キスショット「これも、また、戯言か」

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235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:37:39.26 ID:znhwGlXXo

「それで、ぼくがこの勧誘に応じれば、キスショットの右脚は返してもらえると、

そういう話ですか? これは」

 もし戦わないで済むというのなら、それで済む話だ。ここで乗っておいて、あとで適当に

抜け出せばいい。もしくはぼくの不甲斐なさにドラマツルギー自身がぼくをクビにするかも。

 しかし、そんなぼくの甘い考えは通じなかった。というか、そもそもぼくらの間に相互理解なんて

ものはなかったのかもしれない。ドラマツルギーは「違うな」と言った。

「お前が仲間になったのならば、ハートアンダーブレードを殺すことが、お前の最初の仕事となるだろう」

「却下だ」

 珍しく、考える前に言葉は出てきた。
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:38:56.66 ID:znhwGlXXo

「ぼくはキスショットを戻して人間に戻る。吸血鬼の仲間になんてなるか」

「…………そうか」

 こうして、交渉は決裂した。ドラマツルギーからの印象は悪くなっただろうし、こうなると、

ぼくの強弱に関わらず、ドラマツルギーは本気でぼくを倒そうとするだろう。仲間にならないのだし、

殺す気で来られるかもしれない。いや、殺されてはキスショットの居場所がわからないのだから、

ぼくが降参するまで拷問され続けるのだろうか? どちらにせよ、これでぼくの勝ちの目はほとんど潰れた。

詰んだかもしれない。

 でも、ぼくに後悔はなかった。むしろなぜか、妙にすがすがしささえ感じた。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:40:29.64 ID:znhwGlXXo

 「惜しいな」とドラマツルギーはつぶやいて肩、首、そして腕を回す。準備運動――――

つまりは、本気ということだ。

「ですか。ぼくはまったくそうは思いませんね」

 ぼくも応じて構える。左足を軸に両腕を前に出す、いわゆる、ファイティングポーズ。

まずは観察。ぼくがドラマツルギーと正面から打ち合って勝てるとは思わない。様子見。

見ることが第一だ。そして、繰り出される攻撃を、避ける、受け流す、カウンターを入れる、

どれを選択するにせよ、もっとも動きやすい、フットワークの軽い構えはおそらくこれだろう。

動体視力はそれなりにある。むこうで散々訓練してきた。それに加えて今は吸血鬼の状態。

それにドラマツルギーは筋肉質。それほど機敏に動けるとは思えない。きっと、その動きを

捉えることはできる。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:40:58.69 ID:znhwGlXXo



 ――などと、考えた自分が甘かった。


239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:41:30.88 ID:znhwGlXXo

「は?」

 思わず声が出る。ドラマツルギーは、その巨体に似合わない俊敏な動きで、一足でぼくに詰め寄った。

吸血鬼の目によって、その動きは捉えることはできたが、しかし、これは捉えるべきで

なかったかもしれない。

 ドラマツルギーは、まるでその肉体がただ目の前の相手を殴るためだけに存在しているかのような、

そんな動きをした。流動する筋肉。美しさすら感じられる軌道、それがただそうであるかのように、

脚が動き、腕は流れ、そして衝撃が炸裂する。

 こんなの、見えたところで意味はない、ただ、こちらとあちらの戦力差を思い知らされるだけだった。

 こんなもの――見てから人間が反応できるわけがない!

 ドラマツルギーの右の拳は、ぼくの頭を吹き飛ばした。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:42:43.07 ID:znhwGlXXo

 一瞬、視界が暗転する。その後、ぼくが見たのは星だった。視界いっぱいに広がる夜空。

(ぼくは倒れている?)久しぶりに見た気がするそれらはただひたすらに美しかった。

 なぜぼくはドラマツルギーに殴られたはずなのに、こうしてどこに傷を負うこともなく

グラウンドに倒れているのだろう? 深夜にグラウンドに倒れている、ということは別に

夢オチでもなんでもなく、勝負は行われたはずだ。つまり……殴られて気絶して、勝負は

ついてしまったのか? あれだけかっこつけて、五ヶ月引っ張ってワンパンKO?

