千奈美「ようせいさんとおねえさん」

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260 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 01:37:42.24 ID:KaeEb7DZ0

――――

千奈美『もしもし、しょちょう、ですか』

真奈美「……千奈美か。終わったのか?」

千奈美『ついさっき、にじかいが。……きもちわるいです』

真奈美「今どこだ」

千奈美『しぶや』

真奈美「タクシーには乗れそうか?」

千奈美『のったら、はくかも』

真奈美「誰か一緒か?」

千奈美『やまとさん』

真奈美「電話代わって」
261 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 01:40:53.85 ID:KaeEb7DZ0

亜季『こちらコード・オータム。どうぞ』

真奈美「……こちらはコード・ファング。確保したターゲットのコンディションはどうだ」

亜季『べろべろであります。水の代わりにウォトカ呑んでるロシアの赤鼻のほうが、まだマシであります』

真奈美「見張りを続けてくれ。どうぞ。……いや、済まない。二時過ぎか……どうするかな」

亜季『正直、一回吐かせたほうが楽にはなると思います』

真奈美「任せる。ブドウ糖とアミノ酸を摂取できれば、いくらか楽になるはずだ。成分表見て、選んでやってくれるか」

亜季『さっき本人から要求されましたよ。甘い炭酸とスポドリを与えてあります』

真奈美「助かる」

亜季『一応、スタッフ殿からタクシー代を多めに頂いておりますので、千奈美殿を送り出すことはできますが…… 一人で乗せたくはありませんな』

真奈美「キミに時間があるなら、少し様子を見て欲しいな。一緒に乗れるようなら、千奈美を置いてから私の家に来てくれ。泊めよう。できそうか?」

亜季『それなら大丈夫でしょう。了解であります』
262 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 01:43:12.51 ID:KaeEb7DZ0

――――

亜季「お疲れ様であります」

真奈美「何から何まで助かったよ。明日の予定は?」

亜季「仕事も学校もありません。Vチェックしてジムに行こうと思っていた程度です、のんびり帰りますよ」

真奈美「それならよかった。……随分呑まされたんだな、千奈美は」

亜季「珍しくドラマのプロデューサー殿が来られまして。千奈美殿を気に入っておられたようで、ずいぶん呑ませておりましたよ」

真奈美「……あー」

亜季「頑なに『明日も授業があるしルームメイトが心配するから帰りますよ』と。立派なもんです」

真奈美「……ありがとう、助かったよ」

亜季「ノリノリでついていくようなら放っておくつもりでしたが、そうでないなら護りましょう」
263 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 01:48:20.81 ID:KaeEb7DZ0

真奈美「今回の現場はシンデレラだけじゃあないからな。少し不安もある。厚かましい話だが、助け合っていってくれると嬉しい」

亜季「真奈美殿には義理も有りますので、出来る範囲でお応えしますよ」

真奈美「シンデレラ以外が噛んでる企画は、チャンスもリスクも大きいからな。いい経験にさせたいのさ」

亜季「……私は、プロデューサーでもカントクでも大御所でも、権力持ってる男のお気に入りになるのは、有力な選択肢だと思っておりますよ?」

真奈美「亜季は興味ないのか」

亜季「一応、アイドルですからね。今その手の話題が出たら、ファンがごっそり減って、そのままフェイドアウトでしょう」

真奈美「土壌とターゲット層に因るが…… まあ、日本だとそういうケースはそれなりに多いか」

亜季「アイドル引退して、本格アクション女優にでも転向すれば変わってくるでしょうが。……全ては実績です、いつになるやら」
264 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 01:52:05.67 ID:KaeEb7DZ0

――――

千奈美「うぅ……」

志保「おはよう、かな。寝ててもいいよ?」

アヤ「キツそうだな。酔い覚ましにミックスジュースでも作るか」

志保「炭酸入れよう。しゅわしゅわだよー♪」

アヤ「子供か」

千奈美「うぅぅぅ……」

アヤ「うっうー?」

志保「うっうー! 朝ごはんの前に、フルーツミックスソーダですよぉー!」

アヤ「似てるな……」

千奈美「まぶたを開けて…… さわやかお目覚め…… 無理……」

志保「私たちはこれ飲んだらお店行くけど、寝てていいからねー」

アヤ「動けるようになったらメールかLINEしといて」
265 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 01:57:15.18 ID:KaeEb7DZ0

――――

志保「アヤちゃんキッチンとフロアどっちにする?」

アヤ「んじゃフロアで。……あれ? 鍵開いてる」

志保「え? ……まさか!」

真奈美「おはよう」

志保「おはようございます♪ ……何でいるんですか!」

アヤ「あーあ。休んでくださいって言ったじゃないですか、昨日だってあんな時間に起きたのに」

真奈美「亜季がいるから、朝食の蓄えが心許なくてな。食材を確保したら、君たちが学校行くまで二階で寝てるよ」

志保「んむむむ。そういうことならわかりました。あ、ゆでたまご作ってある。ありがとうございます!」

アヤ「そっちの分けてあるボウルが、二人分の朝食ですか」

真奈美「起きたらフルーツ食べて炭酸飲んで、トレーニングしてから食べる」

アヤ「ほぼアスリート食ですけど、所長、仕上げなきゃいけないような仕事入ったんですか?」

真奈美「いや、特にはない。亜季に付き合おうと思ってな」
266 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:00:24.81 ID:KaeEb7DZ0

志保「ゆで卵、サラダチキン、レタス、キュウリ、トマト、リンゴ、バナナ……」

真奈美「雑穀米も食べるぞ」

志保「あああああスイーツ食べたいよぅぅぅぅぅ」

アヤ「いけない! 集中トレーニングのときのトラウマが! 大丈夫だぞーアタシたち今は食事制限ないぞー」

真奈美「まあ、平常時までカツカツに制限する必要はないが。自覚は持ちなさい」

志保「ココロエテ オリマス」

アヤ「亜季さんは制限中なんですか?」

真奈美「ワイヤーと長尺の殺陣がある上に素肌も出すから、二の腕、腹、太ももはカットしておきたいと言ってた」

アヤ「完全にガチのやつじゃないですか…… 千奈美に台本見せてもらおう」

真奈美「アヤが休みなら付き合わせるんだがね」

志保「……」

真奈美「志保はちゃんと体型維持するんだぞ。サプリも飲むんだぞ」

志保「やってます! ふ、太ってもいないし筋肉も落ちてませんよ!」

アヤ「そこは大丈夫です、保証します」

真奈美「そうか。見張りご苦労。さて、私は少し休むよ。モーニングはよろしく」
267 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:01:23.16 ID:KaeEb7DZ0

――――

志保「所長、私たち学校行きま……あっ! トレーニング用の機材増えてる!?」

アヤ「チンニングスタンドじゃねーか! ベンチ買うの止めたらあれか!」

真奈美「みんなが使えるようにガレージに置いたぞ」

志保「すっごくイイ顔してる……」

亜季「おっ! アヤ殿、と、志保殿! これは! 捗り、ます、よッ!」

アヤ「すっごくイイ懸垂してる……」

真奈美「亜季、勢いでやるなよ。勢いは付けず、まっすぐ、ハーフレンジで10回3セット」

亜季「畏まり、ました、ッ!」
268 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:06:50.81 ID:KaeEb7DZ0

