。だってこの戦いは聖杯戦争とは違う私の戦いだもの」


とら(こんのォ馬鹿がァ〜〜。てめえの呼び名で令呪を使ったヤツが言うことか〜〜!!)


凛「……ごめん、とら」


とら「あ?」


凛「聖杯戦争に勝ち残るって約束、私のほうから破りそうだわ」


とら「…………」

379 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 21:17:21.23 ID:q9dcR5S+0


うしお「遠坂先輩、オレと一緒に槍を握るんだ」

凛「えぇ、分かったわ」

イズナ「ククッ」

うしお「なんだイズナもか。ははっ」

凛「蒼月くん?」

うしお「あぁごめんよ。前にも同じことがあったからおかしくてよ」

とら「……おいうしお、なに笑ってやがるんだよ」

うしお「別になんでもないさ、とら」


とら(その期待した目〜〜!! ムカつく!! てっぺんきた!!)


イズナ「それじゃ、行くぜーーっ!!」


とら「くそったれい!!!!」


凛「とらっ!?」

うしお「とらァ!!」


とら「勘違いすんじゃねーぞ!! うしお!! りん!!」

とら「りんはわしのますたーなのよ!! だからしかたねーの!!」

とら「それに獣の槍はわしの宝具!! どんな使い方されるか見とかんとなァ!!」


凛「フフ、なるほどね。そういうことか」

380 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 21:22:06.59 ID:q9dcR5S+0


うしお「へっ……。よし……」




うしお「行っくぞーっ!! とらーーっ!!」


とら「うるっせーんだよ!! うしおーーっ!!」






おんじ「なんじゃなんじゃ、こりゃどうなっとるんじゃ……」



381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 23:40:51.79 ID:XQLk8Shdo
そのセリフは涙腺にくるモノがあるな…
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 01:14:44.70 ID:BWmtl9bsO
イズナ登場嬉しい
毎回上手くリンクさせるなぁと感心する
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/11(日) 13:32:57.14 ID:nF3029Tzo
乙ー
384 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:03:35.58 ID:12y1CqG30


セイバー「ウシオ……」

麻子「大丈夫ですよ。セイバーさん」

セイバー「アサコ、ですが……」

麻子「あいつは絶対戻ってきます。私たちのところへ」

セイバー「信じているのですね、ウシオを」

麻子「アホでバカだから遅刻することもありますけどねっ」

セイバー「分かりました。信じましょう、私も」

385 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:09:13.72 ID:12y1CqG30


・桜の体内


イズナ「なーんだ。長飛丸、やっぱり来たのかァ」

とら「おいイズナ!! おめえも勘違いしとるようだな!!」

イズナ「もう分かってるってー。うしおとその姉ちゃんの為じゃないんだろォー?」

とら「イズナァァァァ!!!!」

イズナ「ひゃーーっ!! って長飛丸、どうやらあちらさんから来てくれたみたいだぜい」


蟲「……!!」

カサカサカサ、カサカサカサ


イズナ「こりゃまた卑猥な形をした妖だなァ」

とら「数も大きさも婢妖と似てやがるがよ、気味がわりいな」

386 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:16:56.75 ID:12y1CqG30


凛「こんなのが桜の身体の中に……」

うしお「遠坂先輩、大丈夫かい?」

凛「なんとかね」

うしお「そうか、よかった」

凛「これが獣の槍なのよね。まさか自分で握ることがあるなんて思ってなかったけど」

うしお「でも遠坂先輩の髪は変わってないけど、なにかあるのかな?」

とら「わしが選んだ宝具の使用者がおめえだからだよ」

うしお「使用者?」

とら「槍の力は今うしおとりんに分散されてるが、使用者って括りならうしおだからな」

凛「なるほどね、そういうことか」

とら「その槍の力も、おめえら二人分が体内に入ることに使ってんだ。分かってんのか、りん」

凛「そうね、時間がないわ。蒼月くん。私のことはいい、派手にやって」


うしお「遠坂先輩……。よーし、分かった!!」


イズナ「あーあ、姉ちゃん。コイツらにそんなこと言っていいのかい?」

凛「えっと、イズナ、くん? どういう意味?」

イズナ「イズナでいいぜい姉ちゃん。まぁ見てなって」

387 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:34:40.04 ID:12y1CqG30


蟲「……!!」

カサカサカサ、カサカサカサ


うしお「数が多いな……」

うしお「とら、来いっ!! こんなときは分かってるよなァ!!」


とら「わしに命令するんじゃねえクソうしお!!」

とら「だが……。へっ、あの方法かよ!!」


凛「ちょ、ちょっと待ってよ。派手にって言ったけど少しは手加減……」

イズナ「もう聞いちゃいねえや」


うしお「うおおおお!!!! 蹴散らせええええ!!!!」

とら「はーっはっはっはっはっ!!!!」


凛「言うんじゃ……なかったわ……」

388 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:41:52.98 ID:12y1CqG30


蟲「…………」カサカサカサ


うしお「なんだ、逃げていく……?」

とら「臭うぜ。こいつらの親玉はこの先よォ」

うしお「イズナ、この奥はどこなんだ?」

イズナ「人間で言うところの心臓って部分だな」

凛「桜の、心臓に……」


イズナ「道を抜けるぜぇ。この先はいっきに広くなるんだ、気をつけてくれよ!!」


うしお「なっ……。あ、あれは……!?」

凛「心臓に何かが張りついてる!?」

うしお「なんて大きさなんだ、こんなのが桜姉ちゃんの心臓に……」


とら「タコが、間違えるんじゃねえ。今のわしらは小さくなってんだ」

とら「あんなのは外から見たらおめえらの親指大ほどしかねーよ」


うしお「そ、そうか……。とにかくアイツを心臓から切りはなさねえと!!」ダッ

イズナ「うしお駄目だーーっ!!」

凛「な、なに!?」

389 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:52:31.13 ID:12y1CqG30


うしお「イズナ? どうしたんだ?」

イズナ「あぁそうか、そういうことか。長飛丸が気づかねえのも無理はねえや」

とら「おいイズナ!! なんなんだよ、あんな変化一匹わしの雷で」

イズナ「そいつは出来ねえぜ長飛丸」

イズナ「この妖は、この姉ちゃんにとり憑いてるんじゃねえや」

イズナ「姉ちゃんの心臓に、直接とり憑いてやがるのさ!!!!」


とら「な、なにィ〜〜〜〜!?」


イズナ「長飛丸の雷なんて当てたらどうなるか、人間の心臓は妖と違ってデリケイトなんだぜ?」

とら「で、でり……?」

凛「それじゃ……」

うしお「あの変化は、倒せない……!?」


??「だから言ったじゃろう。大人しくしておれと」


凛「こ、この声……!!」


??「貴様らには、何も出来ないのだからの」


凛「やっぱりアンタは……。間桐、臓硯……!!!!」


臓硯「カカッ……」

390 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:12:21.71 ID:Ifrpe99S0


うしお「まとう、ぞうけん……。間桐ってことは間桐先輩や桜姉ちゃんの!?」

凛「ええ、そうよ。あの慎二の祖父、間桐家の実質的当主よ」


臓硯「遠坂の小娘がここまで来るとはの」


凛「話してもらえるんでしょうね、間桐臓硯」

凛「これはどういうことなのか。なんでアンタが桜の心臓にとり憑いてるのかを!!」


臓硯「うむ、いいじゃろう。ここまで来た褒美にわしの望みを聞かせてやろうか」

391 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:15:27.46 ID:Ifrpe99S0


桜「…………」


真由子「桜先輩の震えが止まった……」

麻子「終わった、ってこと……?」


イリヤ「いいえ、サクラが起きる気配がないわ」

キリオ「妖の力もまだ感じるよ」


セイバー「むしろ、これから、ということですか」

麻子「これから……」

真由子「うしおくん……」

392 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:26:15.56 ID:Ifrpe99S0


うしお「それじゃ、桜姉ちゃんは子供の頃からお前に……!?」

凛「……っ……」


臓硯「カカッ、貴様らにも聞かせたかったよのう」

臓硯「蟲蔵に放り込んで初めの三日は、そりゃもう散々な泣き叫びようじゃったからの」


うしお「こォの、ヤロォ……!!」


臓硯「見せたかったよの遠坂の小娘。四日目からは声すら上げなくなったこの小娘の姿をォ」


凛「…………」


凛「……蒼月くん。この槍、貸してもらうわね」

うしお「えっ、遠坂先輩……!?」


凛「アイツはここで……。私が殺す……!!!!」


臓硯「いいぞォ遠坂の小娘。いい貌じゃ」


凛(……憎い、憎い、アンタが憎い……!!!!)

