【安価】いつも、何度でも。─千と千尋の神隠し その後の物語─
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5:湯屋 ◆va2KrOhAnM[sage saga]
2025/01/20(月) 23:38:58.16 ID:YHu7yDPj0
 環奈は、一歩、また一歩と出口へ近づいた。

 足元の木の葉を踏みしめる音が微かに響く。

 そして、光の中へ——



 目の前に広がっていたのは、輝く青空と、ゆっくりと流れる白い雲だった。

 強い日差しを受けて、原っぱの草は濃い緑色に輝いている。夏草が風に揺れ、さわさわと囁くように音を立てていた。

 環奈はまぶしさに目を細めながら、ゆっくりと視線を巡らせる。



 そこかしこに、奇妙な石像が転がっていた。

 苔むした石人たち——表と裏に顔を持つ、不気味な表情の像が、ぽつん、ぽつんと点在している。まるで長い間、誰かを待ち続けているかのように。

 近くにあった一体を指でそっとなぞると、湿った苔がぽろりと剥がれ落ちた。

 「(……なに、これ)」



 周囲には、朽ち果てた小さな建物がいくつかあった。

 壁の板はひび割れ、屋根の瓦は崩れ落ち、扉も半ば外れかけている。昔は誰かが住んでいたのか、それとも店のようなものだったのか……。

 けれど、今はただ、打ち捨てられたまま、風と時に晒されている。



 環奈は、不思議な心地に囚われた。

 ここは、どこだろう。

 駅舎のような建物を抜けた先に、こんな場所が広がっているなんて——まるで夢の中に入り込んでしまったような気がする。

 ふと、遠くの方に視線をやると、低い丘の向こうに、町のようなものが見えた。

 建物が並び、色鮮やかな屋根と壁が、ぼんやりと夏の陽炎に揺れている。

 人がいるのだろうか?

 環奈は、小さく息を飲んだ。

 そして、ゆっくりと、町の方へ向かって歩き出した。


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