アヤ「プッシュアップバーも結局買ったんだ……」

真奈美「今日はプッシュアップもダンベルも使わないがな」

志保「……あの、これ。ダンベルのおもり、買い足しました?」

アヤ「あぁもう…… フルで片腕30kgとか、プロレスラー並じゃないですか!!」

亜季「ふぅ…… ん、男子プロレスラーなら40くらいですかね」

真奈美「さすがに、きちんとは上げられないぞ。まだ重すぎてトレーニングにならん」

志保「ここはもうダメだよ、行こうアヤちゃん」

アヤ「そ、そうだな……」

志保「あと、言うけど8kgのダンベルをちゃんと扱えるアヤちゃんも、普通の女の子の範疇じゃないと思う」

アヤ「はっ」

志保「私が3kgのを上げ下げするまでに、どのくらいかかったか覚えてる?」

アヤ「感覚が…… 麻痺してるかもしれない……」
269 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:09:44.68 ID:KaeEb7DZ0



To:所長 アヤ 志保
 起きました
[学校行きます。帰りは19時過ぎくらいだと思います。また連絡します。]


270 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:12:23.47 ID:KaeEb7DZ0

千奈美(間に合う時間だ。学校行こう)

千奈美(だいぶマシだけど、さすがにまだ頭痛い)

千奈美(……ドラマのプロデューサーさんからメール来てる)

千奈美(昨日はありがとうございました。無事帰れました。色んなお話聴けてよかったです。またよろしくお願いします。と)

千奈美(みんなに心配かけたし、授業終わったら帰りに何か甘いもの買って来よう)

千奈美(イヤホン…… あ、ジャケットのポケットだ。何再生してたかな)
271 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:13:30.42 ID:KaeEb7DZ0


千奈美(仕事に練習 寝る間惜しんで 学校勉強ほどほどに)


千奈美(クラスの友達 思い出せない 彼氏も出来ない)

272 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:14:10.22 ID:KaeEb7DZ0

千奈美(……)

千奈美(……負けるか)
273 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/11/12(水) 02:17:22.45 ID:KaeEb7DZ0
レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、全然関係ない話を書いたりします。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/12(水) 03:52:40.49 ID:R74H3de+o
待ってた
軍曹はやっぱり軍曹なのなw
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/12(水) 07:09:11.92 ID:yW0UCVy9O
亜季はここのところ香港とかアクションの仕事多かったから、そういうのを反映してくれたんだろうか。
そしてなんだかんだでノリがいい木場さんw
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/12(水) 20:16:09.42 ID:tBIbtQMHO
軍曹が割とちゃんとした大人だ…

千奈美ちょっとハラハラする
ほんの些細な言葉に傷付いたりしそう
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/12(水) 20:33:02.47 ID:oqpPBtVno
千奈美の主人公感がいいね。アヤと志保はレギュラーだけど千奈美のサポート役かな。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/13(木) 00:35:48.14 ID:BrVcGkIqo
ふぇぇ…ちなみん一人でじんわり重いよぉ…しゅきぃ…

>>276
だけど甘いもの食べて幸せよ
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/01(月) 19:05:24.39 ID:UncHxiKgo
アニメの設定でがっくりきた
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/02(火) 14:23:09.01 ID:VX9Md+eTO
まあまあ、それぞれでもしかしての世界だよ
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/08(月) 12:16:30.87 ID:c+fkkB6vO
もう一ヶ月経っちゃうよぅ!
志保ちゃん再登場したし待つね。
282 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:45:13.95 ID:kBf/ArsI0

――――

アヤ「うおッ、すげー…… 機材と材料入ると違うなー」

志保「ビュッフェですよ、ビュッフェ!」

真奈美「写真は後にしなさい。動線の確認するぞ、撮影も入りながらの対応になるからな。……ええ、よろしくお願いします」

アヤ「カメラさんはどの辺から? あー、まあそうすね。流れで変わるか」

志保「なら、コールドテーブルの周り、もう少し広くなりませんか? 撮ってもらうには狭そう」

アヤ「オーブンちょっとずらしてもらったほうがいいかな。ショーケースの陳列は……」

真奈美「カメリハの後でいいだろう。……まあ、だいたいこんなものか」

アヤ「この後はカメリハだけですよね?」

真奈美「一応、プロデューサーとディレクターが改めて挨拶することになってるが、堅いものじゃないとさ」

志保「2スタのリハ終わって帰っちゃった人もいますものね。お弁当貰って来ようかな……」
283 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:45:49.82 ID:kBf/ArsI0

アヤ「ん、千奈美が稽古終わったって。浜川さんと会ってから帰るーってさ」

志保「む。合流しないんだ……」

真奈美「寂しい?」

志保「うーん、基本的に毎日顔合わせてるから、寂しいのとはまた違うんですけど」

アヤ「この二か月くらいか、生活時間ちょっとずつズレてるな。ほら、稽古優先でシフト減らしたから」

真奈美「まあ、それはそうなるだろうが」

志保「……前よりも、話してないなーって?」

アヤ「……これまでが、べったり過ぎたんじゃねーかな」

真奈美「外での仕事が増えれば、そういうこともあるだろうさ」
284 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:46:17.51 ID:kBf/ArsI0

――――

志保「……所長はああ言ってたけど」

アヤ「ああ、って?」

志保「仕事が増えれば、すれ違うことも増えるよ、ってこと」

アヤ「……ま、そうだろ」

志保「……そんなに増えた?」

アヤ「千奈美の仕事が増えたな」

志保「増えたね」

アヤ「流れで、アタシたちもカフェ忙しくなってるし」

志保「私たちはともかく、千奈美ちゃん、大学大丈夫なのかな?」

アヤ「一応サボってる様子はないし、何とかはするだろ」
285 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:47:12.78 ID:kBf/ArsI0

志保「……卒業したら、どうなるんだろう」

アヤ「当面はグラジオラスじゃねーかな」

志保「アイドルは?」

アヤ「今日だって仕事したろ? カメリハ、NGなしで抜けられたし」

志保「明日は本番ですよ、本番♪」

アヤ「随分張り切ってるなあ……」

志保「緊張で死にそうだから誤魔化してるだけだよ」

アヤ「自分から言っちゃダメだろ!?」
286 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:48:18.41 ID:kBf/ArsI0

志保「……アヤちゃん、サンドイッチ半分食べない?」

アヤ「くれ」

志保「どうぞー…… あれ? 貰ってこなかったの?」

アヤ「貰ったけど、開けてない。志保が残すと思ったから、もらおうと思って」

志保「……ありがと」

アヤ「ん。……スープ、うちのが旨いな」

志保「そうだね」
287 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:49:05.40 ID:kBf/ArsI0

――――

愛結奈「やった、ワタシの勝ちィ!」

千奈美「ぐくくく。一本足りない……! 先攻有利を活かしたカタチになったわね……」

久美子「言っても、一番手は私だったんだけどな……」

愛結奈「ふふふ、次もクリケット? いいわよーワタシ二番手で」

千奈美「ノースコアクリケットやってみない? 1から20まで最初に埋めた人が勝ち。同ラウンドで追い付いたらサドンデスで決定ね」

久美子「賛成ー」

愛結奈「異議なし」
288 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:53:38.50 ID:kBf/ArsI0