そりゃいくらなんでも……と、そこまで考えたところで。

 上から、殺気が、降って、思、考より先、に身体が動、く。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:44:02.80 ID:znhwGlXXo

「くっ!」

 左腕に全力をかけ、全身を飛ばすように地面をうつ。しかしそれでも遅かったらしく、

ドラマツルギーの左拳がぼくの手の甲をかすった結果――ぼくの左手首から先は、弾け飛んだ。

ごがぐが、と音が聞こえた気がした。それはぼくが左手でグラウンドを砕いた時の音なのか、

ドラマツルギーがぼくの左手を破砕した時の音なのか、はたまた幻聴か。

 考えたところで、遅れて、熾烈な痛みが脳に伝達される。

「……っがあああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 いたいいたいいたいいたいいたい! ずきんずきんと、左手が痛み、機能の欠損を、

生命の危機を、脳が叫ぶ。

「う、お、あ」

 勢いをそのままにグラウンドを無様に転がるぼくの思考は、ただただ一つのことだけを訴える。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:44:43.05 ID:znhwGlXXo

 ぼくは死ぬ。

 殺される。

 勝てない。

 戦いにすらならない。

 ぼくでは、ドラマツルギーには、勝てない。
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:47:23.35 ID:znhwGlXXo

 唐突に、ぼくの回転は止まる。何か施設の柱にでも引っかかったのか?と、そちらを向くと、

回転を妨げたその正体は、はたしてドラマツルギーの丸太のように太い右脚であった。

 ああ、そりゃあ、回転するよりも走るほうがはるかに速いよな。

 死ぬ。

 ギロチンカッターが脚を振り上げる。

 死が目の前にある。

 せめてもの抵抗に、とぼくは両腕を顔の前で交差させ、防御の姿勢をとる。だが、ぼくは

知っている。この程度ではあの脚は止められるはずがない。最後のあがき、といってもそれは

諦めを過分に含んだものだった。

 ああ、今度こそ終わった。

 吸血鬼の力で強化された目が、ドラマツルギーが脚を振り下ろす様を見届ける。今度こそ、

ぼくは殺されるのだ。

 その瞬間、ぼくは気づいた。

 ぼくの左手が、再生していた。

「!?」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:48:13.87 ID:znhwGlXXo

 一瞬の両腕の激痛。そしてまた一瞬の暗転。

 二度目の暗転の後、今度の景色は、夜空と、ドラマツルギーの右脚だった。

「!!」

 ようやく、理解する。

 最初に頭を殴られたとき、ぼくは気絶していたわけではない。夢オチでも何でもない。

 本当に、ぼくの頭は吹き飛ばされたのだ。

 そして、その後、再生した。

 吸血鬼としての――――再生力。

 そうだ、突然のことで混乱していたが、以前にもあったのだ。最初も最初、吸血鬼として

目覚めたその日、ぼくは日光に焼かれ、焼けただれ、そこから再生した。

 ならば、そう、ならば。

 いくら傷ついても構わないというのであれば。

 ドラマツルギーに勝つ手段はある?
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:49:44.05 ID:znhwGlXXo

「!」

 ドラマツルギーは左脚でぼくを蹴り、身体を宙に浮かした。十メートルほど、ぼくは吹っ飛ぶ。

「どうした? ハートアンダーブレードの眷属よ。降参するというのであれば、応じるが?」

 蹴られた瞬間激痛が走った。地面に着弾するとき、全身を擦りむいた。けれどもう痛みはない。

 ドラマツルギー相手には、手段を仄めかすだけでよいと考えていた。というか、

それしかないと思っていた。たとえどんな手段を用いたところで、返り討ちにあうだけだと。

けれど、今前提条件は崩れた。そうだ。すばやく再生するというのなら、一瞬で回復する

というのなら、どれだけ返り討ちにあおうが問題はない!

「……降参なんて、しませんよ」

 ぼくは、立ち上がり、ドラマツルギーをじっと見る。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:51:40.22 ID:znhwGlXXo

 構えは取らない。カウンターは無理だ。あの攻撃速度では対応できない。ならばぼくに

できることはといえば、ドラマツルギーの攻撃を全力でかわすことだけだった。

 「そうか」とつぶやき、ドラマツルギーはまた右の拳でぼくをぶち抜きにかかる。

 よけるよけるよけるよけるよけるよけるよけるよけるよけるよける――――!

