柔沢ジュウ「雨か」 堕花雨「お呼びですか?」

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153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/04(土) 00:54:32.39 ID:w3aacjoNo
紅の続刊が出るまで書かないならそう言ってくれ
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/04(土) 09:00:36.71 ID:SjoL758IO
今日も雨だし
つづきがよみたくなるな
155 : ◆yyODYISLaQDh [sage saga]:2015/07/04(土) 15:29:51.88 ID:6LrFSkjcO
鋭意執筆中です
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/04(土) 15:41:00.09 ID:63KMqUCKo
そうですか…
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/04(土) 16:48:34.74 ID:ySfzmF8tO
こんな天気だからこそ面白いSSが読みたくなる。
楽しみに待ってるよ!
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/04(土) 16:51:49.12 ID:SjoL758IO
梅雨のうちに読めたら気分が乗るな
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/13(月) 19:35:00.19 ID:FpcLYz/RO
紅が先かSS完成が先か…
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/15(水) 09:37:37.72 ID:2lJbQYG1o
台風がくるよ!
大雨になるな
雨来い来い
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 19:26:36.52 ID:XaHcK10LO
梅雨明けちゃったね
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 08:09:18.47 ID:nXu2VN3tO
保守
163 : ◆yyODYISLaQDh [sage]:2015/08/13(木) 17:28:07.54 ID:oZ3xtkIdO
ちょっと月初め忙しかった
もう暫くしたら書く
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/13(木) 20:18:48.89 ID:X7CfVRLYo
そう…
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/15(土) 14:42:29.38 ID:0pI4GSrR0
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/18(火) 13:56:05.19 ID:zp5q6+2VO
暫くとは……
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/30(日) 19:02:06.91 ID:wPCduVd3O
まつ
168 : ◆Ww2pZaKGaW0T :2015/09/01(火) 23:45:14.01 ID:arMZfiFv0
最初に無があった
無は有を生んだ
これが全ての真理
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/03(木) 07:27:01.04 ID:8KAIVOomO
>>1かと思ったが違うのか
しかし、み遺作になる予感がしたが
これはダメだな
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/03(木) 07:27:28.40 ID:8KAIVOomO
み遺作→名作
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/10(木) 15:46:40.72 ID:GeAAR1glo
ほし
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/19(土) 22:24:30.10 ID:JLYDn0obO
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/25(金) 00:34:09.30 ID:Y4ZFa12LO
ほっほ
174 : ◆yyODYISLaQDh [sage]:2015/09/25(金) 17:26:30.06 ID:QEIG95+wO
ごめん
ここんとこ週末忙しい
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/25(金) 19:47:43.86 ID:0awGUzHHO
待つけど、ちょいとづつでいいから投下してもらえないだろうか。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/25(金) 21:00:50.65 ID:BkECYslQO
そう…
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 13:20:41.39 ID:F13Bx6bAo
ほし
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/26(月) 23:29:02.81 ID:lZwz0zwPO
大規模更新が来ると信じてる
179 : ◆yyODYISLaQDh [sage]:2015/10/27(火) 09:00:50.54 ID:k112IgJKO
明日投下します
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 09:51:01.81 ID:xs2DJh3rO
ほんとかなー?
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 11:53:18.34 ID:yomBoeiBo
期待
182 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 20:45:13.26 ID:DQnmIat7O
=====

日曜日の駅前。
ジュウが腕時計を確認すると、正午までちょうどあと5分のところだった。
こんな時間にもなれば、制服でうろつく高校生などほとんど見かけることはない。
そんな中、学校指定の制服でもないセーラー服をまとった少女が一人。

「ねー、柔沢くんってばー、なんでー、無視するのー」

「………‥」

「そんな頑な態度とるならー、抱き着いたりしちゃおっかなー」

「なんでここにいる、雪姫」

「即答はさすがに傷つく……」

ジュウは諦めて、先ほどから自分の周りをしつこく徘徊する少女に言葉を投げかける。
少女の名前は斬島雪姫。
183 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 20:46:57.19 ID:DQnmIat7O
今のこの格好もどうせ何かマンガかアニメのコスプレだろう。
いつも通りのポニーテールと白いリボンを揺らしながら、雪姫は答える。