――――

愛結奈「奢りで呑むお酒は美味しいわね!」

千奈美「くっ」

久美子「珍しく、負けたねー」

千奈美「家で練習できてなくって。トレーニングとか役作りとかあるのよ」

愛結奈「ドラマ用に声と身体作ってるって言ってたわね。どのくらいツメてるの?」

千奈美「稽古は多くて月に二回だけど、時間できたらジム行ってる。あとは中央の合同トレーニングね」

久美子「木場さんに見てもらえるんじゃないの?」

千奈美「それはそうだけど、時間あるときだけよ。店見るほうが優先に決まってるでしょ」

愛結奈「中央行くならジムもそっち使えばいいじゃない」

千奈美「学校帰りに寄ってるわよ。安いし」

289 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:55:22.47 ID:kBf/ArsI0

久美子「ファンに見付かるかもしれないから、じゃないんだ……」

千奈美「気付かれて困るほどの知名度なんて…… シンデレラだって何人いるのよ?」

愛結奈「気付かれるだけなら意外といるんじゃない? それでパニックになるような人は少なそうだけど」

久美子「少なくとも私は、大学以外のプライベートで声掛けられたことないわね」

千奈美「私もない」

愛結奈「ワタシもこっちだと気付かれたことないかなー。スカウトには声掛けられたこと何度かあるけど」

久美子「あるある! 『間に合ってます!』って答えちゃう」

千奈美「……それすら、ないんだけど」

愛結奈「千奈美、一人だとキビキビ動くからね。声掛ける隙がない上に、声掛けられたことに気付かなそう」

千奈美「えっ…… それはそれでひどくない?」
290 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:55:52.61 ID:kBf/ArsI0


――――

久美子「元アイドルの音楽教室で芸能界にコネがある、って触れ込みならそれなりに忙しくなりそうじゃない?」

千奈美「堅実、なのかしら」

愛結奈「アリだとは思うけど、それってまず維持できそうなコネが必要よね。音楽プロデューサーとか、大手局のディレクターとか、制作会社の営業とか?」

千奈美「現場の音響監督とか、作曲家の先生なんてのもあるわね」

久美子「そうなのよね……一応、大学の繋がりもあるし、マネージャーとも相談はしてる」

千奈美「……せっかく歌上手いんだから、コネ作るだけに腐心しないでよね」

愛結奈「でも、実績的にはアレよ。ピアニストの仕事、たまにやれてるんでしょ?」

久美子「それ、現役アイドルだから有り付けてるだけだと思うな…… 私より上手いのに、音楽関係の仕事就けなかった人いっぱいいるし」

愛結奈「そういうの、やったもん勝ちって言うの。若さと見た目で仕事が取れるなら取っときゃいいのよ、今しかないんだからさ」
291 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:56:26.84 ID:kBf/ArsI0

久美子「そういう愛結奈ちゃんの将来は?」

愛結奈「乗馬クラブ開設?」

千奈美「貴方も大概ロマンチストじゃない!?」

愛結奈「現実的じゃないのは解ってるわよ。だいたい馬飼うのって大変なんだから? 力仕事ばっかりだし土地も必要だし」

千奈美「土地ねぇ。古着屋のバイトじゃ、資金にはならないでしょう」

愛結奈「それ以前に、やらないと生活困るのよね。社長は、こっちに集中してくれたら仕事増やせるって言ってくれるけど」

久美子「それ、目途はついてるの?」

愛結奈「何の見込みもなく言ってる人だったら、今これだけ人ついてきてないでしょ。多分あるんじゃない?」

千奈美「専業、できるんだったらやったほうがいいんじゃないの? それだって『今しかない』んだから」
292 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:01:58.43 ID:kBf/ArsI0

久美子「千奈美ちゃんはダーツショップだっけ?」

千奈美「まぁ、ねえ。実際にやれそうな範囲なら、チェーン店のオーナーが関の山でしょうね。オリジナルのフライトとか商品にできたらいいかなぁ」

愛結奈「ホントにそれやりたい?」

千奈美「……帳面とにらめっこするよりは、歌ってたいかな」

久美子「現状、専業にいちばん近いのは千奈美ちゃんじゃないかしら」

千奈美「……制服着るのはともかく、掃除したり伝票切ったりするのが専業アイドルだと思うならね」

愛結奈「最近少し減らしたんでしょ? ドラマのお稽古とかボーカルレッスンとか。どう?」

久美子「そうよ、今度の仕事、歌もあるって言ってた。何、やっとオリジナル曲?」

千奈美「劇中歌だし、シンデレラの管轄じゃないから…… シングルカットとか単独配信とかはないと思うわ」
293 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:02:38.84 ID:kBf/ArsI0

――――

千奈美「今日はありがと」

愛結奈「楽しかったわよ。やっぱり、前もって言っておいてくれると集まり易いわね!」

久美子「私は急に呼び出されたんだけど?」

愛結奈「ワタシの独断で呼んだもの」

千奈美「そうなの?」

愛結奈「そうよ。……あ、呼んだ理由忘れるとこだった。礼子さんが、今度のレッスンの後呑むから空けておいてね、って」

久美子「今度? ビューティーアリュールの?」

愛結奈「そうそう。来月頭のね。千奈美もご指名よ」
294 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:03:32.99 ID:kBf/ArsI0

千奈美「ふぅん? プロデューサーのご指名なら勿論空けるけど。うちの店で深夜押さえればいいわね」

愛結奈「いや、お店は決めてるとかって。なんか行きたいところあるみたい。ま、奢りだろうしありがたく、ね」

久美子「反省会の延長には…… ならないか、高橋さんなら」

千奈美「それより絶対終電なくすコースじゃないのよ…… アヤに迎え来てもらえるかな……」

愛結奈「そういうことなんで、よろしくね。それじゃ、ワタシはこれで。まったねー」

久美子「ん、私も地下鉄だから。それじゃレッスンで」

千奈美「はーい、よろしくねー」
295 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:04:19.11 ID:kBf/ArsI0

――――

千奈美「ただいまー」

アヤ「あ。おかえり」

志保「おかえりなさい♪ お風呂沸いてるよ」

千奈美「助かるー。一緒に入る?」

アヤ「……」

千奈美「いや、ヒくの止めてよ」

アヤ「ヒいてるっていうか…… 珍しい冗談だなって」

千奈美「なんか、ノリで……?」

志保「む。千奈美ちゃん、機嫌よさそう」

千奈美「友人と会って遊べば、そりゃまあ?」

アヤ「志保、アタシたちは友人じゃないらしいよ」

志保「冷たい!」

千奈美「友人っていうか、ほぼ家族でしょ」

アヤ「……お、おう」

志保「暖かい……」
296 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:05:07.54 ID:kBf/ArsI0