 全神経を集中させて、ぼくはドラマツルギーの右の拳を、左に避けることに成功した。

その拳はあまりの速さに風すら発生させ軽くよろけそうになったが、なんとか持ちこたえる。

左に避けたことで、ドラマツルギーの脇ががら空き。この体勢では、ぼくへの攻撃は右腕に

よるひじ打ちしかない。ならば、ぼくが狙うは脇腹だ。

「はっ!」

 ひじが当たらないよう、ぼくは右の拳を突くようにドラマツルギーの脇腹に入れる。避けながら

なので姿勢は悪いし、元の利き手の左手でもない、そのうえまるで腰の入ってない反撃であったが、

今はぼくも吸血鬼だ。これでもある程度のダメージは見込めるだろう。

 しかし、そんなぼくの一撃はドラマツルギーに当たることはなかった。

 ぼくの脇腹への攻撃を、拳を打った後の無防備な状態で振るわれる反撃を、ドラマツルギーは

無理やりにかわした。
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:53:03.09 ID:znhwGlXXo

「ふっ!」

 今度ははっきりと「ゴキコキゴキガキッ」と音がした。無理な体勢でぼくの拳を避けるために、

ドラマツルギーは筋肉を無理やりに伸ばし、腹を無理やりに変形させ、ぼくの拳を避けた。

「んなっ!?」

 瞬間あっけにとられる。目の前で、人間が軟体動物のように上半身を九十度、いや、

百三十五度は傾けたのだ。しかも、横向きに。完全に予想の範囲外の動きにぼくは戸惑い、

一瞬動けなくなる。そして、ドラマツルギーには、一瞬あればぼくへの反撃には十分であった。

 無理な体勢のまま、ドラマツルギーはぼくの右腕へと、自身の右腕を振るう。

その体勢では先ほどのぼく以上に力が出ないはずなのに、ドラマツルギーは、ぼくの右腕を飛ばした。

今までよりも鋭い痛みが右腕から送られてくる。

「ぐ、あああああああ!!!」

 鮮烈な痛み。今まで生きてきた中で一二を争うほどのその鋭い痛みが、ぼくを一瞬襲い、

そして右腕が回復する。

「っはあ、っはあ」

 そこまでくるとぼくは状況を冷静に判断できるようになっていた。ドラマツルギーが

横に傾けていた身体を起こす。元の構えに戻ったドラマツルギーの身体は、その両腕は、

先ほどまでとは大きく変質していた。

 両腕が、大剣に変化している。

 波打つ大剣、フランベルジュ。

 吸血鬼としての――――変身能力!!

「……そういえば、そんなのもありましたね」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:55:11.01 ID:znhwGlXXo

 ドラマツルギーはまだ全然全力ではなかったらしい。勧誘する都合上、武器を相手に

見せないために腕をそのままにしていただけということか。

「ああ、くそ」

 見たところその大剣は、人間の腕だった状態の時よりも長い……先ほどよりもリーチは

長くなっている。ドラマツルギーは大男だ。通常の腕の時点ですでに不利であったのに、

さらにそれ以上長くなるだなんて……。しかも西洋剣、両刃であるということは単純に

どう振っても切れるということだ。拳は突き出す威力は高くても振った際の威力は落ちる。

まあ、ドラマツルギーほどの怪力であればラリアットでもぼくの首は飛びそうだが。

ともかく、武器が腕から剣に変わったことは、更にぼくの勝ちの目が潰されたということになる。

もう降参して助かるなら降参したい。

「でも、なあ」

 人間に戻れないから、人外として暮らす。

 人間に馴染めないから、人外として暮らす。

 それは、ただの逃げだ。諦めだ。

 もう、逃げたくない。今まで逃げてばかりの人生だけど。それでも、それだからこそ、

逃げられない。

 だって、逃げたところで、結局そこでもぼくの扱いは、生き方は変わらないのだと、もう

知ってしまっているから。

 人外になり果てたところで、ぼくが仲間を作れるはずがないのだから。

ぼくが誰かと、良好な関係を築けるわけがないのだから。

 どこに行っても、どこまでも孤独。

 そんなものを味わいながら、生き長らえたくはない。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:55:48.60 ID:znhwGlXXo

「やるしかないよな」

 ドラマツルギーを、もう一度見据える。

 やはり、何度見ても勝ち目はなさそうに見えるけど、それでも。
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:57:53.78 ID:znhwGlXXo

 ドラマツルギーが、飛び込んでくる。右の大剣がぼくの左肩から右脇腹にかけて裂こうとする。

ぼくは、それを後ろに二歩下がってぎりぎりでかわす。続いて左の大剣を身体の中心を

突きさすように前に出す。そんなことをすれば折れてしまいそうなものだが、元はドラマツルギーの

身体だ。たやすくぼくの身体に穴をあけるだろう。食らうわけにはいかない。今度はそれを右にかわす。

 それを見て、ドラマツルギーは左腕の軌道を変え、水平に振るうようにしてきた。ぼくはそれを

かがんで避ける。ドラマツルギーはその勢いをそのままに回転するように右腕を振るう。

かかんだ体勢のぼくは飛んで――ダメだ! 空中に逃げてはその後の連撃をまともに食らう!

