1:名無しNIPPER[sage saga]
2025/01/03(金) 20:34:31.92 ID:lDv6b5YMo
「僕に任せておいて。何かあったらまた相談しにおいで」
扉が閉まったのを確認して表情筋を緩めた。
まだあの男の感触が全身に残っている気がする。
ああ……
「気持ち悪い」
都内某所の高級ホテル。高層階の廊下はしんと静まり返っている。
綺麗に見えるのは外側だけで、中はどこも同じ。ここにいる人間はみんな同類だ。
でもこの業界で生き残るにはこれしかない。私はただ、一所懸命頑張っているだけ。
エレベーターで時計を確認すると23時ごろ。この時間なら電車がある。
エントランスを通り抜けるとき視界に入ったテレビでは、最近流行りのアイドルが歌って踊っている。
立ち止まりはしなかった。でも目を離すのに時間がかかった。
私も昔、あんな恰好をしていた。
歌ったり踊ったりしていたわけじゃない。ただ、世界を守っていた。
10年前、私はプリキュアだった。
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2025/01/03(金) 20:42:31.48 ID:lDv6b5YMo
ホテルを出て、駅の方角に歩き始めた。
夜の街の静寂は余計なことを思い出させる。今日は最悪な日だ。
あの頃の私は夢見がちで、世間知らずで、馬鹿で、未来への希望に満ち溢れていた。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2025/01/03(金) 20:51:33.83 ID:lDv6b5YMo
夢に向かって努力する中で、私は何度も失敗した。
プリキュアとの両立ができず、落胆され、叱責され、何度も諦めそうになったし挫けそうになった。
でも、それを絶対に許してくれない女の子がいた。
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