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垣根帝督「はぁ? 俺はオタクじゃねえぞ」

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854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 10:26:59.88 ID:SfIpcXH6O

パズデックスで削板と麦野のハロウィンコスプレ拝めると思ったのは俺以外にもいるはず
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/02(水) 01:37:53.14 ID:MCsRrDmQ0
似合わない女装男がお嬢様JCをしてる姿を見せられる御坂さん……
一人だけ笑ってはいけない常磐台開幕しそう
笑ったらケツ未元物質
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/02(水) 03:56:20.15 ID:KzW66EElo
>>855
ゴーグル君のケツに・・・!?ゴクリ
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/25(金) 00:04:24.75 ID:lt1EkTL8o
保守。垣根君とスクールは正義であり癒し。異論は認めない。
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/27(日) 14:09:38.66 ID:LjV1G8PA0
心配無用な気もするがお前ら超電磁砲だけじゃなくて偶像の方も単行本買っとけな
はいむらのスクール描き下ろし見れんぞ心理定規かわいい
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/28(月) 14:43:53.10 ID:WfFR35qOO
>>858
ファッ!?こマ?
買う予定ないのに…
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/09(金) 23:55:49.04 ID:mt8yBfSAo
ウザイ誤字指摘でごめんね?でも読み返してたら気になったんだね?
>>243でパリ、グアム、ハワイと言ってるけど、「パ」リじゃなくて、「バ」リなんじゃないかな?
セーヌ川でシブブプレじゃなくてインドネシアでジャワカレーだと思うんだ。
861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/23(金) 00:19:13.49 ID:ikcyRD+r0
クリスマスには小ネタという名のプレゼントがあるはず
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/23(金) 13:11:14.00 ID:nzLkobiio
垣根帝督(notていこ)のミニスカサンタを見たい
863 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:37:50.61 ID:eUWzAfWn0

いきなり
「廊下の角を曲がったら突然現れた女装男子(おまけにデカい)に壁ドンされちゃった☆」
なんて言う意味のわからないイベントに巻き込まれた美琴は、食蜂達に使っていない教室に連れ込まれた。
どうやら何かあったらしいのは見てわかる、と言うかこれで何もなかったらそっちが問題だ。
意味もなくおかしなことがこの常磐台で起きているなんて美琴も考えたくない。
そんな風に。
このおかしな事態の説明を期待してついてきたのに、食蜂は先に下準備を済ませてくると言い残して出て行ってしまった。
おかしな事態……変態もとい不審者改め、制服姿のお兄さんと二人きりで残されてしまった。
謎の女装男子は暇そうに部屋の中をうろうろした後、その辺の椅子に座るとスマホを出してなにかしていた。

「あ。ったく、また死んだ。は? いや、今はちょっとな。ああ……多分な」

一人でブツブツ言うと、画面から視線をあげて美琴をみる。
そんな風にますますおかしさの増す不審人物をキッと見据えて。
あの女を待つまでもない、と美琴は意を決して口を開いた。

「アンタ……何してるの?」

「何かすぐ死ぬ生き物育てるアプリだ。こいつらも運がねえんだな、さっきから五回連続で死んでる」

身構えていたところに気の抜けきった答えが返ってきた。
予想外すぎる出鼻のくじかれ方に芸人並みのリアクションではなく実際にずっこけそうになってしまう。
そう言うことじゃないだろ! つうかゲームしてんのかこの状況で? ナメてんのかおんどりゃー!
と美琴も言ってやりたかった。

だが相手はこの常盤台の電撃姫、御坂美琴の電撃が通じなかった男だ。
ついでに常識面も通用しない程度にどうにかしているらしい。この状況でマイペースにもほどがある。
…しかも女子の制服を着てる。
あの馬鹿でもない、得体のしれない相手に問答無用で喧嘩をふっかけるのが名案だとも思えなかった。
しかも食蜂の連れらしいから手出しするとややこしいことになるかもしれない。
怒号たっぷりの質問を浴びせたくなるのを今はぐっとこらえる美琴。
喧嘩っ早い彼女にしては驚きの踏ん張りで相手を睨むにとどまる。
…その上女子中学生のコスプレをしてる。
わけがわからないからこそもう少し様子を見たかった。
……よく見るとサイズがぴったりなのが不気味だ。


「たっだいまぁ。ちょっと根回し力を発揮してきたから御坂さんもこの後の授業出なくても別に大丈夫よぉ。超能力者が揃って授業中に行方不明なーんて大騒ぎになっちゃうものねぇ」

「遅えよ」

戻ってくるなり、代返どころか記憶とデータの改ざんで堂々とサボリ宣言をする食蜂。
それに気軽に…と言うよりやけになれなれしく声をかける少年。
やっとおかしな空間に変化の兆しがあったことにほっとしたのもつかの間、んん? と何か引っかかる美琴。

彼女もその立場上、上級生や大人にも丁寧に仰々しい扱いを受けることがある。
学年問わず生徒を侍らせている食蜂も同様に、いやプライドの高そうな彼女なら美琴以上にその辺りのことを気にしておかしくない。
「私に向かってそんな態度はだめなんだゾ☆」なーんてリモコン一撃でとっくに矯正されていそうなのに操り人形にされている雰囲気がなかった。
そのままでいるのは、きっと何かある。
どうやら奴はただの変な人ではないらしい。
864 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:42:02.15 ID:eUWzAfWn0


「紹介が遅れたけどぉ。御坂さぁん、こちら新しいおともだちのていこちゃん。ていこちゃん? こちらが御坂美琴さんよぉ」

「ああこれか。常盤台の超電磁砲な……テメェら……タメか?」

ふーんそうか、と呟く変態もとい訳ありっぽい男子は美琴と食蜂を見比べていた。
何を、とは言わないし深追いしたくない。
美琴は誰かれ構わずビリビリしてやるタイプでもないのだが、あんまりにも失礼だとバチッと一発お見舞いしてやっても許される気がする。
しかしこいつ何者なのか。
さっき出会い頭に、身の危険を感じてちょっと強めにバチバチしていたのだが本人はケロっとしている。
でも放電は出来ていたから、どっかの馬鹿みたいに電撃を打ち消されている訳でもなさそうだ。
人を待たせていたはずの食蜂は近くの机の前に座ると無駄に優雅に髪をはらう。
両手をあわせて長い金髪を追った指先を組むと。
ますます現状に不信感をつのらせて、ついでに興味も増している美琴に向けて女王様はニィッと笑った。

食蜂たちはこの学校の生徒たちが巻き込まれた事件を秘密裏に調べているらしい。
はっきりとは言わないが、偉い人たちに頼まれたのだと言うニュアンスが面倒臭さと一緒に話のなかにたっぷり込めてあった。
その件なら美琴にも聞き覚えがあった。
確か。
消灯後、深夜に部屋を抜け出した生徒たちが校則違反の注意や処罰の対象になったのに当の本人たちがみんな揃って容疑を否認。
防犯カメラの記録に現行犯での確保まで物的証拠は用意できたが、本人の証言も謝罪・反省も取れず。
ついには読心能力者までかりだされたが嘘の反応も出ずになんとも後味の悪いことになったらしい。
この学校の生徒の間では『夢遊病事件』なんて呼ばれていた。
今、話題にされるまで
「そんなこともあったなあ」程度でしか美琴も興味はなかったが。
身に覚えがないと言うのがもし本当なら、当事者はきっと嫌な思いをしただろう。
でもそれも含めて、済んだ騒動の割には後日談や噂の真相は話題に上らなかった。
お嬢様でも女の子は噂話が好きだったりするが、もしかしたら流行が早い分飽きられるのも早かったのかもしれない。

「それってもしかして先週騒ぎになったやつ? 解決したんじゃなかったの」

そう思っていた美琴は首を傾げて食蜂をみたが、ニマニマしている彼女の顔に気付いてハッとする。

(コイツの能力なら、不都合な記憶や情報はいくらでも好きに出来るはず、誰にも気づかれずに校内に箝口令をしくことだって……)

それと同時に話の重要さも浮き彫りになってくる。
常盤台、いや学園都市でも頂点に位置する精神系能力者がスイッチ一つで済むはずの調べものをわざわざ自分していると言う事実と。
事件の背後にあるのが最悪、『心理掌握』を出し抜けるかもしれない何らかの手段と言う可能性だ。

「実はぁ、まだなのよねぇ。他の人に知られるのは極力抑えたかったのよぉ。今こうしてるのも、彼女のことが御坂さんにバレちゃったから仕方なくよぉ? 不可抗力なんだからぁ」

カノジョ、と言いつつ食蜂は少年を指さす。
なんなんだと食蜂にも電撃付きでツッコミをお見舞いしてやりたかったが、一応まだ話をしてくれる様子なのでぐっと我慢する。

「年頃の女の子が夜中にふらふらしてるなんて危ないでしょ? おまけに本人が何をしてたかろくに覚えてないなんて……いやよねぇ?」

更にそれだけではなく。
操られた可能性のある生徒たちの起こした事件の中には常盤台のデータベースへ侵入しようとしたものもあるらしい。
それはすぐにセキュリティが働いて、アクセスした端末を探知し即現行犯で現場をおさえて捕まえたそうだ。
ただのいたずらでは済まないような大事の可能性があるが。
それを聞いた美琴はあからさまに不機嫌な顔をした。
そう言う話なら、彼女の方だって解決役として適任ではないのかと感じたらしい。

「何よ。外部に応援は頼めても私には話も出来ないっての」

「そうよぉ。この事件に関して校内で私が信用力を発揮出来るのは私自身だけだものぉ」

その言葉に頬杖をついていた少年は食蜂をにらみつけた。
どういう意味だ、といいたそうな視線が返されるのを待っていたかのように、食蜂はにっこり不敵に笑みを返す。

「アナタはまた別よぉ。じゃあ質問。超能力者である私が自分よりも劣る精神操作能力者の影響を簡単に受けるかしらぁ? 答えはノー。学園都市最高峰のこの能力を外部操作出来る手段が……そう幾つもあってはたまらないわぁ。対策力は万全よぉ」

何が面白かったのかはわからないが、常盤台の女王を自称する彼女はそのあだ名に似合わず自嘲気味にそう付け加えた。
それに校内の能力者は、風紀委員が一番最初に取り調べをしていたらしい。
それでも、食蜂が一番怪しんでいるのは精神操作の出来る能力者だと言う。
確かに、マインドコントロールの出来る機械なんてものが存在したら、不快力全開でとっくに潰していそうだった。

865 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:47:40.25 ID:eUWzAfWn0

「御坂さんはたまたま、私の『心理掌握』を能力的な特性で防いでしまってるのよぉ。でも、他の能力者に対してはどぉかしらね。洗脳能力と一口に言ってもアプローチの方法力は人それぞれなんだけどぉ」

そう言って今度は食蜂の目が美琴に向けられる。
菓子パンの裏に貼りつけられた食品表示のラベルを読むような視線だった。
その上、そこに書かれていない情報こそが本当に知りたいことだとでも言いたげな、信用していない顔だ。

「私も……事件の黒幕に操られるかもしれないってこと?」

「或いは、既にね。だからわざわざていこちゃんを呼んだのよぉ。こんな格好までしてもらってもぉ大変」

「だからテメェはいちいち俺のカンに障りてえのか」

さっきから、彼女とかおかしなあだ名で呼ばれている男性は、食蜂にこうしてからかわれ続けているのだろうか。
今までのやりとりで常盤台のトラブルを解決する為にわざわざやって来た、と言うことは大体わかる。
この格好もその一環なのだろうと思うと、美琴も同情する気になった。
それにしても。
どう言い訳しても中学生にだって見えやしないのに、よく女子の制服を着せたものだ。

「ごめん。この人誰?」

「あらぁ知らなかったの? この人も超能力者よぉ。第二位のぉ」

「垣根帝督」

むすっとした少年は嫌そうな顔をして名乗った。

「今はていこちゃんよぉ」

やっと本名が出たと思ったらまた食蜂がまぜっかえしてしまった。
二人の話では、常盤台に在籍する第五位も第三位もあてにならないからそこまで話が上げられた、と言う事情らしい。
そう言われるとなんとなく経緯がわかるし納得する。
もし能力者の序列が元で呼び出されたのなら、本人はそりゃあ迷惑だろう。

「えっ。じゃあアンタの手にも負えなかったら第一位まで繰り上がったりするの?! 校内に変なのが増えるなんて嫌よ」

「なんだそれ。そんなん来たら笑い死ぬ自信がある」

「やだぁ。ここに悪趣味なオブジェなんて増やさないで欲しいわぁ。元イケメンでも死体はいやよぉ」

あの第一位、一方通行が女子の格好でやってきたらなんて恐ろしすぎてシャレにならない。
世にも奇妙な想像をしてしまった美琴はブンブン頭を振って更なる災厄の具現化を頭の中から振りはらった。
「鈴科百合子でェす」なんて裏声で言われた日には夢にまで出てきそうだ。

第二位だから第三位より頼りになるか、と言う単純な話かと思いきや。
理由はそれだけじゃないらしい。
常盤台関係者の風紀委員や警備員でも解決できず。
不審に思った女王が独自に手をだしたものの。
事件の目撃証言も、容疑者の身辺捜査もとにかくこれといった有力な情報が出ずに調査は難航。
ついには彼女たちの言う「偉い大人」の耳に入り、事件が表立って騒ぎになる前に食蜂たちが動くことになったらしい。

「私の調べた中で、数少ない犯行現場の目撃者がいたんだけど。そんな数少ない証拠なのに記憶も消されてないし、探っても改ざんや小細工の跡もなかったのよぉ。きれいにそのまま。痕跡を今までなんにも残さないようにして、きっとがんばっているはずの犯人さんはいったいどうしちゃったのかしら……って思うわよねぇ」

そこに突破口があると食蜂は考えた。
消さないのではなくしたくても出来なかったのだとしたら。
犯人の対処が及ばない例外、ちょうど食蜂にとっての美琴のような天敵があるとしたら。
利用しない手はないだろう。
それはどんな人でしょうか? ともったいを付ける食蜂。ヒントは……ここでは珍しいわよねぇ、と彼女はわざとらしく笑った。

「それって」

「男か?」

垣根と美琴は顔を見合わせる。

「正解。犯人さんが干渉力を発揮出来るのは女性か、他に何か理由があるんじゃないかと考えたのぉ。だからアナタのところの能力者では不十分だったんだゾ。協力者が取り込まれる可能性があったんじゃ意味がないでしょ☆」

なぜか垣根にウインクして見せる食蜂。
その目撃者、警備を担当していた人たちの証言がとれたのも最初の二件までで、すぐに次の犯行時刻は男性職員の見回りの時間からは外れたものになってしまったと言う。
対策のはやさからも相当慎重な人間の仕業だというのがうかがえた。
事件の首謀者への対抗策として男を使う……巻き込まれた可能性を含めた関係者が全て女性で、男性には一切関わりなし、と言われるとそう考えてもおかしくないのかもしれない。

「そうか。容疑者、いや被害者か? それを誉望のやつが見つけたのも……俺たちの仕事は正規の警備とは絶対にかち合わないようになってたからだろうな」

そう呟いた垣根はいきなり渋い顔をした。何か嫌なことでも思い出したのだろうか。

「ったく、食蜂テメェそれをもっと早く言えよ。聞いたからってはいそうですか、なんて気持ちよく返事もしねえけどな」

それにしてもあれだ。
第二位の超能力者らしいと言うのに垣根ときたら、格好のせいでいちいちしまらない。

「いっ、意外と似合ってるわよ? うちの学校はお化粧ダメなはずだけど、それスッピンよね? うん、美人美人」

「誰が化粧なんざするか。黙れ」
866 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:51:59.54 ID:eUWzAfWn0

「裏で糸を引いてる犯人は自分の弱点もよくわかってるっての……だからって食蜂、これがアンタの作戦なの? 女装した協力者に捕まえてもらうなんて、こっちもかなりの問題じゃない?」

美琴がはっきりそう言うと本人も嫌そうに食蜂をにらんでいた。
彼だって、常盤台の偉い人から何か頼まれたのかもしれないが、それでも気分はよくないんだろう。
そんな、ごく当たり前だろう反応にも食蜂は
「御坂さんみたいな数少ない例外を除いて、私の改竄力は効果抜群よぉ。同系統の能力者でさえ、彼の姿を誤認させられてることにも気付かない筈だわぁ」
と、自信まんまんだった。
なら服もどうにかしてやればいいのに、と美琴も同情する。

「でもあんたが操れるのは人間だけでしょ? 電子機器は例外よね。ケータイでも写真や動画は撮れるんだし。探してる犯人じゃなくても、誰かに監視カメラや警備ロボの記録をみられたらすぐバレそうじゃない」

「そこも対策力は練ってあるわぁ。犯人さんは今まで、他の生徒や職員にコンピュータの操作をさせていたのよぉ。本人にそこまでの技術力は期待出来ないんでしょぉねぇ。他の人にもバレる前に尻尾を掴んじゃいましょぉ」

美琴の意見を聞いた垣根は。
改めて自分の様子を、と言うか主に腰から下に視線を向けて。
げんなりうつむいてしまった。

「こんなふざけた格好してんのが知られるなんざ、想像もしたくねえ」

「あらぁ? そんな顔しなくても大丈夫よぉ印象操作はしてあるわぁ。私の洗脳力下にある人間はアナタにカメラを向けるなんてことは思いつきもしないから平気平気」

「その言葉、違ってたらどうなるかわかってんだろうなテメェ」

「ま、話はわかったわ。知らない間にそんなことが起きてたなんてね」

そんなこんなで美琴も混乱の壁ドンから事態を把握した。

「本当に。迷惑しちゃうわよ。不本意だけど人手が増えたし、私も少しは楽できそうでよかったわぁ」

「アンタねぇ、しれっと人を巻き込む気?」

「その気がなかったらこんなに話をしてないわよぉ。それに御坂さんだって何かあると知った以上は首をつっこまずにはいられない性分力じゃない?」

そう言われて。
美琴の脳内に、とある巻き込まれ体質の首つっこみたがりで年中ひどい目にあっていそうなツンツン頭が自動再生された。
ちがうちがう誰があの馬鹿なんか……と美琴は無駄にあわあわしてしまう。
だが、食蜂はおかしな真似もしていないし今の美琴の頭の中も読めない(はずだ)。
もちろんそんな事情を知らない垣根からも、突然の奇行に冷ややかな目を向けられてしまった。

「でも……そぉねぇ。ここで御坂さんを押さえておけたのはある意味とっても幸運かも。学園都市最高水準の『発電能力者』、アナタにかかればその辺の電子ロックやセキュリティなんて鍵のささったドアみたいなものでしょぉ?」

確かに美琴なら発電能力で校内のネットワークやデータベースに力技でアクセスすることも可能。
敵の目的が何かわかれば相手を追い詰めることも出来るだろう。

「先手を打てたかもってこと?」

「こいつが操作されてなきゃ、の話だけどな」

垣根はそう言ってふん、と鼻を鳴らした。
食蜂と違って警戒している素振りではない。
そうなったらすこしばかり面倒だ、くらいの反応だ。
もし他の超能力者と敵対することになってもこの余裕……と言うか見下した態度は変わらないのだろうか。

「見た限り今のところは……だけど御坂さんは大丈夫だと思うわぁ。私が犯人さんで、もしチャンスがあるなら最初から一番強い駒を手元力に置いておくもの」

「まぁ、いかにも非力な弱者の考えそうなやり方だな」

「玉座についたら動かないのも強者の役割じゃなぁい? アナタ達二人みたいな野蛮力の高い人にはわからないかもしれないわねぇ」

「だが……大元の犯人、そいつは何度かしくじってるんだろ。リスクが上がれば当然焦りも出てくる。なら、こいつを餌に釣れるかもしれねえな。起死回生の一手にはもってこいの筈だ」

「あらぁ、お目が高いわぁ。御坂さんを使おうなんて容赦のない卑劣力ねぇ」

垣根と食蜂の二人は何やら悪い顔をして悪の参謀っぽい話をしていた。
超能力者たちによるこの集まりは、学校や生徒の為の正義の活動である、と祈りたくなる光景だった。
唯一まともな正義感をふりかざしてくれそうな美琴だったが、しばらく黙った後で何やら食蜂を手招く。

「ねえ。あの人に真面目な顔をされればされるほどおかしくってしょうがないんだけど。何とかならないの?」

「仕方ないでしょぉ? 御坂さんに妨害力があるのがいけないんじゃなぁい」

どうやら、笑いそうになって会話に加われなかっただけのようだ。
食蜂は既に慣れたのか大丈夫そう、と言うか何だか楽しんでいる節がある。
その点美琴はかわいそうだなあ、と思うと笑いの方も収まらなくなってしまう。
そんな時。
シャシンヲトッタゲコ! と美琴の携帯電話が喋った。

867 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:55:11.41 ID:eUWzAfWn0

「あっ……えっとお、あははー……」

自分のしたことに気付いた美琴はにへらっと中途半端な作り笑いを浮かべた。
『心理掌握』の干渉を防いでしまう彼女はなんの抵抗もなく軽い気持ちでカメラを向けたのだが即座にそれを後悔することになる。
ずっと不機嫌そうだった垣根の目がものすごい勢いで美琴の動きを追っていた。

「は? 何してんだテメェ」

「きゃっ!」

勢いよく立ちあがる垣根。
美琴も慌てて席を立って後ろに逃げる。
とっさに、と言ってもそこまでしたのはそれくらいの危機感を感じてしまったせいだ。
武装無能力者の集団に囲まれたって余裕しゃくしゃくの御坂美琴サマをびびらせるとは流石第二位。
なんてふざけていられる余裕は無い。
すぐに追い詰められてしまう。
壁が砕かれるんじゃないかと言う勢いで壁ドン(本日二度目)が見舞われた