「柔沢くんあるところに私あり、だよ!」

「あっそ、じゃあな」

「ちょ、マジで傷つくからそういう反応やめてー!」

ジュウが適当に追い払うように手を振ってやると、それにしがみつくようにする雪姫。
さっきからこんな調子でジュウから離れようとしないので、ジュウもいい加減辟易していた。

「いい加減にしてくれ」

「柔沢くんがなんでこんなところに突っ立てるのか教えてくれたらね」

何が面白いのか、うぇっへっへ、とわざとらしい笑みを浮かべる雪姫。
ジュウはといえば、頭を抱えていた。
184 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 20:47:59.93 ID:DQnmIat7O
今日この時間にこの駅前にいるのは、説明しようと思えば簡単だ。
単に、光との約束を果たすためである。
強引、というより一方的に取り付けられてしまった約束だが、連絡手段がないので断ることもできないし、できれば助けてやりたいという気持ちは本物だった。
だからわざわざ髪もスプレーで黒く染めてきたのだ。
しかしそれを言えば、雪姫の追求は免れないだろう。
最悪、偽デートとはいえ雨に伝わる可能性も―――

「(待て、なんであいつが出て来る……?)」

なぜ自分は雨にこのことが伝わることを恐れているのだろうか。
数秒の思考の後、光がそれを嫌がっていたから、とということを漸く思い出し、ジュウはほっと胸を撫で下ろす。
ジュウは既に思考を打ち切っているため気づいていないが、なにに安心したのかすらジュウ自身わかっていない。

「柔沢くん、雨のこと考えてるでしょ」

「え?」

雪姫の言葉に思わず反応してしまってから、ジュウは自分のミスに気が付いた。
こんなあからさまな反応をすれば、誰にだってそうだとわかる。
185 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 20:48:43.52 ID:DQnmIat7O
特に、女という生き物はそういうことに長けている。
案の定、雪姫は厭らしい笑顔をジュウに向けていた。

「いけないんだー、女の子と一緒にいるときに他の女のコト考えたりして」

うりうり、とジュウの肩を指でつつく雪姫。

今日何度目になるのかわからない溜息をつきながら、ジュウは雪姫の手を振り払う。

「お前の勘違いだ」

取り繕うのも今更だが、ジュウにもプライドというものがある。
しかしそんなジュウの言葉には全く耳を貸さない雪姫。

「ふーん、今日待ち合わせしてるのは雨かー」

「違う、あいつじゃない」

「ふうん?」

再び、ニヤニヤとした笑みを浮かべる雪姫。
186 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 20:55:34.45 ID:DQnmIat7O

何がそんなに可笑しいのか、とジュウはイラつくが、口を開く前に自分の短絡さを呪った。

「雨、では、ないのね?」

動揺したせいで返答にまで気が回らなかった。
最早待ち合わせということは自白したようなものだが、ここまで来れば意地だ、とばかりにジュウは食い下がる。

「誰でもない。待ち合わせなんかしていない」

「光ちゃんかな」

ジュウの言葉に被せるようにして図星を付いてくる雪姫。
ジュウは動揺を表に出さないように極力堪えたが、どうやら無駄な努力であるらしい。
雪姫はジュウの周りを、ふーん、とか、ほーん、とか言いながら回り始める。
そして、何周かしたところでジュウの正面で立ち止まると、人差し指と親指をまるで推理でもしている最中かのように顎に当てた。

