もしもシャミ子が葬送のフリーレンの世界に飛ばされたら
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71:1[sage saga]
2024/11/01(金) 20:32:15.79 ID:4JAHijIv0
 
桃(不味い、振り払えない……それなら!)

 背後で膨らむ敵の魔力反応が臨界を迎える寸前、桃は右足を捕まれたままの状態で跳び上がった。

 足を取られている以上、地面に叩き付けられる危険性はあったが、敏捷さならこちらの方が上だ。

 跳躍と同時に体を捻り、桃は己の左膝でシュタルクの首を引っかけるように挟み込んだ。そのまま渾身の力でバク宙でもするかのように背中を反らす。

シュタルク「なんっ――?」

桃(こっちにスコット・スタイナーはいないでしょ!)

 変則式のフライングシュタイナー。本来なら両足で頭を挟み固定するところを、人外の筋力を以て片膝だけで成立させた。

 技そのものを知らなければ、ハイキックのような打撃なのか、絞め技なのか、咄嗟には判断しづらい技だ。体重移動が間に合わず、シュタルクは体勢を崩す。

 ぐりん、と相手を巻き込むようにして桃は地面に倒れ込んだ。相手は脳天から地面に激突することになるが、どうせ大したダメージにはなっていまい。この技を使ったのは体勢を変えるためだ。

 四つん這いのような低い姿勢になった桃の上を、フリーレンが放った攻撃魔法が光の軌跡を残して飛び去っていく。

桃(よし、かわし――なっ!?)

 光の軌道が変わった。頭上を飛び去るはずだったそれが、ほぼ直角に落ちてくる。

 咄嗟に体を捻り、ぎりぎりで回避する。光条は桃の肉体ではなく、肩から垂らしているマフラーの先端を持っていった。

桃(魔力外装を抵抗もなく貫通した!?)

 その感触にぞっとする。直撃すれば障壁やエーテル体さえ紙のように貫くだろう。

 だが真に恐るべきはその取り回しの良さだ。敵はすでに追撃の為の魔法を用意している。
 魔力の消費量や術式の明快さからして、この魔法は大技や切り札に相当するものではないであろうというのに。

桃「ミカン、射撃中断!」

 指示を出すと共に桃は跳ね起きた。一拍遅れて魔力の矢が止み、同時にフリーレンが再びゾルトラークを射出する。今度は3条の光の帯が紡がれ、桃に向けて軌道を異にしながら殺到した。

 フェルンの防御魔法によって制限されたフィールドが、今度は桃にとっての戒めとなる。防御不能の攻撃魔法を回避するには狭すぎるためだ。

 だから桃は盾を用意することにした。シュタルクが転倒した今、再度無防備になったフェルンへと肉薄する――

 ――と、見せかけて最高速度でその場から離脱した。見る見るうちに3人の姿が小さくなる。

 フェルンによって展開されていた防御魔法は解けていた。正確に言えば、フェルンのみを守るように今度こそ最小限の範囲で展開し直されている。

 先読みの応酬の結果だった。桃が再び自身を狙うことを予測したフェルンが防御魔法の範囲を変更し、その行動を読んでいた桃がフェイントと離脱を選択した。
 ミカンへの射撃停止命令も防御魔法を解かせるためのものだ。

 だがその応酬に勝利したのは桃ではなかった。

 フリーレンの放ったゾルトラークが、離脱しようとする桃の行く手を阻むように飛翔していた。回避の為に足を止めざるを得なくなる。

桃(くそっ、やっぱりこいつ、強い!)

 胸中で舌打ちする。魔力の量だけではない。的確にこちらの狙いを読み取って対応してくる。最初の不意打ちが決まらなければ、もっと不利な状況になっていただろう。


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