「私……その、好きなのよね? 男装とかそう言うの……それで、つい?」

と言うのはもちろん適当な嘘で、特に何も考えずに撮った。
おもしろいものをみつけるとついついカメラを向けてしまう、現代っ子の悪いところだ。

「ふざけんな?」

端末を美琴の手からもぎ取ると、垣根は眉間にしわを寄せて画面をにらむ。

「写真どこやった」

「ちょっと……待って。携帯貸して」

乱暴に扱われている緑の携帯が握りつぶされる前に、垣根の手から取り返した。
慌てて美琴は画像データの中から『風景』と名前の付いたフォルダのロックを解除してもう一度渡す。
一番上に撮ったばかりの垣根の写真。
あとはずらっと、煌びやかな衣装を着た舞台の上のスターの画像が並んでいた。

「……マジか」

「そう! そうなのよ!! なかなか男役にだってあなたほど美人でイケメンなんていないから! 我慢できなかったの!! ね! そうよね食蜂!?」

怒っていたはずの垣根にぽかんと目を丸くされた。
もちろん、美琴が能力で操作して一瞬で作ったおとりのフォルダだ。
検索に引っかかったネットの画像をそのまま数十枚放り込んだおかげでいろいろ微妙なものも混じっている。
とっさに食蜂も巻き込んだ。
でもこれに関しては食蜂も悪い、むしろコイツの悪趣味のせいじゃないか、と疑うくらいには美琴は彼女をよく思っていない。

「……人にはぜぇったい言えない、御坂さんの隠れた趣味力よねぇ」

こんな時、真っ先に美琴をからかいそうな食蜂だったが。
即興の誤魔化しにつきあっていた。
真剣な美琴の様子と、目の前の第二位の脅威に折れたらしい。


「仕方ねえな。こう言うのは、きちんと断るのがマナーじゃねえのか」

おかしな趣味の奴ってどこにでもいるんだな、と垣根は呆れ顔で頭を掻いていた。
美琴は美琴で、勝手に変な趣味の人にされていたが半ギレの超能力者の攻撃と引き換えならその程度は我慢してもいいだろう。

「あの、ごめんなさい」

頭をきちっと下げたら、携帯が投げ返された。
その時の垣根は何だかとてもかわいそうな、哀れな生き物を見るような目をしていた。
ふうーっと安心した美琴がそれをポケットにしまうと、垣根は首を傾げた。

「? 撮らねえのか?」

「断れば……いいのかしら。ねえ、この人よくわかんないんだけど。もしかしてアンタ何かした?」

「さぁ? 折角だから気が変わらないうちに撮影させてもらえばぁ」
868 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 03:04:34.56 ID:eUWzAfWn0
常盤台の制服姿の第二位(この敷地の中で一番すごい能力者)はコキコキ首を鳴らしていた。
態度も姿勢もサイズ感も女子だとは言い繕えない雰囲気だ。
かと言って膝を揃えてお淑やかにされてもそれはそれで恐怖映像になりそうだが。

「わかっててもやっぱギョっとするわ。アンタよく平気ね……って自分に能力使えばなんとかなるのか」

「気にするほどかしらぁ?」

「笑っちゃったら失礼でしょ。私だけヒヤヒヤしてるのってずるくない?」

美琴が女装男子に耐えられなくなってきたので頭を直接洗脳してもらうことになった。

「えー、嘘でしょ? 本当に女の子にみえるわ」

改めて垣根を見た美琴ははしゃいで大きな声を出した。
女の子の姿の垣根……背は美琴とそんなに変わらないだろうか、同じ学年の女子にしては高い方だろう。
さっきまで目の前にいた実物と比べると随分小柄に思えた。

「ね、ていこちゃんはかわいいでしょぉ?」

「うるせえ」

「あ。でも喋ると男子ね」

美琴が指摘すると、垣根は何やらシャツの襟のあたりをごそごそしはじめた。
そう言えば、今は何もないがさっきは何かアクセサリーでも着けていた様な気がする。

『これならわかりませんか?』

「へー。おもしろーい!」

超能力者の精神操作は伊達じゃないらしい。
と。
さっきまでの笑ってはいけない常盤台空間を無事に乗り越えた美琴だったが。
今度は今度で、服装とは別の所が気になりはじめていた。

『……何だよ』

じろじろ見ていたらウザそうに文句を言われた。
それでもばっちり女子に見えるのだ。正体がわかっていても見た目はほぼ一〇〇パーセント女の子。

「これってさあ…どうなってんの? ちょっと…触ってみてもいい?」

好奇心に勝てずに両手をわきわきさせながら美琴は質問してみた。

「いいわよぉ」

『テメェが返事すんな』

文句は出たが別に断られなかった。
美琴は女子だし、垣根本人には実害がないからと言う問題なのだろうか?

「ふーん……へぇ? へー、ほー」

「御坂さぁん、こっちから見るとおかしなパントマイムみたいだけどそれってセクハラよねぇ」

『テメェが言うな。でもあれだよな……VRのゲームなんかすると、人間テメェが気付かねえだけですげえ馬鹿みたいなカッコするよな』

冷ややかな態度を通り越して、もうどうでもよくなっているらしい垣根の前で美琴は食蜂製脳内擬似おっぱい力を堪能していた。
自分も女子でこれが偽物だとわかっているからか、触り方に遠慮がない。
音で表すとワシッ、ガッ、グワッ! なんて少年漫画の効果音みたいなノリだ。

「意外とずっしり、いやいや! いくらなんでもこんな……ねえ?!」

『は? テメェ女の癖に何……いや』

「御坂さんじゃぁ……無理ないわねぇ」

「あっ、あ……ううううう」

ハイテンションで顔を上げた美琴だったが。
二人そろって視線が御坂の胸元に集まったあと、きまり悪そうに言葉を濁らせた。
がくっと一度落ちた肩が、下を向いた瞬間にもう一段深く下がっていった。

「おっほん! ところでさ」

「なぁに?」

「ひょっとして、アンタのそれも能力で……」

「私の干渉力をオートで弾いてる人に言われたくないわぁ」

『は? 何言ってんだお前。鏡ん中に他人がいるのって変な気分だぞ』

限りなく本物に近いかもしれない乳の革命に女子二人がやいのやいのしている横で、何やら耳元を押さえた垣根は一人でぶつぶつ言っていた。
869 :  ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/12/26(月) 03:09:29.99 ID:eUWzAfWn0

垣根にあのステージや大階段はあんがい似合うかもしれない。羽根は自前のがあるし。
ごめんなていこちゃん、新刊読んだらミコッちゃんがすっかりおっぱい星人になってさ?だからってなんでもませてるんだろうな1もびっくりだよ。

>>846
多分もめるらしいということになってしまった。洗脳側の一方的エアーだがもめるっぽい。

こんなオチでもうしわけねーが今年もドーモドーモ。
あいさつ早めだが来年もよろしくおねがいしたい。


>>852
やったぜ。
トリックをトリートにしてもらえてよかった。
レベル5どもにおかしなことをさせるきっかけとしてはアイドル設定はできる子。

>>853
アニェーゼも妥協してベルベル語ーなんて言うしな。ギャグでも無茶振りすぎて。英語が出来ても何とかなるとは限らない禁書世界(の割に日本語の普及率がおかしい)

>>854
乙ありでーす
麦野は悪魔『アイテム』ガチャの方をやったけど削板は超能力者唯一のハブだったな。実装遅かったしサービス終了してなかったらあるいはワンチャンあったか。

>>855
ミコッちゃんが延々可哀想でしかない。
笑ったら未元物質って、笑うとJC女装+羽根でさらに爆笑の連鎖……それなんて大惨事。

>>856
ケツバットとばっちりすぎィ!
「元はと言えばあいつのせいでこんな目にあって笑い者になってんだ。御坂の笑った数だけ、後でゴーグルのケツを蹴り飛ばす」なんてリーダーも嫌だろ。災難じゃない、任務が済んだ頃には忘れてるよ。

>>857
保守ありっす。
裏技使わせてもらっちゃう暗部だけどな!
癒しなー、暗部組織の荒んだ日々の束の間アホなことをネタかましても許されたいね。癒されたい。

>>858
はぁあああ?はいむら?!って追ポチったありがとう。でもよお□木氏〜もっと早くはいむら絵のかきおろし心理定規ちゃん見れたろ〜何してくれてんのもう!

>>859
スクール層の購買も見越すとはやるな電撃、>>858のダイマに感謝。

>>860
おー!そうだな南国だもんな!唐突なオサレになっちまう。
あんな小ネタのすみっこでもちゃんと見てる人はいるんですねって1感動。
ここがSSスレじゃなかったらひとで投げつけてるわ。何さシルブプレw何だよカレーww

>>861
小ネタ……小ネタな。まとまってないのならたくさんあるのよな?書きたいのもたくさんあるんだな。小さいかきねや、プールの話もまだ誉望さんの話もいつかすいません寄り道の多い1土下座。

>>862
そいつぁ……逆に笑わないと怖そう。大火傷してるのにリアクションのひとつも取れなかったら悲しいやん?
トナカイの着ぐるみでソリ引いて空飛んで欲しいなあ。ペガサス仕様のトナカイそれなんてメルへン。

当SSのゴーグル君も、らっこさんが加入後も『スクール』ピラミッドの最下位に居続けることが確定しました合掌。ドリンクバー係永久就任。
しかしレベル4もあって原作唯一の見せ場であんな冷静に関係者を潰しちゃう、暗部の仕事出来そうなキャラなのにその実パシリ呼ばわれって誉望万化(しんのすがた)あまりにも不憫では?

弓箭さんはin学舎の園でナチュラルボーンお嬢様な気配がするから上げ膳据え膳仕方ないのかもしれない。
心理定規はレディファーストだしにっこりお願いされたらもう仕方ない。
リーダーに至ってはもう何もかもが仕方ないので。
やっぱり大能力者でも彼は焼きそばパンを買いに行かされてしまいそうだ。

誉望万化氏のパシリネタがありがたい限りでこの先遠慮せずに組織の先輩をdisいじるらっこさんが書けますありがとう。
偶像の方もありがとうございますございます。さすがはいむら圧巻のはいむら白くないのにどこか眩しい。でもなスナ子さんもといらっこさんのフロントも見たかったよぉおお本のページで切れる誉望さんさすが。
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 11:56:08.58 ID:T9wNrBb30
俺もおっぱい揉みたい
できればみさきちのを
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 13:08:08.25 ID:M1PWdX2K0
らっこちゃんは可愛い
可愛い
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 14:01:41.92 ID:CjNl4rWMo
おっぱいはおっぱいでも揉めないおっぱいはなーんだ!
正解は〜!みことっぱいでしたwwwwwwwwww
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 03:34:13.72 ID:Idit4eHG0
あけおめ
今年も>>1のss楽しみにしてる
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/15(日) 23:29:20.31 ID:UYNwYWng0
改めて読み返したけど、やっぱり面白いな
>>1すげぇなぁって思ってしまう
875 : ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2017/01/27(金) 03:17:07.56 ID:9WjwSuCV0

ドーモ。
いつかやっときたいのを1個人用にメモっとくと現行安価以降未消化のやつが
>>502 心理定規メイン
>>661,682 いつになってもどこでももう見れそうにない誉望過去話
>>729,733 ショタ垣根とスクール
かな?見返すのしんどいのよな。

某ロリショタスレでもていとくんだけハブだったのが残念だったなんてゴニョニョ
言い訳誤魔化しトンデモどうでもいい設定なら任せろ!!超能力者を幼児にしてやるぜ!!と言うことで今年も好き勝手話を投げていきたいなーと思います。おつきあいください。
今年も落とさずいくのが目標。出来たら次スレも。なるはやで。
ネタには困らないのよな、ネタには。安価もだめだはやくなんとかしないと頭につけたらSSが書けてる近未来アイテムどっかに売ってねえのよな。


>>870
布越しながら吸いついてくるような手触り(御坂談)
みさきちだって中一(おそらく)の時はちっぱいだったんだよな。それであの急成長はバストアッパーを疑うべき

>>871
らっこさんにはもう会えないんだろうか。情熱的なバイオリン弓箭さん萌えー。

>>872
美琴に足りないものはなーんだ?
おっぱいでした〜!!
いやあれは無いからいいのかもしれないな、それに本人が言うほど無いわけじゃないよね?あんなに美鈴さんに似てるし大丈夫さ。

>>873
ことよろ!
わー!あざまーっすがんばりまっす

>>874
なっなによ!大げさにおだてても何にも出ないんだからね?!保守小ネタくらいよもう!

つーわけで
1ちゃーん、バカだから保守ですー♪
出しどころがなかったネタですよー。
876 :圧倒的な力の前になすすべもない『スクール』のメンバー」 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 03:22:09.79 ID:9WjwSuCV0

誉望「こっ、これは……!!」

垣根「隠れ家に来たら置いてあった」

弓箭「何ですかこれ?」

心理定規「こたつよ。結構大きいわね」

弓箭「みなさんでここを囲んで座るんですか」

誉望「使ってみないんスか。あ、垣根さん靴脱ぎました?」

垣根「当たり前だろ」

弓箭「これがこたつですか…テーブルの裏にヒーターが付いてるんですね」

心理定規「そうね。今は暖房器具も便利になってるし、あんまりみないけど」

誉望「一人暮らしや寮の部屋でこんなのあると邪魔っスからね」

心理定規「そろそろ温まったかしら」

垣根「どれ」スッ

誉望「どうスか」

垣根「……うん?」

誉望「温度設定変えます?」

垣根「……」

「「「……」」」

心理定規「もう十分みたいね。入りましょう」

誉望「そっスか」

弓箭「えええええっよろしいんですか?!」

垣根「…あったけえ」


垣根「おい」

誉望「はいっ?!」

垣根「誰だ。さっきから人の足にぶつかってんぞ」

弓箭「ちちちちちちがいますっ」

心理定規「誉望君じゃない?」

誉望「おっ俺は違いますよ? 足伸ばしてないっス」

弓箭「えええええっわたくしも正座した方がいいんでしょうか?」

心理定規「そんなに気にしなくても平気よ」

垣根「まあ……俺の足が長いからか」

心理定規「そうね」

誉望「っスね」

弓箭「はわ〜。あったかいですね……」

誉望「コタツにはやっぱ籠みかんが標準装備なのか」

弓箭「誉望さん、わたくしにも取ってください」

心理定規「じゃあ私もお願い」

垣根「おい」

誉望「はい、はいっス。垣根さんもスか」

垣根「ポテチとコーラ」

誉望「コーラは冷蔵庫…がここだと見えねえ……っ!」

弓箭「能力ではなくご自分で取ってくればいいのでは?」

誉望「一度入ったコタツからわざわざ出れるか。くっ、何とかいけるか?」プルプル
877 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 03:24:52.07 ID:9WjwSuCV0

垣根「テレビのリモコン」

誉望「はいっス」ヒョイ

心理定規「誉望君、そこの雑誌取ってくれない?」

誉望「はいっス」バササ

弓箭「よぼーさん、もうふ」

誉望「何でみんな寛いでるのにゴーグル(本気モード)なんだろう俺……」パサ

垣根「だらだらテレビ見てんのもいいけど。ろくに見るもんがねえと暇だな。何かねえのか」

誉望「俺もゲームはもってますけど、単体で大人数同時にに対応したのは…今からDL
すれば何かできますけど」

弓箭「あちらにみかんの入ったダンボールと他にも何かございましたよ」

心理定規「そう」

誉望「……あーはい見てきます」

心理定規「あら。あなたってみかんの白いところまできれいに取るのね」

垣根「悪いか」

弓箭「心理定規さんは薄い皮は召し上がらないんですか?」

心理定規「別においしくないでしょ」

垣根「それ剥く方が面倒じゃねえの」

誉望「トランプにオセロ、あと小型端末のボードゲームなんかもありました。何スかねあれコタツセットっスかね?」

心理定規「随分用意がいいわね」


誉望「いっちにーさんしー……『開発』マスだ。あーっ能力開発失敗! 出た目にあわせてPSYポイントと資産を失う……ちくしょう! もう少しで大能力だったのに!!」

弓箭「残念でしたわね誉望さん。わたくしはもう強能力までレベルアップしましたわ」

心理定規「能力育成だけなら『大能力者』の彼がまだトップね。私は副業の方が順調」

弓箭「わたくしもそろそろ第一五学区のお店が買えそうです。コマの移動とステータス
管理はハードのパネルでしてくれるのにルーレットは手動なんですね」

誉望「やっぱ人生ゲームはこいつを回さないと。うわー次までに何か売らないと補填出来ねえ……やっとゲットした第六学区の大型ゲーセンがー」

垣根「事業展開大成功、『工場』を獲得」

弓箭「収入マスでルーレットを回して得られる収益が大幅に追加されます……すごいですね!」

誉望「垣根さん順調っスねー。所有物件はマンション、ショッピングモール、ファストフードチェーン……大能力者……工場長new!スか」

垣根「ここまでやっといて何だけどさ」

誉望「はい」

垣根「俺らが『学園都市すごろく』やる意味ってなんかあったか?」

心理定規「そう? ゲームで平凡な普通の人生を過ごすのも……何だか皮肉めいてない?」

誉望「まあ……内容も何となく、学園都市外部への土産もんっスよね」

弓箭「そうですか? わたくし人生ゲームははじめてです。みなさんで遊ぶと楽しいですね!」

誉望「そうかそうか。みかん食うか?」

弓箭「なななななななんですか誉望さん? えっ、そんなに積み上げないでください」

心理定規「『研究機関の強化』が成功したわ。ここまで手間とコストをかけたけど、能力開発の成功ポイントと関連事業の収入マスの結果が……やった。10%もアップ」

垣根「お前遊びでも手堅いよな」
878 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 03:27:31.35 ID:9WjwSuCV0

誉望「結構みかんが減ったな。追加っと」ヒョイドサッ

垣根「そんなに手は黄色くならねえな」

心理定規「もっと食べればなるんじゃない。私はそろそろ止めておこうかな」

弓箭「見てください!皮がうさぎの形に剥けました」

誉望「すげえなんだこの躍動感。みかんアートか」

垣根「よーし。見てろ」

誉望「結構難しいっスね」

心理定規「わ…爪の間に入りそう。がんばってー」

垣根「誉望」

誉望「はい」

垣根「トイレ」

誉望「念のために確認しますがこっちに持って来るんスか、押して運ぶんスか」

垣根「面倒くせえな、代わりにいってこいよ」

誉望「……はいっス」

心理定規「おかえり。どうだった?」

誉望「俺はすっきりしました」

垣根「あっそ。遅えよ」スッ

誉望「……垣根さん、あれ言ってみたかったんスかね」

心理定規「男の子ってああ言うジョーク好きよね」ハァ


弓箭「あら、ちょうどそこに空のペットボトルがありますわ」

心理定規「ああ……男の子は楽で良いわよね。長時間の見張りとか大変なのよ」

弓箭「そうですよね! 車の中ならまだいいんですが。屋外のポイントで張ってる時は色々困ります」

心理定規「そうそう。日中は日に焼けそうだし」

誉望「ボケてるのかマジなのか判断に困る反応は止めてくれないか。何スか諜報活動あるある女子トークっスか?」

心理定規「もちろん冗談だけど、任務中でも止めてね?」

誉望「言われなくても。緊急事態でもそんな惨事は避けます」

垣根「あー。寒かった」ゴソ

誉望「暖房ガンガンで全面床暖、おまけにトイレの便座まであったかなんスけどね。なんか寒いんスよね」

心理定規「気分の問題なのかな。出たくないわね」

垣根「いや。やっぱここが一番あったけえ」フー

弓箭「ねむたくなってきますね」


弓箭「あの……みかんだけだとお腹空きませんか」

心理定規「もうそんな時間? 誉望君」

誉望「うえー? 今日はコンビニが遠いっスー外は寒いっスよー?」

垣根「デリバリーでいいだろ」

誉望「弁当でいっスか。注文とりまーす」
879 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 03:29:30.39 ID:9WjwSuCV0
弓箭「ああああああああの」

心理定規「何?」

誉望「どした」

弓箭「座ってる今もとってもあったかいんですが、もう少し中に入るとどうなるんでしょうか」

誉望「弓箭……そこに気付いてしまったか」

弓箭「なっ何がです?」

誉望「それこそがコタツ最大の恐怖! じわじわと飲み込まれていき、最終的には首まで入って抜けられなくなる……!」

弓箭「えええええっ!」

心理定規「ほら。見て」

弓箭「え?」

心理定規「彼……もう胸のあたりまで見えなくなってるわ」

誉望「いつの間に」

弓箭「あああああああ垣根さんがこたつに捕らわれて?!」

誉望「ああなったら時間の問題だ。垣根さん、大丈夫っスか」

垣根「……みかん」

心理定規「もう考える力も無いのよ」

弓箭「そんな……」

心理定規「でもね、大丈夫。すごく気持ちいいから」ズルズル

誉望「ああ、心理定規までコタツの魔の手に」

弓箭「誉望さん……わたくしたちどうしたら」

誉望「……弓箭」

弓箭「はい」

誉望「残念だが……おそらく、このコタツに四人全員がおさまりきる余裕は無い!」

弓箭「そうはさせませんわ! 抜け駆けはずるいです!!」ガッ

誉望「ぐえっ」ゴン

弓箭「せめて順番にしましょう! わたくしも寝転がりたいです!」

誉望「痛っ、ちょ、わかった! わかりましたから引っ張るな」ガン

心理定規「ふわぁ…さわがしいわね」

垣根「んー……メシきたら起こして」



電話の男『お前たち、新しい暖房器具はどうだ。ずいぶんと満喫してるようだな』

垣根「たまにはやるじゃねえか」

弓箭「あったかいです」

電話の男『場の調和を保つことで組織としての和を高める目論見らしいんだが、それなりに効果はあったのか。さて。仕事の話だが――』

垣根「誉望」

心理定規「よろしくね」

弓箭「お願いしまーす」

誉望「えーここにいても済むやつっスか? んな訳ないですよね。無理っス」

電話の男『見事にグダグダだなお前たち。そのコタツは早急に撤去させる』

垣根「あ?」

心理定規「いやよ」

弓箭「わたくしたちからこの癒しを奪おうだなんて、許しませんわ」

誉望「よろしい。ならば戦争だ」
880 :年末のアレとアイドル垣根 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 03:47:02.67 ID:9WjwSuCV0