「ふむ、姉妹丼かあ。柔沢くん、なかなかメニアックだね!」

「その言葉がどういう意味かは知らないが俺は断言できる。違う」
187 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 20:56:15.57 ID:DQnmIat7O
えー、と抗議の声を発する雪姫を適当にあしらいつつ、ジュウはそろそろ雪姫から逃げ出したくなってきていた。
そもそも光とは偽デートの名目でここに待ち合わせているのであって、その目的は諦めの悪い同級生にそれを見せつけることにある。
もしもそいつがここに来ていて、今までの雪姫とのやり取りを見られていたとすれば、そいつからすればジュウは二股最低野郎に見えなくもない。
そうなってしまえば光の計画は完全に逆効果なわけで、そろそろ待ち合わせの時間でもあるし、雪姫には帰ってもらわなければならない。

「雪姫、お前もう本当に帰れ」

「えー、女の子になんてこと言うの」

「だからなあ」

雪姫に対して呆れ果てたジュウは、雪姫を追い払うために何か適当な理由はないものか、と視線を逸らす。
そして見た。
ジュウを全力で睨み付けながら拳を握る、少女の姿を。
ジュウは本格的に、自分の女難について考える必要があるかもしれない、と思った。


〜〜〜〜〜
188 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 21:04:27.05 ID:DQnmIat7O
番外【斬島雪姫01】

日曜日、雨も円も急用ができたとかで暇になった。
ので、駅前を適当にぶらついていると、自販機の陰に隠れている光ちゃんを発見。
何してんだろあの娘、なんかいつもより可愛い格好してるし。
……ティンと来た! これはラブコメの匂い!
光ちゃんの視線の先を追ってみる。
ぐふふ、どんな男が……って、あれー?
雨の用事って、柔沢くんじゃなかったの?
てっきりそうだと思ってたのに。
…………。
まあいいや。
暇な日曜に柔沢くんに遭遇できた、これはもう運命だね。
光ちゃんをからかうついでに、柔沢くんで遊んじゃおう。
さっさと出てこないと、お姉さんが連れてっちゃうぞー。
189 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 21:05:35.99 ID:DQnmIat7O
少ないですが今日はここまで
PCの方が捗ることに気づいたので、今後は
190 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/10/28(水) 21:07:31.64 ID:DQnmIat7O
↑ミス
長らくお待たせして&少なくて申し訳ないですが今日はここまで。
PCの方が捗ることに気づいたので、今後はPCで投下することが多くなるかもしれません。

191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 21:14:51.76 ID:6MrY4SIZO
乙、待ってたよ…!

このままエターならずに書き綴ってほしいぜ!
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 21:27:31.79 ID:h+OMFJcvo
おつおつ
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 22:15:14.81 ID:jbHg8LmhO
乙です
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 23:47:36.53 ID:Nztd29bXo
おつ!
エタらないで頑張ってください!
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/29(木) 00:20:22.92 ID:j7tt+wqbO
乙!!!
待ってたよ!!!!
次はいつだい?
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/29(木) 20:33:13.50 ID:vEfpu0KLo
熱い片山リスペクト
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/08(日) 13:13:07.75 ID:JtocSvOKO
今日は雨だ。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/11/26(木) 02:41:11.32 ID:tSQpEdUJO
続きマダー?
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/04(金) 00:47:28.39 ID:lSrMI5cZO
最近寒いね
雨が雪になるよ
待ってる
200 : ◆yyODYISLaQDh [sage]:2015/12/17(木) 09:13:06.95 ID:roSdsxB7O
週末投下予定
お待たせして申し訳ナス
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/17(木) 16:17:57.23 ID:Pfb4tVYTo
待ってた!
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/17(木) 23:40:46.25 ID:gIBKDW8rO
期待!
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/20(日) 09:32:57.38 ID:vpJ3oVaKo
待ってる
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/20(日) 23:00:30.63 ID:vpJ3oVaKo
週末…
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/12/21(月) 07:26:26.90 ID:HNlII0FUO
予定は未定?
エタら無いならそれで良いと思うワケで…
電波的を読み返しつつwktkしながら待ってます
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/21(月) 07:27:17.52 ID:HNlII0FUO
済まないsage忘れた
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/21(月) 08:02:44.90 ID:RTolE9V/O
今日は雨だ……
208 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:15:50.18 ID:Hg+7sYzLO
げ、月曜日は週末だから……(震え声)
遅れてごめんなさい、今から投下します
209 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:17:05.02 ID:Hg+7sYzLO
=====