ここはおとなしく斬られる以外の道はない!
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:59:34.49 ID:znhwGlXXo

「くっ」

 覚悟を決める。被害を最小限に食い止めるため腰を曲げたまま、足だけをまっすぐにする。

斬られるのは太ももから下だけだ。

 ぶちぶちっ、と筋肉と血管が斬られる音が聞こえた気がした。

「〜〜!」

 覚悟を決めていたためか、先ほど右腕を切られた時よりは痛くない。ならばこのままドラマツルギーに

攻撃を加えようと意識を切り替える。両腕で逆立ち状態で着地し、そのまま再生した足で

蹴りを食らわせる――と、そこまで考えたところで。

 ――――背中が――――――――ぶるり――――――――――――――――ふるえた。

「うおおおおおおおお!?」

 ぼくは逆立ち状態の腕で全力でグラウンドをはじき、後方に飛ぶ。飛ぶといってもあまり

高く飛びすぎると追撃を食らう恐れがあるので、地面からの角度は十五度といったところだ。

そしてまたそのまま無様に後ろに転がっていく。

 転がりながらぼくが見た光景は、ドラマツルギーの右脚が、ぼくが逆立ちしていたあたりで

空を切るさまだった。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:05:31.83 ID:znhwGlXXo

 思わず、ゾッとする――不意打ちであんな蹴りをかまされて、まともに食らっていたら、

ぼくの身体はどうなっていたことか。いや、ぼくの身体はどうでもいい。問題は逆立ち状態で、

何が起きているのかわからない状態で不意打ちの蹴りを食らったら、はたしてその時、ぼくは
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
意識を保てていただろうか?

 また、どこか甘く考えていた。何回死んでも、最終的にドラマツルギーを倒せればそれでいいと。

敗北条件を見誤っていた。

 そう、ぼくは死なない。だから、致命傷を食らうことは問題ではない。ここまでは正しい。

じゃあぼくの敗北条件は、降参しないことだけなのかといえば、それは違う。ぼくの現在の
        ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
敗北条件は戦闘中に気絶しないこと、または、ドラマツルギーにつかまって、追い込まれて、
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
降参するまでなにもできずに殺され続ける状況に追い込まれること。

 そうすると、そうなると……。

「このままでは、やっぱり勝てないか」

 相手のリーチを、自分の不利をそのままにしたままでは、勝てない。

 どうしても、今、この戦力差を埋める方法を思いつかなくては……。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:07:13.94 ID:znhwGlXXo

 ふたたび、いや、もう何度目か、ドラマツルギーが突っ込んでくる。避けながら、食らい

ながらでもいい、考えろ。

 ぼくを斬ろうとする右腕をかわす。なにかないか。ぼくの首を刈ろうとする左腕をよける。

絶望的なリーチ差を覆すなにか。右腕がぼくの左腕を切り落とす。近づく手段、またはより

遠くで戦う手段が欲しい。左腕を囮に繰り出される右脚を食らう。大剣に対抗する手段は。

 ……一つ、見つけた。

 できるのか? いや、やるしかない。

 ぼくは一気に後ろに下がり、そして構える。最初の構え、ファイティングポーズ。

 「む?」とドラマツルギーが反応する。

「ほう。逃げてばかりでつまらぬ男だと思っていたが、とうとう覚悟を決めたか」

「ええ。覚悟を決めました。今の状況を見つめました。こうなれば、真っ向勝負しかないですよね」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:08:14.38 ID:znhwGlXXo