電話のP『お前ら、ちゃんと仕事しろ』

垣根「何言ってんだ? 今から下らねえ会議するって呼んだんだろうが」

誉望「垣根さんのアイドル活動の話っスよね」

心理定規「いつの話をしてるの?」

電話のP『……まあいい。各自端末を確認しろ。見てわかるだろうが、前回のイベントの反応も悪くなかった。CDの売り上げ、関連商品の売り上げも予算を無事上回っている。が、このところ集客やファンの応援数値の伸びが悪い』

誉望「それで戦略会議スか。人気も安定してきたってことなんスけど」

垣根「『絶対偶像進化』の推進にはまだまだ足りねえだろうな」

電話のP『そこで新しいファン層を獲得したい。改めて、それも大きく注目される必要があるからな。まずは垣根と言うアイドル像を分析、改善していく。そこで以前動画の視聴者に行った「簡単なアンケート」の結果を参考資料として送信する』

弓箭「『アイドル能力者・垣根のここがよかった』、回答数トップは『かっこいい、イケメン』などですか。つまり既存のファンの方々を含め『垣根さんがかっこいいアイドルである』と言うことはみなさんに十分に知れ渡っているんですね」

電話のP『次に多かったのが「パフォーマンス」と「羽・能力」に関する評価だ。この二つは重なった回答が多かったからまとめてある』

垣根「ああ?」

電話のP『好きに書いてもらうアンケートだったからな。そこから大きく分類しただけだ。作為的な選択肢も誘導もない、純粋なファンの声だぞ』

心理定規「音声だけでも表情の想像がつきそうなにやけ具合ね」

垣根「……」

誉望「あっあー、あの『ステージの盛り上がりで羽がみれるとうれしい』、『サービスショットごちです』、『羽の雨をふわふわ降らせてキャッチしたい』なんてコメがありますよ。セオリーのある演出がファンはうれしいんスね!? お約束がぐっとハマると一体感がっスね」ガタガタ

心理定規「確かに。アイドルとファンとの符牒、小さなコミュニティ内の共通認識は結束や好感に影響するわ。あなたとあの翼の印象が特に強いのかも」

弓箭「それにあの演出は垣根さんにしかできませんものね。迫力も華もございますもの」

電話のP『何だお前、気分で生やす癖にまだネタにされるのは抵抗があるのかw』

垣根「そう言うのが最高にムカつくんだよ!」

弓箭「そう言えばせっかく撮影したコマーシャル用のプロモーション映像が、きゅうきょ店頭のみの放映になったって聞きましたが何かトラブルでも?」

心理定規「しっ。ランドセルの話は彼の前では禁句よ」

誉望「んぶふっw」

垣根「……」バサッ

誉望「っあうあああ! すんませっ?!」ガターン

弓箭「ああ……それで。そしてああなるんですね」


心理定規「ええと、新規のファン層を獲得するための今後の活動だったわね? 意外性のある新しいこと…なにかあるかしら」

垣根「物珍しさで一旦目を引いてもたかがしれてんじゃねえのか?」

電話のP『それを惹きつけておくだけの実力は充分にある、と踏んでいるからこうした話が出ているんだぞ。出来もしない冒険をさせる意味はない』

垣根「……まあな」

誉望「Pがやけに持ち上げてるな……今日の公式からの一枚は、『会議中もドヤ顔』っと」ピロン

弓箭「垣根さんは相変わらず……お写真でも輝いていますのね」フフフウフフフフフフ

誉望「物理的にもな」

心理定規「今までの彼の活躍は……出来はともかくファンからの評価は高かった。でも、それだけじゃダメ。そう言う話なのよね」

誉望「今までは俺様路線だったじゃないスか。ここで、雨の日に子猫に親切にする不良効果を狙うのはどうスか? ギャップ萌えは女子にもうけますよね」

弓箭「垣根さんのファンの方は、むしろ突き離されると喜ぶ傾向にありませんか? あまり親しくされても、そちらには逆効果なのでは」

誉望「何でお前が知ってんだよ。垣根さんの分までエゴサしてんの? なんなのプロなの?」

垣根「俺らしさってなんだ」

881 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 03:57:13.39 ID:9WjwSuCV0
心理定規「第一位は俺サマ路線だっけ」

誉望「第三位はファン媚び……っつうか徹底したキャラ作りが大成功したパターンだな」

心理定規「第五位はバックダンサーを侍らせる独自の女王様路線だったかしら? この前そんな演出があったんだっけ」

垣根「あれは単に本人が踊れないだけじゃねえの」

弓箭「ええええええーと、垣根さんは……若干第一位とはキャラが被りますよね」

垣根「あ?」

誉望「バっこの、いやーでもな、もう垣根さんのプロ意識の高さってば半端ないっスよね?! それこそ超能力者の中でも一番っつうか飛び抜けてるっつうか」

垣根「誰が飛んでんだって?」

誉望「すんませんー! そこかー!?」ズザー

電話のP『お笑い路線。これこそが我々の起死回生の一手だ。今まで、他のアイドルも正統派でやってきている。ここで意外性と他のアイドルとは隔絶した独自路線を開拓するなら、キャラを生かしたネタの方向にシフトして一気にレベルシフトを狙うことも……』

誉望「このP……今までの会話すべて、いやこの会議自体がこの話題のための布石に過ぎなかったと言うのか?」

弓箭「ネタと仰られましてもプロデューサーさん、垣根さんのその要素についてはまだファンの間でもごく一部の話で、もちろん一般には認知されていませんわよね?」

垣根「え」

電話のP『だからこそだ。ギャップの大きさはそのまま話題に直結する。逆にこの機会を逃すと意外性がなくなってしまうだろう』

心理定規「想定を裏切られるからこそ、人は面白いと感じるらしいけど。どうなの?」

電話のP『各自端末を注目、今から流す映像を確認しろ』

垣根「いや。何言ってんだお前ら……ってなんだこりゃ。第七位の削板じゃねえか」


空っ前絶後のぉぉぉ!! 超絶怒涛の超能力者!!

根性を愛し、根性に愛された漢ぉ!!

忍耐! 努力! 前進っ!
全ての根性の生みの親ぁ!
そうっ俺こそはぁぁぁ!!!

能力はよくわかんねえ! 
気合い入れときゃなんとかなる! 
貯金残高ぁ? 覚えてねえ!!!

キャッシュカードの暗証番号1217!!

財布は今そこに置いてあるぜ! お前ら、今がチャンスだぞ!!

もう一度言うぞ? 『1217(熱いな)』って覚えてくれよな!!!

そうっ全てをさらけ出した俺は

すごーーーーーい… 



 (バウーン)

板ぁぁぁ!!!

イエェェェ〜〜イ!!!


根!性!!(ヅバーン!!!)


弓箭「煙で何も見えなくなりましたわね」

誉望「こいつもセルフ特殊効果の使い手か」

電話のP『これが今ネットを中心に話題になってる。で、お前にもやってもらう』

垣根「はあ?」

誉望「NOとは言わせないアイドル垣根さんにまさかの…強引返し、だと……」

電話のP『お笑い番組での急な仕事だったそうだ。それでもやつは快く引き受けたぞ。もう一度再生する、よく勉強しろ』

垣根「はああ?」

……空前絶後の――
882 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 04:04:36.42 ID:9WjwSuCV0

電話のP『そっちの三人、別ウィンドウの空欄は埋まったか』

心理定規「いきなり何をさせるのよ」

電話のP『こいつに同じことをただやらせても面白くないだろう。らしさは必要だ』

誉望「で、俺たちでコピペ改変スか。えっと俺はわかりやすく垣根さんの売りを前面に押し出しました」

電話のP『では誉望の案から転送する。読み上げろ』


垣根「『空前絶後の、超絶怒涛のカッコイー能力者』」

垣根「『己を愛し、天に愛された男』」

垣根「『俺様、決め顔、『未元物質』」

垣根「『全てのカッコイーの生みの親』……自分で言ってどうすんだよ」



心理定規「こんな感じでどう?」

電話のP『次が心理定規か』


垣根「『空前絶後の、超絶怒涛のセクシー能力者』」

垣根「『セクシーを愛し、セクシーに愛された男』」

垣根「『イケメン、高身長、素材の良さが物を言う』」

垣根「『ナチュラルボーンセクシー能力者』おいおい、これって笑えんのか?」



弓箭「ファンのみなさまのイメージを踏まえて考えてみましたわ」

電話のP『最後が……弓箭…お前、よくわかってるじゃないか』


垣根「『空前絶後の、超絶怒涛の能力者』」

垣根「『孤高を愛し、厨二設定に愛された男』」

垣根「『チェーン、翼、暗黒微笑』」

垣根「『全ての『未元物質』の生みの………」



電話のP『まさか弓箭がここまで優秀だったとはww嬉しい誤さnwwwwwwwwwwwwwww』

誉望「ちょっと待てネゴサの申し子! いくらお前が自意識過剰妄想型の中二病だからって垣根さんにそれはないだろ?!」

弓箭「でででででですが垣根さんの人気の一端には、こう言った要素が絡んでいるのも確かではございませんの? わたくしのリサーチは……」

誉望「否定はしない。だけどな? 俺だってほわっとさせてんのに…ストレートにもほどがある。このドKYめ!」

弓箭「誤魔化せばいいと言うものですか? 誉望さんのおためごかし!」

垣根「俺の魅力って……何なんだ」

心理定規「生まれ持った武器も才能の一つよ」
883 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/01/27(金) 04:12:48.81 ID:9WjwSuCV0

電話のP『残念ながら弓箭の案は没になってしまった。今回のネタは一般の新規層にもよくわかる、あるある路線で行こうと思う』

弓箭「そうですわね…みなさんにもわかりやすいものにしなくてはいけませんでしたのね」フゥ

誉望「マニアック以前の問題だ」

心理定規「あなたも、自分探しはほどほどにね」

垣根「ったく。一応まだ話は聞いてやるが、後半はなくていいのか」

電話のP『そっちは特別面白くもないからな。こちらで用意してある』



垣根「『そう、我こそは』」

垣根「『身長180以上、能力名『未元物質』、嫌いな奴は一方通行!』」 

垣根「『携帯の暗証番号11015』」

垣根「『スマホは今、楽屋に置いてあるぞ。テメェら今がチャンスだろうな』」

垣根「『もう一度言うぞコラ 「11015(いいおとこ)」だ覚えとけ!!』」

垣根「『そう。全てをさらけ出した俺は……

メルヘーーン 

垣〜〜〜〜〜  

(バサァ)

根ーーー!!!

イエェェェ〜〜イ!!!

エンジェル!!(ここで決めポーズ)』

……テメェらまとめて死にてえらしいな?」


電話のP『まあ聞け。二匹目のドジョウはまだいい。だがそれに続く便乗の後追いほど、みっともなくなりがちだろう。幸いにして、我々「スクール」は情報が早い。あの動画の反響に注目している連中は多いが、あの一方通行でさえもアップロードはおろか撮影もまだだぞ』

垣根「何だと」

誉望「おおっと。じゃあ心理定規さんに後はお願いしてそろそろ……」

心理定規「彼のフォローならするけど。君には後でがんばってもらうんじゃない?」

弓箭「何故、まるで逃げるようにこそこそしてらっしゃるのかしら? ねえ誉望さん?」ニコォ

誉望「なんだかんだでいつものパターンでトンデモ企画がまとまりそうだからこそ! 今は見逃してくれ!!」
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/30(月) 00:07:27.41 ID:0qObHZEc0
これはひどい(褒め言葉)
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/30(月) 16:35:43.66 ID:YrUn8IJMo
相変わらずこのSSは最高か
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/30(月) 23:01:59.36 ID:vd78hUA/0
ソギーの声優候補にサンシャイン池崎も追加かな?
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/31(火) 03:46:36.38 ID:D9dXj+/j0
途中まではのんびりだらりまったりなスクールいいなぁって感じで和んでたけど
電話の男登場からじわじわ来て全ての未元物質の生みの親で>>1に完全敗北してしまった
サンシャイン池崎と並べると第二位未元物質(ダークマター)の垣根って表記が芸名にしか見えねぇ
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/14(火) 17:39:07.75 ID:Fa/EvOvZ0
レベル5さえも抗えないなんて実は炬燵って魔術なんじゃね?
きっと人間を全て炬燵に取り込んで学園都市の機能を麻痺させようというローマ正教あたりの策略……おのれ魔術師!
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/16(木) 10:14:47.37 ID:T/lTzwgKo
一方ローマでは神の右席がおこたで堕天していた
890 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/02/16(木) 23:59:34.70 ID:d1YgaggJ0
ドォーモーすみまっせーん保守しにきたんすけどぉー?cv平松


>>884
いつもだいたい大惨事ですねドーモ

>>885
ドーモありがとうございます

>>886
あんまりすごくなさそうなソギーw
アニメみてえなあ……爆風と瞬間移動で野菜人みたいになる削板みてえなあ

>>887
やったぜ
お笑い枠(ボソッ

>>888
脳と神経に作用する学園都市の最新科学技術も使われているのかも!!
遡ると民明書房の資料には炬燵が神道の流れを汲んだ拘束・弛緩に適した日本独自の魔術装置であることが書いてあるんだよ。『オコタデミカーン』や『スイアノクフーシ』、近代になって作られた強力な呪文についても研究が進められてるかも?
891 :今日のほっしゅは2本になったよー ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/02/17(金) 00:30:58.63 ID:7Rxtqs3W0
とある偶像さまの一日

『スクール』所属アイドルの朝は早い。
まだ寝ているうちからマネージャーの心理定規が今日のスケジュールを知らせる通知をよこす。
無視して華麗に二度寝を決め、現場入りが押してしまうなんてこともある。
そんな時はムカついたので、と理由をつけて控え室で既に待機していた誉望に蹴りを入れる。

おかしな仕事を取ってくるのはいつもプロデューサーだ。
断りきることは稀で、文句を交えて打ち合わせをするうちに何となくその気になって一仕事してしまう。
垣根の気分を乗せてしまうその懐柔策にはいつも驚かされる。
超能力者アイドルの苦労の成果をマネージャーやスタッフと確認。
必死になって笑いをこらえる誉望に無言で『未元物質』をお見舞いする。

とある取材で第一位の話題が出た。
いつか垣根さんも一緒にタイアップ企画をお願いしたい、と振られる。
垣根帝督・第二位は独自のブランドだ。抱きあわせてセット扱いなど冗談じゃない。
ふざけた野郎だがこれも仕事だ、と笑顔でやり過ごす。

うんざりしているところに心理定規が声をかけてくる。
マネージャーとしてフォローしにきたらしい。
垣根がいかに素晴らしいアイドルか、当たり前の賛辞をひとしきり聞かされる。
おいおい照れるだろもうその辺で止せよ、と垣根が制止すると、心理定規はあっさり向こうに行ってしまった。
ムカついたので誉望が座る直前で椅子をひっこ抜く。
転ぶ前に能力でふんばる空気イス誉望。
ちょっと面白いからと奴はそのまま放置されていた。

夜。
垣根が自室に戻る頃、仕事ざんまいだった一日の労を労う弓箭からの長文メールが届く。
どれだけスクロールしても終わりが見えないので放置していると今度はSNSの方にメッセージが来たらしい。
垣根さんから既読がつかないと騒ぐ弓箭に、今度は誉望が噛みつき二人のスタンプ合戦がはじまったようだ。
ちゃんと確認はしていないがグループの新着通知があまりにうるさいのでスマホをミュートにして就寝。
明日も仕事で早いのだ、『スクール』アイドルの一日は長い。



炬燵の変inローマ

右「なんだこれは。何故こんなところに小規模な和室が出来上がっているんだ」
後「ローラ・スチュアートがローマ正教に『コタツ』を寄越したのである。それを使うためにこうして『場』を整えてあるのである」
左「大元も恐らくは学園都市からの賄賂でしょう。それを我々に回してくるとはアレもいい面の皮ですねー」
右「ふん。誰か試してみろ」
左「嫌ですよー。何か細工がしてあったらどうするんですかー?」
後「なら、私が」スッ
前「おい、アックア」
後「……」
右「……どうした」
後「これは……暖かいな」
右「ふん」
左「ほう……」
右「悪くはないな。ヴェント、そんなところに突っ立ってないで貴様もあたれ」
前「嫌ね。私は科学が嫌いなんだ」
後「ならばこれがある。これは火鉢と言って炭に火を起こし部屋を暖める古くからの暖房器具らしい」
右「いつまでも見苦しいぞ。そら、そこに座っていろ」
後「こうして網を置き、この上でモチ……ライスケーキも焼けるらしいのである」
右「日本人と言うのは本当に多機能が好きな連中だな」
左「では私は神の血をいただきながら……神の肉をここで火炙りにしましょうかー」ワーイ
後「テッラ、冗談が過ぎるのである」
右「貴様は本当に小麦が好きだな」
左「嗜好品ではないんですがねー」グビグビ

右「ああほら、焦げるぞ。早くモチを裏返せ」
後「ではフィアンマに任せるのである。日本では古来から、モチは清貧な者に焼かせると良いと言う格言があるらしい」
右「ふふん。火に対応した俺様が直々に焼いてやろう。こんがりとな」
前「アンタ随分似合わないモン着てるわねぇ、それはナニよ?」
後「半纏と言う日本の防寒着だ。綿が詰めてあって暖かいぞ。お前の分もある」
前「私はやっぱり黄色なのねぇ…」
右「見ろ……俺様の聖なる右でモチが素晴らしく膨れてきたな。そら、焼けたものから救ってやる。これはどうやって食べるんだ」
後「日本では黄粉、餡、醤油……海苔や味噌などと食べるのが一般的らしいが」
左「豆の好きな猿ですねえ」グビグビ
右「豆を甘く煮るなどと…正気の沙汰とは思えんな。チェーチはどうだろうな?」
左「合うんですかねー?」モグモグ
前「あらぁ、ずいぶん伸びるのね。こんなのに甘いモノがあうの?」
後「チョコレートもあるのである」
右「うっ…」
左「これ小麦粉で出来ませんかねー」モッチモチ

右「こうも長いこと入っていると流石にうだりそうだ。テッラ、テッラ。俺様は冷たいものを所望する。ジェラートでも持ってこい」
後「テッラはさっき喉にモチをつめて神の国を見に行きそうになったばかりであろう。私がやる」
左「優先…する。フィアンマを下位に…コタツを、上位に……」グー
前「科学、は……」ウトウト


>>889
堕ちた!573コマンドじゃないよ右席さんだよ
ヴァレンタインがまた今度
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/17(金) 03:11:05.70 ID:sMOkMu8L0
重い女、ラッコ。
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/17(金) 11:51:35.19 ID:M6/IoyvHo
うえうえしたしたひだりみぎひだりみぎ
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 03:29:00.08 ID:3Ex+8MtQ0
よぼうくんのいちにち
蹴られる、未元物質、空気椅子放置、スタンプ合戦
……充実してるね!
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 02:38:59.37 ID:X4RSBn+zO
くそ、つい油断してスレの最初の方を視界に入れてしまったせいで時間が消し飛んだぜ
おのれ魔術s……>>1

読み返してて思ったけど垣根ちょいちょいアプリとかやってるよね
ゴーグル君の影響もあるんだろうなぁとか思うとちょっとニヤニヤする
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/21(火) 14:59:17.64 ID:EX2b30o90
餅焼いてる右方さんがアホですき
897 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/02/23(木) 01:45:10.05 ID:Gm817oA60
イベントデッキ10枚固定って頂点もしけてきたな。自属性じゃないURをそうそう持ってますかっての。
BP3とバトシ別だしなーんなことより引き換えUR垣根はよ残りのメンバーのカードもはよ
技誉望、思心理定規、力弓箭で
馬場でさえHRにいるんだから早くな

>>892
らっこさんもいい子なんです。人よりちょっと情熱が有り余ってるだけなんですきっと

>>893
BA

>>894
リーダー待ちの合間にゲーム、ゲーム、(ゴーグルで)アニメ、ゲーム、アニメ…が抜けてるぜ
いやー充実してるね


>>895
ドーモドモ。リピートセンキュー
おのれ魔…え>>1のせい? 全ては……>>1のせい
序盤のゴーグル君はガチオタじゃなかったのに…
…どうして、ここまでひどいオタク(能力とゴーグル駆使して複数ゲーム周回)になっちゃったのかな
>>1は誉望万化氏に申し訳ない気持ちになります。
ゴーグル君は元気ですきっと

>>896
紙の右席に祝福されし聖なる餅
テッラは萌えキャラ。異端は認める、異論も認める
898 :ぼっちだけどチョコつくるよ!  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/02/23(木) 01:53:48.23 ID:Gm817oA60

二月某日、『学舎の園』内、枝垂桜学園

弓箭「(今回、調理の実習は一般的なバレンタイン文化に親しむための特別授業と聞きましたが。一体なにをするんでしょうか)」

教師「本日、皆さんにはチョコレート菓子を実際に作っていただきます。今回は特別講師として、パティシエのシゲハル・アカギ氏と映像での中継がつながっています」

教師「『チョコレート界に降り立った天才』の異名で有名なアカギ氏は弱冠十三歳のころから豊饒な才気と頭角をあらわし……」

弓箭「(そんなに有名な方から教えていただけるんですね)」

女子生徒「この中から作るものを選ぶんですのね。どちらになさいます?」

女子生徒「そうですわ、出来上がったら交換しましょうか! でしたら、わたくしは……」

弓箭「(どうせお菓子を作るなら、わたくしもどなたかに…)」

弓箭「(どなたに差し上げたら?)」

弓箭「(いっいえ、わたくしのチョコレートをめぐって、もしもクラスのみなさんに争いを生んだら大変ですわね! ここは、お世話になっている『スクール』のみなさんに……ごめんなさいわたくしこちらを差し上げる方が既に決まって、いいえあの特別な方と言うわけではないんですのよ? お知り合いの殿方に日頃の感謝を……)」ブツブツウフフ