下校中の小学生の波を眺めながら、たまに自分に向けられる挨拶に笑顔を返す。
真九郎はこの数年で保護者として既に認知されており、懐疑の視線を向けてくる者はほとんどいない。
聞いたところによると、紫の生徒名簿の緊急連絡先には真九郎の名前と電話番号が登録されているほどであり、学校側からも公認されているらしい。
紫が自慢気に語っていたので、少なくとも嘘ではない。
学校側としても、世界有数の大財閥である九鳳院家に電話をかけるより、職業不詳であろうと九鳳院家に認められている青年に連絡するほうが気が楽というのもあるのだろう。
九鳳院、麒麟塚、皇牙宮。
表御三家と言われるこの三つの家系は、日本を古くから支え、支配してきた。
その名は一般人でも知らない者はおらず、児童である紫にさえ尻込みしてしまう教師も少なくない。

「家の名は私の出自を保証するものだが、私自身ではない。しかし、不本意だが私個人よりも《九鳳院》という家の方が目立つのは仕方のないことだ」

とは、紫本人の言。
それは諦念というよりは、ありのままの事実を受け入れるという、良い意味で年齢不相応の器の大きさを表していた。
思えば、出会った頃から大人びた言動をする少女だった。
当時まだ高校生だった真九郎は、それに救われたのだ。
その生き方は、純粋にして高貴。
師であり命の恩人でもある柔沢紅香とは別の意味で、女傑と呼ばれる人間に育つだろう。
そんな遠くない未来を夢想し、遠くからその姿を見ることができればいい、と真九郎は思う。
高校も既に卒業している今、自分は完全に裏世界の住人であり、晴れて表の世界に立つことができた紫とは違う場所にいるべきだ。
210 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:17:35.15 ID:Hg+7sYzLO
彼女がそれを望めば、真九郎はいつでも紫の前から消える準備をしてある。
しかし今のところ、紫がそんなことを望むは様子はない。
その事実に喜びを感じるとともに、自嘲の笑みすら零れる。

「真九郎!」

軽い足音とともに、真九郎の胸のあたりに小さな衝撃。
視線を下げると、長い黒髪が真九郎の視線の先に揺れていた。

「少し遅れた! 待ったか?」

ぱっと顔を上げた紫と目が合う。
その表情は嬉しさが満面に広がっており、もともとの目鼻立ちの良さが更に可愛らしく見える。
真九郎はそんな紫の頭に手を乗せて、わしゃわしゃと撫でてやる。
紫はされるがままになっており、嬉しそうに小さく笑い声さえ漏らしている。
尻尾がついていれば、それは大きく左右に振れているであろう。
しばらくそうしてから、真九郎は紫の頭に手を置いたまま話を続ける。

「俺もさっき来たぐらいだから、10分ぐらいかな。なんかあったのか?」

「うん。明日は国語のテストがあるのでな、友達に質問攻めにあって大変だった」
211 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:18:11.59 ID:Hg+7sYzLO

真九郎の手を取り、歩きながら楽しそうに語り始める紫。
紫の学校生活は順調で、紫のおかげなのかそうでないのか、学校には表面的ないじめは存在しないらしい。
紫が直接注意をしていじめの標的になったり、逆にいじめっ子を改心させたりなどもあったらしいが、紫が直接関与しないものも含めて、徐々に無くなっていったようだ。
紫の裏表のない純粋な心が、子供達を変えていったということだろうか。
ちなみに、情報源はどこぞの忍者なので、確実だろう。
テロ対策も含めて、定期的に学校の内部をチェックしているらしい。

