モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

509 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:27:29.54 ID:LkNOvbtJ0

クォーツ『っ! まずい! 一旦身を隠せ!』

むつみ「えっ!?」

ドラゴンと戦う覚悟を決めたむつみは今にも飛び掛からんとしていたが、突然のクォーツの言葉に気勢を殺がれる。
何事かと攻撃を取りやめ様子を伺うと、ドラゴンの口元のあたりが陽炎のように揺らめいているのが見て取れた。


むつみ「(相手は炎のドラゴン……ということは……まさか)」

むつみが逡巡していると、ドラゴンがやおら口を開きつつ大きく息を吸い込むような動作を見せた。

クォーツ『早く隠れろ!!』

クォーツの怒声に慌てて隠れ場所を探す。
だがその直後──むつみが危惧した通りだったが──灼熱の火炎がドラゴンから放たれた。


むつみ「あっ! あつっ!! これじゃ、近寄れないです!!」

既の所で部屋の中央に立っていた柱の裏に逃げ込むが、凄まじい熱量に挟まれ、身動きもままならない。
攻撃するにせよ逃げるにせよ、敵の眼前に姿を晒すことは不可能だ。

クォーツ『落ち着け、敵の火炎とて無制限に吐き続けられるわけではない』

クォーツ『途切れたところを反撃だ』


クォーツの言葉通り、数秒後に炎が弱まり、止んだ。
むつみはすぐさま柱から飛び出すと、ドラゴンの足を斬りつけるが──。

むつみ「か……硬い……っ!」

ワニ革を何十倍にも分厚くしたような表皮の上に、さらに硬度のある鱗が備わっている。
刃は受け流されてしまい、何度も切りつけるが傷を付けることすらままならない。

ドラゴンの方は全く動じることなく、むつみを矮小な存在と認めると、目線だけを動かし睨みつける。
そして、思い切り腕を振り上げると、力任せに叩きつけた。
大ぶりな動作のため避けるのは容易だが、その衝撃は地下空間を大きく揺らし、コンクリート製の床から小部屋全体に亀裂が走った。



むつみ「どうしましょう……攻撃が効かないです」

むつみは再度の火炎放射に備えいったん距離を取るとクォーツに相談する。


むつみ「セクシーカモフラージュの武器なら、効果はありますかね?」

クォーツ『いや……先ほどのお前の斬撃の威力と、あれの防御力とを分析したが──』

クォーツ『仮にセクシーカモフラージュの武装を用いても、あれに有効打を与えることは困難だろう』

むつみ「そんな……じゃあ、一体どうすれば!」

クォーツ『(むつみの実力からすると……現状では奴の相手は荷が重いか)』
510 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:31:46.81 ID:LkNOvbtJ0

クォーツ『…………仕方がない』

むつみ「え……?」

重苦しく、苦々しげに絞り出したクォーツの呟きをむつみは聞き逃さなかった。


クォーツ『おいそれと使うべきではない技だが……この際仕方がない』

クォーツはそのまま言葉を続ける。


クォーツ『いいかむつみよ、これから私の力の一端をお前に授ける』

クォーツ『ステージ衣装再現などではない、"私の力"の一端だ』 

クォーツ『それを用いて、あのドラゴンを仕留めるぞ』

むつみ「……は、はい!」

ただならぬクォーツの様子に、むつみは気圧され気味に頷いた。
直後、脳内にステージ衣装を再現する際の様に、イメージが流れ込んでくる。



むつみ「(事象の消滅……因果律の消去……?)」

むつみ「クォーツ、これって……」

クォーツ『今は言う通りにしろ!』

むつみ「わ、わかりました!」

頭をよぎるイメージについて訝しんだむつみは、"力"について問いかけるも、クォーツは有無を言わせない。
むつみは意を決してドラゴンを見据えると、目を閉じ精神を集中させる。



むつみ「汝、憫然たる現世の迷い子よ……」

むつみが脳内に流れ込む言葉を紡ぐと、突如としてクォーツの内奥でなにがしかのエネルギーが渦巻くのを感じ取った。


むつみ「冥き虚無の闇を以って、其に久遠の安寧を齎さん……」

小さな石ころ然としたクォーツには似つかわしくないその膨大なエネルギーは、まるで脈動するかのように膨張と収縮を繰り返している。


むつみ「リヴァートゥザヴォイド!」

かっと目を見開き、そして"トリガー"となる言葉を発した瞬間、それは一気に放出された。


先ほどドラゴンが現れた時とは対照的に、光の届かない宇宙空間を思わせる漆黒がクォーツから迸る。
それは、力を向けた対象であるドラゴンも、力を行使したむつみさえも巻き込むと、小部屋全体に広がっていく。
511 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:33:21.32 ID:LkNOvbtJ0

──────────────────────────────────────────


むつみ「なに……これ……」

むつみ「何も見えない……暗い……?」

今やむつみの周囲は、黒一色で覆われていた。
だが、暗いという表現は適当ではなかった。


むつみ「声に出しているはずなのに……耳も聞こえない?」

視覚をはじめ、聴覚や五体の触覚といった、外界の情報を得るための器官の感覚が、全て消失している。


むつみ「ど、どうなっちゃったの……?」

むつみ「……このまま戻らなかったり、なんてこと……ないよね?」

ともすれば、"意識"だけが存在しているような感覚に、むつみは強い焦燥感に覚える。
512 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:36:23.50 ID:LkNOvbtJ0

───────────────

────────

───


むつみ「はっ!?」

気が付くと周囲の"黒"は引き、元の小部屋が視界に戻ってきた。

時間の流れが変わっていたのか、むつみの体感では黒い空間にいたのはとても長く──ともすれば、永遠にも感じられるほどだった。
しかし実際には一秒も経っていない。

直前まで対峙していたドラゴンの姿はどこにも見えない。


むつみ「(ドラゴンは……クォーツの"力"で、やっつけた……?)」

クォーツ『むつみ! 今だ!』

むつみ「っ! ……はい!」

些か混乱をきたしていたむつみは、クォーツの声で我を取り戻す。


「今のは魔術か!? 貴様は一体……っ!?」

虎の子のドラゴンを失い、狼狽する黒装束を見据えると、一気に駆け出す。

「くそっ!」

想定外の事態に反応が遅れた黒装束は、懐から短剣を取り出す。
だが、その時にはすでに眼前にむつみの刀が迫っていた。



むつみ「はぁっ!!」

「ぐはっ……」

峰打ちとはいえ強かに忍刀に打ち据えられた黒装束は、一人目と同じように動かなくなった。
だが、息はあるようだ。

むつみ「ふぅ……」

むつみは残心を解くと、大きく息をついた。
初めて人間と対峙したが、カースを相手取るよりよほどやりづらいと感じられる。


むつみ「出来れば、乱暴は避けたいですけど……」

むつみ「でも、先に手を出したのはそっちですからね」

むつみは倒れ伏す二人組に、言い開きをするように声を掛ける。


非日常に巻き込まれ、これまで何度か戦闘も経験しているとはいえ、
むつみの本質は同世代と比較しても大人しい方に分類される少女のそれである。
他人に対して暴力を振るうことに抵抗が無いわけがなかった。