――――

アヤ「千奈美ーぃ」

千奈美「んー?」

アヤ「アタシたち、明日本番だからもう寝るな」

千奈美「そうよね。お疲れ様」

アヤ「朝からいないから、洗濯と掃除はよろしく頼む」

千奈美「朝ごはんどうするの?」

アヤ「店で食べる。そっち一応休みだろ、寝てていいよ。メッセージか何か入れとく」

千奈美「わかった。大和さんと中央行く予定だから、適当に連絡するわね」

アヤ「任せる」

千奈美「はい、おやすみ。明日はしっかりね」

アヤ「おう。ありがとな、おやすみ」
297 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:07:36.09 ID:kBf/ArsI0

――――

志保「家族」

アヤ「同い年だけどな」

志保「……お姉ちゃん♪」

アヤ「二十日しか違わないだろ……」

志保「双子の姉かな?」

アヤ「千奈美とだって二ヶ月しか違わないんですがそれは」

志保「頼りにしてるんだよ?」

アヤ「……明日本番なんだからさ。寝るよ」

志保「はーい、お姉様♪」

アヤ「はいはい。洗濯機タイマー掛けたから寝室ー」
298 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:20:39.92 ID:kBf/ArsI0



千奈美(せめて寝室でやりなさいよなんでバスルームの近くでやるのよ聞こえるでしょ恥ずかしいなあもう)


千奈美(だいたい。双子って。どんなよ。別にアンタ達、顔は似てないでしょ)


千奈美(……)


千奈美(『目に見えるコトは似てない』『ぶつかる日もあるけど』)


千奈美(……友達だし、家族のつもりよ)


千奈美(『おそろいの場所を目指す』 ……のよね?)


299 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:28:10.00 ID:kBf/ArsI0

ぴったり一ヶ月開いてた。
代々木に心を囚われていましたが、やっと取り戻してきました。

ちょっと環境変わったため遅筆をこじらせていますが、まだ生きてます。


レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、全然関係ない話を書いたりします。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/12/14(日) 07:05:22.53 ID:xHH4IDlm0
おかえり。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 07:08:52.46 ID:wFjldQbHO
浪人生さんかな?受験近いなら無理しないでね
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 07:12:07.48 ID:NYJBomLRo
おつおつ!
続きありがとう!
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 11:28:00.67 ID:/qOEs982O
リアル大事に、やれる範囲でやってなー。
バイトと掛け持ちは夢を追う業界の悲哀だよなぁ。中の人でも食うのに困りかけた人がいるし。
こんな世界だと、実家を飛び出してきた勢はどうしてるんだろうか。フリルドスクエアの忍とか忍とか(ダイマ
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 11:40:35.90 ID:r/VgOssCO
もしかして>>1自身が挫折した子である可能性
じっくりでええんやで。

ところで歌詞の引用もだけど、アイマスガールズのエピソードもちょいちょい挟んでる気がする。
そういうの好き。

>>303
忍はまずいですよ!
パンの耳に焼肉のタレつけて食べてそう…つらい…
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 13:08:21.40 ID:fjvmoP8vo
ライブハウスでバイトしてると夢追人のバンドマン兼フリーターいっぱい見るからよくわかるわ

未成年組のメンバーだと事務所預かりの寮暮らしで適当にコンビニなりなんなりバイト斡旋されてそうだけどどうなんかな?
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 13:27:19.33 ID:cO0h3p+7o
未成年を東京に1人で送り込んで
わざわざバイトさせる親は居らんやろ...
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/11(日) 23:01:49.54 ID:hiygIwBDO
308 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:08:10.07 ID:QNFtjt/70

――――

千奈美「……え」

アヤ「……」

志保「あっはは、まいっちゃうね……」

千奈美「ちょ、ちょっと待って、今ので出番終わり?」

アヤ「……そうだよな、これ」

志保「説明してたとこ、ざっくりカットされたね……」

千奈美「メニューの紹介とかパフェ盛り付けとか撮ってもらったんでしょう?」

志保「したよ?」

アヤ「リテイクもした」

千奈美「……メニュー紹介も自己紹介も、ワイプすらなし? テロップだけ?」

志保「……尺少し長いかな、とは言ってたけど。まさかのほぼ全切り〜♪」

アヤ「あ、実家からメール来た」

千奈美「そうよねぇ、あれじゃ説明も要求されるわね」

志保「私も釈明しておこう。電話してくる」

309 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:08:57.73 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「所長、びっくりするくらい優しかったな」

志保「アヤちゃん、まだショック?」

アヤ「んー、今はもうそんなに」

千奈美「え、私割とショックなんだけど」

アヤ「出てねぇじゃん」

千奈美「だからよ。アヤと志保が地上波で見られるなーって。うちの親も残念がってた」

志保「ひえぇ、期待を裏切ってしまった……」

アヤ「地上波か…… 次、いつになるかな…… 配信とかケーブル局とかならともかく、地上波じゃな」

千奈美「いや、そこはもぎ取りにいく心意気を見せなさいよ」

アヤ「ぐうの音も出ない」

志保「もぎ取った人の言葉は重い!」
310 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:10:01.10 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「はー。帰省か……」

志保「帰らないの? うちに来る?」

アヤ「無理だろ、木場さんがチケット持ってるんだぞ」

志保「両親に挨拶しに来てくれないの?」

千奈美「身元引受人?」

志保「結納?」

アヤ「ていうか、あの特番の体たらく見られた直後で、志保の親御さんになんて顔すればいいのさ」

千奈美「芸能側の仕事もないし店も閉めるのに、残ってどうするのよ……」

アヤ「……自主トレ?」
311 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:22:13.40 ID:QNFtjt/70

志保「せめて友だちと過ごすとかないの!」

アヤ「二人とも帰るだろ」

志保「私たち以外の友人を……」

アヤ「作る時間がない。……さておき、フジトモも帰るって言ってたし。大和先輩は、まあ」

千奈美「同郷だものね。あれでしょ、向こうで遊ぼうくらいの話に?」

アヤ「そうなんだよなあ」

志保「学校始まっちゃったらまた忙しくなるから、ちゃんと帰っておこうよ」

アヤ「……まあ、一応な」

千奈美「そんなに帰りたくないの?」

アヤ「うーん。そこまでじゃないんだけど。……今の状況イロイロ、ちくちく刺してくるからさあ」
312 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:23:41.02 ID:QNFtjt/70

千奈美「具体的に」

アヤ「……親と一緒に選んだ部屋、半年経たずに引っ越したこととか」

志保「あー」

アヤ「ルームシェアなんて本当に大丈夫なのか、とか。……父親がカタくて」

志保「そこは…… 私たちがどう言っても難しそうだね」

アヤ「あと、大学生のはずが、既に正社員扱いで働いてるとか。これは学校ちゃんと行ってるからほとんど言われないけど」

千奈美「そうねえ」

アヤ「んー…… まあ、そんなところ」

志保「うーん。……踏み込んだ言い方になるけど。仲悪いわけじゃないよね?」

アヤ「全然。だから、帰るしおせちも手伝うよ」

志保「……心配になってるだけ、だと思う」
313 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:24:14.60 ID:QNFtjt/70



アヤ(確かにな。心配にもなるさ、やっと出られた地上波で、出番ばっさり切られりゃ)