「(なんだかんだ、あの人も子供好きだよな……)」

犬塚弥生。
柔沢紅香の付き人で、忍者。
決して自称が付くような痛い人間ではなく、その働きぶりはまさに忍者そのもの。
何もない場所から突然現れたり、壁を走ったりもする。
真九郎は最近になって漸く気配が掴めるようになったが、そういうときは大概、弥生から真九郎に用事があるときなのでわざとかも知れない。

「真九郎!」

自分の未熟さに思索を巡らせていると、右下から抗議の声。
見てみると、紫が頬を膨らませて真九郎を睨んでいた。
212 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:18:41.79 ID:Hg+7sYzLO

「あ、ごめんごめん。なに?」

「……今、違う女のことを考えていただろう」

紫の指摘に、ギクリ、と顔が引き攣る真九郎。
紫は昔から勘の良いところがあったが、年々その能力は向上しているような気がする。
夕乃もそうだが、どうしてこう女性というのは勘が鋭いのだろうか。
なんにせよ、紫には隠し事や嘘は無意味。
真九郎は素直に認めることにした。

「ごめん、ちょっと弥生さんとの実力差について考えてた」

「夕乃のこともな」

「……はい」

この子は本当に他人の頭の中が見えるのかもしれない。
そんなことがあるはずはないが、しかし、そう考えてしまうのも無理のないことだ。
真九郎は背中に冷や汗が流れるのを感じながら、話題転換を図る。

「今日はこの後、どうするんだ? 騎馬さんからは何も聞いてないけど」

「うむ、本当は予定が入っていたのだがな。相手側の都合でキャンセルになったのだ」

真九郎と繋いでいた手をパッと離し、今度は腕に抱きつくようにする紫。
その二の腕に頬ずりをしながら嬉しそうに笑う。

「だから、今日は真九郎だけの私だ!」
213 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:19:35.58 ID:Hg+7sYzLO
嬉しそうに笑うその表情は、出会った頃と変わらずとても愛らしい。
成長期らしくこの数年で大きく伸びた身長は、既に真九郎の肩に迫る勢いだ。
本人曰く、胸の成長が芳しくないのが不満らしいが。
ともかく、そんな聞く人間が聞けば狂喜しそうな、紫の殺し文句を微笑ましく感じつつ、真九郎は一つの提案をする。

「それなら、久々に五月雨荘に来るか? 環さんも会いたがってたし」

「それも良いな! 真九郎の手料理も久しぶりに食べたいし」

真九郎の腕にぶら下がったまま、ゆらゆらと揺れる紫。
こういった仕草は、歳相応の実に可愛らしいものだ。

「真九郎、にやにやしてる」

「楽しいからな」

「ふふ! 私もだ!」

寄り添いながら、二人は五月雨荘に足を向けた。


〜〜


真九郎は五月雨荘の自分の部屋に入ると同時に、ここに来たのは間違いだったのだと悟った。
何故なら、昼から飲んだくれている大人が二人、真九郎の部屋で管を巻いていたからだ。
部屋には空になったビールの缶やつまみの袋が散乱し、鍵をかけていたはずのドアノブは破壊されて廊下に転がっていた。

「あー? しんくおうくん、あたしの酒が飲めないってぇのー?」

214 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:20:21.98 ID:Hg+7sYzLO
ゴミを片付けている真九郎の腰にしがみついて絡んでいる女性は武藤環。
どこぞの空手道場の師範代で、大学を卒業して以来ますます酒癖が悪くなった。
そして、環とは別次元の大酒飲みがもう一人。

