41: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/13(金) 12:39:05.77 ID:fZboHQww0
栞子ちゃんは本のページを捲りながら言う。
栞子「非常に肥沃な土地だったそうです……。……そのため、発展していて武力にも秀でた国……。……そんな大きな隣国が、まだ国が発足して間もないダリアの国を襲いました」
かすみ「待って待って、しつもーん!」
しずく「もう……話の腰を折っちゃ、めっだよ?」
栞子「いえ、大丈夫ですよ。わからないことには、適宜答えていった方が理解も深まると思います。なんですか?」
かすみ「その隣国って、グレイブマウンテンの向こう側だったんだよね?」
栞子「はい。正確には戦時中に独立集落として存在していたヒナギクも飲み込んで、グレイブマウンテンの南側まで拡大することになるんですが……」
かすみ「でも、グレイブマウンテンの向こう側ってめっちゃ寒いって聞いたよ?」
せつ菜「言われてみれば……。……決して肥沃な土地ではないですね。点々と集落が存在するだけで、人が生きていくにはあまりにも厳しい場所だと言われています」
栞子「それについては……オトノキ戦争の話をする必要がありますね。北の大国がディアンシー様を奪うためにダリア国に侵略を始めました。カーテンクリフやクリスタルケイヴのような自然の城壁があったため、侵略は一筋縄では行きませんでしたが……それでも、相手は大国……ダリア国は窮地に立たされます。ですが、そのとき……龍神様がお怒りになられました。そして、ディアンシーを奪おうと武力を持って押し寄せる隣国を……圧倒的な力で滅ぼしました」
侑「滅ぼした……?」
栞子「はい。それは本当に圧倒的な力だったらしく……気候が変わってしまうほどだったそうです……」
せつ菜「……肥沃な土地が、氷に閉ざされてしまうような気候変動すら引き起こせる力だった……ということですね」
リナ『レックウザは気候を司るポケモンとも言われてる。本気を出したら、そうなるのも無理ないかも』 || ╹ᇫ╹ ||
栞子「龍神様の圧倒的な力によって敵を退けたダリア国では、まさに英雄である龍神様を讃えるようになります」
せつ菜「それがこの地方の龍神伝説の始まりということですね」
栞子「はい。当時はまだ、ポケモンのこともよくわからず、人々にとって畏怖の対象でしかなかったポケモンたちでしたが……龍神様に国の窮地を救われた人々は……龍神様を崇め奉るようになります」
しずく「それが……翡翠の民──栞子さんのご先祖様ってことだね」
栞子「そのとおりです。そして、翡翠の民たちが龍神様への信仰を始めたのと同時期に、ダリアを統治する王が生まれました。ダリアは龍神様の加護を受けたこの地で……大きく発展していきます。……その後、100年程は安定していたと言われています。……が、それも永遠には続きませんでした」
かすみ「何が起こったの?」
栞子「……人々がポケモンと共に力を合わせて生きるようになりました」
侑「え……? それの何が問題なの……?」
栞子「それだけなら問題ではなかった……ですが、人々はポケモンを武力として使うようになったんです」
せつ菜「その言い方だと……ポケモンバトルというほど、規律のあるものではなかったんでしょうね」
栞子「はい……。……力を持った集落が、ディアンシー様の力の恩恵をより多く求めて……地方内の各地で争いが起きたんです。ダリア王家はそれを諫めようと東奔西走したそうですが……広いオトノキ地方を管理しきることは出来ず……人にもポケモンにも……多くの犠牲が出ました。……特にポケモンの犠牲は多かったそうです」
歩夢「……酷い……。……人が始めた戦争なのに……ポケモンを代わりに戦わせてたってこと……?」
栞子「……はい。……そして、その人々の行為は、龍神様の怒りを買いました」
かすみ「え、それってオトノキ地方が滅ぼされちゃうじゃん!?」
栞子「……実際その直前まで行ったそうです。各地を龍神様が攻撃し、争いをする余裕もなくなりました。……気候がおかしくならなかったのは……龍神様が、この地方を気に入られていたからこその慈悲だったと言われています。私たち翡翠の民は、龍神様の怒りを鎮めるために、人身御供として、一生を龍神様のお世話に費やす存在である翡翠の巫女を龍神様のお傍に置き、龍神様と共に……朧月の洞という結界の中から、この地方を俯瞰して見る立場となりました」
歩夢「じゃあ、栞子ちゃんは……」
栞子「……はい。私は本来であれば、死ぬまで龍神様にお仕えするだけの人生のはずでした……」
歩夢「……そう、なんだ……」
栞子「……話を戻します。龍神様は地方のポケモンたちを守るという名目で、多くの人間の命を奪いました。……その結果、龍神様を討伐する考えを持った人間たちが現れました」
そこでなんとなくピンとくる。
恐らくそれが……薫子さんの言っていたリーグの前身組織を形成することになる人たちということだろう。
282Res/605.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20