【悲報】夢魔の集落に男一人で流れ着いてしまった【たすけて】【安価スレ】
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3:名無しNIPPER[saga]
2023/07/03(月) 14:30:09.75 ID:jO1AKp7NO
直前にほんの僅かに感じた殺気。それがどうか嘘であってほしかったと、青年は瞑目しながら胸元から突き出る剣先を撫でる。
赤い液体が指に触れる。生温かい感触がし、身体の熱が冷めていく。

振り向いた瞬間。残りの四人から矢を放たれた。魔力を纏った矢は四肢を穿ち、眼窩に突き刺さる。

ああ、本当に俺を殺す気なんだ。そう理解するのに時間など必要なかった。

矢が刺さった衝撃で身体がよろめく。だが、膝を突くまでには至らない。

『…貴様は本当に良い奴だった。幾度も民を救い、災厄を退け、民の安らぎのために尽力してくれたな。皆、貴様のことを好いていただろう。私もその一人だ』

『そりゃ、嬉しい、ねえ』

深々と二本目の剣が腹に突き刺さる。剣を通じて伝わる力からは絶殺の意志だけが感じ取れ、その双眸は確かな決意だけを映している。

『断言しよう。貴様は民に愛されていた。王も。姫も。国民全てが貴様に惹かれていた。人々を照らす光…そう、紛れもなく貴様は我らの英雄で、我が国の希望だった。…だが、貴様の光は強すぎたのだ』

『強すぎる光は瞳を焼き焦がし、本来宿していた光を奪い去ってしまうものだ。貴様に救われ心を惹かれた者は、やがて貴様以外の全てを一切見ようと、信じようとしなくなる。その果てにあるのは、血で血を洗う凄惨な内乱だ』

『既に、貴様を王に据えようと画策している貴族がいる。貴様にとっては寝耳に水の事態かもしれんがな。今は水際で防がれているが、それもいつまで続くか解らぬ。故に、手を打つ必要があった』

『だから、俺を、殺す、と?』

『左様。貴様が死んでしまえば、王の統治を脅かす者は居なくなる。尊い平和が維持される。貴様という英雄の死こそが、恒久平和の礎となるのだ』

『…貴様を秘密裏に放逐するだけで事足りるのは、我らも承知している。だが、我々は…貴様ほど優しくもなければ、強い心を持ってもいない。未来の可能性に怯えた臆病者が故に、貴様を殺すのだ』

『そうかい』

騎士団長が言い切るのと同時に、青年は手に魔力を込め、振り払った。
光の刃が吊り橋を両断し、崩壊を始める。
元々当てる気のない一撃だったが、あっさりとそれは躱された。


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