うしお「獣の槍を通して、遠坂先輩の感情が流れ込んでくる……!?」

393 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:48:05.97 ID:Ifrpe99S0


イズナ「姉ちゃんどうしちまったんだ、いきなり仕掛けるなんてよ!!」

とら「ちっ、宝具は宝具でもあれは獣の槍かよ……。槍自身が使用者を選びやがった……」

イズナ「あの心臓に攻撃しちゃ駄目だぜ!! この姉ちゃんが危ねえよ!!」

とら「おいうしお!! りんを止めなァ!!」


凛(……憎い……憎い……!!)


うしお「ダメだ遠坂先輩っ!!」

凛「なんで止めるのよ蒼月くん!?」

うしお「それじゃダメなんだよ……」

凛「どうしてよ!? 蒼月くんは桜を助けたくないの!?」

うしお「助けたいさ。でも今の先輩のままじゃ桜姉ちゃんは助けられない」

凛「そんなことないわ。今すぐアイツを殺せばいいのよ……!!」

うしお「いいや。きっと、この槍は砕けちまうよ」


うしお「オレのときみたいにさ」


凛「……っ!?」


うしお「あいつが許せないのは俺も一緒さ。だからよ、一人でやろうとなんてしないでくれよ」


凛「……わ、私……なんで……」

394 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 01:02:00.61 ID:Ifrpe99S0


臓硯「……あの白面を倒した小僧か。不要なことをするわ」


うしお「間桐臓硯……。お前の思いどおりにはさせないさ!!」


イズナ「人間ってのはちょっと見ない間にあんなに変わるもんかねぇ。妖とは大違いだぜい」

とら「へっ、コーコーセーとかいうのになってマシになったかよ。だがまぁ、悪かねえぜ」


臓硯「せっかく良い貌をしておったのにのォ、遠坂の小娘」

臓硯「貴様らには分からんか、長年生きとると色々と飽いてくるものよ。なのだが……」

臓硯「飽きんよなァ、あの人間の憎悪を貌だけは……ククク……」


とら「けけっ、けけけ!!」

イズナ「へへっ、おいおい長飛丸。あんまり笑ってやるとカワイソウだぜい?」

とら「悪い悪い。ここに来る前のうしおじゃねえが笑うのを耐えられなかったぜ」


臓硯「同じく白面を倒した妖怪のサーヴァント……。何が、そんなに面白い?」


とら「いやァ、あんまりにも面白くてよォ」

とら「もっと聞かせてくれよ。たかが数百年しか生きてねえ変化の話をよ」

395 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 01:55:44.86 ID:Ifrpe99S0


臓硯「その口ぶり、生前は大層な妖怪じゃったろうが……」

臓硯「今の貴様は魔力で動く人形、ただのサーヴァントじゃ」

臓硯「ククク……。貴様を殺すのも」


蟲「!!!!」


うしお「巨大な蟲が四方から……!?」

凛「とらっ!!」


臓硯「簡単じゃ」


とら「で?」


ドゴッ!!


蟲「」


臓硯「なっ……」


とら「誰が、誰を、殺すってぇ?」

396 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 01:59:15.06 ID:Ifrpe99S0


セイバー「始まったようですね」


桜「…………」ガタガタ


キリオ「結界を張るよ。お姉ちゃんたちは下がって」

真由子「私たちにも何か出来ることがあればいいんだけど……」


イリヤ「…………」

リズ「イリヤ、どうしたの」

イリヤ「ウシオたちが突入して、どれくらい経ったか分かる?」

セラ「三十分以上は経ったかと」


イリヤ「……不味いわね」


麻子「イリヤちゃん……?」

397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 02:58:04.52 ID:i/LPljmoO

格の違いを見せつけるとらマジかっけぇ
398 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 02:34:56.13 ID:SbmFcXbs0


臓硯「行け、行け、蟲どもよ。奴らを嬲り殺しにしてくれるわ」


蟲「……!!」カサカサカサ

蟲「……!!」カサカサカサ


イズナ「おーおー、大勢お出ましだぜい!!」

とら「イズナ、東の妖たちはどうなっとる!? あんな若僧の変化にデカイ顔させとるのかよ!!」


イズナ「仕方ねえだろー? 長たちがこの国の礎になってから東もゴタゴタしてんだ」

イズナ「今の東の妖は、遠野妖群頭の一鬼が長を引き継いでなんとかなってるけどよ」


とら「一鬼が長だァ!? くっ、くくく、そいつァ見物だな」


イズナ「東は西と違って仲間意識があるっていっても、変化まで面倒見切れねえのさ」

イズナ「ああいう変化もいるってことだぜ。珍しくもねえや」


とら「あーあ、最近はあんな妖が増えてんのかねえ」


イズナ「妖だって色々いるんだぜい。長飛丸を知らない妖だって、ましてや変化なら当然いるって」

とら「けっ。まぁ、獣の槍に五百年はりつけにあってたからな。知名度低いのは認めるさ」

399 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 02:42:31.95 ID:SbmFcXbs0


蟲「……!!」カサカサカサ


うしお「キリがねえ!! おいとらァ!!」

うしお「大口叩いといて何か方法あるんだろうなァ!?」


とら「クソうしおが!! そんなもんあったらとっくにやっとるわい!!」

とら「あんなカスに負ける気はしねえが……。ん……?」


凛「はぁ、はぁ……。なんとか、アイツを桜の心臓から離さないと……」

イズナ「姉ちゃん大丈夫かよ!?」

うしお「遠坂先輩っ!!」

とら「りん、おめえ魔力が限界を……」

凛「はぁはぁ……。私が槍を、暴走させたせいだわ……」

とら「ちげえよ。始めから無理だったろうがよ、二人分も体内に入る魔力なんてよ」

凛「それでも、ね……。一秒でも早く、桜を助けたいじゃない……」

凛「桜が、間桐に行って、姉らしいこと私、全然やれなかったからさ……」

とら「りん……」

うしお「遠坂先輩……」

400 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 03:29:26.76 ID:SbmFcXbs0


とら「もういいイズナ。引き上げだ!! 脱出すんだよ!!」

イズナ「だ、脱出っていっても……。長飛丸、この状況じゃ……」


蟲「……!!」カサカサカサ

蟲「……!!」カサカサカサ


うしお「うおおおお!!」

凛「はぁ、はぁ……」


うしお「すまねえイズナ。オレが突破口を開くから道案内してくれねえか」

イズナ「うしお、姉ちゃんを抱えながらで戦えるのかよ!?」

うしお「大丈夫さ。でも、獣の槍が重くなり始めてる」

とら「宝具の時間切れかよ!? ちっ、魔力がねえなら当然か……」


臓硯「カカッ。あれだけ吠えておきながら尻尾を巻いて逃げるとはの、所詮はケモノか?」

臓硯「逃がしはせん。行け蟲ども、そのまま喰らい尽くすがいいわ」


蟲「!!!!」カサカサカサ

401 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 03:42:03.69 ID:SbmFcXbs0


