74: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 08:16:04.36 ID:TtxL8s290
「ならぬ」
御屋形様の揺るぎない言葉に、私は諦念の息を吐いた。
足らぬのは戦士だけではなく、その武具の数にもあった。
75: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 08:16:33.54 ID:TtxL8s290
我儘を言っている自覚はある。だが、どうしても自身の中で折り合いがつかないのだ。
私の言葉に、御屋形様はしばし目を閉じ思案を巡らせている様子であった。
「見知らぬ誰かで無ければよいのだな。ならばそれは私が振るおう」
76:今日はここまで ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 08:17:06.09 ID:TtxL8s290
御屋形様は、腰に差された剣をスッと抜き柄を私の面前に突き出した。
美しい刀身には、戸惑う私の膨れた顔がきれいに映し出されている。
「我が家の宝剣だ。ちゃんと返せよ」
77:続けます ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 09:12:18.56 ID:TtxL8s290
♦
僅かな時間、眠ってしまっていたようだ。
いつの間にか、夜が明け朝を迎えていた。
78: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 09:13:06.73 ID:TtxL8s290
安物の剣が、一本買えるかどうかの金額だ。
しかし、これ以上は望めまい。
「女子供は北の集落に逃した。お前の妹もいるやもしれん」
79: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 09:13:33.80 ID:TtxL8s290
「生き残りを探す。毒のことを、皆に伝えねばならんしな」
嘘だ。
もはや、そんな余力はない。
80: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 09:14:03.34 ID:TtxL8s290
遠ざかる少年から、ひと時も目を逸らせなかった。
ひのきの棒を腰に差し、懐には僅かな銅貨を忍ばせ、街から一人の若者が旅立っていく。
私は、幸運であった。
81: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 09:14:35.12 ID:TtxL8s290
視界がかすみ、もう少年の姿は見えない。
願わくば、彼の妹、そしてその旅路が無事であらんことを。
薄れゆく意識の中。
82: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 09:15:04.37 ID:TtxL8s290
♦
少年は、森に入る直前で足を止めた。
その背に、街からの見送りの視線を感じたからだ。
少年は、街を振り返り大きく右手を振って声を上げた。
83: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/18(木) 09:15:31.48 ID:TtxL8s290
はじまりはじまり
84:名無しNIPPER
2024/08/29(木) 19:07:54.81 ID:htMrotryO
乙
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