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垣根帝督「はぁ? 俺はオタクじゃねえぞ」

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954 :あと>>948から三日目だったねすまんね  ◆q7l9AKAoH. [ saga]:2017/12/22(金) 02:47:30.89 ID:NN+oq12q0
おひさっすドーモ
途中で鳥に気付いて1は、
「ああ…とうとう自分のスレのトリップさえわからなくなってしまったのか…」と絶望に襲われましたがただスペースの空きだけでしたとさ。
よかったしょうじきちょっと泣くかとおもった

>>940
スピンオフはうれしいけどいろいろとこわいような

>>941
それと暗部落ちの原因とかな。余地はたくさんあるんだよ。
レールガンは結構敵サイドのバックボーンを掘り下げてくれてるみたいだけど、『スクール』はミコッちゃんと直接関わらなかったからやらなくて残念だな。
いや、いや!でもおかげでらっこさんに会えたじゃないか?よかったな?やったぜ超電磁砲、ありがとう超電磁砲

大変長らくお付きあいいただいた常盤台編も次回が最後の予定です。ていこちゃんも見納めだぜー
このスレで安価は終わりにしたいんだ…頼む、もってくれ!
955 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/22(金) 15:09:54.90 ID:QFur8hzVO
乙今年最後の更新かな〜
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/23(土) 03:55:50.58 ID:rfRpeoPdo
メリークリスマスイブ前夜祭(メリー天皇誕生日か?)。来年も楽しみにしてるわ
957 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 23:33:09.03 ID:7kVtfBjX0

そういえば超電磁砲の外伝で常盤台生徒で、ラッコちゃんの親族らしき方が登場していましたね。
958 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 22:46:15.19 ID:KalGNO6qO
三期まで保守
959 : ◆q7l9AKAoH. [sage]:2018/05/01(火) 02:52:22.58 ID:Bpv2fx0S0
ドーモ。常盤台潜入が仕上がったらきます。すいません
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/02(水) 22:16:53.75 ID:f6ZjF3+E0
やったぁ!
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 10:20:15.99 ID:ld+fJ7Do0
垣根がスカート履き始めて2年経ったけど俺ここのss待つの全然嫌いじゃない
>>1ならエタらせない自信があるし
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/06(金) 12:56:26.73 ID:sfxtiE+70
動くていとくん見た?
963 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 12:47:26.51 ID:Rb1Q6reo0
そういやスレ立てからもう四周年過ぎてたのか
面白くて何度も読んでるからかそんなに時間経ってる気しなかったな

最近たまに亘木ていこちゃんSSを妄想してる(形にはしない)
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/27(月) 17:55:19.07 ID:VWBMrUX+0
定期的に読み返してるが本当にここの垣根が一番好きだ
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/16(火) 11:24:47.08 ID:JntYw3T9O
ss速報復活してた保守 三期始まったね帝督
966 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「四日目・放課後」   ◆q7l9AKAoH. [saga]:2018/10/21(日) 03:39:21.44 ID:aWsBzONt0

終業のベルが鳴り教師が教室から出ていくと閉まるドアから一拍おいて、室内にざわざわとした賑やかさが広がった。
その辺りは世界有数の名門・お嬢様学校と言ってもここも学生、子どもの集まる場所だ。
控えめに、それでも開放感にはしゃいだ様子の生徒たちに囲まれて、美琴も席に着いたままぐーっと腕を上げて伸びをする。
食蜂たちと別れてあれから丸一日。
何かあったら、と美琴なりに不測の事態を想定して気を張っていたが拍子抜けするくらい何もなかった。
そして今日の授業もこれが最後。部活動のない美琴には放課後の予定もこれと言ってない。
ただ時間通り授業をこなしていく平和な時間割だった。専属の機関からの分析が割り込んでもいない、他の機関からの協力の要請もなかったし、とぷるぷる震える拳を伸ばしきって腕を下ろすと。
目を向けた先、廊下に立ってこちらを見る人影に気付いた。
普段ならツインテールの後輩が仕掛けてきそうな終業ジャストの出待ちアタックだったが、今日は相手が違ったらしい。
すらっとした足を軽く曲げて両手を腰に当てた姿勢で立っていた亘木は、くん、と顎を動かして廊下の先をさすとすぐに立ち去ってしまった。
それを見て美琴は首をかしげながらも荷物をまとめると鞄を掴んで教室から出た。
ちょっと帰りにお茶していきましょう、なんて雰囲気ではもちろんない。亘木はそんな奴でもない。
きょろきょろ見回していると教室から少し離れた所に亘木が居た。
不機嫌そうに眉を軽く寄せて、半分おりたような瞼で大きな瞳を隠した少女は、

『ちょっと来い』

やる気のなさそうな声で短く告げると亘木は美琴の返事も待たずに歩き出してしまった。
その後ろを慌てて追いかける。

(何よ。あんなこと言ってた癖に)

亘木のあの言い方。
丁寧口調のお嬢さまモードじゃないと言うことは用事があるのは垣根の方だろう。
美琴は当てにしないなんて昨日はそっけない態度を取っていた癖に、

(やっぱり頼りにしてくるんじゃない。素直に言いなさいよね)