セイバー「ぐっ……」

麻子「セイバーさん!? どうしたんですか!?」

セイバー「おそらく、ウシオたちが危機に……」

真由子「えっ!?」

セイバー「私とウシオは、マスターとサーヴァントという契約の繋がりがあります」

麻子「繋がり……」

セイバー「ウシオは魔術師ではないので遠距離の会話は出来ませんが、繋がりは確かにあります」

キリオ「うしお兄ちゃんたちが危ないって、感じられるってこと?」

セイバー「そうですキリオ。正確な状況は分かりませんが危機的状況なのは確かです」

イリヤ「それはそうでしょうね」

セラ「お嬢さま……?」

イリヤ「今更ここにいる人間に、宝具『獣の槍』の説明なんていらないわよね」

イリヤ「あれほど規格外の強力な宝具よ。リンだけで宝具の発動、維持、本当に出来ると思う?」

リズ「まさか」

セイバー「サクラの体内で、宝具を消失……!?」

イリヤ「消えてはないわ。それならセイバーも分かるはずよ。でも、時間の問題ね」

麻子「そ、そんな……」

イリヤ「短時間で倒せる相手ならよかったけど、そんな甘い相手じゃなかったみたいね」

キリオ「いったい、どうしたら……」

イリヤ「ここは、私の出番かな」

402 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 04:15:36.51 ID:SbmFcXbs0


イリヤ「私の魔力をリンに送るわ」

麻子「そんなことが出来るの!?」

イリヤ「ええ、出来るわよ」

真由子「で、でも、うしおくんたちが桜先輩の体内のどこにいるかも分からないのに……」

イリヤ「直接リンに送るワケじゃないわ。サクラに届けてもらうのよ」

セイバー「なるほど……。サクラ自身ならリンが体内のどこにいても魔力を供給できる」

イリヤ「そういうこと。とにかく魔力を送らない限りは何も始まらないわ」

セラ「待ってください、お嬢さま」

イリヤ「なによ」

リズ「イリヤでも、魔力、足りない」

イリヤ「…………」

セラ「あの宝具の魔力使用量は桁外れです。いくらお嬢さまでも、一人では……」

イリヤ「なら、このまま黙って見ていろというの?」

セラ「それは……」

イリヤ「言われなくても分かってるわよ。それでもやるわ。ウシオを見殺しになんか出来ないもの」

403 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 04:22:36.19 ID:SbmFcXbs0


真由子「どういうこと、なんですか……?」

リズ「魔力が足りない。増幅でもしないと」

麻子「増幅……?」

セラ「魔術のなかには、己の魔力を高める術式が幾つかあります」

セラ「しかしそれは大掛かりな儀式、準備を必要とします。そんな時間は……」


キリオ「それは、イリヤの魔力を増幅させればいいの……?」

セイバー「キリオ、何か方法があるのですか?」

キリオ「うん……」

セイバー「その方法とは……?」


キリオ「光覇明宗、『威颶離(いぐり)』法」



404 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:03:44.58 ID:33Uf5Sa80


セイバー「ということは、キリオの念を私たちの体を通して増幅し、イリヤが受け取り魔力を高めると」

キリオ「うん、それが『威颶離』法だよ」

セラ「そんな術式が……」

リズ「それなら準備、いらない」

キリオ「ただ、法力僧じゃないお姉ちゃんたちが体に念を通せば、かなりの苦痛になるはずだよ」

キリオ「だから本当は、このやり方は……」

真由子「待ってキリオくん。さっきイリヤちゃんも言ってた。このまま黙って見てるなんて出来ないよ」

麻子「そうよ、私もやるわよ。私にも出来ることがあるならやりたいわ!!」

イリヤ「決まりね。キリオ、私はいいわよ」

キリオ「イリヤ、一番負担がかかるのは君なんだよ……。だから僕は……」

イリヤ「キリオが心配してくれるのは悪い気分じゃないけど……」

イリヤ「それでも、大きな力を受け止める器の役割は私が適任よね」

キリオ「え……?」

セラ「お嬢さまっ!!」

イリヤ「冗談よ。でも、私以外にやれる人物がいないのも事実でしょ」

セラ「それは、そうですが……」

イリヤ「やりなさいキリオ。他の誰でもない、私がやれって言ってるの」

イリヤ「念を込めることに手加減なんかしたら許さないわ」

キリオ「イリヤ……。分かった。威颶離をやろう」

405 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:09:04.28 ID:33Uf5Sa80


イズナ「こ、ここも出口が塞がってやがる!!」

蟲「……」カサカサカサ

とら「ちぃ〜〜!! やはりわしの雷でえ!!」

イズナ「だからそれはダメなんだって長飛丸ーー!!」

うしお「はぁはぁ……。ぐっ……」

凛「…………」

イズナ「まさかうしお、その獣の槍もう振れないんじゃねえのか!?」

うしお「まだ大丈夫だ……。とにかく違う脱出口を……」

イズナ「で、でもよォ!!」


臓硯「ククッ、そろそろ終わりかの」


『ウシオ、聞こえる?』


臓硯「なに……?」


うしお「この声……。イリヤっ!?」

406 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:17:04.98 ID:33Uf5Sa80


イリヤ『ウシオ、聞こえてるものだと思って話すわよ』

イリヤ『今、魔術を使ってサクラの体全体に声を届けてるわ』

イリヤ『敵にも聞かれることになるけど、それは仕方ないわよね』


臓硯「なにをする気じゃ……?」


イリヤ『リン、随分手こずってるみたいじゃない?』

凛「悪かったわね……」

イリヤ『しょうがないから助けてあげる』

イリヤ『今からキリオのイグリ法を使って、私の魔力をサクラに送るから受け取りなさい』


うしお「威颶離って、まさか山魚のときの!?」

とら「けけっ、あれをやるかよ」


臓硯「この小娘に……。ククク……」


イリヤ『サクラ、眠らされてるところ悪いわね』

イリヤ『でも、その標本にされてもおかしくないぐらいの才能、使わせてもらうわよ』


桜「…………」

407 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:24:28.82 ID:33Uf5Sa80


イリヤ「さてと、こんなところね。そろそろ始めましょ」

セイバー「貴方は……」

イリヤ「何してるのよセイバー。早く手を握りなさい」


セイバー(ウシオたちに出会って変わったのは私だけではないか……)

セイバー(……アイリスフィール。貴方の子供は大きくなりましたよ)


イリヤ「何よ、私の手を見つめて」

セイバー「いえ……。イリヤスフィール、いや、イリヤ」

セイバー「我がマスターの命運を貴方に託します」

イリヤ「あらたまってなに。セイバーに言われるまでもないわ」


イリヤ「でも、そうね……。私に任せなさいセイバー!!」

セイバー「はい、イリヤ」


イリヤ「キリオ、こっちはいいわ。やりなさい!!」


キリオ「こっちも法力とエレザールの鎌の準備が出来たよ」


キリオ「それじゃ……。『威颶離』法、始めるよ……!!」

408 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:28:59.01 ID:33Uf5Sa80


麻子「な、なにこれ、体の中に何かが通っていく……」


真由子「これがキリオくんの念の力……」


セラ「ぐっ……。魔力供給とは違いますね……」


リズ「ここまで、来た、凄いの」


セイバー「こ、これがイグリ法……」


イリヤ「始まったわね……。魔力が増幅されてる……。これなら……!!」

409 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:35:02.36 ID:33Uf5Sa80


臓硯「カカッ、これほど愉快なこともあるかのォ」

臓硯「貴様たちの足掻きが愉しくて、ついわしも笑みがこぼれるわ」


うしお「何ィ!? どういう意味だ!!」


臓硯「この小娘に魔力を送るじゃと……クク……」

臓硯「無駄じゃ。こやつの遠坂の魔術回路はとうの昔にわしが破壊しておるわ」

臓硯「魔力を送ったところで回路がなければ流れることはない」

臓硯「逆にその魔力をわしが取り込んでくれるわ」


凛「それは、どうかしらね……」

うしお「遠坂先輩っ!!」


臓硯「なに……?」


凛「アンタには見えないの、あれが……」


とら「なんだァ!? 無数に光る線が……!?」

イズナ「人間体内のエキスパートのオレ様でも見たことねえぜ!?」


臓硯「ば、馬鹿なっ……。そんな筈は無い、わしは確かにこやつを壊して……」


凛「衰退した理由も分かるってもんよね。間桐当主」

凛「これが遠坂よ。見くびらないでもらえるかしら?」


臓硯「ぐっ……!!」

410 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:45:26.37 ID:33Uf5Sa80


蟲「……!!!!」カサカサカサ

蟲「……!!!!」カサカサカサ


とら「イズナァ!! こいつらを槍に近づけさせるんじゃねえぞォ!!」

イズナ「分かってるって長飛丸よォーー!!」


うしお「遠坂先輩、大丈夫なのかい!?」

凛「はぁ、はぁ……。ええ、大丈夫よ。桜とイリヤが魔力を送ってくれてるわ」

凛「これなら、あと少しで……!!」


臓硯「何を仕出かすつもりか知らんが……」

臓硯「外の連中さえいなければ、貴様らなど……!!」

411 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 02:52:16.09 ID:33Uf5Sa80