アカギ『この勝負、気持ちも倍プッシュだ!』

教師「はい、それでは皆さん作るメニューにあわせて席を移動してください。ここからはそれぞれの作業工程を解説動画で確認してもらいます」


弓箭「ケーキもおいしそうでしたけどうまくできるか、公平にみなさんチョコレートにしましょう」

弓箭「心理定規さんには……そうですね。可愛い型と、食べられるお花がありますからこちらを使って」

弓箭「飾りも沢山ありますわね。金箔、銀箔……垣根さんのはシンプルなものにしてデザインで変化をつけましょう」

弓箭「誉望さんは……ええと? ううーん?」

弓箭「あら。これは何に使うんでしょう?」

女子生徒「そちらは食用の色粉だそうです。チョコレートに混ぜると色が着くそうですわ」

弓箭「ああああああああっ? あり、ありがとうございます!!」

弓箭「そんなものまであるんですね……あら、あちらにも道具がありますね」


弓箭「ここにチョコレートと粉がございますでしょう?」

弓箭「これをこうして……」

弓箭「あっ」

弓箭「……」アワワワ

弓箭「ま、混ぜれば何とかなりますわ」

弓箭「ええと、溶かしたものを一度冷ますんですか……加熱モードから冷却にして、適温を入力すれば」

弓箭「(順調、順調です! わたくし、こんなに上手く出来てしまってよろしいんでしょうか! しかし手作りの本命チョコをお作りになる方はこのように大変な思いをしてらっしゃるんですね……はっ! もももももももしかして、まるで本命のようなチョコレートを渡したら、誤解を招いてしまうでしょうか。これを召し上がったら皆さんわたくしのことをつい意識してしまうのでは。そっそこから深い仲に……? いっいけませんわそんな……わたくしに急なモテ期だなんて、ハーレム展開と言うやつですか? どどどどどっどうしたら、困ってしまいます!!)」

女子A「まあご覧になって。弓箭さんのチョコレートの見事なこと」

女子B「弓箭さんも嬉しそうですわね」

女子C「……もしや、弓箭さんはどなたか意中の方が?」

女子D「いつも以上に張り切ってらっしゃいますものね」

女子A「そんな! いいえ。いけませんわ、そんなことを詮索しては失礼ですわ」

女子B「そっそうですわね!」

女子D「バレンタインと言うのは殿方にチョコレートを渡す行事でしたよね? 皆さんは、渡す方が決まってるんですの?」

女子C「それは……」

女子B「うふふふ」

女子A「オホホホホ……」

899 :遅くなったけどバレンタインのやつだよ!  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/02/23(木) 02:03:15.51 ID:Gm817oA60
後日、『スクール』のアジト

弓箭「先日授業で作ったものです。少し早いですが、バレンタインにどうぞ」

心理定規「すごいわね、可愛い。ありがと」

垣根「ふーん。お前作ったのか」

誉望「これ食えるのか」

弓箭「誉望さん。味が落ちてしまいますから、いつまでもとっておかないでちゃんと食べてくださいね?」

誉望「いや。食べても大丈夫なやつ? 何かそっちの二人のは店にあってもおかしくないクオリティなのに、俺のはブロックのおもちゃに見えるんですが」

垣根「見た目も色もプラスチックだな。それ」

弓箭「うふふふふ。驚かれたかもしれませんが、チョコレートで出来てますから召し上がっても平気ですよ。あ! あああああああの、もしこちらを召し上がられてわたくしのことがその……わたくしはそのような、ええと…………いえ。みなさんのお気持ちにまでこちらから口出しするのは、失礼でしたね。どうぞ召し上がって下さい」

誉望「正直に言え。何か入ってるのか? チョコにあってはならない不純物が入る……つまり……恐れがっ! わき上がる……圧倒的、不信っ」

弓箭「なんなんですかいきなり」

誉望「ネガ重い系のキャラは手作りで余計な『オマジナイ』に走るのがあんだよ! いいか、黒魔術はあてにならないしネットで売ってる怪しい物じゃ、恋人も友達も作れないんだぞ」

弓箭「わたくしああ言う胡散臭いものは信じてませんから。瓶に入った妖精さんは、お友達になってもくれませんでしたもの」

誉望「え。なんかごめんなさい」

心理定規「お喋りしてる所悪いけど、彼、早速食べてるわよ」

誉望「垣根さん…平気スか」

垣根「あ? 普通に食える」

弓箭「よかったです。プロの方に作り方を教わったんですよ」

心理定規「他にもずいぶんあるけど。こんなに沢山いいの?」

弓箭「ええ……クラスの皆さんと交換してもいいように頑張って作ったんですが……」ウフフ

垣根「その辺に置いとけば下部組織の奴らが食うんじゃねえの」

心理定規「……あ」

弓箭「心理定規さん? どうかなさいました?」

誉望「止めろ弓箭。いいか……本当に恐ろしいのは何も無いバレンタインじゃない、義理のあるホワイトデーだ。男にはお返しと言う超難関クエストが待ち受けてる」

弓箭「どう言うことでしょう?」

誉望「いくらお前でも三倍返しの伝説は聞いたことがあるな。そこで質問、下っ端入れた『スクール』の関係者の人数は?」

弓箭「お返しがたくさんですか?」

誉望「そうだな。そうなると、Xデー近くになったら…正規構成員でもハードルの低い俺のスマホは心理定規さんへの質問で通知が止まらなくなるかもしれない。俺も三次元はサポート適応外だが一つだけ言えるのは、女子に食べ物はやめておいた方がいい。やるなら量より質にしろ」

弓箭「なるほど。一つずついただいても大勢では沢山になってしまいますね。そんなに召し上がれませんし、いただいたものを悪くするのも失礼ですわ」

誉望「何だよ、食うよ。後でちゃんと食べる」

心理定規「私、プレゼントは普段から色々もらうけど女の子にチョコのお返しするのは初めてかもしれないわ」

垣根「ふーん。この時期はチョコ山ほど配ってんじゃないのか」

心理定規「そんなことわざわざしないわよ。貰う方も準備する方も面倒でしょ? そう言うのは期待値も低いし、ローコストハイリターンの方が好きよ」

誉望「心理定規クラスになると、有象無象のお返しは数に入らないのか……」

弓箭「心理定規さんのはじめてのホワイトデーがわたくしに? なんて光栄なんでしょう」

誉望「お前って、実はものすごく前向きだな」

弓箭「そそそそそんなに褒めてもっ……バレンタインは」

誉望「あ。そうだよバレンタイン! 早く来ないかなあ〜」

心理定規「どうかしたの?」

誉望「日時指定でプレゼントがっスね! いやー学園都市の科学力もすごいっスねーとうとう次元の壁を超えて三次元のチョコがメクちゃんからもらえる日がくるとは……」

弓箭「アニメの女の子が贈り物をくれるはずはございませんのに……大丈夫でしょうか」

心理定規「そうね。きっと届いた荷物の伝票をよく見たら現実に帰ってくるわ」
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/24(金) 23:11:41.20 ID:Cbx1CU2z0
ラッコちゃんがつくったチョコほしい、お近づきになりたい
ていうかラッコちゃんもゴーグル君も充分リアル充実してるよお
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 01:20:54.85 ID:T6QuT6vro
俺、チョコを二つも貰ったぜ・・・母親と妹から
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 05:26:32.87 ID:Flv1bVZK0
アカギ+ネガ重らっこちゃん=血ョコレート
結局プラスチックチョコはまともな味なのかどうか

……あれ、ひょっとしてこの話って一年前にぼっちが言ってた調理実習…?
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 07:57:10.60 ID:TuQVTpSFO
このスレにらっこちゃんが来てからもうとっくに一年たってたんだな
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 23:01:52.14 ID:D2RmfCPlo
一応保守。好きだから続いて欲しい。
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/12(水) 22:15:42.57 ID:ht96zM2ko
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/27(木) 17:27:40.38 ID:pRw8e/4m0
>>1 死んだ?
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 04:46:35.40 ID:pVknYtiuo
年度初めで忙しいだけさ。きっとそうさ
908 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・昼」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 02:16:48.66 ID:TfGP8KVe0

ドタバタの超能力者ミーティングを終えて、自分の授業に戻っていた美琴。
彼女は教室を移動している途中で見覚えのある姿を見つけて手を振った。

「あーっ! かき」

『……かき?』

美琴に駆け寄られてふり返った生徒は首を傾げる。
不思議そうな。
なんの話を振られたのかさえ、さっぱり思いつかない。
そんな態度で美琴の言葉が続くのを待っている。
何故か、とってもにこにこしながら。

それに一瞬はっとした顔をした美琴は慌てだした。
目をぱちぱちさせた様子は、罰ゲームつきのクイズをあてられたときみたいだった。
きっとそんなものがあるならとびきり難しくて、間違えるとうんとひどい目に合うやつだ。

「えーっと、かき、かき……柿は、確かアジア、アフリカを中心にだいたい五〇〇種類が分布してるのよ。国内だと甘柿、渋柿合わせて四〇〇から六〇〇くらいの品種が栽培されているらしいわ。もちろん食用だけじゃなくって木材としても利用されてるわよね。乾燥させると反発性に優れるし、昔は茶器や茶室にも使われてたって言うから日本ではなじみ深い植物よね! あとほら、あの村でよく柿渋を使ってるじゃない。ね、そうなんだって! あ、レポート! レポート書いてるのよね? 役に立つかしら? ねえ!」

何の授業の課題なのか意味不明だが、最初に言いかけたのは植物の柿のうんちくだと言うことにしたいらしい美琴。
そんなゴリ押しを亘木はにこにこしたままじっと聞いていた。

『……どうでしょうね。ありがとうございます御坂美琴さん』

「あは、あはは……ねえ、アンタも次音楽なの?」

『恐らく行先が同じなので、そうでしょうね』

「あははーそうねー」

『……どんな課題に取り組んでるんだか』

「うっうるさ……いいでしょ!」

傍目にはお上品に笑いあいながら二人は音楽室に入った。
校内に幾つもある中で特に広く、コンサートホールのような中で授業が行われる。
先に来た生徒たちで既に前の方の席は埋まっていた。

「御坂さま、亘木さんをご存じで?」

「ええっと……まあ」

お喋りしているところを同級生に挨拶される。
あいまいに笑い返しながら美琴は亘木の近くの席に座った。
食蜂たちがしていることに関係はないだろうが、わけあり部分を知っていると放ってもおけなくなる。

『ああ。先ほど図書室でお見かけして、課題についてお聞きしたら親切にしていただいたんですよ……ねえ?』

「あはは、ははは……そうねー」

美琴のテキトーなでまかせに乗っかった嘘をしれっと吐く。
何故敬語なのかはわからないが、亘木もこの状況で動じないのは流石中身が違うだけのことはある。
美琴にも今はただの女子にしか見えていない……はずなのだが笑顔がやけに怖く感じた。

選択制の音楽の授業は複数のクラスの生徒たちが集まっていた。
教師は実技の自由演奏に指名する生徒を誰にするかさっきから悩んでいる。
そんな時、行儀よく座っていた生徒たちの間から手があがった。

「はい」

「はい、何かございますか」

「ええ。先生、ここは亘木さんに弾いて頂いたらいかがでしょうか。転入された方の演奏もお聞きしたいですわ」

「ええっ」

恐らく、亘木と同じクラスの生徒はにこにこしてそう言った。
きっと輪の中に入れて交流を…なんてお優しいことを考えているんだろう発言。
それについ大声でリアクションをしてしまった美琴に生徒たちの目が一斉に集まった。
本人以上に驚いてどうするんだ、と彼女が気付いた時にはもう遅い。
教師も、静かな室内でいきなり声を出した美琴を不思議そうにみていた。

「御坂さん。どうかなさいましたか」

何か、と聞かれて美琴は眉を寄せた。
常盤台にいれば楽器の一つ二つ弾けて当たり前だ。
だが、「学舎の園」の外に友だちのいる美琴はよくわかっている。
ここの当たり前が普通じゃないこと。
その辺の高校生は外国語で日常会話どころか簡単な古文の問題に四苦八苦するし、その辺の女子中学生に持たせてもヴァイオリンは弾きこなせない。
おせっかいな彼女には、今日会ったばかりの相手でもそんな無茶を押し付ける気はなかったし。
目立ったりおかしなことでボロが出て。
そこから何かひどいトラブルが引き起こされるかもしれないと言う、妙な当事者意識もちょっぴり働いていた。
909 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・昼」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 02:20:33.23 ID:TfGP8KVe0

「彼…女は転入してきた人でしょ? まだ来たばかりだし、慣れないと色々大変じゃない」

「まあ。心配なさらなくてもこの常盤台に在籍を許される方ですから、きっとさぞや素晴らしい成績をお持ちなんですわ。ねえ皆さま」

別の女子生徒がそう言うと、その近くに座っていた生徒たちもくすくす笑っていた。
こっちは、さっきの発言とは雰囲気が違うのが美琴にもわかる。
露骨な態度で新顔の……もしかすると失敗するところを、期待している。
ああ、こんな奴らもいるのよね、と美琴はむっとしていたが。
渦中の少女は立ち上がった。

『曲は何でもいいんですか? なら、失礼して』

そのままの流れだけなら彼女が弾くことになりそうだったが。
引っ込みがつかなくなった、にしてはなんだか堂々としすぎている。
教師に一言たずねると。
まだ何か言いたそうな美琴をよそに、亘木は席を離れた。
棚を見て、しばらく探して考えてからある曲の譜面を手にしてピアノの前に座った。

リズムを捉えて左右の手が交互に踊る。
軽やかに動いていた左手がピアノのスコアにはない音を追っていることに気付いて美琴は肩の力を抜いた。
どうやら心配はいらなかったらしい。
ゆっくりと落ち着いたリズムで始まった曲は、次第に音の連なりを広げていく。
曲の盛り上がりに向けて一層テンポが増していく。
なめらかな運びだが、細い指先は力強く鍵盤をたたいていた。

盤上を大きく使った六分ほどの演奏はなりゆきを見守っていた生徒たちにほんの文句も囁きも挟ませずに終わった。
鍵盤から手を放した亘木がこれでいいのか、と言いたげに一同を振り返る。

『指がようやく温まりましたが。次はまだ、何か?』

「いえ大変結構でした。ねえ皆様?」

生徒からのまさかの返しに教師は一瞬驚いたがほっとした様子で亘木を下がらせる。
壇上から降りた彼女はやりきったことに満足したのか笑顔を見せた。
その口元は挑戦的にも見える角度で上がっていたが、生徒たちから素直に拍手が送られる。

「(アンタ……ピアノなんて弾けたの)」

『(俺が弾けたら悪いのか? あ?)』

戻ってきたところにひそひそ声をかけると亘木はさっきまでの澄ました顔が嘘のようなリアクションをした。
顔を斜めに向けて睨んでくる仕草が完全に柄の悪い男のそれだった。

「(その顔と声で凄むのやめてよ。せっかく私にもかわいく見えてるんだからね)」

流石に少しは緊張したのだろうか。
亘木はふーっと息を吐くと耳元の髪を弄りながら口の中でぶつぶつ言っていた。

「(いきなりあんなとこに担ぎ出されたから心配してやったんでしょーが。『パッヘルベルのカノン』かあ。あ、確かウィンストン版のスコアもあったわよ。長いしそっちにすればよかったのに。でも即興でアレンジしてくるとは…アンタやるわね)」

『(……ああ。あれ、元は弦楽の四重奏だろ。譜面通りじゃ単調すぎだ)』

一瞬、は? と言う顔をして目を丸くした亘木だが褒められて気をよくしたのかニヤリと笑ってつけたした。
910 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・昼」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 02:27:24.07 ID:TfGP8KVe0

[急にクラシックをかけて欲しいなんて言うからびっくりしちゃった]

『(ちょっとな)』

授業を終えて廊下を歩く亘木――いや、垣根は首元のスイッチで自分の声を消しながら返事をしていた。
イヤーピースから聞こえる本日の後方支援(話し相手)は心理定規だった。

さっきの音楽の時間。
垣根は楽譜を探しながら手本代わりになりそうな曲を流すよう心理定規に指示していた。
あの演奏のタネは、知っている曲を実際に聴きながらカラオケで歌うようなものだった。
ピアノなら垣根も触ったことくらいあった。
前に聞いたことのある曲を……なるべく構成がシンプルでわかりやすそうなものを選んだつもりだったが。
美琴のリアクションからすると、実際はそうでもなかったらしい。
おまけに原曲とピアノでは…当然だろうが同じ演奏ではない。
そこはちょっとした誤算だったが、曲の雰囲気をつかむだけの間でも演奏を聴いたのは役に立った。

垣根は譜面とそれにあわせた指の動きをその場で確認し、後はひたすら速度とタイミングを合わせてハンマーを叩き音符を取りこぼさないように追っていっただけだ。
知り合いの、バカで間抜けでオタクで音痴な構成員がシューティングじみたゴリ押しで音ゲーをやる時の手法に似ていると言えば近い。
なんだか両手の運指もめちゃくちゃで、あっちこっち無駄の多い演奏だったな、と振り返ってみれば思う。
あと。
美琴はアレンジ、と言ったがあれは耳元の曲と頭の中での音符の処理に困って逃がしただけのものだった。

楽譜にあわせてただ音を鳴らしたものは、演奏と言うにはレベルは低いだろう。
それでも、いちなり指名されて予行練習もなしに披露するにはじゅうぶんな出来だったはずだ。
危ないところもあったがひどいミスはなかったし、授業中にそれをつつかれはしなかった。
あの場をうまく切り抜けることが出来たのだから垣根もそんな風に思いたいところだ。
まあ、わざわざ指摘してご親切に指導するタイプの教員でなくてラッキーだったのかもしれない。

[少し意外だったわ。音楽のセンスもあったの? あなたも器用よね]

録音して貰えばよかったかしら、なんてからかって心理定規が笑う。
うるせえ、と返して垣根はこの後の予定に考えを向けた。
とりあえず腹ごしらえして……昼休みの後にもいくつか授業がある。
食蜂の根回しがあるとは言っても、こうして生徒として潜り込んでいる以上はそれらしく振舞うのが得策だろう。
生徒たちが学生生活を送っている間にあれこれ調べるのが目的なら生徒になる必要はなかった。
他の役割に垣根をあてはめればもっと自由に動けただろう、それをこんな格好まで……。
何とか納得させる言い分を頭の中で組み立てながら、常盤台二年の女子は自分のプライドと戦っていた。

「貴女」

「ちょっと、そこの貴女」

何だか背後から女子の声がしているが垣根は無視していた。
何しろここは石を投げればお嬢様に当たる常盤台、女だらけのこの場所で呼ばれているのが亘木とは限らない。
段々イラつき始めている声の主も知らない相手だろう。まあ昨日ここに足を踏み入れたばかりの亘木には知り合いの方が圧倒的に少ない。

「ちょっと! もう、貴女よ。二年に転入してきた…亘木さんでしたかしら」

名前を呼ばれてやっと振り返る。
後ろにいたのは予想外に、女子の一団だった。その中の一人、大声をだしてちょっと肩を震わせている女生徒はフン、と亘木をみつめた。

「貴女、能力は」

はあー、とため息。
いきなり何言ってんだコイツ、と吐き捨てたいのを我慢して亘木は首を傾げる。小さなムカつきを覆い隠す笑顔も忘れないよう気を付ける。

『なんでしょう。急にどうしてそんなことを?』

「いえ。新しく我が校にいらしたのがどんな方か、お聞きしてるだけですわ大したことではございませんわよね」

まあ、常盤台にいるような能力者は皆レベル3以上のはずだ。
一般的には強能力者はそれなりの実力者になるらしい。自慢してもおかしくないだろう。
お嬢様と言う生き物がそれをひけらかして歩く習慣があるかは知らないが。
しかしまぁ、亘木の場合は少し事情が違ってくる。
見た目は美少女でも中身は違う。
ありふれたその辺の能力者と違って、自分の能力だってホイホイ教えてやれない。
本当のことを言うとたちまち尻尾をつかまれてしまう。
二度目のうんざりした息と一緒に返事をしようとして。垣根は、ん? と眉を寄せる。

『(あれ。俺のここでの扱いってどうなってんだ』

[さあ……昨日の夜だったかな。誉望君が電話のあの人とキャラシートを作ってみようとか何とか言ってた気はするけど]

ふともれた呟きに心理定規がおかしな返事をする。
こんな時に頼りになるはずのサポーターじゃなかったのか、つっこみを入れる前に素早く質問する。

『(んな意味わかんねえ話じゃねえよ。書類上この女は何の能力ってことで話通してんだ?)』

[でもそこでは、貴方にはなるべく能力は使わせないって話になってるんでしょ? そんなことまでいちいち考えておくのかしら]

一応、偽造の身分でも『書庫』には一時的に登録されている可能性がある。
食蜂が伝え忘れたのか、単にそこまでは考えていなかったのか。
心理定規も知らないのではしょうがない。
ちっ、と短く舌打ち(これも心理定規以外には聞こえていない筈だった)して垣根は後で何とかしろよ、と言い捨てて首元のスイッチを操作する。
911 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・昼」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 02:31:09.57 ID:TfGP8KVe0

『じゃあ、ベクトルに対抗して…スカラー操作』

亘木が思い付きで適当なことを言うと、スピーカーのむこうで心理定規が小さく笑う声が聞こえた。
対する女子生徒たちは怪訝な目をして亘木をみている。

『ダメ? じゃあAIM拡散力場の読み取り』

[任務には便利そうな能力じゃない?]