と美琴は少しだけくすぐったい気分になって笑った。

やっとたどり着いた先はひと気のない校舎の間、教室二つ分はひらけた中庭だった。
そこで立ち止まっている亘木の背中に美琴は駆け寄った。

「どうしたの? こんなところまで」

美琴が見上げるが、亘木はちらっと目を向けただけで何も言わない。

「それで? 何の用よ。一言教えてくれてもいいんじゃない?」

やっぱり亘木の返事はなかった。
まだ何かあるのか、今度は無言で美琴の手を掴むとぐいぐい引っ張ってきた。

「え。ねえ! ちょっと!」

『うるさい。黙れ』

なにか変だ、と美琴はとっさに離れようとしたが腕をつかまれていて出来なかった。
美琴も短い付き合いだが、垣根の人間性もなんとなくわかっているつもりだった。
強引で話し方は乱暴でおまけに自分勝手。
それでも協力者に何も言わないなんてことはない。
むしろ聞いていなくても得意げにべらべら説明してくれそうだ。
それがここまで有無を言わせず返答もない状況、となるとやっぱり何かおかしい。

[ねえちょっと? さっきから、こっちには返事も無し?]

戸惑う美琴の耳に入ったのはかすかな、呆れた様な少女の声だった。
前にもあった感覚……至近距離での電磁的な混線、きっと亘木の通信機からだ。
垣根が怪しまれずに女子校で動き回るためにガールフレンドのアドバイスを受けている、と美琴は思っていた。

そこで美琴の疑問はある方向に向けて転がりはじめた。
この状況はきっと完全にイレギュラーだ。何か予定外のことが起きている。
それまでだって美琴や周囲の人間も構わずに無線で独り言みたいな内緒話をしていた相手にもだんまり。
おまけに相手がずっと話しかけてくるのを無視してまで。
耳元でうるさくされるくらいなら一言何か言って黙らせる、なんてことはやっていそうなのに。
そうして辿り着いた、確信めいた可能性にはっとして美琴は亘木の顔を見上げる。

「アンタ、操られてない?」

立ち止まって、無言で見返してくる亘木の顔は落ち着いてみえた。
慌てる美琴を前にして無表情、と言うのも変だ。
言い訳もしないし返事もない。
まるで。垣根にはそんなことよりずっと大事なものがあって。
それ以外のことは気にもならない、そんな風に美琴には感じられた。
ぱっとみた彼女……の見た目には、目に見えてわかりやすい変化はない。なにかアンテナとかアクセサリーが増えていたり、目や体に目印のようなマークがついている訳でもない。
でも、美琴はこう言った違和感に覚えがあった。
急に何か異質なものがさっきまでの景色に突然割り込んできたような感覚だった。
どこかちぐはぐさのある不自然な人間の動きにぞっとする経験は前にもあった。
そこまで頭を働かせた美琴は悔しげに眉を寄せた。
もしこれが食蜂の差し金じゃないなら、事態はおそらくきわめて悪い状況にある。
967 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「四日目・放課後」   ◆q7l9AKAoH. [saga]:2018/10/21(日) 03:45:24.18 ID:aWsBzONt0

「ったくもう、正気に戻ってよね!」

バチン!! と大きな音を立てて二人の間で電撃が弾けた。派手な音と衝撃が走った。
亘木は顔の前に左手をかざしたまま首をかしげていた。
電撃は突き出された肘から腕に走ったのか。それともまた何か能力で防いだのか。
わからないが少なくとも本人はしびれた様子もけがをした様子もなかった。
めざましがわりにしては相当強めの一発を放った美琴がほっとしたのもつかの間、

『そんなに嫌か』

「へ?」

『そこまでする程嫌か、って聞いてんだよ』


美琴にとって何度目になるだろう、威圧と怒りの感情が向けられている。
亘木は……一体何が引っかかったのかはわからないが。
さっきまでのそっけない態度が嘘の様に、急に美琴に詰め寄ると手首を掴んで顔の近くまで持ち上げてきた。

『大人しく出来ねえ、ってのか? おい。それならこっちにも考えがあるぞ』

「いたっ、ちょっと!」

耳元に落ちる少女の声は怒っているのに低くて冷え切った様だった。
何か考えがあるなんて口ぶりだったのにやっているのは完全にただの力ずく、実力行使だ。
美琴もとっさに振り払おうとしたが亘木の手はびくともしなかった。
今の外見はともかく中身は男だ。
それも今度はきっと本気。加減なしで掴みかかられるとこんなに力の差があるのか。
それを体感して美琴はぞっとした。
きっと能力でも力でも、美琴が本気で抵抗してもコイツには敵わない。
それどころか、逆上されて今以上に怒らせたら一体どんな目に遭うのか。
第三位の超能力者は彼女がほとんど経験したことのない感覚に背筋を冷やしていた。
学園都市の中でも、御坂美琴にそんな敗北感や恐怖を与えた相手なんて……あの馬鹿と、第一位と……恐ろしい寮監くらいのものだった。
まずい、と危機感と焦りが美琴の中で膨らんでいく。


「そこまで期待はしてなかったのに大成功ね。新入りさんが本当に連れてこれるとは思ってなかったんだから」

いきなり割り込んできた少女の声に、亘木は急に腕の力を抜くとぼんやりとそちらを向いた。
少し離れた建物の陰から制服姿の生徒が一人、二人の前に姿を見せた。
美琴はその隙に腕を振り払ったが亘木はもう気にもしていない。