麻子「ぐっ……くぅ……」

真由子「う、うぅ……」

イリヤ「ハァハァ……」

セイバー「イリヤ……。キリオ、まだですか!!」

キリオ「まだ、あとちょっとで……!!」


桜『なるほどの……。光覇明宗の術か。小賢しい真似をするわ』


セイバー「なっ、お前は……!?」


桜『これで、どうじゃ』


キリオ「お姉ちゃん!!」


真由子「あぁ、麻子……なんで……。手を放しちゃ……」

麻子「な、なによこれ……。何かに引っ張られて、手が……」


桜『クク、貴様らなどこれで十分よのォ』

412 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/15(土) 03:08:24.44 ID:33Uf5Sa80


セイバー「アサコ!! マユコ!!」

セラ「あんな初歩的な魔術など……!!」

イリヤ「手を放してはダメっ!!」

リズ「術式が途切れる。でも、このままでも」


真由子「か、金縛りみたいに体が動かない……」

麻子「たった一人分の距離も、手を伸ばせないなんて……」


キリオ(お姉ちゃんたちを助けるには威颶離を解除しないと……。でも、それじゃ……)


桜『これで魔力の供給は途切れる。クク、これであやつらも終わりじゃな』


麻子「そんなことない……」

麻子「私が手を伸ばせばアイツが助かるなら、今度は私が……!!」

真由子「あ、麻子……」


桜『無駄なことを。貴様ら小娘にはこの程度の魔術も破れまいて』


??「……そうそう。無駄なことはやめろよ、中村」


麻子「えっ!?」




慎二「だってさ、そこには僕が入るんだから邪魔なんだよねぇ」



413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 21:59:46.36 ID:FcVAQTR8O
ここにきてまさかの!
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/16(日) 03:01:10.91 ID:VbzTuMZ5O

山魚のエピソード超良いよね
アニメでは削られたけど……
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/16(日) 08:07:03.34 ID:/25zfyiio
ワカメの株価急上昇!
416 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/17(月) 00:07:09.23 ID:1uQBv6pv0


・病院中庭


「申し訳ありません紫暮様。間桐臓硯の本体を取り逃がしました」

「間桐邸の調査の結果、あの臓硯も蟲の触覚に過ぎないようです」

「うむ……。やはり一筋縄ではいかない相手か……」

「しかし、本体はどこに……」



慎二「…………」



??「盗み聞きとは感心しませんね」


慎二「チッ……。またアンタかよ……」


慎二「蒼月須磨子さんよ」


須磨子「はい」



417 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/17(月) 00:18:50.84 ID:1uQBv6pv0


須磨子「何を聞いていたのですか?」

慎二「なんでもいいだろ。それよりなんでアンタがここにいるワケ?」

須磨子「異なことを聞かれますね」

須磨子「ここは光覇明宗の病院ですから、私がいるのは自然ではありませんか」


慎二「そんなことは聞いてないんだよ」

慎二「それともなに? まだ僕から聖杯戦争のことを聞きたいの?」

慎二「残念。もう聖杯戦争のことは蒼月のオヤジに洗いざらい話したんだよねぇ」

慎二「だから僕に付きまとったって何も情報はないんだよ。ハハッ、無駄足だったね」


須磨子「……そうですか。何か知っているのですね」


慎二「はぁ? なに言って……」


須磨子「ここには葛木宗一郎さんのお話を聞きにきたのです」

須磨子「あの方も大変な使命を持った方ですから」


慎二「使命、ねぇ……」

418 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/17(月) 00:29:05.31 ID:1uQBv6pv0


慎二「…………」


須磨子「自分の心の間で、ゆれているのですね。間桐慎二さん」

慎二「な、なにィ……?」

須磨子「今の貴方の眼には、今までになかった使命を感じます」

慎二「チッ、何も知らないくせに……偉そうにさァ……」

慎二「…………」

慎二「今更、僕が行ったって……」


「そこに誰かいるのか?」


慎二「あ……」

須磨子「ここは私に任せて、ゆきなさい」

慎二「で、でもさァ」

須磨子「その使命は貴方にしか果たせないモノではないのですか?」

慎二「それは……」

須磨子「今の貴方なら大丈夫です。ゆきなさい。それが、貴方の使命ですよ」

慎二「っ……」

419 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/17(月) 00:53:57.96 ID:1uQBv6pv0


麻子「間桐先輩っ!?」

セイバー「ライダーのマスターが何故ここに……!?」


桜『慎二……。お前、何をしに来た?』


慎二「よォ爺さん。ライダーを失って聖杯戦争は負けちゃったよ」

慎二「それからは大変さ。お節介なヤツらに説法を聞かされて嫌になるよ」

慎二「でもさ、僕としてはこのまま言われぱなしってワケにはいかないんだよねぇ」


桜『何を、言っておる……』


慎二「だからさァ……。こうするんだよォ!!」


ガシッ、ガシッ


麻子「そんな……!!」

真由子「せ、先輩っ!!」


慎二「ぐっ、ぐああああーーーー!!!!」

420 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/17(月) 01:10:22.07 ID:1uQBv6pv0


キリオ「だ、駄目だよ!! お兄ちゃん!!」

キリオ「念の流れに急に入るなんて危険すぎる!!」

キリオ「今、威颶離を解除するから、それから……!!」


慎二「や、やめろクソガキがァ……。術式を解除したら、また発動するには時間がかかる……」

慎二「回路がなくて魔術を教えてもらえなかった僕だって、それぐらい知ってるんだよねぇ……」


麻子「で、でも間桐先輩、手が……」

真由子「あ、あぁ、ボロボロに……」


慎二「ぐっあっ……。中村、井上、今回は他の女子と違って僕の誘いを断らないでくれよ……」

慎二「まぁ今回ばかりは、この手を跳ね除けられても放す気はないんだけどさ」


麻子「先輩……」

421 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/17(月) 01:59:27.08 ID:1uQBv6pv0


桜『慎二。貴様は自分が何をしておるのか、分かっておるのか?』


慎二「まぁね……。そろそろいいだろ爺さん。そいつさ、解放してやってよ」


桜『なっ……に……』


慎二「あぁ今更だろ、分かってる。だから助けに来たなんて言わないさ」


桜『う……ん!? い、意識が……小娘に……!?』


慎二「……桜。そこで聞いてるのかよ」


桜『こ、こんな力……どこに……』


慎二「別にさ、今まで僕がやったことを謝って許してもらえるなんて思っちゃいない……」

慎二「がはっ……。でも……、これぐらいはやらせろよ……」


慎二「今更だけど……。これが僕の『使命』らしいからさ」


桜「に……兄、さん……」

422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 02:34:24.60 ID:2GnZa5oGO
威颶離とかいうダメ少年汚名返上術
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/18(火) 06:54:35.22 ID:SAeCZk98o
これこそまさにうしとらの醍醐味!
燃えるねぇ!!
424 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 03:18:41.14 ID:okDxVkSb0