志保(……はっきり言わなくても、わかっちゃうんだろうな)


314 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:26:01.95 ID:QNFtjt/70

――――

千奈美「足代にお土産まで、本当によかったんですか?」

真奈美「帰って英気を養うことも大切さ。そもそも、君達の親御さんに、出来る限り毎年帰省させるように約束している」

志保「ふふっ、ありがとうございます。年明けには、お土産持って帰りますね♪」

真奈美「ああ、よろしく。それじゃあ、私たちも行こうか、アヤ」

アヤ「うーっす。それじゃ、また来年な」

千奈美「またね」

志保「淋しいよーアヤちゃーん。またねー」

アヤ「言ってろ。土産よろしくな」
315 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:26:58.24 ID:QNFtjt/70

――――

真奈美「忙しくなければ車でも良かったんだがね」

アヤ「アタシは飛行機のほうがいいですよ。だいたい、車じゃ丸一日かかるんじゃ?」

真奈美「そうだな、後ろフラットにすれば交代で寝られるから、だいたい16時間くらいか?」

アヤ「八時間一人で運転するのは嫌だな……」

真奈美「西海岸なら普通だぞ」

アヤ「……ニューヨークって東海岸ですよね?」

真奈美「拠点はそうだったが、そこそこ周ったよ」

アヤ「じゃあ、西海岸の八時間ドライブは?」

真奈美「二回……かな?」

アヤ「リアルに少ない」

真奈美「楽しいぞ。でかい車で、ただ舗装してあるだけのだだっ広い道を、スピード見ないで飛ばすんだ」

アヤ「どのくらい飛ばすんです?」

真奈美「約500キロを三時間程度じゃないか? 詳しくは覚えてない」

アヤ「怖!!?」

真奈美「ま、しばらくはあっちで運転することもないだろうさ。安全運転に勤めるよ」
316 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:28:56.99 ID:QNFtjt/70

――――

志保「名古屋ついたらちょっと寄り道しない?」

千奈美「お茶くらいならね」

志保「はーい。休み結構長いよね、予定空いてるなら、栄とか行こうよ」

千奈美「初売りとか? 親族の集まりがどうなるか次第だけど、行ってもいいわよ」

志保「じゃあ、その辺のチェックも兼ねて、コーヒーでもいただきましょ♪」

千奈美「そうしましょ。乗ったらちょっと寝るわ」

志保「私も少し休むね。アラームつけておくから」

千奈美「うっ、トラウマが……」

志保「米原を出ますと、次は、京都に停まります」

千奈美「寝過ごし……!」
317 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:31:57.04 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「はい、お茶とケーキ」

  「ん。……よう帰らしたな。忙しかとやろ」

アヤ「忙しかけど、所長がちゃんとスケジュール組んでくれてるから」

  「……学校はちゃんと行っとぉと」

アヤ「うん。大丈夫。成績表も見ただろ」

  「大学出ても、アイドル続けよるとか」

アヤ「……多分」

  「お前ももうハタチやけん。将来ば、ちゃんと考えんばぞ」

アヤ「考え……っ。……うん」

  「お母さんと婆ちゃんのおせち作っとると、手伝って来んね」

アヤ「行ってくる」
318 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:32:55.87 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「筑前煮となます終わり」

  「はーい。じゃ、残りはお母さんがやるから、お茶……いや、コーヒーにしようか」

アヤ「アタシ淹れるよ」

  「おっ、プロの業?」

アヤ「プレッシャー! 普通にドリップでいいか」

  「おばあちゃんにも一口淹れてあげてね」

アヤ「はいよ。……部屋の荷物、少し東京に運ぼうかな」

  「お人形? 乾燥剤取り替えればいいっていうから、お母さんやってるわよ」

アヤ「帰ってくること、減ると思うから。向こうでトランクルーム…… 小さい貸倉庫をさ、借りようと思って」

  「気にしなくていいのに。いつ帰って来てもいいんだからね」

アヤ「……うん」
319 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:33:25.72 ID:QNFtjt/70

――――

   「お爺ちゃんがね、最近ちょっと」

千奈美「……どこか悪いの?」

   「逆よ。元気も元気。部屋見た? 超でかいテレビとスピーカー買ったのよ。映画とかアイドル番組とか見てる」

千奈美「は」

   「あと、パソコンも新調してた。千奈美のインタビュー記事、プリントして綴じてたわ」

千奈美「ジョギングも続けてるんでしょ? 元気ね…… 集まったらまた何かやってーって言われるのかな」

   「おねシン歌って踊ってれば、満足すると思うけど」

千奈美「そういうのってだいたい『もっと!』ってなるやつよね……」

   「まあまあ。お爺ちゃん孝行しておきなさいな」

千奈美「体のいいこと言うんだから。ま、いいけど」

   「レコーダーの使い方も一生懸命調べてたわ。春には使いこなさなきゃ、って張り切ってる」

千奈美「ぼちぼち80でしょ!? よくやるなあ」

   「千奈美だって、にやにやしちゃって」

千奈美「そりゃ、嬉しいに決まってるわよ」
320 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:35:35.25 ID:QNFtjt/70

   「お仕事と大学、両方で続けられそう?」

千奈美「続ける。……練習生の間、毎週東京に送り出してくれたこと、無駄にしたくないし」

   「そっかぁ」

千奈美「お金は、少しずつ返すから」

   「え、大丈夫よ」

千奈美「でも、半年間ほぼ毎週新幹線乗せてもらって、今の大学の学費だってあるし、向こうで暮らし始めたときの支度金も」

   「学費は、四年で出てくれたらいいわよ。それ以上は貸しにするけど」

千奈美「うぅ」

   「支度金っていうのは、一人暮らしの費用?」

千奈美「そう。安くなかったんだな、ってのは実感したから」
321 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:42:01.83 ID:QNFtjt/70

   「もう一年以上経ったし、貴方もアイドルとして仕事貰えてきたみたいだから白状するけど…… 木場さんから返してもらってるから」

千奈美「は」

   「『折角お選びになった物件から、こちらの都合で引越していただくようなものですから、お詫びも兼ねて』って。まぁ、お釣りが出るくらいはね」

千奈美「……」

   「ポンと大金はたいて高いマンションに住まわせるくらいには、貴方に期待してるんでしょう」

千奈美「……聴いてなかった」

   「まあ、そのうち気付いたんじゃない? しっかりやりなさいね」

千奈美「じゃあ、レッスンの新幹線代は?」

   「……千奈美の子供の頃のお年玉とかお祝い金とかの貯金、結構あったのよねぇ」

千奈美「えっ……ひどくない……?」
322 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:42:50.46 ID:QNFtjt/70

――――

志保「♪〜」

  「コーヒー淹れてもらうのも久しぶりね〜♪」

志保「パパ、淹れてくれないの?」

  「淹れる度に『しーちゃんのコーヒーのほうが美味しい。さみしい』って言うから最近やらせてない」

志保「パパ……」

  「またライブとか舞台とかあるようだったら、チケット送ってあげて」

志保「はい♪ ……電話でも言ったけど、この前は、ごめんね。テレビ、ちゃんと映れなかった」

  「謝ることなんてないのよ。人いっぱいだったものね、そういうこともあるって」

志保「パパが、がっかりしただろうなぁって」

  「大丈夫。少しだけだったけど、可愛かったわ♪」

志保「ママは心配しないんだね」

  「しーちゃんが元気ならそれでいいのよ」
323 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:44:20.40 ID:QNFtjt/70

