22:名無しNIPPER[sage saga]
2024/09/07(土) 23:11:29.89 ID:49voo3/L0
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撫子に教えられた場所は、たしかに見晴らしがいいのに人があまりいない、珍しいスポットだった。
櫻子は階段状になっている場所に向日葵と一緒に腰を下ろし、途中で買ったいちご味のかき氷を分け合い、静かに花火を見守った。
向日葵の安らかな笑顔を見ていると、心が落ち着くとともに、少しだけドキドキする。
向日葵の思い出になれたらよかったと思いながら、残りのかき氷を一気に飲み干した。
なんだか最近、向日葵の笑顔を見るためにやけに一生懸命になっていた気がする。
ぱん、ぱらぱらぱら、と夜空を迸る火花を見つめながら、櫻子はここ最近のことを振り返った。
――そうだ、ねーちゃんに言われてからだ。
撫子に教わったアンガーマネジメントを自分なりに実践するようになってから、向日葵のことを考える時間が妙に増えていたのだった。
イライラしそうになったときに落ち着くための6秒ルール。それ以外の局面でも、無意識的に数秒間数えることが身体に染みつき始めていた。
その数秒間で自分の気持ちに向き合うこともあれば、向日葵は今どう思っているのだろうと、相手の気持ちに向き合うこともある。たったそれだけで自分に少しずつ素直になれているし、夏休み前を最後に向日葵とのケンカも起きていない。今日だってそれがなければ、今頃向日葵だけを家に帰して、自分だけ呑気に友達と出店を巡っていたかもしれない。
本当に追いついてよかったと向日葵の横顔を見ていたとき、ばーん、とひときわ大きな花火が空に打ちあがった。
向日葵の大きな瞳に、綺麗に花火が咲く。櫻子にはその瞬間だけ、まるで時間が止まったように、スローモーションに感じられた。
今日はきっと、この笑顔を見るための日だったんだ。
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