「そんな風に押さえつけてなくていいわ。彼女とは先にちょっとお喋りをしておきたいんだから」

満足そうにうなずく少女の姿を見ると亘木は美琴から離れた。
さっきまでが嘘の様、借りてきた猫の様に大人しくなって様子を伺っていた。

「こんにちは御坂さん、会いたかったんだから。ずっとね」

笑いかけてくるその顔に美琴は見覚えがあった。
ついこの前、寮監に呼び出された監督室ですれ違った少女だった。笑うと目がつりあがる様に細くなる。
美琴は隣の亘木をちらっと見たが、何だかぼうっとしていた。
催眠か洗脳か、どちらにしても操られていたからだろうか?
この様子では相手が何かしてきても対応できるかどうか。まず戦力としては期待できそうにない。

「その子には簡単なおつかいを頼んだの。『御坂さんを連れ出してあたしが来るまで引きとめて、後はいいこにしててね』ってお願いしてあるんだから」

それを聞いて、気になっていた悪い予感が当たった美琴は内心焦っていた。
まさか、騒動の助っ人に呼んだ相手がまんまと操られてる。
だが、この状況はこちらにとってもチャンスだ。
事件の黒幕本人がこうして今目の前にいる。

(コイツ一人くらい、私だけでもなんとかなるわ)

呼び出して連れてくるだけの指令に従ったにしてはちょっと乱暴だった気もするが、それでも幸運だった。
美琴たち以外には、亘木=垣根帝督として認識されていないと食蜂が言っていたのは本当だったらしい。
亘木……垣根がもし、「どんな手段を使っても御坂美琴を確保して主人の元に連れてくること」なんて命令を猫野に受けていたら。
第二位の超能力者は文字通り何をしてでも御坂美琴を確保しようと攻撃してきたかもしれない。
そうなったら美琴は抵抗できない状態でまんまと猫野の前に差し出されていただろう。
それでは相手の思惑通りになって、美琴たちには今回の問題を解決することはできなくなっていたかもしれない。
それどころか、二位、三位、五位、と超能力者たちがこんな事件を企んだ奴の好きにされる……操作されてもおかしくない状況に陥ったら一体どんなことになるやら。
それに比べたら現時点ではそこまで最悪の状況にはない。

おまけにこれ以上亘木が何かしてくる様子もない。
超能力者を相手にするよりは手下や駒に頼る謎の能力者の方がましだ、と事態を捉えた美琴は笑みを浮かべて猫野をにらみつけた。
そう言う回りくどい手段に訴えるのは、能力者本人に直接的な攻撃力がない場合が多い。
彼女の嫌いなあの女王様がそのタイプ、最悪の場合でも相手はその下位互換程度なら。
それほどの脅威だとは思えなかった。
パチパチと牽制の電撃を迸らせて相手を威嚇する美琴。
だが、目の前の小柄な少女はまだその余裕の態度を崩さなかった。
その様子に美琴は少し引っかかった。

亘木には期待していないと言った。ここに連れてくる時点で、彼女の目論見は成功しているとも。
今まで周到に準備していた人物が美琴の抵抗、いや反撃を想定していないとは思えないが……。
968 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「四日目・放課後」   ◆q7l9AKAoH. [saga]:2018/10/21(日) 03:48:11.36 ID:aWsBzONt0

そこでふと美琴の思案は中断された。
すぐ近くに異変を感じて、悩むどころではなくなる。
ぼんやり俯いていた亘木の肩がびくびくと動いていた。
さっきまでただ立っていただけのはずの少女のシルエットがまるでわずかでも平衡感覚に異常をきたしたかの様に。
短い間隔で電気ショックでも浴びたように続く断続的なその動きに髪が小さく揺れていた。
電撃は通じないはず……と少しの間、その様子に首をかしげていた美琴だが、亘木の相変わらずぼんやりした目に変わりがないことに気付いて駆け寄ると顔を掴んで上げさせた。
瞳は真っ暗で焦点があっているかも怪しい。体の震えに対して呼吸は静かでそれが一層不気味だった。
さっきまでの操られている時よりよほどおかしな様子と何か発作でも起こしたかのような体の震えに異常な雰囲気が増した。

「ちょっと? 大丈夫……って、アンタ他にも何かしたの?」

「あっあたしは何も……」

怒鳴りつけてきた美琴の剣幕に、猫野はすくみあがった子猫の様に震えて首を横に振る。
彼女の仕業でないならこの異変には対処できないだろう。

『――ぁ、う……っく』

「しっかりしてよ!」

美琴が悲鳴を上げかけた瞬間。バシン! と大きな音がした。
亘木が自分の額を平手で強く叩いた音だった。

『……うるせえんだよお前ら。人の耳元で騒ぐんじゃねえ』

不愉快そうな呟きにあわせた様に、今度は美琴達の背後で靴音がした。
まだ驚いてひきつった顔の猫野が目を向けた先に現れた少女は手に持ったリモコンをライブ中のサイリウムのように振っている。
長い金髪を揺らし不敵に笑う彼女は、常盤台の頂点に君臨する女王。
食蜂操祈その人に違いなかった。

「おはよぉ☆ ていこちゃーん? 目はさめたぁ? ご機嫌いかがかしらぁ」

『おはようみさきちゃん♡ とでも言えば満足か? あぁ?』

顔を見合わせて笑う少女たち。さっきまで美琴が「敵」と対峙して張りつめていた緊張感はどこにいってしまったのか。
どこか気の抜けた空気に変わったことに美琴の肩からも力が抜けていた。