――――

   「姉ちゃん、ちょっとこれ」

真奈美「ん、どうした」

   「こんなメール来た」

真奈美「ふむ」

   「何て返す?」

真奈美「明日行く。出る前に私から連絡する」

   「そしたら、姉ちゃんのメルアドあっちに送っとこうか」

真奈美「よろしく」
324 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:44:51.09 ID:QNFtjt/70

――――

千奈美「はぁい」

志保『おつかれー』

千奈美「はいはい。で、いつこっちに出て来るの?」

志保『元日と二日のどっちかがいいな。三日に親戚の集まりだから』

千奈美「じゃあ二日の午前でいい? 午後うちに寄ってくれたら、帰り送るわ」

志保『それでいいよー♪ ……あ、サイレントウインドだ』

千奈美「ん、シンデレラチャンネル?」

志保『ううん、『ミュータミ』。シンデレラのカウントダウンライブの特集してた』

千奈美「そっか、一部中継あるんだっけ」

志保『バックダンサーのオファーなかったね』

千奈美「そうね。別に私たち、バックダンサーが本業じゃないし」

志保『そうだねー……』

千奈美「……」

志保『……うぅむ、やっぱり歌上手い』

千奈美「そりゃまあ、そうよ」
325 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:47:11.00 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「お邪魔しまーす」

亜季「はい、スリッパ」

アヤ「ん。……この年の瀬に良かったの?」

亜季「両親は二人で食事に行かして、兄は妹の保護者兼財布にされとる。一人でプラモ作るのも飽きたばい」

アヤ「道場は……掃除終わったから閉まってるか」

亜季「やね。四日の餅つきは顔出したかけど」

アヤ「いつ東京戻る?」

亜季「六日に撮影あるけん、五日の昼に帰ってジム行くばい。千奈美さんから聞いとろう」

アヤ「じゃあ、それまでには博多弁抜かないと」

亜季「貝の砂抜きみたいな……」

アヤ「部屋に閉じ込めて標準語の番組見せる、とかそういう感じ?」

亜季「一晩置いとくと、吐き出された訛りが床に散らばっとぉとね」

アヤ「吐き出したのを飲み込まないように、換気と掃除が要る」
326 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:48:07.00 ID:QNFtjt/70

――――

亜季「アヤはほとんど訛り出らんね」

アヤ「ちょっとだけかな。母さんがこっち地元じゃないし」

亜季「ウチは帰ったらすぐ出よるばい」

アヤ「それでよくアイドルやりよる」

亜季「だからこんな言葉遣いになるのであります」

アヤ「普通に標準語は?」

亜季「んんっ…… あんまり自然に出て来ない、んだよね」

アヤ「練習せんの?」

亜季「ラジオで、軍人喋り? が定着したから、今更普通に喋ると、キャラが迷走しそう」

アヤ「厄介だなあ」

亜季「んんっ…… まあ、お陰様で専らアクションの仕事が定着しております」

アヤ「モデラー系アイドルとか言ってなかった?」
327 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:50:18.56 ID:QNFtjt/70

亜季「本ッッッ当にデビュー当時だけでありますな。というか、そっち方面がコケたからアクションに絞っているのです」

アヤ「世知辛いなぁ。でもツイッターじゃ好評じゃん、プラモ」

亜季「プラモデル関係の仕事が来ないものかと、事務所に振るための下積みであります」

アヤ「でもまあ、アイドルで食えそうな目途、立ってきた?」

亜季「……新卒で働くとは諦めたけん。食えなかったら路頭ば迷う」

アヤ「そこそこ稼いでるんだから、単位揃えて休学にしたら?」

亜季「それは結局、アイドルと普通の仕事のどっちを選ぶかを先延ばしにするだけですな。今しかできないからアイドルを選ぶのでしょう」

アヤ「将来は?」

亜季「なるようになればいいのであります。歓声を受ける喜びを知った以上、そう簡単にはやめられないものです」

アヤ「それは…… わかる、けどさ。応援してもらえるのって、笑ってもらえるのって、すげー嬉しい」
328 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:50:49.54 ID:QNFtjt/70

亜季「アイドルになること、ひいてはエンターテインメントに身を置くことは、一種の沼でありますよ。……受け売りですがね」

アヤ「……アタシは、どうなるんだろ」

亜季「どうなったって、友人とは変わらんばい。もう良かやろ。食わんね」

アヤ「いただきまーす。うおー、やっぱモツすきうめー」

亜季「いただきます。……あれ、二人で食事って、東京いるときもあんまりせんやった?」

アヤ「アタシが一人暮らしほとんどしてないもんな。アタシが東京出て半年で、今のとこに引っ越しちゃった」

亜季「一緒に暮らしとっと、ホイホイ遊びに出るわけにもいかんっちゃろ」

アヤ「そうだなあ、お陰で彼氏も作れない」

亜季「欲しかと?」

アヤ「いや、別に」
329 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:51:29.66 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「ただい…… 何してんの」

志保「おかえりなさい♪ それと、あけましておめでとうございます♪」

アヤ「あけましておめでとうございます。今年もよろしく。……で、テーブルどかして何してたの」

志保「そうそう、そうだよね。んーと、ステップの練習」

アヤ「急に、なんでまた」

志保「千奈美ちゃんと初売り行った帰りにね、そのままお邪魔したんだけど」

アヤ「言ってたな」

志保「親戚の皆さんもいらっしゃってて。千奈美ちゃんとおねシン歌ったの」

アヤ「えっ。……大丈夫だった?」

志保「大丈夫、って?」

アヤ「アタシもだけど、志保のこともアイドルって知ってる人いなくないか?」
330 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:52:45.82 ID:QNFtjt/70

志保「そもそも、千奈美ちゃんがシンデレラガールズって知らない親戚さんもいたよ」

アヤ「まあ、アウェーなのはだいたいいつものことだけど」

志保「そうそう。それに、千奈美ちゃんのご家族は私のことも知ってくれてるから、大丈夫♪」

アヤ「お疲れ様。で、それがどうして練習に?」

志保「千奈美ちゃんのほうが上手だったから。横に立つと、わかっちゃう」

アヤ「あー……」

志保「だから、せいいっぱい、ね」

アヤ「……『小さな 一歩だけど』?」

志保「そうそう! 『キミがいるから』!」

アヤ「アタシもやる。ここじゃ音響いて迷惑だし、店のフロア使おう」
331 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:57:42.21 ID:QNFtjt/70

――――

生きてます。
主に2ndライブとアニメの影響で遅筆がますますこじれましたが、生きてます。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

もう折り返したものだと信じたい。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 02:07:49.54 ID:Lt71V2C8o
あけましておめでとうございますww
折り返しということは徐々に収束していく感じかな?
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 03:51:19.72 ID:tufvSx9po
アニメ終わる頃には完結かな?
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 20:54:47.58 ID:jlVL3ml0O
まあ無理せず
楽しみにはしてるけど、書かなきゃいけないわけじゃないんだしさ
楽しみにはしてるけど!
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/26(月) 01:39:18.98 ID:TndTZ/ano
おつかれーおかえりー

