546: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/03(火) 12:17:48.58 ID:Sh64zN700
保護された私は、あの“闇の落日”の中でも残った大きな都市国家の一つである──プリズムステイツの郊外にある“虹の家”という孤児院に送られた。
当時15歳。
もう分別のわかる歳だった。だから……どうしようもないことが起こったんだと理解出来た。だけど……だからこそ、辛かった。
何もわからないくらい……小さな子供だったらよかったのにと、何度も思った。
院長「果林ちゃん15歳よね? 実はわたしの上の娘も同い年なのよ。かなちゃーん?」
「なーにー?」
気の抜けるような声で返事をしながら、院長先生とよく似た髪色の女の子がとてとてと歩いてきた。
院長「この子、果林ちゃん。今日から、一緒に住むことになる子よ」
彼方「あーうん、言ってた子だよね〜。彼方ちゃんはね〜彼方って言うの〜。よろしくね〜」
果林「……よろしく」
これが──私と彼方の初めての出会いだった。
👠 👠 👠
“虹の家”には私を含め、10人の子供と……院長先生の娘である彼方と遥ちゃんの計13人が一緒に暮らしていた。
大きな孤児院ではなかったけど、院長先生は率先して“闇の落日”で身寄りを失った子供を受け入れていたそうだ──もちろん、それでも孤児の数が多すぎるため、こうして受け入れてもらえただけでも、運がよかったと言える。
ここにはおおよそ10歳くらいの子が多く、私と彼方はその中でも最年長だったけど……私はあまり年下の子と上手に接する自信がなかったため、一人で過ごしていることが多かった。
もちろん、邪険に扱っていたわけではないから、嫌われたり、怖がられていたということはなかったけど……。
一方で彼方は……なんだか掴みどころのない子だった。
孤児院内で率先して家事を手伝っていたり、他の子たちの御守りも率先してやっていたとかと思えば……暇が出来ると、
彼方「…………むにゃむにゃ……」
「……メェ……zzz」
ウールーと一緒に日の高いうちからお昼寝していたり……忙しないのか、のんびりしているのか、よくわからない子だった。
わかりやすいことと言えば……とにかく妹の遥ちゃんが大好きだということだろうか。
そして、一番わからなかったのは──
果林「……」
“虹の家”の近くの岬に……簡易的に建立された──沈んだ私の故郷の慰霊碑があった。
慰霊碑と言っても……本当に簡易的なもので、見た目はただの大きめの石。……これが慰霊碑であると言われなければ誰にもわからない。そんな代物だった。
私はこの慰霊碑に手を合わせるのが日課だった。
そして両手を合わせて目を開けると、決まって──
彼方「……」
「メェ〜〜」
いつの間にか隣で、彼方も両手を合わせていた。仲良しのウールーと一緒に。
果林「……」
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