「アンタ大丈夫なの?」

『なーんかまだムカつくけどな。問題ねえ。だから、問題ねえっつってんだろ。お前もいいから静かにしてろ』

そう答えると亘木は乱暴に頭を振った。
後半の文句は、恐らく自分たちには向けていないことを察して美琴は改めてほっとする。
少なくとも普段の調子に戻っているんだろう。

「ここまでは予定通りなんだけどぉ。ていこちゃんったら私が直に弄ってあげないとダメなんだから困っちゃうわぁ」

『ならさっさとしろよ』

亘木が不満げに呟く。
食蜂の能力なら、様子がおかしくなる前に精神的なプロテクトを仕込んでおくことくらい簡単そうだと美琴も思ったが。
あえてそうはしないのが食蜂の狙いだったのか。
ともかく。こうして、一時的に共闘関係に身を置いた超能力者がずらりと揃うことになった。

『ったく。これでやっと面倒事が片付くな。とりあえずこいつ、拘束しときゃいいのか?』

「ああもぉ。野蛮力の高い人たちはすぐこれだから困っちゃうわぁ。犯人さんにはどう言うことかちゃあんと話してもらわないとねぇ」

『知るか。そんなもん後で好きなだけ吐かせりゃいいだろ。何ならテメェで洗えばいい』

ひとまずこっちの仕事を片づけさせてもらう、と言って猫野を見る亘木を美琴も慌てて止めた。
まだイラついているのか不愉快そうな表情に鋭い目をしている。
これは良くないやつだ、と美琴でもすぐに感づくヤバイ様子だった。

「私たちでもなんとかなるわ。アンタ、顔色悪いわよ。まだ他に何されてるかわかんないんだしちょっと様子見てなさい」

「あらぁ? なんとかするのは御坂さんだけよねぇ?」

「アンタもここまで来ておいて、面倒事はいきなり押し付けんのかーッ! 人を部外者扱いしといて都合よすぎるんじゃないの?」

「だってぇ。ていこちゃんに働いてもらえば手駒力は充分だしぃ。御坂さんに何もしらない餌の演技力なんて期待できないじゃない」

可愛い仕草で膨れてみせる食蜂だったが、あざといぶりっ子モードはこの場に居る誰にも通用しなかった。

『誰がテメェの駒だ』

唯一、性別の点では他より可能性のありそうな亘木でさえ目もくれずうざったそうにしていた。

「私に話があるって言うんだし、アンタも二人っきりじゃなくても構わないでしょ?」

「いいわ。まだ少し時間はあるんだから。昔話をしてあげる」

超能力者たちの勝手なお喋りを見せられていた猫野は諦めた様に首を振った。
カサカサとどこからか風に吹かれた木の葉が舞う音以外はあたりは静かだった。
969 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「四日目・放課後」   ◆q7l9AKAoH. [saga]:2018/10/21(日) 03:50:17.06 ID:aWsBzONt0

常盤台、そして『学舎の園』では高い水準を誇る能力開発と同時に、その為の設備からなにから、必要なものはすべてその敷地内で生産と管理をしている。
学園都市でもトップクラスの門外不出の機密事項がそこらじゅうに使われた、異物と部外者を徹底して排除しようとする淑女の温室。
外部からも内部からも何か運び入れたり持ち出すのは難しい。生徒たちが何気なく利用している施設や物が、その敷地の外では貴重で重要である、と言うケースもあるので有形無形に関わらず、ほんの少しの情報でさえ取り扱いが厳重だった。
それでもいくつかの例外はある。
学業に必要なものに関しては、学校側の監査や検閲を通った上で許可が下りれば物の出入りに問題はない場合が多い。
例えば派閥の活動で使う物品や、研究に必要な学術資料もその一つだった。

「あたしのお父様は外の会社でマイクロシステムの研究をしていたの。発表した論文が学園都市で似た様な研究をしていた派閥の目に留まって意見交換会の話まで来たわ。もちろんテレビ会議だったけど。学生相手でもきっと楽しい話し合いが出来るって……お父様はとっても嬉しそうだったんだから」

そう言って目を細める表情は、家族との幸せな記憶に浸る少女のものだった。
だが、その表情が再び暗く沈んでいく。

「お父様の研究は順調だった。忙しくて、毎日が楽しそうだったんだから。それも去年……事故に遭うまで。後遺症で以前の様には生活が出来なくなってしまった。そしたら、会社の人たちはそれを理由にお父様を辞めさせて何もかも取り上げたの。手を回してそれまでのデータも功績も権利も全部自分たちのものにした上で。あれは、お父様のものだったのに」

怒りに駆られた声で話し続ける。少女の目に続いて浮かんだのは恨みの色だった。
温かいものを急に奪われた悲しみと理不尽な裏切りに残ったものまで台無しにされてしまった。
それに対する怒りに駆られる様な勢いづいた声で話し続けていた。

「あの人たちが手を加えていない、そんな真似ができないデータが残っているのはここだけだったんだから。だからあたしはそれを知ってすぐに新年度からの転入の為に行動をはじめたの。誰にも邪魔されない様に全部秘密にしてね」

少女は、何を思いこの『学び舎の園』の門をくぐったのだろう。
何かを取り戻したかったのか。
あるいは。彼女自身わからないままに、それでも何かしなくてはいけないと感じたのか。