編集でカットは悲しいな…
それぞれ家族の態度の違いじわっと来るわー
そしてしーちゃんぐうかわ
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/24(火) 01:29:47.49 ID:8lwAavI9o
337 : ◆S0mvz1PntgQY [sage saga]:2015/03/10(火) 01:19:57.04 ID:tpknAHk60
――――

真奈美「連絡。今日からバレンタインのサービスを始めるから、ミニサイズのブラウニーを忘れずに提供すること。私からも言うが、バイトの子にもよろしく」

志保「出した数、伝票ベースでいいんですよね」

真奈美「クローズしてから、サービスとメニューでそれぞれいくつ出たか記録する。今日は、私が多分一日中ここにいるから、やっておこう」

千奈美「分かりました」

真奈美「それと、ディナーに予約が二件。あとはクローズ後にジューシーの高橋さんが来る」

アヤ「礼子さん?」

真奈美「私と呑みたいだけらしいから、構わなくていいぞ。というわけで今日は恐らく上に泊まる」

志保「分かりました。でも、ちゃんと休んでくださいね」

真奈美「そうだな。明日の朝はよろしく。それから、来月のプロジェクト側の仕事。私と千奈美が、最初の定休日に仮歌収録。その次の定休日に、その曲の振付サンプル動画撮影」

千奈美「はい」
338 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:22:00.27 ID:tpknAHk60

真奈美「それとは別に、千奈美は月初にビューティーアリュールのレッスン。私はフェスの稽古が残り一回で、第一金曜にリハ、その後の土日に本番」

アヤ「はーい」

真奈美「アヤと志保は第二週にイベントのアシスタント。土曜日に横浜と渋谷、日曜に越谷とさいたま」

志保「わかりました♪」

真奈美「開始前のフライヤーと終了後の記念品配布、それと前説の予定。資料は郵送したとのことだから、受け取った人は私に言うように」

アヤ「了解です」

真奈美「最後に全員。今月の店内ライブのソロ曲を決めること。今回はレッスン時間少ないから、新しい曲は避けてくれ。以上だ。何かあるかな。……それでは、今日もよろしく」

  「「「よろしくお願いします」」」

339 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:23:35.77 ID:tpknAHk60

――――

アヤ「仮歌、振付サンプル、アシスタント」

志保「ドラマのエキストラ、バックダンサー、コーラス」

アヤ「トークイベントの司会」

志保「3Dモデルのモーションキャプチャ」

アヤ「それ面白かった」

志保「私、ダンスでしか撮ったことなーい。アヤちゃんはゲームの撮ってたよね」

アヤ「アイドルらしい仕事とは、何か」

志保「顔と名前が出ればいいんじゃないかな?」

アヤ「今挙げたやつだと、どっちかしか出ないじゃん……」

志保「そうかも」
340 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:24:08.26 ID:tpknAHk60

アヤ「ライブとか、グラビアとかかなぁ。やっぱり」

志保「合同ライブとかフェスとかなら、時々呼んでもらえてるよ?」

アヤ「じゃあ、アタシと志保だけでやるって言って、どのくらいのハコだよ」

志保「毎月の店内ライブなら、立ち見出ることもあるもん」

アヤ「やっと、な。それだって、基本的には4人揃ってるしお土産もつけてる」

志保「つまり、私たち二人で、お店使わずに……?」

アヤ「そう。アタシたちだけで、外で。どのくらい呼べるか」

志保「ファンレターとか差し入れとかくれる人が、ひのふの……」

アヤ「店内ライブ常連さんが一致してるのが、いち、にー……」

志保「……」

アヤ「……」
341 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:24:41.27 ID:tpknAHk60

志保「い、いいんです! ファンレターもらうなんて、普通の生活してたら得られない経験だよ? 数じゃないよ!」

アヤ「売れてるかどうかは、数だろ」

志保「……ここ、嫌?」

アヤ「それは…… 楽しいけど。みんな盛り上がってくれるし」

志保「私は楽しいよ、ファンの人たちと直接話せるのもここだけだから。大事にしたい」

アヤ「でも、もう一年半やってる」

志保「そうだね」

アヤ「……これから、増やせるのかな」

志保「月二回とか」

アヤ「外でやろうとかは考え…… いや、費用がなあ……」

志保「実際には、外だとスタッフ手配する必要あるから、途端に大変になるって」

アヤ「今だって、警備は最低限だし、段取りもお客さんの厚意に甘えてる」

志保「……所長がどう考えてるかは、わからないけどね」
342 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:25:09.93 ID:tpknAHk60

――――

志保「バレンタインパフェ二つ出まーす、これでオーダー消化♪」

真奈美「私が出してくる」

志保「お願いします♪」

千奈美「山越えたかな。アヤ、手空いたら炭酸ちょうだい」

アヤ「ほい」

千奈美「ありがと。レモネード作るけど飲む?」

アヤ「飲む。木場さんの分も作っといてよ」
343 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:25:35.53 ID:tpknAHk60

千奈美「はーい。今フロアどのくらい?」

アヤ「三組。コースのお客様は全部終わり。一組はさっき出した二名様。一組はいつものファンの人たち」

志保「追加ありそう?」

アヤ「もうボトル空いてるしデザートも終わったから多分…… はい! お会計ですね。それと月末のチケット。はい、かしこまりました」

志保「ありがとうございました♪ ……わっ、お土産ですか! いつもありがとうございます、嬉しいです♪」

千奈美「私、見送ってくる。ついでに外の様子見てくるわ」

志保「気を付けてね」
344 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:26:16.83 ID:tpknAHk60

――――

真奈美「はい、お疲れ様。コーヒー淹れてきたぞ。お土産、何だったんだい」

千奈美「チョコみたいですよ。ヘンリ……る、ルークス?」

志保「それフランス語だよ。アンリって読むの。どこかで見たなあ……」

真奈美「仏語の講義で出てきたのかい」

志保「それもそうですけど。学校じゃないですね…… そうだ、デパ地下で見たんだ。高級チョコのブランド」

アヤ「へーっ。千奈美のファンの人だったよな」

千奈美「そうね。……高いんでしょ?」

志保「確か2000円か3000円くらいだったよ」

アヤ「生々しい……」

千奈美「ありがたくいただきましょ」
345 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:26:54.72 ID:tpknAHk60

志保「あんまりありがたそうじゃない……?」

千奈美「いや、嬉しいわよ。でも、不思議だな、って」

真奈美「何がだい」

千奈美「プレゼントって、だいたい手紙ついてるじゃないですか」

真奈美「そうだな。あぁ、今のも中身チェックしたから読んでいいぞ」

千奈美「はい、ありがとうございます。……プレゼントも嬉しいんですけど、手紙はより嬉しいんですよね」

アヤ「そりゃ、市販品と違って、一回こっきりだからな」

志保「そのために手間掛けてくれてると思えば、嬉しくもなるよね」

真奈美「……私から言うことは無さそうだな。さ、掃除だけしたら帰っていいぞ。キッチンは私がクローズしておく」

アヤ「挨拶くらいしたかったんですけど、また来るの夜中なんですかね」

真奈美「早くて23時は過ぎると言っていたな。……食洗機だけ動かしたら、私はひと休みするよ」

千奈美「……ぱーっと片付けて帰りましょうか」

志保「賛成」
346 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:27:45.63 ID:tpknAHk60

