【安価】いつも、何度でも。─千と千尋の神隠し その後の物語─
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4:湯屋 ◆va2KrOhAnM[sage saga]
2025/01/20(月) 23:36:40.78 ID:YHu7yDPj0
 トンネルの中は、思ったよりも暗かった。

 環奈はゆっくりと歩を進める。足元はざらついていて、踏みしめるたびに細かな砂粒が擦れる音が響いた。自分の足音以外、何の音もしない。外のセミの声も、風の気配も、ここには届かない。

 先へ進むほどに、奥へ奥へと誘い込まれるようで、胸の奥にわずかな不安がよぎる。でも、それ以上に——確かめてみたいという気持ちの方が強かった。

 やがて、前方にぼんやりとした光が見えた。出口だ。

 環奈は少し足を速めた。



 トンネルを抜けた先は、がらんとした広い室内だった。

 まるで、放棄され忘れられた駅舎のような場所。

 床には乾いた木の葉が散らばり、長い間人の出入りがなかったことを物語っている。

 見上げると、分厚い壁には色ガラスの窓がはめ込まれていて、そこから差し込む光が床にぼんやりとした模様を描いていた。

 鋳物製の水飲み場が壁際にひとつ。チロチロと細い水が湧き出し、床へと滴り落ちている。

 環奈は、ゆっくりと辺りを見渡した。

 「(……誰もいない)」

 当たり前のようでいて、どこか異様な静けさだった。

 ここはどこなのか。なぜ、こんな場所に繋がっていたのか。

 胸の奥にかすかなざわめきを感じながら、環奈は視線を奥の出口へと向けた。

 外は明るい。

 扉のような枠の向こうに、夏の日差しが降り注いでいる。

 環奈は、ためらうことなくその先へと足を運んだ。


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