「それでも大変だったんだから。派閥のことは知っていたから所属している生徒を調べて、お父様の話をすれば済むと思ったの。でもね、ここのお嬢さまときたらプライドと選民意識が高すぎてその辺の人間とは口も利かないなんて面倒な人ばっかりなんだから。おまけに……あたしの名前を聞いてもまだ……なんのことかもわからないようだったんだから」

いつのまにか。猫野の目はすっかり落ち着いていた。
揺らがないその様子は、諦めきった人間の表情に似ていたが。
まだ、獲物を狙うようなぎらつきがのぞいていた。

『そいつがテメェの動機か? ずいぶんとつまらねえな』

「ちょっと! そんな言い方ないでしょ」

それ以上馬鹿にする気にもならない、そんな風に亘木がやる気なく首を振って呟いたのを美琴が咎めた。

「他にあたしに何か聞きたいことはある? 今なら質問に答えてあげるんだから」

自嘲に似た冷めた笑いを浮かべて猫野は美琴に首をかしげてみせた。

「今まであった、生徒の徘徊騒ぎはアンタのしわざでしょ。一体どうやったのよ」

「御坂さんには悪いけど、それなら大体の見当力はついてるのよねぇ」

「え。そうなの?」

美琴が驚いて振り返ると亘木もうなずいた。

「だから……答えあわせをしてもらおうかしらぁ」


そう言って今度は食蜂が話しはじめた。
彼女も、亘木に身に覚えのない行動が見つかった時に、本人の記憶に手がかりがないか、洗脳による痕跡が見つからないかを調べていた。
だが、いつものように『読心潜行(カテゴリ005)』などを使っても該当しそうな記憶は見つからなかった。
そこで。食蜂が徹底的に亘木の頭の中を洗い、その時間帯の行動を全て再現させると。
確かに誰かと会って、話をしたような言動をとった。
そこから、本人の頭の中に関連するデータが無いかを更に深く探ってみると。

「出てきたのよぉ。御坂さんを今日の放課後、この場所に呼び出さないといけないって言うていこちゃんの意志力が。でもそれは普通の記憶とは別の所に保存されてたわ。見当違いの場所で探し物をしたって見つからないわけよねぇ」

「データの参照先が別だったってこと? 一体どこに」

美琴が自然と口にした疑問に食蜂は薄く笑うと、

「夢の中よぉ」

まんまと出し抜かれた、その割には面白そうに話を続けた。
夢を見るプロセスでは通常の記憶に関わる場所とは別の領域が使われていて。
そこに関わった「見た夢」の情報は強く定着はせず放っておけば自然と薄れて消えてしまうことがほとんどだ。
そして当たり前だが、現実に起こった出来事や実際の本人の経験とは区別される。
だが、脳が夢を構成する段階で現実の体験や経験はその中身に影響を与えるものらしい。

本来なら夢と現実を混同する人間はそういないが、その逆流を暗示によって行っていると食蜂と、話を聞いた垣根たちは仮定した。
さっきまでの亘木の例なら、あの夜の亘木は美琴に関する暗示を改めて施すためにどこかに呼び出され……事件に巻き込まれた他の生徒たちの様に操作された状態で徘徊した結果、記憶の空白が起こったのだろうと言うのが食蜂たちの意見だった。
暗示をかけられていた本人は何をしていたかを目覚めた後覚えていないが。
その間に得た『御坂美琴を放課後呼び出さないといけない』と言う次の指示はその後も頭の片隅に残っていたと言うことになる。

「単純に思考や記憶の表層をなぞるだけの読心能力者じゃ、まず何があったかなんてわからないわよねぇ。うまいところに仕込んだ、と言うより……かなり使いどころの狭い能力だわぁ」

「そう。やっぱり記憶だけ探ろうとしても簡単に痕跡は出てこないのね……ありがとう。いいことを教えてもらえたんだから」

手の内を明かされたはずの猫野は食蜂に笑い返した。
精神系最高位と言われる能力者の、その手を煩わせたことが嬉しかったのかずいぶんと得意げな顔だった。
970 :レス数ぎりぎりの予感ごめんな   ◆q7l9AKAoH. [saga]:2018/10/21(日) 03:53:37.74 ID:aWsBzONt0

「食蜂さんのお話はほとんど正解。あたしの能力は『催眠能力』よ。眠っている人間の脳の働きに干渉するわ。でも、レベルが低いから無理やり従わせるような強制力はそんなにないの。暗示をかけた内容を本人にそうしむける程度のものでしかないんだから。朝見た夢はいつのまにか忘れてしまうでしょ? 誰かが、夢うつつでしてしまったことに……あたしは関係ないんだから」

「それで今まで尻尾を掴ませなかったの」

「あたしのやり方は時間はどうしてもかかるものだから、とっても慎重に進めたんだから。派閥のメンバーを何人か確保して暗示をかけて話を聞き出したり、少しずつ材料を集めたわ。派閥内での情報の扱い、必要なパスやデータ。先週やっと十分な手がかりを掴んだんだから。後は狙ったデータを集めて書きだすか転送すればよかったんだけど」

「思ったようには進まなくて、夢遊病の事件が発覚したのね」

美琴の言葉に猫野は残念そうにうなずいた。

「そこまで進めるまでに、途中で何度か見つかったの。ここでつまづいたら台無しだもの。頼みたいことの他に『誰かに見つかったら逃げる』様付け加えたり、催眠の対象に読心能力者を選んで警備員を察知させたり……大変だったんだから」