――――

礼子「二人っきりなのは、いつぶり?」

真奈美「日本に帰ってきてからは、初めてじゃないですか」

礼子「ニューヨークが懐かしいわねぇ」

真奈美「仕事ばかりでしたがね」

礼子「もう懲り懲り、って顔」

真奈美「そうですか? 仮歌もコーチングも続けますよ。テキーラ、どれにします」

礼子「ゴールド何か入ってるなら、それで」
347 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:28:56.75 ID:tpknAHk60

真奈美「どうぞ。ライム足りなかったら自分で切ってください」

礼子「なーに、酔っ払いに刃物使わせるの?」

真奈美「……わかりましたよ」

礼子「かんぱーい。……ゴーストシンガーはもういい?」

真奈美「……そっちは懲り懲りです。あんなことで、こんなに稼いだのが間違いなんです」

礼子「それでも、アルバム二枚は作ったんでしょ」

真奈美「投げ出したら、いちばん泥かぶるのは私を紹介した礼子さんじゃないですか」

礼子「ありがと」

真奈美「人真似で歌うのは面白かったですし、技術にもなりましたが」
348 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:30:44.48 ID:tpknAHk60

――――

礼子「サングリータ足りない」

真奈美「はいはい、ただいま。どうぞ、自分で注いでください」

礼子「態度悪くない?」

真奈美「私の客ではあっても、店の客ではないでしょう」

礼子「アヤたちにクレームつけよう」

真奈美「叩き出しますよ」

礼子「むぇー(`3´)」

真奈美「可愛くないです」

礼子「似てるでしょ?」

真奈美「似てますけど、可愛くないです」
349 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:33:16.59 ID:tpknAHk60

――――

真奈美「はい、ワカモーレとコロナ。……ペース早くないですか?」

礼子「まだ三杯目よ。これでしばらく粘ればいいでしょ」

真奈美「分かっているでしょうし、構いませんがね」

礼子「それに、社長はケチケチしないものよ」

真奈美「パソコンくらいしか設備投資の必要がないそっちと、一緒にしないでください」

礼子「よく言うー! ちょいちょいイベント入れて儲けてるの知ってるんだからね」

真奈美「そりゃあ、アイドルプロデュースの店なんですから。ニーズに合わせますよ」
350 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:33:59.25 ID:tpknAHk60

礼子「あっちで稼いだ分、いくら残ってるの?」

真奈美「オフィスの開業資金に使ってからは、あまり手を付けないようにしてます」

礼子「ケチくさいことしてるんだから」

真奈美「若い女の子の人生預かるんです、備えは必要でしょう」

礼子「よく言う」

真奈美「今日は随分突っかかりますね」

礼子「……あーた、あの子たちどうしたいのよ」

真奈美「どう、とは」
351 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:34:34.98 ID:tpknAHk60

礼子「所属は真奈美も含めて四人よね。芸能の仕事で、いちばん売り上げ出てるの誰?」

真奈美「……"All alike"ですよ。イベントの助っ人が主な仕事ですから」

礼子「似たり寄ったり、ねぇ。歌唱指導だのイベントマネージメントだの、裏方を含めたら真奈美?」

真奈美「そこは、まあ。本当なら、裏方以外は全部あの子たちに回したいです」

礼子「でも、あの子たちには任せられない?」

真奈美「……そういうわけでは。ただ、私に来たオファーに対して……」

礼子「代わりに推薦できるほどの実力が、あの子たちにないって?」

真奈美「端的に言えば、そうです」
352 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:35:37.81 ID:tpknAHk60

礼子「そんなのゴリ押ししなさいよ。『シンデレラガールズのメンバー使いたいだけだったら、こっちでも対応できるから充分だろぃ』ってさ」

真奈美「そんな無茶苦茶な」

礼子「的外れなとこ推したら共倒れだけど、多少のズレなんてフィットさせてくわよ」

真奈美「無理をさせても……」

礼子「アンタねー。あの子たちだってプロの端くれだし、営業や現場はもっとキャリアのあるプロよ?」

真奈美「……む」

礼子「あんた、こないだフェス呼ばれてたわね。千奈美は今撮影だっけ?」

真奈美「はい。枠は小さいですが2クールです」

礼子「そうね。その仕事は次に繋がるの? 夢の続きを用意できるの?」
353 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:37:39.26 ID:tpknAHk60

真奈美「……ドラマのプロデューサーには、気にかけてもらっているようですが」

礼子「ふぅん。で、後の二人は。川島の冠番組の特枠、コケたんでしょ」

真奈美「少しは出ましたよ」

礼子「あの子たちを主役にする気あるの?」

真奈美「そういう聴き方されれば、答えはひとつです」

礼子「"Yes, of course"って? じゃあ、見込みはどうなの。主役にしてやれる見込みは」

真奈美「……」

礼子「中央にぶら下がってる仕事拾って渡すだけで、そう簡単に成長しないんだからね」
354 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:38:09.74 ID:tpknAHk60

――――

アヤ「おはよーございまーっす。お、キッチン片付いてる」

志保「んん、フロアも片付けてあるよ」

アヤ「……でもこのヒール、礼子さんのだな」

志保「やっぱり泊まったんだ」

アヤ「様子見てくる。ダメそうだったら着替えだけ持ってくる」

志保「はぁい♪ 仕込み始めてるね」
355 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:38:35.54 ID:tpknAHk60

――――

アヤ「……こりゃ、ダメかな。制服だけ失礼して……」

礼子「……ぅ。……アヤ?」

アヤ「ありゃ、おはようございます。大丈夫ですから、寝てていいですよ」

礼子「おはよ……まだ7時前か。んー…… もうちょっと寝るけど、一回シャワー浴びるわ」

アヤ「何か飲んだり食べたりします?」

礼子「ミネラルウォーター置いてるから平気よ」

アヤ「そすか、それじゃごゆっくり」
356 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:40:08.80 ID:tpknAHk60

礼子「……ね、アヤ」

アヤ「はい?」

礼子「今、楽しい?」

アヤ「そりゃまあ、続けてるわけですし」

礼子「……」

アヤ「……な、なんですか」

礼子「いや、今はいいわ。眠くてしんどいし。お仕事頑張って」

アヤ「は、はぁ」

礼子「はぁい。おやすみ」

アヤ「……あの、礼子さん」

礼子「ぅん?」

アヤ「……辛いと思ったことは、ないですよ」
357 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:42:54.86 ID:tpknAHk60
――――

昔は私も無課金だったが、上位に軍曹が来てしまってな。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/10(火) 02:32:35.85 ID:ESlMTX/1o
軍曹て割と最近だなw

ワシも昔は無課金だったが、日菜子が(ry
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/10(火) 10:01:34.20 ID:bMGzNIgMO
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