王子『はちじょうひとまのワンルーム?』
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36:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:30:11.02 ID:sZTlet6c0
 王子『僕はいいや。母さんと父さんがいれば十分だろ』
 王女『十分じゃないよーっ。王様に顔を見せないと!』
 王子『顔を見せたところでなにするんだよ』
 王女『……んー、お話とか?』
 王子『王様に話すことなんかないだろ。僕たち子供が』ハァー
以下略 AAS



37:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:30:37.31 ID:sZTlet6c0
 王女『そうかなー? 王様はいつもニコニコしながら聞いてくれるよ? 学校の話とか』
 王子『あのなあ。魔王の子供だから優しくしてくれてるだけで、王様だって本当は子供の話なんかに時間を割きたくないっての』
 王女『そうなの?』
 王子『そうに決まってんだろ。大人は忙しいもんだ』
 王女『でも、この前、帰る途中に魔王城の広場で街の子供たちと一緒にボール蹴ってたよ?』
以下略 AAS



38:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:31:32.33 ID:sZTlet6c0
 王子『どうせ、昼の会食には参加しろって感じだろ? 心配すんな。その時には戻るから』
 王女『……分かった』
 王子『なら帰れ帰れ。僕は忙しいんだ』
 王女『忙しい? ――あっ』



39:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:31:58.41 ID:sZTlet6c0
 王女『その本、賢者の残した考察だ! 図書館から持ち出したらいけないなやつ!』
 王子『……いいだろ、別に。こんな機会じゃなきゃ落ち着いて読めないんだから』ハァー
 王女『危険なものもあるから子供だけで読んだらいけないんだよ?』
 王子『大丈夫だよ。そんなの、大人のざれごとだ』
 王女『ふーん……』ジー
以下略 AAS



40:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:32:26.68 ID:sZTlet6c0
 王子『はぁ? 嫌だよ。僕が読んでるのに』
 王女『口止め料』
 王子『え?』
 王女『わたしにも読ませてくれたら、お母さんとお父さんには本を持ち出したこと黙っておく』
 王子『……勝手にしろ』ハァー
以下略 AAS



41:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:33:09.25 ID:sZTlet6c0
 王女『んー。呪文の考察、マギカの正体について、魔法の原理とその可能性。どれにしようかなー』
 王子『さっさと選べ』
 王女『あっ、これ面白そうっ。この本に決めた!』
 王子『読むときは静かにな』
 王女『分かってる。えーっと、なになに? 莫大なマギカの衝突におけるワームホールの発生について』
以下略 AAS



42:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:34:54.56 ID:sZTlet6c0
 王子『ああ。大人でも理解できる人がいなくて、理論すら賢者本人しか理解してないってレベル』
 王女『へー』
 王子『だからやめとけ。もっと易しいやつがあるから』
 王女『いや、これにする。第一印象でピーンときたから』
 王子『……そうかい。まっ、勝手にしろ』
以下略 AAS



43:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:35:23.02 ID:sZTlet6c0
 王女『えーっと、なになに? はじめに、この本を読んでいる君に告ぐ』
 王子『……声に出して読むな』
 王女『この研究は人間と魔族両方の歴史を鑑みても存在しない、前例がない魔法へのアプローチである』
 王子『……静かに』
 王女『そのため、未知の領域が多い。非常に危険なものだと理解してほしい』
以下略 AAS



44:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:35:50.37 ID:sZTlet6c0
 2時間後――
 王女『…………』
 王子(王女のやつ、静かになったな)
 王女『…………』
 王子(もしかして眠ってる? いや、寝息は聞こえないか)
以下略 AAS



45:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:36:18.50 ID:sZTlet6c0
 王子『は? お前なにを言ってんの。そんな難しい本、理解なんて出来るわけねーだろ』
 王女『ううん、出来た』ブンブン
 王子『……出来た、って。僕も――いや、大人だってその本を理解できた人いないんだぞ。嘘も大概にしとけ』
 王女『出来たもん!』エッヘン



46:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:36:45.66 ID:sZTlet6c0
 自慢気に薄い胸をそる王女。
 彼女が生まれてから10年間、家族として一緒に過ごしてきた。だから、王女が嘘をついていないことはその目を見て分かった。分かってしまった。

 王子『……なんだよ、それ』

以下略 AAS



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