だが、よく読む冒険小説の展開を鑑みてか、自身に敵対的な存在に対する武力行使を躊躇わない丹力も持ち合わせていた。
その結果、今回の二人組との戦闘も制することが出来たということになる。
513 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:41:11.82 ID:LkNOvbtJ0

クォーツ『なんとか切り抜けたな』

むつみ「はい」

むつみが落ち着いた頃を見計らって、クォーツが声を掛ける。


クォーツ『私をその二人に近づけるんだ』

クォーツ『姿を見られたからな……記憶操作をしておく』

むつみ「そんなことも出来るんですか」

むつみ自身は知る由も無いことだが、むつみも初めてクォーツと出会った時に、その記憶を覗かれている。
どうやらクォーツには、人の記憶をどうこうする能力も備わっているらしい。


クォーツ『ここでの戦闘自体を無かったことには出来んが──』

クォーツ『うまくすれば先ほど逃げ去った人物の仕業──と思わせることも出来るかもしれん』

むつみ「それって、濡れ衣……」

クォーツ『濡れ衣ではないぞ? 私が行うのは、この二人から我々の記憶を抜き取るだけだからな』

クォーツ『ルナールの連中がどう事後処理をするかについては、私の与り知るところではない』

むつみ「そ、そうですか……」

当初の目標は誰にも見つからず、戦闘も避けるということだったが、
差し当たりこの二人組さえなんとかすればまだむつみ達の存在が知れることは無い。



クォーツ『ついでに、この者達の使っていた端末も調べてみようか』

そう言うと、黒装束が腕に嵌めていたウェアラブルコンピュータから白い光が浮き上がり、クォーツに吸い込まれた。

クォーツ『これは……ほう、「魔族再現プロトコル」とは……大層な』

クォーツ『役に立つかもしれん、頂いておこう』



クォーツ『さて、時間を食った』

クォーツは黒装束から得られた情報をひとしきり分析すると、改めて切り出した。

クォーツ『幸いアストラルクォーツはすぐそこだ、急ごう』

むつみ「わかりました」

むつみもそれに応え、再び歩き始める。
514 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:46:16.09 ID:LkNOvbtJ0

むつみ「ところで、どうやってアストラルクォーツの場所を調べているんですか?」

アストラルクォーツまでの最後の道のりを進むなかで、むつみはふと思いついた疑問をぶつける。
迷路という表現では生易しい、迷宮のようなネオトーキョーの地下空間を、迷うことなく進んできたためだった。


クォーツ『アクティベート──活性化した状態のアストラルクォーツは、特徴的なエネルギーを放出していてな』

クォーツ『それを検出し、辿っているのだ』


クォーツ『前にも見ただろうが、不活性状態のアストラルクォーツはただの透明な石で、活性化したものは輝く性質がある』

むつみ「なるほど……」

原理は分からないが、とにかくそういうものなのだろう──と、むつみは納得する。


クォーツ『ほら、見えたぞ……あれだ』

クォーツの言葉通り、むつみの視界の先には、宙に浮く輝く水晶体──アストラルクォーツがあった。



むつみ「やっとたどり着きましたね……」

ため息交じりにむつみが呟く。
アストラルクォーツの元にたどり着くまで、ネオトーキョーに上陸してからおよそ2時間が経過していた。


クォーツ『何はともあれ、これで目的達成だ、情報を回収して引き上げよう』

以前自宅で見た時の様に──あるいは先ほどの黒装束の端末の時の様に、アストラルクォーツから光が飛び出し、むつみの首物にあるペンダント状になったクォーツへと吸い込まれた。

するとその直後、むつみは足元が「ぐにゃり」と、変形したような錯覚に陥った。
思わずバランスを崩し倒れこんでしまう。


むつみ「えっ!? 何が起こってるんですか!?」

混乱を来たしたむつみはクォーツに問いかける。

クォーツ『どうしたことだ……突然周囲の空間値が……異常値だぞこれは!!』 

何が起こっているのかは分からないが、その様子からするとどうやらクォーツにとっても想定外の事態らしい。



クォーツ『そうか……この地下空間は、エネルギーのわずかな均衡を保って、非常に危うい状態で形作られていた』

クォーツ『アストラルクォーツの情報を回収した際にそのエネルギーの均衡が破られ……このようなことが……っ!』

むつみ「目……目が回って……来ました」

いまや空間全体が渦を巻くかのように蠕動している。


クォーツ『むつみ、取り合えず何かに捕まるんだ』

クォーツ『こうなっては空間が安定するのを待つほか無い』

むつみ「わ、わかりました……けど……気持ち悪い……っ」

むつみは目を固く閉じ、海上で激しく波に揺られる小型船舶に乗っているような感覚に必死で耐える。
次第に揺れは大きくなり、天地が逆さになったかのような感覚に見舞われる。

むつみ「うぅ……早く……収まって……!」
515 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:47:16.40 ID:LkNOvbtJ0

むつみ「あれ……収まった……?」

数分間はそうしていただろうか、ふと気が付くと、感じていた揺れのようなものは収まっていた。
むつみは恐る恐る目を開ける。


むつみ「え……?」

むつみ「ここ……どこですか……?」

するとその視界には、つい今しがた立っていた空間とは似つかない光景が飛び込んできた。


陽光が届かない場所であるという点はネオトーキョーの地下と変わらない。
だが、その天井がやたらと高い。
目測で数百メートルはありそうだ。

むつみ「なんか……やたらと広い場所……ですけど」

さらに横方向の空間も地下通路とは言えないほど広がっている。
周囲を見渡しても、壁が見えないのだ。
516 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:49:27.04 ID:LkNOvbtJ0