 そうだ。相手は吸血鬼だ。両腕を、そのまま剣にしてしまうような、埒外の存在だ。

 そして、ぼくも吸血鬼。斬られても斬られても復活するような、そんな規格外。

「ならば、あなたにできてぼくにできない道理はない」

 イメージする。ぼくの両腕は剣だ。ぼくの両腕は剣になる。いや、違う。元からぼくの

腕は剣だった。ぼくの両腕は剣。剣。剣。剣。剣剣剣剣剣けんけんけんけんけんけん――――。

「……ふぅ」

 ぼくの両腕は、剣となった。長い、ドラマツルギーとの身長差、体格差をも凌駕しうる長い西洋剣。

 そうだ。ぼくは、化け物。

 この程度、できて当たり前になってしまったんだ。

 そんなぼくの姿を見て「ほう、さすが、呑み込みが早い」と、ドラマツルギーは笑った。

「ずいぶんとまた余裕ですね。リーチ差はこれでなくなったというのに」

「ああ、たしかにそうだ。これでお前と私の条件は五分となった。いや、お前の得物のほうが長いか?」

 それでも、ドラマツルギーは笑っている。

「……いやいや、馬鹿にしているわけではない。本当に、その速さで変身能力を身に着けるとは、

驚嘆に値する。やはり、私の見立て通り、お前は吸血鬼としては天才的だ。だが……」

 と、ドラマツルギーは笑みを消して、真剣なまなざしでこちらを見る。

「お前がナンバーワンになるのはいずれ、私を超えるまでになるのはまだずっと先だ。

その程度で、私に勝てるなどと甘い考えを持たれるのは、不快だな」

 ぎろり、とより強い殺意がその目に宿る。
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 02:12:19.47 ID:znhwGlXXo

 ひるむな。恐れるな。今はぼくが有利なのだ。

「はっ!」

 声を上げ、ぼくはドラマツルギーへ剣が届く間合いまで一気に詰め寄り、右腕の大剣を振り下ろす。

 戦いが始まって、初めてぼくから仕掛ける攻撃、それを、ドラマツルギーの大剣は真っ向から受けた。

 そして――ぼくの右腕はガラスのように音を立てて崩れた。

「!!!!!!」

「やはり、な」

 ドラマツルギーがぼくへと近づいてくる。斬られる前に左腕の剣を振り、ドラマツルギーに

カウンターを決める。決めようと思った。

「え?」

 ぼくの左腕は、ドラマツルギーを斬れずに空を切る。それもそのはず、ぼくの左腕は、そもそも

ドラマツルギーに届いてなかった。ぼくの左腕はリーチを失っていた。
 ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 ぼくの左腕は、元の人間の形に戻っていた。

「くっ!」
                                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「やはり、まだまだ人間であるころの意識が抜けてないな。私も元は人間だったからわかるよ」

 言って、ドラマツルギーはぼくに斬りかかる。

「自分が化け物である現実など、ふつうはそうそう認められないものだ」

 ドラマツルギーの両腕は、強固な二本の大剣はぼくを×の字に切り裂いた。

「ぐっ、うっ」

 もちろん、すぐさま再生する。ぼくの身体から肩が生え腕が生え頭が生える。

 元の人間の形に、生え変わる。
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:14:13.11 ID:znhwGlXXo

「うっ、うっ、うううううう」

 覚悟したつもりだった。

 捨てきったと思い込めてると勘違いした。

 それでも、ぼくは人間であると、自己の認識を変えられないというのか?

「うううううううううううう」

 今度こそ、もう本当にダメだと思った。無理だ。これが通じなければ、ぼくに勝ち目はない。

 ドラマツルギー以上のリーチを、ぼくは作り出せない。

「どうした? ハートアンダーブレードの眷属よ。今度こそ手詰まりか?」

 ドラマツルギーが、問う。
                                           バケモノ
「諦めろ。お前はまだまだ化け物に成り切れない、中途半端な存在だ。  私 の真似事はまだ

できはしない」

 そうだ。ぼくはドラマツルギーのように考えられない。割り切れない。自分が化け物であると、

認めたくない。今までだって何度も何度も言われてきたけど、自分でもどうかと思うような

人間性をしているけれど、でも、認めたくない。

 だって――

 自分で認めてしまったら――

 本当に化け物になってしまいそうで――
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:16:47.64 ID:znhwGlXXo

「認めろ。お前は化け物なのだ。人間にはもう戻れない。だから、お前の選択肢は二つに一つだ」

 ドラマツルギーは言う。

「選ぶがいい。ハートアンダーブレードの眷属よ。これが最後の選択だ。あの女と心中するか。

われらの仲間となり化け物として暮らすか」

 化け物として生きるか……化け物として死ぬか。

 その二択しか本当にないのか?

 ぼくは、人間にはもう戻れない?

 いや……ドラマツルギーからしてみれば、ぼくはもともと人間ですらないのか……。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:17:44.39 ID:znhwGlXXo

 …………ん? ドラマツルギーからすれば?