臓硯「意識を取り返された……。今まで、こんなことは……」


とら「ひゃーはっはっはっはっーーーー!!!!」


臓硯「な……!?」


とら「おいイズナ。新顔の若僧に教えてやんな」

イズナ「へへっ、そうだなァ長飛丸。変化でも妖なら知っておかなきゃなァ」


臓硯「何を……」


とら「妖の世界にはわしより、もーっと怖えモンがあるのよ」

イズナ「それは妖怪なら名前を聞いただけで震え上がる妖器物(バケモノきぶつ)……」


イズナ「獣の槍よォ!!」


臓硯「っ……!?」




うしお「よし、これなら……」

凛「もう大丈夫よ」



425 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 03:27:24.11 ID:okDxVkSb0


臓硯「……魔力供給が整った程度で何を粋がっておる」

臓硯「貴様らはわしの本体に攻撃出来ん」

臓硯「わしが小娘の心臓にとり憑く限り、貴様らは何も出来ずに嬲られるだけじゃ」

臓硯「行け蟲ども。もう目障りじゃ、そやつらを始末しろ……!!」


蟲「…………」カサカサ


臓硯「どうした……?」


蟲「…………」カサカサ


臓硯「何故、蟲どもが言うことを聞かん……」


蟲「……!!!!」カサカサカサカサ


臓硯「な、何をしておる……。心臓から本体を切り放そうとしておるのか!?」


臓硯「何故じゃ!? 何故蟲が勝手に……!?」




とら「けけけ……。ほーら、来た来た」


とら「妖の苦手で怖えモンをよ、槍が連れてきたぜえ」




??『長生きしすぎてボケたんじゃないか吸血鬼』

??『その蟲を扱えるヤツは、他にもいたじゃないか』




臓硯「き、貴様はっ……!?」




雁夜『他ならぬアンタが、オレにくれた能力だろ?』



426 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 03:39:22.67 ID:okDxVkSb0


臓硯「雁夜っ!? 貴様は前回の第四次聖杯戦争のときに死んだはず……」

臓硯「こんな場所にいるはずが……!!」


雁夜『あぁそうだな。それでも呼び出してくれたみたいだ』

雁夜『あの宝具が』


臓硯「宝具……。あの槍の、宝具としての能力か……!!」

臓硯「そうか遠坂の小娘、魔力供給は真の能力を開放するための……!!」


凛「雁夜、おじさん……?」


雁夜『凛ちゃん、オレがヤツを抑えてる間に本体を倒してくれ』

雁夜『この宝具の力がどれだけ持つかオレには分からない。頼む、早く……!!』


雁夜『桜ちゃんを、救ってくれ……!!』


うしお「おじさん……。よし、分かった!! 遠坂先輩!!」

凛「えぇ、もちろんよ!!」


イズナ「オレもこの蟲は見飽きたぜい。そろそろおいとましてえなァ長飛丸」

とら「その意見にゃ賛成よ。うしお!! りん!! 決めちまいなァ!!」

427 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 04:34:35.35 ID:okDxVkSb0


うしお「遠坂先輩、髪が伸びて……」

凛「私もここまで伸ばしたことないから、自分でも少し新鮮ね」

うしお「ははっ、似合ってるよ」

凛「もう……。気を失ってるときにね、槍のなかで二人と話したわ」

凛「私も憎しみだけで戦わない。だからきっと、本当に選んでくれたのね」

うしお「そうか。うん、それならよかった」


臓硯「か、身体が動かん……。蟲も、動かせん……。雁夜ァ、貴様ァ……!!」


凛「間桐臓硯、終わらせてもらうわよ」


臓硯「遠坂の小娘、何故そんな顔が出来る……。貴様はわしが憎くて仕方がないはず……」


凛「ええ、そうだったわ。でも不思議よね、何故だか今の私はアンタを憎んでないのよ」

凛「今はただ、アンタを桜から一刻も早く追い出したいだけ」


臓硯「そんなはずはない……。人間など、理想など、あるはずが……」


凛「そうか……。アンタも魔術師だったんだから、不老不死を目指す前が……」

凛「可哀想ね、間桐臓硯」

428 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 04:39:33.89 ID:okDxVkSb0


雁夜『これだけ心臓から引き離せば……。凛ちゃん!!』




凛「蒼月くん!!」

うしお「あぁ!!」


うしお「おおおおおお!!!!」


うしお「間桐臓硯!! 桜姉ちゃんから!!」

凛「桜から……!!」


「出て、行けええええーーーー!!!!」




臓硯「わしの聖杯……望み……き、消え……」




臓硯(……無念よ……だが、これで、やっと終わ……)



429 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 04:51:51.55 ID:okDxVkSb0


雁夜『そうか……。あの少年が、蒼月紫暮の息子……』

雁夜『参ったな。親子ともども世話になってしまったワケか』


桜「雁夜おじさん……」


雁夜『あぁ桜ちゃん。良かった、もう大丈夫みたいだね』

桜「おじさん!!」

雁夜『いや、おじさんは駄目なんだ。桜ちゃんを抱きしめることは出来ない』

雁夜『あの少年の父親が止めてくれたが、オレは色々間違ってしまったからね……』


雁夜『でも本当に良かった』

桜「え……?」

雁夜『覚えてるかな。もう遠い、遠い夜にした約束を……』

桜「あっ……」

雁夜『あの約束だけは、桜ちゃんを助けたいって願いだけは、本当にオレの望みだったから……』

雁夜『だから、あの宝具の槍が応えてくれたんだと思う』

桜「おじさん……」

雁夜『あぁ、おじさんは、もう行かないといけないみたいだ』

桜「そんな、雁夜おじさん……」

雁夜『それじゃ、凛ちゃんと仲良く、元気で』

桜「最期にこれだけ……」


桜「ごめんなさい雁夜おじさん。……それと、ありがとう」

430 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 04:57:38.28 ID:okDxVkSb0


桜「う……ん……」

凛「桜……?」


桜「姉さん……」


凛「桜っーー!!」




麻子「えいっ」

うしお「いてっ、麻子、なにすん」

麻子「おかえり」

うしお「……おう」

真由子「ふふ」


真由子「あれ……? 間桐先輩は……?」



431 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 05:18:00.55 ID:okDxVkSb0


・蒼月家正門


「会わなくていいのか?」


慎二「チッ……。また光覇明宗かよ……」


日輪「大事な妹なんだろ?」

慎二「誰があんなグズでノロマ。僕には妹なんかいないんだよね」


杜綱「相変わらずの口ぶりだね間桐慎二くん」

慎二「も、杜綱さん……」

杜綱「病院を抜け出した君を、町中探す私たちの身にもなってもらわないと」

杜綱「これは紫暮様に報告かな」

慎二「お、おい待ってくれよ。蒼月のオヤジに言うのはなしだ杜綱さんっ」

日輪「クク、かなり紫暮様に絞られてるみたいね」

慎二「ああ? この女、いつもいつも気に障るんだよ!!」

日輪「土剋水っ!! 何度言えば分かる、私は関守日輪だ馬鹿者!!」

慎二「いってぇっ、こっちはボロボロの病人だぞ!?」

杜綱「それだけ元気なら大丈夫そうだ」

432 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/21(金) 05:22:00.26 ID:okDxVkSb0


杜綱「しかし、まさか臓硯の本体が間桐桜さんにとり憑いてたとはね」

日輪「お前は良かったのか? お前にとっては間桐臓硯は……」

慎二「…………」


慎二「不老不死には程遠くても、長生きはしたんじゃないの」


杜綱「そうか……。今回は君に助けられたな。さ、早く病院に戻ろうか」

慎二「あぁ、そうしたいね」


日輪「そうだな。お前には早く退院してもらわないと困るからな」

慎二「は……? どういう意味?」


杜綱「君には、やってもらいたい事があるということだよ」



433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 09:12:08.47 ID:chsIj1itO

