548: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/03(火) 12:19:07.49 ID:Sh64zN700
果林「…………平和な島だった。あの日まで……」
彼方「うん」
果林「…………もちろん世界がどうなってるかは知ってるし……いつか起こるかもしれないとは、みんな思っていたけど……急だった。つい数時間前まで話してた島の人たちが、友達が……家族が、ポケモンが……みんな……私の目の前で、死んでいった……」
彼方「……うん」
果林「……全部……飲み込まれて……なくなっちゃった……。……もう、私の住んでた故郷は……影も形も……残ってないんだって……。残ってるのは……たまたまポケットに紛れ込んでた、この小石くらいかな……」
そう言って……彼方に小石を見せる。
逃げ惑っている際に紛れ込んでしまっただけだろうけど……今となっては、これ以外にあの島にあったものは何も残っていなかった。
彼方「……」
「メェ〜〜」
そんな私を見て……彼方は無言で私を抱き寄せ──頭を撫でてくれた。
果林「大切な人が……場所が……なくなるのは……悲しい……。…………もう誰にも……こんな想い……して欲しくない……」
彼方「……うん」
もし、こんなどうしようもない世界を救う方法があるのだとしたら……私は迷わずにそれを選ぶのに。
あまりに無力な自分が……虚しくて……悲しかった。
👠 👠 👠
孤児院に来て数ヶ月経った頃、私はプリズムステイツにある、警備隊へと入隊することを決めた。
プリズムステイツはいろんな場所から、いろんな種類の人間が故郷を追われ生活している場所だから……なんというか、あまり治安がいい場所ではなかった。
それ故に、警備隊での仕事は決して安全なものではないし……だからこそ、稼ぎも相応によかった。
それに孤児院経営も決して裕福な環境で行っているわけではないのは、近くで見ていればわかったし……少しでも、私を拾ってくれた院長先生への恩を返したい気持ちもあった。
そして、何より──
彼方「それじゃ〜、今日も頑張ろうね〜」
彼方が私と同じような考えで、この警備隊へ入ろうとしていることを聞いたから、一緒に入隊した。
──入隊すると、戦闘用のポケモンが支給された。そのときに彼方はネッコアラを貰い……なんの因果か、私に支給されたポケモンは、
「コーーン」
故郷で失った家族と同じ種類のポケモン──ロコンだった。
自分で言うのもなんだけど、ありがたいことに私にはポケモンで戦うセンスがあった。
そしてそれは彼方も……。
私たちはあっという間に、警備隊の中でもトップクラスの強さへと伸し上がり──ものの半年で私は率先して前に出る攻撃部隊の隊長に、彼方は救護や防衛を主とする防御部隊の隊長になっていた。
ただ……それは決して、楽でもなければ、楽しいものでもなかった。
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