心理定規は食いついたが、肝心の観客の反応が悪い。

『これならどうですか。時間操作』

[ふふっ。男の子ってアニメの主人公みたいな設定、好きよね]

「ばっバカにしてますの?!」

『もちろん。冗談です』

馬鹿にしているなりに考えてやった返事だが。
ぼくのかんがえたかっこいーちょうのうりょくは常盤台のお嬢様にはいまいちウケなかったらしい。

『……はぁ。「念動能力」でーっす』

めんどうになってしまった亘木はやる気なく答える。
多分、一番無難に。そして何かあっても言いつくろえる範囲の能力がこれだろう。
だが、それは思っていた以上に目の前のキレ気味お嬢様のお気にめしたらしい。
途端に女生徒は大袈裟に両手で手振りしてにっこり笑う。
いちいちアクションが芝居がかって仰々しいのはここの校風なんだろうか。

「貴女、幸運ですわ。こちらの切斑様はレベル4の『念動使い』でらっしゃいますの」

そう言われ、少女たちの間から一歩前に出てきたのはすらっとした女生徒だ。

「ここで冗談が言えるなんて随分と…いえ、骨のありそうな方ね。先の授業の際にも上手くやったと聞いてますわよ」

それでか、と亘木はもう一度声を掛けてきた生徒を見た。
多分、この女はさっきの授業に出ていてそれで目をつけられたと言うわけだ。おかしな新入りに他の生徒の方から接触してくるとは、パフォーマンスも無駄にならなかったのか。

切斑…恐らくはリーダー格、ショートヘアで気の強そうな彼女は亘木の方まで歩いてくると、尊大な態度で亘木の顔と言わずあちこちじろじろ眺めまわした。

「容姿も合格ですわ。そうね……わたくしの派閥に加えてさしあげてもよろしくてよ」

何でわざわざ呼び止めたのか、と言う疑問が解けて亘木はもう一度息を吐いた。
新入りへの警戒した対応から何か……任務に関係ありそうなことがあるのかと思いきや、派閥とやらの勧誘だった。
とんだ外れだったようだ。


『派閥、ですか。残念ながらそんな暇は無いんですよ』

「あら。切斑様に逆らえると思って?」

そう言って切斑一派の生徒がくすくす笑う。
すると。廊下の、近くの教室の。
あたりにあったものがガタガタと一瞬で積み上げられて行く手に壁を作った。
操作した本人は得意そうな笑顔で腕を組んでいる。
数メートル先を塞がれて、大能力者に追いつめられる。
だがそれも無視して亘木は立ち去ろうと一歩足を出した。

「ちょっと」

駆けよってきたのは最初に声を掛けてきた女子生徒だった。
彼女が怒った様子で亘木の肩を叩こうとした次の瞬間。
バシバシバシッ! と派手な音を立てて後方の窓ガラスが激しく揺れた。

「きゃあっ?!」

「な、なんですのこんなところで無礼な……」

自分たちがしたことはいいのか、突然の騒音に悲鳴が上がる。
そして慌てた少女たちがもう一度振り向いた時には即席の壁は内側から外に向かって、吹き飛ばされたようになぎたおされていた。
その囲いの外側にいつの間にか移動している亘木はぽかんとしている生徒たちに笑いかける。

『では、御機嫌よう』

切斑をじっと見つめてから彼女は会釈をした。
にっこりと、まるで張り付けたような柔和な笑みを浮かべていた。

「あ……あんな可憐な方が、ま、まるで寮監様の様な威圧感を……?」

亘木が背を向けて、やっと声をあげた切斑はぺたんと床の上に座り込む。
へなへな〜っとすっかり体から力が抜けていた。

「切斑様、しっかりなさって!」
912 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・昼」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 02:46:56.35 ID:TfGP8KVe0

崩れ落ちる派閥のトップに取り巻き女子があわあわ群がっている間に、亘木はさっさとその場を後にした。

[ずいぶん賑やかね。どうしたの?]

『(あの女ども、物積んだだけで俺を足止め出来ると思ってたらしい。ウゼェから軽くふっとばした。あ、壁の方な)』

お嬢様らしくない態度でコキコキ首を傾けると、
『おい。声漏れてるぞ』と歩きながら文句をつけた。
他にだれもいない静かな廊下でも耳元の音はよく聞こえる。
リーダーVS女子生徒の音声中継を聞いていた心理定規の笑い声が一瞬こもって小さくなる。
口元を手で覆ったか何かしたらしい。

[かわいそうな子たちね]

『思ってもねえことよく言うな。同情してんのに笑うか普通』

[ついおかしくって。でも能力使ったの。そこまでしなくて良かったんじゃない? 平気なの?]

『窓に注意を向けて一瞬で済ませたからな。あれくらいならまぁ……気付かれないだろ』

[それもだけど。相手はか弱いお嬢さまでしょ、いじめることなかったんじゃない?]

心理定規の口調はからかうみたいだった。
自分以外の誰か、女の子が少しくらいひどい目に遭わされても怒るどころか面白がっているよう、いや今回のは被害者側の自業自得だろうが。
垣根もそれに乗ってふふん、と鼻で笑う。

『ちょっと邪魔なもんをどかしただけだろ。っつうか大能力者がか弱いってタマか?』

[そうね。貴方って紳士的]

棒読みで、いやセリフでも読むくらい感情移入なしで同じる心理定規。
その辺の人間も物あつかいなリーダーとおなじくらい、クールな答えだった。


『(能力のレベル、学力、家の財力、コネその他。更に女特有の要素をプラスした格付けか。下らねえ)』

食堂で本日のセットランチからメインが肉料理のものを選んだ垣根はフォークを動かす合間にぼやく。
学校生活のわずらわしさ、プラス意味の分からない階級わけが意味不明だったらしい

[トラブルを避けたいなら食蜂派だ、とでも言えばよかったんじゃない?]

『(たとえその場しのぎでもあんな奴の下についてるなんて言うかよ)』

[特に常盤台は序列が複雑そうよね。能力第一主義のどこかの学校は、もう少し簡単でしょうけど]

『(マウンティングだ? ふざけんな。ここのガキ共じゃ、組み伏せる必要もねえだろ。んな前に即「ステイ」だっつうの)』

新入りをけん制して上下関係を教えようとして大失敗した、さっきのかわいそうな
犬に「動くな」と指示を出すときの単語を使ってそんなことまで言う。
垣根のような超能力者なら、相手に何もさせずに下してしまうなんて芸当も出来るだろう。

[貴方の前では大概の人は犬猫と一緒かしら。いつもなら、だけどね。その便利な能力も気軽に使えないことを忘れないでよ]

心理定規はスピーカー越しに呆れたようなため息をついた。
垣根の、いつになく品位に欠けたような言い回しが気に障ったのか。
何か失敗でもして中学校に変質者が出たと騒ぎになったら大問題だ。
誰だって、風紀委員と警備員に連行される妙な格好のリーダーなんてみたくはないだろう。

『(さっきのは大能力者だっつったけど、単純な操作だけなら誉望の奴にも出来そうだよな)』

何を? と聞かれて垣根は大荷物の移動、と返事した。
映像が向こうに行っていない、と言うのは不便だった。
いちいち状況報告をしてやる優しさも習慣も、このリーダーにはない。
聞かれてもいないことまでよく喋っているのは、今話題になっている奴の方だ。

[彼は、一人でもそれなりの仕事はこなせるし並行作業も得意だからね。落ち着いていればそうかも知れないわ]

『(この前、「パソコンがガチのフリーハンドで動かせそうだ」っつってたぞあいつ)』

[それって電子制御になるんじゃない? それなら発電能力とか別の能力じゃないのかな]

心理定規の疑問に答える前に、垣根はサラダをフォークでつついていた。
彩りよく野菜がたっぷり盛られていて、味付けはどれもお上品な癖にかさはそれなりだった。

『(あのゴーグルに登録してる奴だからだろ。元々の能力も、BMIに理屈では近い筈だからな。相性の問題だろ。別に発火能力者じゃなくても火はおこせるっつうのと似たようなもんじゃねえか)』

フォークの先から逃げそうになるプチトマトを垣根は指先で押さえて刺しとめる。
こんなちょっとしたことにも、手を使わなくていいのが本来の『念動力者』の能力の使い方だ。
913 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・昼」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 03:05:28.07 ID:TfGP8KVe0

頭の中で考えたことを現実に引き起こす。
それを機械化で実現する仕組みが、たとえばブレインマシンインターフェイスのような技術。
そして、科学的にはあり得ない程の規模で適えたのが能力開発。
学園都市の能力の中では「念動能力」はある意味原始的な部類に入るかもしれない。

垣根が出した例、「火をつける」ならば。
機械ならライターやマッチで済む。
能力ならば光学操作による集光、摩擦係数を変化させる、温度変化、発電能力の火花……など工夫次第でやり方は色々ありそうだ。
発火能力の方も、それ以上に多彩な能力傾向の違いがあるだろう。

もし誉望の言ってたことが、ただのおふざけで終わらなかったら。
今までは手を使わなくてもスイッチを押せる、だったのが。
スイッチを押さなくても思っただけで起動できる、に変化するのかもしれない。
それだってある意味触れずに物を動かしている。
手順を簡略化していけば楽にこなせるようになるのは、演算式と一緒だろう。

そんな、垣根の仮説をじっと聞いていた心理定規はふーん、とあいづちを打った。

[そう。これから便利になるかもね]

『(Hey,Sissi! なんてスマホに言わなくて済むかもな)』

[ふふ。ハァイ、ゴーグル? にでもなるの?]

今だって使いパシリもといよく働いてくれている組織の一員(雑用係と読む)ポジションだが。
この二人、言うまでもなく他人を便利に使い倒すことに疑問のないタイプだった。


なんて。
二人で……はた目にはひとりぼっちでたまに笑いながら食事をしていた垣根だったが。
後ろから名前を呼ばれた。
振り向くと昨日の朝あった、婚后とか言う女子生徒が手を振っている。

「亘木さん! そちら、よろしいですか?」

『え、ええ』

急ににっこりそんなことを言われて、亘木はうなずく。
また何か心理定規が愉快そうに言ってくるのを聞き流しながら隣を譲った。
婚后は近くにいたメイドに声をかけると、元の席に物を置いたまま移動してきた。

「亘木さんは…いかがですか」

その後、と聞いて婚后は箸を持ち上げた。
和の懐石風御膳、がいやにぴったり似合う中学生がやけに真剣な顔している。
いきなり時候のあいさつ、ではなく学校生活の方らしい。

『ああ……皆さん、親切な方ばかりですね』

「よかったですわ。どうしてらしたか実は、少し気にかかっていましたの」

含みのある亘木の返事にも、おそらく純粋培養なお嬢様は嬉しそうにしていた。
親切の押し売りは得意なようだが、亘木が実際どう思っているかはばれていないらしい。
怪しまれるのも厄介だが。
これはこれで。

(めんどくせえ……)

と、内心ぼやいたところでうまくいきそうもない。
サポーターは、
[意外なところから情報が出てきたりするわよ。そこの超能力者以外にも人脈があると便利だし……よかったわね
お友達できて]なんて言って、助けるどころか恐らく楽しんでいる。



食事を済ませた美琴はこの後どうしよっかなー、と考えながら歩いていた。
ふと、前の方の席に同じ学年の婚后が座っているのが見えた。
隣に並んでいるのは湾内のふんわりヘアーではない。今日はよく見るエンジェルリングつややかヘアーだ。
それに美琴はぎょっとしてテーブルまで近寄った。
やっほー、と明るく内心ドキドキしながらあいさつする。

「婚后さんに……亘木さん? 二人で…お昼?」

「ええ。あら、御坂さんもご存知でしたの?」

婚后はにこにこして、こちら転入生の亘木さんです、と美琴に紹介した。
二人とも、食事は終わっているようだが食後の歓談に花を咲かせていたらしい。

『ああ、授業でお会いしたことがあるんですよ。御坂美琴さん、良かったらご一緒しませんか』

「う、うん」

なんだか亘木が必死な目をしてそう言うので、美琴も同じテーブルを囲んだ。
美琴としても婚后が心配だったので断る理由もない。
914 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・昼」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 03:10:55.29 ID:TfGP8KVe0

垣根が友だちと一緒にいる状況が見過ごせずに会話に加わった美琴だが。
二人は、普通に楽しそうにおしゃべりしていた。
予想外に垣根が何とか婚后にあわせて話をしてやってる。
なぜ敬語なのかは相変わらずわからなかったが。
好きな食べ物の話題から、亘木がここの食堂のラーメンを食べたはなしになった。

「らあめん、ですか?」

「ああ、限定のやつね。食べたんだおいしかった?」

『そうですね……』

美琴もちょっと興味があったメニューだ。
今度挑戦してみよう、と亘木にいろいろ聞いていたが、何だか気乗りしない返事ばかり返ってくる。
え、結局おいしくなかったの? と聞こうとしたとき。
婚后がひとり不思議そうな顔をして、会話にいまいち加われていないのに気付いた。

「まぁ、庶民的なお味に興味が?」

「私もそう言うの結構食べるかな。ホットドックとか」

『ハンバーガーもおいしいですね』

「それは…サンドウィッチとは違いますのよね? 恥ずかしながらわたくしあまり存じ上げなくて」

どうやら婚后はラーメンもファストフードも知らないらしい。
それを聞いて亘木は、ハンバーガーと言うのは、となんだか親切に説明し始めた。
常盤台の箱入りお嬢様たちと同じように、生まれついてのお嬢さま、な雰囲気の彼女ならしょうがないかもね、と美琴はそれをほほ笑んでみていた。

『飲み物は、やはりコーラをお勧めしますね。炭酸飲料はポテトの油とも相性がいいです』

脂っこい喉に流し込むのがたまらないのだ、と言う風にふるわれる熱弁を婚后は楽しそうに聞いている。

「それは、大変おいしそうですわ」

「そうねー。今度、食べにいこっか」

「ぜひご一緒したいですわ。できたら、湾内さんたちもお誘いしてみなさんで……」

それを聞いた亘木がすごく嫌そうな、というか不安そうな顔をして美琴をじっとにらんできたが。
目の前でにこにこ楽しそうなお友達をみていた美琴は無言の訴えはしらんぷりした。
915 :おまけ。ラーメンたべたい亘木さん  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 03:20:21.66 ID:TfGP8KVe0

垣根『お。御坂、コンビニ行くだろ?』

美琴「え? 行くけど何よ」

垣根『ラーメン買って来いよ。カップラーメン』

美琴「ええっアンタね、それくらい自分で行きなさいよ。だいたい何で人のスケジュール知ってんのよ」

垣根「…この敷地の外でなければ行っていますが」

垣根『こうなるんだろ。おわかりいただけただろうか、っつーの』

美琴「ああそっか。学校の外だめなんだっけ? アンタも大変ね。別にいいわよ行ってあげても。何がいいの?」

垣根『んー。ウルトラカップみてーなガッツリ系』

美琴「味は?」

垣根『味噌か醤油とんこつ。くどいやつにしろ』

美琴「はいは…あ、食べる所あったかしら」

垣根『は? カップ麺ってのはな、お湯入れるだけでいいんだぞ』

美琴「知ってるわよ。食堂以外で共同で使える所って言うとどうかしら。サロンスペースの紅茶飲んでる横でラーメンはやっぱ怒られるかな」

垣根『じゃあレトルトにしてあっためろよ』

美琴「は?」

垣根『電子レンジ、それくらいテメェなら能力で出来んだろ?』

美琴「アンタねえ、人をなんだと思ってんの?」

垣根『おかしな趣味の便利な能力者』

美琴「はー……もうさ、アンタ自分で作れば? 今なら麺とスープにサービスで片手鍋も買ってきてあげるから」

垣根『調理室が使えても給湯スペースはねえのかよ。どうなってんだ常盤台』

舞夏「おー、わたりぎ―。どうだラーメンはありつけそうかー?」

美琴「あ、土御門。アンタ今日はこっちなの?」

舞夏「手伝いになー。みさかみさかーその子の話は聞いたかー? 珍しいなー庶民のラーメンが食べたくって困ってるんだって。今日立ち読みにコンビニ行くだろー?」

美琴「はー、アンタの入れ知恵だったの」

亘木『たかがラーメンのハードルが高すぎるんですが、ここは海外か何かですか?』

舞夏「そんなに食べたいなら後で特製メイドラーメンでも出前してやろうかー? ご注文はー?」

亘木『もうそれでも構いません……味噌バターコーンもやし大盛りで』

舞夏「麺とスープはー?」

亘木『固めに濃いめ。あ、後胡椒とバター多め』

舞夏「うんうん。卵は味玉、半熟、固めがあるぞ。どうするー?」

亘木『んー。味玉』

舞夏「一つでいいのか? 他のトッピングはいいかー? オプションでおにぎり、白ご飯、他にもつけられるぞー」

亘木『いや。今はいい…です。ラーメンが食べたいので』

舞夏「まいどー。全部で三〇〇〇円になるぞー」

亘木『は?』
916 :おまけ。ラーメンたべたい亘木さん  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/05/05(金) 03:36:39.98 ID:TfGP8KVe0

舞夏「メイドの特製だからなー。それともあっちの寮に遊びに来るかー? 源さんは気前がいいからリクエストも作ってくれるぞー?」

亘木『誰だそれ』

舞夏「料理長の源蔵さんだー。あ、心配しなくても大丈夫だぞ。源蔵さんは男だけど野郎趣味で女子には無害だからなー。怖くないぞー」

亘木『………は?』

美琴「う、うちの学校関係でも、技術が認められれば男の人も働けるのよね。指定の美容院にも男の人くらいいるし……って、土御門、外部寮に行くくらいなら学校の外にいくらでもお店あるじゃない」

舞夏「箱入りのお嬢様だと寮と学校の往復以外滅多に外にはいかないからなー。これでも気をつかったんだぞ。外なら兄貴おすすめの店が結構あるしなー」

美琴「あ、そっか。出来ればこの中がいいのよね(ねえちょっと顔が怖くなってるわよしっかりして)」

亘木『ラーメンって……そんなに苦労しないと食えないもんだったか…?』

舞夏「そうかー。『学び舎の園』の中は難しいかもな。特製ラーメンは違ったらしいし」

美琴「そっか。ありがと土御門。またなにかあったらお願いするわ」

亘木『はあ…』

美琴「そんなことで落ち込まないでよ。な、なーんか私も食べたくなってきちゃったしやっぱ買ってきて……んっ?」

白井「おっねえさまー! 何のお話をなさって」ヒュン

泡浮「御坂さま、ごきげんよう」

湾内「みなさまで何だか楽しそうですね」

亘木『あの…御坂さん、私はラーメンが食べたかっただけなんですよ』

白井「あらお姉さま、夕食の前にそんなものを召し上がると……」

美琴「何よ」

湾内「まあ! 亘木さんは電車に乗ったことがおありなんですの?」

亘木『ええ。普段は車を用意させているんですが』

湾内「わたくしはバスは利用したことはあっても電車はあまり。どんな風でしたか?」

亘木『専用のカードで精算するので、まずそれを用意するんです』

泡浮「まあ」

亘木『最初は改札など見慣れないものに戸惑うかもしれませんが』

泡浮「どうなさればいいんですか?」

亘木『他の人間と同じようにして、堂々と振舞えばいいんです。一般人が問題なく利用できているものが私に使えないはずありませんからね』

湾内「そうですわね」

泡浮「すごいですわー」

美琴「なんだかんだ、わかりあえてるっていうの…? って、アンタは何してんだゴルァ!」

白井「間食などなされておねえさまのウエストが変わるといけませんから、黒子がチェックして差し上げようと!!」

美琴「いらんわー!」

亘木『うっわ…』

美琴「素でドン引かないでよ馬鹿ー!!」
917 :  ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2017/05/05(金) 03:44:46.28 ID:TfGP8KVe0
ドーモ。
おひさしぶりです。
「念動使い」ってひらがながなんかもったいなくないか。
テレキネシスよりサイコキネシスのが呼びも意味もかっこよくて好き。
表記ブレなのか違いあるのか、考えても答えはない。

>>900
『スクール』の下部組織にはいればワンチャン
らっこさんのぼっちは本人の思い込みが一因って言うから……きっと本人が知らないだけで、がんばり屋さんとしてご学友の方々にも愛されてるよね。そうだよね

ゴーグル君は「手作りチョコもらったったw」とSNSで自慢しようとするも、あまりに派手な色艶にお菓子だと信じてもらえず青ピつっちーあたりにネタ扱いされて悲しい思いをしたかもしれないって今考えた。
リアルが充実してる奴は暗部になんかおちないんだよ!

>>901
妹からのチョコだと。鼻血を出してしね〜♪

>>902

そうか、アカギよろしく最初にあらかじめ足しておけば……!怖いわ!
きっと材料もお嬢様校の意識高いのだよなんか産地の違うチョコがどうのって「学舎の園」クオリティさ。きっと味もそう言うの。
誉望「香り高いレ◯ブロックに脳が混乱する」
季節イベントの関連性はあってないようなもんだよ!
すごーい!君はSSに詳しいフレンズなんだね!

>>903
な。もっとらっこさんの活躍は増えるべき。
1も増やしたい。一年ってのは……嘘だろマジかよそんなかよ!