クォーツ『ここは……周囲の光景から推察するに、おそらく「アンダーワールド」だな』

この空間にやってきてしばらく沈黙を貫いていたクォーツだったが、ようやく口を利いた。

むつみ「アンダーワールド?」

もはや慣例だが、クォーツの発する耳慣れない単語にむつみが聞き返す。


クォーツ『地球人──ここでは"地上人"と呼ぶべきか』

クォーツ『地上人が暮らしている地表の地下深くに築かれた──地表の対比として、地底人と呼ぼうか』

クォーツ『その地底人の都市──いや、国家だな』

むつみ「地下深くって……冒険小説なんかで、地球空洞説なんてのは見たことがありますけど……まさか……」


クォーツ『つい先日までただの一般人であったむつみが知らぬのも無理は無い』

クォーツ『先ほどの"魔界のドラゴン"もそうだが、この地球という星は普段お前たちが暮らしている地表以外にも、様々な空間を内包している』

クォーツ『おおよそ大半の地球人は、その事実を知らないのだ』

むつみ「地底世界に……魔界……」

クォーツの説明を聞いても未だに理解の及ばない規模の話だ。
クォーツがやってきた外宇宙の話も大概ではあったが、現在むつみが暮らす地球にも、まだまだ多くの未知が存在しているらしい。



クォーツ『とりあえず、地上に戻る手だてを探る必要があるな』

クォーツ『想定外の事態ではあるが、文明が存在する場所だ』

クォーツ『まあ、なんとかなるだろう』

クォーツからは時折楽観的とも思える言葉が出るが、その実、彼の中に蓄積された膨大な情報を現況と照らし合わせ、精査したうえでの発言になる。
事実、むつみに行動指針を示すにあたっても、今までそれで問題なくやってこられたのだ。

むつみ「そうですね、ここで立ち尽くしているわけにもいかないですから」

そしてむつみの意識の切り替えも早かった。
こういった点において、確実に成長が伺える。



むつみ「とりあえず、人を探してみますか」

クォーツ『そうだな、早々に地上に戻れるよう願おう』

二人は脱出手段を求め、未知の地底世界へ歩みを進めるのだった。
517 :@設定 ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:51:48.29 ID:LkNOvbtJ0

※クォーツの力 "無"属性攻撃

なんか怪しいモヤモヤや光線などを発して、それの対象となった物を消滅させる技。
その現象の正体は「事象の崩壊」──宇宙の法則に干渉して因果を書き換え、対象を「何も無い状態」にするというもの。
実際に行使するのはむつみだが、クォーツの持つ力の一部が発現した物であり、彼が宇宙を旅する中で気の遠くなるような時間をかけて編み出した技だったりする。
発動の際にはクォーツに蓄えられたエネルギー(カースを狩った時に放出されるエネルギーを集めている)を大量に消費するため安易に連発することは出来ない。

ちなみに、発動前に詠唱っぽいものが必要なのは、セーフティ解除用の音声認証システムを通すため。
魔術と似ているが特に関係は無い。

むつみ「あの……"詠唱"がなんかやたらと禍々しいんですけど」

クォーツ『……気のせいだ』
518 : ◆lhyaSqoHV6 [sagasage]:2018/11/08(木) 06:53:28.00 ID:LkNOvbtJ0
終わりです
さあナタを地上に連れ出す準備を始めよう


名前は出てないけど亜子お借りました
519 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2018/11/08(木) 22:23:18.74 ID:k/fvSBCY0
おつかれさまでして!
どちらの作品も読み応えがありましたね

ミサトとメグミの出会い編は壮大過ぎるスケールの西部劇…というか破壊力が尋常じゃねぇぜ!
むつみちゃんはまさかのネオトーキョー潜入から地下世界行きという大冒険…なかなか女の子一人で経験することじゃないですな!
まルナール社の技術力も物凄いし不穏しか感じないぜー!…竜族のコピー作成かぁ…解き放たれたら大惨事やろなぁ…
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 02:57:37.29 ID:gcw/fb2eo
おつおつ
521 : ◆6J9WcYpFe2 [sage]:2018/11/20(火) 04:06:24.07 ID:RuS2Oh8G0
お久しぶりです。続きかけましたので、投稿します。

憤怒の街(事件後)編です。
落ち着いてはいるから、もう何本かは投稿したいなぁ
522 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:12:27.77 ID:RuS2Oh8G0
時は、シンデレラ1との交信を終えた辺り。

「・・・・・・司令官殿、よろしいので?」

憤怒の街の外れのGDFの施設の一室にて、傭兵の男が司令官と呼ばれた男に話しかけた。

「いいも何も、好都合だ。
 確かにシュガーハートは強い。元はGDFの英雄とも言われた奴だからな。
 だがな・・・・・・」

椅子に座っていた司令官は口元をニヤリとさせた。

「シンデレラ1だって負けちゃいない
 あれは対カース用の目的で作られたサイボーグ兵士だ
 通常のGDFの一般兵はおろか、エリート兵士だって、あいつらの比較にはならん」

司令官は机に置かれているティーカップを手に取り、中に入っていたコーヒーをすすった。

「何より奴らのスペックは私も知っている。私も一連のGDFの研究には関わっていたからな。
 奴らは一般兵士では何人がかりでも扱うはおろか、持つことも難しい重量の兵器も軽々使いこなすし、
 装備次第では戦車の砲弾を受けたって平気だ。それが3体もいる。
 ・・・・・・一方、シュガーハートは生身。
 いくらGDFの英雄様といえど、これでは3機の戦車に単身で突っ込むようなもんさ」

「だが、仮にも英雄様なんでしょ? もし切り抜けられたらどうするんです?
 それに状況次第では、そのシンデレラ1とも戦わなきゃならんことにはならないんです?」

「ああ、シンデレラ1については問題ない。 奴らが絶対に逆らえない秘策は知っているからな。
 まあ、もしシンデレラ1が負けるようなことがあるとするならばだが、その時はお前らに頑張ってもらう。
 コラプテットビークルを利用して、疲弊したシュガーハートを叩きのめしてやってくれ」

「・・・・・・まあ、シンデレラ1が来なきゃ、奴らを消すのは俺たちの役目ですし、了解しやした。
 んじゃ、ちょっと行ってきますわ、司令官殿」

そういって、傭兵の男は去って行った。

「・・・・・・大体、シュガーハートの功績など、本当のものなのかなんてわからんからな。
 『数百万のカースの大群を一人で倒した』だの『奴の武器だけ2世紀先をいっている』など、誰が信じるものか。
 ましてや、『GDFのために天から舞い降りた英雄なのだ』とか言っている奴など、頭がおかしくなったとしか思えん」

ぽつりとつぶやいたその噂は、傭兵の耳には届かなかった。
523 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:15:20.00 ID:RuS2Oh8G0
そして、時は進み―――

