266: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/22(日) 22:32:49.86 ID:WJlAx85d0
薫子「──っと……遅くなってごめんね!」
軽く手を上げて謝りながら、薫子さんが現れた。
歩夢「あなたが……栞子ちゃんのお姉さんの、薫子さん……」
薫子「こうして顔を合わせて会うのは初めてだね。話は聞いてるよ、歩夢。妹が世話になったみたいで……ありがとね」
歩夢「いえそんな……私は一緒にいただけなので……」
薫子「それだけで、栞子はすごく心強かったと思うよ。だから、感謝してる」
そう言って、薫子さんは歩夢に頭を下げる。
薫子さんが頭を上げたところで──
せつ菜「それで、お話とは一体何なんでしょうか?」
と、せつ菜ちゃんが訊ねる。
薫子「ああ。まあ、あの後どうなったかって話かな。君たちには聞く権利があると思うからさ」
侑「あの後って言うのは……翡翠の民やリーグのことですか?」
薫子「うん、そんなとこ。まあ、翡翠の民もリーグ側もどっちも大慌てだったみたいだけどね。何百年以上も続いていたレックウザの問題が、まさかこんな形で解決するとは思ってなかったからさ。……もちろん、それはアタシもだけどね」
薫子さんは肩を竦めながら苦笑する。
薫子「翡翠の民は龍神様がいなくなったことで、役割がなくなってかなり困惑してたみたいだけど……栞子がちゃんと事情を説明したら、ひとまず納得はしたって聞いたよ」
歩夢「栞子ちゃんに直接聞いたんじゃないんですか……?」
薫子「まあ、アタシがリーグにいるってボロ出してバレそうってのもあったけど……アタシは翡翠の里を抜けて、外に出ちゃったからね。翡翠の民は基本隠れ里の人たちだから、外界とは関わらないのが通例なんだよ。だから、帰っても肩身が狭い思いをしなくちゃいけないからね。それは御免蒙りたいってこと」
歩夢「そう……なんですか……」
歩夢はそれを聞いて少し複雑そうな顔をする。
薫子「とりあえず、翡翠の民のほとんどはこれからも里で暮らすみたいだけどね。なんだかんだ、自分たちの生活は気に入ってたみたいだし。ただ、翡翠の巫女みたいな風習はなくなっていくはずだよ。なんせ、必要がなくなったわけだからね」
薫子さんはそう言いながら、背後にある大樹を見上げる。
薫子「もう、龍の止まり木から……本当の意味での、龍の咆哮が聞こえることは、ないのかもしれないね……」
侑「きっと……それでいいんだと思います。誰かが見張っていなくても、私たち……この地方に住む、人とポケモンが力を合わせて、平和を守っていかないと」
せつ菜「ですね。いつまでも守られていては、私たちも成長出来ませんし!」
薫子「あはは、違いないね」
薫子さんは軽く笑ってから一呼吸。
薫子「んで、リーグ側なんだけど……翡翠の民から、レックウザがこの地を去った報告は受けたものの……上層部は今でも懐疑的みたいだね」
リナ『まあ、確認する術もないもんね』 || ╹ᇫ╹ ||
薫子「だから、これからも引き続き監視はするのかもしれないけど……ま、いないもんはいないから取り越し苦労なんだけどね。ただ、ミナミ相談役は信じてくれてるみたい。もしかしたら、ずっと続いた翡翠の民との軋轢も少しずつ解消されていくのかもね」
そしたら、アタシもお役御免だ、と付け足しながら、薫子さんは笑う。
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