562: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/03(火) 12:39:52.44 ID:Sh64zN700
「──だからそれじゃ、根本的な解決にならないって言ってんでしょ!?」
応接室から、愛が荒げた声を聞く機会もだんだんと増えていった。恐らく、政府の役人と今後の方針で揉めているのだろう。
その間は調査が滞り、私たちは訓練と演習くらいしかすることがない中──ある辞令が下った。
果林「──……“SUN”と“MOON”……?」
彼方「うん。上からの辞令で……組織内でポケモンでの戦闘が強い二人に権限を渡すって話みたい」
果林「権限って……なんの?」
彼方「コスモッグを自由に扱う権利みたいだね……2匹のコスモッグがそれぞれ“SUN”と“MOON”に1匹ずつ渡されるみたい」
彼方が辞令に目を通しながら言う。
果林「それってつまり……」
彼方「……ある程度、自由にウルトラスペースを調査する権限みたいだね」
果林「……そう」
彼方「嬉しくないの? 果林ちゃん、“MOON”に任命されたってことは……出世みたいなものだよ?」
果林「そうね……」
私は思わず眉を八の字にしてしまう。
──組織内で戦闘が強い二人──
この指定の仕方は……恐らくだけど……私には愛が政府の役人に反発し続けた結果のように思えた。
反発をする愛に対し、上の人間は愛に自由を与えないために、作戦そのものの実行能力を持った人間に権限を与えようとしたけど……愛は彼方より強い。下手したら私よりも……。
研究者でありながら、作戦の実行能力も高い彼女から、全ての権限を奪いきれなかった結果、こんな不自然な辞令が下ったんじゃないかしら……。
もちろん、想像の域は出ないけど……。
彼方「……どうする?」
果林「……まあ、コスモッグを受け取るのは構わないけど……」
コスモッグはウルトラビーストではあるものの、戦闘能力が皆無なウルトラビーストだ。
故に持っていようが持っていまいが、そこまで大きな問題はないと思う。……ただ、エネルギーを放出させすぎると休眠状態になると予想はされているから、そこは考えないといけないけど……。
ちなみに他のウルトラビーストは、結局うまく扱える人がいなくて、持て余しているのが現状だ。
一度、彼方がテッカグヤを扱おうとしたものの……結局強すぎる力に振り回されてしまい断念。
私も何匹か使ってみたものの……フェローチェほど、しっくりくるものがなく、現状の手持ちの方が有効に戦えそうだったために、受け取りはしなかった。
閑話休題。
コスモッグを受け取るのはいいとしよう。ただ──
果林「だからって、私だけで調査に行くことってないと思うんだけど……」
彼方「……それはそうかも」
ウルトラスペースシップの操縦はほとんどプログラミングされた自動操縦らしいし、簡単な使い方くらいは聞いているから、動かすことは出来ると思うけど……。
それ以外のことは、完全に愛と璃奈ちゃん任せだから、私たちに持たされても使い道があまり思いつかない。
……他国のスパイとかに奪われる可能性が減るくらいかしら……?
果林「それにしても……なんで“SUN”と“MOON”……太陽と月なのかしら……?」
愛「──文献を見つけたからだよ」
そう言いながら、愛と璃奈ちゃんが部屋に入ってくる。
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