「お、いたいた
 写真の女と似てる・・・・・・あれがシュガーハートか
 ・・・・・・ただのコスプレ好きな、どキツイ女にしか見えんな。あんなもんがGDFの英雄かよ」

彼は双眼鏡で、シュガーハートが乗っている車を発見した。

今のところ見えるのは、車を運転している男とシュガーハートのみだ。

「って、話には聞いていたが、あの森を通過してんのかよ
 あれ、認識阻害装置とか以外にも、思考を操作して、この場所を通りたくなくなるようにする装置も設置してたんだけどな。
 あれ、高かったんだぞ、くそっ」

そしてその進路先には、コラプテットビークルと化した戦車。

「ははっ、英雄ってもんは案外あっけなく死んでしまうもんだ
 砲弾に撃たれて死に―――!?」

その戦車が突然大きな音を立ててひしゃげた。

周囲に土煙が上がり、その煙が晴れたところから、1人の大男と外国人の女性が現れた。

「な、なんだあの大男!?
 一体どこから・・・・・・まさか空から!?」

そうして空を見上げると、英国GDFのエンブレムがついた輸送機が飛んでいるのが見えた。

「ま、まさか英国GDFも来るとはな・・・・・・
 だが、あの森には認識妨害装置が設置してある。
 落ちてきた奴らはともかく、空の奴らにはあの森は見えていない。」

となれば、作戦は変わらない。

「落ちてきた大男の対処は大変だが、奴らを消せば、憤怒の街の秘密は守られる
 そうすれば、司令官殿が大儲けして、俺もそのおこぼれに預かれる」

シュガーハートを乗せた車は一旦停止し、中から少女と女性2人―――あれも子供だろうか―――が現れた。

「あの2人は見るからに弱そうだ。いざとなればあいつらを人質にすりゃあいいか。
 ―――にしても、研究者風に、魔法少女風に、・・・・・・なんか全身黒い奴。
 こいつら、一体憤怒の街に何しにきたんだ?」

そして、空から落ちてきた英国GDFの女性と大男を乗せて、車が再発進する。

「まあいいか。どうせ奴らも消すんだ。理由なんかいらん。
 それに―――そろそろ"お姫様"も到着するようだしな。」

双眼鏡から目を離した傭兵の視線の先には、1機の大型輸送機が飛んでいた。

―――そして時は、ユウキ達が目的地に到着するまで進む。
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/20(火) 04:19:55.83 ID:RuS2Oh8G0
ドアを開け、あたりを見回すと・・・・・・多少、荒れ果ててはいますが、
普通のごく一般的な家庭の玄関でした。

「・・・・・・よし、ここで間違いなさそうですっ」

「何で知ってるの?」

「依頼主さんから、家の特徴を聞いていますからっ」

そのまま家に上がり、中へと入ろうとした時・・・・・・

「・・・・・・」

チカちゃんがふらふらと歩きだしていきました。

そしてそのまま2階へと・・・・・・

「チカちゃん?」

「凛さん、行きましょう」

「あ、うん・・・・・・」

私達は後を追うように2階へと上がっていきました。

そして、そのうちの一つの部屋にチカちゃんが入り、私達も続いて入りました。

内装はボロボロ。棚も倒れて、まるで地震にあったかのようでした。

「これは・・・またひどくやられちゃってるね・・・」

そういって、凛さんは倒れた棚の中を覗きこみますが・・・

「・・・? 中身がない?」

そう呟き、怪訝そうな顔をしました。

「・・・・・・そこはチカのおうちだよ」
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/20(火) 04:20:28.00 ID:RuS2Oh8G0
「おうち・・・? どういうこと?」

「凛さん、チカちゃんがカースだっていうことは知ってますよね?」

「? そうだけど・・・」

「そして、カースはさっき見たコラプテットビークルみたいに、カースは物に取りつくこともあるようですっ」

「・・・なるほど。
 そして、この棚が家だったっていうことを考えると・・・チカちゃんは元は人形だったんだ」

「そういうことですっ
 そして、私が手紙を届けるときには、ほとんどの場合で家にお届けしますっ」

私はバッグから手紙を取り出し、チカちゃんに差し出す。

「はいっ、お手紙ですっ!」

チカちゃんは手紙を受け取ると、早速封を切って読み出しました。
526 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:22:10.99 ID:RuS2Oh8G0
しまった・・・・・・>>524>>525は僕です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――ラブリーチカちゃんへ

初めまして。
君は私のことを全く知らないかもしれないけれど、私は君のことをよく知っている。
だって、私はテレビでラブリーチカちゃんの活躍をよく見ていたから。

初めて君の姿を見たのは、私が小さい頃だった。
当時、学校でいじめられていた私は、ある日の朝のテレビで君の姿を見た。
君の体よりも何倍にも大きい敵に対して、勇敢に戦っていた姿は、私に勇気をくれた。
そのあと、いじめっ子のリーダーに歯向かって、まあ、結果的には返り討ちに会ったけども、それ以来いじめられることはなくなった。
それから毎週、テレビで君の姿を見るたびに、私はテレビの前で応援し続けた。
時にやられそうになりながらも、友達のために、地球のために戦う姿は、大人になったときであっても、印象強く覚えている。

だけど、そんなラブリーチカちゃんに対して、1つだけ可哀そうに思ったことがある。
それは、一緒に戦ってくれる仲間がいなかったことであった。
君の体よりも何倍にも大きい敵に対して、勇敢に戦っていた時も、
一度は負けて、厳しい修行をした時も、
最後の敵に対して、満身創痍になりながらも打ち勝った時も、
そばで応援してくれたり、手助けしてくれる仲間はいても、戦っているのはラブリーチカちゃん1人だけだった。

今も君は1人で戦っているのだろうか?
この世界には、君みたいに強大な敵に対して勇敢に戦うヒーローがたくさんいる。
そしてきっと、君と一緒に戦ってくれる仲間もいるはずだ。
そんな仲間を探してほしい。
そのほうが―――きっと、寂しくないから。

この世界に生まれ落ちた君に、幸あらんことを。

ラブリーチカのファンの1人より―――
527 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:23:28.39 ID:RuS2Oh8G0
「・・・・・・うん、きっと仲間を作るよ。
 そしたら、みんなと一緒に会いに行くからね・・・・・・!」