「ぎゃはは! 紅くん、ほれほれ、アルコールぶしゃー!」

消毒用アルコールを片手に卓袱台の上に胡座をかいている人物の名前は、星噛絶奈。
裏十三家の一角、《星噛》家の現当主。
かつては真九郎と敵対し、一騎打ちまでした絶奈だったが、紆余曲折あって現在は宿無しのホームレスであり、仕方なく真九郎が環の部屋に放り込んだ。
環と絶奈はあっという間に意気投合。
以来、真九郎の悩みの種が一つ増えるどころか相乗効果で何倍にも増え、もはやノイローゼ気味ですらある。
夕乃や銀子がいるときは比較的静かにしている(以前真九郎のいないところでヤキを入れられたらしい。因果応報だ)が、それ以外ではこの惨状である。

「……真九郎」

「ごめんな紫、片付けたらさっさと追い出すから――」

「これが、ダメな大人というものなのだな……」

「…………」

久々に見る身近な大人の醜態を見てそんなことを呟く紫の瞳は、どこか遠くの景色を映していた。


〜〜


部屋の片付けを終えて二人を環の部屋に押し込むと、真九郎は漸く夕食の準備に取り掛かった。
今から買い物に行ったのでは夜も更けてしまうので、適当に余り物で作ることになった。
ちょうど挽肉とトマトが余っていたので、スパゲティだ。
真九郎としては外食でも良かったのだが、紫が「真九郎と二人きりの方が良い!」と言うので、真九郎は快く従った。
215 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:21:04.33 ID:Hg+7sYzLO

「真九郎! 次は何をすればいい?」

「じゃあ、麺が茹で上がったか確認してみてくれるか?」

「わかった!」

元気に返事をして、鍋の中に菜箸を差し込む紫。
年々、九鳳院としての仕事が多くなる紫だったが、時間が空いた時には料理の勉強をしているらしい。
曰く、花嫁修業だとか。
以前は踏み台がなければ届かなかったキッチンも、今では自由に移動して楽しそうに調理に参加している。

「うーん、もう少しかも」

「じゃあ、そろそろサラダを作るか。冷蔵庫にプチトマトがあるから、それ出して半分に切っておいて」

半年前に新調したばかりの冷蔵庫。
扉も開閉もしやすく、前の物とスペースは変わらないのに大量に収納できる優れもの。
真九郎の収入もこの数年で少しは見れるようになっており、事務所を構えたり、こうして家電を買い換えることもできた。
貯金には若干不安もあるが、銀子に報酬を支払うことすら困難だった頃に比べれば、かなり改善されたと言えるだろう。
216 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:21:32.31 ID:Hg+7sYzLO
「紫ちゃんの伝手で仕事を回してもらっているおかげでしょ。どっちが世話されているんだか」などと銀子は不機嫌に言うが、要人が集まるパーティーの警護などの場面で、真九郎の名を知っている者も少なくはない。
おかげで、固定客とまでは言わないが、リピーターも徐々に増えている。
これも、紫と出会わなければありえなかったことだ。
いつだったか真九郎は紫のことを守護天使などと表現したが、あながち間違いではないのかもしれなかった。
そんなことを考えているうちに夕食も出来上がり、二人はテーブルに就いた。
二人揃って手を合わせ、和やかに食事が進む。
ここまでの道中では語り尽くせなかったのか、楽しそうに学校で起きたことを話す紫。
自分の小学生時代は絶望と修行の日々であった真九郎にとって、とても眩しい日々。
それを語る紫の笑顔は、出会った頃からは想像もつかないほどに、歳相応の女の子のものだ。

