545: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/03(火) 12:17:17.49 ID:Sh64zN700
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「──大丈夫……!? しっかりして……!?」
果林「ん……ぅ……」
大きな声で呼びかけられ、目を開けると──見知らぬ女の人が居た。救助隊の格好をしているから……救助隊なのだろう。
女の人「……! 息がある……! 人工呼吸器回して!!」
人工呼吸器を口に当てられる。
女の人「あなただけでも……助かってよかった……」
果林「…………」
私が揺れる船の窓から、外に目を向けると──真っ暗な夜の闇の中……私の故郷の島が……今まさに……海に飲み込まれているところだった……。
👠 👠 👠
あの夜──所謂“闇の落日”と呼ばれるあの日のことは、今でも忘れられない。
本当にそれは唐突で……急に大きな地震が起こったかと思ったら、大地が裂け、家が崩れて飲み込まれた。
命からがら脱出し、家族と逃げ惑う中、崩れた大地からは瘴気が噴き出し、それを吸い込んだご近所さんが喀血して、倒れた。
私たちは必死に逃げた。道中で、大地の崩落に友達が巻き込まれるのを見た。
「助けないと」と泣き叫ぶ私を、両親が無理やり引き摺るようにして、島の高台へと逃げ──その道中、砕ける岩の崩落にお父さんが巻き込まれて、瓦礫と共に消えていった。
島の高台にたどり着けたのは……私とお母さんと──
「コーン…」
小さい頃から大切にしていた、ロコンしかいなかった。
高台に逃げても……どんどん水位が上がってきて……瘴気の影響もあって、私の意識は朦朧としていた。
そんなとき──救いの手とも言える、ヘリのライトが私たちを照らした。
朦朧とする意識の中──「果林! しっかりして!!」──母が私を押し上げ、ヘリの救助隊の人がやっとの思いで私をヘリに引っ張りこんだ直後──
お母さんとロコンは──高台ごと……海に飲み込まれた。一瞬だった。
私の意識は、そこで途絶え──次に目を覚ましたときには……船の上から……遠方で大きな渦潮に飲み込まれるように、私が生まれ育った故郷が沈む姿を眺めていたのだった。
👠 👠 👠
院長「──今日からここが貴方のお家よ」
果林「…………ありがとう、ございます……」
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