『ああ。それであいつ、向こうに先に気付かれたっつったのか』

「でもぉ。ここでおかしなことが起きはじめて、風紀委員が真っ先に捜索力を駆使してたわよねぇ? この私を含めて、他人の操作が出来る能力者はみんな調べられてたはずでしょぉ。その捜査網はどうやって潜り抜けたのかしら」

「そんなの人を使って調べるまでもないんだから。少し調べるだけで十分にね」

そう言われて、美琴はポケットから取り出したPDA端末を操作した。
『書庫』にアクセスすると。検索した中から顔写真で判断してファイルを開いた。
「あった。鍋島緋十実……レベル3の……『予知能力』? それなら捜査の対象にはならないかもしれないけど。能力のデータが大元から改ざんされてるってこと? でも、そんなの転入前にだってすぐわかるはずだし、簡単に出来ることじゃないわよ」

美琴が驚くと猫野は今度は得意げにほほ笑んだ。

「猫野は父の姓。あたしが何をしたか、そこの女王様ならわかると思うんだけど」

「開発官の洗脳かしらぁ」

何でもないことのようにさらりと食蜂は言った。
似た様な能力をもつとその使い方や考え方の傾向まで近くなるのか。
猫野も否定しなかった。

「先生にはお世話になったんだから。必要な試験データの書き換え、身体検査の結果の偽造データの作成。そしてここへの転入手続きもね。『あたしのように優秀な生徒をぜひ常盤台に入れてあげなくちゃいけない』って、あの人とっても親切にしてくれたんだから」

誰かのための善意の行いに抵抗のある人間はそういないだろう。
自分は良いことをしているとそう信じている人間がたまたま不正に手を出す人間だったか、そこまで仕向けられていたのかは美琴たちにはわからないが。
きっとその開発官は自分のしたことになんの疑いもないまま、募金箱に多めに寄付をしてやったくらいのいい気持ちで今も過ごしているだろう。
そこに不幸な人間はいないかもしれない、でも美琴は何だか嫌な気分になって眉を寄せた。

「ねえ、他人を操作できる能力者ってみんなアンタみたいな下衆い考え方なの?」

「私は自然と傅きたくなっちゃう天性の崇高力を振りまいちゃってるけどぉ、あのおちびさんのは小動物の愛玩力じゃない?」

「人形を並べたお姫様ごっこと一緒にしないで。それにあたしは子猫ちゃんたちをうまく使ってるだけなんだから」

猫野はいきなりの小動物扱いが不満だったのか食蜂をにらみ返したが、食蜂の指摘通り彼女もどっちかと言えば、
「ぜんぜんそんなの興味はないけど仕方ないから付きあってあげますよ〜」なんてノリで猫じゃらしをつついていたらそのうち全力で追いかけはじめてしまう子猫の方がタイプは近そうだった。
女王程のカリスマ性はなくても、下僕がそばに控えて進んでお世話をしている構図は近いかもしれない。

『テメェが世界の中心でそれが当然みてえなふてぶてしさは能力者の傾向ってより、女の特性じゃねえの』

「ていこちゃん……もしかして女子力の高さに自覚あった? やだ、いつの間にそんなとこまで女の子らしくなったの?」

『は? ふざけんなよ? っつうかその呼び方止めろ、ムカつく』

「なんで私にはそんな怒るのよ。食蜂はいいっての?」

「あらぁ、御坂さんたら嫉妬ぉ? やだぁ、全然嬉しくなぁい」

「女同士でいちゃつくのは止めてもらえる。不愉快なんだから」

脱線してきゃあきゃあ騒ぎ出した三人に、猫野はわざとらしい咳払いをしてから鋭い目を向けた。

「予知能力って言うのもまるっきり嘘じゃない、いい案だったんだから。あたしは子猫ちゃんたちの未来の行動がわかるんだから。おかげで誰にもばれなかったわ。今日まではね」

事前に操作した人間が暗示の通りに取る行動を予知だと言ってみせれば。
確かにはた目には、彼女の予言通りのできごとが起きた様にみえるだろう。
遅行性の記憶に残らない暗示は、ある意味未来を予見し操作する能力ともとれるかもしれない。
あらかじめ能力の有効な範囲や時間に制限がある、としておき「身体検査」があることがわかっていれば。
常盤台に入ってからも、それにあわせて準備をしてばれないようにしのぐこともできたのか。

「御坂さんはとっても頼りになりそうだから本当ならもっと早く落としておきたかったんだけど……あんなガードの固いルームメイトさんがいるとは思わなかったんだから」

「確かに、黒子なら深夜にベッドを抜け出す前にばれそうだし。誰かとこっそり会ってたなんて知ったら絶対つきとめそう。すごいめんどくさいことになりそうだわ」

自分でも驚くくらい、猫野が残念がる理由が納得できた美琴だった。
日頃からべったり張りついてくるちょっぴり面倒なルームメイトの存在に知らない所で助けられていたとは、美琴も夢にも思わなかった。
971 :おまけにもう一回つづくんじゃよ   ◆q7l9AKAoH. [saga]:2018/10/21(日) 03:55:58.58 ID:aWsBzONt0

