20:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:16:37.14 ID:FRtckmfc0
「すごいじゃん喜多ちゃん〜! なんか今日は情感こもってるっていうか、いつもの何倍も心にくるものがあったよ! 何度も練習している曲なのにびっくり!」
「そうですか〜?」
「うんうんっ、もしかして何かあったの?」
「!」
「前よりも明らかに何かが違う気がするんだよね〜。ひょっとして誰かに恋しちゃったとか!?」
「なっ、ななな……なんにもしてないですよ!?」
「……え?」
虹夏のさりげない質問を受け、郁代ではなくひとりが、ついつい反射的にそう答えてしまった。
ぴしっと場の空気が凍り、気まずい沈黙が流れる。
「えっ……喜多ちゃんに聞いたんだけど、なんでぼっちっちゃんが答えるの……?」
「えっ、あぁいや、その」
「えっ嘘……もしかして……喜多ちゃんとぼっちちゃん、なんかしたの!?」
「ああぁいや違くて、あの夜はそういうのじゃなくてっ」
「あの夜ってなに!? なんで赤くなるの!? まさか本当にそういうことしちゃったの!?」
「あわわ、うぁぁっ」
虹夏の質問責めに圧倒されるひとり。
郁代の方に視線を向けて助けを求めても、ただ微笑み返されるだけだった。
「ちょっと待って今日練習どころじゃない! 気になることが多すぎる! とりあえずその『あの夜』の話、おねーさんに聞かせてみ!?」
「落ち着いて。バンドマンにただれた関係はつきもの」
「いやいや、メンバー同士がただれた関係になっちゃうのって一番解散とかに繋がるやつでしょー!」
リョウの言葉を受け、さらに錯乱する虹夏。そしてひたすら慌てふためくひとり。
郁代は微笑みながら胸に手を当てて、あのときの温度を思い出していた。
〜fin〜
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