664: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/08(日) 12:30:13.49 ID:5MWtUFJH0
璃奈「私はこの研究所で……お父さんとお母さんが遺した研究の続きが出来れば、それでいい」
愛「お父さんとお母さんが遺した研究……? ……じゃあ、さっき発表してたのは……」
璃奈「うん。お父さんとお母さんが研究してたこと。私の目的は……二人の考えていた理論を完成させること……」
愛「…………」
璃奈「だから、貴方がお父さんとお母さんが研究していたことに興味を持ってくれたのは素直に嬉しい。……だけど、私と関わってると研究所で居づらくなるかもしれない。……だから、あんまり私と関わらない方がいいよ」
私は彼女に向かって、ここにいると損することを伝える。
だけど彼女は、ここを去るどころか──
愛「……ずっと……一人で頑張ってたんだね……」
そう言いながら、私を抱きしめてきた。
璃奈「……えっと……?」
愛「……決めた」
璃奈「? 何を?」
愛「アタシ、この研究室に入る」
璃奈「え……?」
私は彼女の言葉に驚く。
璃奈「……なんで?」
愛「なんでって……今の話聞いちゃったら、ほっとけないって!」
璃奈「……ここは他の研究室に比べて予算も少ない。扱ってるテーマも特殊だし……何よりこの研究室に入ったって知られたら、貴方も他の所員から良い顔をされないと思う。メリットがない」
愛「メリットとか、デメリットとか、そういう問題じゃないんだって……!」
璃奈「……貴方が優しい人なのはわかった。その気持ちは嬉しい。ありがとう。……だけど、私は一人で大丈夫だから。これまでもずっとそうだったし……」
愛「大丈夫だって言ってる子は……そんな寂しそうな顔しないぞ」
璃奈「……え?」
彼女はそう言いながら、私の頬に手を添える。
璃奈「私……寂しそうな顔……してる……?」
愛「……してるよ」
璃奈「……私、研究所の人たちが、私は無表情で何考えてるかわからないって噂してるの、知ってる……きっと思ってても、そんな顔はしてない」
愛「……それは、他の人たちがりなりーのこと、ちゃんと見てないからだよ……」
璃奈「……」
愛「とにかく、もう決めたから! アタシ、この研究室に入る! 入室手続きとかっている?」
璃奈「別に……いらないけど……」
愛「おっけー! じゃあ、今いる研究室抜けてくるから、ちょっと待ってて!」
それだけ言うと、彼女は部屋から飛び出して行った。
璃奈「……行っちゃった……」
そして、30分もしないうちに、彼女は自身の所属研究室を抜けて、私の研究室に荷物を抱えて戻ってきたのだった。
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