367:名無しのパー速民[saga]
2019/10/20(日) 14:19:52.19 ID:eTH5+p7K0
>>366
「――そうかもね、」「うんと高いビルの上の方のレストランでプロポーズしたり」「…………暮らすのにはあんまり向いてないのかも、」
「ずっと、夜だし」「……」「昼の国も駄目だね、」「寝不足になりそう」「――やっぱり"このへん"が一番住みやすいね、何でもあるし、――――」
「お仕事が近いのはいいよね、……」
観光地。なるほど確かにやっぱり結局はそうなんだろう。ずーっと夜の国で暮らしたい人なんて基本的にはあんまり居ないんだ、それこそ吸血鬼とか、そういう人ばっかり?
かといってずっとお日様が昇り続けているのも少しねなんて我儘を言っていた。「いつ寝てもお昼寝になっちゃう」――だなんて冗談めかして、けっきょくは、このへんが一番いいって、
なんだかんだ一番ふつうっぽいところが過ごしやすいねと言って。――お仕事場が近いのはいいことだって笑った、…………ほんとは彼女は通勤時間なんて概念がないから、別にどこだっていいんだけど、なんて、内緒。
「んー?」「まあ、そうかも、」「……まあ、家出って言うよりか、迷子、」「…………だったのかも、」
「そだね、」「じゃあ……、まあ、いっかな、もう、怒ったりしないで」「――怒るつもりも、最初っからないけど、」
だからやっぱり彼女と神様の距離感は奇妙が過ぎた。子供に使うような声を使う瞬間もあれば、ペットに使う声の瞬間も、それから、両親に向けるような声の瞬間もあり、
やはりごくごく奇妙でありながら、一点親愛のようなものだけ何も変わらない。――神様だって、そんなふうに言ってもらえたら満足するものだろうか。
さっきの白いばっかりの"だれか"が出てきてありがとうなんて言ってくれるわけもないけれど――。
「そういえば、」「寒いのはもういいの?」
――はたと思いだしたらしかった。新手の物乞いかと疑いかけた失礼な一節は忘れたかなかったことにしたらしい。夜は静かに深まっていくばかりだから、気温もそれなりに、緩やかに、下がりゆく最中。
けれどまあ、誰かとしゃべったりしていれば気にならない程度でもあるんだろう。――過ごしやすい秋の気温だと主張すれば、なるほど確かにそうでもあった。
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