雁夜…良かったなぁ…
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 15:16:29.32 ID:woLE5YMzo
乙…
まさかのおじさんに…っ…あと妖怪じじいの最期も悪くなかった
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 19:52:01.68 ID:e9tr39WYo
おじさんが報われた…素晴らしい
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/24(月) 15:46:41.90 ID:CLbC6O0Eo
乙ー
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/04(金) 02:26:13.33 ID:KBMhIiYfO
今も裸で待ってる
宝具スキップも待ってる
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/04(金) 12:48:59.43 ID:7HzYBd15o
439 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 21:55:45.61 ID:vZ95kBPQ0


【第二十一話 うしおとセイバーの縁『全て遠き理想郷』 】

440 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 22:02:45.36 ID:vZ95kBPQ0


・蒼月家蔵


うしお「悪いなセイバー、蔵の寄贈品の整理なんて手伝ってもらってよ」

セイバー「いえ、マスターが聖杯戦争に専念出来るようにするのもサーヴァントの務めです」


セイバー(……あれから数日、サクラの体調は良好だ)


セイバー(アサコたちは、リンとサクラが姉妹だという話を聞いたときは驚いたようだった)

セイバー(しかし、彼女たちの人柄の良さか今は既に馴染んでいる)


セイバー(それに他サーヴァントの襲撃もなければ、気配も感じられない)


セイバー(穏やかな日々が続いている……)

441 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 22:09:41.33 ID:vZ95kBPQ0


桜「イズナさん、本当にありがとうございましたっ!!」

ムギュ

イズナ「はっー、イイってことよォ〜」

とら「イズナ、なーにニヤケてんだよ……」


セイバー「次は私の番ですサクラ!!」

イズナ「えっ?」

セイバー「この肌触り……なかなか……」

ギュ

イズナ「…………」

セイバー「ん? 先ほどと反応が違いますね。抱き方を間違えましたか」

イズナ「い、いや、そんなことはねえぜい……」

とら「イズナ……おめえ……」

442 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 22:17:31.74 ID:vZ95kBPQ0


おんじ「うーむ……。聖杯戦争、ねぇ……」

とら「なんだじじい。まーだ信じてねえのかよ?」

おんじ「説明されても信じられんわい」

イズナ「ま、そりゃそうだ」

おんじ「人間は土に帰るが妖怪は違う。その土からさえ帰ってくるのが妖怪じゃ」

おんじ「それには長ーい時間がかかる。だが、長飛丸はここにおる」

おんじ「あーあ、信じるしかないかの……」

イズナ「クク、確かに消えてもすーぐ戻ってきて同じ人間にとり憑くヤツなんて聞いたことねえや」

とら「ああ!? イズナ、そりゃわしのことじゃねえだろうな!?」

おんじ「イズナはどうするんじゃ、わしは鏡に帰るぞ」

イズナ「オレは久しぶりにこっちに来たから暫く厄介になるぜい」

とら「チッ、いつもの観光まじりかよ」

イズナ「いやあ、久しぶりにうしおと長飛丸の漫才が見たいのさ」

とら「イズナァァァァーーーー!!!!」

イズナ「おっと、オレは焼かれんうちにズラかるぜ〜〜!!」


おんじ「長飛丸に土に帰されそうなことをようやるわい……」

443 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 22:23:02.43 ID:vZ95kBPQ0


うしお「おんじ、本当にサンキューな」

おんじ「今回だけだぞ蒼月潮。本来、妖怪と人間は」

セラ「おんじ様、ありがとうございました」

おんじ「だから妖怪と人間は」

リズ「おんじ、またね」


おんじ「…………」パリンッ


おんじ「妖怪と人間は手を取り合ったりしねーの!!」

444 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 22:37:49.67 ID:vZ95kBPQ0


とら「ったく、うるせーヤツが増えやがったぜ」

ぱく、もぐもぐ、もぐもぐ

イリヤ「トラ、それなに?」

とら「ああ? なんだよおめえも『はんばっか』知らねーのか」

イリヤ「ハンバッカ……」

とら「おいマユコ。まだあるんだろ?」

真由子「はう。とらちゃん、もうハンバーガーないよ」

とら「なら仕方ねーな。食いたきゃ買いに行きな」

イリヤ「ハンバッカを買いに?」

とら「あぁ、わしも前に知り合いの妖と町に買いに行ったことがあるぜ」

真由子「えっ!?」

セラ「いけませんお嬢様!!」

セラ「お嬢様の食事は栄養バランスもカロリー計算も含めて、全て私が完璧に管理してるのです!!」

セラ「ハンバーガーなど買いに行かせませんよ!!」

イリヤ「セラ、うるさすぎ……」


イリヤ「ねぇキリオ。今度二人でハンバッカ食べに行くわよ」コソコソ

キリオ「え、えぇっ、それって、デー……」


真由子「とらちゃんが私の知らないところでデートしてた……」

とら「なに言っとんだマユコ……」

445 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 22:52:33.83 ID:vZ95kBPQ0


うしお「桜姉ちゃん、間桐先輩は?」

桜「間桐の家には帰ってないみたいでした」

うしお「そうか……」

凛「アイツに借りがあるなんて、ちょっと癪だけど」

凛「中村さんたちの話を聞くとそうも言ってられないわね」

うしお「あぁ、今回は間桐先輩に助けられたんだ。でも先輩はどこに……」

桜「大丈夫だと思います」

うしお「桜姉ちゃん……?」


桜「兄さんも間桐なんですから、必ずあの家に帰ってきます」


桜「私はそう思います」


凛「そうね。アイツに限ってこのまま消えるなんてないでしょ」

うしお「あぁ、それならそのときに今回の礼を言うさ」

446 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 23:03:10.94 ID:vZ95kBPQ0


凛「うしおくーん!!」

うしお「り、凛、姉ちゃん……。こ、これでいいのかい?」

凛「ちょっとまだぎこちないわねぇ」


桜「蒼月くん、姉さん、これはどういうことですか……?」


うしお「桜姉ちゃんっ!?」

凛「あぁ桜、そろそろ呼び方を変えようと思ったのよ」

凛「もう蒼月くんとの同盟関係も長く続いてるんだし、遠坂先輩って呼び方は余所余所しいでしょ?」

桜「それで、姉さんを、お姉ちゃんと……」

凛「桜が桜お姉ちゃんなら、当然、姉の私も凛お姉ちゃんでしょ」


うしお(桜姉ちゃんは間桐先輩がいたからそう呼ぶようになっただけで遠坂先輩は別にいいんじゃ……)


凛「とにかく、同盟関係を円滑に進めるためにも呼び方は重要なのよ」

凛「だから私も蒼月くんをうしおくんって呼ぶことにしたしね」

桜「え……」

うしお「それは別にいいぜ。みんなそう呼んでるしよ」

桜「なっ……!?」

凛「あら桜、どうしたの?」

桜「……もう我慢出来ません……。姉さん、お話があります……」

凛「ふふ、いいわよ。どこにする。広い場所がいいわね、本堂でも行く?」

うしお「え……?」

桜「本堂は私と照道さんが掃除をしたばかりです……。境内にしましょう……」

凛「オッケー。それじゃ行きましょうか」


うしお「えっと、話し合い、なんだよな……?」

447 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 23:14:46.10 ID:vZ95kBPQ0


・蒼月家蔵


うしお「また手伝ってもらってすまねえな、セイバー」

セイバー「いえ、気にしないでくださいウシオ」


セイバー「ん……。ウシオ、あれはなんですか?」

うしお「え? どれのことだい?」

セイバー「その一番奥にある、その、この蔵には不釣合いなアタッシュケースです」

うしお「アタッシュケースゥ……?」

うしお「そんな大層なモンはウチの蔵にはねえさ」

うしお「ここにはお祓いを頼まれた変なものと、ムシぼしが必要な古本ぐらいだぜ」

セイバー「いえ、そこにあるではないですか、大きなアタッシュケースが」

うしお「え……?」

セイバー「……?」

うしお「ははっ、なんだよ、セイバーが冗談言うなんて珍しいなァ」

セイバー「なっ……」

うしお「まぁ確かに、こんな古い蔵の整理なんて冗談の一つでも言いたくならァ」

セイバー「ウ、ウシオ……?」

うしお「よっと、オレはこの古本を外に出してくるから、セイバーは休んでてくれよ」


セイバー「ウシオには、見えてない……?」

448 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/24(木) 23:27:02.90 ID:vZ95kBPQ0


