6:名無しNIPPER[sage saga]
2024/09/07(土) 22:48:42.25 ID:49voo3/L0
「……わ、わかればいいんですわ」
「……」
「その……落ち込んでいたのは、私も同じでしたし。今日から。今日からやってくれればいいですわ」
「ん」
こくりとうなずき、またすたすたと歩き始める櫻子。向日葵は追いかけるようにその横に並び、本当に何があったのかと驚きながら、後に続く言葉を探した。
これではまるで、朝から大声で怒っていた自分の方が子供っぽいような気がしたし、何よりも素直に謝罪してきた櫻子に対し、何かしてあげるべきだという気持ちがふつふつと湧いてきた。
「……一緒にやります?」
「えっ?」
「復習と……それに宿題も。私も最近は自分のことでいっぱいになっちゃって見てあげられませんでしたし……宿題だってこんなにあるんですから、早いうちに取り掛かった方がいいでしょう。また最終日に泣きつかれるのはごめんですわ」
「……」
伏し目がちにそうつぶやく向日葵の頬が紅潮している気がするのは、暑さのせいか、気のせいか。
その横顔を見ていたら、なんだか無性に明るい気持ちになってきて、櫻子はにこやかに笑って向日葵の肩にぽんと手を置いた。
「じゃあ今日、うち来てね!」
「ええ」
「あっ、ていうかあかりちゃんとちなつちゃんにも学校終わりにうちに寄ってもらってさ、みんなでやろうよ! ついでに夏休みの予定立てたりさー!」
「いいですけど、遊びはほどほどに頼みますわね。メインは勉強なんですから」
「わかってるわかってる〜」
楽しい予定が立てられたことに嬉しくなり、櫻子は学校までの通学路をスキップし始めた。向日葵もその様子を微笑ましく眺めながら、早歩き気味にそれについていく。
櫻子はふと顔をあげ、青空を見上げた。早くもじーわじーわとセミが遠くで鳴き始め、空にはもくもくと高い雲が立ち昇り、それはまさしく夏の空だった。
さっきまで向日葵に激しく怒られそうになっていたのに、今はこの空と同じくらい、晴れ晴れとした気持ちになっている。
6秒数えただけなのに?
それだけで、全部が上手くいくようになってきたかもしれない。
(ねーちゃんの必殺技……すごいかも!)
「前見て歩かないと、転びますわよ」
「へーきへーき!」
櫻子は重たいカバンを逆の手に持ち替え、向日葵のカバンもひょいっと持ってあげながら、再びスキップを始めた。
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