14:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:11:07.09 ID:FRtckmfc0
「……今日本屋に寄ったのもね、実はそのあたりの迷いを払拭できるかなって思ってのことだったの」
「そういえば……どんな本を買ったんですか?」
「ううん……結局見つからなかった。たぶん古い本なのよね。新書ばかりの本屋さんにはないみたい」
「タイトルは……?」
郁代が一呼吸おいて、そっと呟く。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:11:47.05 ID:FRtckmfc0
「ひとりちゃんが書く歌詞ね……」
(えっ……ダメ出しされる!?)
「ああ、ごめんなさい。けなすつもりじゃないの。本当にいいなって思うけど……」
「ほっ……」
「でも……私はひとりちゃんの想いとか伝えたいメッセージとか、ちゃんと聞いてくれる人に届けられてるのかなぁって……」
16:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:12:41.84 ID:FRtckmfc0
「私……ひとりちゃんの気持ち、もっとわかりたい」
「……」
「ひとりちゃんがどんなことを考えてるのか……どんなことを思いながら生きてるのか……ちゃんと理解したい」
(喜多ちゃん……)
「本当に、一日だけでもいいから、ひとりちゃんと入れ替われたらいいのにね」
17:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:13:53.63 ID:FRtckmfc0
ひとりが黙ってぷにぷにし続けていると、驚くべきことが起こった。
「手だけじゃ……だめかな」
「?」
「えい」
「ぐえっ!」
18:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:14:42.07 ID:FRtckmfc0
「……」
「……」
何を言えばいいかわからない。
いくら言葉を探しても見つからない。
でも、郁代に伝えたい気持ちは、いっぱいいっぱいある。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:15:59.58 ID:FRtckmfc0
あの夜の、それから先のことを、ひとりはあまり覚えていない。
抱き合うような格好のまま眠りに落ち、気付いたら朝になっていて、でも二人分の暖かさに包まれていたおかげか、二人ともまったく目覚める気配がなかったと、郁代の母親にあとで言われた。
結局遅刻ギリギリの時間に家を出ることになってしまい、二人きりでの登校というイベントも慌ただしく終わってしまった。
いつも通りの学校。いつも通りの授業。
しかし、郁代との距離はものすごく縮まった気がしていて、それだけで学校が少しだけ楽しいと思えるほどだった。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:16:37.14 ID:FRtckmfc0
「すごいじゃん喜多ちゃん〜! なんか今日は情感こもってるっていうか、いつもの何倍も心にくるものがあったよ! 何度も練習している曲なのにびっくり!」
「そうですか〜?」
「うんうんっ、もしかして何かあったの?」
「!」
「前よりも明らかに何かが違う気がするんだよね〜。ひょっとして誰かに恋しちゃったとか!?」
21:名無しNIPPER
2023/01/07(土) 15:34:20.26 ID:YFxV1UI10
よかった……!! ほんとうによかった……!!
書いてくれてありがとうございます!!
22:名無しNIPPER[sage]
2023/01/07(土) 21:18:40.13 ID:c799AonBO
嗚呼、非常によき……
ありがとうございました
23:名無しNIPPER
2023/01/09(月) 06:33:21.42 ID:/F41BOJt0
乙乙
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