>>904
ドーモ。1もすくーるがすきです
ほっしゅすまんね、ありがとうな。

>>905
感謝

>>906
まだ息がある。たぶん

>>907
いつの日かアニメの『スクール』を拝むまではしねな、舞い散る未元物質…ばっ、ご…
あとネタを書ききるまでは早々しんでもいられない

こどものひですね。いつかかきねを小さくしるっていったっけきのせいかな


かきね「えっとな。1がおはなしすすめないからおれにあうのはもうちょっとがまんだ。せってーとあんかとふるいはなしをちゃんとしょうかしてから……え、ちがう?」

誉望「(そこは読まなくていいんスよ。このカンペっス)」ペラリ

かきね「そっちか? んー、だいたいのあらすじ。『おれのなまえはかきねていとく! あんぶそしきのりーだーをしてるれべるふぁいぶだ。あるときなぞのまじち……まじゅち……まちゅ」

かきね「……」ムス

心理定規「(……悪い魔法使い)」

かきね「『わるいまほーつかいのわなにかかっておかしなくすりをのんでしまった。きがつくと……からだがちぢんでしまっていた!』ばばーん!!」

誉望「」ペラリ

かきね「『からだはこども、ずのうもこどもでぜんぶおこさまなおれがだいかつやくするとってもめるへんなばんがいへんは……たくさんかけたらこうしんよてい。
じょーちょーさいちょーきろくもこうしんよてい。かこさいこーでれきだいなんばーわん。ぜんれすがないた。ぜんぺんぎゃぐ、ぐだぐだのぎゃぐしかない、わらえない、よていです、まる』よーしよめたぞ。じょーちょーってなんだ?」

心理定規「上手にできました。それはね、無駄に長いって言葉よ」

かきね「さいちょーは? つよいか?」

弓箭「一番長いと言う意味です。え、強いんですか?」

誉望「ある意味破壊力は半端ないな。ぶっ壊れっスね……だって垣根さんがこれだぞ」

かきね「めいんのおはなしにゆみやがちゃんとでてきたらやるんだって。まだゆみやのごしょーかいしてないなんてだめな1だな。いいかゆみや。よぼーとでーとしてみんなでぷーるにいったら、おれがあそんでやるからな」

弓箭「はははははははい!」

誉望「……え?」


主役のヒーローさん達に大変なところは任せて、巻き込まれた状況だけ楽しんじゃうのが脇役SSの醍醐味だよね?!の予定。
『この物語に『スクール』のメンバーは存在しな……くても別に問題ないのでまあいいや』

918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/05(金) 07:12:51.63 ID:eoAFv8uBo
待ってた
ひさしぶり乙

>>910
>それでも、いちなり指名されて
919 : ◆q7l9AKAoH. [sage]:2017/05/05(金) 07:47:51.39 ID:TfGP8KVe0
誤字ありがとう
ここも切れてたすまんね

>912
新入りをけん制して上下関係を教えようとして大失敗した、さっきのかわいそうな生徒たちのことを。
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/05(金) 22:01:27.12 ID:M9OTzlgD0
わーい!更新だー、嬉しー!!乙
垣根もしかしなくてもハーレム状態じゃないか
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/06(土) 22:25:23.87 ID:gB1m5o3l0
更新きてたああああああ乙です
垣根と心理定規の会話になんかニヤニヤしてしまった
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 17:57:02.71 ID:sPpHf4aU0
乙乙
更新ある度にやっぱりこのスレ面白いわってなる

垣根が女装してにこにこしながら敬語でピアノの演奏してJCたちと歓談、洗脳無しの絵を想像してはいけない
ピアノをさらっと弾いたりとかの万能感はさすがだけど、それよりも女装潜入でここまで馴染んでる我の強さこそがさすがレベル5ということなのかもしれない…?
いつのまにか亘木派閥(ファンクラブ)とかできてる可能性がワンチャン

>よぼーとでーとして
ちょっとゴーグルのゲームのセーブデータ消してくる
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 15:34:50.41 ID:XyLSNUtwo
こここここここ更新だぁ!ヒャッフウー!
常に自分のハートにクリティカルなSSだから素直に感謝ッスよ!
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 16:26:36.90 ID:wfBYfcEe0
保守
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/24(土) 22:48:24.57 ID:pZxO2Nxs0
ほしゅほしゅっと。
スレ立ったのが2014年だったからてっきりかなり前に完結したスレッドなのかな、なんて勝手に思ってたよん
まさか現行だったとは、この1ちゃんはどれだけ意外性を突き詰めてくれるんだこんちくしょうめ
あとここの1ちゃんは間隔空いててもなんやかんや更新してくれるからほんとに続きが楽しみです
垣根くん好きとしてはこのssはマジで堪らないぜへっへっへ
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/27(火) 16:24:25.77 ID:L7wbZFA1o
そろそろ次スレいきそうだけども、その辺はどうするのだろう。
垣根君の勇姿(女装とも言う)が見れるのはここだけだから、是非とも無理なく続けて欲しい。
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/27(木) 19:09:20.44 ID:nbiR1jXC0
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 19:11:44.26 ID:nbiR1jXC0
すまん。
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/28(金) 10:35:33.73 ID:hk0hY4pW0
ええんやで(激怒)
930 :いいな『アイテム』たのしそうで『スクール』も温泉行けばいいじゃないか ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/08/01(火) 01:06:39.03 ID:960TWegU0

誉望「『夏休み人気スポットランキングおでかけ最強決定戦』? なんでこんな番組見てんスか」

心理定規「別にみてたわけじゃないわよ」

垣根「かかってた」

弓箭「わあ、老舗の温泉宿! きれいですよ。素敵ですね」

誉望「一人だけ無駄に楽しそうだな。温泉……そうか?」

垣根「どうせ別々に風呂入んのに、なんでぞろぞろ出かけなきゃならねえんだ?」

心理定規「でも温泉は入ってみたいわね」

弓箭「でででですよね! 心理定規さんも行きたいですよね」

誉望「えー嫌っスわー。部屋のシャワーで十分っスわー。女子はなんでそんなにお風呂が好きなんだ」

弓箭「もう。誉望さんったら温泉はいいなってお話をしてるのに空気が読めませんね」

誉望「お前には言われたくないし、俺は行きたくない」

弓箭「わたくしは行きたいです。いいじゃないですか温泉! 風情があって。のんびりできそうですよ」

誉望「嫌だ」

弓箭「行きたいです!」

誉望「やだ。俺は被りまくったイベントのマラソンで忙しいんだ」カチャカチャ

心理定規「もし行くって話になっても誉望君はきっとスマホと遊んでるわよ」

弓箭「もう誉望さん、皆さんでお出かけする時は一緒に行動しましょうよ。お土産物屋さんも見に行きましょう!」

誉望「渡す相手もいない癖に……」カチャカチャ

垣根「なんで行く前提で話してんだあいつら」

心理定規「もしもの話だから楽しいんでしょ」

垣根「まぁ、実際行ってもどうもしねえよな」

心理定規「すぐ解散して個人行動になりそう。相手の都合を気にしながら、のんびり時間を気にかけない外出って両立すると思う?」

弓箭「わたくしだって、たまには門限も気にせずお買い物やお出かけがしたいんです! 旅行なんて楽しそうじゃないですか。温泉じゃなくっても構いませんよ」

誉望「お外は危険がいっぱいだぞ。ならお友だちといってこい」ポチポチ

弓箭「それは…わたくしだってご学友のみなさんとお出かけしたいですが。『スクール』のみなさんとご一緒するも楽しそうじゃないですか。誉望さんがいても我慢出来ます大丈夫です」

誉望「なんでそこまで上から見れるんだ? つきあわされる方の苦労は考えないのか。やれやれこれだからぼっちは……」トントン

弓箭「誉望さんこそ、いつも今みたいにゲームばかりして一人でお部屋にいるんでしょう? だから、むすーっとつまらなさそうなお顔になるんですよ。外に出た方がいいですよ」

誉望「失礼だな。地顔ですが? 俺だって友だちと遊びに出かけるし」カチャカチャ

弓箭「え?」

誉望「は? 本当だよ。なんでそんなに驚くんでしょうか?」トン

垣根「うるせえぞお前ら。聞こえねえだろ」

心理定規「はいリモコン。二人ともこんな所で言い争ってないで、そんなに暇ならどこか遊びに行ってきたら?」

誉望「は? こいつと?!」

心理定規「つまらないかどうか試してみれば解決するじゃない」

垣根「どちらがよりつまらない人間か、わざわざ知りたいのかよ」

弓箭「ううーん。そうですね……こう見えてわたくし、行動をシミュレートするのは得意です。追跡だけではなく、先導も得意だと言うことを思い知らせて差し上げても構いませんが」

誉望「俺だってデートは得意だぞ」

931 :いいな夏休みか小さいかきねくんを動物園にでもつれてってやりたい  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/08/01(火) 01:16:18.21 ID:960TWegU0

弓箭「ふふふふふ。わたくしのお出かけプランの素晴らしさにうっかり告白されてしまったらどうしましょう?」

心理定規「嫌なことは断ってもいいのよ」

誉望「いや。ないない。つーかこの暑い中そんなことで出かけないっスよ」

弓箭「プライベートではわたくしもちょっと……あ、次のランキングはプールですって。涼しそうですね」

垣根「風呂はもういいのか」

心理定規「そう言えばスパ風のレジャー施設なら学園都市にもあったわよね。天然温泉も……どこかの学区になかったかしら」

弓箭「本当ですか? でもどうせなら雰囲気だけじゃないきちんとした旅館に行ってみたいです。お部屋で舟盛りを食べて、浴衣で卓球するんですよね?」

誉望「うーん。そう言うのなら…マッサージチェアと風呂上がりの牛乳は有りだな」

弓箭「あ! 枕投げはするんですか?」

誉望「それは修学旅行だろ?」

垣根「……」

心理定規「……なに、卓球したいの? 枕投げ?」

垣根「別に」





頑張れゆみやさん負けるなゆみやさん。
いまいちやる気のなさそうな面々の中で唯一空気を読まずに突っ走ってくれそうなお嬢様に期待。
こいつらみんなおひとり様がすごい得意そうだけどもっと群れてもいいと思う。

>>920
ありっす。女子しかいないもんねToloveらなくてよかったなー!

>>921
あの空気感で無駄そうに駄弁ってるのが好きでな。原作のやりとりが至高だがもっと喋ってくれてもいいよ

>>922
ありがたいありがとうございます。
お嬢様にも負けない強さがあるからねさすがりーだーですね。
あれれー?おかしいなーでーとの予定が二回あるよ?まずはどのゲームからにしようか

>>923
あざーっす!
まだがんばりたいよろしくお願いしたいそしておひさしぶりっす

>>924
保守乙です

>>925
保守ありっす
誉められてるんだよな?ありがとうな
1もはやく更新しておわらせたいのよな

>>926
あともうちょっとで常盤台もおわるんだ。
もう少しおつきあいいただきたい。
ふつつかな1ですがまた次があってもよろしくお願いしたい

>>927-928
ありがとうな
スマンな

>929
ごめんって。1も謝る
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 08:49:03.85 ID:eCBmdA9a0
生きていたか……!
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 19:08:41.02 ID:QfqAkSdt0

らっこちゃんは癒し
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 19:24:43.26 ID:X2EGhyEDO
ここの垣根は原作と比べて、態度から滲み出る無気力さ無関心さ、他人に合わせる気の無さが三割増しくらいに感じられるw 流石は唯我独尊(笑)の超能力者と言うほかありませんね!
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/10(木) 19:25:10.49 ID:ngsZDlg5o
常識が通用しないSS。これにはメルヘン君もにっこり
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/15(金) 23:28:21.48 ID:TStxx3nto
保守。
寒くなってきたのでリーダーの羽毛布団に包まって寝たいです><
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 22:47:23.80 ID:xPHr+6560
アニメ3期やるってよ
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 13:25:18.64 ID:DJkEPxBX0
やったねカッキー三期だよ!動くカッキーが見れるぞ!
939 :やったね国民の祝日だよ!  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2017/10/09(月) 04:55:35.66 ID:CdsvNY5b0

マジかマジかよマジですか!!!!!
三木氏、三木氏、待ってた!
今度は遠慮せず描き下ろしに心理定規をおねがいしようぜ!!
最高にハッピーなニュースのお祝いにモバコインだけじゃない準備もしたんだ。
1、頂点で『スクール』のデッキくむんだあSSR復刻頼む


ネタが経過で長くなりすぎたから番外編の

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507488194/

を立ててみたんだ。
良かったらこっちも付きあってくれるとうれしいなって>>1は肝心の進捗からはプイっとしてみる

>>932
1、無事死亡

>>933
おつありっすらっこさんはかわいかったよな

>>934
そんな必要なさそうだもんな。実はツンッ………デレくらいのきもちでかいている

>>935
うそだ、それ恐い笑顔だろ?!

>>936
冷え込むこの頃、保守ありです。
それは…一括で?分割にしときます?今なら22回払いの高級布団が

>>937
な!!!!!!
ちくせう、け○フレ砲にすっかり霞んじまってたじゃないか力ド力ワァ!

>>938
えっ動、1、そんなんぱずでっくすいらいだよ?むり
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 05:01:13.89 ID:KJFJ+ctoo
真珠湾dayだし、奇襲的な発表とかないかな。
垣根主人公の公式スピンオフとか
941 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 21:14:32.99 ID:GHmpuWv20
15巻でなんで直接交渉権を得ようとしてたのか未だに分かってないしな〜
942 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [sage saga]:2017/12/22(金) 01:54:32.31 ID:NN+oq12q0

放課後、コンビニに漫画を読みに行くはずだった美琴の予定は大幅に変更されていた。
途中でばったり顔をあわせた亘木にパシリ…じゃなく買い物を頼まれた、と思ったらいつのまにかよく合うメンバーが集まっていた。
みんなでキャッキャ喋っているうちに、最初に声をかけた目的を放っておかれた亘木は、
『コンビニ行くのかいかないのか、どっちです?』と怒っているのかすねているのか、はたまた脅迫でもしたいのかよくわからない調子になってしまった。
きっと文句を言いたいのを、他の生徒の手前我慢しているのだろう。
ずいぶんマイペースそうな奴よね、と美琴は中身の垣根のことを勝手にそう思っていたのだが。
もしかしたら他人のペースに持ち込まれるのは意外と苦手だったりするのだろうか?

とにかく、ラーメンがどうしても食べたいらしい亘木の愚痴につきあっているうちに、他の生徒も興味を示し……それじゃあみんなで作って食べてみよう!ってことになってしまった美琴たちは調理設備を借りてラーメンを作ることになった。
なんでそうなっちゃったのか美琴は急展開にちょっと戸惑ったが。
ちらっと亘木の様子を確認すると、予想に反して嫌そうな態度ではなかった。
こっそり、それでいいのか聞いてみると、
『みなさんで支度してくれるんですよね』とこれまた予想外な返事が返ってきた。

コイツ…少し待てばラーメンが食べられる、と言うポイントで折り合いつけやがった。と言うか常盤台のお嬢さままでうまいこと使おうとしてる?! とあまりの図々しさには美琴も開いた口がポカンだ。
でもこの人数でコンビニは行きづらいわよね……と美琴が悩んでいると、話を聞いていた土御門舞夏がどこからか材料を調達してきてくれた。
カップ麺ではなくてゆでるタイプの袋麺だ。
カップラーメンの話にも湾内たちは驚いていたから、これはもしコンビニに行っていたら未知の世界の解説に時間がかかって当分帰ってこれなかったかもしれない。
まさかコンビニエンスストアで買い物くらいは……したことがあるだろうと言いきれないのが「学舎の園」の怖い所でもある。
ジャンクフードだと言う以上にレトルトパックのラーメンの具は、食材の下ごしらえから吟味したいタイプのメイドさんには美学に反するらしいが。
要望をかなえるのも仕事の内らしくちゃんと揃えてくれた。
その割には具のチョイスが男子の好きそうなガッツリめの物まで押さえてあって、庶民的な料理までカバーする見習いメイドの力量に湾内たちは驚いていた。
そうして。
「なんか国民食ってことになってるらしいけどお嬢様は知らないゾ? な麺料理を体験してみる会」が臨時発足した。

作ると言っても麺をゆでて具材とスープを用意したくらいで、出来はまあ普通のよくあるラーメンだった。
それでも一人前をきれいに平らげた亘木は満足したらしい。
美琴や、ラーメンに縁のなかった湾内たちはみんなで少しずつ分けて試食した。
白井はハイカロリーなおやつにぶつぶつ言っていたが湾内たちは初遭遇らしいラーメンを楽しんでいる様子で、
(やっぱり普段から部活でハードな運動してるとカロリーとか気にしないのかしら……)と美琴は思いついてハッとした。
でも、下手なことを言うと飛び回って移動する=日ごろから運動不足なのでは? な疑惑のあるルームメイトが余計なリアクションをしそうだ。
聞いてみようかと思ったが我慢して静かにしていた。
体型やダイエットの話は白井にもタブーらしくたまにおっかない。
美琴は……どことは言わないけどもう少しくらいボリュームが出てきてもいいのになあと別ベクトルな悩みならある。


「ところで貴女、見ない顔ですけれどお姉様とはどう言ったご関係ですの?」

『ああ、先日転入してきたんですよ。御坂美琴さんには……まぁ、色々と良くしていただいてます』

「それはそれは。お姉様はどなたとでも分け隔てなく接される方ですから…で・す・が! その優しさにつけ込むような振る舞いをもしなさったらこの白井黒子、貴女が上級生といえども容赦はしませんわよ?」

『そんな。食器を下げてもらっただけでずいぶん大袈裟ですね』

フシャー、ガルガルなんて唸り声を後ろに背負っていそうな白井は、亘木を睨みつけるようにしてなんだか物騒な忠告をしてきた。
初対面でずいぶん嫌われたものだ。
亘木はそこまで敵視される覚えがないからか平気な様子だ。
白井が新顔をけん制している間、後片づけしている水泳部の二人と美琴は水道の前できゃっきゃと楽しそうにしていた。
湾内が能力を使うとあっと言う間に食器がきれいになっていく。

『あちらの方の能力は…『水流操作』ですか? へえ、便利なものですね』

「ええ。湾内さんったらまたお姉様のお役にたって、ううっ黒子くやしくなんかありませんわっ」

『そう言うあなたは…白井黒子……ああ、『空間移動』ですか。レベル4の? 風紀委員もなさっているんですね』

「そうですが。一体それがどうかしましたの?」

わざわざ妙な聞き方で生徒の間では有名だろう事実を確認してくるのに首を傾げる白井。
じいっと彼女を見ていた亘木は興味深そうにしていた目をひときわ細めて笑った。

『いえ、でしたらきっと御坂美琴さんも鼻が高いでしょうね。有能な後輩をもつと』

「それは……そうですわね? 黒子はいつだってお姉様のおそばに!」

わたくしもお手伝いしますわ!! とテンションが復活した途端に美琴につっこんでいく白井を、亘木は一人優雅に座ったままでながめていた。

そのあと湾内たちは用があると言って、白井は風紀委員の仕事があると言って泣く泣く、それぞれ美琴たちと別れた。
暇な二人があとに残ってひと騒ぎあった前のように戻る。

「よかったわね、ラーメン食べられて」

目的を達成しておまけに満腹だと機嫌もいいのか、亘木は少しにこやかに見えたから美琴も安心して声をかけた。
普通にしているときの亘木はしかめっつらをしている訳でもないのに不機嫌そうと言うか。
何を考えているのかよくわからない、そんな少し近寄りがたい雰囲気があった。

「アンタこの後はどうすんの」

『また校内をみて回る予定だけど……』

「なに?」
943 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 01:57:38.85 ID:NN+oq12q0

言葉の途中で亘木は何か気になったのか建物の先の方を睨んでいた。
つられて美琴がそっちを見ると廊下の向こうから誰かが歩いてくる。
多分三年生だ、二人の生徒は亘木を指さしながら何やらはなしていた。

「ああ、よかった。いらっしゃいましたわ」

「ええとわたりぎさんでしたかしら? あなた音楽はお好き?」

『何か用でも?』

「本日音楽鑑賞の集まりがありますの。よろしかったらご一緒にいかが?」

『そのお誘いは、私だけにですか』

相手の話をきいてから、横に居た美琴を示すように首を傾げる亘木の口調も表情も硬い。
何故か急によそよそしい態度になったことに、美琴は慌てて亘木の肩を引っ張った。
さっきは機嫌よさそうにラーメンすすっていた奴が一体どうしたって言うのか。

「何? アンタ急にどうしたのよ。ちょっと声掛けられただけでそれ、ないんじゃないの」

背後の二人に配慮してひそひそ話しかけると亘木はあからさまにムッとした顔をする。
一応、顔に出さないようにしていたのかと一瞬感心しそうになる美琴だが、そもそもその辺の女の子に問答無用でガンくれる方がおかしいはずだ。

『ああ? とりあえず目につく奴は全員容疑者だ。疑ってかかって何がおかしいんだよ』

ドラマ、いやマンガみたいな展開のおかげで女子中学生に混じって潜入捜査真っ最中のお兄さんは意外と真面目なことを言う。
顔をあわせてから何度か、のんびりドタバタ学園日常パートをしているから美琴はちょっと忘れかけていたが、本人はそうでもなかったらしい。

『この状況で有名人のテメェじゃなく俺に声かけてくるってのは、なんか裏があると見ていいだろうが。なあ?』

それにしても身構えすぎてないかと言うセリフを大真面目、いや当たり前のように言ってくる。
あえて意識してるのではなく普段からななめに物を見ているのか、と言うくらい自然な発言に美琴はちょっと引いた。

「ええー…アンタ実はネガティブだったりする? 近寄ってくる人に、『コイツは自分を利用しようとしてる』とかいちいち考えちゃうお年頃なの?」

[彼女面白いこと言うわね。確かに貴方はちょっと過敏すぎる気もするわよ]

んん?
とつぜん近くで女の子の笑い声が聞こえた気がして美琴は驚いて辺りを見回した。
だが、後ろの二人は美琴たちが相談している(ように見えるんだろう)のを遠巻きに伺っているし、今捕まえている食蜂カスタムで美少女モデルな第二位が声の主でもなさそうだ。

『(そうでもねえとやってらんねえだろ。ったく、とっとと終わらせたいんだこっちは)』

[別にいいんじゃない? 仕事への意識が高いのも結構だけど、お嬢様だらけの空間を満喫してきたら]

『(だーかーら。何でそう言う話になんだ?)』

よく見れば唇だけ動かして亘木――垣根は誰かと喋っていた。
このタイミング、至近距離で美琴が気付いた感覚から音源は能力ではなく通信機器だろう。
いくら第二位でもたった一人で常盤台に乗り込んできたんじゃなさそうだ。
女の子のふりをするんだし、相談相手でもいるんだろう。
そう言えばたまに一人でぶつぶつ言っていたようにみえたのは変なやつだからじゃなくてこのせいだったのか。

そんな風に、いままでもなんとなくあった違和感の正体がわかって美琴も納得した。

ちょっと混線したのか一瞬やりとりが聞こえたけどその後の会話の中身までは、はっきりわからなかった。
向こうの相手にも何か忠告されたのか。
むすっと面白くなさそうな顔をしている垣根に、美琴の怒ってやろうと言う気も先を越されて行き場をなくしていた。

「とにかく、その…元人殺しのアンドロイドみたいな迎撃態勢やめてよ。感じ悪いわよ」

『はあ? その辺の奴にも愛想をよくしろって?』

「うん。そっちのがかわいいわよ」

嫌味のつもりかにっこり笑って見せた亘木に美琴は親指をグッと立てて返した。
意味わかんねえ、と目で訴える亘木をもう一度ぐるっと振り向かせると、美琴は取り繕うように笑った。
待たせていた二人組に、
「この子は転入して来たばっかりで一人だと心配なのよね」と説明する。
後ろに立ってはいけないスナイパーみたいにあちこち威嚇しているやつを放っておくのはとても心配だ。
美琴も別に間違ったことは言っていない。
けど、それを聞いた女子生徒の反応は予想外だった。