「あれ、それでも変じゃない? 亘木さんがお茶会に行っている間に最初の暗示をかける様な時間はなかったでしょ?」

能力のからくりを聞いていた美琴がまた疑問を口にした。

「ちょっとうとうとはしたんだったかしらぁ?」

『ぼんやりしてたのは長くてもせいぜい二〇分程度だ』

「眠ってから夢を見るまではノンレム睡眠からレム睡眠に切り替わらないといけないでしょ。それならどれだけ早くても九〇分はかかるはずじゃない」

「あら、超能力者なのに随分古い情報を信じているのね? 夢を見るのはレム睡眠の時だけじゃないんだから」

猫野はにやりと笑う。
人間の脳は器用で複雑だ。半分覚醒しているような二度寝のわずかな間にだって夢をみた経験はあるかもしれない。
最近の研究では脳が夢を見る仕組みには睡眠の深度以外の要因も調べられている。
他にもうつ病や精神疾患の患者が極めて短い時間で夢を見ていることも発見されている。
様は、脳が眠っていればいい。極論を言えばそう言うことになる。

「……ねえ、この匂い。どこかで」

その時美琴は異変に気付いて鼻の下を手でおおった。
甘さのあるハーブのような匂いがうっすらと辺りに漂っていた。

「ああ良かった。ここまでとっても大変だったけど、欲しかった超能力者が二人も取れそうなんだから。そしたらあの人たちに思い知らせてやることだって何だって、なにもかも全部あたしの思い通りなんだから。さあて……お話はこのあたりにして、そろそろ仲良くお昼寝の時間よ子猫ちゃんたち」

目を細めて嬉しそうに猫野は笑った。
もうすっかり勝ち誇った様な顔をしていた。
自分の目的や、復讐以上の可能性が目の前に並んでいたら無理もないだろう。
超能力者を味方に付けることができたら、学園都市の征服くらいは手が届く範囲の夢になる。
だが、そんな少女の夢物語は簡単には叶わなかった。
そこに水を差したのは彼女が一度は思い通りにした筈の亘木だった。

『効かねえぞ。テメェの回りくどい能力のうざってえ下準備の方も仕掛けはとっくに割れてんだ』

亘木は馬鹿にした様な目を猫野に向けた。
不意に、近くに吹き付ける風が強くなって髪が、スカートがひるがえり煽られる。
だが、相変わらずそんなことには注意を払う様子もない。

『「ヒュプノスの吐息」、あの仲良し会で使ってる吸入タイプの睡眠薬だな。主成分はアルカロイド系で、ベンゾジアゼピンに近い強い鎮静効果がある。超短時間で脳の機能を低下させる代物だ。だが、揮発性が高いもんは薄まるのもそれだけ早い』

「骨董趣味の会長さんの能力は確かレベル3の『気流操作』よねぇ? それでターゲットを一人ずつ眠らせていたってことでしょぉ。操作可能な状態にするのにだってこんなに手間をかけないといけないんだからアナタも大変ねぇ」

美琴たち三人が集まって立っているそばには点々と風の柱が噴出していた。
それは近く一帯の空気を巻き込んであっという間に撹拌してから吹き飛ばしてしまった。
おそらくは、時間稼ぎに話す間猫野がこっそり準備していた薬剤も一緒に。
風に髪をおさえていた食蜂は小馬鹿にしたが、いくらそう言う能力でもボタン一つの気軽さで他人を好きにできるのは彼女くらいのものだ。

「そんなに大したものじゃないのよ。それってほとんどアロマオイルなんだから。ホップ、ネロリ、カモマイルそれにベースが確かヴァレリアン……ギリシャ時代から使われていたハーブだったかしら。元は不眠症用に作ってたものらしいけど、よく効くのよ。あの人たちの悪趣味はわからないけどあたしには……ラッキーだったんだから」

紹介制の趣味の集まり、派閥以下の小組織なら面倒な書類も名簿も詳細な記録や申請も必要ない。
それは密かに生徒を呼び出して情報収集をするにはうってつけの隠れ蓑だったに違いない。

「あの人たちもあたしのことは知らないんだから。目的も、利用されていたことも。なんにもね。それどころか会長はあたしを利用しているつもりでいるんだから。美意識とこだわりはあるくせに、センスってものがないんだから。可哀想よね」

それを聞いて、亘木は馬鹿にした様な表情を口元まで広げて笑った。

『あの退屈な曲はテメェのか。あれじゃあ標的以外の人間も暗示に従っちまうんじゃねえの』

「曲に仕込んである催眠は、眠っている間に後日呼び出すところまでなんだから。お願いをするのは一人ずつ、何かあっても簡単に足がつかないよう用心はちゃんとしてるんだから」

猫野は嫌味にも丁寧に、自分のこれまでの周到さを自慢でもするみたいにかえしていた。

「じゃあそろそろ観念したらどう?」

亘木の暗示も解かれてしまった。
猫野の目標である美琴はまだ捕まえられていない。
邪魔者を排除することもできていないし超能力者に囲まれている。
なにもかも失敗したはずの猫野だったが。
彼女はまだ、諦めていない執念深い目をしていた。

「目立つことはあんまりしたくなかったのに。ここまで来たら仕方ないわ。こうなったら、先生に助けてもらうんだから」

猫野はそう言ってスカートのポケットから何かを取り出した。
子どもが使う小さなおもちゃの鉄琴のようだったが鍵盤部分の形が変わっていた。
音叉を幾つも並べたような造りになっている。
それを叩いて高く澄んだ音を奏でながら、歌うように語りはじめた。