手紙を読んだチカちゃんは、目に涙を浮かべていました。

「・・・ラブリーチカって、架空のキャラクターだよね?
 それなのになんでこの人はいると思って書いているんだろう・・・?」

「病室で治療を受けていた時、憤怒の街でさまよっているチカちゃんの夢を見たんだそうです。
 それで、ラブリーチカちゃんがいると思ったんだそうで・・・」

「そんな理由で・・・? 変だよ、それ・・・。」

そう言った凛さんに、私は微笑みで返すと、チカちゃんに目線を合わせるためにしゃがみました。

「チカちゃん、手紙を読んでどうでしたか?」

「・・・あたし、ずっと1人ボッチだと思ってた。
 でも、私は知らないけど、ちゃんと私を応援してくれている人がいて、それに気づかせてくれた人がいて・・・グスッ、
 あ、あたし、1人ボッチじゃないんだなって・・・!」

そしてチカちゃんはわんわんと、泣き出してしまいました。

凛さんと私は、泣き止むまでずっと見守りました。
528 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:32:29.41 ID:RuS2Oh8G0
「あなた達ですね? 勝手に憤怒の街に入った兵士っていうのは」

ヘリから降りてきた少女3人に、心達は銃を突きつけられていた。

「おいおい、待ちなって♪
 いきなり銃を突きつけられても、はぁと、困っちゃうぞ、おい☆」

「とぼけたって無駄ですからね!
 あなた達を探すために、憤怒の街を端から端まで探したんですからね!」

「そりゃあ、ご苦労さん♪
その途中であちらの方に森が出来てたのを見かけなかったか?」

銃を突きつけた少女達は顔を見合わせる。
そして、ヘリに乗っていた男に視線を向ける。

「・・・そんなもの見たことがないな。この一帯は草木一本も生えない廃墟になったと聞いている」

「そうですよ!第一そんな平和そうな所、あったらここからでも分かりますよ!」

「でまかせを言って、こちらの気を紛らわせようたって、そうは行きませんからね!」

「あんまり変な事を言ってると、撃ちますよ!」

そうして銃を構え直す3人。

「・・・そっか。あんた達は部外者ってことか」

心の後ろにいるポストマンとケイトが身構える。黒い人型のカースは腕を組んで相手を見据えていた。

「いや、いい。はぁとがやる。」

その彼らを、心は手で制し、前に出る。

「というより、こいつらははぁとが相手をしてやらないといけないようだしな☆」

「・・・どういうことだ?」

ヘリに乗っていた男が訝しそうに訊ね返した。

「強化兵計画」

「!?」

その一言に反応した4人。
しかし、心は話を続ける。
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/20(火) 04:35:39.57 ID:RuS2Oh8G0
「GDFによる、兵士の強化計画。来るべきカース、能力者との戦いに備え、様々な面からの強化を加え、最強の強化兵士軍団を作るための計画。それだけでなく、大罪の悪魔や未知の勢力、更にはアイドルヒーロー達や天使とかいう奴等も想定に入れていると聞いた事がある。」

心は話を続ける。

「そしてその方策には様々なアプローチが考えられた。単純に既存の兵器を強化する。特殊なアーマーを作り、それ専用の兵装を開発する。搭乗できるロボットを作る計画もあったか?あれはあんまり芳しくは無かったようだけどな♪
だが、その計画は制限が無くてな。わざわざGDFとは無関係の組織を作って、人体改造もやってたし、挙げ句の果てには人体にカースの結晶を埋め込んだりした。」

「お前・・・何を知っている?」

「まあ、慌てるなよ♪ せっかちさんは嫌われるぞ☆」

尚も心は話を続ける。

「恐らくあんた達はその計画の1つ、『シンデレラ計画』で生まれた強化兵士。一般の兵士では運用の難しい兵器群を扱うために、強化の容易な子供、それも少女を人体改造し、その兵器を運用していく。基本的には4人1組の部隊として運用され、世界各地の対カースの前線に投入される予定だったが、素体を少女に限っていた事や身寄りの無く、死にかけの者に限定していた事が仇になり、非人道的な計画でもあった事で、3人目が作られた時点で廃止になった。」

と、ひとしきり言い切ったところで、心はニッと笑う。

「とまあ、これだけ話すと恐ろしく感じるけど・・・・・結構、可愛いじゃんよ☆」
530 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:38:20.43 ID:RuS2Oh8G0
>>529 は私です・・・またやってしまった・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「おいおいシュガーハート、そんな事言ってる場合かよ」

「デモ、確かにあの子達はキュートネ。1人はパッションってカンジだケド。」

「パッション?何の話だ?」

ケイトの発言にポストマンは首をかしげる。
そして、片手にマイクを持ったような仕草をして、

「そんなシンデレラ1にアタックチャーンスっ! 何故GDFはそんな非人道的な事までして、強化兵計画を推し進めたのか?先ずは・・・そこのさっき平和そうな所とか言ってた子から!」

ずびっ!と指を指し、シンデレラ1の1人を指名した。

突然指名されたシンデレラ1の1人、有浦柑奈はテンション高めにーーー

「それはズバリ、ラブアンドピース!!」

「はぁっ!?」

思いもしなかった回答に思わず驚いた心。

「この世界に足りないのは愛と平和!全ての生きる者が愛を知れば、世界は平和になります!」

「いや、そんな事宣う奴が、なんで銃向けて来るんだよ?」

思わずポストマンがツッコむ。

「簡単ですよぅ!世界の平和を乱す悪くて愛の無い奴等を全員ぶっ飛ばせば世界は平和にげふぅっ!?」

隣にいたシンデレラ1の1人、五十嵐響子が柑奈の鳩尾にアッパーブローを食らわせた。
それを食らった柑奈の体は浮き上がり、地面に背中から倒れこむ。

「・・・・・・」

唖然とする、心一行。
531 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:40:12.99 ID:RuS2Oh8G0
「あっ、ごめんなさい。ちょっと不適切な発言が聞こえちゃいましたので。今の話、続けてください。」

殴った右手の握りこぶしそのままに、笑顔で促す響子。こぶしからは煙が出ているような気がした。

「タイム、ターイム。作戦ターイム」

心は急いで戻り、3人と1体で円陣を組む。

「おい、やべーよ☆
シンデレラ1があんなにやべー奴等だとは思わなかったぞ、おい☆」

「うむ、今のアッパーブロー、中々良い筋してたぞ?」

「関心してんじゃねぇよ♪
あいつら、ほんと、やばくね?」

「やばいケド、今の話の続きしないと撃ってくるわヨ?」

「あのー、まだですか? 早くしないと撃ちますよ?」

「ほら呼んでるぞ、シュガーハート。
俺達を制止した以上は、お前が相手しろよ、シュガーハート。」

「うぇぇ・・・少しは労われよ、おい☆」

そう言って、トボトボと戻っていく心。

んんっ!と咳払いをすると、今度はサイドテールの子に指を指した。

「ま、まぁ、さっきのは置いといて、次はそこのサイドテールの子、どうよ?」
532 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:45:10.57 ID:RuS2Oh8G0
「わかりません!!」