「えっ。み、御坂様もご一緒に? ああ、わたくし以前からぜひお話したいと思ってたんですのよ? 御坂様夕食後、ご予定はございますか」

「え? えっと待ってね。アンタ行くの? なら……」

急に、あわあわしてはいるがものすごい勢いで美琴の発言にくいついてきた。
亘木を誘いにきたんじゃなかったのか、メインゲストのはずの当人にどうするか確認しようとしていると。

「会長? 今日は急に欠員が出てしまいましたから声を掛けましたけど。そちらの彼女がいらっしゃるならもう定員ですよ」

もう一人、隣の生徒にきっぱりお断りされてしまった。
944 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 02:00:13.98 ID:NN+oq12q0

鑑賞会の会長らしい方の少女はすっかり忘れていた、と言う顔をしたが美琴も加わりそうなチャンスが諦められないらしい。
さっきの美琴たちのように話し合って、何とか出来ないか食い下がっていた。
結局。
会長自らルール違反をしていいのか、ときっぱり断られてしまっていた。
どうやらこの生徒は集まりのリーダーと言ってもそこまで独裁的に無理を通すようなタイプではないらしい。

「もう、いつも怖いんですから。残念ですわ。あの、御坂様? もしまた機会がありましたら」

「そうねーありがとう。で、アンタどうするの? 折角だし」

『まったく……一人でも大丈夫ですよ、お優しい御坂美琴さん』

二人の上級生は亘木に場所と時間を説明するから、と美琴に礼をして離れて行った。
と思ったら何故か会長の方だけ戻ってきた
握手だけいいかしら? と言われて美琴は差し出された手を握る。
どこかのアイドルじゃないんだから、と思うが超能力者はいろいろと特別視されてもおかしくない。
この校内でさえ、上級生でも多くの生徒は年下の美琴にこの態度だ。

「うふふ、あの風紀委員さんに怒られてしまいませんかしら」

「黒子に? いや、あの子だってこれくらい……うん。見てないから大丈夫!」

変に隠してもいない。
常盤台では美琴と白井が仲がいいのは知っている生徒も多い。
もしかしたら、間違ってもいないがちょっと一方的で偏った誤解をしている人もいるのかもしれないが……そんなことしないわよ、ときっぱり否定できないのが悲しい。

一人になった美琴は、このあとどうしよっかなーと小さく伸びをした。
そろそろ自分の寮に戻ろうか。
ついでにコンビニに行きびれたから立ち読みをしてもいいかもしれない。
そんなことを考えながら廊下を進んでいくと、湾内とまたはちあわせた。
聞くと資料室に用があると言うのでおしゃべりついでに美琴もそこまでついていくことにした。
湾内は部活が無い日はこうしてよく自習していると言う、真面目だなあと美琴は感心した。

「先程はご馳走様でした。とても楽しかったです。」

そう言えば亘木はどうしたのか聞かれた。

「なんとかの夕べって言う音楽鑑賞会に参加するって三年生についてったわ」

あの二人が亘木に説明していたような気もするが、横で見ていただけだ。
美琴もちゃんと覚えていたわけじゃない。
すると、湾内はちょっと考えてから「プシュケー」確か……ギリシャ語で魂や心を意味する単語を頭につけて美琴の言葉を復唱した。

「それでしたら以前に耳にしたことがありますが、他の会員の方に声をかけていただかないと参加できないそうですわね」

わざわざ探してまで勧誘に来たのもきっとそのせいだろう、と美琴は話を聞いて納得した。
無所属の美琴は聞いたこともなかったが派閥は幾つもあるし、いろんな集まりがあるんだろう。
なんて話しているうちに資料室についてしまった。
すると今度は、近くに婚后が居るのをみつけた。
彼女も用があるのか扉の前で様子をうかがっているようだが中には入らないのだろうか。

「どうしたの?」

「あら御坂さん、湾内さん」

婚后に亘木を見かけなかったか聞かれて、上級生に呼ばれていったと教えた。
一瞬残念そうな顔をしたように見えたが。
あっと思った美琴が声を掛ける前に、もう婚后はにっこり笑っていた。

「なら良かったです。わたくし少しばかり考えすぎていたようですわ」

「あら婚后さんは亘木さんと仲がよろしいんですか? わたくしはつい先ほど御坂様のご紹介でご挨拶させていただいたんです」

「ま、まあ……よろしいと言えばよ、よろしいのかもしれませんが、いえその。お部屋で少しお話をさせていただいたんです。よろしければまた、と思ってましたが予定がおありなら仕方ありませんものね」

婚后は一人で空回りしてしまったことを恥ずかしそうにしていたが、わざわざ亘木が行きそうなところを見て探していたのか。
お昼の時に一緒に居たのももしかして気にして話しかけに行ったのか。
ふと思い出して気付いた美琴は、あの時のちょっと居心地悪そうにしていた亘木のリアクションが頭によぎって苦笑いした。
そりゃあ、女の子扱いどころかお嬢様扱いであれこれアドバイスや世話を焼かれたら男子はあんな風に、
「どうしろってんだ」みたいな態度になってしまうかもしれない。

「彼女、ご自身の能力にあまりよく思わないところがおありらしくって。そう言ったこともおひとりで悩まれてはよくないでしょう?」

どうやら、どんな能力を使うのか聞いてみたらそんなことを言われたらしい。
そう言えば私もよく知らないわね、と美琴も今更に気付いた。
第二位、と言うのも微妙なポジションで。
有名すぎる第一位や、研究や活動と忙しい第三位、常盤台と言う一勢力を牛耳る第五位、のあたりと比べるとそれ以外の超能力者は不思議とその実態が噂にものぼらない。
他の生徒たちを同じように『書庫』に登録されているだろうからきちんと調べれば情報はでてくるかもしれないが。
同じ超能力者の美琴でさえこうして会うまでどんな奴か、名前も性別も知らなかったくらいだ。

婚后はわけありで怪しい転入生をずいぶん気にしていたらしい。
あんな……見た目はその辺の子に負けないくらいかわいいし隠れ巨乳だけど、実は中身が男で裏表が激しそうなやつのことでも心配している。
ただ純粋に人を思いやれるそのまっすぐさにただただ美琴は感動していた。
945 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 02:02:19.66 ID:NN+oq12q0

「婚后さんって…ほんっといいひとよね!」

「お優しいですね」

「わっわたくしは、亘木さんのご学友の一人として当然のことを」

美琴と湾内に褒められて、片手で顔を隠しながら首を振る婚后。
なんて謙虚なのか。
同じ人間でも超能力者のアイツらとは大違いよね! と大きな人間性の差に美琴がぐっときていると。

「そういえば御坂さん? 寮監様がお探しになっているのを見かけましたが何か御用事が?」

「あーっ!! この前の門限破り、反省文書けって言われてたんだった!」

「そ、それは大変ですわね」

いい話の余韻をブチ壊す爆弾が降ってきた。
常盤台学生寮の寮監督、それは常盤台の秩序の象徴であり同時に最終兵器でもある驚異の存在だ。
お嬢さまが相手と言っても能力者には変わりない。
レベル3以上の能力者だけをあつめた学校では一般的な教師以上のものが教員に求められる。
寮監は警備員並みに、いやそれ以上に学生の鎮圧に長けた超のつくスペシャリストだ。
大能力者を一度に三人無力化したのは生徒ならだれでも知っている有名な話で、校則に非常に厳しい彼女に逆らおうとするものは学園内にはほぼ皆無と言っていい。
噂を含めて多少盛られているかもしれないが。
お嬢さま相手に容赦なく処罰(掃除など)を課したりお説教が怖いのは確かで。
事実、こればっかりは超能力者だっておっかないのが寮監だった。


二人と別れてから、なんとかそれっぽい言い訳……反省文をでっちあげた美琴は。
あわてて寮監のいる監督室に着くと、ノックをしてドアを開けようとした。
だが、丁度そのタイミングで一瞬早くドアが開く。
入れ違いに出てきたのは美琴より背の低い女子生徒だった。
彼女は人がいてびっくりしたのか、美琴を見ると目を見開いてぱっと頭を下げた。

慌てて通り過ぎる時に何か、花のようなにおいがした。
化粧品や香水は禁止されてるのに、と美琴は一瞬不思議に思ったがもしかしたらそのことで呼び出されたのかもしれない。

部屋に入った美琴はあれ、と拍子抜けした。
寮監は大体いつもピリピリしている(美琴がしょっちゅう怒られているからだが)のに、なんだか雰囲気が違っていた。
手に持っていたのはアイピローとちいさな置物だろうか。
おまけに黒い猫の形をしたずいぶんかわいいデザインだった。
実は女子力が高いのかもしれない、なんてちょっとおかしくなったがそこをつつくと余分に怒られるかもしれないので静かにしておく。

寮監は前回の違反についての説明を聞きながら反省文に目を通すと、

「よし。少しは生活態度を見直しなさい」

脅しめいた処罰のお話もなし。
何だかいつもよりあっさり解放してくれた。
やっぱりちょっとマイルドかもしれない、と美琴は最後に気になっていたことを聞いてみた。

「さっきのそれ。もしかして、寮監もかわいいものが好きだったり……します?」

「別に私の趣味じゃない、もらい物だ。こう言うのが好きなら猫野と話があうかもしれないぞ」

「……誰?」

さっき出ていった女子、彼女は一年の生徒で猫野緋十実。
学校生活で色々と悩みがあるらしく寮監によく話をしにくるのだと言う。
気になるなら今度声をかけてやりなさい、と寮監は話したが。
(寮監って、生徒の悩み相談とかもするんだ)
と、ちょっと違う所が気になってしまった。
ただおっかないだけの人ではないらしい。
その猫野さんは真面目なのか、話を聞いてもらったお礼にと寮監の肩をもんだり、リラックスするからと言ってああ言った小物をプレゼントしたりしていくそうだ。

「この仕事をしていると何かと疲れるからな、ありがたく使わせてもらっている」

「あー、私てっきりあの子もなにか違反してそれで呼び出されたのかと……」

そこまで言いかけて美琴はハッとした。
完全に藪蛇で、「規律をきちんと守っている生徒もいること」や「少しは他の生徒を見習い真面目に生活することで私の負担を減らしてくれるとうれしいのだが?」とせっかく少なく済みそうだったお説教は結局追加されてしまった。

ゲコ太に限らず少女っぽいものが好きな美琴は同年代でも少数派だが、別にこんなところで趣味の同輩探しがしたかったわけではない。
プレゼントだったとは、あっけないオチは少し残念だった。
寮監の意外な情報がゲットできたら黒子とちょっと盛り上がれたかも……なんて失礼なことを考えていると、

「どうした御坂。にやにやしていないで、早く寮に帰りなさい」

とキッとした目で言われてしまった。
来たときと同じくらい慌てて美琴は退散した。
946 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 02:05:31.76 ID:NN+oq12q0

紅茶、甘い菓子、うっすら混じる香草のようなにおい。
最初に気付いたのがにおい、次が音だった。
重い響きのクラシック、オーケストラか。
首を少し動かすと背中の方で柔らかい感触がした。
座りごこちのいい上質なシート。
コンサートホールにでも来たなんてずいぶんとらしくない夢を見ている……。
そう思っていた垣根は違和感に目をあけた。

『ん?』

思わず漏れたはずの呟きが聞きなれない女の声で、寝ぼけていた脳みそが一瞬混乱する。

[あら、目が覚めた? 貴方さっきからちっとも返事しないんだもん。しっかりしてよね]

『……るせ』

あくびで隠そうとする仕草で誤魔化しながら、聞こえないくらいの声で悪態をつく。

[呼びかけてあげてたのに随分ね? またモーニングコールが必要?]

向こうにはばっちり聞こえていたらしい。
まさか心理定規の声に救われるとは、少し悔しくて垣根は眉をよせた。
耳元の音声で瞬時に状況を思い出した。
そう。
今は『スクール』での任務の真っ最中だ。
生徒の誘いに乗って謎の集会に潜入中……だと言うのに
少しうとうとしてしまったのか、気づけば一度照明を落としていたはずの部屋は明るくなっていた。
ぼんやりまばたきをしている亘木をみて隣に座っていた少女はくすくす笑っている。

「お気になさらないで。緊張がほぐれたんですわ」

どうも、と愛想笑いと会釈を返した亘木は見えないように伏せた顔をまたしかめた。
まったく、とんだ失態だ。
誘われてやってきた、『プシュケの夕べ会』が使用している部屋は確かに居心地がよかった。
広さはわずか十二畳くらい、教室などの規模を考えると狭い方だろうが、ここが学校の中だとは思えない上質な寛ぎ空間が整えられている。
心地よい温度の空調、ソファのすわり心地、ついでに睡眠不足も垣根のガードを崩すのに一役かっていたのかもしれない。

肝心の活動内容の方は古いレコードを最新式のプレイヤーと音響効果で楽しむ、と言うなんとも現代のお嬢様らしい趣向だった。
およそ中学生らしい趣味ではなさそうだが常盤台なら…と言うやつだ。
次に流れてきたのはピアノ曲だった。
テンポが遅いわけではないが、なんだか余計に瞼の重くなりそうな曲だ。

「先日お話した曲です。ぜひみなさまの感想をうかがいたいわ」

「会長はご自分で曲もお書きになるんですの」

親切に聞いてもいない解説をしてくれるのはさっきとは別の少女だ。
集まっているのは亘木を入れて全部で十人。
この派閥未満の交流会は、「音楽と美しいものを恋人に」と言う趣旨で上流にふさわしく感性を磨くための集まりだと言っていたが。
新顔の居眠りを見逃すくらいには、そこまで格式ばったお堅いものでもないらしい。

「ケーキ召し上がりませんか」

「よろしければお茶だけでも」

テーブルに並んだ甘いものをすすめられるが、亘木は笑顔で断った。
おままごとじみたお茶会だなんてそんなつもりで来たわけではない。

「楽しんでいただけてるかしら?」

ここに呼んだ張本人、会長が寄ってくると横に座っていた少女が亘木の隣を譲った。

「亘木さん、聞いていた通りお可愛らしい方ね」

『そうですか』

「ええ。ここには美しいものしか置かないの」

そう言って、誇らしげに振り返ってみまわした室内は彼女の趣味なのか。
壁の絵、美術品のように並んだ食器……ドイツや中国の古い陶磁器が多い。
どれも十九世紀のフランス風の貴族趣味だった。
ここは他の小さな派閥と共同で使っている場所だから集まりの度にいちいち片づけてはまた持ち込むのだと言う。
授業以外の設備の管理担当や、設営に関わる使用人の様な立場の人間がいるらしい。
なるほど、生徒が主体で何かしているからと言って関係者が当人たちだけとは限らない。
垣根にとっての組織の下っ端のように黒子役…意識しない駒の役割をこなしている人間がいるのか。
そうなるとやはり調査の対象には生徒以外の人間も含めた方がよさそうだ。
今後こう言った派閥に目をつけて、水面下で調査をするならまた、あの女王の手を借りることになるかもしれない。
なんて、面倒なことを考えていた垣根だったが。
ふと目の前に置かれたカップに目をやった。
白いソーサーとカップは他に並んだアンティークのセットとは種類も価格もどうみても違った。
ワンポイントでプリントされた動物の足跡柄は場の雰囲気に浮きすぎるくらい子供っぽい。
急に用意したにしてもずいぶんなギャップがある。
947 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 02:07:08.94 ID:NN+oq12q0

「お気にめさなかったかしら。またいらして下さるなら貴女の分もちゃんと用意しますわ」

ぼんやり見ていると、それを不満だとでも受け取ったのか心配そうに声を掛けられた。

「会長。また食器を買うんですか」

「もう、綺麗なものはどれだけあってもいいんです。こちらのセットは今ぴったり揃っているの。次は何にしようかしら、亘木さんも何かお好みのものがあったら言ってくださいな」

既に亘木の分を買うつもりだろうか。
さりげなく、押しの強い勧誘に話を振ってくる。
自分の空間にいるからか初対面の印象よりもずいぶんと積極的だ。お嬢様と言うのはこんなものかもしれないが。
はあ、ええ、と適当に相槌を打っていると会長のコレクション自慢がはじまった。
この会のメンバーが使っているティーセットはペアカップが六組で一つのシリーズになっていて、色違い同柄で統一されているところもとても気に入っているとかなんとか。
意味のわからない話を流すのも亘木は慣れたものだった。

『ああ、こちらの会は十二人参加してるんですね』

カップの数から連想して、亘木が適当に呟いた言葉に会長は首を振った。

「いえ? 今日お休みの方を入れて今は十一人。ですから、亘木さんが来て下さると丁度人数も揃って素敵なのよ。どうかしら? 楽しい時間を共有する集まりですから。たまたまみなさんと好みがあって音楽をかけてますけど、ここでの活動は別にクラシック鑑賞に限らなくってよ?」

にっこり笑うと会長は最後に握手を求めてきた。
とりあえず亘木が出した手を両手でぎゅっと包むと、
「ぜひまた遊びにいらしてね」とずいぶん熱心に念押しされた。


お嬢さまの鑑賞会かお茶会か、もしくは両方が済んで亘木は自分の部屋に戻ることにした。
大きなあくびをしながら亘木は天井を眺めた。
注意深く様子をみていたが餓鬼のつまらない集まりにしか思えなかった。
なんだったんだ、と首を傾けて部屋に戻る。
何かあるのではと身構えていったのに何もなかった。肩透かしもいいとこだ。
悔しいが美琴の言った通り怪しんであれこれ考えすぎたのかもしれない。

『(そっちで話聞いてても何もなかったか)』

[そうね。ずっとクラシックがかかってたから……]

ふわぁ、と間抜けなあくびの音がして垣根は頭を左右に振った。
垣根の近くの音声を拾って聞いていただけの心理定規にも眠気を誘うような、退屈な集まりだったのは間違いなさそうだ。
時間は一時間半くらいだったか。
していたことと言えば、音楽をかけてそのあとお茶とお喋り。
念のため他の生徒の会話にもそれとなく気を配っていたが特に怪しい話題はなかったようだった。

『(無駄骨折っただけかよ。ったくめんどくせえ)』

と、垣根は手の中のカードをひっくり返した。
案内状は香水でもつけてあるのかハーブのような匂いがした。
文面には次回の開催日しか書かれていない。
時間も場所も決まっている内輪の集まりならこんなものだろうか。
熱心に勧誘していたが新入りの亘木がお友達クラブに参加する気も、機会ももうないだろう。
948 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 02:16:52.17 ID:NN+oq12q0

[はよざいまーっス]

朝。
嫌なものだが慣れはじめてしまった、制服への着替えをしている垣根の耳に呑気な声が聞こえる。
今日はゴーグルが担当らしい。
支度を済ませると校外の連中の調査報告なんかを聞きながら、他の生徒たちに混じって移動する。

[そう言えば垣根さん、昨日の夜中なんかありました?]

『(何が)』

昨夜、いや日付は今日か。
ゴーグルが夜中にアニメをみていたら垣根の変声機が使われている様子があったと伝えられた。
垣根は知らなかったが故障や不備に備えてこの装置の使用状況は常にモニタリングされていたらしい。

[なんかカッコイイんで、使用中は解析にあわせてステータスバーが出るようにしてもらったんスよ。今も垣根さんが喋ってるとランプとかついてます。で、深夜に誰かと話でもしました? あ。なんか心理定規が、垣根さんがもてて困ってるらしいって言ってましたけど…男だってばれてないっスよね]

『はぁ? 何言ってんだお前ま…で』

つい声に出してしまい垣根ははっとしたがもう遅かった。
周りはひそひそ、咳払い、目があった向かいの席の女は気まずそうに頭を下げてくる。
今は食堂で朝食の最中だ。
当たり前だが大声を出すと目立つ。

食事をさっさと詰め込むと亘木は食堂から出た所で一人立っていた。
もうすぐ朝の門限だが授業の方に構っている余裕はない。
そんなことよりもさっきの話題を詳しくさせているが、誉望の話も要領をえなかった。
もちろん深夜の異変の方だ。
亘木の同性間の交友関係には話すようなことは何もないのだから。

[いや、録音とかはしてないですよ。垣根さんにもプライバシーがあるんスから、その辺は俺達も配慮して……]

『(使えねえな)』

会話をしているのでは、と考えたなら音声データが残っていれば話は早い。
だが、解析結果のログも残していないからそもそもさかのぼって調べることができないと言う。
モニタリングしているのもあくまで垣根が使っている機器の状況把握のための機能なので、ごく個人の周辺と言っても音声を保存していると事前に常盤台側と取り決めた契約内容に問題が生じるらしい。
変声機の使用があったなら、その場で内容は確認しなかったのかと聞くと。
実際の声は聞いてもいないしスピーカーにもしていないからわからないと言われた。
ただ誉望がアニメ見ているときにランプが点灯しているのを見て、
「あれ、垣根さんなんかしゃべってんのかな」と思ったくらいだと言う。

仮に、確認したくても通信機器のメインマイクのオンオフは垣根の持っている端末に対応しているから、そっちが切られていたら無理だと返される。
確かに寝るときなど必要なさそうな時は直通の通信は切っていた。
何かあれば携帯に連絡がくることになっている。

[こっちもですね、俺たちイヤモニ隊がスタンバってる以外で四六時中マイクをオンにしてる意味ないじゃないですか]

『(役に立たねえな)』

[つっても垣根さんだって、任務だからって勝手に寝言まで聞かれてたらキモいっスよね? なんかあったら気まずいしおっかねえっス]

『(もうお前の勘違いなんじゃねえの)』

[いや〜うーーん……あ。ちょっと待ってください]

そう断ると誉望は黙ってしまった。
少しして垣根の端末に画像の添付されたメッセージが届く。

[エンカとっておこうとして撮ってた中にありましたよ! ほら!]

嘘じゃないですよ! と騒ぐ奴と、もともとは中心になっていただろうアニメ画像の一部は無視しておいて。
確かにそこにはモニタの端に縮小されて映る装置の稼働状況と、解析イメージを可視化したウィンドウが一緒におさめられていた。
データの詳細はそれだけではわかりそうもないが、使用中らしい山形のバーの連なりは垣根の発声にあわせたものなんだろう、と言う想像は簡単についた。

『(やっぱただの寝言ってオチはねえだろうな)』

[寝言にしちゃあ長かったっスよ? ちょうど誰かと話してるくらいの間隔で……二時前って垣根さんなんかしてました?]