「あたしの能力は眠っている人間に干渉するわ。鍵になるのは聴覚。眠っていても休むことのない感覚はあたしの命令を伝えてくれるんだから。特定の周波数をあらかじめ組みあわせておけばもっと簡単なのよ。一番厄介な御坂さんはあたしのとびっきり仲良しなお友達にしてあげるんだから。あなたたちもその後でゆっくり夢を見てもらうわ。大丈夫、目が覚めたらみんな……嫌なことは忘れてるわ」

それまで、そしてここまでの得意げな様子に美琴も納得した。
彼女の余裕がどこからきているのか不思議だったが……これなら仕方ないとさえ思ってしまう。


「眠ってる間に洗脳されてるなんて普通は考えないわよね……それも、友達や生徒になんて」
972 :待て、次回。またきます  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2018/10/21(日) 03:59:31.92 ID:aWsBzONt0

猫野の背後に静かに現れたのは。
普段通りにスーツにきっちりと身を包んだ……常盤台学生寮の寮監だった。
そこから感じるいつも以上のプレッシャーに美琴も身構えた。

「野蛮力のたかぁい人は御坂さんにお願いするわぁ☆」

「はぁ?! 何言ってんのよ!」

この局面で真っ先に戦線離脱を宣言した食蜂に美琴は思わず怒鳴った。
確かに、向こうの狙いは最初から美琴だ。
でもだからってこの速さで見捨てなくてもいいだろうと思う。
相手は寮監、できるなら美琴だって振り返らずに一刻も早く逃げたい。

「さっき触ってみてわかったけどぉ。これって無意識下に仕込まれてる時限爆弾みたいな暗示だから、ぱぱっと簡単に解けるような洗脳じゃないのよぉ。無理にして頭の方が壊れても困るし繊細な作業は落ち着いてやらせて欲しいわぁ。いくら私がとっっっても美人でパーフェクトで素敵な美少女でもぉ、直接やりあう野蛮力だけは持ちあわせてないしぃ」

「あー……もう。まさか寮監まで出てくるなんて。考えなかったわけじゃないけど。ねえ、本当にやる?」

猫野がここに現れてから。
能力の話が進んでいくうちに、彼女とどこで会ったのかを覚えていた美琴はその可能性にうすうす気づいてはいた。
それでも、人間認めたくないものがある。嫌な考えなら尚更だ。
まあ、常盤台生に対して一番効果のありそうな相手だ。
ぶつけてこない訳がない。
それすら見越して根回ししていたであろう猫野の慎重さが憎い。
ふと、美琴はちょっぴり期待を込めて亘木の方を見てみた。
流石の寮監も、第二位の能力者相手に無双できてしまったら……何というかもう、常盤台どころか世界でもトップクラスに強い生き物になってしまう。
そんなのは嫌だった。

(垣根さんだっていざと言う時は手助けくらいしてくれるわよね)

とでも思わなければこの場に救いも活路も無くなってしまう。
だと言うのに。

『俺の仕事はこっちの相手だ。そっちは勝手に好きにやってろよ』

「アンタたちは、本当にもう……」

亘木は美琴の方を見もしない。
ここに都合よくヒーローが助けに来てくれないか、なんてことを考えてしまうくらいには。
はじまる前から心が折れそうになる美琴だったが、泣いている余裕もなさそうだった。
静かに、だが確かに。
寮監は一直線に美琴目がけて歩いてくる。

973 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 20:13:45.51 ID:X/F167M2O
追いついたー
こんな面白いssに四年間気づいてなかったなんて勿体無いことをしたぜ
今日は遂にアニメでスクール登場か
974 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 10:11:04.00 ID:Mp67z+0G0
ブラウザの同期ズレか知らんが一ヶ月もスルーしちゃってたんだぜ!?
そして美琴ガン無視の垣根にワロタ
975 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/27(日) 11:05:56.98 ID:e0T7sHm+O
保守
976 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/30(火) 22:49:50.38 ID:gZft96vAO
平成
977 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/09(日) 17:41:14.42 ID:GAPhdp2Vo
忘れがちだけど垣根はずっと女装してるんだよなぁ……
シュールかつユニークとしか言えない絵面
978 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/26(水) 21:16:17.47 ID:Xjf14GkAo
色々言いたいことあったけど一言で足りることに気付いた

このスレ好き
979 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/30(水) 13:25:58.91 ID:smC4AMU7O
1生きてる?
心理定規オメ
980 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/08(金) 00:13:30.57 ID:YQcZagZMO
遂に心理定規の本名判明したね
981 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/13(金) 08:50:54.26 ID:WhG9H5jS0
まさか心理ちゃんに姉妹がいるとは…
982 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 08:17:34.68 ID:qy7dElRV0
スレを読み返してるとこのスレができてからスクールに色んな動きがあったなと感慨深い
983 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 20:41:42.66 ID:31nVwjAo0
もうスレの残り的にも無理そうだけど常盤台潜入最後まで読みたかったな
984 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/03(火) 07:53:01.43 ID:jtInY1Mp0
いまだに更新されてないかなーと見に来てる俺がいる
まあでも1がどっかで元気にやってる事を祈ってる
985 :偽物 [sage]:2023/11/28(火) 14:32:41.66 ID:a6gh5625O
保守必要?
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