「うぇぇっ!?」

きっぱり言われて、今度は違う意味で驚く心。

「いや・・・気にならんの? あんたらができた意味とか?」

「それは気にならないといえば嘘になりますけど・・・私達はそもそもその計画が無ければ死んでいましたし・・・
 記憶がないのは不便ですけど、今こうして生きているのはその計画のおかげなんです」

「だからGDFには感謝してるし、その後も良くしてくれてるから、今更何言われたって失望したりなんてしませんよ」

その言葉に、ヘリを操縦していた兵士は「そうか・・・そんな風に思ってくれてたんだな・・・」と呟いた。

「・・・散々、非人道的行為を繰り返した強化兵計画も、負の一面ばかりじゃなかったってわけだな」

「まあ、こいつらにとっては結果オーライってことで、この話もする必要はないんじゃねぇかな☆」

「いや、ちょっと待ってくれ」

心とポストマンが言うのをやめようとしたが、ヘリを操縦していた兵士が待ったをかける。

「その話―――美羽と響子がよければなんだが、聞かせてくれ」

そういって、美羽と響子を見ると、二人はうなずく。

「そっか。じゃあ、聞かせてやるよ♪
 ・・・そもそも『強化兵計画』っていうのは―――GDFによる、『英雄複製計画』であり、

 かつての私や今のケイトのような、”GDFの英雄”を作り出すための計画だ。」
533 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:45:49.26 ID:RuS2Oh8G0
チカちゃんに手紙を渡し、チカちゃんが泣き止むまで待つことにしたユウキ達。

そんな様子を、遠くから望遠鏡で覗いている男が1人。

「おうおう、なんか面白れえ奴がいるな
 人間様と仲良くしているカースなんざ、初めてみるぜ」

その様子を見て、ニヤリとした表情を浮かべていた。

「しかし、まあ、なんだ? あんな様子を見てると―――虫唾が走るな
 どれ、ちょっと引っ掻き回してやるとしますか」

そう呟いた、男の姿がゆがむ。

「人間とカースは、互いに争いあうのがお似合いなのさ―――」

男の姿が消える。
534 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/20(火) 04:48:49.77 ID:RuS2Oh8G0
というわけで、今日は以上です。
・・・・・・sage忘れ、トリつけ忘れを3回もorz
申し訳ねぇ・・・。

そして、予想以上に長丁場になっちゃってる憤怒の街
総量としては大したことなさそうなんだけど、随分書くのに時間かかっちゃってるなぁ
忙しかったのもあるけど、頑張らないとなぁ
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/21(水) 11:06:48.89 ID:CeOgqrnXo
おつおつ
読み応えガあるぶん書くのも大変そうだなと思うこのごろ
536 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2018/11/22(木) 02:42:07.59 ID:sFkY68QV0
あ、すいません
毎度のことですが、リンちゃん、ラブリーチカちゃん、シンデレラ1の方々(柑奈ちゃん、響子ちゃん、美羽ちゃん)お借りしてますー
537 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2018/11/24(土) 22:32:40.55 ID:vONOS72v0
おつでして
今回もまた不穏な引きですね…!
とりあえずチカ幸せになって…
538 : ◆6J9WcYpFe2 [sage]:2019/05/07(火) 00:12:33.55 ID:UQJLizrn0
投稿しまーす
まだまだ書きたい場面は全部書けてないから、まだ続けますよー
539 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:18:27.63 ID:UQJLizrn0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「『英雄複製計画』・・・? GDFの英雄・・・?」

突然明かされた計画の名前に驚くヘリのパイロット。
英雄。つまりはヒーローとも言い換えることができる。
そしてヒーローと聞くと、どうしてもアイドルヒーローを連想してしまう。

だが、側にいたシンデレラ1の面々は怪訝そうな顔をした。

「英雄・・・という割には、普通の兵士よりちょっと強そうという感じにしか見えないけど・・・?」

「英雄と言われるほどには、強そうには見えませんね」

確かに・・・とヘリのパイロットは思う。
目の前にいる兵士は、確かに普通の兵士よりは強いだろう。
しかし、英雄とまで言われるほどかと言われると、疑問が残る。
さっきも連想した通り、英雄と聞くとアイドルヒーローを連想する。
しかし、目の前にいるツインテールの女を筆頭とした者達がそれほどの力を持っているようには見えない。
540 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:19:47.36 ID:UQJLizrn0
「じゃあ、これならどうだ?」

すると、目の前のシュガーハートと呼ばれる人物の手が青く光った。
その手の光が左右に広がったかと思うと、青い線のようなのが次々を発生し、それが組み上がっていく。
そしてその骨子が組み上がり、一本の刀の形を為したかと思うと、光が破裂した。

そして、シュガーハートの手には、一振りの鞘付きの刀が握られていた。

「はぁとは物を出し入れ出来る『アイテムボックス』っていうのを持っているぞ♪」

「能力者だったのか・・・!?」

「・・・まあ、そういう事ネ」

「さらにこんな物も出せるぞ、ほれ☆」

シュガーハートは右腕を広げると、広げた右手の先にまた青い線が骨子のように紡がれていき、一つの乗り物となる。
GDFが製造している兵員輸送用のトラックだ。

「乗り物まで出せるのか!?」

「まあ、大きさも量も限りはあるけども、普通に基地一つ分は難なく出し入れできるぞ☆」

基地一つ分の物を出し入れできる能力。驚異的な能力である。
それでもシンデレラ1の一人、矢口美羽は疑問に思っていた。

「物を出し入れする能力・・・? でもそんなので英雄になれるものなの?」
541 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:22:07.84 ID:UQJLizrn0

しかし、もう一人のシンデレラ1ーーー五十嵐響子はその疑問に答えた。

「ううん、美羽ちゃん。これは凄いです。特にGDFにおいては、この能力があるのと無いのとでは作戦遂行能力に差が出ます。」

「そ、そこまでなの、響子さん?」

「例えば、私達って何時も専用の輸送車とかヘリで専用の装備と共に運搬されますよね」

「うん・・・あっ」

「今あの目の前にいる人が居れば、普通の輸送車でも運べますし、弾薬とかの補給物資ももっと多く積むことができます」

つまり、彼女が居れば長時間の作戦遂行が出来る。
それこそ、持っていける量が多ければ多いほど、彼女が戦場で与える影響というものが大きくなる。
それが基地一つ分となれば、任務中において補給の心配は無くなる。