『(いや。昨日は見回りもなかったからさっさと寝たぞ)』

ゲームしながらぶつぶつ言っているような奴に、実は独り言激しい方ですか? なんて聞かれるのはなんだかムカついた。
だが、そう言われるとますます不思議になってくる。
垣根は確かにその時間寝ていたし、夜中にトイレに起きてもいないはずだ。
一応聞いてみたが、事前にいろいろ試していた時も呼吸やいびきくらいではこんなデータはでてこないらしい。
垣根がイラつきながら降ってわいた問題に頭を悩ませていると。

「ちょっと」

「何かあったのかしらぁ?」

キッとした顔とニヤニヤ笑い。
二人の中学生が垣根の前に立ちはだかった。
949 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 02:18:43.08 ID:NN+oq12q0

三人はまた空き教室に移動する。
椅子に座らせた『未元物質』を囲んで、『超電磁砲』と『心理掌握』が並び、まるで取り調べ現場のようになっていた。
この部屋はここ数日で、能力値やAIMのスカウターでもあれば一瞬で蒸発しそうなくらい能力者の濃すぎる空間と化している。
食堂での亘木のちょっとした挙動不審はいつの間にかこの二人にも察知されていたようだ。

二人はそれぞれお友達から亘木の話を耳にして、何かあったのかと探しているところを合流したと言う。
揃って、なにかあったのは割れてるんだ吐いてもらうぞと言った様子だ。
多分バックれようとすると余計にうざったいことになることうけあいだった。
朝っぱらから超能力者対抗鬼ごっこなんてやっている暇はない。

ちくしょう、と垣根は美少女の顔で毒づいた。

仕方なく。
心底嫌そうな態度で、二人にも事情を説明した垣根は最終手段に訴えることにした。
食蜂に昨夜の記憶を探らせる。
もうそれくらいしかこの疑問を解決する方法はなさそうだった。
任務中に出てきた疑問点を放っておくわけにはいかない。
何より手がかりが今現在もほとんどないのだ、当たれるものは潰していくしかない。

「あらぁ? おかしいわねぇ」

リモコンを自分と亘木の頭にそれぞれ向けて記憶情報の一時的な同期をしていた食蜂は首を傾げた。
該当時間の垣根の記憶を洗ってみても、誰かと話していたなんてものどころか部屋を出歩いた記憶もない。
つまり昨夜の垣根は確かに自分の部屋のベッドで寝ていたはずだと食蜂も言う。
今度こそ、『心理掌握』が頭の中を調べたのだから間違いない筈だ。
誉望がここで嘘の情報を持ち出してくる理由もない。

「待って…あんまり考えたくないけどぉ、これって他の容疑者の人たちと同じよねぇ?」

「垣根さんも誰かに操られてるってこと? いつ誰にそんなことされたのよ。て言うか! 男の人は大丈夫なんじゃなかったの?」

「あくまで仮説力の話だったから、確証があった訳じゃないのよぉ。でも……もしそうなら困ったわねぇ」

「俺、何でこんなとこにいるんだ?」

[垣根さんが記憶喪失に?!]

誉望が誰も聞いていないのをいいことにまたふざけているが、急な記憶障害でも哲学的な自分探しでもない。
ふざけた任務でふざけた格好をさせられて散々な目にあっているのにまさかの、前提から的外れ&自身が被害にあった疑惑。
この連撃は垣根にもこたえるだろう。
わざわざスカートを履かされた苦労が無意味だったとは思いたくもないはずだ。

少し時間をおいて。
「こうなったらさっさと解決してとっとと出てく。元凶のヤツはブッ潰す」と、垣根が物騒な方向に気分を持ち直したところで。
改めて問題にとりかかることになった。
仮に操作されているとして、なにか思い当たるような能力者との接触があったか、と言えば。
放課後ラーメンを食った連中か参加した音楽鑑賞会だろう。
それを聞いて美琴がいち早くPDAを操作する。

「……いないわよ。アンタが昨日会った中に、精神操作の出来る能力者なんて」

スペースの使用許可の為に学校側に提出している『プシュケの夕べ会』の名簿も引き出してきたようだが。
それもあわせて『書庫』で調べても一致しそうな人物はいないと言う。

「ほら。あの会長さんも気流操作よ。レベル3」

見てよ、と言った美琴から亘木は端末を奪い取る。
彼女の言った通りそこに並んでいた『書庫』の検索結果の中には洗脳どころか念話能力者でさえ見つけられなかった。
むしろ能力の面では生徒たちに共通点があまりない、学年もばらばらで本当にただのお遊びの会だった可能性が強まる。

「仕方ないわねぇ」

そう呟くと食蜂は肩からかけていたバッグのチェーンをおろした。
中から無数のリモコンを取り出す。
それを、まるで威嚇する拳銃のように亘木に向けた。

「はっきりしないってことは、疑惑力もゼロじゃないってことよねぇ。こうなったら……垣根帝督、アナタの頭の中徹底的に調べさせてもらうわ」

「ちょっとアンタ、そこまでする気?」

美琴は思わず、と言った様子で二人の間に割り入ろうとした。
食蜂は対象を完全に意識のない操り人形に出来るほどの精神操作能力者だ。
その彼女が…徹底的になんて言ったら、一体どんなことをするのかわかったものではない。

「事前に教えてあげただけ良心力あるでしょぉ? ここに最新で最重要の手がかりがあるのに放っておける? もし洗脳済みなら、私たちも危ないわぁ。今手を打たないといけないじゃない」

そう言われると、美琴も反論できなくなる。
もしも。
第二位の垣根が、常盤台で悪さをしているような誰かの操り人形になっていたら……第三位の美琴ではまず敵わないだろう。

「アナタにはちゃんと協力してもらうわよぉ。最初からそのつもりでここまで来てもらったんだしぃ?」
950 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆0S9Trjf4dQ [ saga]:2017/12/22(金) 02:22:08.21 ID:NN+oq12q0

緊張しているのか、笑っているはずの口元が少しひきつっている。
もう一度リモコンを持ち上げる食蜂。
当の垣根は、と言うと、
「仕っ方ねえ。テメェに貸し作るみてぇで気は乗らねえが……やっとつかんだ手がかりだ。やれよ。そのかわり、成果が出なかったら覚悟しとけよ」

肩をすくめてそう言うと耳元と首に手をやる。
その時美琴には、何かの信号が途絶えるのがわかった。

「アナタの頭の中を丸裸にさせてもらえるなんて、私もとぉっても嫌☆ でもこっちも全開力でやらせてもらうわぁ。これ以上、私に恥をかかされちゃたまらないもの」

この件の黒幕に散々探査網を潜り抜けられているのは彼女も我慢ならないらしい。
最初に『心理掌握』で片がついていたら、そもそもこんな話にもならなかったのだ。
食蜂からすれば自身の力不足と言う評価にもつながりかねない事態は相当悔しいのだろう。

それぞれ覚悟を決めたらしい超能力者二人は互いに笑みを浮かべた。

垣根の能力の何が干渉して食蜂の能力に影響するかわからない、と言われて垣根は一瞬目を閉じて考えるような仕草をした。
目を開けて右から左、と視線を巡らせるといいぜ、と呟く。
彼の能力はもちろんその影響下にあるものへの解除はそれですんだらしい。
読心潜行005、幼児退行401……と呟きながら食蜂は次々リモコンを持ちかえてボタンを押していく。
そうして下準備がすんだのか。
食蜂はフフンと一仕事終えた様子で腕を組むと、
「あ、一応御坂さんは外に出ておいてねぇ。何かあった時に『忘れられないエピソード』は頭に入れたくないでしょ?」と言って美琴を振り返った。
これからいろいろ自白させられるだろう垣根本人はもちろん。
記憶の消去が完全に出来るかあやしい美琴にも気をつかったのか部屋から出ていくよう促した。

言われるまま二人を残して美琴は部屋を出る。
一応、気にしてドアの前でこっそり聞き耳を立てた。
何かトラブルがあった時にどちらも止められそうなのは美琴だけだ、何とかしなくてはいけない。
それくらいの責任はこの話に関わってしまった時にばくぜんと感じていた。
数十秒、数分、しばらくの間何か早口で話す垣根。
それに質問しているのか誘導しているのか声をかけているような食蜂の様子。
少し間を開けてなにか物音がする。
行動の再現でもしているのか、合間に二人の声が混じる。
一体何がおきているのかも外からはよくわからないまま、食蜂の取り調べは進んでいく。

「ああ。そう言うことねぇ」

ふと。
何か発見したのか食蜂がそれまでより大きな声で呟いた。

「きゃあ?!」

「何だよ」

「別になんでもないわぁ……ふぅん」

「今度は何だ」

「へぇ〜〜」

「何なんだテメェ」

余裕がでてきたのか、二人の雰囲気は最初の緊張感からはずいぶんゆるんでいるようだ。

「ふふふふふ…ねえ、アナタってぇ、意外と……ぷふふ」

「真面目にやれっつってんだろこの馬鹿、あ? なんだ? 何がそんなに笑えたか、テメェの頭に聞いてやろうか?」

「ちょっとぉ乙女相手に野蛮力にも程が、いたぁい!! みっ御坂さぁん、終わったから! もう終わってるからぁ! 早く助けてぇ!」

情けない悲鳴にげんなりしながらドアをあけると、亘木に拳骨でこめかみをえぐられている食蜂がいた。
見かけ上は少女の微笑ましいキャットファイトだが、中身のことを考えるとずいぶん大人しいおしおきだ。
意外に紳士的なのかしら、と美琴は思ったが。
普通は、特に男子は女の子相手にそう簡単に気軽な暴力に訴えたり電撃やドロップキックをかましたりしてこないはずである。

「どうせ大したことがなくても人をからかってくるんだから。まじめにこいつの相手すると疲れるだけよ」

「だからってクソ生意気なやつを放っといてやるほど俺は優しくねえんだよ」

どうやらガチのブレインウォッシュは無事に済んだらしい。
それを察して垣根も美琴も軽口を叩いている。

「もぉ! 二人とも、この先ずーっと私につき従いたくなる様にしてあげてもいいんだからねぇ?」

「いい度胸だなコラ」

「ふざけんじゃないわよ?」

「暴力反対よぉ!!」

リモコンを振りかざして文句を言っていた食蜂は、上位の二人から同時ににらまれてたまらず悲鳴をあげた。
かに見えたが、
951 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」 ◆q7l9AKAoH. [ saga]:2017/12/22(金) 02:27:45.71 ID:NN+oq12q0

「いいわよぉ。意地悪な人同士仲良くしてればいいんじゃないかしらぁ?」

「は? 痛っ?!」

バチン! と美琴の頭に何か弾いたような衝撃があった。
食蜂のやつ、懲りずに人にリモコンを向けたらしい。
いつもきかないって愚痴っているくせに何をしてるんだか…と呆れと痛みに美琴が頭を押さえていると。

「美琴ちゃーん!!」

「だぁー! なに、ちょっとー!」

「美琴ちゃーん! かわいい!」

「嫌ぁああなに!! なんなの!」

急に亘木が抱きついてきた。
おまけに頭をもしゃもしゃ撫でられる。
なんだどうした、と突然の奇行に美琴が引いていると、食蜂はニヤニヤしながら勝ち誇ったようにポーズをきめる。

「ふ、ふふふ……これでアナタたちは三分間は問答無用でラブラブよぉ!!」

「なんっ、なんで急に操作され……いた、いたたねえちょっと、頭おさえないで?!」

「さっきまで私の前にすべてをさらけ出していたていこちゃんの頭をちょっとお花畑にするなんて簡単よぉ。能力面のセキュリティも今は心配なさそうだし。無防備力全開でガバガバな割に前に仕込んでおいたセーフティとの競合でちょーっとおかしな結果になってるのは……さすが私の洗脳力、どっちもつよぉいってことかしらぁ?」

第三位に通用しない洗脳が第二位にあっさり通ってしまった。
ハイテンションなドヤ顔でタネあかしをすると食蜂は近くの椅子を引き寄せて座った。
ニヤニヤ楽しそうに混乱しきった状況の二人を眺めはじめる。
食蜂はラブラブと言ったが。
なぜか動物王国の主とそのおともだちのようになっていた。
一方的に亘木に頭を撫でられているが、もしも美琴も正気を失っていたらバカップルのようにいちゃつくことになっていたのだろうか。
中身はクールなお兄さんの超能力者が異様なハイテンションで構おうとしてくる現状でも十分に地獄絵図だというのにもしかしたらそれ以上に悲惨なことになる筈だったのか。
邪智暴虐『心理掌握』、相変わらずの鬼畜の所業だ。

「どう見ても女の子なんだけど、本当は違うのよね……垣根さんしっかりして!」

「じっとしてろって。ったくかわいいなーお前。よしよし」

女子とは思えない(実際違う)腕力で、抵抗しようとする美琴を押さえつけて亘木はにこにこしながら頭をなでなでし続けている。
超能力者三人しかいないからと音声の細工をやめているせいで声が元のままだから、見た目とあいまってとても怖い。
美琴は小柄な白井にセクハラされるのも嫌だが、綺麗なオカマにかわいがられているような状況も非ッッッ常に嫌なんだと知った。

「御坂さん、どうなってるかよく見えるようにしてあげましょうかぁ?」

「こんのお、外道!! あっそうだ、お願いがあるのよ。ちょっと聞いてくれる?」

「何だよ美琴ちゃんなんでも言えよ」

大型犬をよーしよししているモードにでもなってしまったような亘木は手を止めて返事をした。
残念ながら電撃は通じないだろうから攻撃できない。
うっかり怒らせるのも多分怖い。
それに一応食蜂の被害者だ。
そこで美琴は邪魔者を残り時間でまとめて排除する方法をひらめいた。

「この外道しいたけを今すぐプールに投げ入れてきてくれない? 頭が冷えると思うのよね。場所わかるかしら」

「任せろ」

亘木はとってもいい笑顔で食蜂を小脇に抱えて翼を生やすと、あっと言う間に飛び去って行った。
なんだろうあの羽、と新たな疑問はわいたがとりあえず美琴の平穏は戻ってきた。

それから少し経って、
「時間が経って無効になればとは思ったけど……何で食蜂だけじゃなくアンタまでそんなカッコなの?」

なぜか二人ともずぶ濡れで教室に帰ってきた。

「放り投げてから正気に戻ったからな。こいつ、このナリで沈んでくんだぞ。どうなってんだよ」

「ちょっ、ちょっとやり過ぎちゃったかしらぁ?」

「ん? テメェ、鼻から死ぬほど水飲んできっちり反省したんじゃねえのか?」

「グスッ、ごべ、ごぇんなさぁい」

びしょびしょでグシャグシャになった食蜂は、思い出したようにべそをかいて美琴に頭を下げた。
よくみると既に泣いた後みたいな顔をしていた。
溺れかけた所は助けてもらったが、それが自分がひどい目に遭わせたお兄さんだったのがよっぽど怖かったのか。
どうやら美琴の知らない間に一つ修羅場が片付いていたようだ。

「それで。肝心の昨夜の空白の謎は解けたの?」

美琴が話題を戻すと食蜂はうなずいたが、露骨に視線を逸らしていた。
952 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目・放課後」  ◆q7l9AKAoH. [ saga]:2017/12/22(金) 02:29:43.24 ID:NN+oq12q0

「そうねぇ。何があったかはわかったわぁ」

「どうすんの?」

「そっからはこっちの話だろ。元々テメェは部外者だ。余計な首つっこむんじゃねえ」

それについて既に把握したらしい二人は美琴を突っぱねるような態度だ。
確かになりゆきで後から関わって首を突っ込んだのは確かだ。
でも。
何か困ったことが目の前で起きていて、ある程度でも知ってしまった美琴がそれを放っておく理由にはならない。
そんなことは美琴が手を貸すことの障害にはならない。
まあ……あんまり協力もしたくない相手だと言うことの方がそういう意味では重要なくらいだ。
おそらく。
この先また相対するのは超能力者二人がここまで振り回された、常盤台で起きたトラブル。
それに巻き込みたくない人が、ものがある。
美琴が首を突っ込むにはそんな理由で充分だった。

「最初は人におしつけて楽できるなんて言ってたくせに、それってずいぶんじゃない? アンタたちねえ、困った時くらい素直に誰かを頼りなさいよ」

自分に力があって、なんでも出来る。
自分でなんでも解決しなきゃいけない。
実際に、なまじ力があるとそう考えてしまいがちな悪い所があるのは、二人と同じ超能力者の美琴も嫌と言うほど身に染みていた。
そして。
その結果、巻き込まれてしまった誰かに感謝しきれないくらい救われたことも。
だからこそ、進んで巻き込まれてやろうじゃない! と大きく声をあげた。
そんな美琴の勝手な発言を聞いて。
垣根も食蜂も二人してぽかんとしていた。
簡単に美琴が引き下がるとも思っていなかっただろうが、それ以上にしゃしゃり出てきた様子に本当に驚かされたのか。

「まぁ…そこまで言うなら、当てにはさせてもらうわぁ」

「おーおー、使ってやるよ。そん時があればな」

二人とも呆れた様に笑っていた。


「まぁ、これでいよいよテメェらの顔を見なくてもよくなりそうだな」

「そうねぇ。ていこちゃんがからかえなくなるのはちょーっとさみしいかもしれないけどぉ」

「は?」

「ちょっと、やめなさいよ。アンタたちが喧嘩なんてしたら絶対ただじゃすまないんだから。あ、ところで水に入ってその通信機大丈夫なの?」

それを聞いた亘木が不自然なくらい、一瞬動きを止めたが気付かない美琴は話し続けていた。

「前に女の子と喋ってたでしょ? アンタも大変よね。女子校に来るからってガールフレンドにいろいろ聞かないといけないなんて……」

「テメェ、どっから人の話聞いてやがった?」

「何、なんなの急に? ねえちょっと、さっきより怖いんだけど……って、えっ……」

相変わらず見た目は女子のままでガンを飛ばして凄んでくる亘木。
もう何度、ちょいギレの第二位を見ているかわからない美琴。
彼女は知らないが実は危険度では今が一番ヤバい。
訳ありすぎて困ってしまうていこちゃんのちょっとまずいネタを思いがけず掴む寸前だった美琴だが。
まさか自分がそんなにピンチだとは気づきもしないで、ちょっとまずいことになってる掴めそうな眼前に釘付けになっていた。

「コイツとテメェどっちを潰した方が早く済むんだろうな」

指先でつまんだイヤーピースと美琴を見比べた垣根の声はちょっと真剣だった。
953 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「三日目・朝」  ◆q7l9AKAoH. [ saga]:2017/12/22(金) 02:31:54.53 ID:NN+oq12q0

「……ねえ」

「ひゃぁ? 何よぉ。ちゃんと謝ったでしょぉ? やりすぎたのは、私だって反省力をみせたじゃない」

美琴に声をかけられて大袈裟にビビる食蜂。
彼女はちゃっかり取り巻きに連絡してタオルと替えの制服を持ってこさせていた。
髪を拭いてもらいながら、操られている生徒たちが床をきれいにして『女王専用お召し替えスペース』のカーテンの用意をするのを待っている。

「そうじゃなくて。アンタ、あんな所まで作ったの? ちゃんとていこちゃんのシャツが透けて見えるし……ってアンタもそんなところで脱ぐなーっ!!」

最初はひそひそ喋っていたのに、美琴はとうとう我慢できなくなって大声でツッコミをいれた。

「どうせそっちには俺の裸は見えてねえんだ。文句言うなよ」

どっかの大脳生理学の研究者みたいな堂々たる脱ぎっぷりで亘木は濡れたサマーセーターをその辺の机に放った。
こっちは替えまで用意がなかったようで、濡れたシャツのままタオルだけ勝手に借りて頭を拭いている。

「貸してちょうだい☆」

生徒の一人がそう言って亘木の制服を回収する。
ふり返ると、食蜂と少女は二人そろって同じ仕草でウインクする。
少女が濡れたセーターに手をかざすと濡れた服がだんだんとふわっとした状態に戻っていく。

「どうせなら他のもやれ。つうか運動着かジャージ、余ってねえのかよ。俺に風邪ひけって?」

「そうねぇ。なら、乾かす間着れそうなものを持ってこさせるけど……もしかして昨日と同じ服着てたのぉ? アナタも可哀想ねぇ」

「この状況でそこに同情すんのか」

文句を言いながら亘木はスカートに手をかけた。
スカートの下になにか履いているらしいので、常盤台生の目にはタイツでも履いているように見えている。
本来の状態から、適宜違和感のないように視覚情報が最適化でもされているようだ。
精神操作は本当に便利な能力だ。
散々あって、今更言うのもあれだが。
食蜂も亘木も濡れた服が透けたり貼りついてしまっているせいでなんかもう大変なことになっている。
本人たちはあまり気にしていないようだが、横から見ている方はそう言うわけにもいかなかった。

「あっアンタらはそれで中学生だって言い張る気なの?! どうなのよ! この……エロ下着共っ!!」

W濡れ透けに取り乱す美琴、彼女の対乳キャパシティはもういっぱいいっぱいだった。
うらやましいのか悔しいのか気になるのかおそらく全部だろう。
一人で叫んで落ち込んで、近くの机に突っ伏してしまった。

「御坂さぁん、虚像に負けたからってひがまないで欲しいわぁ」

「アンタねぇ…実は全然反省してないでしょ」

うつむいた美琴の前髪がアンテナのようにビリッとはねる。

「今電撃はそいつマジで死ぬぞ」

「あーっずるいわよぉ? ていこちゃんったら自分だけ安全力をキープしちゃってぇ!」

まだ少し伝導率がよさそうなていこちゃんは、自分の前に片側だけ翼を作り上げて呑気に呟いている。
その隣に入れてくれとふざけて駆け寄る食蜂。
きゃっきゃゆさゆさ見た目だけは天使っぽいのが並んでいるのを見て、また美琴は独り地獄に落ちそうな顔で凹んでいた。
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