 そうだ。ずっと図星を突かれていたからその気になっていたけど、全部、ドラマツルギーが

勝手に言っているだけじゃないか。この勝負を化け物対化け物の構図にしているのは……

ドラマツルギーのほうだ。そして、ドラマツルギーはずっと優位に立っている。それはそうだ。

ドラマツルギーが始めたことなのだから。

「やはり、後者か」

 これは、ドラマツルギーの揺さぶりだ。化け物対化け物ではぼくに勝ち目はないという、

ただ当たり前のことを勝手に主張してるだけに過ぎない。

 むしろ、勝てる勝負だというのに、ドラマツルギーの態度は先ほどから不自然だ。

 本当に仲間にしたいというなら、有無を言わさず決着をつけて、キスショットを殺してから

仲間に引き入れてもいい。

 そして、先ほどからの提案、降参の促し。ドラマツルギーは勝負を焦っている?

 ドラマツルギーはぼくを倒す手段がないということじゃないのか?

 そして、化け物にぼくが成りきれないというのなら……。

 ぼくが自分をまだ人間と認識しているのであれば……。

 ならば。

 まだ、ぼくに勝ち目はある。
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:18:34.84 ID:znhwGlXXo

「……………………決めました」

「ほう、答えを聞こうか」

「ぼくは決めました。あなたを倒して、人間に戻ります」

「……そうか。心中する道を選んだか」

 とどめを刺さんとばかりに、ドラマツルギーは、構える。右腕を前に出し、左腕はやや水平気味。

おそらくは右腕を斜めに、左腕を水平に薙ぐように斬りかかってくるだろう。おそらく四回目で

逃げ場をなくされてまた斬られる。そしてその後の状況も悪い。それでは、またぼくに勝ち目はない。

 まずは、有利な場作りだ。

「あ、すいません。間違えました」

 「おい」と、気が抜けたように、ドラマツルギーは言う。

「いえ、そこまで違いはありませんよ。誤解されかねない言い方だったな、と」

「……」

「ぼくは、人間です。まだ、化け物にはなってない」

 宣言して、ぼくはドラマツルギーに背を向けて、走ってその場を逃げ出した。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:19:53.32 ID:znhwGlXXo

「くっ! この期に及んで逃げるか!」

 という声を背中で浴びた。足音から察するにドラマツルギーも、全力で追いかけてくる。

巨体のわりにすばやいが、ぼくもまた吸血鬼の力のおかげでそれなりに足の速い状態だ。

足音からの体感になるが、ほぼ同速だろうと思う。

 ドラマツルギーとのリーチ差をなくす。相手より遠い間合いからの攻撃は不可能。

 ならば、剣を振るう前に、ドラマツルギーが剣を振るえない距離まで接近できれば、

脚を振るえない距離まで肉薄できる、それだけの速度が持てれば、ぼくに勝機はある。

 その速度には、互いが全力疾走したくらいの速さが欲しい。つまり、この速さを維持したまま、

ドラマツルギーの元へと突っ込めればいけるはずだ。

 この速度を維持したまま、方向転換。学校のグラウンドであるならば、きっとそれはある。

 あたりを見回し、そして見つける。

「あった! 鉄棒!」

 さいわい、鉄棒の持ち手はぼくの身長よりも高い位置にある。であれば、あそこを支点に

回転ができる!

 ぐるり、と、グルッピーのように回転し、ぼくはドラマツルギーの元へと特攻を仕掛ける。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:22:43.86 ID:znhwGlXXo

 が。

「あ」

 思ったより、ドラマツルギーとの距離は離れていた。距離にして三十メートルほど。

ドラマツルギーの足音が一定に聞こえてきたのでせいぜい十メートルくらい後ろだと思っていたが、

吸血鬼の力によりぼくの耳は強化されていた。遠くの音でさえもしっかりと拾えるようになって

しまっていたのだ。

 ドラマツルギーが、走りながら右腕を振りかぶる。そりゃそうだ。三十メートルも先で回転する

動きが見えたら、あらかじめ剣を置くようにぼくを斬ることはできる!

 どうする、速度を落とすか?

 いや、このままでも行ける。

 ぼくは人間なのだから。

「うおおおおおおおお」

 恐怖を押さえ、そのまま走り続ける。ドラマツルギーは首を切り落とすつもりのようだ。

 問題は、ない。

 ドラマツルギーの右腕、フランベルジュの間合いに、全力で入った。

 水平に振るわれた右腕が、ぼくの首を切り落とす。

 問題はない。

 ぼくは、人間なのだから。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:24:13.54 ID:znhwGlXXo