「なるほど。確かに『GDFの英雄』と言われるだけの事はありそうだな」

「・・・まぁな☆」

・・・この能力は確かに、軍であるGDFにとっては英雄たる物で間違いないだろう。
542 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:23:56.99 ID:UQJLizrn0
「待ってください」

でも、この能力を褒めた本人である響子は疑問を口にした。

「確かにこの能力は英雄と言われるのも納得がいきますけど・・・
 その能力を元にしたのであれば、私達は補給物資の運搬に特化した形になるはずです。
私達にもそういう装備が無いわけでは無いんですけども、実際にはカースと戦う為の装備もあるし、
 色んな任務に対応するための装備もいっぱい計画されていたって聞いてますし・・・
 そこの・・・方もそう呼ばれてますから、もしかしたら『GDFの英雄』は他にもいるんじゃないですか?」

「あ、ゴメンネ。ケイトよ。それと他にもいるっていうのは本当ヨ。
 ワタシはそこのシュガーハートさん以外とは面識は無いけどネ」

「私はあるぞ? まあ、色んな意味ですげー奴だった・・・ぞ☆」

どんな奴なんだ、それ。
恐らくはその人が戦闘面で凄い活躍をしたのだろうかと、この場にいたシンデレラ1達は納得した。
543 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:25:22.56 ID:UQJLizrn0
だが、ポストマンの意見は違う。

(いや、シュガーハート。
 GDFの中でも、いや世界中の中でも、あんた以上に凄い奴を知らねえし、
 あんた以上にやばい奴もしらねぇ)

そうしてその会話に対して興味がなさそうな素振りを見せつつ、
手持ち無沙汰そうにポケットからとりだしたライターで、タバコに火をつけて一服する。

(俺はお前が世界征服とか破滅願望とか、そういうもんを持ってなくて良かったと、心の底から思ってるぜ)
544 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:27:35.91 ID:UQJLizrn0
_____________________________________

「ぐすっ・・・ひっぐ・・・」

チカちゃんは余程嬉しいのか、まだ泣き止まないようです。

「チカちゃん、まだ泣いてるね」

「余程嬉しかったみたいですね・・・っ」

何がともあれ、こうした手紙を届けられるのは私としても嬉しいですっ
つい顔がほころんでしまいますっ

ーーーけれど、話はこれで終わらないはずです

「・・・」

急に泣き止んだチカちゃん

「・・・?急に泣き止んだ・・・?どうしたの、チカちゃん?」

凛さんもそれを不思議に思ったのか、声をかけます

「・・・・・・セナイ」

「?」

「ユ・・セナイ・・・ユル・・・セナイ」

「え・・・何・・・?」

泣きまくっていた姿から一変した雰囲気を感じ取り、困惑した凛さん
・・・ついに、お出ましですかね

「ーーー許せない!!」

「!?」
545 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:33:00.73 ID:UQJLizrn0
瞬間、チカちゃんの胸のあたりにあった赤い石が強く光りました。
私は咄嗟に銃を構えます。

「凛さん、下がってくださいっ!」

その言葉を聞くや否や、凛さんは光の眩しさに目が眩みながらもなんとか這うようにして私の後ろに下がりました。

「はあああああ!!」

突然、私達に殴りかかって来ようとするチカちゃん。

「落ち着いてください、『千佳』ちゃんっ!!」

私は持っている銃の引鉄を引く。
すると、銃から光の膜が放出され、膜に当たった相手が弾かれた。

「!?」

弾かれた相手はそのまま床に尻餅をついた。
彼女は一瞬、驚いたような顔をしていましたが、
その表情は次第に変化していき、まるで怒っているかのような表情に戻りました。

「さっきまでと様子が全然違う・・・何があったの、チカちゃん!?
それとユウキちゃん、さっきの光の膜は何!?」

「今は自重してくださいっ!」

私は光の膜―――シールドバレットを維持するため、引鉄を引き絞り続ける。
この銃にはテーザーガンの機能だけでなく、自分の身を守る為のシールドを張る機能だってある。
この機能と相手の力を鑑みるに、破られることはそうそうなさそうだ。
546 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:35:06.23 ID:UQJLizrn0
しかし、相手はそれでも構わず殴りかかろうとして、光の膜に遮られ、弾かれていた。

「落ち着いてください、『千佳』ちゃん! このままじゃ、ボロボロになっちゃいますっ!」

「うるさいっ!お前に何がわかる!!
なんで、あいつだけ幸せになるんだ!!」

相手は力押しでは勝てないと踏んだのか、カースの力を使って違うカースを作りだしましてきました。
見た目はファンシーな感じですが、そこからは強い敵意を感じます。それが5体。

「いけ!オコダーヨ!!」

そして、オコダーヨと呼ばれたカースが私達に襲いかかりました。

「―――! ですがっ!」

突撃してきたオコダーヨですが、しかし、私が張った光の膜を突破出来ずに全て弾かれてしまいました

「・・・一体何があったの、チカちゃん?」

「あれは、『千佳』ちゃんですっ。ラブリーチカちゃんではない、正真正銘の千佳ちゃんですっ! そうですよねっ!?」

「―――!?」

その言葉に動揺したのか、千佳ちゃんとオコダーヨ達の攻撃の手が緩みました。

「なぜ、私が千佳だと・・・?」

「・・・さっきの千佳ちゃんのお父さんの夢の話は聞いてましたかっ?」
547 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:40:56.56 ID:UQJLizrn0
恐る恐ると、頷く千佳ちゃん。

「実はあの話で、ラブリーチカちゃんの夢を見たって聞いたんですけど、それだけじゃないんです。
そのラブリーチカちゃんと、そのラブリーチカちゃんによく似たもう一人の少女―――
―――そう、『千佳』ちゃんが、喧嘩をしていたって言ってました」

話の内容が気になるのか、今度こそ攻撃の手を止めた千佳ちゃん。
それを見て、シールドを解除しつつも私は話を続けます。

「『なんで私は死ななくちゃいけなかったの?』
 『なんであんたが私と一緒の体にいるの?』
 『なんであんたはお父さんに構ってもらえたの?』
 『私なんか、仕事だからって全然構ってもらえなかったのに!!』
 ―――そんな感じのことをラブリーチカちゃんに言っていたそうでした。
 いくら『それは誤解だ』と言っても聞いてもらえないぐらい、怒っていたって言ってましたっ」

「そうだよ!!
 私はラブリーチカが許せない!
 なんでチカはお父さんと一緒の部屋にいるの!?
 私だって一緒に寝たかったのに、何時もあいつはお父さんと一緒の部屋にいて!!
 それでなんでチカが表の人格で、私が裏なの!?
 カースはあっちなのに、あっちは正義ぶって、私にだけ負の面を押し付けて!