セイバー「認識阻害の魔術……」


セイバー(リンに報告を……。いや待て、他サーヴァントが仕掛けた罠の可能性も……)

セイバー(……それはないか。こんな場所に仕掛けて効果があるとは思えない)

セイバー(それになにより、私はこれに見覚えがある気がする……)


ガチャ


セイバー「……………………」


セイバー「……そうか。これを、貴方は……」


セイバー(前回の聖杯戦争の私のマスター、衛宮切嗣……)

セイバー(キリツグ、私は『あの後』なにがあったのか知らない……)

セイバー(しかし貴方は当時協力関係だったウシオの父、シグレにこれを託したのですね)


セイバー(謎が解けた……)

セイバー(魔術師ではないウシオが私を召喚出来たのは、この蔵に私の聖遺物があったから……)


セイバー(マスターとサーヴァントの境遇で召喚したのではない……)




セイバー(私とウシオは違う……。私は、国を救ってなどいないのだから……)



449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 00:46:33.68 ID:tuw8NLT6O
450 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/25(金) 22:45:45.49 ID:zI4fMi7B0


・蒼月家居間


セイバー「それで、その、ピクニックというのは……?」

凛「そうね。簡単に説明すると綺麗な景色の場所に行って、お弁当を食べたり遊んだりすることかしら」

セイバー「なるほど……。専門的な言葉かと思いましたが、理解しました」

セイバー「しかし私たちは聖杯戦争の最中なのです。そんなことをしている時間はありません」

セイバー「ここ数日、敵サーヴァントの気配がないことから気が緩んでいるのではないですか?」

うしお「そんなつもりはねえけどさ……。セイバー、なにかあったのかい?」

セイバー「いえ、別に……。しかし何故いきなり、そのピクニックを?」

うしお「あぁ、よく分からねえけど麻子がどうしてもセイバーにお礼がしたいとか言ってよ」


セイバー「アサコが……」


セイバー(初めて会ったときの、騎士の誓いか……)

セイバー(残るサーヴァントはランサーとあの男……。聖杯戦争も終盤、こんな機会はもう……)


セイバー「……分かりました。ピクニックに行きましょう」

451 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/25(金) 22:53:39.54 ID:zI4fMi7B0


イリヤ「はいはいはーい!! 私たちもピクニック行くーー!!」

キリオ「イリヤ!?」

イリヤ「キリオも行くでしょ?」

キリオ「う、うん、行くよ」


リズ「もちろん私たちも、行く」

セラ「それではピクニックの準備を始めましょう」

凛「ええ、そうね。まずはお弁当を作らないと。桜、手伝って」

桜「はい姉さん。美味しいお弁当を作りましょう」


イズナ「なんだか楽しそうなことになってきやがったみたいだな」

イズナ「長飛丸〜! オレたちも何か美味いモン作ってもらおうぜー!」

とら「妖が人間の食いモン欲しがってんじゃねえや!!」

452 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/25(金) 23:06:58.22 ID:zI4fMi7B0


・海浜公園


とら「おいマユコ。妖はな、人間の食いモンなんか」

真由子「じゃーん、このケーキ私が焼いたんだよ〜」

真由子「とらちゃん、私が前にケーキも焼いてあげるって言ったの覚えてる?」

とら「あぁ? そんなこともあったかよ。でもなマユコ、妖は」

真由子「はい、あーん」


パクッ、もぐもぐ


とら(相っ変わらず話を聞かんヤツだ……)


イズナ「おっ、タマゴのサンドイッチか。一つ貰うぜい」

セラ「タマゴが好きなのですか?」

イズナ「おうよ。それにこいつを混ぜて飲むお蕎麦がまたいいんだよなァ」

リズ「イズナ、人間くさい」

453 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/25(金) 23:24:58.45 ID:zI4fMi7B0


少年「そっち行ったぞーー!!」

少年「よし、次はオレだ〜〜!!」


セイバー「…………」

麻子「セイバーさん?」

セイバー「アサコ、あの子供たちは何をしてるのですか?」

麻子「え? あぁ、あれはサッカーですかね」

セイバー「サッカー……」

麻子「まぁゴールがないから、ただボールを取り合ってるだけみたいですけど」

セイバー「なるほど、あの球体を奪い合っていると……」

麻子「もしかしてセイバーさん、興味あります?」

セイバー「……少し」

麻子「それなら私たちも入れてもらいますか。おーい!!」


少年「ん?」


セイバー「し、しかしアサコ」

麻子「きっと見ているより楽しいわ。だから行きましょ、セイバーさん」

セイバー「……そう、ですね。ええ、望むところです」

454 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/25(金) 23:47:47.29 ID:zI4fMi7B0


イリヤ「キリオ、次はブランコね!!」

キリオ「ちょ、ちょっと待ってよイリヤ〜〜!!」


凛「うしおくん、もちろん私のお弁当のほうが美味しかったでしょ?」

桜「私のお弁当のほうが美味しかったですよね、うしおくん?」

うしお「い、いやァ、えーと、どっちもウマかったっていうか、その」


麻子(なにようしおのヤツ、凛先輩と桜先輩にデレデレしちゃって……)


少年「ねーちゃん、ボール見つかったー?」

麻子「えっ、あぁ、あったわよ」


麻子(私のお弁当には美味しいなんて言ってくれなかったくせに……)


麻子「あの……あの……馬鹿ァーー!!」


セイバー「ア、アサコ!?」

少年「ねーちゃんどこ蹴ってんだよーー!!」

麻子「ご、ごめーん!!」

455 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/26(土) 00:07:49.60 ID:LrJa985u0


うしお「どっちかなんて決めれねえよォーー!!」


セイバー「……なるほど。そういうことですか」

麻子「セ、セイバーさん……」

セイバー「そうではないかと思っていましたが、やはりそうなのですねアサコ」

麻子「……私って、そんなに分かりやすいですか?」

麻子「よくクラスメイトにもからかわれるんですよね……」

セイバー「いいではないですか。アサコ、貴方は素晴らしい人柄をしている」

麻子「ええ? そんなことは……」

セイバー「先ほど、あの子供たちに自然に混ざっていったのを見ても確信しました」

麻子「それはただ私が子供っぽいだけのような……」


セイバー「いえ……」


セイバー「私も、アサコのように輪に入ればよかったのかもしれません」

456 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/26(土) 00:24:45.55 ID:LrJa985u0


麻子「セイバーさんが、私みたいに……?」

セイバー「はい。貴方のような人物なら、きっと……」


セイバー(……そう。私より相応しい王がいるはずだ。国を救う王が……)


麻子「なに言ってるのセイバーさん、そんなの駄目よ!!」

セイバー「えっ?」

麻子「私なんて短気でがさつで、英雄になんて絶対なれないわ!!」

セイバー「いえ、そんな」

麻子「えっと、そうだわ。消防士さんは火を消せるでしょ、パン屋さんはパンを作るのよ」

セイバー「は、はぁ……」

麻子「でもパン屋さんが消防士さんになろうとしたら大変よ。パンがなくなって消防士さんは腹ペコなの」

セイバー「腹ペコは、一大事ですね……」

麻子「そうでしょ!?」

麻子「あれ、こんな話、前にも……。と、とにかくセイバーさんだからセイバーさんなのよ」

セイバー「それは……」

麻子「なに言ってるんだ私……。だから私が言いたいことはねえ」

麻子「セイバーさんがセイバーさんだから、英雄のセイバーさんなのよ!!」


セイバー「私が……私だから……」

457 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/26(土) 00:26:46.30 ID:LrJa985u0