「ぬう!! う、うおおおおお!?」

 ドラマツルギーが、ぼくの狙いに気づく。

 ドラマツルギーにはねられたぼくの首は、首だけになったぼくは、勢いそのままにまっすぐ飛び、そして。

 ドラマツルギーの首へとかみついた。
 
「おおおおおおお!?」

 吸血鬼は吸血鬼に血を吸われてはならない。存在そのものが絞りつくされてしまうから。と、

キスショットは言っていた。

 そうだ、ぼくにとって弱点となりうるのであれば、それがドラマツルギーに通じない道理はない。

 ぼくは、首だけになって、血を吸う。ドラマツルギーを吸いつくそうとする。

「な、な、なななななな」

 ドラマツルギーがうろたえる。いつまでも、吸い付いて離れないぼくに驚き、そして。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:25:07.27 ID:znhwGlXXo

「ちっ」

 一瞬の暗転の後、ぼくはグラウンドに倒れていた。もう、タイムリミットであるらしい。
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:25:49.88 ID:znhwGlXXo

 ドラマツルギーはというと、両腕の大剣を人間状態のそれに戻し、首元を押さえ、

その場に座り込んでいた。

 ぼくは立ち上がり、反撃を恐れ距離をとる。

 おそらく、この手は二度目は通じない。もう一度、ドラマツルギーに近づくための方策を考えなくては。

と、考えたところで気づく。ドラマツルギーは、青ざめた顔でぼくを見ていた。座ったまま、動かないで、

いや、動けないでいる。血を吸ったことによる影響だろうか? ならば今は好機か?
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:26:39.94 ID:znhwGlXXo

「お、 お前! それは! 今のは、なんだ!」

 ドラマツルギーは、座り込んだまま叫ぶ。信じられない、と言った感じだ。

「吸血鬼が吸血鬼に血を吸われると、存在ごと吸い取られるんですよね。キスショットが言ってました。

まあ、キスショットはあなたにされないように気を付けろ、とアドバイスをくれたんですけどね」

「っ! つまり、ハートアンダーブレードの案ではなく! お前が企み、実行したというのか!」

「ええ、まあ」

「お前、人間に戻りたかったのではないのか!?」

 ドラマツルギーが、叫ぶ。

「吸血鬼などやめて人間に戻りたかったのではないのか! それが血を吸うなどと!

何のためらいもなく他人を食おうとするなどと!」

「……だから、言ってるじゃないですか。人間に戻りたいんじゃなくて、ぼくはまだ人間なんですよ」

「は?」

「人間だから、使えるものは吸血鬼の力だろうが何だろうが使います。生きるために精一杯のことを

します。殺されそうになったら、なりふり構わず戦います」

 後半は適当なことを言ったけど、まあ、だいたいそんな感じだった。
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:29:21.17 ID:znhwGlXXo

「人間であるために……人間以外の力を使う? それは……そんなの、矛盾だ」

「ええ。よく言われます」

 でも、人間てそんなもんじゃないですか?

「……………………………………そうか」

 ドラマツルギーは立ち上がった。さて、この後はどうすべきか……。

 と、身構えていると、ドラマツルギーは「いや、もういい」と、短く言った。

「え?」

「私の負けだ。と言いたいんだ。もうお前に、勝てる気がしなくなってしまった。お前は、

私ごときの手では負えない」

「え? いや、あの……」

「それとも、こう言えば満足か? 降参だ。二度と手は出さん。命だけは助けてくれ――と」

 ドラマツルギーは両腕を上げ、にこりともせずに言った。

 「え、えっと……」と、ぼくが困惑しているとドラマツルギーは説明をしだした。

「正直なところ、もともと、地力ではお前のほうが強いのだ。それでも実戦経験の差でまだ私が

勝てると思っていたが、まさかここまで色々されるとはな」

「……」

「変身能力に、不死身性を生かした接近。このままでは、戦ってるうちに本気になりそうに、

殺してしまいそうになる」

「あ、やっぱりまだ本気ではなかったんですね」

「ああ……だが、どうかな。最初から本気でやっていたところで、どう転んだかわからん。

それこそ、逆に私が殺されていたかもしれない」

「……買いかぶりすぎですよ」

「そんなことはないと思うがな」
                          バケモノ
 「お前は否定したが、やはり私は、お前はこちら側だと思うよ」と、ドラマツルギーはつぶやいた。

「……キスショットの右脚。返してくれるんですよね」

「ああ。今はある場所に隠して保管してあるが――すぐにでも、あの軽薄な男に渡しておく。

それでいいんだろう?」

「ええ」

「では、示談成立だ」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:31:27.67 ID:znhwGlXXo

