606: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/04(水) 13:28:35.29 ID:2N444K9g0
果林「…………ダメ、ダメよ……私は……負けちゃ……ダメ、なの……」
侑「果林さん……!! もう、終わりです!! 私たちの勝ちです!!」
果林「終わり……違う……終わりじゃない……!!」
もうポケモンは残っていないはず。だけど、果林さんは私に向かって歩いてくる。
そして、懐から──サバイバルナイフを取り出した。
侑「う、嘘でしょ……?」
果林「私は…………たくさんの人の…………想いを……願いを……背負ってるのよ…………だから……だから……ッ」
果林さんが走り込んできて──ナイフを振りかざした。
侑「……ッ!!」
私をナイフで切り付けようとした、その瞬間──私を庇うように、人が飛び込んできた。
レンガレッドのおさげを揺らしながら──
エマ「……っ……!」
侑「エマ……さん……!?」
果林「!? え、エマ……!?」
エマ「…………果林、ちゃん……」
エマさんは果林さんの名前を呼びながら、その場に崩れるようにして蹲る。
その肩には──真っ赤な血の痕が服に滲んでいた。
侑「え、エマさん……!? 血が……!」
エマ「大丈夫……ちょっと掠っただけ……。……全然深くないから……」
果林「え、エマ……な、なんで……」
エマ「果林ちゃん……もう……こんなこと……終わりにしよう……? これ以上……誰かを、傷つけないで……」
果林「…………ダメよ……」
エマ「……本当はこんなこと……もう、したくないんでしょ……?」
果林「…………ち、違う……私は……私の意志で、ここに……」
エマ「……もう、大丈夫だから……一人で抱え込まないで……一人で泣かないで……いいんだよ……」
エマさんがよろよろと立ち上がる。その足には添え木とギブスがしてあった。
怪我をしている足で立ったら痛むはずなのに……エマさんは優しい表情を崩さず──果林さんを抱きしめる。
エマ「そのゴロンダちゃん……わたしが最初にあげたヤンチャムちゃんだよね……?」
果林「…………ぁ…………それ、は…………」
エマ「まだ持っててくれたんだね……。……それに……果林ちゃんがお家に残していった……他のヤンチャムちゃんたち……メール持ってたよ……?」
果林「…………」
エマ「……『この子たちのこと、よろしくね』って……これから滅ぼす世界に……そんなメール持たせたポケモン、置いてかないでしょ……?」
果林「わた……し……は……」
エマ「……あれは……わたしに宛てた……果林ちゃんからの……SOSだったんだよね……? ……『私を止めて』って……『もうこんなことしたくない』って……」
果林「…………っ」
エマ「大切な人たちを守るために……頑張って悪い人になろうとしてたんだよね……。……でも、果林ちゃんが一人で抱えなくていいんだよ……」
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