「それでな、私のファーストキスは真九郎に捧げた、と言ったら、その男子が急に泣き始めて……」

「やめてやれ……」

真九郎は心の中で相手の男の子に合掌しつつ、どうか呪われませんように、とだけ願っておいた。


〜〜〜〜〜
217 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:22:27.43 ID:Hg+7sYzLO
今回は以上です。
そろそろ日常から動き出す予定です。
もうしばらくお付き合いくださいませ。
218 : ◆yyODYISLaQDh [saga]:2015/12/21(月) 22:25:44.75 ID:Hg+7sYzLO
それと>>140で言っていた「1年前」のことですが、別のスレでやります。
スレタイが電波なので、あくまで電波メインにしようかと。
それをやるときは紅オンリーになると思うので、よろしくです。
まあ、いつになるかはわからんけども……
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/21(月) 22:30:59.21 ID:5XXpue3lO
乙です
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/21(月) 22:46:05.41 ID:HNlII0FUO
乙ですね!
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/21(月) 22:49:31.14 ID:tyJVyY8w0
乙です
キャラの口調に違和感も無いし筆者が原作好きなのわかる文章ですわー
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/21(月) 23:11:09.11 ID:6edvanB4o
乙!
ずっと待ってた!嬉しい!
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/22(火) 17:23:23.30 ID:I8n1t2hnO
待つぞ。

片山憲太郎先生のファンは待つのが得意だからな。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/22(火) 20:10:34.22 ID:IlSOELnWO
乙!
素晴らしい。
新スレはこのスレで告知してもらえるのかな?
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/25(金) 08:25:21.60 ID:qEI2Z9770
あ、まだ紫はJSなのか
226 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/01(金) 21:42:49.29 ID:QGkobURuO
あけおめ!
227 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/07(木) 14:12:59.84 ID:IOYjVgbDO
待つのも楽しみの内
228 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/18(月) 01:02:54.28 ID:EUKflD45O
続きを書いてくれると信じている。
229 : ◆yyODYISLaQDh [sage]:2016/01/23(土) 17:25:00.71 ID:MbM1x/hHO
すまぬ・・・・・・すまぬ・・・・・・
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 20:26:25.83 ID:KJrZQ83VO
待つよ。
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 23:19:37.46 ID:LDrRj9/oO
待つさ。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/24(日) 08:46:02.90 ID:8MAE4d/To
待ってます
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 23:14:47.71 ID:hjDiscBOo
待つ
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/02(火) 23:04:13.40 ID:twK4Vuji0
ここはあみんの多いスレッドですね(自分も待ちながら)
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/02(火) 23:25:42.18 ID:2i9u/0SQO
ぺろぺろしながら待ってる
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/15(月) 07:36:04.90 ID:2KaRUYvMO
>>1さんや、続きはまだかい?
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/01(火) 12:17:01.32 ID:aL1i6/XIO
私は待つ>>1の帰還を
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/05(土) 01:39:45.93 ID:zXnfBpQ60
まだかい!?!!
239 : ◆yyODYISLaQDh [sage]:2016/03/10(木) 03:03:21.37 ID:1/9EGDqUO
すまん
FGOに忙しかった
今月は必ず更新します
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/10(木) 08:11:19.18 ID:ebBhLWN2O
マジかよ待ってたぜ
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/14(月) 18:20:50.19 ID:g0HOHhoOO
まつ
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/24(木) 21:42:14.03 ID:dDg8oSO0O
マダー?
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/26(土) 23:18:38.32 ID:sGeDgVaIO
今月は必ず更新する??
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/02(土) 08:15:51.70 ID:AH7WRMa4O
>>1さん生きてる?まだエタるには早いんじゃ無いか?
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/03(日) 07:21:39.38 ID:MjTD96v/0
もういいやお疲れ
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/10(日) 08:19:10.49 ID:leCTlBvj0
0510
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/13(水) 16:01:56.47 ID:frcsSg/iO
最初から読み直した。
やはり素晴らしい。
投下のテンポのせいで損してるな。
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/22(金) 18:07:31.51 ID:z4nsFNghO
生きてる?
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/28(木) 12:50:45.21 ID:W2h8UFUbo
まだまだ待てる
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/02(月) 07:36:51.32 ID:mV+VlIqVO
生存報告プリーズ
251 : ◆yyODYISLaQDh [sage]:2016/05/05(木) 04:09:32.27 ID:6pjKea2UO
生きてます
もうしばらくお待ちを
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/05(木) 07:48:37.54 ID:Myq1dZCeO
超待ってるよ
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