 「ところで」とドラマツルギーはぼくに訊ねてきた。

「最後、私が首をはねたとき、お前の首がしばらく回復せず、私にかみついてきたのは、

あれはどういう理屈だ?」

「ああ、いや、あれは簡単なことですよ。ぼくは化け物に成りきれてない、だからドラマツルギーさんの

ように腕を完全に変質できないんですよね」

「ああ」

「だから、ぼくにとってなじみ深いものになら変身できるんじゃないかと思いまして、
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
人間になることならできるんじゃないか、と思ったんです。ほら、人間なら、首をはねられても

回復なんてしないでしょ?」

 「……そもそも」と、ドラマツルギーは呆れたように言う。

「そもそも、人間は首をはねられたら死ぬし、ましてやかみついて血を吸うなんてできはしないだろうに」

「ええ、ですからこれも矛盾ですね」

「……そうだな」

 ドラマツルギーは納得してくれたようだった。
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:33:22.65 ID:znhwGlXXo

「ハートアンダーブレードの眷属よ」
               ・ ・ ・ ・ ・ ・
 言いながら、彼の姿がかすみ始める。

 目の錯覚かと思ったがそういうわけではなく、ドラマツルギーの身体は、夜の闇に溶け始めていた。

 変身能力。

 曰く、吸血鬼は身体を霧に変化できる。

「最後にもう一度だけ確認させてくれ。お前は、人間に戻るのだよな?」

「ええ。ぼくは人間ですからね」

 ドラマツルギーは完全に姿を消したが、声だけはグラウンドにまだ響く。

「それを聞いて、安心した」

 闇の中から聞こえる声は、最後に自分の意見を曲げた。

「お前は、もう、我々吸血鬼としても困る存在になってきたからな。早く人間に戻ってくれ」

「………………」

 もう、気配すらしない。最後に捨て台詞をはいて、同族殺しの吸血鬼は、ヴァンパイアハンターの

プロフェッショナルは、夜の闇に消えていった。いや、あれは彼なりの激励だったのかもしれない。

そう思うほうが精神衛生上いい。

「はあ、まさか初デートで、告白もしてないのに振られるとはな」

 ふざけて言ってみた。

 虚しいだけだった。
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:34:36.75 ID:znhwGlXXo

「さて、グラウンドがだいぶへこんでしまったけど、これ、どうすりゃいいんだろな……」

 忍野が勝手にやってくれないだろうか。いや、それでオプション料金とか取られても

やだしなあ……なんて考えたところで、気づく。

 校舎の陰から、視線を感じた。

 ドラマツルギーがまだ何か言うことでもあるのか。はたまた残りの二人のどちらかか、

審判役として忍野が実はいたということなのか、いろいろ考えながら、その陰に隠れているのが

だれなのか校舎の陰がより見えるよう、回り込んで、歩く。

 無言でこちらを見つめる瞳。

 それは、女子生徒だった。三つ編みのおさげを一つ、後ろで結わえている。眼鏡をかけて、

いかにも委員長、という感じを全身から醸し出すその少女に、ぼくは見覚えがあった。

「えっと、たしか、は、はね、はね――」

 思い出した。羽川翼ちゃんだ。
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 02:35:19.50 ID:znhwGlXXo
今回はここまでです。今度こそ続きは間開けないようにしたいです
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 01:03:43.24 ID:c3QGgs9So
 
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 23:38:32.20 ID:fddWCVsqo
保守
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 11:54:03.02 ID:Fd/hLyVE0
またクソ懐かしいものが……
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 14:24:07.25 ID:gYM/YUZro
>>1です。生きてます。まだ書けてません。間あけないようにしたいといいながらこの体たらくです。ごめんなさい
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 14:21:39.54 ID:WPH0VNHYo
ほしゅ
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 20:01:27.06 ID:HY+Xru02o
いーちゃんにももう子供がいるんだぜ…読んだときほんわかした気分になったけど、冷静に考えたらどんな子に育つんだよ…
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 21:43:52.27 ID:fy7Ik6CBO
待ってる
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/26(水) 16:17:23.19 ID:vV5UN/3do
>>1です。自分を>>1と思い込んでいる精神異常者じゃなければ>>1なはずです。書けてません。ごめんなさい。生きてます。ごめんなさい。
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 20:09:00.03 ID:ml012n64o
ほし
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/04(日) 11:31:59.11 ID:SyZTjK9bo
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/04(火) 08:34:23.44 ID:kNmEo/6kO
ほし
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 08:08:19.65 ID:wSWNP8mTo
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/01(水) 22:50:40.77 ID:/7vl1p04O
待っとるで
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/09(木) 21:29:52.09 ID:m3P1o9320
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