 ―――今だってそうだよ!
 なんでラブリーチカだけなの!?
 私はお父さんの娘なのに!!
 お父さんは私を嫌いになったの!?」
548 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:42:36.98 ID:UQJLizrn0
そして再び襲いかかる千佳ちゃんとオコダーヨ。

私は銃のモードをテーザーガンに切り替えた

「私の話はーーー」

私は襲いかかってくる中を掻い潜って、千佳ちゃんに一気に近づいた
その間に5回引鉄を引き、5体のオコダーヨに当てる
思念誘導式の雷撃は、対象を正確に狙わずとも、私の演算能力で誘導して当てることができた

「まだーーー」

そして、空いた手で千佳ちゃんを掴み、襲ってきた勢いを利用し

「終わっていませんっ!!」

千佳ちゃんを背中から床に叩きつけた。

「かはっ!?」

背中から叩きつけられた千佳ちゃんですが、上手く加減は加えました。
ただ、片手で叩きつけたので、多少のダメージを与えてしまいましたが。
549 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:46:46.87 ID:UQJLizrn0

「今の・・・狙いも定めていないのに・・・?」

何やら凛さんが呟いてますが、構わず話を続けます

「ラブリーチカちゃんが最初だったのは、表に出ていたのがラブリーチカちゃんだったからですっ!
私は原則、本人にしか手紙を渡しませんっ!もしあの時千佳ちゃんが表に出ていたら、千佳ちゃんに渡していましたっ!」

それにーーー

「千佳ちゃんのお父さんは、決して千佳ちゃんを嫌いになったわけじゃありませんっ!
お父さんはお父さんなりに千佳ちゃんを大事にしていました。
そしてあの時お父さんは千佳ちゃんを探して、自らの危険を顧みずにこの街を探し回っていましたっ!
これは千佳ちゃんを大事に思っていなければ出来ないはずですっ!」

「なら、お父ちゃんに会わせてよ!なんで迎えにきてくれないの!?」
なんでお父ちゃんは迎えにきてくれなかったの!?
なんでここにいないの!?探しているって言うんだったら、連れてきてよ!!」

「無理ですっ!!」

「なんでっ!!」

「千佳ちゃんのお父さんはカースに襲われたんですっ!」
550 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:48:20.40 ID:UQJLizrn0
「えっ!?」

驚く千佳ちゃん。彼女が放っていた怒気が一瞬止まりました。

「先程も言いましたよねっ?千佳ちゃんを探すためにこの街に入ったって。
その時、GDF隊員の制止の声も聞かずに忍び込んだせいでカースに襲われたんですっ」

「お父さんは生きてるの・・・?」

「生きています・・・今は・・・」

「今・・・は?」

「ユウキちゃん・・・それって・・・」

「はい・・・。千佳ちゃんのお父さんはもう助からないって話でした・・・っ」

「そんな・・・!?」

私の口から告げられた言葉に、千佳ちゃんは膝をつきました
その時―――

『ははっ!ちょうどいいや!!
 予定とは違うが、ちょっとその体を乗っ取らせていただきますよっと!』
551 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:59:05.98 ID:UQJLizrn0
「!?」

千佳ちゃんの背後から襲い掛かった影。
それが千佳ちゃんの体を覆うと、千佳ちゃんの中に入って行きました。

「千佳ちゃん!?」

そして、倒れこむ千佳ちゃんの体。
そこへ凛さんが駆け寄ります。

「な、なにが起きて―――
 いや、それよりもどうしたらいい・・・どうしたら千佳ちゃんを―――」

「大丈夫ですよ、凛さん」

ええ、本当に・・・なんてことをしてくれたのでしょうか・・・っ

「・・・ゆ、ユウキちゃん?」

私がお手紙を届けようとしている相手に・・・こいつは・・・っ!!

「私が何とかして見せますっ それに―――」

私は自身が持つ「ラーニング」能力をフル稼働させる。
552 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 00:59:52.20 ID:UQJLizrn0

千佳ちゃんを襲った影が千佳ちゃんの中に入って行くのを見た。

あの影はどうやって入った?
どうやって千佳ちゃんを乗っ取ろうとする?
乗っ取るのに適したところは?

そう浮かんだ疑問を要素として、様々な結果を私の演算能力でシミュレートする。

そして、その結果を能力としてラーニングし、私の能力<ちから>とするっ!

「千佳ちゃんとの話はまだ終わっていませんからっ!!
 ―――ポゼッションッッッ!!!」

私は千佳ちゃんの胸の真ん中にある宝石に触れる。
553 : ◆6J9WcYpFe2 [sage saga]:2019/05/07(火) 01:00:36.03 ID:UQJLizrn0
=====================================================

Create Simulated Ability System --- Booted.
Ability[Possession] --- Break Out.

Check Root --- ...OK.
Neuron Connecter --- Online.
Hacking --- Complete.
Depth Feeling Area --- Connect

Entered, Cosmic Sphere.

=====================================================
554 : ◆6J9WcYpFe2 [sage]:2019/05/07(火) 01:02:04.04 ID:UQJLizrn0
以上になります。
借りてきたのは前回と同じです。

まだまだ書いてますよー
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/09(木) 07:55:18.79 ID:XErDb8XWo
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/05/17(金) 23:21:36.44 ID:1StV4CJR0
乙です
まだ可動していることに感動している。そして、ラブリーチカの話がもう…つらみ…お父さん…
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/02(木) 01:52:45.83 ID:t8JNH5sX0
まだ書き込めるのかテスト
PCとスマホのデータ整理してたら書きかけのSSがいくつも見つかって懐かしくなってまた書きたくなってしまった
スレの動きが無くなって久しい(SS速報自体過疎ってる?)けど、ため込んでたネタを書ききれていない点について、専ブラの一覧からスレを消せない程度には未練があるんだよなあ
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/03(日) 16:28:51.06 ID:LJLXjZa40
自分も更新無いかなってたまに見に来てる・・・
ネタまだあるし、書きかけもあるから、たまにその場面のことを考えちゃうんだよなぁ
632.57 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)