遠い誓いを、思い出した



458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 02:14:46.62 ID:RLDs0MHWO
麻子は良いヒロインだよね
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 04:16:50.85 ID:rL+vpatWO
乙ー
460 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 00:26:08.61 ID:ykFtuGNP0


うしお「あれ、セイバー?」

セイバー「……ウシオ」


セイバー「リンとサクラからは解放されたのですか?」

うしお「えっ、あ、あぁ、なんとかな……」


うしお「セイバーのほうは何をしてたんだい?」

セイバー「この公園の地形を把握するために歩いていました」

セイバー「この場所で戦闘になることがあるかもしれませんから」

うしお「ピクニックでもセイバーは相変わらずだなァ。あっ、そうだ!!」

セイバー「ウシオ?」

うしお「一緒に来てくれセイバー。オレのとっておきの場所に案内するぜ」

461 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 00:44:29.27 ID:ykFtuGNP0


・夕暮れの高台


セイバー「これは、凄いですね。この町を一望出来る。こんな場所があったとは……」

うしお「地元の人間ぐらいしか知らない場所さ」

セイバー「なるほど。ここがウシオのとっておき、ですか」

うしお「ははっ、ガキん頃は近所の公園のジャングルジムやここがオレの特等席だったからよ」


うしお「おっ、見ろよセイバー。夕日が綺麗だぜ」


セイバー「…………」


セイバー「……ウシオ。一つ聞いてもいいですか?」


うしお「ん? なんだい?」

セイバー「聖杯を……いや、聖杯でなくてもいい」


セイバー「もし今、どんな望みでも叶うとしたら貴方は何を望みますか?」


うしお「あぁ、もしもの話かい? そうだなァ……」

462 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 01:03:08.27 ID:ykFtuGNP0


セイバー(私は確かめたい……)

セイバー(もし万が一、貴方が聖遺物ではなく私との境遇の一致や相性で召喚したのなら……)


うしお「そりゃオレだって欲しいモンはあるさ。あの画材セットにあの筆もいいよなァ」

うしお「あ、でも画材いれは麻子がオレの名前の刺しゅうが入った袋をくれたし、うーん……」


セイバー(ウシオ、貴方なら私と同じ選択をするのではないですか……?)


うしお「オレなら何を望むかなァ……」




セイバー「あの戦いを……」




セイバー「あの旅を、なかったことにしたいとは思いませんか?」




うしお「え……」



463 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 01:19:32.67 ID:ykFtuGNP0


セイバー「貴方はトラと出会い、様々な人間や妖怪と戦っていった」

セイバー「その戦いの旅のなかで貴方は沢山のものを失ったはずだ」

セイバー「そして白面という巨大な妖怪。この国の一学生だった貴方が背負うには重すぎる運命だ」

セイバー「一度でも考えたことはありませんか? いや、あるはずだ!!」


うしお「セイバー……?」


セイバー「あのとき、獣の槍を抜かなければ……」
(選定の剣を抜かなければ……)


セイバー「トラに出会わなければ……」
(私が王にならなければ……)


セイバー「もっと自分には、より良い未来があったのでないかと!!」
(私より相応しい王が、あの国をより良い未来に救済してくれる!!)


うしお「セイバー……」

464 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 01:42:58.73 ID:ykFtuGNP0


セイバー「ハッ、す、すみません。私は何を言って……」

うしお「いや、いいんだ」

うしお「セイバーの言うとおりさ。一度なんてもんじゃねえ、何度だってあるよ」

うしお「後悔だってした。あの時もっと周りを見ていたら、もっと飛び込んでいたらって」


セイバー「それなら……」


うしお「確かにつかめなかったモンは沢山あるよ」

うしお「でもよ、あの旅をなかったことには出来ねえよ」

うしお「あの旅があったから、何も知らなかったオレが少しはマシになったんだ」


うしお「オレとアイツの旅は無駄じゃなかった。オレはそう思ってる」


セイバー「ウシオ……」


うしお「それに決めたんだ」


セイバー「決めた?」


うしお「あぁ、もう誰もこぼさねえって」

うしお「そう決めたからには、なかったことになんて出来ねえさ」


セイバー「決めた……」

465 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 01:49:48.18 ID:ykFtuGNP0




決めた


戦うと決めた


胸に抉られた一つの言葉


何もかも失って、みんなに嫌われることになったとしても


たとえその先に、避けえない、孤独な破滅が待っていても


それでも戦うと決めた、王の誓い




遠い誓いを思い出した



466 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 02:03:39.50 ID:ykFtuGNP0


うしお「まぁ、それによ……あれだ……その……」

セイバー「ん?」


うしお「アイツに出会わなかったらなんて、もう考えられねえや」


セイバー「……なるほど。いえ、そうですね」

うしお「でもそれはセイバーもだぜ」

セイバー「私も?」

うしお「全部なかったことになんてしたらセイバーとも出会えないかもしれないだろ?」


うしお「オレはそんなの、やーだね」


セイバー「貴方は……」


セイバー「それは私もだ。ウシオ」


うしお「ははっ、それなら良かったぜ」

467 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/08/27(日) 02:13:35.52 ID:ykFtuGNP0


とら「やーっと見つけた。こんなとこにいやがったかよ」

うしお「とら!?」

とら「おめえのアホ面が見えねえからリンが探しに行けってウルセーのよ」

うしお「なにをとらァ!! 誰がアホ面だァーー!!」




貴方たちに出会って、思い出した


無駄ではない。私の戦いもそうだ


斬り伏せた者も散っていった者も、無意味などではない


私も、私の戦いに胸を張れる




とら「おい剣使い、なにやってやがる。行くぜ」

うしお「セイバー、みんなが心配してるらしいんだ。さ、行こうぜ!!」




その道が正しかったと、今までの自分が間違ってなかったと信じている


王は国を守った、けれど国は王を守らなかった、ただそれだけ


私の結果は無残だったけれど


その過程に一点の曇りもないのなら、それは……




セイバー「はい、マスター」



468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 03:33:03.04 ID:OqE0z6usO
乙ー
469 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 00:54:11.34 ID:KUnV8ew50


・海浜公園


うしお「それじゃ遠坂せ……」

凛「ん……?」

うしお「り、凛姉ちゃん、この公園の対岸にサーヴァントが?」

凛「よし。ええ、とらが感じたって言うからには間違いないでしょ」

凛「敵サーヴァントが近くにいるのにうしおくんもセイバーもいないから心配したのよ?」

うしお「ごめん、急にいなくなったのは謝るからさ」

凛「まったく……。それで、セイバーはどう?」

セイバー「……はい、いますね。ランサーかあの男かまでは分かりませんが」

凛「こちらを誘ってるってことかしら?」

セイバー「いえ、本当にただこちらを見ているだけ、といった感じです」

凛「見てるだけ? 逆に不気味よそれ……」

とら「罠だろうが関係ねえな。槍使いでもあの金色野郎でも借りがあるのよ。わしは行くぜ」

凛「ちょっと待ってよとら。もうすぐ日も落ちるし桜たちもいるのよ。戦闘は許可しないわよ」

とら「チッ……。しかしいいのかよりん、今は敵の手がかりがなーんもねえんだぞ?」

凛「それは……」

470 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/09/09(土) 01:15:32.13 ID:KUnV8ew50


セイバー「トラの言うとおりだ。ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま逃がしたくはない」

うしお「セイバーには何か考えがあるのかい?」

セイバー「ウシオとリンは、アサコたちを連れて先に帰宅してください」

セイバー「敵サーヴァントは私とトラで追います」

とら「ああ!? なんでわしがおめえと!!」

凛「それじゃ私たちの護衛が……」

セイバー「ウシオの家にはリンやイリヤの結界があります。いざという時は令呪もある」

うしお「そう、だな。それに、このままウダウダして夜になったら敵の思う壺かもしれねえ」

凛「……分かったわ。でもあのサーヴァントが陽動や罠だったら即時撤退すること」

セイバー「了解です」

凛「いいわね、とら?」

とら「けっ、分かったよ」

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