22:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:20:47.30 ID:laNpeqI/0
それから、にちかはもう一度、諦めないことにした。
通常2〜3ヶ月はかかる義肢での歩行リハビリを1月半ほどで終わらせ、退院をした。
義足は義肢工場とスポンサー契約することにし、ライブ用にと様々な物を用意してくれた。
再び立ち上がる勇気を見せたにちかの強さは、一度は夢を諦めた人々を励ます良い存在になるとスポンサーの人々は信じ、託してくれた。
強く跳ねるもの、足首が回転しより安定してターンが回れるもの、通常の関節より多動化し、より激しく動けるようにしたものと様々だった。
それでも生身では出来たパフォーマンスが出来ないことはあった。その時は美琴やレッスントレーナー、そして俺や283プロの皆んなが共に考え、新しいパフォーマンスへと昇華していった。
怪我の事実と、これからの活動についての会見の際には馬鹿げた質問をする記者も居た。
会見に現れたにちかの義肢の姿に痛ましさや見苦しさを感じないのかと言われた時は、本来なら押し黙るべき俺も強く声を荒げたほどだった。
それでもにちかは諦めなかった。
「アイドル新生、七草にちか! これからの活躍をよろしくです!」なんて明るく振る舞ったのだ。
彼女は強い。俺が思っていた以上に。強くなった。
最初は記者の言葉通り、にちかの存在を否定するものが多かったが握手会や地方のイベントを繰り返し、少しずつだが最近では、TV出演やモデル撮影も増えてきた。特に義肢でのモデル撮影は世論を強く騒がせた。
にちかと同じような人々から多くのファンレターが届くようになった。強く勇気をもらった。私も頑張ってみます。にちかちゃんがんばれ! 言葉の種類は様々だった。
ライブは延期になった。開催未定と公表したが、実際は準備期間も含め、早くとも二年後と定めた。
だがにちかはそれを覆したかった。
「一年後です! 私、頑張るので。絶対に、一年後です!」
にちかは夢を見ていた。
強く、輝く、彼女らしい色をした、にちかだけの夢。
ちなみにだが、にちかを応援してくれたあのアーティストは会見後日に行われたTV出演の際に、質問もされていないのに「ほら、言ったでしょ? 僕」と復活を強く喜んでいた。
にちかはこれから様々な困難を前にするだろう。
だけど、諦めはしない。
誰よりも夢みがちで、夢を追いかけて、夢を届ける。
それが七草にちか。
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